説明

自動分析装置

【課題】液体の分注精度の低下を防ぐことができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】第1試薬を収容する試薬容器6から第1試薬を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ70と、第1試薬分注プローブ70下端部の上方から下端部に向けて気体を噴射する第1噴射ノズル71とを備え、第1噴射ノズル71は、第1試薬分注プローブ70が第1試薬を吸引するために試薬容器6内の第1試薬上方に位置しているとき、気体を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体を分注して分析を行う分注プローブを備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の測光部で光学的に測定することにより、被検試料に含まれる各検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、各被検試料の入った試料容器がサンプラに保持され、各検査項目の試薬が入った試薬容器が試薬トレイに保持される。そして、サンプラが試料容器を試料の吸引位置へ移動し、サンプル分注プローブが吸引位置の試料容器から被検試料を吸引して反応容器に吐出する分注を行う。また、試薬トレイが試薬容器を試薬の吸引位置へ移動し、試薬分注プローブが吸引位置の試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注を行う。
【0004】
ところで、試料容器内の被検試料及び試薬容器内の試薬の各液体を検出する各検出器を設け、各分注プローブが各液体の吸引のために各容器内へ移動し、各液体をこの液体の液面と各分注プローブ先端との接触により検出し、各液体を検出した位置から各液体の吸引が可能な所定の深さに達した位置で各分注プローブを停止させる。これにより、各分注プローブの外壁を介しての被検試料間及び試薬間の汚染を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−31174号公報
【特許文献2】特開2010−96640号公報
【特許文献3】特開2009−162734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、界面活性剤を含有して泡立ち易い試薬等の液体の場合、その液体を液面上に発生した泡と各分注プローブ先端との接触により検出し、液面から所定の深さに達した位置で各分注プローブを停止させることができないため、所定量の各液体を吸引することができず各液体の分注精度が低下する問題がある。
【0007】
実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので、液体の分注精度の低下を防ぐことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、実施形態の自動分析装置は、試料及び試薬の各液体を反応容器へ分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、前記液体を収容する容器から前記液体を吸引して前記反応容器内へ吐出する開口を下端部に有する移動可能な分注プローブと、前記容器内の液体を吸引するために、その液体の上方に位置している前記分注プローブの下端部の上方から、前記下端部に向けて気体を噴射する噴射ノズルとを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施形態に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】実施形態に係る第1試薬分注プローブ部の構成の一例を示す図。
【図4】実施形態に係る第1試薬分注プローブ部が第1試薬を吸引するために停止する位置を示す図。
【図5】実施形態に係る第1試薬分注プローブ部が第1試薬を吸引するために停止する位置を示す図。
【図6】実施形態に係る第1試薬分注工程を示すフローチャート。
【図7】実施形態に係る第1試薬分注工程の各ステップにおける第1試薬分注プローブ部の位置を示す図。
【図8】実施形態に係る第1試薬分注工程の各ステップにおける第1試薬分注プローブ部の位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料と各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24と、分析部24における各分析ユニットの駆動及び制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0012】
また、自動分析装置100は、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データを生成するデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0013】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料や被検試料等の試料を収容する試料容器17と、試料容器17を保持するサンプルディスク5とを備えている。また、試料に含まれる検査項目の成分と反応する成分を含有する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、試薬容器6を格納する試薬庫1と、試薬庫1に格納された試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aとを備えている。また、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、試薬容器7を格納する試薬庫2と、試薬庫2に格納された試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aとを備えている。また、円周上に配置された複数の反応容器3と、反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0014】
また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16を移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料を、この試料とサンプル分注プローブ16の下端が接触したときの例えば静電容量の変化により検出する試料検出器16aと、サンプル分注プローブ16の試料と接触した部分を洗浄する洗浄槽16bとを備えている。
【0015】
また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬を吸引して試料が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ部14と、第1試薬分注プローブ部14を移動可能に保持する第1試薬分注アーム8とを備えている。また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬をこの第1試薬と第1試薬分注プローブ部14の下端が接触したときの静電容量の変化により検出する第1試薬検出器14aと、第1試薬分注プローブ部14の第1試薬と接触した部分を洗浄する洗浄槽14bとを備えている。
【0016】
また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ部15と、第2試薬分注プローブ部15を移動可能に保持する第2試薬分注アーム9とを備えている。また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬をこの第2試薬と第2試薬分注プローブ部15の下端が接触したときの静電容量の変化により検出する第2試薬検出器15aと、第2試薬分注プローブ部15の第2試薬と接触した部分を洗浄する洗浄槽15bとを備えている。
【0017】
また、反応容器3内の混合液に光を照射して光学的に測定する測光部13と、測光部13で測定を終了した反応容器3内を洗浄する反応容器洗浄ユニット12とを備えている。そして、測光部13は、回転移動して光路を横切る反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の試料及び第1試薬の混合液や、試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を透過した光を検査項目の波長毎に検出する。そして、検出した検出信号を処理してデジタル信号で表される標準データや被検データを生成し、生成した標準データや被検データをデータ処理部30に出力する。
【0018】
分析制御部25は、分析部24の各分析ユニットを駆動する機構を有する機構部26と、機構部26の各機構を制御する制御部27とを備えている。そして、機構部26は、サンプルディスク5、試薬ラック1a、及び試薬ラック2aを夫々回動する機構、並びに反応ディスク4を回転する機構を備えている。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、及び第2試薬分注アーム9を夫々回動する回動機構及び上下移動する上下移動機構を備えている。また、反応容器洗浄ユニット12を上下移動する機構等を備えている。
【0019】
制御部27は、機構部26のサンプルディスク5、試薬ラック1a、試薬ラック2a、反応ディスク4、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、反応容器洗浄ユニット12等の各分析ユニットを駆動する機構を制御する制御回路を備えている。そして、各第1及び第2試薬分注アーム8,9の回動機構及び上下移動機構を制御して、各第1及び第2試薬分注プローブ部14,15を移動させる。
【0020】
制御部27の第1試薬分注アーム8の制御回路は、第1試薬分注プローブ部14を、回動機構により上死点の高さで試薬庫1、反応ディスク4、及び洗浄槽14bの各上停止位置へ移動させる。また、上下移動機構に下移動駆動パルスを供給して各上停止位置から下に移動させ、様々な位置で停止させる。
【0021】
ここで、第1試薬の分注における吸引では、第1試薬分注プローブ部14を試薬庫1の上停止位置から下へ移動させる。次いで、第1試薬検出器14aからの信号に基づいて、試薬容器6内の第1試薬が第1試薬検出器14aにより検出される位置から、所定の距離下方へ移動させた位置で停止させる。そして、その位置で停止した第1試薬分注プローブ部14により、第1試薬の吸引が行われる。
【0022】
制御部27の第2試薬分注アーム9の制御回路は、第2試薬分注プローブ15を、回動機構により上死点の高さで試薬庫2、反応ディスク4、及び洗浄槽15bの各上停止位置へ移動させる。また、上下移動機構に下移動駆動パルスを供給して各上停止位置から下に移動させ、様々な位置で停止させる。
【0023】
ここで、第2試薬の分注における吸引では、第2試薬分注プローブ部15を試薬庫2の上停止位置から下へ移動させる。そして、第2試薬検出器15aからの検出信号に基づいて、試薬容器7内の第2試薬が第2試薬検出器15aにより検出される位置から、所定の距離下方へ移動させた位置で停止させる。そして、その位置で停止した第2試薬分注プローブ部15により、第2試薬の吸引が行われる。
【0024】
図1に示したデータ処理部30は、分析部24の測光部13から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0025】
演算部31は、測光部13から出力された標準データ及びこの標準データの標準試料に対して予め設定された標準値から、標準値と標準データの関係を表す検量データを生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0026】
また、測光部13から出力された被検データに対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出し、読み出した検量データを用いて測光部13より出力された被検データから、濃度値や活性値として表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0027】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0028】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0029】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、検量データや分析データを表示する。また、自動分析装置100で各検査項目を分析するための分析パラメータである反応容器3内に吐出させる試料、第1試薬、及び第2試薬の各液体の吐出量等を設定する分析パラメータ設定画面を表示する。また、被検試料毎にこの被検試料を識別する氏名やID等の識別情報及び分析パラメータ設定画面で設定された検査項目の中から検査対象となる検査項目を選択して設定するための検査項目設定画面を表示する。
【0030】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータ、被検試料の識別情報及び検査項目、被検試料毎に識別情報及び検査対象となる検査項目を設定するための入力を行う。
【0031】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50からの操作により入力された各検査項目の分析パラメータの情報、被検試料毎の識別情報及び検査項目の情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0032】
以下、図1乃至図8を参照して、分析部24における第1及び第2試薬分注プローブ部14,15の構成、並びに第1及び第2試薬を分注する第1及び第2試薬分注工程について説明する。そして、図3は、第1試薬分注プローブ部14の構成の一例を示す図である。また、図4及び図5は、第1試薬分注プローブ部14が第1試薬を吸引するために停止する位置を示す図である。また、図6は、第1試薬分注工程を示すフローチャートである。また、図7及び図8は、第1試薬分注工程の各ステップにおける第1試薬分注プローブ部14の位置を示す図である。
【0033】
先ず、第1試薬分注プローブ部14の構成について説明する。
図3において、第1試薬分注プローブ部14は、試薬容器6内の第1試薬を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ70と、第1試薬分注プローブ70下端部の上方からその下端部に向けて空気等の気体を噴射する第1噴射ノズル71とにより構成される。
【0034】
そして、第1試薬分注プローブ部14は、上端部近傍が第1試薬分注アーム9に支持されている。また、第1試薬分注プローブ70は、上端部がチューブ18を介して第1試薬分注プローブ70に第1試薬の吸引及び吐出を行わせる分注ポンプ19に接続されている。また、第1噴射ノズル71は、上端部がチューブ20を介して第1噴射ノズル71に噴射させる気体を供給する供給ポンプ21に接続されている。
【0035】
第1試薬分注プローブ70は上端及び下端に開口を有する管状を成し、分注ポンプ19の吸引及び吐出動作により下端の開口から第1試薬を吸引及び吐出する。また、第1噴射ノズル71は、第1試薬分注プローブ70の上端部及び下端部を除く部分を包囲して離間配置され、上端部と第1試薬分注プローブ70の間が封止されている。そして、上端部に設けられ、供給ポンプ21から供給された気体が流入する流入口711を有する。また、第1試薬分注プローブ70との間に軸方向に沿って設けられ、流入口711から流入した気体が下方に流動する流路712を有する。更に、下端部と第1試薬分注プローブ70の間に設けられ、流路712を流動した気体が第1試薬分注プローブ70下端部に向けて噴出する噴出口713を有する。
【0036】
なお、第1試薬分注プローブ70下端部の上方から下端部に向けて気体を噴射する噴射ノズルを、第1試薬分注プローブ70外面の一部に軸方向に沿って配置するように実施してもよい。
【0037】
そして、第1試薬分注プローブ部14は、第1試薬の吸引を行うために、ホームポジションから移動して試薬庫1の上停止位置で停止した後に下方向へ移動する。そして、第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71は、気体を噴射する。
【0038】
ここで、試薬庫1の上停止位置の下方に停止した試薬ラック1aに保持される試薬容器6内で第1試薬の液面上に泡が発生していない場合、図4(a)に示すように、第1試薬分注プローブ70の下端が試薬容器6内の第1試薬液面と接触して第1試薬検出器14aに検出される位置から、分析パラメータとして設定可能な最大の吐出量に応じた量の第1試薬の吸引が可能となる距離H1下方へ移動した第1試薬吸引位置P1で停止する。
【0039】
また、試薬ラック1aの回動動作により試薬容器6内で泡を発生し易い界面活性剤等を含有する第1試薬の液面上に泡が発生している場合、図4(b)に示すように、第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71が第1試薬分注プローブ70下方の泡を排除する。そして、第1試薬分注プローブ70の下端が試薬容器6内の露出した第1試薬液面と接触して第1試薬検出器14aに検出される位置から、距離H1下方へ移動した第1試薬吸引位置P1で停止する。
【0040】
このように、第1試薬分注プローブ70が第1試薬を吸引するために試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71から気体を噴射させることにより、試薬容器6内で発生した第1試薬分注プローブ70下方の泡を排除して第1試薬液面を露出させることが可能となり、第1試薬分注プローブ70を第1試薬吸引位置P1で停止させることができる。これにより、分析パラメータとして設定された吐出量に応じた量の第1試薬を吸引することができ、第1試薬の泡の影響による分注精度の低下を防ぐことができる。
【0041】
なお、第1噴射ノズル71により気体の噴射が行われないと、図5に示すように、第1試薬分注プローブ70の下端が図4(b)に示した試薬容器6内の第1試薬液面上の泡と接触して第1試薬検出器14aに検出される位置から、距離H1下方へ移動した第1試薬吸引位置P1よりも上方の位置P2で停止する。位置P2で停止した第1試薬分注プローブ70は、最大の吐出量に応じた量の第1試薬を吸引することができないため、設定された吐出量が多いと、設定された吐出量の第1試薬を反応容器3内へ吐出することができない問題が発生する。
【0042】
第1試薬吸引位置P1で停止した後、第1試薬分注プローブ70は、試薬容器6内の第1試薬を吸引する。また、第1噴射ノズル71は、第1試薬分注プローブ70が第1試薬を吸引しているとき、気体の噴射を停止している。
【0043】
第1試薬を吸引した後、第1試薬分注プローブ部14は、第1試薬吸引位置P1から上方向へ移動する。そして、第1噴射ノズル71は、第1試薬を吸引した第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、気体を噴射する。
【0044】
このように、第1試薬を吸引した第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71から気体を噴射させることにより、第1試薬分注プローブ70下端部の外壁に付着する第1試薬を取り除くことができる。これにより、第1試薬分注プローブ70が反応容器3内へ吐出する第1試薬に、第1試薬分注プローブ70下端部の外壁に付着した第1試薬が紛れ込んで、第1試薬の分注精度が低下するのを防ぐことができる。
【0045】
なお、第2試薬分注プローブ部15は、第1試薬分注プローブ部14と同様に、試薬容器7内の第2試薬を下端に設けた開口から吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ及びこの第2試薬分注プローブ下端部の上方からその下端部に向けて気体を噴射する第2噴射ノズルにより構成される。そして、第2噴射ノズルは、第2試薬分注プローブが第2試薬を吸引するために試薬容器7内の第2試薬の上方に位置しているとき、気体を噴射する。また、第2試薬分注プローブが第2試薬を吸引しているとき、気体の噴射を停止している。更に、第2試薬を吸引した第2試薬分注プローブ70が試薬容器7内の第2試薬の上方に位置しているとき、気体を噴射する。
【0046】
このように、第2試薬分注プローブが第2試薬を吸引するために試薬容器7内の第2試薬の上方に位置しているとき、第2噴射ノズルから気体を噴射させることにより、試薬容器7内で発生した第2試薬分注プローブ下方の泡を排除して第2試薬液面を露出させることが可能となり、第2試薬分注プローブを下端が試薬容器7内の露出した第2試薬液面と接触して第2試薬検出器15aに検出される位置から、距離H1下方へ移動した第2試薬吸引位置で停止させることができる。これにより、分析パラメータとして設定された吐出量に応じた量の第2試薬を吸引することができ、第2試薬の泡の影響による分注精度の低下を防ぐことができる。
【0047】
また、第2試薬を吸引した第2試薬分注プローブが試薬容器7内の第2試薬の上方に位置しているとき、第2噴射ノズルから気体を噴射させることにより、第2試薬分注プローブ下端部の外壁に付着する第2試薬を取り除くことができる。これにより、第2試薬分注プローブが反応容器3内へ吐出する第2試薬に、第2試薬分注プローブ下端部の外壁に付着する第2試薬が紛れ込んで、第2試薬の分注精度が低下するのを防ぐことができる。
【0048】
次に、第1試薬分注工程について説明する。
図6は、第1試薬分注工程を示したフローチャートである。この第1試薬分注工程S1では、第1試薬分注プローブ部14は、ホームポジションである例えば洗浄槽14bの上停止位置から水平方向へ移動して、試薬庫1の上停止位置で停止する(ステップS11)。
【0049】
試薬庫1の上停止位置で停止した後、第1試薬分注プローブ部14は、第1試薬を吸引するために下方向へ移動する。そして、第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71は、供給ポンプ21から供給される気体を噴射する(ステップS12)。
【0050】
ここで、第1噴射ノズル71は、図7(a)に示すように、例えば試薬庫1の上停止位置から下方向である矢印L1方向への移動の開始に応じて気体の噴射を開始する。次いで、図7(b)に示すように、L1方向へ移動しているとき、気体を噴射し続ける。そして、試薬容器6内の第1試薬が第1試薬検出器14aに検出される位置で気体の噴射を停止する。
【0051】
第1試薬分注プローブ部14は、図7(c)に示すように、第1試薬分注プローブ70の下端が試薬容器6内の第1試薬液面と接触して第1試薬検出器14aに検出される位置から、距離H1下方へ移動した第1試薬吸引位置P1で停止する(ステップS13)。
【0052】
このように、第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71から気体を噴射させることにより、試薬容器6内で発生した第1試薬分注プローブ70下方に位置する第1試薬液面上の泡を排除することができる。そして、第1試薬分注プローブ70下端が試薬容器6内の露出した第1試薬液面と接触することにより、第1試薬分注プローブ70を第1試薬吸引位置P1で停止させることができる。
【0053】
第1試薬分注プローブ70は、第1試薬吸引位置P1で試薬容器6内の第1試薬を吸引する(ステップS14)。
【0054】
このように、第1試薬分注プローブ70を第1試薬吸引位置P1で停止させることにより、分析パラメータとして設定した吐出量に応じた量の第1試薬を吸引することが可能となり、第1試薬の泡による分注精度の低下を防ぐことができる。
【0055】
第1試薬を吸引した後、第1試薬分注プローブ部14は、第1試薬吸引位置P1から上方向である矢印L2方向へ移動する。そして、第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71は、供給ポンプ21から供給される気体を噴射する(ステップS15)。
【0056】
ここで、第1噴射ノズル71は、図8(a)に示すように、第1試薬分注プローブ70の下端が試薬容器6内の第1試薬液面から離間するときの第1試薬検出器14aの信号の変化に応じて気体の噴射を開始する。次いで、図8(b)に示すように、第1試薬分注プローブ70の下端部が試薬容器6内をL2方向へ移動していとき、気体を噴射し続ける。そして、図8(c)に示すように、第1試薬分注プローブ70下端部が試薬容器6から出る位置P3で気体の噴射を停止する。
【0057】
このように、第1試薬を吸引した第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71から気体を噴射させることにより、第1試薬分注プローブ70下端部の外壁に付着する第1試薬を取り除くことができる。
【0058】
なお、第1試薬分注プローブ70が第1試薬を吸引した後、第1試薬分注プローブ70の下端が試薬容器6内の第1試薬液面から離間する前に第1噴射ノズル71気体の噴射を開始させるように実施してもよい。これにより、第1試薬分注プローブ70下端部の外壁に付着する第1試薬をより強力に取り除くことができる。
【0059】
試薬庫1の上停止位置で停止した後、第1試薬分注プローブ部14は、試薬庫1の上停止位置から移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する。そして、第1試薬分注プローブ70は、反応ディスク4の上停止位置の下方に停止した反応容器3内へ第1試薬を吐出する(ステップS16)。
【0060】
第1試薬を吐出した後、第1試薬分注プローブ部14は、反応ディスク4の上停止位置から移動して洗浄槽14b上停止位置で停止する。洗浄槽14bの上停止位置で停止した後、下方向へ移動して第1試薬分注プローブ70の下端部が洗浄槽14b内へ進入下洗浄位置で停止する。そして、洗浄槽14bで第1試薬分注プローブ70の第1試薬に接触した内外面の洗浄を行う(ステップS17)。
【0061】
洗浄が行われた後、第1試薬分注プローブ部14は、移動して次の第1試薬の分注に備えて、ホームポジションで停止する(ステップS18)。
【0062】
なお、第2試薬分注工程における各ステップは、第1試薬分注工程S1の各ステップと同様に構成され、第2噴射ノズルは第1噴射ノズル71と同様のタイミングで動作するので、第2試薬分注工程の説明を省略する。
【0063】
以上述べた実施形態によれば、第1試薬の吸引及び吐出を行う第1試薬分注プローブ70下端部の上方からその下端部に向けて気体を噴射する第1噴射ノズル71を設け、第1試薬分注プローブ70が第1試薬を吸引するために試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71から気体を噴射させることにより、試薬容器6内で発生した泡を排除して第1試薬分注プローブ70を第1試薬吸引位置P1で停止させることができる。これにより、分析パラメータとして設定された吐出量に応じた量の第1試薬を吸引することが可能となり、第1試薬の泡による分注精度の低下を防ぐことができる。
【0064】
また、第1試薬を吸引した第1試薬分注プローブ70が試薬容器6内の第1試薬の上方に位置しているとき、第1噴射ノズル71から気体を噴射させることにより、第1試薬分注プローブ70下端部の外壁に付着した第1試薬を取り除くことができる。これにより、第1試薬分注プローブ70が反応容器3内へ吐出する第1試薬に第1試薬分注プローブ70下端部の外壁に付着した第1試薬が紛れ込んで、第1試薬の分注精度が低下するのを防ぐことができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
6 試薬容器
9 第1試薬分注アーム
14 第1試薬分注プローブ部
18,20 チューブ
19 分注ポンプ
21 供給ポンプ
70 第1試薬分注プローブ
71 第1噴射ノズル
711 流入口
712 流路
713 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料及び試薬の各液体を反応容器へ分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、
前記液体を収容する容器から前記液体を吸引して前記反応容器内へ吐出する開口を下端部に有する移動可能な分注プローブと、
前記容器内の液体を吸引するために、その液体の上方に位置している前記分注プローブの下端部の上方から、前記下端部に向けて気体を噴射する噴射ノズルとを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記容器内の液体を、前記分注プローブの下端部との接触により検出する検出器を有し、
前記噴射ノズルは、前記分注プローブが前記容器内の液体の上方から下方向へ移動して前記検出器により検出されたとき、気体の噴射を停止し、
前記分注プローブは、前記検出器により検出される位置から所定の距離下方へ移動した吸引位置で停止した後、前記容器内の液体を吸引することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記噴射ノズルは、前記分注プローブが前記容器内の液体を吸引しているとき、気体の噴射を停止していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記噴射ノズルは、前記容器内の液体を吸引した前記分注プローブがその液体の上方に位置しているとき、気体を噴射することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記噴射ノズルに気体を供給する供給部を有し、
前記噴射ノズルは、前記分注プローブの下端部以外の部分を包囲して配置され、前記供給部から供給された気体が流入する流入口、この流入口から流入した気体が流動する前記分注プローブとの間に設けられた流路、この流路を流動した気体が噴出する下端部と前記分注プローブの間に設けられた噴出口を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−173222(P2012−173222A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37600(P2011−37600)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】