説明

自動分析装置

【課題】洗剤のロスが無く、洗剤量を微少量まで任意に設定可能で、耐薬品性を特に考慮したポンプを用いる必要のない、自動分析装置用の洗剤希釈装置を提供する。
【解決手段】計量ポンプ2により混合管13にその内容積を超えない所定量の洗剤を導入した後、三方弁3および二方弁32で流路を切り換えて、混合管13に水を導入して水と洗剤を混合することで希釈洗浄液を作成する。この構成により、洗剤が無駄に消費されることが無く、洗剤量の設定変更も容易であり、計量ポンプには洗剤が流れないのでその耐薬品性を考慮する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば臨床または生化学分野で用いられる自動分析装置(自動生化学分析装置)に関し、特にその反応セルを自動洗浄するための洗剤希釈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動生化学分析装置は、反応セル(反応管、反応キュベット等とも呼ばれるが、以下単にセルと記す)に血液・尿等の検体と試薬を分注してこれらを反応させた後、反応によって生じる色調の変化を吸光分析法等により分析する装置である。セルは、分析装置に内蔵された洗浄機構で洗浄して繰り返し使用される。その洗浄機構に洗浄液を供給するために所定量の洗剤(酸、またはアルカリ液)を水と混合して洗浄液を作成する洗剤希釈装置が設けられている。洗浄液は、洗浄機構内の洗浄プローブを通して洗浄対象となるセルに注入され、また洗浄後の排液は同じ洗浄プローブにより吸引排出されるが、この洗浄過程については特許文献1に詳述されているので、ここでは説明を省略する。
【0003】
図3は従来の自動生化学分析装置における洗剤希釈装置の流路構成の一例を示す。
同図において、31、32、41、および42は二方弁(開閉弁、ストップ弁等とも呼ばれる)であり、計量管16は1回の洗浄に必要な洗剤量に等しい内容積を持つチューブである。いま、二方弁31、41が開き、二方弁32、42が閉じた状態で、吸引ポンプ2aを作動させると洗剤容器1内の洗剤が洗剤導入管11、二方弁31、計量管16、二方弁41を経て流れ、一部は吸引ポンプ2aから排出される。これにより計量管16が洗剤で満たされる。
【0004】
次に、吸引ポンプ2aを止め、二方弁31、41を閉じ、二方弁32、42を開くと、希釈液導入管12から水が導入され、計量管16内の洗剤と混合しながら二方弁42から洗浄液導出管14を経て流れ、混合室5でさらに混合されて洗浄機構6に洗浄液として供給され、洗浄が行われる。上記過程が洗浄対象となる各セル(図示しない)ごとに繰り返され、これによりセル1本につき計量管16の内容積で定まる一定量の洗剤が使用される。なお、混合室5は、洗浄液導出管14の拡径部分であり、ここで洗剤と水は乱流拡散により混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−331631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示す従来の洗剤希釈装置には、
1.計量管16に洗剤を満たすためにはその容積を越える量の洗剤を流して余分の洗剤を排出する必要があり、洗剤に無駄が生じる。
2.洗剤の量を変えるには計量管16を交換する必要があり、また、微少量(μLオーダ)の計量は構造上できない。
3.吸引ポンプ2aには洗剤(酸、またはアルカリ液)に耐える耐薬品性が求められるが、そのような機材は高価であり、装置コスト上昇の要因となる。
等々の問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、洗剤のロスが無く、洗剤量を微少量まで任意に設定可能で、耐薬品性を特に考慮したポンプを用いる必要のない、自動分析装置用の洗剤希釈装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明になる洗剤希釈装置は、上記課題を解決するために、次のaからdを具備して構成される。
a.所定量の洗剤を収容できる内容積を有する混合管
b.前記混合管に前記洗剤を計量吸入する計量ポンプ
c.前記混合管の内容積を超えない所定量の前記洗剤を吸引すべく前記計量ポンプを制御する制御手段
d.前記希釈液を導入する希釈液導入管と前記混合管と該混合管から液体を導出する洗浄液導出管とが連通する第1の状態と、前記希釈液導入管が閉止されると共に前記洗剤を導入する洗剤導入管と前記混合管と前記計量ポンプとが連通する第2の状態とを切り換える流路切換え手段。
この構成により、洗剤が無駄に消費されることが無く、洗剤量の設定変更も容易であり、計量ポンプには洗剤が流れないのでその耐薬品性の考慮が不要となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のように構成されているので、運転コスト、装置コスト共に安く、洗剤量の設定変更も容易で、洗剤を無駄に排出しないので環境汚染も少ない自動生化学分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の変形例を示す図である。
【図3】従来の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、計量ポンプにより混合管にその内容積を超えない所定量の洗剤を導入した後、バルブで流路を切り換えて、混合管に水を導入して水と洗剤を混合することで希釈洗浄液を作成するように構成した洗剤希釈装置を備えた自動分析装置である。
実施例1にその最良の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に本発明の一実施例を示す。同図においては図3に示す従来例と同符号を付したものは同一物であるから再度の説明を省く。
図1において、計量ポンプ2は、例えばステッピングモータ駆動のチューブポンプ(蠕動ポンプとも呼ばれる)であり、制御装置7によって回転角を制御されることにより所定量の液体を正確に吸引/吐出することができる。三方弁3は電磁弁の一種で、図中に実線で示す流路状態と点線で示す流路状態とを切り換えるバルブである。混合管13は、洗剤と水とが導入されるチューブであって、1回の洗浄所要の洗剤量よりも大きい内容積を有する。なお、ここで混合管13とは、図1における分岐点13aから三方弁3までの部分を指すものとする。
【0013】
上記構成の本実施例装置は以下のように動作する。
まず、前回洗浄後の状態として洗剤導入管11以外の全ての流路が水で満たされた状態で、二方弁32を閉じ、三方弁3を実線で示す状態とする。この状態で、制御装置7からの信号で計量ポンプ2を作動させると、所定量の洗剤が洗剤容器1から洗剤導入管11、三方弁3を経て混合管13に導入される。制御装置7には予め洗剤量の設定値として混合管13の内容積を超えない値が設定されており、これに従って、計量ポンプ2は設定値に応じた回転角だけ回転して停止する。この結果、洗剤は混合管13内の三方弁3寄りの部分にのみ導入され、分岐点13aを越えて吸引管15およびその先まで達することはない。
【0014】
次に、三方弁3を点線で示す状態に切り換え、二方弁32を所定の時間開くと、希釈液導入管12から水が混合管13に導入され、混合管13内の洗剤と混合しながら洗浄液導出管14に流入する。
【0015】
洗剤導入工程と希釈液導入管からの水の洗剤との混合の工程を繰り返すことで、洗浄液は洗浄液導出管14を経て混合室5に流入し、ここでさらに混合されて洗浄機構6に洗浄液として供給され、洗浄が行われる。
【0016】
洗浄終了時は三方弁3が点線で示す状態で、二方弁32を開くと希釈液導入管12から水が導入されて上記一連の流路は水で満たされ、次回の洗浄に備える。
【0017】
上記の通り、計量ポンプ2には水が流れるのみで、洗剤と接することはないから、洗剤による故障が無く、接液部の耐薬品性を考慮する必要がない。また、洗剤量はコンピュータ等で構成される制御装置7上で設定できるので設定変更も容易である。
【0018】
図1に示す実施例の他にも本発明には種々の変形が可能であり、図2にその例を示す。
なお、同図においては、図1または図3と同一物には同符号を付して示す。
図2(a)は、洗剤容器1と計量ポンプ2の位置を入れ換えて洗剤と水の流れを同方向にした例(図1の実施例では、逆方向)であって、機能的には図1の実施例と大差はない。
【0019】
また、計量ポンプ2のタイプとしては、前記のチューブポンプに限らず、例えばシリンジポンプを用いることもできる。但し、その場合はポンプ停止時もポンプ内流路が閉止されない(チューブポンプの場合は、ポンプ停止と共にポンプ内流路が閉止される)ので、図2(a)に示す二方弁41をポンプに直列に設けて、ポンプ停止時にはこの二方弁41を閉じることが必要である。
【0020】
図2(b)は、図1における二方弁32を三方弁4で置き換えた構成例である。機能的には図1の例と殆ど差はないが、この構成であれば、計量ポンプ2としてチューブポンプ以外のタイプでも追加部品なしで使用可能である。また、部品の統一によりメンテナンス性が向上し、また流路分岐のための部品が不要になる利点がある。
【0021】
以上、自動生化学分析装置を例示して説明したが、本発明の適用はこれに限定されず、その他の自動分析装置にも適用可能であり、また希釈液も水に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は自動生化学分析装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 洗剤容器
2 計量ポンプ
2a 吸引ポンプ
3 三方弁
4 三方弁
5 混合室
6 洗浄機構
7 制御装置
11 洗剤導入管
12 希釈液導入管
13 混合管
13a 分岐点
14 洗浄液導出管
15 吸引管
16 計量管
31 二方弁
32 二方弁
41 二方弁
42 二方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状検体と試薬とを反応させる反応セルを洗浄機構により洗浄して繰り返し使用する自動分析装置において、洗剤を希釈液で希釈した洗浄液を前記洗浄機構に供給する洗剤希釈装置が次のaからdを具備することを特徴とする自動分析装置。
a.所定量の洗剤を収容できる内容積を有する混合管
b.前記混合管に前記洗剤を計量吸入する計量ポンプ
c.前記混合管の内容積を超えない所定量の前記洗剤を吸引すべく前記計量ポンプを制御する制御手段
d.前記希釈液を導入する希釈液導入管と前記混合管と該混合管から液体を導出する洗浄液導出管とが連通する第1の状態と、前記希釈液導入管が閉止されると共に前記洗剤を導入する洗剤導入管と前記混合管と前記計量ポンプとが連通する第2の状態とを切り換える流路切換え手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−22011(P2012−22011A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240129(P2011−240129)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3149623号
【原出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】