説明

自動分析装置

【課題】同一の試薬が複数箇所に配置されている自動分析装置において、試薬を均等に使用しているかどうかを確認できる自動分析装置を提供することにある。
【解決手段】
操作制御部1の試薬分注機構動作記憶部104は、試薬分注機構9の動作回数を記憶する。試薬分注機構回数算出部108は、試薬分注機構動作記憶部104から受け渡された情報からモジュール間、試薬分注機構間、試薬項目間の動作回数を計算する。使用差判定部109は、ユーザ定義情報記憶部105に記憶された判断基準と、試薬分注機構回数算出部108から受け渡された情報を比較して、判定結果を、表示部111に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に、複数モジュールから構成され、各モジュールの複数の試薬ディスク内に試薬を配置し運用している自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液,尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置では、大量の検体試料の分析を可能とするために、複数のモジュールから構成されたものが知られている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。この構成の場合、同一の試薬が複数箇所に分散して保持されることになる。
【0003】
それらの複数のモジュールを効率良く運用するために、あらかじめ施設で分析する依頼情報などにより適切と思われる試薬配置をシュミレーションし、実働に生かすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−122123号公報
【特許文献2】特開2009−36513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような自動分析装置において、長期的にシステムを運用していく中で、試薬の配置などにより分析に使用されるモジュール間の同一の試薬の使用頻度に偏りがある場合、保守すべき部品の寿命にも影響してくる。製品保証期間内に可能な限りモジュールを均等に使用することで偏りをなくすことは理想的な運用と言える。また、1つのモジュールに2つの試薬分注機構を有する自動分析装置においても、モジュール間と同じ意味合いで試薬分注機構ごとの偏りをなくすことが望ましい。
【0006】
また、モジュール内の2つの試薬ディスクには同一の試薬が設置可能であるが、それらが均等に使用されるとは限らない。簡単な例を上げると、次のようになる。例えば、試薬ディスク1に試薬A,Bを設置し、試薬ディスク2にも同一種類の試薬a,bを設置したものとする。2つの検体試料X,Yに対して、それぞれ試薬aを使用する分析項目Aと、試薬bを使用する分析項目Bとを分析依頼したとする。まず、試薬分注機構1では、試薬ディスク1から、検体試料Xに対する分析項目Aのための試薬aを分注し、続いて、試薬分注機構2では、試薬ディスク2から、検体試料Xに対する分析項目Bのための試薬bを分注する。その後、試薬分注機構1では、試薬ディスク1から、検体試料Yに対する分析項目Aのための試薬aを分注し、試薬分注機構2では、試薬ディスク2から、検体試料Yに対する分析項目Bのための試薬bを分注する。その結果、試薬分注機構1では試薬ディスク1の試薬aのみが分注され、試薬分注機構2では試薬ディスク2の試薬bのみが分注されたことになる。このように、試薬ディスク1と試薬ディスク2に同じ試薬を設置したとしても均等に使用されるとは限らないのである。
【0007】
従って、同じ試薬を同時期に開封し両方の試薬ディスクに設置したにも関わらず、片方のみ早いタイミングで交換時期を迎えることもある。開封後、試薬は劣化していくものであるから、長く装置に残るよりは同じタイミングで交換されるのが望ましい。
【0008】
このようにモジュールを均等に使用していくためには、試薬の配置が大きな要素を占めていると言える。それらのモジュールを効率良く運用するために、施設で分析する依頼情報などにより適切と思われる試薬配置を模索するわけである。
【0009】
しかしながら、従来の自動分析装置には、分析を実施している最中にシステム全体が均等に運用されているかどうか定量的に確認することができないものであって、そのため、ユーザは装置上で確認できないため、モジュールが本当に効率よく運用できているのかどうか判断がつかないものであった。
【0010】
本発明の目的は、同一の試薬が複数箇所に配置されている自動分析装置において、試薬を均等に使用しているかどうかを確認できる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、複数個の分析モジュールから構成され、各分析モジュールは、それぞれ、複数の試薬が配置された複数個の試薬ディスクと、各試薬ディスクに保持された試薬を分注する複数個の試薬分注機構を備える自動分析装置であって、各分析モジュール内の各試薬分注機構の各試薬項目毎の動作回数である試薬動作回数リストと、各分析モジュール内の各試薬分注機構毎の動作回数である試薬分注機構間動作回数リストと、各分析モジュール毎の動作回数であるモジュール動作回数リストの少なくとも一つを算出する試薬分注機構回数算出部と、該試薬分注機構回数算出部によって算出された各動作回数リストを表示する表示部とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、同一の試薬が複数箇所に配置されている自動分析装置において、試薬を均等に使用しているかどうかを確認できる
(2)上記(1)において、好ましくは、入力された各分析モジュール内の各試薬分注機構の各試薬項目毎の動作回数の差の基準値である試薬項目間使用差と、各分析モジュール内の各試薬分注機構毎の動作回数の差の基準値である分注機構間使用差と、各分析モジュール毎の動作回数の差の基準値であるモジュール間使用差との少なくとも一つを記憶するユーザ定義情報記憶部と、該ユーザ定義情報記憶部に記憶された前記基準値である使用差を、各動作回数の差が超えたことを判定する使用差判定部とを備え、前記表示部は、該使用差判定部により前記基準値である使用差を各動作回数の差が超えたと判定されると、その結果を表示するようにしたものである。
【0012】
(3)上記(1)において、好ましくは、各分析モジュール内の各試薬分注機構の各試薬項目毎の動作回数と、各分析モジュール内の各試薬分注機構毎の動作回数と、各分析モジュール毎の動作回数との少なくとも一つを記憶する試薬分注機構動作記憶部を備え、前記試薬分注機構回数算出部は、前記試薬分注機構動作記憶部に記憶された各動作回数を用いて、前記試薬動作回数リストと、前記試薬分注機構間動作回数リストと、前記モジュール動作回数リストの少なくとも一つを算出するようにしたものである。
【0013】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記試薬分注機構回数算出部により算出された前記試薬動作回数リスト,前記、試薬分注機構間動作回数リスト,前記モジュール動作回数リストの少なくとも一つをトレース情報として記憶するトレース情報記憶部を備えるようにした
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同一の試薬が複数箇所に配置されている自動分析装置において、試薬を均等に使用しているかどうかを確認できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による自動分析装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる分析モジュールの要部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる操作制御部の機能ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による自動分析装置の表示部におけるモジュール使用状況モニタ画面の表示例の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態による自動分析装置の表示部における関連画面の表示例の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による自動分析装置の表示部における関連画面の表示例の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態による自動分析装置の表示部における関連画面の表示例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図7を用いて、本発明の一実施形態による自動分析装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1及び図2を用いて、本実施形態による自動分析装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による自動分析装置の全体構成を示すブロック図である。図2は、本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる分析モジュールの要部構成を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、自動分析装置は、操作制御部1と、第1の分析モジュールAM1と、第2の分析モジュールAM2と、第3の分析モジュールAM3と、検体投入部30と、検体搬送部32と、待機バッファ34と、検体回収部36と、再検搬送部38とから構成される。なお、第1の分析モジュールAM1と、第2の分析モジュールAM2と、第3の分析モジュールAM3とは、同一の構成を有しており、その詳細構成については、図2を用いて説明する。
【0018】
検体投入部30には、検体ラック3が投入される。検体ラック3には、複数の検体容器2が保持されている。検体容器2には、それぞれ分析対象の検体が収納されている。
【0019】
検体投入部30に投入された検体ラック3は、検体搬送部32によって、第1の分析モジュールAM1,第2の分析モジュールAM2,第3の分析モジュールAM3に搬送される。検体ラック3に保持された検体容器2に収納された検体は、第1の分析モジュールAM1,第2の分析モジュールAM2,第3の分析モジュールAM3において分析される。検体ラック3は、検体搬送部32によって、待機バッファ34や検体回収部36に搬送される。待機バッファ34には、再検査の要否等が判定されるまで待機される。再検査が必要と判定されると、検体ラック3は、再検搬送部38によって、検体搬送部32のスタート位置(図示の左側の位置)まで戻され、再び、検体搬送部32によって、第1の分析モジュールAM1,第2の分析モジュールAM2,第3の分析モジュールAM3に搬送される。一方、第1の分析モジュールAM1,第2の分析モジュールAM2,第3の分析モジュールAM3によって分析の終了した検体は、検体回収部36で回収される。
【0020】
操作制御部1は、操作部ユーザインターフェースで、ユーザからの指示を受け付ける。
【0021】
次に、図2を用いて、第1の分析モジュールAM1の構成について説明する。なお、第2の分析モジュールAM2と、第3の分析モジュールAM3との構成も同様である。図2において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0022】
第1の分析モジュールAM1は、反応ディスク5と、2つの試薬ディスク7A,7Bとを備えている。試薬ディスク7Aと試薬ディスク7Bは、同一の構成を有している。試薬ディスク7Bは、反応ディスク5の内周側に配置されている。試薬ディスク7A,7Bには、それぞれ複数の試薬容器8が設置されている。ここで、試薬ディスク7Aと試薬ディスク7Bとには、それぞれ、同じ分析項目に用いる同じ試薬が設置されている。なお、試薬ディスク7Aと試薬ディスク7Bとに、別の試薬を設置してもよいものである。試薬ディスク7A,7Bは、保冷庫となっており、それぞれ試薬を分注するために2箇所の開口部13が設けられている。反応ディスク5には、複数の反応容器6が設置されている。
【0023】
反応ディスク5の外周には、2つの検体分注機構4A,4Bが配置されている。検体分注機構4A,4Bは、それぞれ、図1に示した検体搬送部32の近傍に配置されており、検体ラック3に保持された検体容器2から、所定量の検体試料を吸引し、反応ディスク5に保持された反応容器6に分注する。
【0024】
試薬ディスク7Aの外周には、2つの試薬分注機構9A1,9A2が配置されている。試薬ディスク7Bの外周には、2つの試薬分注機構9B1,9B2が配置されている。試薬分注機構9A1,9A2は、それぞれ、試薬ディスク7Aに保持された試薬容器8から所定の試薬を、反応容器6に分注する。試薬分注機構9B1,9B2は、それぞれ、試薬ディスク7Bに保持された試薬容器8から所定の試薬を、反応容器6に分注する。
【0025】
反応ディスク5の外周には、2つの攪拌機構10A,10Bが設置されている。攪拌機構10A,10Bは、それぞれ、反応容器6の中の検体及び試薬を攪拌する。
【0026】
光度計11は、反応容器6の分析対象成分の吸光度を測定する。光度計による測定が終了した反応容器6は、洗浄機構12によって洗浄される。
【0027】
次に、本実施形態の自動分析装置による分析方法について説明する。検体の分析は以下のような順序で行われる。
【0028】
検体分注機構4A若しくは検体分注機構4Bにより、検体試料が検体容器2から反応容器6に既定の量分注される。次に、試薬分注機構9A1,9A2のいずれかにより、試薬が試薬ディスク7Aの試薬容器8から反応容器6に既定の量分注される。または、試薬分注機構9B1,9B2のいずれかにより、試薬が試薬ディスク7Bの試薬容器8から反応容器6に既定の量分注される。反応容器6内の検体試料と試薬は、攪拌機構10A,10Bのいずれかにより攪拌され、反応液が作成される。光度計11は、反応液の吸光度測定を行う。操作制御部1は、光度計11によって測定された吸光度を用いて、あらかじめ被検物質ごとに設定された分析法に基づき、検体の測定値を算出する。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、試薬ディスク7A,7B、検体分注機構4A,4B、試薬分注機構9A1,9A2,9B1,9B2、攪拌機構10A,10Bは、ひとつの分析モジュールAM1の内部に存在し、それぞれ複数個備えている。これは、各機構を二重化し、位相をずらして動作させることで、複数の検体が並行して分析され、時間当たりの検体分析数を増やすためである。分析モジュールは、ユーザの希望に応じて、図示のように3台の分析モジュールAM1,AM2,AM3に限らず、複数台構成で運用される。
【0030】
次に、図3を用いて、本実施形態による自動分析装置に用いる操作制御部1の機能構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる操作制御部の機能ブロック図である。
【0031】
本実施形態による操作制御部1は、入力部101と、検体数記憶部102と、依頼数記憶部103と、試薬分注機構動作記憶部104と、ユーザ定義情報記憶部105と、トレース情報記憶部106と、依頼項目割合算出部107と、試薬分注機構回数算出部108と、使用差判定部109と、算出結果報告部110と、表示部111と、外部出力212とから構成されている。
【0032】
入力部101は、ユーザからの指示を入力する。検体数記憶部102は、入力部101からの入力情報に基づいて、検体数を記憶する。依頼数記憶部103は、入力部101からの入力情報に基づいて、検体に対して依頼された分析項目を記憶する。試薬分注機構動作記憶部104は、試薬分注機構の動作回数を記憶する。ユーザ定義情報記憶部105は、入力部101からの入力情報に基づいて、判断基準を記憶する。トレース情報記憶部106は、表示部111に表示された情報をトレースする。
【0033】
依頼項目割合算出部107は、検体数記憶部102と依頼数記憶部103とに記憶された情報を元に、1検体中に依頼される分析項目の割合を計算する。試薬分注機構回数算出部108は、試薬分注機構動作記憶部104に記憶された情報から、モジュール間、試薬分注機構間、試薬項目間の動作回数を計算する。使用差判定部109は、ユーザ定義情報記憶部105と試薬分注機構回数算出部108からの情報を比較する。
【0034】
算出結果報告部110は、依頼項目割合算出部107と試薬分注機構回数算出部108で求められた情報を表示部111に表示する。
【0035】
表示部111には、ユーザ定義情報記憶部105、トレース情報記憶部106、使用差判定部109、算出結果報告部110の情報が表示される。外部出力112は、表示部111の情報を出力する。
【0036】
次に、図1に示した操作制御部1の動作について説明する。
【0037】
ユーザが、入力部101より、モジュール間使用差、試薬分注機構間使用差、試薬項目間使用差判定の基準値とその優先順を指定すると、その情報は、ユーザ定義情報記憶部105に記憶される。ここで、優先順とは、図4を用いて後述するが、図4の判定優先度入力欄307を用いて設定されるモジュール間使用差、試薬分注機構間使用差、試薬項目間使用差の3者に対して設定される優先度である。
【0038】
次に、ユーザは、入力部101より、モジュールの使用状況モニタの開始を指示すると、モジュールの使用状況モニタが開始される。
【0039】
そして、開始の指示を受けた検体数記憶部102は、分析する検体数をカウントを記憶する。
【0040】
また、開始の指示を受けた依頼数記憶部103は、分析する検体数に依頼された分析項目ごとに依頼数をカウントし、それを記憶する。
【0041】
さらに、開始の指示を受けた試薬分注機構動作記憶部104は、試薬分注動作回数を試薬ごとにカウントし、それを記憶する。また、試薬分注機構動作記憶部104は、どのモジュールのどの試薬分注機構で試薬ディスク内のどの位置に設置された試薬を分注したのか分かるようにモジュール番号,試薬分注機構番号,試薬設置場所,試薬コードも記憶する。
【0042】
次に、依頼項目割合算出部107は、検体数記憶部102と依頼数記憶部103に記憶された情報を元に、分析依頼された分析項目が全検体中にどの程度の割合で含まれる分析項目であるかその割合を算出し、検体数と依頼項目の割合を算出結果報告部110に出力する。
【0043】
また、試薬分注機構回数算出部108は、試薬分注機構動作記憶部104に記憶された情報を元に、モジュールごと、かつ試薬分注機構ごとに分類し、各試薬設置場所ごとに試薬分注動作回数を積算する。さらに、試薬分注機構回数算出部108は、それら算出された試薬設置場所ごとの試薬分注動作回数を試薬分注機構ごとに積算する。最後に、試薬分注機構回数算出部108は、試薬分注機構ごとに算出された試薬分注動作回数をモジュールごとに積算し、その結果を算出結果報告部110に出力する。また、試薬分注機構回数算出部108は、ユーザが指定したモジュール間使用差の基準値、試薬分注機構間使用差の基準値、試薬項目間使用差の基準値と比較するため、使用差判定部109にも出力する。
【0044】
次に、算出結果報告部110は、依頼項目割合算出部107と試薬分注機構回数算出部108から通知された情報を表示部111で表示しやすいように並べ替える。依頼項目割合算出部107から受けた情報は、依頼される割合の高い分析項目から並べたり、あるいは分析項目の名前順に並べたりする。試薬分注機構回数算出部108から受けた情報は、モジュールごと、試薬分注機構ごとに各試薬項目の分注動作回数の多い順から並べたり、あるいは分析項目の名前順に並べたりする。その結果を、表示部111に出力する。
【0045】
また、使用差判定部109は、モジュール間使用差、試薬分注機構間使用差、試薬項目間使用差判定を行う。モジュール間使用差について、使用差判定部109は、モジュールごとの試薬分注動作回数のうち最も多いものと最も少ないものの差分と、ユーザが定義したモジュール間使用差判定基準値比較し、判定基準値を超えているかどうか判定する。試薬分注機構間使用差について、使用差判定部109は、モジュール内にある2つの試薬分注機構ごとの試薬分注動作回数の差分と、ユーザが定義した試薬分注機構間使用差判定基準値を比較し、判定基準値を超えているかどうか判定する。
【0046】
試薬項目間使用差について、使用差判定部109は、1つの試薬分注機構内で試薬ごとの試薬分注動作回数の差分と、ユーザが定義した試薬項目間使用差判定基準値を比較し、判定基準値を超えているかどうか判定する。比較する順番はユーザ定義情報記憶部105のモジュール間使用差、試薬分注機構間使用差、試薬項目間使用差判定の優先順情報により順番を決定する。そして、使用差判定結果を表示部111に出力する。
【0047】
次に、表示部111は、ユーザ定義情報記憶部105、トレース情報記憶部106、使用差判定部109、算出結果報告部110から得た情報を表示する。
【0048】
また、外部出力部112は、表示部111に表示された情報を外部出力する。
【0049】
また、トレース情報記憶部106は、入力部101からの指示により、表示部111の情報をトレース情報としてデータベースに記憶したり、記憶されたトレース情報を表示部111に表示したりする。
【0050】
そして、入力部101より指示し、モジュールの使用状況モニタを終了する。
【0051】
次に、図4〜図7を用いて、本実施形態による自動分析装置の表示部111におけるモジュール使用状況モニタ画面の表示例について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による自動分析装置の表示部におけるモジュール使用状況モニタ画面の表示例の説明図である。図5〜図7は、本発明の一実施形態による自動分析装置の表示部における関連画面の表示例の説明図である。
【0052】
ユーザが、図3に示した入力部101を操作すると、図4に示したモジュール使用状況モニタ画面300が図3の表示部111に表示される。
【0053】
分析モジュールの構成は、施設によって異なるため、1つの分析モジュールの表示要素である試薬動作回数リスト309、試薬分注機構間動作回数リスト310、モジュール動作回数リスト311は、表示する分析モジュールの個数により変化する。例えば、図4のモジュール使用状況モニタ画面では、モニタする分析モジュールが、図1に示したように、分析モジュール1(図1の分析モジュールAM1)、分析モジュール2(図1の分析モジュールAM2)、分析モジュール3(図1の分析モジュールAM3)というように、3つのモジュールがある場合のレイアウト一例である。なお、試薬動作回数リスト309、試薬分注機構間動作回数リスト310、モジュール動作回数リスト311のデータは、図3に示した試薬分注機構動作記憶部104から得ることができる。
【0054】
ユーザは、図3の入力部101を用いて、判定優先度入力欄307により、モジュール間使用差、試薬分注機構間使用差、試薬項目間使用差について判定する優先度を指定する。図4に示す例では、第一優先に試薬項目間使用差を指定し、第二優先に試薬分注機構間使用差を指定し、第三優先にモジュール間使用差を指定している。これらの優先度の情報は、図3のユーザ定義情報記憶部105に記憶される。
【0055】
また、ユーザは、図3の入力部101を用いて、判定基準値入力欄308により、試薬分注機構の動作回数にどの程度の使用差が生じた場合にユーザに報告するか判定基準値として、モジュール間使用差、試薬分注機構間使用差、試薬項目間使用差を入力する。これらの判定基準値の情報は、図3のユーザ定義情報記憶部105に記憶される。
【0056】
さらに、ユーザが、モジュール使用状況モニタ画面300に表示されたモニタ開始ボタン301を、入力部101のマウス等を用いて押下げると、モジュール使用状況モニタが開始される。なお、図4の例では、モジュール使用状況モニタ画面からの指示でモジュール使用状況モニタを開始しているが、別な画面からの分析スタート実行をトリガーに、モジュール使用状況モニタを開始してもよいものである。
【0057】
モジュール使用状況モニタが開始され、実際に検体の分析が開始されると、図3に示した検体数記憶部102,依頼数記憶部103,試薬分注機構動作記憶部104,トレース情報記憶部106,依頼項目割合算出部107,試薬分注機構回数算出部108,使用差判定部109,算出結果報告部110が動作し、その結果は、表示部111に、モジュール使用状況モニタ画面300として表示される。
【0058】
ここで、実際に検体の分析が開始されると、図3に示した検体数記憶部102に記憶された検体数の情報が、図4の依頼検体数表示欄305に表示される。図4の例では、各モジュールで分析された検体の総数が1500検体であることを示している。なお、依頼検体数表示欄305のデータは、図3に示した検体数記憶部102から得ることができる。
【0059】
依頼項目数表示欄306には、依頼検体数表示欄305で表示された数の検体のうち、どの分析項目がどの程度の割合で含まれているか表示する。例えば、図4に示す例では、依頼項目数表示欄306の分析項目「AAA」は100%と表示されているが、それは1500検体すべてに分析項目「AAA」が依頼されていることを示している。この表示データは、図3に示した依頼項目割合算出部107によって算出されたものである。
【0060】
試薬動作回数リスト表示欄309には、試薬名称,試薬設置場所,試薬の分注動作回数が表示される。試薬の分注動作回数のデータは、図3に示した試薬分注機構回数算出部108によって算出されたものである。ここで、試薬分注機構1(例えば、図2の試薬分注機構9A1,9A2)と試薬分注機構2(例えば、図2の試薬分注機構9B1,9B2)で扱われた同一試薬の分注動作回数の差分が、判定基準値入力欄308の試薬間使用差の基準値を超えている分析項目は、色付け、マークなどによって一目で分かるようにする。
【0061】
図4の例では、試薬分注機構1と試薬分注機構2で分注された分析項目「FFF」の分注動作回数の差分が基準値を超えているため、分析項目「FFF」のリスト行を太い線で示し、三角マークによって示している。実際の画面では、色づけすることで、識別性が向上する。また、モジュール使用状況モニタ画面を閉じている場合に、使用差判定部109が使用差が基準値を超えたと判定すると、図7に示すようなお知らせ画面を表示する。
【0062】
図7に示すお知らせ画面では、表示例601として、「モジュール間の試薬使用の偏りが大きくなりました。効率良く使用するために試薬配置を見直してください」というメッセージを表示部111に表示する。このお知らせ画面において、モニター遷移ボタン602をクリックすると、図4に示したモジュール使用状況モニター画面300の画面を表示することができる。また、閉じるボタン603をクリックすると、図7に示すお知らせ画面を閉じられる。
【0063】
さらに、使用差判定部109が使用差が基準値を超えたと判定すると、装置から離れたユーザにも知らせることが可能となるように、ブザーを備えることもできる。なお、図4に示す例では、使用差判定部109のデータに基づいて、三角マークなどを表示するようにしている。
【0064】
試薬分注機構動作回数リスト表示欄310には、モジュール内の試薬分注機構1,試薬分注機構2のそれぞれに対する分注動作回数が表示される。試薬の分注動作回数のデータは、図3に示した試薬分注機構回数算出部108によって算出されたものである。試薬分注機構1,試薬分注機構2の分注動作回数の差分が判定基準値入力欄308の分注機構間使用差の基準値を超えている場合、分注動作回数の小さい方の試薬分注機構動作回数リスト表示欄310を色付け、マークなどによって一目で分かるようにする。
【0065】
図4の例では、モジュール1の第2試薬分注機構が基準値を超えているため、試薬分注機構動作回数リスト310を太い線で示し、動作回数の右に三角マークによって示している。
【0066】
また、モジュール使用状況モニタ画面を閉じている場合は、図7のようにお知らせ画面を表示する。さらに、装置から離れたユーザにも知らせることが可能となるようブザーを備えることもできる。
【0067】
モジュール動作回数リスト表示欄311には、モジュール内の試薬分注機構1,試薬分注機構2の分注動作回数の総和を表示する。試薬の分注動作回数のデータは、図3に示した試薬分注機構回数算出部108によって算出されたものである。
【0068】
最も多い動作回数のモジュールと、最も少ない動作回数のモジュールの分注動作回数の差分が、判定基準値入力欄308のモジュール間使用差の基準値を超えている場合、分注動作回数の小さい方のモジュール動作回数リスト表示欄311を色付け、マークなどによって一目で分かるようにする。
【0069】
図4の例は最も動作回数の多いモジュール1と最も少ない動作回数のモジュール2の動作回数の差分が判定基準値入力欄308のモジュール間使用差の基準値を超えているため、分注動作回数の小さい方のモジュール動作回数リスト表示欄311を太い線で示し、動作回数の右に三角マークによって示している。
【0070】
また、モジュール使用状況モニタ画面を閉じている場合は、図7のようにお知らせ画面を表示する。さらに、装置から離れたユーザにも知らせることが可能となるようブザーを備えることもできる。
【0071】
また、モニタ終了ボタン302を、入力部101のマウス等を用いて押下げると、モジュール使用状況モニタを終了する。図4の例では、モジュール使用状況モニタ画面からの指示でモジュール使用状況モニタを終了しているが、別な画面からの分析ストップや分析終了後の自動終了をトリガーに終了しても良い。
【0072】
また、出力ボタン312を、入力部101のマウス等を用いて押下げると、モジュール使用状況モニタ画面の情報を外部出力できる。出力先は、プリンタであっても良いし、外部記録媒体であっても良い。
【0073】
また、トレースボタン303を、入力部101のマウス等を用いて押下げると、図5のトレース記憶画面が開き、現在のモジュール使用状況モニタの表示情報を記憶することができる。具体的には、図5に示すトレース記憶画面では、記憶するモジュール使用状況モニタの表示情報に対して、用途エディットボックス401から任意の名称を付けて記憶することができる。図5の実行ボタン403を、入力部101のマウス等を用いて押下げると、トレース記憶を実行する。トレースを記憶しない場合には、取消ボタン402を押下する。
【0074】
また、図4の呼出しボタン304を、入力部101のマウス等を用いて押下げると、図6のトレース一覧画面が開き、今までトレースしたモジュール使用状況モニタの表示情報を選択することができる。具体的には、図6に示すトレース一覧画面では、用途リストボックス501に今までに記憶したモジュール使用状況モニタの表示情報が表示される。
【0075】
ここで、トレース一覧画面の依頼項目リストボックス502は、用途リストボックス501で選択した分析項目に対する依頼項目情報を表示するものである。依頼項目情報は、モジュール使用状況モニタの表示情報の一つであり、どのような分析依頼を実施したか分かるように表示している。
【0076】
また、トレース一覧画面の用途リストボックス501で単数、あるいは複数選択した分析項目を、削除ボタン504にて削除できる。
【0077】
また、トレース一覧画面の用途リストボックス501で単数項目を選択し、実行ボタン505を押下することでトレースされたモジュール使用状況モニタの表示情報を呼び出す。呼び出された情報は、図4に反映され表示される。トレースを呼び出さない場合には取消ボタン503を押下する。
【0078】
また、図4の閉じるボタン313を、入力部101のマウス等を用いて押下げると、モジュール使用状況モニタ画面を閉じる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態では、モジュールの使用効率が悪い状態で運用しているかどうか自動分析装置が知らせることによりユーザが効率の悪い状態を改善するきっかけになる。そして、その都度試薬配置を見直していくことにより、施設に適した試薬配置が見つかり、モジュール使用効率が改善する。また、ユーザが考えた試薬配置が、システム運用上本当に効率良い配置であったか確認するための有効な情報となる。
【符号の説明】
【0080】
1…操作制御部
2…検体容器
3…搬送ラック
4A,4B…検体分注機構
5…反応ディスク
6…反応容器
7A,7B…試薬ディスク
8…試薬容器
9A1,9A2,9B1,9B2…試薬分注機構
10A,10B…攪拌機構
11…光度計
12…洗浄機構
13…開口部
AM1,AM2,AM3…分析モジュール
30…検体投入部
32…検体搬送部
34…待機バッファ
36…検体回収部
38…再検搬送部
101…入力部
102…検体数記憶部
103…依頼数記憶部
104…試薬分注機構動作記憶部
105…ユーザ定義情報記憶部
106…トレース情報記憶部
107…依頼項目割合算出部
108…試薬分注機構回数算出部
109…使用差判定部
110…算出結果報告部
111…表示部
112…外部出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の分析モジュールから構成され、
各分析モジュールは、それぞれ、複数の試薬が配置された複数個の試薬ディスクと、各試薬ディスクに保持された試薬を分注する複数個の試薬分注機構を備える自動分析装置であって、
各分析モジュール内の各試薬分注機構の各試薬項目毎の動作回数である試薬動作回数リストと、各分析モジュール内の各試薬分注機構毎の動作回数である試薬分注機構間動作回数リストと、各分析モジュール毎の動作回数であるモジュール動作回数リストの少なくとも一つを算出する試薬分注機構回数算出部と、
該試薬分注機構回数算出部によって算出された各動作回数リストを表示する表示部とを備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
入力された各分析モジュール内の各試薬分注機構の各試薬項目毎の動作回数の差の基準値である試薬項目間使用差と、各分析モジュール内の各試薬分注機構毎の動作回数の差の基準値である分注機構間使用差と、各分析モジュール毎の動作回数の差の基準値であるモジュール間使用差との少なくとも一つを記憶するユーザ定義情報記憶部と、
該ユーザ定義情報記憶部に記憶された前記基準値である使用差を、各動作回数の差が超えたことを判定する使用差判定部とを備え、
前記表示部は、該使用差判定部により前記基準値である使用差を各動作回数の差が超えたと判定されると、その結果を表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
各分析モジュール内の各試薬分注機構の各試薬項目毎の動作回数と、各分析モジュール内の各試薬分注機構毎の動作回数と、各分析モジュール毎の動作回数との少なくとも一つを記憶する試薬分注機構動作記憶部を備え、
前記試薬分注機構回数算出部は、前記試薬分注機構動作記憶部に記憶された各動作回数を用いて、前記試薬動作回数リストと、前記試薬分注機構間動作回数リストと、前記モジュール動作回数リストの少なくとも一つを算出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試薬分注機構回数算出部により算出された前記試薬動作回数リスト,前記、試薬分注機構間動作回数リスト,前記モジュール動作回数リストの少なくとも一つをトレース情報として記憶するトレース情報記憶部を備えることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−255662(P2012−255662A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127556(P2011−127556)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】