自動分析装置
【課題】測光データの信頼性の向上。
【解決手段】光源11は、光を発生する。反射/透過器14は、光源11から発生され、試料と試薬との混合液が収容された反応管を透過した光の第1の部分光を透過し、光のうちの第2の部分光を反射する。分光器15は、反射/透過器14からの第1の部分光を波長毎に分解する。第1受光部16は、分光器15からの第1の部分光を受光し、受光された第1の部分光の強度に応じた第1の受光データを発生する。測光データ生成部4は、第1の受光データに基づいて混合液の吸光度に関する測光データを生成する。第2受光部17は、反射/透過器14からの第2の部分光を受光し、受光された第2の部分光の強度に応じた第2の受光データを発生する。判定部5は、第2の受光データの強度に応じて測光データの信頼性の有無を判定する。
【解決手段】光源11は、光を発生する。反射/透過器14は、光源11から発生され、試料と試薬との混合液が収容された反応管を透過した光の第1の部分光を透過し、光のうちの第2の部分光を反射する。分光器15は、反射/透過器14からの第1の部分光を波長毎に分解する。第1受光部16は、分光器15からの第1の部分光を受光し、受光された第1の部分光の強度に応じた第1の受光データを発生する。測光データ生成部4は、第1の受光データに基づいて混合液の吸光度に関する測光データを生成する。第2受光部17は、反射/透過器14からの第2の部分光を受光し、受光された第2の部分光の強度に応じた第2の受光データを発生する。判定部5は、第2の受光データの強度に応じて測光データの信頼性の有無を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、試料(被検体の血清等)と試薬とを反応管に分注し、撹拌子で撹拌し、試料と試薬とを混合する。自動分析装置は、測光部により、反応管内の混合液の吸光度等の測光データを測定している。試料と試薬との反応に時間を要するため、測光は繰り返し行われる。すなわち、吸光度は、複数の測定時間(測光ポイント)において算出される。吸光度の時間変化曲線は、反応曲線と呼ばれている。予め設定された観測区間における吸光度が各種の測定項目の算出に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001―235422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
混合液内などの光路中に気泡やゴミ、フィブリン等の異物がある場合、吸光度に異常高値や異常低値等の異常値が現れる。また、恒温槽に異物がある場合も同様である。異常値を検知するための異常値の自動検出技術が知られている。例えば、自動分析装置は、図11に示すように、観測区間内における実測の吸光度[Abs]が既定の許容範囲に収まるか否かを判定している。しかし、観測区間外(典型的には観測区間前)において吸光度が異常値であるが、観測区間内においては既定の許容範囲に収まる場合がある。この場合、吸光度は正常値としてオペレータに報知されてしまう。例え観測区間前のみに異常値が現れている場合であっても、観測区間内の吸光度が完全に正常であるとはいえない。従って、吸光度の信頼性が低い。
【0005】
目的は、測光データの信頼性の向上を可能とする自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る自動分析装置は、光を発生する光源と、前記光源から発生され、試料と試薬との混合液が収容された反応管を透過した光の第1の部分光を透過し、前記光のうちの第2の部分光を反射する反射/透過器と、前記反射/透過器からの前記第1の部分光を波長毎に分解する分光器と、前記分光器からの前記第1の部分光を受光し、前記受光された第1の部分光の強度に応じた第1の受光データを発生する第1受光部と、前記第1の受光データに基づいて前記混合液の吸光度に関する測光データを生成する生成部と、前記反射/透過器からの前記第2の部分光を受光し、前記受光された第2の部分光の強度に応じた第2の受光データを発生する第2受光部と、前記第2の受光データの強度に応じて前記測光データの信頼性の有無を判定する判定部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る自動分析装置の概略構造を示す図。
【図2】図1の測光部の構成を示す図。
【図3】光路上の異物について説明するための図。
【図4】光路上の異物について説明するための他の図。
【図5】光路上の異物について説明するための他の図。
【図6】図2の1次元配列の第2受光素子群の概略的な構造を示す図。
【図7】図6の場合における光の強度とチャンネル番号との関係の一例を示す図であり、図1の判定部による判定処理を説明するための図。
【図8】図2の2次元配列の第2受光素子群の概略的な構造を示す図。
【図9】図1の判定部による判定処理を説明するための他の図。
【図10】本実施形態の変形例に係る測光部の構成を示す図。
【図11】反応曲線の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置100の概略構造を示す図である。図1に示すように、自動分析装置100のステージの略中央部には反応ディスク20が設けられている。反応ディスク20は、円周上に配列された複数の反応管(反応セル)22を保持する。反応ディスク20は、所定のサイクルで回動と停止とを繰り返す。
【0010】
反応ディスク20の近傍には、円盤状のサンプルディスク30が設けられる。サンプルディスク30は、同心円上に配列された複数のサンプル容器32を保持する。サンプル容器32には、被検体の血清等の試料が収容されている。サンプルディスク30は、回転軸回りに回転し、分注対象の試料が収容されたサンプル容器32をサンプルディスク30上の試料吸入位置に配置する。
【0011】
反応ディスク20の近傍には、第1試薬庫40が配置される。第1試薬庫40は、円盤状の第1試薬ディスクを有する。第1試薬ディスクは、同心円上に配列された複数の第1試薬容器42を保持する。第1試薬容器42は、試料に含まれる各測定項目に応じた成分と化学反応する第1試薬を収容する。第1試薬ディスクは、回転軸回りに回転し、分注対象の第1試薬が収容された第1試薬容器42を第1試薬庫40上の第1試薬吸入位置に配置する。
【0012】
反応ディスク20の内側には、第2試薬庫50が配置される。第2試薬庫50は、円盤状の第2試薬ディスクを有する。第2試薬ディスクは、円周上に配列された複数の第2試薬容器52を保持する。第2試薬容器52は、第1試薬に対応する第2試薬を収容する。第2試薬ディスクは、回転軸回りに回転し、分注対象の第2試薬が収容された第2試薬容器52を第2試薬庫50上の第2試薬吸入位置に配置する。
【0013】
反応ディスク20とサンプルディスク30との間にはサンプルアーム34が配置される。サンプルアーム34の先端には、サンプルプローブ36が取り付けられている。サンプルプローブ36は、図示しない電動式のポンプにより試料を吸入したり吐出したりする。サンプルアーム34は、サンプルプローブ36をサンプルディスク30上の試料吸入位置と反応ディスク20上の試料吐出位置との間を回動させる。また、サンプルアーム34は、サンプルプローブ36を上下動させる。
【0014】
反応ディスク20と第1試薬庫40との間には第1試薬アーム44が配置される。第1試薬アーム44の先端には第1試薬プローブ46が取り付けられている。第1試薬プローブ46は、図示しないポンプにより第1試薬を吸入したり吐出したりする。第1試薬アーム44は、第1試薬プローブ46を第1試薬庫40上の第1試薬吸入位置と反応ディスク20上の第1試薬吐出位置との間を回動させる。また、第1試薬アーム44は、第1試薬プローブ46を上下動させる。
【0015】
反応ディスク20の外周近傍には第2試薬アーム54が配置される。第2試薬アーム54の先端には第2試薬プローブ56が取り付けられている。第2試薬プローブ56は、図示しないポンプにより第2試薬を吸入したり吐出したりする。第2試薬アーム54は、第2試薬プローブ56を第2試薬庫50上の第2試薬吸入位置と反応ディスク20上の第2試薬吐出位置との間を回動させる。また、第2試薬アーム54は、第2試薬プローブ56を上下動させる。
【0016】
反応ディスク20の外周近傍には、撹拌アーム60が設けられている。撹拌アーム60は、反応ディスク20上の撹拌位置の反応セル22内の試料及び第1試薬の混合液や、試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌子62で撹拌する。
【0017】
ステージの内部には、測光部1が設けられている。図2は、測光部1の構成を示す図である。図2に示すように、測光部1は、制御部2を中枢として、測光機構3、測光データ生成部4、判定部5、記憶部6、操作部7、及び表示部8を備えている。
【0018】
測光機構3は、ハロゲンランプやタングステンランプ等のランプ11を搭載する。ランプ11は、光を発生する。反応ディスク20の回動により反応管22は、光学系内の所定位置(測光位置)PPを通過する。反応管22は、恒温水が収容されている恒温槽24内を回動する。ランプ11と測光位置PPとの間の光路には、レンズ12が設けられている。レンズ12は、ランプ11からの光を集光する。レンズ11により集光された光は、反応管22や恒温槽24を透過する。
【0019】
反応管22や恒温槽24を透過した光は、レンズ13、反射/透過器14、及び分光器15を介して第1受光部16に受光され、あるいは、レンズ13及び反射/透過器14を介して第2受光部17に受光される。レンズ13は、反応管22や恒温槽24を透過した光を集光する。反射/透過器14は、レンズ13により集光された光の一部を透過し、一部を反射する。ここで反射/透過器14により透過された光を透過光、反射/透過器14により反射された光を反射光と呼ぶことにする。透過光は、反射光よりも強度が強い。反射/透過器14としては、ビームスプリッター等の光学素子が用いられる。ビームスプリッターは、例えば、薄い金属膜が蒸着されたガラス板により構成される。金属膜の厚さや、光軸に対するビームスプリッターの向きを調整することで、透過光と反射光との強度を調整することができる。分光器15は、反射/透過器14からの透過光を分光する。分光器15としては、例えば、回折格子が用いられる。回折格子は、例えば、鏡面に等間隔に形成された複数の溝(格子線)が形成された凹面鏡により構成される。回折格子に照射された透過光は、回折格子上の格子線により波長毎に分散される。換言すれば、回折格子により、透過光は、複数の波長帯域に関する複数の光線(単色光)に分解される。
【0020】
第1受光部16は、分光器15により分光された透過光を受光し、受光された透過光の強度に応じた受光データ(測光用受光データ)を測光ポイント毎に発生する。第1受光部16は、第1受光素子群161と第1収集部162とを有している。第1受光素子群161は、透過光の光路に垂直な垂直面上に1次元状又は2次元状に配列される複数の受光素子を有している。各受光素子は、その配置位置に応じた波長帯域に属する光線を受光し、受光された光線の強度に応じたアナログの電気信号を発生する。1つの受光素子が1つの画素に対応する。例えば、受光素子は、フォトダイオードにより実現される。この場合、第1受光素子群161は、PDA(photodiode array)と呼ばれる。第1収集部162は、第1受光素子群161の各受光素子から電気信号を読み出し、受光された光線の強度に応じた画素値を有するデジタルのデータに変換する。画素値は、受光された光線の強度のデジタル値に対応している。画素値は、測光ポイントと波長帯域とに関連付けて管理される。測光用受光データは、複数の受光素子にそれぞれ対応する複数の画素値のデータの集合である。
【0021】
測光データ生成部4は、測光用受光データの画素値に基づいて、反応管22内の混合液の吸光度を計算する。吸光度が計算されると測光データ生成部4は、吸光度に基づいて、混合液に含まれる測定項目成分の濃度を計算する。典型的には、観測区間における画素値に基づいて濃度が算出される。観測区間は、予め設定されており、ある測光ポイントから他の測光ポイントまでの区間により規定される。これら吸光度のデータや濃度のデータをまとめて測光データと呼ぶことにする。すなわち、測光データ生成部4は、測光用受光データに基づいて、反応管22内の混合液の測光データを生成する。測光データは、測光ポイントに関連付けられる。測光データは、制御部2に供給される。
【0022】
第2受光部17は、反射/透過器14からの反射光を受光し、受光された反射光の強度に応じた受光データ(判定用受光データ)を測光ポイント毎に生成する。第2受光部17は、第2受光素子群171と第2収集部172とを有している。第2受光素子群171は、反射光の光路に垂直な垂直面上に1次元状又は2次元状に配列される複数の受光素子を有している。各受光素子は、受光された光線の強度に応じたアナログの電気信号を発生する。反射光は分光されていないので、受光された反射光の波長帯域は、受光位置に応じて異ならず同一である。例えば、受光素子は、フォトダイオードにより実現される。第2収集部172は、第2受光素子群171の各受光素子から電気信号を読み出し、受光された反射光の強度に応じた画素値を有するデジタルのデータに変換する。画素値は、測光ポイントに関連付けて管理される。判定用受光データは、複数の受光素子にそれぞれ対応する複数の画素値のデータの集合である。
【0023】
具体的には、第1受光部16と第2受光部17とは、300μmから1000μmまでの波長範囲に対応するイメージセンサが利用されると良い。本実施形態に係るイメージセンサとしては、例えば、裏面入射型CCD(charge coupled device)イメージセンサやCMOS(complementary metal oxide sensor)イメージセンサ、NMOS(n-channel metal oxide semiconductor)イメージセンサにより実現される。
【0024】
判定部5は、判定用受光データの画素値に応じて測光データの信頼性の有無を判定する。典型的には、判定部5による判定処理は、判定用受光データが生成される毎、すなわち、測光ポイント毎に繰り返される。判定結果のデータは、制御部2に供給される。
【0025】
記憶部6は、測光データ生成部4からの測光データや判定部5からの判定結果のデータを記憶する。同一の試料に関する測光データと判定結果のデータとは、関連付けて記憶される。
【0026】
操作部7は、オペレータからの入力デバイスを介した各種指令や情報入力を受け付け、受け付けた指令や入力に応じた操作信号を制御部2に供給する。入力デバイスとしては、キーボードやマウス、スイッチ等が適宜利用可能である。
【0027】
表示部8は、判定部5からの判定結果を所定のレイアウトで表示デバイスに表示する。また、表示部8は、測光データ生成部4からの測光データを表示デバイスに表示する。この際、表示部8は、判定部5により信頼性が無いと判定された測光データと信頼性が有ると判定された測光データとを視覚的に区別して表示する。表示デバイスとしては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0028】
制御部2は、上述のように、自動分析装置100の中枢として機能する。例えば、操作部7から測定開始指示の操作信号が入力されることを契機として制御部2は、測光機構3を制御する。制御部2は、測光データ生成部4からの測光データや判定部5からの判定結果のデータを記憶部6と表示部8とに供給する。制御部2は、記憶部6に記憶された測光データや判定結果のデータを読み出して表示部8に供給する。
【0029】
次に本実施形態に係る自動分析装置の詳細について説明する。まずは、光路上の異物について説明する。反応管22には、試料と試薬とが分注される。これは反応液と呼ばれている。反応液が測光に最低必要な量(最小液量)を分注した時、試料や試薬の液性や分注条件(分注速度等)により、反応液の上澄みに泡立ちが発生する。この時、図3に示すように、測光時に光路が泡にかかってしまう。また、反応管22内に試料と試薬とが分注された後、撹拌子により撹拌される。図4に示すように、撹拌により発生された気泡が反応管22の内側に付着する場合がある。また、図5に示すように、結露等により反応管22の外側、すなわち、恒温槽24の内壁に気泡が付着する場合もある。気泡は光の進行を妨げるので、気泡を通過した光は、気泡を通過しない光に比して光量が低下する。従って、気泡を通過した光では正しい測光データを得ることができない。このように、気泡は測光データの信頼性を低下させている。これは、反応管22内を浮遊しているフィブリンやゴミも同様である。本実施形態においては、気泡やフィブリン、ゴミをまとめて異物と呼ぶことにする。
【0030】
次に本実施形態に係る判定部5による判定処理の詳細について説明する。まずは、第2受光部17の第2受光素子群171が1次元配列の場合について説明する。
【0031】
図6は、1次元状に配列された複数の受光素子を有する第2受光素子群171を示す図である。図6に示すように、第2受光素子群171は、128チャンネル分の受光素子を有している。複数の受光素子は、その配列方向が反射/透過器14からの反射光の光路に垂直になるように配置される。なお、図6において紙面垂直方向が反射光の進行方向に一致する。複数の受光素子の配列方向は、反応管22の縦方向に対応する。すなわち、チャンネル番号に応じて、受光素子に照射された光が通過した反応管部分の高さが異なる。例えば、図6に示すように、5番目のチャンネルから123番目のチャンネルまでの受光素子に光が照射されたとする。この場合、123番目のチャンネルの受光素子に照射された光は、反応管22の上部を通過し、5番目のチャンネルの受光素子に照射された光は、反応管22の下部を通過したことになる。
【0032】
上述のように、画素値は、光の強度に対応している。すなわち、異物を通過した光が照射された受光素子に由来する画素値は、異物を通過していない光が照射された受光素子に由来する画素値よりも低い値を有する。判定部5は、このような光の画素値の性質を利用して、測光データの信頼性の有無を判定する。
【0033】
図7は、図6の場合における画素値(光強度)Iとチャンネル番号Chとの関係の一例を示す図である。図7のグラフの縦軸は画素値Iに規定され、横軸はチャンネル番号Chに規定されている。また、グラフの実線は光路上に異物が有る場合の画素値曲線を示し、点線は光路上に異物が無い場合の画素値曲線を示す。判定部5は、各測光ポイントにおいて、チャンネル毎に画素値が許容範囲内にあるか否かを判定する。許容範囲は、下限閾値Thlから上限閾値Thuまでの範囲に規定される。下限閾値Thlは、例えば、光路に異物が無い場合に画素値が取りうる最低値と異物が有る場合に画素値が取りうる最高値との間に設定される。上限閾値Thuは、例えば、光路に異物が無い場合に画素値が取りうる最高値に設定される。下限閾値Thlと上限閾値Thuとは、経験に基づいて予め設定されている。下限閾値Thlより低い画素値と上限閾値Thuより高い画素値とは、判定部5により許容範囲に無いと判定される。一方、下限閾値Thlより高く、且つ上限閾値Thuより低い画素値は、判定部5により許容範囲に有ると判定される。
【0034】
なお光が照射されていない受光素子に由来する画素値は、当然に許容範囲内に分布しない。しかし、この受光素子への光路に異物があると判定されてはならない。そのため、光が照射されていない受光素子に由来する画素値は、判定対象から除外されるとよい。図7の場合、チャンネル番号1から4、及びチャンネル番号124から128の受光素子が判定対象から除外されるとよい。具体的には、第3閾値よりも低い画素値を有する受光素子が判定対象から除外されると良い。第3閾値は、反射光が照射されない受光素子に由来する画素値(暗電流に由来する画素値)が有しうる最高値に設定されるとよい。
【0035】
例えば、図7の場合、チャンネル番号5からChl−1まで、及びチャンネル番号Chuから123までの受光素子が許容範囲内に有ると判定され、チャンネル番号ChlからChuまでの受光素子が許容範囲内に無いと判定される。この場合、チャンネル番号ChlからChuまでの受光素子への光路中に異物が有ることを意味する。ここで、異物が無い場合の画素値曲線から極端に外れた画素値を特異点と呼ぶことにする。判定部5は、画素値が許容範囲内に有るか否かを判定することにより特異点を検出している。画素値曲線に特異点がある場合、特異点が検出された受光素子への光路上に異物が有ると判定され、画素値曲線に特異点が無い場合、反射光全体の光路上に異物が無いと判定される。判定部5は、光路上に異物が有る場合、測光データに信頼性が無く、光路上に異物が無い場合、測光データに信頼性が有ると判定する。
【0036】
次に、第2受光部17の第2受光素子群171が2次元配列の場合について説明する。
【0037】
図8は、2次元状に配列された複数の受光素子を有する第2受光素子群171を示す図である。図8に示すように、第2受光素子群171は、m×nチャンネル分の受光素子を有している。ここでm行n列のチャンネルをPm,nと表記することにする。m×n個の受光素子は、その配列面が反射/透過器14からの反射光の光路に垂直になるように配置される。一方の配列方向(例えば、行方向)は反応管の縦方向に対応し、他方の配列方向(例えば、列方向)は反応管の横方向に対応する。なお、図8の紙面垂直方向が反射光の進行方向に一致する。また、図8に示すように、チャンネル番号Pm1,n1からPm6,n3までの18個の受光素子に光が照射されたとする。
【0038】
第2受光素子群171が2次元配列の場合において判定部5は、1次元配列の場合と同様に信頼性の有無を判定可能である。例えば、判定部5は、受光素子毎に画素値が許容範囲内にあるか否かを判定する。そして判定部5は、画素値が許容範囲内にある場合、受光素子への光路上に異物がないと判定する。画素値が許容範囲内にない場合、判定部5は、受光素子への光路上に異物があると判定する。
【0039】
なお受光素子毎に光路上の異物の有無を判定する必要はない。例えば、行毎又は列毎に既定の許容範囲内にあるか否かを判定してもよい。例えば、図9に示すように、チャンネル番号Pa,AからPe,Eまでの25個の受光素子に注目する。チャンネル番号Pd,Cの受光素子の画素値が2I、他の24個の受光素子の画素値が3Iであるとする。
【0040】
まず判定部5は、列又は行毎に画素値の平均値を算出する。例えば判定部5は、図9に示すように、列方向に沿って画素値を積算し、積算対象の受光素子数(図9の場合5)で積算値を除する。これにより平均値が算出される。例えば、a、b、c、e行の平均値は3I、d行の平均値は2.8Iとなる。次に判定部5は、平均値が既定の許容範囲内にあるか否かを判定する。許容範囲内にある場合、判定部5は、その行に属する受光素子への光路上に異物がないと判定し、許容範囲内にない場合、その行に属する受光素子への光路上に異物があると判定する。図9の場合、チャンネル番号Pd,Cの画素値のみ他の画素値よりも低いので、d行の平均値は、他の行の平均値よりも低い。従って判定部5は、d行の平均値は許容範囲外であり、d行に属する受光素子への光路上に異物があると判定する。一方、判定部5は、他の行の平均値は許容範囲内であり、他の行に属する受光素子への光路上に異物がないと判定する。列毎に画素値を積算する場合も同様に判定部5は、平均値が許容範囲内にあるか否かを判定し、許容範囲内にある場合、その列に属する受光素子への光路上に異物がないと判定し、許容範囲内にない場合、その列に属する受光素子への光路上に異物があると判定する。
【0041】
以上で受光素子の配列態様に応じた判定処理の説明を終了する。判定結果のデータは、同一の測光ポイントに関する測光データに関連付けて記憶部6に記憶される。上述のように1つの測定項目において測光データは、複数の測光ポイントの各々において生成される。従って、一つの測定項目に関する複数の測光ポイントの測光データは、まとめて管理される。
【0042】
なお、信頼性の有無の判定処理は、各チャンネルの画素値(又は平均値)が閾値範囲内にあるか否かの判定のみに限定されない。例えば、画素値曲線を構成する複数の画素値の統計指標と閾値との大小関係により信頼性の有無が判定されてもよい。統計指標としては、標準偏差や分散等が利用される。統計指標の算出に利用される標本(画素値)は、例えば、1つの測光ポイントに属し、光が照射された受光素子に関する画素値に設定される。具体的には、標準偏差や分散が閾値よりも低い場合、判定部5は、光路上に異物がないと判定し、標準偏差や分散が閾値よりも高い場合、光路上に異物があると判定する。
【0043】
また、判定部5は、第2受光部17からの画素値曲線と標準的な画素値曲線との差分に基づいて信頼性の有無を判定してもよい。なお標準的な画素値曲線は、例えば、健常者に関する画素値曲線に基づいて算出される画素値曲線であり、例えば、複数の健常者に関する画素値曲線の平均値曲線により規定される。この場合、判定部5は、第2受光部17からの画素値曲線と標準的な画素値曲線との差分が既定の許容範囲にあるか否かを判定する。上述のように、判定部5は、差分が許容範囲内にある場合、光路上に異物がないと判定し、許容範囲内にない場合、光路上に異物があると判定する。
【0044】
このように判定処理が行われると表示部8は、判定部5による判定結果を表示する。判定結果の表示は、例えば、観測区間内の測光データ(吸光度や測定項目の濃度)の表示中になされる。具体的には、表示部8は、光路上に異物が有ると判定された場合、測光データに信頼性が無いことをオペレータに示すために、測光データに異常マークが付される。異常マークが測光データに付されることにより、オペレータは、再検フラグを立てて、その測光データに対応する測定項目を再測定するための指示をすることができる。この際、表示部8は、判定処理に利用された画素値曲線を表示してもよい。画素値曲線を観察することでオペレータは、許容範囲内になり画素値を有する受光素子のチャンネル番号を特定することができる。従ってオペレータは、反応管や恒温槽上のどの位置に異物があるかを特定することができる。
【0045】
上記構成により本実施形態に係る自動分析装置100は、測光データ生成のための光と同一の光源からの光を利用して、光路上の異物の有無を判定している。これを実現するため、反応管22と分光器15との間に反射/透過器14が設置されている。反射/透過器14からの透過光が測光データ生成のため分光器15を介して第1受光部16に入射され、反射/透過器14からの反射光が異物の有無の判定のため第2受光部17に直接的に入射される。すなわち、第2受光部17への入射光(反射/透過器14からの反射光)は、分光されていない。従って異物の特性(吸収波長等)がわからない場合、異物の特性によらず異物の検知が可能となる。判定部5は、反射光の強度に基づいて光路上の恒温槽や反応管に異物があるか否かを判定する。光路上に異物が有る場合、異物が有ると判定された恒温槽や反応管を通過した光に由来する測光データに信頼性が無いといえる。この場合、オペレータは、信頼性がない測光データに再検フラグを立てて、再検を行うことができる。
【0046】
かくして本実施形態に係る自動分析装置は、測光データの信頼性を向上することができる。
【0047】
(変形例)
本実施形態の変形例に係る自動分析装置は、反応管内の混合液の撹拌状態を判定する。以下、変形例に係る自動分析装置について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0048】
図10は、変形例に係る自動分析装置の構成を示す図である。図10に示すように、変形例に係る測光機構3´は、反射/透過器14と第2受光素子群171との間に光学フィルタ18を設けている。光学フィルタ18は、特定の波長帯域に属する光のみを通過させる特性を有している。第2受光部17は、光学フィルタ18を通過した反射光を受光し、受光された反射光の強度に応じた画素値を有する判定用受光データを生成する。判定部5は、生成された判定用受光データに基づいて反応管22内の混合液の撹拌状態を判定する。
【0049】
以下、判定部5による混合液の撹拌状態の判定処理について説明する。上述のように反応管22に分注された試料と試薬との混合液は撹拌子62により撹拌される。混合液の撹拌度合いは、化学反応の進行度合いに影響を及ぼす。すなわち、混合液の撹拌度合いにより、同一種類の試料及び試薬からなる混合液であっても、その混合液が吸収する光の波長帯域が変化する。換言すれば、混合液の撹拌度合いにより、第2受光素子群171への入射光が属する波長帯域が異なる。撹拌状態の良好な混合液を透過する光の波長帯域が既知の場合、判定部5は、その波長帯域に属する反射光の強度に基づいて、混合液の撹拌状態を判定することができる。
【0050】
撹拌状態の良好な混合液が透過可能な波長帯域に属する光のみを、光学フィルタ18は、透過させる。この波長帯域は、測定項目、すなわち、試薬の種類に応じて切替られる。光学フィルタは、オペレータにより手動で切替えられてもよいし、機械的な自動切替機構により切替えられてもよい。
【0051】
例えば、判定部5は、本実施形態と同様に、画素値が既定の許容範囲に属するか否かを判定する。許容範囲は、下限閾値と上限閾値との間に規定される。下限閾値は撹拌状態が良好な混合液を透過した反射光に由来する画素値が有しうる最低値に規定され、上限閾値は撹拌状態が良好な混合液を透過した反射光に由来する画素値が有しうる最高値に規定される。下限閾値と上限閾値とは、試薬の種類に応じて設定される。画素値が許容範囲内にある場合、判定部5は、混合液の撹拌状態は良好であると判定する。混合液の撹拌状態が良好である場合、その混合液の測光データの信頼性は高い。画素値が許容範囲内にない場合、判定部5は、混合液の撹拌状態は良好でないと判定する。混合液の撹拌状態が良好でない場合、その混合液の測光データの信頼性は低い。判定結果のデータは制御部2を介して表示部8に供給される。表示部8は、混合液の撹拌状態が良好でないと判定された場合、その旨のメッセージ(例えば、「良く撹拌されていません。測光データの信頼性は低いです。」)を表示する。また、表示部8は、混合液の撹拌状態が良好でないと判定された場合、その旨のメッセージ(例えば、「良く撹拌されています。測光データの信頼性は高いです。」)を表示する。
【0052】
なお、撹拌状態の良し悪しの判定方法は、画素値と閾値範囲との比較のみに限定されない。撹拌状態の良し悪しは、本実施形態と同様に、画素値の統計指標や、画素値と標準的な画素値との差分により判定されてもよい。
【0053】
かくして本実施形態の変形例に係る自動分析装置は、測光データの信頼性を向上することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…測光部、2…制御部、3…測光機構、4…測光データ生成部、5…判定部、6…記憶部、7…操作部、8…表示部、11…光源、12…レンズ、13…レンズ、14…反射/透過器、15…分光器、16…第1受光部、17…第2受光部、18…光学フィルタ、22…反応管、24…恒温槽、161…第1受光素子群、162…第1収集部、171…第2受光素子群、172…第2収集部、
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、試料(被検体の血清等)と試薬とを反応管に分注し、撹拌子で撹拌し、試料と試薬とを混合する。自動分析装置は、測光部により、反応管内の混合液の吸光度等の測光データを測定している。試料と試薬との反応に時間を要するため、測光は繰り返し行われる。すなわち、吸光度は、複数の測定時間(測光ポイント)において算出される。吸光度の時間変化曲線は、反応曲線と呼ばれている。予め設定された観測区間における吸光度が各種の測定項目の算出に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001―235422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
混合液内などの光路中に気泡やゴミ、フィブリン等の異物がある場合、吸光度に異常高値や異常低値等の異常値が現れる。また、恒温槽に異物がある場合も同様である。異常値を検知するための異常値の自動検出技術が知られている。例えば、自動分析装置は、図11に示すように、観測区間内における実測の吸光度[Abs]が既定の許容範囲に収まるか否かを判定している。しかし、観測区間外(典型的には観測区間前)において吸光度が異常値であるが、観測区間内においては既定の許容範囲に収まる場合がある。この場合、吸光度は正常値としてオペレータに報知されてしまう。例え観測区間前のみに異常値が現れている場合であっても、観測区間内の吸光度が完全に正常であるとはいえない。従って、吸光度の信頼性が低い。
【0005】
目的は、測光データの信頼性の向上を可能とする自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る自動分析装置は、光を発生する光源と、前記光源から発生され、試料と試薬との混合液が収容された反応管を透過した光の第1の部分光を透過し、前記光のうちの第2の部分光を反射する反射/透過器と、前記反射/透過器からの前記第1の部分光を波長毎に分解する分光器と、前記分光器からの前記第1の部分光を受光し、前記受光された第1の部分光の強度に応じた第1の受光データを発生する第1受光部と、前記第1の受光データに基づいて前記混合液の吸光度に関する測光データを生成する生成部と、前記反射/透過器からの前記第2の部分光を受光し、前記受光された第2の部分光の強度に応じた第2の受光データを発生する第2受光部と、前記第2の受光データの強度に応じて前記測光データの信頼性の有無を判定する判定部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る自動分析装置の概略構造を示す図。
【図2】図1の測光部の構成を示す図。
【図3】光路上の異物について説明するための図。
【図4】光路上の異物について説明するための他の図。
【図5】光路上の異物について説明するための他の図。
【図6】図2の1次元配列の第2受光素子群の概略的な構造を示す図。
【図7】図6の場合における光の強度とチャンネル番号との関係の一例を示す図であり、図1の判定部による判定処理を説明するための図。
【図8】図2の2次元配列の第2受光素子群の概略的な構造を示す図。
【図9】図1の判定部による判定処理を説明するための他の図。
【図10】本実施形態の変形例に係る測光部の構成を示す図。
【図11】反応曲線の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置100の概略構造を示す図である。図1に示すように、自動分析装置100のステージの略中央部には反応ディスク20が設けられている。反応ディスク20は、円周上に配列された複数の反応管(反応セル)22を保持する。反応ディスク20は、所定のサイクルで回動と停止とを繰り返す。
【0010】
反応ディスク20の近傍には、円盤状のサンプルディスク30が設けられる。サンプルディスク30は、同心円上に配列された複数のサンプル容器32を保持する。サンプル容器32には、被検体の血清等の試料が収容されている。サンプルディスク30は、回転軸回りに回転し、分注対象の試料が収容されたサンプル容器32をサンプルディスク30上の試料吸入位置に配置する。
【0011】
反応ディスク20の近傍には、第1試薬庫40が配置される。第1試薬庫40は、円盤状の第1試薬ディスクを有する。第1試薬ディスクは、同心円上に配列された複数の第1試薬容器42を保持する。第1試薬容器42は、試料に含まれる各測定項目に応じた成分と化学反応する第1試薬を収容する。第1試薬ディスクは、回転軸回りに回転し、分注対象の第1試薬が収容された第1試薬容器42を第1試薬庫40上の第1試薬吸入位置に配置する。
【0012】
反応ディスク20の内側には、第2試薬庫50が配置される。第2試薬庫50は、円盤状の第2試薬ディスクを有する。第2試薬ディスクは、円周上に配列された複数の第2試薬容器52を保持する。第2試薬容器52は、第1試薬に対応する第2試薬を収容する。第2試薬ディスクは、回転軸回りに回転し、分注対象の第2試薬が収容された第2試薬容器52を第2試薬庫50上の第2試薬吸入位置に配置する。
【0013】
反応ディスク20とサンプルディスク30との間にはサンプルアーム34が配置される。サンプルアーム34の先端には、サンプルプローブ36が取り付けられている。サンプルプローブ36は、図示しない電動式のポンプにより試料を吸入したり吐出したりする。サンプルアーム34は、サンプルプローブ36をサンプルディスク30上の試料吸入位置と反応ディスク20上の試料吐出位置との間を回動させる。また、サンプルアーム34は、サンプルプローブ36を上下動させる。
【0014】
反応ディスク20と第1試薬庫40との間には第1試薬アーム44が配置される。第1試薬アーム44の先端には第1試薬プローブ46が取り付けられている。第1試薬プローブ46は、図示しないポンプにより第1試薬を吸入したり吐出したりする。第1試薬アーム44は、第1試薬プローブ46を第1試薬庫40上の第1試薬吸入位置と反応ディスク20上の第1試薬吐出位置との間を回動させる。また、第1試薬アーム44は、第1試薬プローブ46を上下動させる。
【0015】
反応ディスク20の外周近傍には第2試薬アーム54が配置される。第2試薬アーム54の先端には第2試薬プローブ56が取り付けられている。第2試薬プローブ56は、図示しないポンプにより第2試薬を吸入したり吐出したりする。第2試薬アーム54は、第2試薬プローブ56を第2試薬庫50上の第2試薬吸入位置と反応ディスク20上の第2試薬吐出位置との間を回動させる。また、第2試薬アーム54は、第2試薬プローブ56を上下動させる。
【0016】
反応ディスク20の外周近傍には、撹拌アーム60が設けられている。撹拌アーム60は、反応ディスク20上の撹拌位置の反応セル22内の試料及び第1試薬の混合液や、試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌子62で撹拌する。
【0017】
ステージの内部には、測光部1が設けられている。図2は、測光部1の構成を示す図である。図2に示すように、測光部1は、制御部2を中枢として、測光機構3、測光データ生成部4、判定部5、記憶部6、操作部7、及び表示部8を備えている。
【0018】
測光機構3は、ハロゲンランプやタングステンランプ等のランプ11を搭載する。ランプ11は、光を発生する。反応ディスク20の回動により反応管22は、光学系内の所定位置(測光位置)PPを通過する。反応管22は、恒温水が収容されている恒温槽24内を回動する。ランプ11と測光位置PPとの間の光路には、レンズ12が設けられている。レンズ12は、ランプ11からの光を集光する。レンズ11により集光された光は、反応管22や恒温槽24を透過する。
【0019】
反応管22や恒温槽24を透過した光は、レンズ13、反射/透過器14、及び分光器15を介して第1受光部16に受光され、あるいは、レンズ13及び反射/透過器14を介して第2受光部17に受光される。レンズ13は、反応管22や恒温槽24を透過した光を集光する。反射/透過器14は、レンズ13により集光された光の一部を透過し、一部を反射する。ここで反射/透過器14により透過された光を透過光、反射/透過器14により反射された光を反射光と呼ぶことにする。透過光は、反射光よりも強度が強い。反射/透過器14としては、ビームスプリッター等の光学素子が用いられる。ビームスプリッターは、例えば、薄い金属膜が蒸着されたガラス板により構成される。金属膜の厚さや、光軸に対するビームスプリッターの向きを調整することで、透過光と反射光との強度を調整することができる。分光器15は、反射/透過器14からの透過光を分光する。分光器15としては、例えば、回折格子が用いられる。回折格子は、例えば、鏡面に等間隔に形成された複数の溝(格子線)が形成された凹面鏡により構成される。回折格子に照射された透過光は、回折格子上の格子線により波長毎に分散される。換言すれば、回折格子により、透過光は、複数の波長帯域に関する複数の光線(単色光)に分解される。
【0020】
第1受光部16は、分光器15により分光された透過光を受光し、受光された透過光の強度に応じた受光データ(測光用受光データ)を測光ポイント毎に発生する。第1受光部16は、第1受光素子群161と第1収集部162とを有している。第1受光素子群161は、透過光の光路に垂直な垂直面上に1次元状又は2次元状に配列される複数の受光素子を有している。各受光素子は、その配置位置に応じた波長帯域に属する光線を受光し、受光された光線の強度に応じたアナログの電気信号を発生する。1つの受光素子が1つの画素に対応する。例えば、受光素子は、フォトダイオードにより実現される。この場合、第1受光素子群161は、PDA(photodiode array)と呼ばれる。第1収集部162は、第1受光素子群161の各受光素子から電気信号を読み出し、受光された光線の強度に応じた画素値を有するデジタルのデータに変換する。画素値は、受光された光線の強度のデジタル値に対応している。画素値は、測光ポイントと波長帯域とに関連付けて管理される。測光用受光データは、複数の受光素子にそれぞれ対応する複数の画素値のデータの集合である。
【0021】
測光データ生成部4は、測光用受光データの画素値に基づいて、反応管22内の混合液の吸光度を計算する。吸光度が計算されると測光データ生成部4は、吸光度に基づいて、混合液に含まれる測定項目成分の濃度を計算する。典型的には、観測区間における画素値に基づいて濃度が算出される。観測区間は、予め設定されており、ある測光ポイントから他の測光ポイントまでの区間により規定される。これら吸光度のデータや濃度のデータをまとめて測光データと呼ぶことにする。すなわち、測光データ生成部4は、測光用受光データに基づいて、反応管22内の混合液の測光データを生成する。測光データは、測光ポイントに関連付けられる。測光データは、制御部2に供給される。
【0022】
第2受光部17は、反射/透過器14からの反射光を受光し、受光された反射光の強度に応じた受光データ(判定用受光データ)を測光ポイント毎に生成する。第2受光部17は、第2受光素子群171と第2収集部172とを有している。第2受光素子群171は、反射光の光路に垂直な垂直面上に1次元状又は2次元状に配列される複数の受光素子を有している。各受光素子は、受光された光線の強度に応じたアナログの電気信号を発生する。反射光は分光されていないので、受光された反射光の波長帯域は、受光位置に応じて異ならず同一である。例えば、受光素子は、フォトダイオードにより実現される。第2収集部172は、第2受光素子群171の各受光素子から電気信号を読み出し、受光された反射光の強度に応じた画素値を有するデジタルのデータに変換する。画素値は、測光ポイントに関連付けて管理される。判定用受光データは、複数の受光素子にそれぞれ対応する複数の画素値のデータの集合である。
【0023】
具体的には、第1受光部16と第2受光部17とは、300μmから1000μmまでの波長範囲に対応するイメージセンサが利用されると良い。本実施形態に係るイメージセンサとしては、例えば、裏面入射型CCD(charge coupled device)イメージセンサやCMOS(complementary metal oxide sensor)イメージセンサ、NMOS(n-channel metal oxide semiconductor)イメージセンサにより実現される。
【0024】
判定部5は、判定用受光データの画素値に応じて測光データの信頼性の有無を判定する。典型的には、判定部5による判定処理は、判定用受光データが生成される毎、すなわち、測光ポイント毎に繰り返される。判定結果のデータは、制御部2に供給される。
【0025】
記憶部6は、測光データ生成部4からの測光データや判定部5からの判定結果のデータを記憶する。同一の試料に関する測光データと判定結果のデータとは、関連付けて記憶される。
【0026】
操作部7は、オペレータからの入力デバイスを介した各種指令や情報入力を受け付け、受け付けた指令や入力に応じた操作信号を制御部2に供給する。入力デバイスとしては、キーボードやマウス、スイッチ等が適宜利用可能である。
【0027】
表示部8は、判定部5からの判定結果を所定のレイアウトで表示デバイスに表示する。また、表示部8は、測光データ生成部4からの測光データを表示デバイスに表示する。この際、表示部8は、判定部5により信頼性が無いと判定された測光データと信頼性が有ると判定された測光データとを視覚的に区別して表示する。表示デバイスとしては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0028】
制御部2は、上述のように、自動分析装置100の中枢として機能する。例えば、操作部7から測定開始指示の操作信号が入力されることを契機として制御部2は、測光機構3を制御する。制御部2は、測光データ生成部4からの測光データや判定部5からの判定結果のデータを記憶部6と表示部8とに供給する。制御部2は、記憶部6に記憶された測光データや判定結果のデータを読み出して表示部8に供給する。
【0029】
次に本実施形態に係る自動分析装置の詳細について説明する。まずは、光路上の異物について説明する。反応管22には、試料と試薬とが分注される。これは反応液と呼ばれている。反応液が測光に最低必要な量(最小液量)を分注した時、試料や試薬の液性や分注条件(分注速度等)により、反応液の上澄みに泡立ちが発生する。この時、図3に示すように、測光時に光路が泡にかかってしまう。また、反応管22内に試料と試薬とが分注された後、撹拌子により撹拌される。図4に示すように、撹拌により発生された気泡が反応管22の内側に付着する場合がある。また、図5に示すように、結露等により反応管22の外側、すなわち、恒温槽24の内壁に気泡が付着する場合もある。気泡は光の進行を妨げるので、気泡を通過した光は、気泡を通過しない光に比して光量が低下する。従って、気泡を通過した光では正しい測光データを得ることができない。このように、気泡は測光データの信頼性を低下させている。これは、反応管22内を浮遊しているフィブリンやゴミも同様である。本実施形態においては、気泡やフィブリン、ゴミをまとめて異物と呼ぶことにする。
【0030】
次に本実施形態に係る判定部5による判定処理の詳細について説明する。まずは、第2受光部17の第2受光素子群171が1次元配列の場合について説明する。
【0031】
図6は、1次元状に配列された複数の受光素子を有する第2受光素子群171を示す図である。図6に示すように、第2受光素子群171は、128チャンネル分の受光素子を有している。複数の受光素子は、その配列方向が反射/透過器14からの反射光の光路に垂直になるように配置される。なお、図6において紙面垂直方向が反射光の進行方向に一致する。複数の受光素子の配列方向は、反応管22の縦方向に対応する。すなわち、チャンネル番号に応じて、受光素子に照射された光が通過した反応管部分の高さが異なる。例えば、図6に示すように、5番目のチャンネルから123番目のチャンネルまでの受光素子に光が照射されたとする。この場合、123番目のチャンネルの受光素子に照射された光は、反応管22の上部を通過し、5番目のチャンネルの受光素子に照射された光は、反応管22の下部を通過したことになる。
【0032】
上述のように、画素値は、光の強度に対応している。すなわち、異物を通過した光が照射された受光素子に由来する画素値は、異物を通過していない光が照射された受光素子に由来する画素値よりも低い値を有する。判定部5は、このような光の画素値の性質を利用して、測光データの信頼性の有無を判定する。
【0033】
図7は、図6の場合における画素値(光強度)Iとチャンネル番号Chとの関係の一例を示す図である。図7のグラフの縦軸は画素値Iに規定され、横軸はチャンネル番号Chに規定されている。また、グラフの実線は光路上に異物が有る場合の画素値曲線を示し、点線は光路上に異物が無い場合の画素値曲線を示す。判定部5は、各測光ポイントにおいて、チャンネル毎に画素値が許容範囲内にあるか否かを判定する。許容範囲は、下限閾値Thlから上限閾値Thuまでの範囲に規定される。下限閾値Thlは、例えば、光路に異物が無い場合に画素値が取りうる最低値と異物が有る場合に画素値が取りうる最高値との間に設定される。上限閾値Thuは、例えば、光路に異物が無い場合に画素値が取りうる最高値に設定される。下限閾値Thlと上限閾値Thuとは、経験に基づいて予め設定されている。下限閾値Thlより低い画素値と上限閾値Thuより高い画素値とは、判定部5により許容範囲に無いと判定される。一方、下限閾値Thlより高く、且つ上限閾値Thuより低い画素値は、判定部5により許容範囲に有ると判定される。
【0034】
なお光が照射されていない受光素子に由来する画素値は、当然に許容範囲内に分布しない。しかし、この受光素子への光路に異物があると判定されてはならない。そのため、光が照射されていない受光素子に由来する画素値は、判定対象から除外されるとよい。図7の場合、チャンネル番号1から4、及びチャンネル番号124から128の受光素子が判定対象から除外されるとよい。具体的には、第3閾値よりも低い画素値を有する受光素子が判定対象から除外されると良い。第3閾値は、反射光が照射されない受光素子に由来する画素値(暗電流に由来する画素値)が有しうる最高値に設定されるとよい。
【0035】
例えば、図7の場合、チャンネル番号5からChl−1まで、及びチャンネル番号Chuから123までの受光素子が許容範囲内に有ると判定され、チャンネル番号ChlからChuまでの受光素子が許容範囲内に無いと判定される。この場合、チャンネル番号ChlからChuまでの受光素子への光路中に異物が有ることを意味する。ここで、異物が無い場合の画素値曲線から極端に外れた画素値を特異点と呼ぶことにする。判定部5は、画素値が許容範囲内に有るか否かを判定することにより特異点を検出している。画素値曲線に特異点がある場合、特異点が検出された受光素子への光路上に異物が有ると判定され、画素値曲線に特異点が無い場合、反射光全体の光路上に異物が無いと判定される。判定部5は、光路上に異物が有る場合、測光データに信頼性が無く、光路上に異物が無い場合、測光データに信頼性が有ると判定する。
【0036】
次に、第2受光部17の第2受光素子群171が2次元配列の場合について説明する。
【0037】
図8は、2次元状に配列された複数の受光素子を有する第2受光素子群171を示す図である。図8に示すように、第2受光素子群171は、m×nチャンネル分の受光素子を有している。ここでm行n列のチャンネルをPm,nと表記することにする。m×n個の受光素子は、その配列面が反射/透過器14からの反射光の光路に垂直になるように配置される。一方の配列方向(例えば、行方向)は反応管の縦方向に対応し、他方の配列方向(例えば、列方向)は反応管の横方向に対応する。なお、図8の紙面垂直方向が反射光の進行方向に一致する。また、図8に示すように、チャンネル番号Pm1,n1からPm6,n3までの18個の受光素子に光が照射されたとする。
【0038】
第2受光素子群171が2次元配列の場合において判定部5は、1次元配列の場合と同様に信頼性の有無を判定可能である。例えば、判定部5は、受光素子毎に画素値が許容範囲内にあるか否かを判定する。そして判定部5は、画素値が許容範囲内にある場合、受光素子への光路上に異物がないと判定する。画素値が許容範囲内にない場合、判定部5は、受光素子への光路上に異物があると判定する。
【0039】
なお受光素子毎に光路上の異物の有無を判定する必要はない。例えば、行毎又は列毎に既定の許容範囲内にあるか否かを判定してもよい。例えば、図9に示すように、チャンネル番号Pa,AからPe,Eまでの25個の受光素子に注目する。チャンネル番号Pd,Cの受光素子の画素値が2I、他の24個の受光素子の画素値が3Iであるとする。
【0040】
まず判定部5は、列又は行毎に画素値の平均値を算出する。例えば判定部5は、図9に示すように、列方向に沿って画素値を積算し、積算対象の受光素子数(図9の場合5)で積算値を除する。これにより平均値が算出される。例えば、a、b、c、e行の平均値は3I、d行の平均値は2.8Iとなる。次に判定部5は、平均値が既定の許容範囲内にあるか否かを判定する。許容範囲内にある場合、判定部5は、その行に属する受光素子への光路上に異物がないと判定し、許容範囲内にない場合、その行に属する受光素子への光路上に異物があると判定する。図9の場合、チャンネル番号Pd,Cの画素値のみ他の画素値よりも低いので、d行の平均値は、他の行の平均値よりも低い。従って判定部5は、d行の平均値は許容範囲外であり、d行に属する受光素子への光路上に異物があると判定する。一方、判定部5は、他の行の平均値は許容範囲内であり、他の行に属する受光素子への光路上に異物がないと判定する。列毎に画素値を積算する場合も同様に判定部5は、平均値が許容範囲内にあるか否かを判定し、許容範囲内にある場合、その列に属する受光素子への光路上に異物がないと判定し、許容範囲内にない場合、その列に属する受光素子への光路上に異物があると判定する。
【0041】
以上で受光素子の配列態様に応じた判定処理の説明を終了する。判定結果のデータは、同一の測光ポイントに関する測光データに関連付けて記憶部6に記憶される。上述のように1つの測定項目において測光データは、複数の測光ポイントの各々において生成される。従って、一つの測定項目に関する複数の測光ポイントの測光データは、まとめて管理される。
【0042】
なお、信頼性の有無の判定処理は、各チャンネルの画素値(又は平均値)が閾値範囲内にあるか否かの判定のみに限定されない。例えば、画素値曲線を構成する複数の画素値の統計指標と閾値との大小関係により信頼性の有無が判定されてもよい。統計指標としては、標準偏差や分散等が利用される。統計指標の算出に利用される標本(画素値)は、例えば、1つの測光ポイントに属し、光が照射された受光素子に関する画素値に設定される。具体的には、標準偏差や分散が閾値よりも低い場合、判定部5は、光路上に異物がないと判定し、標準偏差や分散が閾値よりも高い場合、光路上に異物があると判定する。
【0043】
また、判定部5は、第2受光部17からの画素値曲線と標準的な画素値曲線との差分に基づいて信頼性の有無を判定してもよい。なお標準的な画素値曲線は、例えば、健常者に関する画素値曲線に基づいて算出される画素値曲線であり、例えば、複数の健常者に関する画素値曲線の平均値曲線により規定される。この場合、判定部5は、第2受光部17からの画素値曲線と標準的な画素値曲線との差分が既定の許容範囲にあるか否かを判定する。上述のように、判定部5は、差分が許容範囲内にある場合、光路上に異物がないと判定し、許容範囲内にない場合、光路上に異物があると判定する。
【0044】
このように判定処理が行われると表示部8は、判定部5による判定結果を表示する。判定結果の表示は、例えば、観測区間内の測光データ(吸光度や測定項目の濃度)の表示中になされる。具体的には、表示部8は、光路上に異物が有ると判定された場合、測光データに信頼性が無いことをオペレータに示すために、測光データに異常マークが付される。異常マークが測光データに付されることにより、オペレータは、再検フラグを立てて、その測光データに対応する測定項目を再測定するための指示をすることができる。この際、表示部8は、判定処理に利用された画素値曲線を表示してもよい。画素値曲線を観察することでオペレータは、許容範囲内になり画素値を有する受光素子のチャンネル番号を特定することができる。従ってオペレータは、反応管や恒温槽上のどの位置に異物があるかを特定することができる。
【0045】
上記構成により本実施形態に係る自動分析装置100は、測光データ生成のための光と同一の光源からの光を利用して、光路上の異物の有無を判定している。これを実現するため、反応管22と分光器15との間に反射/透過器14が設置されている。反射/透過器14からの透過光が測光データ生成のため分光器15を介して第1受光部16に入射され、反射/透過器14からの反射光が異物の有無の判定のため第2受光部17に直接的に入射される。すなわち、第2受光部17への入射光(反射/透過器14からの反射光)は、分光されていない。従って異物の特性(吸収波長等)がわからない場合、異物の特性によらず異物の検知が可能となる。判定部5は、反射光の強度に基づいて光路上の恒温槽や反応管に異物があるか否かを判定する。光路上に異物が有る場合、異物が有ると判定された恒温槽や反応管を通過した光に由来する測光データに信頼性が無いといえる。この場合、オペレータは、信頼性がない測光データに再検フラグを立てて、再検を行うことができる。
【0046】
かくして本実施形態に係る自動分析装置は、測光データの信頼性を向上することができる。
【0047】
(変形例)
本実施形態の変形例に係る自動分析装置は、反応管内の混合液の撹拌状態を判定する。以下、変形例に係る自動分析装置について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0048】
図10は、変形例に係る自動分析装置の構成を示す図である。図10に示すように、変形例に係る測光機構3´は、反射/透過器14と第2受光素子群171との間に光学フィルタ18を設けている。光学フィルタ18は、特定の波長帯域に属する光のみを通過させる特性を有している。第2受光部17は、光学フィルタ18を通過した反射光を受光し、受光された反射光の強度に応じた画素値を有する判定用受光データを生成する。判定部5は、生成された判定用受光データに基づいて反応管22内の混合液の撹拌状態を判定する。
【0049】
以下、判定部5による混合液の撹拌状態の判定処理について説明する。上述のように反応管22に分注された試料と試薬との混合液は撹拌子62により撹拌される。混合液の撹拌度合いは、化学反応の進行度合いに影響を及ぼす。すなわち、混合液の撹拌度合いにより、同一種類の試料及び試薬からなる混合液であっても、その混合液が吸収する光の波長帯域が変化する。換言すれば、混合液の撹拌度合いにより、第2受光素子群171への入射光が属する波長帯域が異なる。撹拌状態の良好な混合液を透過する光の波長帯域が既知の場合、判定部5は、その波長帯域に属する反射光の強度に基づいて、混合液の撹拌状態を判定することができる。
【0050】
撹拌状態の良好な混合液が透過可能な波長帯域に属する光のみを、光学フィルタ18は、透過させる。この波長帯域は、測定項目、すなわち、試薬の種類に応じて切替られる。光学フィルタは、オペレータにより手動で切替えられてもよいし、機械的な自動切替機構により切替えられてもよい。
【0051】
例えば、判定部5は、本実施形態と同様に、画素値が既定の許容範囲に属するか否かを判定する。許容範囲は、下限閾値と上限閾値との間に規定される。下限閾値は撹拌状態が良好な混合液を透過した反射光に由来する画素値が有しうる最低値に規定され、上限閾値は撹拌状態が良好な混合液を透過した反射光に由来する画素値が有しうる最高値に規定される。下限閾値と上限閾値とは、試薬の種類に応じて設定される。画素値が許容範囲内にある場合、判定部5は、混合液の撹拌状態は良好であると判定する。混合液の撹拌状態が良好である場合、その混合液の測光データの信頼性は高い。画素値が許容範囲内にない場合、判定部5は、混合液の撹拌状態は良好でないと判定する。混合液の撹拌状態が良好でない場合、その混合液の測光データの信頼性は低い。判定結果のデータは制御部2を介して表示部8に供給される。表示部8は、混合液の撹拌状態が良好でないと判定された場合、その旨のメッセージ(例えば、「良く撹拌されていません。測光データの信頼性は低いです。」)を表示する。また、表示部8は、混合液の撹拌状態が良好でないと判定された場合、その旨のメッセージ(例えば、「良く撹拌されています。測光データの信頼性は高いです。」)を表示する。
【0052】
なお、撹拌状態の良し悪しの判定方法は、画素値と閾値範囲との比較のみに限定されない。撹拌状態の良し悪しは、本実施形態と同様に、画素値の統計指標や、画素値と標準的な画素値との差分により判定されてもよい。
【0053】
かくして本実施形態の変形例に係る自動分析装置は、測光データの信頼性を向上することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…測光部、2…制御部、3…測光機構、4…測光データ生成部、5…判定部、6…記憶部、7…操作部、8…表示部、11…光源、12…レンズ、13…レンズ、14…反射/透過器、15…分光器、16…第1受光部、17…第2受光部、18…光学フィルタ、22…反応管、24…恒温槽、161…第1受光素子群、162…第1収集部、171…第2受光素子群、172…第2収集部、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発生する光源と、
前記光源から発生され、試料と試薬との混合液が収容された反応管を透過した光の第1の部分光を透過し、前記光のうちの第2の部分光を反射する反射/透過器と、
前記反射/透過器からの前記第1の部分光を波長毎に分解する分光器と、
前記分光器からの前記第1の部分光を受光し、前記受光された第1の部分光の強度に応じた第1の受光データを発生する第1受光部と、
前記第1の受光データに基づいて前記混合液の吸光度に関する測光データを生成する生成部と、
前記反射/透過器からの前記第2の部分光を受光し、前記受光された第2の部分光の強度に応じた第2の受光データを発生する第2受光部と、
前記第2の受光データの強度に応じて前記測光データの信頼性の有無を判定する判定部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記第2受光部は、前記第2の部分光の光路に垂直な垂直面上に1次元状又は2次元状に配列された複数の受光素子を有し、前記複数の受光素子の各々は、前記反射/透過器からの前記第2の部分光のうちの部分光を受光し、前記受光された部分光の強度に応じたサブ受光データを発生し、
前記判定部は、前記サブ受光データの強度に応じて前記測光データの信頼性の有無を判定する、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記サブ受光データの強度が既定の閾値範囲にない場合、前記光路中に異物があると判定し、前記サブ受光データの強度が前記既定の閾値範囲にある場合、前記光路中に異物が無いと判定する、請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の受光素子の配列方向に沿う前記サブ受光データの強度と正常な強度とに基づいて、前記光路中に異物があるか否かを判定する、請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記第1の部分光は、前記第2の部分光よりも光量が多い、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記反射/透過器と前記第2受光部との間の前記第2の部分光の光路上に配置された光学フィルタをさらに備え、前記光学フィルタは、特定の波長帯域に属する光のみを透過する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項1】
光を発生する光源と、
前記光源から発生され、試料と試薬との混合液が収容された反応管を透過した光の第1の部分光を透過し、前記光のうちの第2の部分光を反射する反射/透過器と、
前記反射/透過器からの前記第1の部分光を波長毎に分解する分光器と、
前記分光器からの前記第1の部分光を受光し、前記受光された第1の部分光の強度に応じた第1の受光データを発生する第1受光部と、
前記第1の受光データに基づいて前記混合液の吸光度に関する測光データを生成する生成部と、
前記反射/透過器からの前記第2の部分光を受光し、前記受光された第2の部分光の強度に応じた第2の受光データを発生する第2受光部と、
前記第2の受光データの強度に応じて前記測光データの信頼性の有無を判定する判定部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記第2受光部は、前記第2の部分光の光路に垂直な垂直面上に1次元状又は2次元状に配列された複数の受光素子を有し、前記複数の受光素子の各々は、前記反射/透過器からの前記第2の部分光のうちの部分光を受光し、前記受光された部分光の強度に応じたサブ受光データを発生し、
前記判定部は、前記サブ受光データの強度に応じて前記測光データの信頼性の有無を判定する、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記サブ受光データの強度が既定の閾値範囲にない場合、前記光路中に異物があると判定し、前記サブ受光データの強度が前記既定の閾値範囲にある場合、前記光路中に異物が無いと判定する、請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の受光素子の配列方向に沿う前記サブ受光データの強度と正常な強度とに基づいて、前記光路中に異物があるか否かを判定する、請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記第1の部分光は、前記第2の部分光よりも光量が多い、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記反射/透過器と前記第2受光部との間の前記第2の部分光の光路上に配置された光学フィルタをさらに備え、前記光学フィルタは、特定の波長帯域に属する光のみを透過する、請求項1記載の自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−141246(P2012−141246A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−656(P2011−656)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
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