説明

自動分析装置

【課題】ラックを安全に搬送すること。
【解決手段】搬送機構20は、サンプル容器11を収容可能なラック13を所定の直線状の搬送方向に沿って搬送するための移動機構である。ガイド52は、ラック13の搬送方向への搬送を案内するために搬送方向に沿って伸びる。ガイド52は、ラック13の鉛直方向に沿う位置の変動を構造的に制限するための制限部52fを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックサンプラを使用するタイプの自動分析装置が開発されている。このタイプの自動分析装置は、測定対象のサンプルが入っているサンプル容器を収容したラックをサンプル吸入位置までベルトコンベヤ等で搬送する機構を有している。
【0003】
ラックの配置が悪い場合、搬送中にラックが転倒してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−196926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、ラックを安全に搬送することが可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る自動分析装置は、サンプル容器を収容可能なラックを所定の直線状の搬送方向に沿って搬送するための搬送機構と、前記ラックの前記搬送方向への搬送を案内するために前記搬送方向に沿って伸びるガイドと、を具備する自動分析装置であって、前記ガイドは、前記ラックの鉛直方向に沿う位置の変動を構造的に制限するための制限部を有する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る自動分析装置の外観を示す図。
【図2】本実施形態に係る自動分析装置の機能ブロックを示す図。
【図3】本実施形態に係るラックの斜視図。
【図4】図1のラックサンプラの平面図。
【図5】本実施形態に係るラックが置かれた図4のラックサンプラの平面図。
【図6】図1のラックサンプラに含まれる搬送機構部の斜視図。
【図7】本実施形態に係るラックが置かれた図6の搬送機構部の斜視図。
【図8】本実施形態に係る、搬送に適切でないラックの配置(誤配置)の一例を示す図。
【図9】本実施形態に係る、搬送に適切なラックの配置(正配置)の一例を示す図。
【図10】図1のラックサンプラに含まれる引込機構の側面図。
【図11】図1のラックサンプラに含まれる手前側ガイドと奥側ガイドとの側面図。
【図12】図1のラックサンプラに含まれる手前側ガイドと奥側ガイドとの平面図。
【図13】本実施形態に係る搬送機構制御部の動作を説明するための図。
【図14】本実施形態に係る搬送機構制御部の動作を説明するための他の図。
【図15】本実施形態に係るラックの配置時におけるラックサンプラの動作例(正配置センサが一つの場合)を説明するための図。
【図16】本実施形態に係るラックの配置時におけるラックサンプラの動作例(正配置センサが一つの場合)を説明するための他の図。
【図17】本実施形態に係るラックの配置時におけるラックサンプラの動作例(正配置センサが一つの場合)を説明するための他の図。
【図18】本実施形態に係るラックの搬送例を示す図。
【図19】図18の溝による搬送時のラックの転倒防止機能を説明するための図。
【図20】変形例に係るラックの鉛直方向の位置変動の制限を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。なお本実施形態は、小サンプル数での測定に適した小型の自動分析装置を対象とする。
【0009】
(自動分析装置の全体構成)
図1は、本実施形態に係る自動分析装置1の平面図である。図1に示すように、自動分析装置1は、自動分析装置1の筐体の上面にステージ100を有している。なお本実施形態において、ステージ100のユーザが立つ側を手前側、ステージ100を挟んで手前側の反対側を奥側と呼ぶことにする。
【0010】
ステージ100の所定位置には、反応ディスク101が設けられている。反応ディスク101は、円周状に配列された複数の反応管103を保持する。反応ディスク101は、一定の時間間隔で回動と停止とを交互に繰り返す。反応ディスク101は、一回の回動で所定角度(例えば、略1/4周分の角度)だけ回転する。反応ディスク101は、回動と停止とを交互に繰り返し、各反応管103を反応ディスク内101の全てのセル位置に配置させる。
【0011】
ステージ100の手前側には、ラックサンプラ10が配置される。ラックサンプラ10は、被測定対象のサンプルが収容されたサンプル容器11をサンプル吸引位置Pssに移動させる。サンプル容器11は、ラック13に着脱可能に収容される。ラックサンプラ10は、各種機械要素を保持するための筐体15を有している。筐体15には、搬送機構20と引込機構40とが収容されている。搬送機構20は、ラック13を所定の直線状の移動方向(搬送方向)に沿って間欠的に移動(搬送)するための移動機構である。以下、ラック13を搬送するために移動と停止とを交互に繰り返す搬送機構20の動作を搬送動作と呼ぶことにする。ラック13は、搬送機構20により所定の引き込み位置Ppに搬送される。引込機構40は、引き込み位置Ppに搬送されたラック13を所定の移動方向(スライド方向)に沿って往復可能にスライドするための移動機構である。引込機構40は、ラック13をスライドすることにより、測定対象のサンプルが収容されたサンプル容器11をサンプル吸入位置Pssに配置する。ラックサンプラ10の詳細については後述する。
【0012】
反応ディスク101の近傍には、試薬庫105が配置される。試薬庫105は、試薬が収容される試薬容器107を保持する。試薬庫105は、分注対象の試薬が収容された試薬容器107が試薬吸入位置Psrに配置されるように回動する。
【0013】
反応ディスク101とラックサンプラ10との間には、サンプルアーム109が配置されている。サンプルアーム109の先端には、サンプルプローブ(図示せず)が取り付けられている。サンプルアーム109は、回転軸回りの回転軌道に沿ってサンプルプローブ32を回転させ、所定の位置で上下動する。例えば、サンプルアーム109は、サンプルプローブをサンプル吸引位置Pss上に配置し、サンプルプローブをサンプル容器11内へ下降させる。下降されたサンプルプローブは、サンプル容器11内のサンプルを所定量だけ吸引する。サンプルプローブがサンプルを吸引し終わると、サンプルアーム109は、サンプルプローブを上昇させる。サンプルプローブを上昇し終わると、サンプルアーム109は、サンプルプローブを回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク101上のサンプル吐出位置Pdsへ配置する。その後、サンプルプローブは、サンプル吐出位置Pdsに配置された反応管103に、サンプルを吐出する。
【0014】
反応ディスク101と試薬庫105との間には、試薬アーム111が設けられている。試薬アーム111の先端には試薬プローブ(図示せず)が取り付けられている。試薬アーム111は、試薬プローブを回転軌道に沿って回転させ、試薬庫105上の試薬吸引位置Psrに配置する。次に、試薬アーム111は、試薬プローブを下降させ、試薬吸引位置Psrに配置された試薬ボトル107内に進入させる。試薬ボトル05内へ進入された試薬プローブは、試薬を所定量だけ吸引する。試薬プローブが試薬を吸引し終わると、試薬アーム111は、試薬プローブを上昇させる。試薬プローブを上昇し終わると、試薬アーム111は、試薬プローブを回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク101上の試薬吐出位置Pdrへ配置する。その後、試薬プローブは、試薬吐出位置Pdrに配置された反応管103に試薬を吐出する。
【0015】
反応ディスク10の外周の所定位置には、撹拌機構113が設けられている。撹拌機構113は撹拌子を備える。撹拌子は、反応ディスク101上の撹拌位置に配置された反応管103内のサンプルと試薬とを撹拌する。
【0016】
また、ステージ100の内部には、測光機構(図示せず)が設けられている。測光機構は、光源から連続的に光を発生させ、反応ディスク101の測光位置(図示せず)に光を照射し続けている。反応管103は、測光位置に照射されている光を横切るように反応ディスク101により回動されている。測光機構は、反応管103内のサンプルと試薬との混合液を透過した光を検出し、検出された光の光量を測定する。
【0017】
反応ディスク10の外周の他の所定位置には、洗浄機構115が設けられている。洗浄機構115は、複数本の洗浄ノズルと乾燥ノズルとを備えている。洗浄機構115は、反応ディスク101の洗浄位置(図示せず)に配置された反応管103を洗浄ノズルにより洗浄し、乾燥ノズルにより乾燥する。
【0018】
(ラックサンプラの機能構成)
次に、図2を参照しながら、ラックサンプラ10の機能構成について説明する。図2は、ラックサンプラ10の機能ブロック図である。図2に示すように、ラックサンプラ10は、搬送機構20、搬送機構駆動部22、誤配置検知部24、正配置検知部26、搬送機構制御部28、警告部30、引込機構40、引込機構駆動部42、コード情報読取部44、引込機構制御部46、記憶部32、及びラックサンプラ制御部34を有する。
【0019】
搬送機構20は、搬送機構駆動部22からの駆動信号の供給を受けて、搬送機構20の搬送体に配置されたラック13を搬送方向に沿って間欠的に搬送する。搬送機構駆動部22は、搬送機構制御部28からの制御信号に従って搬送機構20に駆動信号を供給する。なお、搬送機構20の詳細な構造については後述する。
【0020】
誤配置検知部24は、ラック13の搬送機構20に対する配置状態が搬送機構20によりラック13を正常に搬送できない配置(以下、誤配置と呼ぶ。)にあるか否かを検知する。配置状態が誤配置であることを検知した場合、誤配置検知部24は、その旨の信号(以下、誤配置信号と呼ぶ。)を出力する。また、誤配置検知部24は、配置状態が誤配置にないことを検知した場合、誤配置信号を出力せず、代わりにその旨の信号(以下、非誤配置信号と呼ぶ。)を出力する。誤配置検知部24は、例えば、透過型の光学センサにより実現される。この場合、誤配置検知部24は、光を発生する光源と光源からの光を検出する検出器とを有する。光源と検出器とは、ラック13が誤配置である場合に限ってラック13の少なくとも一部が侵入する空間領域を挟んで設置される。
【0021】
正配置検知部26は、配置状態が搬送機構20によりラック13を正常に搬送できる配置(以下、正配置と呼ぶ。)にあるか否かを検知する。配置状態が正配置であることを検知した場合、その旨の信号(以下、正配置信号と呼ぶ。)を出力する。また、正配置検知部26は、配置状態が正配置にないことを検知しない場合、正配置信号を出力せず、代わりにその旨の信号(以下、非正配置信号と呼ぶ。)を出力する。正配置検知部26は、例えば、透過型の光学センサにより実現される。この場合、正配置検知部26は、光を発生する光源と光源からの光を検出する検出器とを有する。光源と検出器とは、ラック13が正配置である場合に限ってラック13の少なくとも一部が侵入する空間領域を挟んで設置される。
【0022】
なお、誤配置検知部24と正配置検知部26とは、所定の空間領域に存在する物体を検知可能であれば、透過型の光学センサに限定されず、反射型の光学センサや、磁気センサ、重量センサ等の既存の如何なる種類のセンサでもよい。また、誤配置検知部24と正配置検知部26とは、同種のセンサでも良いし、異なる種類のセンサでも良い。
【0023】
搬送機構制御部28は、ラック13を搬送方向に沿って間欠的に搬送するために、搬送機構駆動部22に制御信号を供給する。この際、搬送機構制御部28は、誤配置検知部24や正配置検知部26からの信号に従って搬送動作の実行と停止とを制御する。すなわち、搬送機構制御部28は、搬送動作における停止期間において誤配置信号が出力された場合、搬送動作を停止するように搬送機構駆動部22に制御信号を供給する。すなわち、ラック13が誤配置にある場合、搬送動作が自動的に停止される。一方、搬送機構制御部28は、搬送動作における停止期間において誤配置信号が出力されず、非誤配置信号が出力される場合、搬送動作を実行するように搬送機構駆動部22に制御信号を供給する。すなわち、ラック13が誤配置でない場合、搬送動作が実行される。さらに安全性を高めるため、搬送機構制御部28は、搬送動作を停止するか実行するかの判断に正配置信号が出力されたか否かを判断材料としてもよい。例えば、搬送機構制御部28は、誤配置信号が出力されず(非誤配置信号が出力され)、かつ、正配置信号が出力された場合、搬送動作を実行するように搬送機構駆動部22に制御信号を供給する。それ以外の場合、すなわち、誤配置信号が出力された場合、あるいは、誤配置信号が出力されず(非誤配置信号が出力され)、かつ、正配置信号が出力されない(非正配置信号が出力された)場合、搬送機構制御部28は、搬送動作を停止するように搬送機構駆動部22に制御信号を供給する。
【0024】
警告部30は、搬送機構制御部28により搬送動作が停止された場合、その旨の警告を発生する。具体的には、誤配置検知部24により誤配置信号が出力された場合、警告部30は、ラック13が搬送に適した位置に正しく配置されていないことをユーザに警告する。さらに、警告部30は、誤配置検知部24により搬送動作が出力されていないが、正配置検知部26により正配置信号が出力されていない場合、警告部30は、同様の内容をユーザに警告してもよい。警告を発生する機器としては、例えば、ディスプレイ301、スピーカ303、ランプ305等のユーザが五感で認知可能なあらゆる機器があげられる。ディスプレイ301の場合、例えば、「ラックを正しい位置に配置してください」等のメッセージを表示するとよい。また、スピーカ303の場合、例えば、「ラックを正しい位置に配置してください」等の音声や、警告音を出力するとよい。ランプ305の場合、ユーザに注意を促すために、例えば、点灯したり、点滅したりさせるとよい。
【0025】
引込機構40は、引込機構駆動部42からの駆動信号の供給を受けて、引き込み位置Ppに搬送されたラック13をスライド方向に沿って往復可能にスライドする。引込機構駆動部42は、引込機構制御部46からの制御信号に従って引込機構40に駆動信号を供給する。なお、引込機構40の詳細な構造については後述する。
【0026】
コード情報読取部44は、筐体15の引き込み位置Ppに配置されたラック13にプリントされたコード情報を読み取り、ラック13の識別番号を認識する。識別番号は、引込機構制御部46に供給される。
【0027】
引込機構制御部46は、ラック13をスライド方向に沿って移動して測定対象のサンプルが収容されたサンプル容器(以下、測定容器と呼ぶ。)11をサンプル吸入位置Pssに配置するために、引込機構駆動部42に制御信号を供給する。具体的には、引込機構制御部46は、コード情報読取部44からの識別番号と記憶部32に記憶されたオーダ情報とを照合する。オーダ情報は、測定項目毎に、測定項目に応じた測定容器11が収容されるラック13の番号とラック13内での測定容器11の位置番号とを含んでいる。識別番号とオーダ情報との照合により、測定容器11のラック13内での位置が特定される。引込機構制御部46は、特定された位置の測定容器11がサンプル吸入位置Pssに配置するために引込機構駆動部42に制御信号を供給する。これにより引込機構40が駆動され、測定容器11がサンプル吸入位置Pssに配置される。引き込まれたラック13に収容された全ての測定容器11内のサンプルが吸入されると、引込機構制御部46は、ラック13を引き込み位置Pssに配置するために引込機構駆動部42に制御信号を供給する。これによりラック13は、引き込み位置Pssに戻される。
【0028】
記憶部32は、予めユーザにより設定されたオーダ情報を記憶している。ユーザは、例えば、自動分析装置1のコンソール(図示せず)を介してオーダ情報を入力する。記憶部32は、測定項目毎に、測定項目に応じた測定容器11が収容されるラック13の番号とラック13内での測定容器11の位置番号とを関連付けて記憶する。
【0029】
ラックサンプラ制御部34は、ラックサンプラ10の中枢として機能する。
【0030】
このような機能構成によりラックサンプラ10は、搬送機構20に対するラック13の配置状態を検知し、ラック13の配置状態が搬送に適さない誤配置の場合、搬送動作を自動的に停止する。一方、ラックサンプラ10は、ラック13の配置状態が搬送に適した正配置、あるいは、誤配置でない場合、搬送動作を自動的に実行する。
【0031】
・以下、このような仕組みを実現するためのラックサンプラ10の具体的な構造について説明する。
【0032】
(ラックの構造)
まずは、ラックサンプラ10において利用されるラック13の構造について説明する。図3は、ラック13の斜視図である。ラック13は、例えば、樹脂を材料とした型抜き成型により形成される。ラック13は、サンプル容器を着脱可能に収容可能な複数の収容スペース131を有している。各収容スペース131にサンプル容器が収容される。複数の収容スペース131は、一次元状に配列される。このようにラック13は、小型化のため、サンプル容器を少数収容可能な構造を有している。従って、ラック13は、比較的狭い底面積を有しており、搬送時において転倒しやすい。
【0033】
ここで、収容スペース131の配列方向を容器配列方向、収容スペース131の長軸方向を高さ方向、容器配列方向と高さ方向との両方に対して直交する方向を厚み方向と呼ぶことにする。
【0034】
ラック13の底部分のちの容器配列方向に沿う一端には、切欠き部132が設けられている。切欠き部132は、引込機構40によるラック13の引き込みのために形成されている。また、ラック13は、上端部分のうちの容器配列方向に沿う一端に把持部133を有し、他端に突起部134を有している。把持部133は、ユーザがラック13を持つ際に握る部分である。突起部134は、例えば、正配置検知部26による検知の被検知対象として機能する。
【0035】
ラック13内での特定のサンプル容器の位置を把握するために、ラック13のサンプル容器挿入口の近傍に位置番号が貼り付けられている。また、図示はしないが、ラック13を識別するために、ラック13の所定位置に1次元コードや2次元コード等のコードが貼り付けられている。
【0036】
以下、突起部134の厚み方向の長さをD1、突起部134の容器配列方向の長さをD2、ラック13の高さ方向の長さをD3、ラック13の把持部133と突起部134とを除く本体部の容器配列方向の長さをD4で記すことにする。
【0037】
(ラックサンプラの全体構造)
次に、ラックサンプラ10の構造について説明する。図4は、ラックサンプラ10の平面図であり、図5は、ラック13が置かれたラックサンプラ10の平面図であり、図6は、ラックサンプラ10に含まれる搬送機構部の斜視図であり、図7は、ラック13が置かれた搬送機構部の斜視図である。
【0038】
筐体15は、手前側に搬送機構20のための開口15aを有している。開口15aには、搬送機構20が収容されている。例えば、搬送機構20は、ベルトコンベヤにより実現される。具体的には、搬送機構20は、環状のベルト201とロータとを有している。環状のベルト201は、ラック13の搬送体として機能する。ベルト201の円環の両端にロータ(図示せず)が設けられている。ロータは、前述の搬送機構駆動部(モータ)22からの駆動信号の供給を受けて回転する。ロータの回転によりベルト201が搬送方向に沿って移動する。
【0039】
ベルト201は、ロータの回転と停止とに伴って、搬送方向に沿って移動と停止とを交互に繰り返す。ベルト201の外側表面には、複数の突起203が設けられている。突起203は、例えば、平板形状を有する。各突起203は、搬送方向に直交する水平方向に沿って平行に配置される。隣り合う2つの突起203間の間隔は、ラック13の厚み方向の幅よりも若干大きく設定される。突起203間にラック13が配置される。このように、突起203は、ラック13の搬送機構20への配置場所の位置決めガイドとして機能する。筐体15には、複数のラック配置位置Ppと単一の引き込み位置Phとが設定されている。図においては、例えば、4つのラック配置位置Ppが設けられており、引き込み位置Phを考慮して、5つのラック15を同時に配置することができる。ベルト201の停止位置と1回の移動量とは、停止時において突起203間にラック配置位置Ppや引き込み位置Phが位置するように設定されている。
【0040】
ラック13が突起203間に配置された場合であっても、ラック13とベルト201とは接触しない。ラックとベルトとが接触する構造の場合、ベルト回転時において、ラックとベルトとの摩擦抵抗によりラックが転倒する危険性が高まるからである。この摩擦抵抗に伴うラック13の転倒を防止するため、ベルト23は、突起203が筐体15表面の外側に突出するように筐体15の内部側に設けられている。換言すれば、突起203間にラック13が配置された場合であっても、ラック13とベルト201とが接触しないように、ベルト23は、筐体15の内部側に設けられる。なお、突起203間にラック13が配置されている場合、ラック13の底面の開口21aに面していない部分は、典型的には、筐体15の表面に接触している。ベルト201が回転することにより突起203は、突起203間に配置されたラック13の下部を搬送方向に沿って押す。このように、突起203に押されることによりラック13は、搬送方向に沿って移動する。突起203間に配置されたラック13は、移動と停止とを交互に繰り返しながら各配置位置Ppに順番に配置される。
【0041】
筐体15には、ラック13の搬送方向への搬送を案内するために、搬送機構20の手前側のガイド(以下、手前側ガイドと呼ぶ。)51と奥側のガイド(以下、奥側ガイドと呼ぶ。)52とが設けられている。手前側ガイド51と奥側ガイド52とは、搬送方向に平行に設置される。手前側ガイド51と奥側ガイド52との間隔IG1は、ラック13の本体部の容器配列方向に沿う長さD4に応じて設計される。例えば、間隔IG1は、ラック13の長さD4よりも僅かに長く設定される。このような手前側ガイド51と奥側ガイド52との位置関係により、搬送時におけるラック13の左右方向(搬送方向に直交する水平方向)の位置変動を構造的に制限している。
【0042】
例えば、図6や図7に示すように、奥側ガイド52は、搬送方向に沿って平行に伸びる隙間52sを有する。隙間52sは、ラック13が搬送機構20に適切に配置された場合において、突起部134が挿し込み可能な位置に設定される。ラック13は、突起部134が隙間52sに挿し込まれた状態で搬送方向に沿って移動する。隙間52sは、搬送時におけるラック13の鉛直方向に沿う位置変動を構造的に制限する役割を有している。
【0043】
奥側ガイド52は、第1の奥側ガイド521と第2の奥側ガイド522とにより構成される。第1の奥側ガイド521と第2の奥側ガイド522とは、間隔IG2を隔てて設置されている。搬送方向に沿う間隔IG2の位置と引き込み位置Phとがオーバラップするように間隔IG2の位置が設定される。間隔IG2は、ラック13が通り抜け可能なように、ラック13の長さD1よりも長く設定される。第1の奥側ガイド521は、引き込み前のラック13をガイドするため、第2の奥側ガイド522は、引き込み後のラック13をガイドするために設けられる。
【0044】
ユーザは、ラック13を配置する際、手前側ガイド51にラック13を乗せ、手前側ガイド51側から第1の奥側ガイド521側へラック13を押し、ラック13の突起部134を隙間52sに挿し込む。前述のように、ラック13が隙間52sに挿し込まれた状態において、ラック13の他端(すなわち、把持部133側)が手前側ガイド51に乗らないように手前側ガイド51と奥側ガイド52との位置が設定されている。
【0045】
すなわち、図8に示すように、ラック13が手前側ガイド51に乗る場合、構造的な制約により、ラック13の突起部134は隙間52sに挿し込まれない。隙間52sに突起部134が挿し込まれない場合、搬送時にラック13が転倒する可能性が高い。従って、この配置状態は、搬送に不適切な誤配置の典型例である。一方、図9に示すように、ラック13が手前側ガイド51に乗らない場合、ラック13の突起部134は隙間52sに挿し込まれている。隙間52sに突起部134が差し込まれる場合、搬送時にラック13が転倒する可能性が低い。従って、この配置状態は、搬送に適切な正配置である。
【0046】
誤配置であるか否かを機械的に検知するために、手前側ガイド51には、前述の誤配置検知部24として機能するセンサ(誤配置センサ)が取り付けられている。誤配置センサ24は、複数の配置位置Ppについて1つ設けられれば良い。また、奥側ガイド52には、正配置であるか否かを機械的に検知するために、前述の正配置検知部26として機能するセンサ(正配置センサ)が取り付けられている。正配置センサ26は、配置位置Pp毎に設けられる。
【0047】
ラック13は、搬送機構20により移動と停止とを繰り返しながら引き込み位置Phに搬送される。引き込み位置Phに配置されたラック13は、奥側ガイド521と奥側ガイド522との間を通って奥側へ引込機構40によりスライド方向に沿って引き込まれる。
【0048】
引込機構40は、筐体15の奥側に形成された開口25bの内部に設けられている。引込機構40は、ラック13をスライド方向に沿って往復直線移動するための移動機構である。このスライド方向は、搬送方向に直交する水平方向に設定される。
【0049】
図10は、引込機構40の側面図である。図10に示すように、引込機構40は、ボールねじにより実現される。すなわち、引込機構40は、ねじ軸401、支持体403、ガイドレール405、スライダ407、及び鉤部409を有する。ねじ軸401は、軸心がスライダ方向に平行するように筐体15内に設置される。ねじ軸401の両端は、支持体403により回転可能に支持されている。ねじ軸401は、引込機構駆動部(モータ)42の回転軸の回転によって回転される。また、筐体15内には、ねじ軸401の軸心に平行にガイドレール405が設置されている。スライダ407は、ねじ軸401のねじ溝(雄ねじ)に螺合するねじ溝(雌ねじ)が形成された貫通孔を有している。スライダ407は、ねじ軸401にねじ込まれている。スライダ407は、ねじ軸401の回転に伴ってねじ軸401の軸心方向(スライダ方向)に沿ってスライドする。スライダ407には、鉤部409が取り付けられている。鉤部409の先端部は、開口15bを介して筐体15の外側に露出される。鉤部409は、スライダ407と一体に、ねじ軸401の回転に伴ってスライド方向に沿ってスライドする。鉤部409の先端部は、ラック13の切欠き部132に引っ掛け可能な形状を有している。鉤部409が切欠き部132に引っ掛かった状態においてねじ軸401が回転することにより、ラック13は、スライド方向に沿ってスライドされる。
【0050】
引き込み位置Phの近傍には、前述のコード情報読取部44として機能する読取器(リーダ)が設けられている。リーダ44は、ラック13に貼り付けられた1次元コードや2次元コードを光学的に読み取り、読み取ったコード情報からラックの識別番号を特定する。特定された識別番号は、引込機構制御部46に送信される。
【0051】
このような構造により、引込機構40は、引込機構制御部46の制御に従って、引き込み位置Phに配置されたラック13を引き込み、測定対象のサンプルが入っているサンプル容器(測定容器)11をサンプル吸入位置Pssに配置する。サンプルが吸入されると、引込機構40は、ラック13を押し出して再び引き込み位置Phに配置する。引き込み位置Phに配置されたラック13は、搬送機構20により搬送方向に沿って搬送機構20の外側に押し出される。押し出されたラック13は、ユーザにより回収される。
【0052】
(手前側ガイド、誤配置センサ、奥側ガイド、及び正配置センサの詳細)
図11は、配置位置Ppにおける手前側ガイド51と奥側ガイド52との側面図である。図12は、手前側ガイド51と奥側ガイド52との平面図である。なお、図11と図12とにおいては、説明の簡単のため、搬送機構20を省略している。
【0053】
手前側ガイド51は、スロープ部511と壁部513とを有している。スロープ部511は、ユーザによる正配置へのラック13の配置を補助するために設けられる。この目的のため、スロープ部511の傾き角度は、例えば、ラック13の自重によりラック13が搬送機構20へスライド可能な角度に設定されるとよい。このように傾き角度が設定されることで、配置時にラック13がスロープ部511に置かれたままとなることを防止できる。なお、傾き角度は、サンプル容器11が収容されていないラック13の重量を考慮して設定されても、サンプル容器11が収容されたラック13の重量を考慮して設定されてもどちらでもよい。壁部513は、スロープ部511の下部に設けられる。壁部513は、筐体15の表面に対して略直交する壁面を有している。壁部513を介してスロープ部511と筐体15との段差が生じる。壁部513は、ラック13の搬送方向への搬送を案内するために設けられる。
【0054】
スロープ部511には、誤配置センサ24が設けられている。誤配置センサ24は、スロープ部511にラック13が乗っていることを光学的に検知するために設けられる。具体的には、誤配置センサ24は、光源241と検出器242とを有している。光源241と検出器242とは、突起部134が隙間52sに挿し込まれていない状態においてのみ、ラック13が進入するスロープ511上空の空間領域を挟むように配置される。光源241と検出器242とは、複数のラック13の誤配置を一組で検知可能な位置に配置される。例えば、光源241と検出器242とは、スロープ部511の搬送方向に沿う両端に設けられる。
【0055】
光源241は、光を繰り返し発生する。検出器242は、光源からの光を検出している期間、ONレベルに対応する電気信号を出力する。具体的には、スロープ部511にラック13が乗っていない場合、光源241からの光がラック13により遮られないので、検出器242は、ONレベルに対応する電気信号を出力する。すなわち、ONレベルに対応する電気信号は、前述の非誤配置信号に対応する。一方、光源241から発生された光を検出していない期間、検出器242は、OFFレベルに対応する電気信号を出力する。具体的には、スロープ部511にラック13が乗っている場合、光源241からの光がラック13により遮られるので、検出器242は、OFFレベルに対応する電気信号を出力する。すなわち、OFFレベルに対応する電気信号は、前述の誤配置信号に対応する。
【0056】
奥側ガイド52には、前述のように、ラック13の突起部134が挿入するための隙間52sが形成されている。隙間52sは、ラック13が壁部512と奥側ガイド52との間に配置された場合にラック13の突起部134が挿入可能な位置に設けられる。
【0057】
奥側ガイド52には、複数の配置位置Ppにそれぞれ対応する複数の正配置センサ26が設けられている。各正配置センサ26は、ラック13の配置位置Ppに対応する隙間52sに突起部134が挿入されていることを光学的に検知するために設けられている。具体的には、正配置センサ26は、光源261と検出器262とを有している。光源261と検出器262とは、互いに向か合って隙間52sを挟むように奥側ガイド52に設けられる。より詳細には、ラック13が壁部513と奥側ガイド52との間に配置された場合に突起部134が進入する隙間52s内の空間領域を挟むように、光源261と検出器262とが配置される。
【0058】
光源261は、光を繰り返し発生する。検出器262は、光源からの光を検出している期間、ONレベルに対応する電気信号を出力する。具体的には、配置位置Ppに対応する隙間52sに突起部134が挿し込まれていない場合、光源261からの光が突起部134により遮られないので、検出器262は、ONレベルに対応する電気信号を出力する。すなわち、ONレベルに対応する電気信号は、前述の非正配置信号に対応する。一方、光源261から発生された光を検出していない期間、検出器262は、OFFレベルに対応する電気信号を出力する。具体的には、配置位置Ppに対応する隙間52sに突起部134が挿し込まれている場合、光源261からの光が突起部134により遮られるので、検出器262は、OFFレベルに対応する電気信号を出力する。すなわち、OFFレベルに対応する電気信号は、前述の正配置信号に対応する。
【0059】
誤配置センサ24や正配置センサ26から信号が搬送機構制御部28に繰り返し供給される。搬送機構20の起動中においては、ベルト201の搬送期間と停止期間とが交互に繰り返されている。誤配置信号が出力された場合、搬送機構制御部28は、搬送機構駆動部22を制御して搬送機構20の搬送動作を即時的に停止する。例えば、ラック13が搬送されている期間においてスロープ部511にラック13等の物体が乗っかった場合、搬送動作を即時的に中止することができる。また、ラック13の配置時にうまく配置できずにラック13がスロープ部511に乗っかったままの場合、次の搬送期間の搬送を中止することができる。
【0060】
搬送動作における停止期間において非誤配置信号が出力され、かつ、正配置信号が出力された場合、搬送機構制御部28は、搬送機構駆動部22を制御して搬送機構20の搬送動作を継続又は開始する。この場合、正配置信号が出力された時点て即時的に搬送機構20が駆動されてもよいし、次の搬送期間に到達したことを契機として搬送機構20が駆動されてもよい。次の搬送期間に到達したことを契機として搬送機構20を駆動する場合、各停止期間の最後において非誤配置信号が出力され、かつ、正配置信号が出力された場合に次に搬送期間においてベルト201が移動される。停止期間の途中において非誤配置信号が出力され、かつ、正配置信号が出力されたとしても、停止期間の最後に非誤配置信号が出力され、かつ、正配置信号が出力されなければ、次の搬送期間においてベルト201が移動されない。従って、ラック13が搬送に適切な正配置に配置された場合に限り搬送動作を行うことができる。
【0061】
実際には、複数の正配置センサ26から信号が供給される。従って、搬送機構制御部28は、誤配置センサ24から非誤配置信号が出力され、かつ、複数の正配置センサ26のうちの少なくとも一つの正配置センサ26から正配置信号が出力された場合に、搬送動作を実行するとよい。以下、このルールの実効性について検証する。
【0062】
例えば、図13に示すように、複数の配置位置の全てにラック13が適切に配置されている場合、搬送動作は行われるべきである。この場合、誤配置センサ24の光源からの光は検出器に到達するので、誤配置センサ24から非誤配置信号が出力される。各正配置センサ26の光源からの光は各ラック13の突起部134に遮られるので、各正配置センサ26から非正配置信号が出力される。従って、誤配置センサ24から非誤配置信号が出力され、かつ、複数の正配置センサ26のうちの少なくとも一つの正配置センサ26から正配置信号が出力されているので、搬送機構制御部28は、実際のラック13の配置状態に応じて適切に搬送動作を実行することができる。
【0063】
また、例えば、図14に示すように、全ての配置位置にラック13が配置されない場合がある。例えば、一つの配置位置に適切にラック13が配置され、残りの三つの配置位置にはラック13が配置されていないとする。この場合、測定対象のサンプル数が少ないだけであり、搬送動作は行われるべきである。配置されているラック13の配置状態は正配置なので、誤配置センサ24からは非誤配置信号が出力される。また、ラック13が配置されている配置位置に対応する隙間52sに設けられた第1の正配置センサ26からは正配置信号が出力され、他の3つの正配置センサ26からは非正配置信号が出力される。従って、誤配置センサ24から非誤配置信号が出力され、かつ、複数の正配置センサ26のうちの少なくとも一つの正配置センサ26から正配置信号が出力されているので、搬送機構制御部28は、実際のラック13の配置状態に応じて適切に搬送動作を実行すると判断することができる。
【0064】
これら2つの配置例の検証により、誤配置センサ24から非誤配置信号が出力され、かつ、複数の正配置センサ26のうちの少なくとも一つの正配置センサ26から正配置信号が出力された場合に搬送動作を実行する、というルールに実効性があることがわかる。
【0065】
従って本実施形態に係るラックサンプラ10は、ラック13を搬送機構20上の正確な位置に配置してから、搬送することができる。
【0066】
(ラック配置時におけるラックサンプラの動作例)
図15、図16、及び図17を参照しながらラック配置時におけるラックサンプラ10の動作例について説明する。なお、図15、図16、及び図17の(a)は、側面図であり、(b)は平面図である。なお、説明を簡単にするため正配置センサ26は、一つであるとする。
【0067】
図15に示すように、ユーザは、ラック13を配置する際、手前側ガイド51にラック13を乗せ、手前側ガイド51側から奥側ガイド521側へラック13を押す。このように、ラック13を押し込んで配置するのは、ラック13の全長(ラック13の把持部133と突起部134とを含めた容器配列方向に沿う長さ)が手前側ガイド51と奥側ガイド52との間隔IG1より長いため、ベルト201の真上からラック13を配置できないためである。ラック13の押しが不十分であり、ラック13の一部分がスロープ部511に乗っている場合、搬送を正常に行うことができないので搬送動作は停止されるべきである。誤配置センサ24の光源241からの光は、ラック13がスロープ部511に乗っているのでラック13により遮られる。従って、誤配置センサ24の検出器242は、誤配置信号を出力する。一方、正配置センサ26の光源261からの光は、突起部134が隙間52sに挿し込まれていないので、正配置センサ26の検出器262に到達する。従って検出器262は、非正配置信号を出力する。このように、誤配置センサ24から誤配置信号が、正配置センサ26から非正配置信号が供給されるので、搬送機構制御部28により搬送動作が停止される。この場合、警告部30は、誤配置である旨の警告をディスプレイ301やスピーカ303、ランプ305を利用してユーザに報知する。
【0068】
図16に示すように、ラック13を押し続けると、ラック13は、自重によりスロープ511を滑り始める。この状態においてもラック13がスロープ部511に乗っているので、このままでは搬送を正常に行うことができない。従って搬送動作は停止されるべきである。この場合、誤配置センサ24は、ラック13により光源241からの光が遮られるので、誤配置信号を出力する。また、正配置センサ26は、光源261からの光が遮られないので、非正配置信号を出力する。従って、搬送機構制御部28により搬送動作が停止され続け、警告部30により誤配置である旨の警告がユーザに報知される。
【0069】
なお、把持部133を持ち上げた状態でラック13を配置する場合が考えられる。この場合、誤配置センサ24が無意味になるが、正配置センサ26による検知が正常に行われる。すなわち、誤配置センサ24の光源241からの光は、ラック13により遮られずに、検出器242に到達する。従って誤配置センサ24は、非誤配置信号を出力する。しかし、突起部134が隙間52sに挿し込まれないので、正配置センサ26は、非正配置信号を出力する。従って、搬送機構制御部28により搬送機構20の搬送動作が停止され、警告部30により誤配置である旨の警告がユーザに報知される。
【0070】
図17に示すように、ラック13をさらに押し続けると、ラック13は、スロープ部511から滑り落ちて筐体15上に落下し、ラック13の突起部134は、隙間52sに挿し込まれる。この場合、ラック13がスロープ部511に乗っておらず、かつ、突起部134に隙間52sが挿し込まれているので、ラック13を正常に搬送することができる。従って搬送動作が実行されるべきである。この配置状態の場合、ラック13により光源241からの光が遮られないので、誤配置センサ24は、非誤配置信号を出力する。光源261からの光は、突起部134により遮られ、検出器262に到達しない。従って、正配置センサ26は、正配置信号を出力する。このように誤配置センサ24から非誤配置信号が出力され、正配置センサ26から正配置信号が出力されるので、搬送機構制御部28により搬送動作が実行される。
【0071】
(ラックの搬送例)
ラック13が適切に配置された場合、搬送機構制御部28により搬送動作が行われる。
【0072】
図18は、ラック13の搬送例を示す図である。図18に示すように、適切に配置されたラック13は、突起部134が隙間52sに挿し込まれた状態で搬送される。また、適切に配置されたラック13は、手前側ガイド51と奥側ガイド52とに挟まれている。また、適切に配置されたラック13は、ベルト201の突起間203に配置されている。このように、手前側ガイド51と奥側ガイド52とに挟まれ、かつ、突起203間に配置された状態で搬送されるため、ラック13の突起部134が溝52sから外れる可能性が著しく低い。従って、搬送動作中、各配置位置Ppにおいて正配置検知部によりラック13の有無の検知を高精度に行うことができる。搬送動作中にラック13の有無を検知することにより、ラック13が適切に搬送されているか否かを機械的に判断することができる。
【0073】
搬送動作中、ラック13が傾いたり、上下に振動したりして、転倒することがある。溝52sは、このような、搬送時におけるラック13の鉛直方向の位置の変動を構造的に制限する役割を有する。
【0074】
図19は、溝52sによる搬送時のラック13の転倒防止機能を説明するための図である。図19に示すように、ラック13の突起部134は溝52sに挿し込まれている。奥側ガイド52は、溝52sにより形成された縁52fを有している。ラック13が搬送方向に対して傾いたり、振動により上に跳ねたりする場合、ラック13の突起部134の上端が縁52fに衝突する。このように、上側の縁52fは、搬送時におけるラック13の鉛直方向の位置の変動を構造的に制限する制限部として機能する。換言すれば、上側の縁52fは、ラック13の鉛直方向のガイドとして機能する。上側の縁52fの高さHの下限は、配置時においてラック13の突起部134を挿し込み可能な高さに設定される。上側の縁52fの高さHの下限は、ラック13が自重により元に戻ることが可能な最大傾き角度に対応する高さ以下に制限される。すなわち、上側の縁52fの高さHは、ラック13が傾いた場合でも自重により元に戻ることが可能なように、突起部134の厚み方向の長さD2に応じて設定される。このように縁52fの高さHを設定することにより、搬送動作における停止期間において、ラック13の自重によりラック13の傾き角度が0度に戻ることができる。
【0075】
前述のように、ラック13の突起部134は、構造的な制限により、溝52sに挿し込まれたまま搬送される。従って、搬送時において常時、ラック13の傾きや振動による鉛直方向の位置変動を、縁52fにより制限することができる。ラック13は、少数のサンプル容器11しか収容できず、比較的小さい底面積を有しており、比較的倒れやすい。しかし、本実施形態によれば、ベルト201の突起203、手前側ガイド51、奥側ガイド52、及び隙間52sにより、搬送時におけるラック13の位置変動を最小限に制限することができる。従って本実施形態に係るラックサンプラ10は、ラック13を安全に搬送することができる。
【0076】
(効果)
かくして本実施形態に係る自動分析装置1は、ラック13を安全に搬送することができる。
【0077】
(変形例)
本実施形態に係る自動分析装置1は、奥側ガイド52に形成された溝52sを利用して、搬送時におけるラック13の鉛直方向に沿う位置の変動を構造的に制限するとした。しかし、この制限方法は、突起部134を有するラック13のみに適用可能である。変形例に係る自動分析装置は、突起部134を有しないラック13も、搬送時におけるラック13の鉛直方向に沿う位置の変動を構造的に制限することが可能である。以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0078】
図20は、変形例に係るラック13´の鉛直方向の位置変動の制限を説明するための図である。図20に示すように、変形例に係るラック13´には突起部が設けられていない。変形例に係る奥側ガイド55には、溝が形成されていない。奥側ガイド55の上部には、手前側に張り出した張り出し部55hが設けられている。張り出し部55hは、搬送方向に沿って伸びている。ラック13´は、適切に配置された場合、手前側ガイド51と奥側ガイド55の下部(張り出し部55hが設けられていない部分)との間に配置され、ラック13´の容器配列方向の端部(把持部133とは逆方向の端部)が張り出し部55hの下に配置される。従って、張り出し部55hの底面側の縁55fは、搬送時におけるラック13´の鉛直方向の位置の変動を構造的に制限する制限部として機能する。具体的には、ラック13´が搬送方向に対して傾いたり、振動により上に跳ねたりする場合、ラック13の上端が縁55fに衝突する。
【0079】
より詳細には、縁55fの高さHHは、ラック13´を挿し込み可能な高さに設定される。すなわち、高さHHの下限は、ラック13´の高さ方向の長さD3よりも若干長く設定される。高さHHの上限は、ラック13´が自重により元に戻ることが可能な最大傾き角度に対応する高さに設定される。すなわち、高さHHは、ラック13´が傾いた場合でも自重により元に戻ることが可能なように、厚み方向の長さD2に応じて設定される。このように縁55fの高さHHを設定することにより、搬送動作における停止期間において、ラック13´の自重によりラック13´の傾き角度が0度に戻ることができる。
【0080】
前述のように、ラック13´は、適切に配置された場合、手前側ガイド51と奥側ガイド55の下部(張り出し部55hが設けられていない部分)との間に配置され、ラック13´の容器配列方向の端部(把持部133とは逆方向の端部)が張り出し部55hの下に配置されたまま搬送される。従って、搬送時において常時、ラック13´の傾きや振動による鉛直方向の位置変動を、縁55fにより制限することができる。ラック13´は、少数のサンプル容器11しか収容できず、比較的小さい底面積を有しており、比較的倒れやすい。しかし、本実施形態によれば、ベルト201の突起203、手前側ガイド51、奥側ガイド55、及び張り出し部55hにより、搬送時におけるラック13´の位置変動を最小限に制限することができる。
【0081】
かくして変形例に係る自動分析装置は、ラック13´を安全に搬送することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
11…サンプル容器、13…ラック、15…筐体、20…搬送機構、51…手前側ガイド、52…奥側ガイド、52s…隙間、52f…縁、134…ラックの突起部、201…ベルト、203…ベルトの突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル容器を収容可能なラックを所定の直線状の搬送方向に沿って搬送するための搬送機構と、
前記ラックの前記搬送方向への搬送を案内するために前記搬送方向に沿って伸びるガイドと、
を具備する自動分析装置であって、
前記ガイドは、前記ラックの鉛直方向に沿う位置の変動を構造的に制限するための制限部を有する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記ガイドは、前記搬送方向に沿って平行に伸び、前記上端部の一部分を含む前記ラックの突起部を挿し込み可能な隙間を有し、
前記制限部は、前記隙間により形成される前記ガイドの縁である、
ことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記隙間の前記鉛直方向に沿う幅は、前記突起部の幅に応じて設定される、ことを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−251793(P2012−251793A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122676(P2011−122676)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】