自動分析装置
【課題】容器の搬送方向を変更できる機構を備えた自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置1の試薬保持部10は、試薬容器12が保持される第1の試薬ディスク(保持手段)20と、第1の試薬ディスク20上の試薬容器12のRFIDタグに添付された情報を読み取る試薬情報読取機構(情報読取機構)21と、試薬情報読取機構21により試薬容器12に添付されたRFIDタグ情報が読み取られた後、試薬容器12を取り出したい場合に、試薬の搬送方向を変更可能な試薬排出機構(搬送方向変更機構)23とを備えている。これにより、試薬に異常があった場合等に、その試薬容器12が予め排除され、分析を迅速に行うことが可能となる。また、異常のある試薬に起因して誤った分析結果が得られることを回避でき、分析を高精度に行うことが可能となる。
【解決手段】自動分析装置1の試薬保持部10は、試薬容器12が保持される第1の試薬ディスク(保持手段)20と、第1の試薬ディスク20上の試薬容器12のRFIDタグに添付された情報を読み取る試薬情報読取機構(情報読取機構)21と、試薬情報読取機構21により試薬容器12に添付されたRFIDタグ情報が読み取られた後、試薬容器12を取り出したい場合に、試薬の搬送方向を変更可能な試薬排出機構(搬送方向変更機構)23とを備えている。これにより、試薬に異常があった場合等に、その試薬容器12が予め排除され、分析を迅速に行うことが可能となる。また、異常のある試薬に起因して誤った分析結果が得られることを回避でき、分析を高精度に行うことが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿などの生体サンプルに含まれる各種の成分の定性および定量分析する自動分析装置に関し、特に試薬容器の搬送等を自動で行うことができる自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析の分野では、複数の反応ラインをランダムに使用するランダムアクセス方式の自動分析装置が開発され、分析の処理能力が飛躍的に向上した。それに伴い試薬消費のスピードも速くなり、試薬容器切り替え作業の機会が増えてきた。特許文献1では、試薬登録、試薬交換等の作業によるオペレータ(作業者)の負担を軽減するとともに、分析中の試薬不足を発生させず、分析中断を最少化するため、自動で試薬交換を行うことができる試薬搬入搬出機構を有する自動分析装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−37171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される自動分析装置では、投入された試薬容器の試薬情報もしくは試薬容器に不備があった場合や、オペレータの都合で取り出したいときに、投入された試薬容器を排出する機構が必要である。
【0005】
つまり、分析を迅速かつ高精度に行うために都合の良い方向に容器の搬送方向を変更することができる機構の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、容器の搬送方向を変更できる機構を備えた自動分析装置を提供することにある。
【0007】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
すなわち、本発明の自動分析装置は、複数の反応容器に試料と試薬を分注して反応させ、反応した液体を測定する自動分析装置において、試料容器および試薬容器のいずれかの容器を複数保持する保持手段と、この保持手段に前記容器を投入する容器投入機構と、前記保持手段上に投入された前記容器に添付された情報を読み取るための情報読取機構と、前記情報読取機構により読み取られた情報、前記容器の状況または作業者の意図に基づき、前記容器の搬送方向を変更させる搬送方向変更機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
本発明によれば、自動分析装置は、容器投入機構により容器保持手段に投入された容器に添付された情報、容器の状況または作業者の意図に基づき、容器の搬送方向を搬送方向変更機構により変更させるので、容器に関する情報に何らかの異常があった場合等、必要に応じて容器の搬送方向を変更させることができる。したがって、分析のための処理や分析を中断したい容器の搬送方向を予め変更して、容器に異常があるにもかかわらず処理を行う等の不必要な作業を省略したり、異常のある試薬に起因して誤った分析結果が得られることを回避でき、分析を迅速かつ高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】試薬排出機構の構成図である。
【図3】試薬排出機構の動作図である。
【図4】試薬排出機構の動作図である。
【図5】試薬排出機構の動作図である。
【図6】試薬排出機構の動作図である。
【図7】試薬排出機構の動作図である。
【図8】(A)〜(E)は、試薬排出機構の動作概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
【0014】
図1は、本発明の自動分析装置の概略構成図である。図1に示すように、自動分析装置1は、試薬保持部10と、分析部11とから主に構成されており、これらは図示しない制御部により制御される。
【0015】
試薬保持部10は、試薬の入った試薬容器(容器)12が保持される第1の試薬ディスク(保持手段)20を備えている。試薬容器12は、図示の例では2種の試薬が収容される収納部12a、12bが形成されたカセット状の容器であり、周方向に沿って等間隔で配置されている。試薬容器12には図示しないRFID(Radio Frequency Identification)タグが貼り付けられており、第1の試薬ディスク20上にはRFIDタグに添付された情報を読み取る試薬情報読取機構(情報読取機構)21が設けられている。試薬情報読取機構21のタグ情報読取位置に対応する場所には、第1の試薬ディスク20に試薬容器12を引き込んで投入する試薬投入機構22が設けられている。この読取位置より試薬容器12が1個進んだ位置に対応する場所には、試薬容器12を第1の試薬ディスク20の外に排出可能な試薬排出機構(搬送方向変更機構)23が設けられている。
【0016】
また、試薬容器12は各収納部12a、12bに当初はキャップ(図示せず)がされており、第1の試薬ディスク20の1つの静止位置上には、試薬容器12のキャップを開ける試薬キャップ開栓機構24が設けられている。なお、試薬キャップ開栓機構24の近傍には、試薬キャップを廃棄する試薬キャップ廃棄箱25が置かれている。第1の試薬ディスク20の他の1つの静止位置には、分析部11に試薬容器12を受け渡す試薬受渡機構26が、分析部11方向へ伸縮自在に設けられている。
【0017】
分析部11は、反応機構がなく、第1の試薬ディスク20から補充された反応に使用される試薬の保持のみを行う、第1の試薬ディスク20よりも大径の第2の試薬ディスク27と、試薬保持部分に限れば第2の試薬ディスク27とほぼ同径であり、外周部に反応機構28を有する第3の試薬ディスク29と、を備えている。
【0018】
第2の試薬ディスク27は、試薬回転機構30が隣接して設けられており、この試薬回転機構30により試薬保持部10から伸びた試薬受渡機構26を介して試薬容器12が受け渡されるようになっている。試薬回転機構30の近傍には、使用済みの試薬容器12を順次収納する試薬容器収納機構31が設けられている。第2の試薬ディスク27と第3の試薬ディスク29との間には、試薬容器設置機構32が摺動自在に設けられた試薬搬送機構33が架設されている。試薬搬送機構33は、試薬容器設置機構32に図示の例では2つの試薬容器12を収容して、各ディスクの試薬投入口34、35および試薬回転機構30間で試薬容器12を搬送するようになっている。
【0019】
この自動分析装置1における試薬容器12の搬送手順を説明する。まず、試薬投入機構22から引き込まれて投入された試薬容器12は、試薬情報読取機構21により試薬容器12に添付されたRFIDタグ情報が読み取られた後、第1の試薬ディスク20に保持される。この試薬容器12の情報に異常があった場合には、試薬容器12は試薬排出機構23から排出される。
【0020】
第2の試薬ディスク27または第3の試薬ディスク29へ試薬を補充するように、制御部から指令があると、試薬容器12は試薬キャップ開栓機構24の下まで第1の試薬ディスク20の回転により移動し、試薬キャップ開栓機構24により試薬容器12の収納部12a、12bの試薬キャップが開けられる。このとき、試薬キャップは、試薬キャップ廃棄箱25に廃棄される。さらに、試薬容器12は、試薬受渡機構26の位置まで第1の試薬ディスク20の回転により移動し、試薬受渡機構26が伸びて試薬回転機構30まで押し出される。ここで、試薬キャップ開栓機構24による試薬キャップの開栓時に、試薬キャップが開かない場合には、試薬容器12に不備があるとして、試薬容器12を試薬排出機構23に対応する位置まで回転移動させて排出させることができる。また、試薬容器12に不備がなくても、オペレータ(作業者)の都合により、同様にして試薬排出機構23により排出することもできる。
【0021】
試薬回転機構30は、試薬容器12を受け取ったことを図示しないセンサで検知した後、回転する。試薬搬送機構33は、試薬回転機構30上に試薬容器設置機構32を移動させた後、試薬回転機構30上の試薬容器12を試薬容器設置機構32で保持し、試薬投入口34または35まで試薬容器12を搬送する。試薬搬送機構33は、試薬投入口34または35から、試薬容器設置機構32をZ方向(自動分析装置1の上下方向)に移動させ、試薬容器12を第2の試薬ディスク27または第3の試薬ディスク29内に保持させる。保持された試薬容器12から、試薬を反応機構28に並べられている図示しない複数の反応容器に分注し、この反応容器にて試料と試薬とを反応させ、測定する。試薬分注により使用済みとなった試薬容器12は、第2の試薬ディスク27または第3の試薬ディスク29から試薬容器設置機構32で吊り上げられて取り出され、試薬搬送機構33により試薬容器収納機構31まで搬送される。
【0022】
次に、試薬排出機構23の構成および動作について説明する。図2は試薬排出機構の構成図である。
【0023】
試薬排出機構23は、図2に示すように、モータ36と、一対のプーリ37a、37bと、このプーリ37a、37bに架設されたベルト38とを備えており、モータ36の駆動力によりベルト38がプーリ37a、37b間を往復運動するようになっている。ベルト38には、爪39と、試薬容器押出部材(容器押出部材)40とが取り付けられている。また、試薬排出機構23はリニアガイド41を備えており、試薬容器押出部材40はこのリニアガイド41に沿って動くようになっている。爪39は、リニアガイド41の進行方向側がその手前側よりも上方向に突出する。試薬容器押出部材40は、爪39と一体形成されており、爪39側とは反対側の側部がリニアガイド41の進行方向に対して内側に屈曲しながら突出する。つまり、試薬排出機構23に入った試薬容器12は、爪39および試薬容器押出部材40の突出部分により、リニアガイド41に沿って押し込まれるようになっている。
【0024】
一方、試薬排出機構23は、機構内に入った試薬容器12を介して爪39および試薬容器押出部材40と係合可能な部材である試薬容器移送部材(容器移送部材)42を備えている。この試薬容器移送部材42には、上下端において水平方向に伸びる連結部43a、43bが設けられており、下端側の連結部43bには、試薬容器押出部材40と当接可能なピン44が取り付けられている。連結部43a、43bには、ベアリング45a、45bがそれぞれ設けられており、機構上端側のベアリング45aから下端側のベアリング45bを貫通して軸46が設けられている。つまり、試薬容器移送部材42は、ベアリング45a、45bによって軸46を中心に回転できるように構成されている。
【0025】
試薬排出機構23による試薬容器12の移動の概要を説明する。図3〜7はその動作図、図8(A)〜(E)はその動作概要図である。なお、図8では、試薬容器押出部材40はリニアガイド41の進行方向に沿って突出する側部を、試薬容器移送部材42は連結部43bを、概略的に示している。また、便宜のため、本来は見えない部分も実線で描いている。
【0026】
図8において、(A)から(B)までは試薬容器12が直線移動を行い、(B)から(D)までは試薬容器12が試薬容器移送部材42に載って軸46を中心に回転移動し、(D)から(E)までは再び直線移動する。
【0027】
試薬排出機構23の最初の状態は、図8(A)の状態であり、詳細には図3の状態である。モータ(図3以降では図示せず)の駆動力により、ベルト38を介して爪39と試薬容器押出部材40は、リニアガイド41に沿って直線移動する。爪39が機構内に入った、排出したい試薬容器12を押し、試薬容器移送部材42に載せる。
【0028】
次に、図8(B)の状態、詳細には図4の状態となる。これは、図3(図8(A))の状態から、爪39が試薬容器12を試薬容器移送部材42にさらに押し込んだ状態である。ここで、試薬容器押出部材40は、ピン44と接触する。
【0029】
次に、図8(C)、(D)の状態、詳細には図5、図6の状態へと順次移る。ピン44は試薬容器押出部材40に押され、試薬容器移送部材42は軸46を中心に回転移動する。その際、試薬容器12は、試薬容器移送部材42に載っているので試薬容器移送部材42と一緒に回転移動する。
【0030】
最後に、図8(E)の状態、詳細には図7の状態となる。試薬容器押出部材40がピン44を押し終わった後(図6および図8(D)参照)、爪39が試薬容器12をさらに直線方向に押し出して、試薬容器12を排出できる位置まで送り込む。
【0031】
つまり、図8に示すように、試薬容器12は、試薬排出機構23により、試薬容器押出部材40の突出先端となる試薬容器押出部材先端部40aがピン44と接触するまで直線移動を行う(図8の(A)から(B))。そして、ピン44が試薬容器押出部材40に押され、試薬容器押出部材40の突出基端となる試薬容器押出部材屈曲部40bに到達するまで試薬容器12は回転移動を行う(図8の(B)から(D))。その後、ピン44は試薬容器押出部材40と接触しながら滑るのみであり、試薬容器12の回転移動は行われず、試薬容器12の排出位置となる試薬容器押出部材末端部40cに達するまで直線移動を行う(図8の(D)から(E))。このような手法により、1つの駆動系で直線移動と回転移動とが可能となっている。
【0032】
このように、本発明の自動分析装置1は、試薬排出機構23を設けたので、試薬や試薬容器12に異常があった場合に、速やかにその試薬容器12を排出できる。これにより、分析のための前処理や分析を行う前に異常のある試薬容器12が排除され、分析を迅速に行うことが可能となる。同時に、異常のある試薬に基づいた分析が防げるので、これに起因して誤った分析結果が得られることを回避でき、分析を高精度に行うことが可能となる。
【0033】
また、試薬排出機構23は、1つの駆動系で直線移動と回転移動とが可能な構成となっているので、コンパクトかつ安価に、オペレータが取り出しやすい向きに試薬容器12の方向を変更することができる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明を、実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0035】
例えば、試薬排出機構23は、複数の試料容器が保持される試料ラック(保持手段)の搬送機構において、試料容器に情報読取機構を設けておき、試料に異常があった場合等に、その試料が保持される試料ラックを搬送機構から排出する試料排出機構として適用することもできる。
【0036】
また、容器の排出を行わずに、単に容器の搬送方向を変更する、搬送方向変更機構として適用することもできる。この場合には、搬送経路を直線状に形成する部分を短縮できるので、装置のコンパクト化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 自動分析装置
10 試薬保持部
11 分析部
12 試薬容器(容器)
12a 収納部
12b 収納部
20 第1の試薬ディスク(保持手段)
21 試薬情報読取機構(情報読取機構)
22 試薬投入機構
23 試薬排出機構(搬送方向変更機構)
24 試薬キャップ開栓機構
25 試薬キャップ廃棄箱
26 試薬受渡機構
27 第2の試薬ディスク
28 反応機構
29 第3の試薬ディスク
30 試薬回転機構
31 試薬容器収納機構
32 試薬容器設置機構
33 試薬搬送機構
34 試薬投入口
35 試薬投入口
36 モータ
37a プーリ
37b プーリ
38 ベルト
39 爪
40 試薬容器押出部材(容器押出部材)
40a 試薬容器押出部材先端部
40b 試薬容器押出部材屈曲部
40c 試薬容器押出部材末端部
41 リニアガイド
42 試薬容器移送部材(容器移送部材)
43a 連結部
43b 連結部
44 ピン
45a ベアリング
45b ベアリング
46 軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿などの生体サンプルに含まれる各種の成分の定性および定量分析する自動分析装置に関し、特に試薬容器の搬送等を自動で行うことができる自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析の分野では、複数の反応ラインをランダムに使用するランダムアクセス方式の自動分析装置が開発され、分析の処理能力が飛躍的に向上した。それに伴い試薬消費のスピードも速くなり、試薬容器切り替え作業の機会が増えてきた。特許文献1では、試薬登録、試薬交換等の作業によるオペレータ(作業者)の負担を軽減するとともに、分析中の試薬不足を発生させず、分析中断を最少化するため、自動で試薬交換を行うことができる試薬搬入搬出機構を有する自動分析装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−37171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される自動分析装置では、投入された試薬容器の試薬情報もしくは試薬容器に不備があった場合や、オペレータの都合で取り出したいときに、投入された試薬容器を排出する機構が必要である。
【0005】
つまり、分析を迅速かつ高精度に行うために都合の良い方向に容器の搬送方向を変更することができる機構の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、容器の搬送方向を変更できる機構を備えた自動分析装置を提供することにある。
【0007】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
すなわち、本発明の自動分析装置は、複数の反応容器に試料と試薬を分注して反応させ、反応した液体を測定する自動分析装置において、試料容器および試薬容器のいずれかの容器を複数保持する保持手段と、この保持手段に前記容器を投入する容器投入機構と、前記保持手段上に投入された前記容器に添付された情報を読み取るための情報読取機構と、前記情報読取機構により読み取られた情報、前記容器の状況または作業者の意図に基づき、前記容器の搬送方向を変更させる搬送方向変更機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
本発明によれば、自動分析装置は、容器投入機構により容器保持手段に投入された容器に添付された情報、容器の状況または作業者の意図に基づき、容器の搬送方向を搬送方向変更機構により変更させるので、容器に関する情報に何らかの異常があった場合等、必要に応じて容器の搬送方向を変更させることができる。したがって、分析のための処理や分析を中断したい容器の搬送方向を予め変更して、容器に異常があるにもかかわらず処理を行う等の不必要な作業を省略したり、異常のある試薬に起因して誤った分析結果が得られることを回避でき、分析を迅速かつ高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】試薬排出機構の構成図である。
【図3】試薬排出機構の動作図である。
【図4】試薬排出機構の動作図である。
【図5】試薬排出機構の動作図である。
【図6】試薬排出機構の動作図である。
【図7】試薬排出機構の動作図である。
【図8】(A)〜(E)は、試薬排出機構の動作概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
【0014】
図1は、本発明の自動分析装置の概略構成図である。図1に示すように、自動分析装置1は、試薬保持部10と、分析部11とから主に構成されており、これらは図示しない制御部により制御される。
【0015】
試薬保持部10は、試薬の入った試薬容器(容器)12が保持される第1の試薬ディスク(保持手段)20を備えている。試薬容器12は、図示の例では2種の試薬が収容される収納部12a、12bが形成されたカセット状の容器であり、周方向に沿って等間隔で配置されている。試薬容器12には図示しないRFID(Radio Frequency Identification)タグが貼り付けられており、第1の試薬ディスク20上にはRFIDタグに添付された情報を読み取る試薬情報読取機構(情報読取機構)21が設けられている。試薬情報読取機構21のタグ情報読取位置に対応する場所には、第1の試薬ディスク20に試薬容器12を引き込んで投入する試薬投入機構22が設けられている。この読取位置より試薬容器12が1個進んだ位置に対応する場所には、試薬容器12を第1の試薬ディスク20の外に排出可能な試薬排出機構(搬送方向変更機構)23が設けられている。
【0016】
また、試薬容器12は各収納部12a、12bに当初はキャップ(図示せず)がされており、第1の試薬ディスク20の1つの静止位置上には、試薬容器12のキャップを開ける試薬キャップ開栓機構24が設けられている。なお、試薬キャップ開栓機構24の近傍には、試薬キャップを廃棄する試薬キャップ廃棄箱25が置かれている。第1の試薬ディスク20の他の1つの静止位置には、分析部11に試薬容器12を受け渡す試薬受渡機構26が、分析部11方向へ伸縮自在に設けられている。
【0017】
分析部11は、反応機構がなく、第1の試薬ディスク20から補充された反応に使用される試薬の保持のみを行う、第1の試薬ディスク20よりも大径の第2の試薬ディスク27と、試薬保持部分に限れば第2の試薬ディスク27とほぼ同径であり、外周部に反応機構28を有する第3の試薬ディスク29と、を備えている。
【0018】
第2の試薬ディスク27は、試薬回転機構30が隣接して設けられており、この試薬回転機構30により試薬保持部10から伸びた試薬受渡機構26を介して試薬容器12が受け渡されるようになっている。試薬回転機構30の近傍には、使用済みの試薬容器12を順次収納する試薬容器収納機構31が設けられている。第2の試薬ディスク27と第3の試薬ディスク29との間には、試薬容器設置機構32が摺動自在に設けられた試薬搬送機構33が架設されている。試薬搬送機構33は、試薬容器設置機構32に図示の例では2つの試薬容器12を収容して、各ディスクの試薬投入口34、35および試薬回転機構30間で試薬容器12を搬送するようになっている。
【0019】
この自動分析装置1における試薬容器12の搬送手順を説明する。まず、試薬投入機構22から引き込まれて投入された試薬容器12は、試薬情報読取機構21により試薬容器12に添付されたRFIDタグ情報が読み取られた後、第1の試薬ディスク20に保持される。この試薬容器12の情報に異常があった場合には、試薬容器12は試薬排出機構23から排出される。
【0020】
第2の試薬ディスク27または第3の試薬ディスク29へ試薬を補充するように、制御部から指令があると、試薬容器12は試薬キャップ開栓機構24の下まで第1の試薬ディスク20の回転により移動し、試薬キャップ開栓機構24により試薬容器12の収納部12a、12bの試薬キャップが開けられる。このとき、試薬キャップは、試薬キャップ廃棄箱25に廃棄される。さらに、試薬容器12は、試薬受渡機構26の位置まで第1の試薬ディスク20の回転により移動し、試薬受渡機構26が伸びて試薬回転機構30まで押し出される。ここで、試薬キャップ開栓機構24による試薬キャップの開栓時に、試薬キャップが開かない場合には、試薬容器12に不備があるとして、試薬容器12を試薬排出機構23に対応する位置まで回転移動させて排出させることができる。また、試薬容器12に不備がなくても、オペレータ(作業者)の都合により、同様にして試薬排出機構23により排出することもできる。
【0021】
試薬回転機構30は、試薬容器12を受け取ったことを図示しないセンサで検知した後、回転する。試薬搬送機構33は、試薬回転機構30上に試薬容器設置機構32を移動させた後、試薬回転機構30上の試薬容器12を試薬容器設置機構32で保持し、試薬投入口34または35まで試薬容器12を搬送する。試薬搬送機構33は、試薬投入口34または35から、試薬容器設置機構32をZ方向(自動分析装置1の上下方向)に移動させ、試薬容器12を第2の試薬ディスク27または第3の試薬ディスク29内に保持させる。保持された試薬容器12から、試薬を反応機構28に並べられている図示しない複数の反応容器に分注し、この反応容器にて試料と試薬とを反応させ、測定する。試薬分注により使用済みとなった試薬容器12は、第2の試薬ディスク27または第3の試薬ディスク29から試薬容器設置機構32で吊り上げられて取り出され、試薬搬送機構33により試薬容器収納機構31まで搬送される。
【0022】
次に、試薬排出機構23の構成および動作について説明する。図2は試薬排出機構の構成図である。
【0023】
試薬排出機構23は、図2に示すように、モータ36と、一対のプーリ37a、37bと、このプーリ37a、37bに架設されたベルト38とを備えており、モータ36の駆動力によりベルト38がプーリ37a、37b間を往復運動するようになっている。ベルト38には、爪39と、試薬容器押出部材(容器押出部材)40とが取り付けられている。また、試薬排出機構23はリニアガイド41を備えており、試薬容器押出部材40はこのリニアガイド41に沿って動くようになっている。爪39は、リニアガイド41の進行方向側がその手前側よりも上方向に突出する。試薬容器押出部材40は、爪39と一体形成されており、爪39側とは反対側の側部がリニアガイド41の進行方向に対して内側に屈曲しながら突出する。つまり、試薬排出機構23に入った試薬容器12は、爪39および試薬容器押出部材40の突出部分により、リニアガイド41に沿って押し込まれるようになっている。
【0024】
一方、試薬排出機構23は、機構内に入った試薬容器12を介して爪39および試薬容器押出部材40と係合可能な部材である試薬容器移送部材(容器移送部材)42を備えている。この試薬容器移送部材42には、上下端において水平方向に伸びる連結部43a、43bが設けられており、下端側の連結部43bには、試薬容器押出部材40と当接可能なピン44が取り付けられている。連結部43a、43bには、ベアリング45a、45bがそれぞれ設けられており、機構上端側のベアリング45aから下端側のベアリング45bを貫通して軸46が設けられている。つまり、試薬容器移送部材42は、ベアリング45a、45bによって軸46を中心に回転できるように構成されている。
【0025】
試薬排出機構23による試薬容器12の移動の概要を説明する。図3〜7はその動作図、図8(A)〜(E)はその動作概要図である。なお、図8では、試薬容器押出部材40はリニアガイド41の進行方向に沿って突出する側部を、試薬容器移送部材42は連結部43bを、概略的に示している。また、便宜のため、本来は見えない部分も実線で描いている。
【0026】
図8において、(A)から(B)までは試薬容器12が直線移動を行い、(B)から(D)までは試薬容器12が試薬容器移送部材42に載って軸46を中心に回転移動し、(D)から(E)までは再び直線移動する。
【0027】
試薬排出機構23の最初の状態は、図8(A)の状態であり、詳細には図3の状態である。モータ(図3以降では図示せず)の駆動力により、ベルト38を介して爪39と試薬容器押出部材40は、リニアガイド41に沿って直線移動する。爪39が機構内に入った、排出したい試薬容器12を押し、試薬容器移送部材42に載せる。
【0028】
次に、図8(B)の状態、詳細には図4の状態となる。これは、図3(図8(A))の状態から、爪39が試薬容器12を試薬容器移送部材42にさらに押し込んだ状態である。ここで、試薬容器押出部材40は、ピン44と接触する。
【0029】
次に、図8(C)、(D)の状態、詳細には図5、図6の状態へと順次移る。ピン44は試薬容器押出部材40に押され、試薬容器移送部材42は軸46を中心に回転移動する。その際、試薬容器12は、試薬容器移送部材42に載っているので試薬容器移送部材42と一緒に回転移動する。
【0030】
最後に、図8(E)の状態、詳細には図7の状態となる。試薬容器押出部材40がピン44を押し終わった後(図6および図8(D)参照)、爪39が試薬容器12をさらに直線方向に押し出して、試薬容器12を排出できる位置まで送り込む。
【0031】
つまり、図8に示すように、試薬容器12は、試薬排出機構23により、試薬容器押出部材40の突出先端となる試薬容器押出部材先端部40aがピン44と接触するまで直線移動を行う(図8の(A)から(B))。そして、ピン44が試薬容器押出部材40に押され、試薬容器押出部材40の突出基端となる試薬容器押出部材屈曲部40bに到達するまで試薬容器12は回転移動を行う(図8の(B)から(D))。その後、ピン44は試薬容器押出部材40と接触しながら滑るのみであり、試薬容器12の回転移動は行われず、試薬容器12の排出位置となる試薬容器押出部材末端部40cに達するまで直線移動を行う(図8の(D)から(E))。このような手法により、1つの駆動系で直線移動と回転移動とが可能となっている。
【0032】
このように、本発明の自動分析装置1は、試薬排出機構23を設けたので、試薬や試薬容器12に異常があった場合に、速やかにその試薬容器12を排出できる。これにより、分析のための前処理や分析を行う前に異常のある試薬容器12が排除され、分析を迅速に行うことが可能となる。同時に、異常のある試薬に基づいた分析が防げるので、これに起因して誤った分析結果が得られることを回避でき、分析を高精度に行うことが可能となる。
【0033】
また、試薬排出機構23は、1つの駆動系で直線移動と回転移動とが可能な構成となっているので、コンパクトかつ安価に、オペレータが取り出しやすい向きに試薬容器12の方向を変更することができる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明を、実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0035】
例えば、試薬排出機構23は、複数の試料容器が保持される試料ラック(保持手段)の搬送機構において、試料容器に情報読取機構を設けておき、試料に異常があった場合等に、その試料が保持される試料ラックを搬送機構から排出する試料排出機構として適用することもできる。
【0036】
また、容器の排出を行わずに、単に容器の搬送方向を変更する、搬送方向変更機構として適用することもできる。この場合には、搬送経路を直線状に形成する部分を短縮できるので、装置のコンパクト化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 自動分析装置
10 試薬保持部
11 分析部
12 試薬容器(容器)
12a 収納部
12b 収納部
20 第1の試薬ディスク(保持手段)
21 試薬情報読取機構(情報読取機構)
22 試薬投入機構
23 試薬排出機構(搬送方向変更機構)
24 試薬キャップ開栓機構
25 試薬キャップ廃棄箱
26 試薬受渡機構
27 第2の試薬ディスク
28 反応機構
29 第3の試薬ディスク
30 試薬回転機構
31 試薬容器収納機構
32 試薬容器設置機構
33 試薬搬送機構
34 試薬投入口
35 試薬投入口
36 モータ
37a プーリ
37b プーリ
38 ベルト
39 爪
40 試薬容器押出部材(容器押出部材)
40a 試薬容器押出部材先端部
40b 試薬容器押出部材屈曲部
40c 試薬容器押出部材末端部
41 リニアガイド
42 試薬容器移送部材(容器移送部材)
43a 連結部
43b 連結部
44 ピン
45a ベアリング
45b ベアリング
46 軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応容器に試料と試薬を分注して反応させ、反応した液体を測定する自動分析装置において、
試料容器および試薬容器のいずれかの容器を複数保持する保持手段と、この保持手段に前記容器を投入する容器投入機構と、前記保持手段上に投入された前記容器に添付された情報を読み取るための情報読取機構と、前記情報読取機構により読み取られた情報、前記容器の状況または作業者の意図に基づき、前記容器の搬送方向を変更させる搬送方向変更機構と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、前記容器は試薬容器であり、前記搬送方向変更機構は前記試薬容器を前記保持手段から排出する試薬排出機構として機能することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、前記搬送方向変更機構は、1つの駆動系で直線移動と回転移動との2通りの移動を、前記搬送方向変更機構内に入った前記容器にさせることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動分析装置において、前記搬送方向変更機構は、リニアガイドと、このリニアガイドに沿って移動して前記搬送方向変更機構内に入った前記容器を押すことにより前記容器を直線移動させる容器押出部材と、この容器押出部材から前記容器が押し出される容器移送部材と、この容器移送部材に前記容器を押し出した際に前記容器押出部材が接触するピンと、このピンの接触により前記容器移送部材を回転させて前記容器を回転移動させる軸と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項1】
複数の反応容器に試料と試薬を分注して反応させ、反応した液体を測定する自動分析装置において、
試料容器および試薬容器のいずれかの容器を複数保持する保持手段と、この保持手段に前記容器を投入する容器投入機構と、前記保持手段上に投入された前記容器に添付された情報を読み取るための情報読取機構と、前記情報読取機構により読み取られた情報、前記容器の状況または作業者の意図に基づき、前記容器の搬送方向を変更させる搬送方向変更機構と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、前記容器は試薬容器であり、前記搬送方向変更機構は前記試薬容器を前記保持手段から排出する試薬排出機構として機能することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、前記搬送方向変更機構は、1つの駆動系で直線移動と回転移動との2通りの移動を、前記搬送方向変更機構内に入った前記容器にさせることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動分析装置において、前記搬送方向変更機構は、リニアガイドと、このリニアガイドに沿って移動して前記搬送方向変更機構内に入った前記容器を押すことにより前記容器を直線移動させる容器押出部材と、この容器押出部材から前記容器が押し出される容器移送部材と、この容器移送部材に前記容器を押し出した際に前記容器押出部材が接触するピンと、このピンの接触により前記容器移送部材を回転させて前記容器を回転移動させる軸と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−112912(P2012−112912A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264457(P2010−264457)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]