説明

自動分析装置

【課題】簡単な構成で分析データの異常を検出することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応容器3に収容された混合試料及び貯留容器612に収容された校正試料を吸引する吸引ポンプ62と、吸引ポンプ62により吸引された混合試料又は校正試料に含まれる電解質項目の特定の成分を検出する複合電極65と、複合電極65に検出された信号を収集する信号処理部26と、信号処理部26で収集された信号に基づいて分析データを生成する演算部31と、信号処理部26で収集された信号に基づいて分析データが正常であるか否かを判定する判定部40とを備え、演算部31は測定工程Tbのタイミングで収集される信号に基づいて分析データを生成する。また、判定部40は測定工程Tbの前に設けたモニタ工程Taのタイミングで収集される信号に基づいて判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体から採取された被検試料に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目などを対象とし、被検試料と試薬との反応によって生ずる色調の変化を測定することにより、各検査項目の濃度や酵素活性で表される分析データを生成する。また、生化学検査項目に含まれるナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンなどの各電解質を、この電解質に選択的に応答するイオン選択性電極の起電力の変化を測定することにより、各電解質項目の濃度で表される分析データを生成する。
【0003】
このイオン選択性電極を備えた電解質測定ユニットを用いて電解質を測定する場合、被検試料やこの被検試料を校正するための校正試料を、この試料を収容した容器からイオン選択性電極まで吸引ポンプで吸引させて測定する。そして、容器に収容された例えば校正試料が測定可能な量よりも少ないと、その校正試料を吸引する前に吸引した試料がイオン選択性電極に残り、その残った液を測定して分析データを生成してしまう問題がある。
【0004】
この問題を防ぐために、貯留容器に測定可能な量以上の校正試料が供給されたとき、その校正試料と接触する一対の液面検出電極とこの電極に接続された検出回路とを設け、試料容器に測定可能量以上の校正試料が供給されたか否かと、試料容器からイオン選択性電極内に校正試料が吸引されたか否かを検出するようにした方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−251799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貯留容器に供給された校正試料を検出しようとすると、校正試料を検出する電極及び検出回路を設ける必要があり、電解質測定ユニットの構成を複雑にしてしまう問題がある。また、イオン選択性電極まで被検試料を吸引できなかった場合に分析データの異常を検出できない問題が残る。
【0007】
実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので、簡単な構成で分析データの異常を検出することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、実施形態の自動分析装置は、容器に収容された試料を吸引する吸引手段と、前記吸引手段により吸引された試料に含まれる成分を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された信号を、モニタ工程のタイミングでモニタ時間毎に収集して複数のモニタデータを生成し、前記モニタ工程の後に連なる測定工程のタイミングで測定時間毎に収集して試料データを生成する信号処理手段と、前記試料データ及び予め作成された正常な検量線に基づいて、分析データを生成する演算手段と、前記モニタデータに基づいて前記分析データが正常であるか否かを判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図。
【図2】実施形態に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】実施形態に係る電解質測定ユニットの構成を示す図。
【図4】実施形態に係るイオンセンサユニットの構成を示す断面図。
【図5】実施形態に係る混合試料及び校正試料の吸引を示す図。
【図6】実施形態に係る増幅器から出力される第1の標準信号及び校正信号を示す図。
【図7】実施形態に係る増幅器から出力される第2の標準信号及び校正信号を示す図。
【図8】実施形態に係る増幅器から出力される被検信号及び校正信号の一例を示す図。
【図9】実施形態に係る第1の標準試料データ及び校正試料データ、第2の標準試料データ及び校正試料データ、並びに被検試料データ及校正試料データの一例を示す図。
【図10】実施形態に係る電解質項目の検量線の一例を示す図。
【図11】実施形態に係る被検試料の測定により信号処理部で生成されたモニタデータの一例を示す図。
【図12】実施形態に係る大きく傾いた安定化モニタデータの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、標準試料や被検体から採取された被検試料等の各試料を測定する分析部24と、分析部24の測定動作を制御する分析制御部25と、分析部24で測定されたときの信号を収集及び処理して標準試料データや被検試料データ等の各試料データを生成する信号処理部26と、信号処理部26で生成された各試料データに基づいて各検査項目の検量線の作成や分析データの生成を行うデータ処理部30とを備えている。
【0012】
また、自動分析装置100は、信号処理部26で各試料データの生成前に生成されるモニタデータに基づいてその試料データが正常であるか否かを判定し、その判定結果に基づいてデータ処理部30で作成された検量線や生成された分析データが正常であるか否かを判定する判定部40と、データ処理部30で生成された分析データ等を出力する出力部50と、各検査項目の分析条件の入力や、各種コマンド信号を入力する操作部53と、分析制御部25、信号処理部26、データ処理部30、判定部40、及び出力部50を統括して制御するシステム制御部54とを備えている。
【0013】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料や被検試料等の各試料を収容する試料容器17と、この試料容器17を保持するサンプルディスク5と、円周上に配置された複数の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4と、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に支持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0014】
また、各試料に含まれる検査項目の成分と反応する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を格納する試薬庫1と、この試薬庫1に格納された試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aと、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬を吸引して試料が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14とを備えている。また、第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に支持する第1試薬分注アーム8と、反応容器3内に吐出された試料と第1試薬の混合試料を撹拌する第1撹拌子18と、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に支持する第1撹拌アーム20とを備えている。
【0015】
また、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を格納する試薬庫2と、この試薬庫2に格納された試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aと、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15とを備えている。また、第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に支持する第2試薬分注アーム9と、反応容器3内に吐出された試料、第1試薬、及び第2試薬の混合試料を撹拌する第2撹拌子19と、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に支持する第2撹拌アーム21とを備えている。
【0016】
また、各試料を測定するために反応容器3内の混合試料に含まれる各検査項目の成分を測定する測光ユニット13と、反応容器3内の混合試料を吸引してその混合試料に含まれる電解質項目の成分である例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及び塩素イオン等の各電解質を測定する電解質測定ユニット22と、電解質測定ユニット22により混合試料が吸引された反応容器3や測光ユニット13により測定された混合試料を収容する反応容器3内を洗浄する反応容器洗浄ユニット12とを備えている。
【0017】
そして、電解質測定ユニット22は、標準試料や被検試料を測定するために反応容器3から標準試料や被検試料を含む混合試料を吸引する。そして、吸引した混合試料に含まれる電解質成分を検出し、検出した信号を増幅した標準信号や被検信号を信号処理部26へ出力する。
【0018】
また、測光ユニット13は、回転移動する反応容器3に光を照射して、標準試料や被検試料を含む混合試料を透過した光の内の設定された波長光を検出する。そして、標準試料を含む混合試料を透過する波長光を検出して増幅した標準信号や被検試料を含む混合試料を透過する波長光を検出して増幅した被検信号を信号処理部26へ出力する。
【0019】
分析制御部25は、分析部24のサンプルディスク5、試薬ラック1a、及び試薬ラック2aを夫々回動駆動する機構、並びに反応ディスク4を回転駆動する機構を備えている。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下駆動する機構を備えている。また、反応容器洗浄ユニット12を上下駆動する機構を備えている。また、電解質測定ユニット22の各ユニットを駆動する機構を備えている。また、分析部24の各ユニットを駆動する機構を制御する制御回路を備えている。
【0020】
信号処理部26は、マルチプレクサ及びアナログ・デジタル変換回路等を備え、分析部24の電解質測定ユニット22から出力される標準信号をモニタ工程のタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集したアナログ信号をデジタル信号に変換した複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また、電解質測定ユニット22から引き続き出力される標準信号を、モニタ工程の後に連なるモニタ工程よりも時間の短い測定工程のタイミングでモニタ時間よりも短い測定時間毎に収集し、収集したアナログ信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して標準試料データを生成する。そして、生成した標準試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0021】
また、電解質測定ユニット22から出力される被検信号をモニタ工程のタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集したアナログ信号をデジタル信号に変換した複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また、電解質測定ユニット22から引き続き出力される被検信号を測定工程のタイミングで測定時間毎に収集し、収集したアナログ信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して被検試料データを生成する。そして、生成した被検試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0022】
更に、分析部24の測光ユニット13から出力される標準信号や被検信号を所定の時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した標準試料データや被検試料データを生成する。そして、生成した標準試料データや被検試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0023】
図1のデータ処理部30は、信号処理部26から出力された標準試料データや被検試料データ等から検量線の作成や分析データの生成を行う演算部31と、演算部31作成された検量線や生成された分析データ、信号処理部26で生成された標準試料データ、被検試料データ、モニタデータ等を保存する記憶部32とを備えている。
【0024】
演算部31は、信号処理部26で生成された各検査項目の標準試料データに基づいて検量線を作成する。そして、判定部40で異常であると判定された検量線には異常情報を付加し、作成した正常な検量線や異常情報を付加した検量線を記憶部32に保存すると共に出力部50に出力する。
【0025】
また、信号処理部26で生成された各検査項目の被検試料データ及び予め作成した正常な検量線に基づいて、活性値や濃度値などで表される分析データを生成する。ここでは、信号処理部26から出力された各検査項目の被検試料データに対して、その検査項目の正常な検量線を記憶部32から読み出し、読み出した検量線を用いてその被検試料データから分析データを生成する。そして、判定部40で異常であると判定された分析データには異常情報を付加し、正常な分析データや異常情報を付加した分析データを記憶部32に保存すると共に出力部50に出力する。
【0026】
更に、記憶部32に保存された標準試料データ、被検試料データ、モニタデータ等の各データを読み出して各データの時系列的変化を示すグラフを作成し、作成したグラフを出力部50に出力する。
【0027】
記憶部32は、ハードディスク等を備え、演算部31で作成された検量線を検査項目毎に保存する。また、演算部31で生成された分析データを被検試料毎に保存する。また、信号処理部26で標準試料の測定毎に生成される複数のモニタデータ及びこのデータに引き続き生成される標準試料データ、被検試料の測定毎に生成される複数のモニタデータ及びこのデータに引き続き生成される被検試料データ等を保存する。
【0028】
判定部40は、分析部24の電解質測定ユニット22で各試料の測定毎に信号処理部26から出力される複数のモニタデータに基づいて、そのモニタデータに引き続き生成される標準試料データや被検試料データ等の各試料データが、分析部24における各ユニットの正常動作による正常なデータであるか、又は各ユニットの異常動作により精度が大きく低下している異常なデータであるか、又は各ユニットの不安定動作により精度が低下している可能性がある不安定なデータであるかを判定する。
【0029】
そして、標準試料データや被検試料データが異常である場合、分析部24の電解質測定ユニット22で測定された電解質項目の検量線や分析データの異常情報をデータ処理部30へ出力する。また、標準試料データや被検試料データが不安定である場合、その電解質項目の検量線や分析データの異常情報よりも異常レベルが低い警告情報をデータ処理部30へ出力する。更に、分析部24の測光ユニット13で測定される検査項目の検量線や分析データが正常であるか否かを判定する。そして、異常であると判定した場合、その異常情報をデータ処理部30の演算部31へ出力する。
【0030】
出力部50は、データ処理部30から出力された検量線や分析データなどを印刷出力する印刷部51及び表示出力する表示部52を備えている。そして、印刷部51は、プリンタなどを備え、データ処理部30から出力された正常である検量線や分析データ、異常情報が付加された検量線や分析データ、グラフなどを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙に印刷出力する。
【0031】
また、表示部52は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、各検査項目の標準試料や検量線などの分析条件を設定するための分析条件設定画面の表示や、データ処理部30から出力された正常である検量線や分析データ、異常情報が付加された検量線や分析データ、グラフなどの表示を行う。
【0032】
操作部53は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検試料毎に分析する検査項目の選択、各検査項目の標準試料測定操作、被検試料測定操作などの様々な入力を行う。
【0033】
システム制御部54は、CPUと記憶回路を備え、操作部53から供給されるコマンド信号、各検査項目の分析条件、被検体情報、被検試料毎に選択された検査項目などの入力情報を保存する。そして、入力情報に基づいて、分析部24の各ユニットを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、検量線の作成や分析データの生成と出力に関する制御などシステム全体の制御を行なう。
【0034】
以下、図1乃至図12を参照して、分析部24における電解質測定ユニット22の構成、信号処理部26における信号の収集及び処理、並びに判別部40における判定について説明する。
【0035】
先ず、図2乃至図5を参照して、電解質測定ユニット22の構成について説明する。
図3は、電解質測定ユニット22の構成を示した図である。この電解質測定ユニット22は、電解質を検出するイオンセンサユニット60と、反応容器3に収容された標準試料や被検試料の各試料とこの試料を希釈するための電解質項目の第1試薬との混合試料を校正するための校正試料を収容する校正部61と、反応容器3内の混合試料及び校正部61に収容された校正試料をイオンセンサユニット60内へ吸引する吸引ポンプ62と、イオンセンサユニット60と吸引ポンプ62の間を連通するチューブ63と、イオンセンサユニット60により検出された信号を増幅測定する増幅器64とを備えている。
【0036】
図4は、イオンセンサユニット60の構成を示した断面図である。このイオンセンサユニット60は、吸引ポンプ62により吸引された混合試料や校正試料の各試料に含まれる成分である複数の電解質を検出する複合電極65と、各試料を複合電極65内に導く一端部が複合電極65の下端部に着脱可能に取り付けられた吸引ノズル66とを備えている。そして、分析部24における測定開始前及び測定終了後の待機中には、複合電極65及び吸引ノズル66内に校正試料が満たされている。また、測定中には、混合試料と校正試料を吸引するために図示しない移動機構により反応容器3と校正部61の間を移動する。
【0037】
複合電極65は、例えば37℃等の所定の温度に設定され、上下方向に延びた貫通孔65aを有する。そして、各試料と接することにより、各試料に含まれる特定の成分である3種類の電解質(ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン)を選択的に検出して濃度に応じた電位を示す3つのイオン選択性電極(ISE)651乃至653と、各試料と接することにより各ISE651乃至653に対して基準となる電位を示す参照電極654により構成される。
【0038】
ISE651は、各試料に含まれるナトリウムイオンを検出する感応膜が貫通孔65aの一部を形成している。また、ISE652は、ISE651の上に離間して配置され、各試料に含まれるカリウムイオンを検出する感応膜が貫通孔65aの一部を形成している。更に、ISE653は、ISE652の上に離間して配置され、各試料に含まれる塩素イオンを検出する感応膜が貫通孔65aの一部を形成している。更にまた、参照電極654は、ISE653の上に離間して配置され、各試料と接する液絡部が貫通孔65aの一部を形成している。
【0039】
そして、各ISE651乃至653は、参照電極654との間で貫通孔65aに流入した各試料に含まれる各電解質の活量に応じた電位差である起電力Eを発生する。この起電力Eは温度及び活量係数が一定となる条件で各電解質の濃度Cの対数ln(C)に比例し、ネルンスト式に基づいて個々のイオンセンサに特有の定数である勾配S及び切片E0の各項を含む第1の式{E=E0+S×ln(C)}で表される。
【0040】
図3に示した校正部61は、校正試料が収容された校正試料ボトル611と、イオンセンサユニット60内に吸引される校正試料を複合電極65と同じ温度に設定して収容する貯留容器612と、校正試料ボトル611内の校正試料を貯留容器612内に供給する校正試料ポンプ613と、イオンセンサユニット60内に吸引された後に貯留容器612内に残存する不用になった校正試料を排出する排液ポンプ614とを備えている。
【0041】
吸引ポンプ62は、分析制御部25の制御により、イオンセンサユニット60の吸引ノズル66が複合電極65と同じ温度に設定された反応容器3内の混合試料や校正部61の貯留容器612内に収容された校正試料に進入した位置で停止している間、チューブ63を介して吸引を行う。この吸引により、図5(a)に示すように、反応容器3内の混合試料は、例えば校正試料で満たされた吸引ノズル66内に流入し、流入した混合試料は吸引ノズル66に導かれて校正試料で満たされた複合電極65内に流入する。そして、吸引動作が停止したとき、吸引ノズル66及び複合電極65内は、校正試料から入れ替わった混合試料で満たされる。また、吸引した後、吐出を行う。この吐出によりイオンセンサユニット60からチューブ63内に流出した校正試料が排液タンク67内に吐出される。
【0042】
また、図5(b)に示すように、貯留容器612内の校正試料は、混合試料で満たされた吸引ノズル66内に流入し、流入した校正試料は吸引ノズル66に導かれて混合試料で満たされた複合電極65内に流入する。そして、吸引ノズル66及び複合電極65は、混合試料から入れ替わった校正試料で満たされる。また、吸引の後の吐出によりイオンセンサユニット60からチューブ63内に流出した混合試料が排液タンク67内に吐出される。
【0043】
このように、イオンセンサユニット60内を校正試料又は混合試料の一方の試料で満たし、一方の試料で満たされたイオンセンサユニット60内へ他方の試料のみを吸引させることにより、イオンセンサユニット60の貫通孔65aへの空気の流入を防ぐことができる。これにより、貫通孔65aに空気が流入して電気的に切断されて各ISE651乃至653と参照電極654との間の抵抗が異常に高くなることにより、増幅器64で測定不可能となるのを防ぐことができる。
【0044】
増幅器64は、電解質項目の標準試料である例えば2つの第1及び第2の標準試料の内の低濃度の電解質を含有する第1の標準試料を含む混合試料が吸引されたイオンセンサユニット60の各ISE651乃至653と参照電極654との間の起電力を増幅し、その増幅した第1の標準信号を信号処理部26へ出力する。また、例えば第1の標準試料の後に第1の標準試料よりも高濃度の電解質を含有する第2の標準試料を含む混合試料が吸引された各ISE651乃至653と参照電極654との間の起電力を増幅し、その増幅した第2の標準信号を信号処理部26へ出力する。更に、各第1及び第2の標準試料の後に被検試料を含む混合試料が吸引された各ISE651乃至653と参照電極654との間の起電力を増幅し、その増幅した被検信号を信号処理部26へ出力する。
【0045】
また、増幅器64は、第1の標準試料を含む混合試料又は被検試料を含む混合試料の各混合試料の吸引前に、例えば第1の標準試料を含む混合試料よりも高濃度の電解質を含有し、且つ第2の標準試料を含む混合試料よりも低濃度の電解質を含有する洗浄用としての校正試料が吸引された各ISE651乃至653と参照電極654との間の起電力を増幅し、その増幅した電気信号である洗浄用の校正信号を信号処理部26へ出力する。
【0046】
更に、増幅器64は、第1の標準試料を含む混合試料、第2の標準試料を含む混合試料、及び被検試料を含む混合試料の各混合試料吸引の後に引き続き校正用としての校正試料が吸引された各ISE651乃至653と参照電極654との間の起電力を増幅し、その増幅した電気信号である校正用の校正信号を信号処理部26へ出力する。
【0047】
次に、図2乃至図8を参照して、電解質測定ユニット22の増幅器64で増幅された例えばISE651と参照電極654との間における信号、この信号を信号処理部26で収集するタイミングについて説明する。
図6は、増幅器64から出力される第1の標準信号及び校正信号を示した図である。この信号70は、イオンセンサユニット60の校正試料の濃度に応じた校正信号71と、この校正信号71に引き続き出力される、校正試料を吸引した後に吸引される第1の標準試料を含む混合試料の吸引に応じた第1の標準信号72と、この第1の標準信号72に引き続き出力される、混合試料を吸引した後に吸引される第1の標準試料の校正用としての校正試料の吸引に応じた校正信号73とにより構成される。
【0048】
第1の標準信号72は、m回目(mは1以上の整数)の第1の標準試料を含む混合試料の吸引を開始してから(m+1)回目の校正試料の吸引を開始するまでのm回目の第1の標準試料吸引工程TLのタイミングで増幅器64から出力される。この第1の標準試料吸引工程TLは、前側の例えば8.8秒間をモニタ工程Taとし、このモニタ工程Taの後に連なるモニタ工程Taよりも時間の短い例えば0.2秒間を測定工程Tbとする2工程に区分される。また、モニタ工程Taは、吸引ポンプ62の吸引動作により混合試料が吸引されている時間を含む吸引工程Ta1及び吸引工程Ta1の後に連なる吸引工程Ta1よりも長い時間の安定化工程Ta2に区分される。
【0049】
そして、イオンセンサユニット60内が校正試料から第1の標準試料を含む混合試料に入れ替わる吸引工程Ta1において、イオンセンサユニット60内の電解質が混合試料に含まれる濃度方向である低濃度方向へ変化することにより、第1の標準信号72は、低い方向へ変動する。また、イオンセンサユニット60内が混合試料で満たされた安定化工程Ta2及び測定工程Tbにおいて、時間の経過に伴いイオンセンサユニット60内の電解質濃度が均一になり、イオンセンサユニット60内の混合試料が複合電極65と同じ温度になることにより、吸引時の電解質濃度の変動や混合試料の温度変動に応答したISE651の電位が収束する。この収束により、第1の標準信号72は安定する。
【0050】
信号処理部26は、増幅器64から出力される第1の標準信号72をモニタ工程Taのタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換して複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また、増幅器64から出力される第1の標準信号72を測定工程Tbのタイミングでモニタ間隔よりも短い測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを例えば平均処理して第1の標準試料データを生成する。そして、生成した第1の標準試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0051】
このように、測定工程Tbでは、第1の標準信号72の安定したスタティックな部分を測定時間毎に収集することにより、第1の標準試料データを精度良く生成することができる。また、測定工程Tbの前にモニタ工程Taを設け、モニタ工程Taでは、第1の標準信号72のダイナミックな変動を含む部分をモニタ時間毎に収集することにより、モニタデータを無闇に増やすことなく生成することができる。これにより、信号処理部26における信号処理にかかる負荷や信号処理に要する時間を抑制し、記憶部32に保存するモニタデータ量を抑制することができる。
【0052】
校正信号73は、m回目の第1の標準試料吸引工程TLの後に連なる(m+1)回目の校正試料吸引工程TCのタイミングで増幅器64から出力される。この校正試料吸引工程TCは、第1の標準試料吸引工程TLと同様に、モニタ工程Ta及び測定工程Tbに区分される。また、モニタ工程Taは、第1の標準試料吸引工程TLのモニタ工程Taと同様に、吸引工程Ta1及び安定化工程Ta2に区分される。
【0053】
そして、イオンセンサユニット60内が第1の標準試料を含む混合試料から校正試料に入れ替わる吸引工程Ta1において、イオンセンサユニット60内の電解質が校正試料に含まれる濃度方向である高濃度方向へ変化することにより、校正信号73は高い方向へ変動する。また、イオンセンサユニット60内が校正試料で満たされた安定化工程Ta2及び測定工程Tbにおいて、イオンセンサユニット60内の電解質濃度が均一になり、イオンセンサユニット60内の校正試料が複合電極65と同じ温度になることにより、吸引時の電解質濃度の変動や混合試料の温度変動に応答したISE651の電位が収束する。この収束により、校正信号73は安定する。
【0054】
信号処理部26は、増幅器64から出力される校正信号73をモニタ工程Taのタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また、増幅器64から出力される校正信号73を測定工程Tbのタイミングで測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して第1の標準試料データ校正用の校正試料データを生成する。そして、生成した校正試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0055】
このように、測定工程Tbでは、校正信号73の安定したスタティックな部分を測定時間毎に収集することにより、校正試料データを精度良く生成することができる。また、測定工程Tbの前にモニタ工程Taを設け、測定工程Tbよりも時間の長いモニタ工程Taでは、校正信号73のダイナミックな変動を含む部分をモニタ時間毎に収集することにより、モニタデータを無闇に増やすことなく生成することができる。これにより、信号処理部26における信号処理にかかる負荷や信号処理に要する時間を抑制することができる。また、記憶部32に保存するモニタデータの量を抑制することができる。
【0056】
校正信号71は、1回目の校正試料の吸引を開始してから第1の標準試料吸引工程TLと同じ時間経過するまでの1回目の第1の標準試料吸引工程TLのタイミングで増幅器64から出力される。
【0057】
信号処理部26は、増幅器64から出力される校正信号71を測定工程Tbのタイミングで測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して校正試料データを生成する。そして、生成した校正試料データを判定部40に出力する。
【0058】
図7は、増幅器64から出力される第2の標準信号及び校正信号を示した図である。この信号80は、イオンセンサユニット60の校正試料の濃度に応じた校正信号81と、この校正信号81に引き続き出力される、校正試料を吸引した後に吸引される第2の標準試料を含む混合試料の濃度に応じた第2の標準信号82と、この第2の標準信号82に引き続き出力される、混合試料を吸引した後に吸引される第2の標準試料の校正用としての校正試料の濃度に応じた校正信号83とにより構成される。
【0059】
校正信号81は、m回目の第1の標準試料吸引工程TLの後に連なる(m+1)回目の校正試料吸引工程TCのタイミングで増幅器64から出力される。
【0060】
第2の標準信号82は、n回目(nは1以上の整数)の第2の標準試料を含む混合試料の吸引を開始してから第1の標準試料吸引工程TLと同じ時間経過して(m+n+1)回目の校正試料の吸引を開始するまでのn回目の第2の標準試料吸引工程THのタイミングで増幅器64から出力される。この第2の標準試料吸引工程THは第1の標準試料吸引工程TLと同様に、モニタ工程Ta及び測定工程Tbに区分される。また、モニタ工程Taは、第1の標準試料吸引工程TLのモニタ工程Taと同様に、吸引工程Ta1及び安定化工程Ta2に区分される。
【0061】
そして、イオンセンサユニット60内が校正試料から第2の標準試料を含む混合試料に入れ替わる吸引工程Ta1において、イオンセンサユニット60内の電解質が混合試料に含まれる濃度方向である高濃度方向へ変化することにより、第2の標準信号82は、高い方向へ変動する。また、イオンセンサユニット60内が混合試料で満たされた安定化工程Ta2及び測定工程Tbにおいて、イオンセンサユニット60内の電解質濃度が均一になり、イオンセンサユニット60内の混合試料が複合電極65と同じ温度になることにより、吸引時の電解質濃度の変動や混合試料の温度変動に応答したISE651の電位が収束する。この収束により、第2の標準信号82は安定する。
【0062】
信号処理部26は、増幅器64から出力される第2の標準信号82をモニタ工程Taのタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また、増幅器64から出力される第2の標準信号82を測定工程Tbのタイミングで測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して第2の標準試料データを生成する。そして、生成した第2の標準試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0063】
このように、測定工程Tbでは、第2の標準信号82の安定したスタティックな部分を測定時間毎に収集することにより、第2の標準試料データを精度良く生成することができる。また、測定工程Tbの前にモニタ工程Taを設け、モニタ工程Taでは、第2の標準信号82のダイナミックな変動を含む部分をモニタ時間毎に収集することにより、モニタデータを無闇に増やすことなく生成することができる。これにより、信号処理部26における信号処理にかかる負荷や信号処理に要する時間を抑制することができる。また、記憶部32に保存するモニタデータの量を抑制することができる。
【0064】
校正信号83は、n回目の第2の標準試料吸引工程THの後に連なる(m+n+1)回目の校正試料吸引工程TCのタイミングで増幅器64から出力される。そして、イオンセンサユニット60内が第2の標準試料を含む混合試料から校正試料に入れ替わる吸引工程Ta1において、イオンセンサユニット60内の電解質が校正試料に含まれる濃度方向である低濃度方向へ変化することにより、校正信号83は低い方向へ変動する。また、イオンセンサユニット60内が校正試料で満たされた安定化工程Ta2及び測定工程Tbにおいて、イオンセンサユニット60内の電解質濃度が均一になり、イオンセンサユニット60内の校正試料が複合電極65と同じ温度になることにより、吸引時の電解質濃度の変動や混合試料の温度変動に応答したISE651の電位が収束する。この収束により、校正信号83は安定する。
【0065】
信号処理部26は、増幅器64から出力される校正信号83をモニタ工程Taのタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また、増幅器64から出力される校正信号83を測定工程Tbのタイミングで測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して第2の標準試料データ校正用の校正試料データを生成する。そして、生成した校正試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0066】
このように、測定工程Tbでは、校正信号83の安定したスタティックな部分を測定時間毎に収集することにより、校正試料データを精度良く生成することができる。また、測定工程Tbの前にモニタ工程Taを設け、モニタ工程Taでは、校正信号83のダイナミックな変動を含む部分をモニタ時間毎に収集することにより、モニタデータを無闇に増やすことなく生成することができる。これにより、信号処理部26における信号処理にかかる負荷や信号処理に要する時間を抑制し、記憶部32に保存するモニタデータ量を抑制することができる。
【0067】
図8は、増幅器64から出力される被検信号及び校正信号の一例を示した図である。この信号90は、イオンセンサユニット60の校正試料の濃度に応じた校正信号91と、この校正信号91に引き続き出力される、校正試料を吸引した後に吸引される被検試料を含む混合試料の濃度に応じた被検信号92と、この被検信号92に引き続き出力される、前記混合試料を吸引した後に吸引される被検試料の校正用としての校正試料の濃度に応じた校正信号93とにより構成される。
【0068】
被検信号92は、被検試料を含む混合試料の吸引を開始してから第1の標準試料吸引工程TLと同じ時間経過して校正試料の吸引を開始するまでの被検試料吸引工程TSのタイミングで増幅器64から出力される。この被検試料吸引工程TSは、第1の標準試料吸引工程TLと同様に、モニタ工程Ta及び測定工程Tbに区分される。また、モニタ工程Taは、第1の標準試料吸引工程TLのモニタ工程Taと同様に、吸引工程Ta1及び安定化工程Ta2に区分される。
【0069】
そして、イオンセンサユニット60内が校正試料から被検試料を含む混合試料に入れ替わる吸引工程Ta1において、イオンセンサユニット60内の混合試料に含まれる電解質濃度が校正試料に含まれる電解質濃度よりも高い場合の高い方向、又は同じである場合の同じ高さ方向、又は低い場合の低い方向へ変動する。ここでは、混合試料に含まれる電解質濃度が校正試料に含まれる電解質濃度よりも高い場合の高い方向へ変動することにより、被検信号92は、高い方向へ変動する。また、イオンセンサユニット60内が混合試料で満たされた安定化工程Ta2及び測定工程Tbにおいて、イオンセンサユニット60内の電解質濃度が均一になり、混合試料が複合電極65と同じ温度になることにより、吸引時の電解質濃度の変動や混合試料の温度変動に応答したISE651の電位が収束する。この収束により、被検信号92は安定する。
【0070】
信号処理部26は、増幅器64から出力される被検信号92をモニタ工程Taのタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また増幅器64から出力される被検信号92を測定工程Tbのタイミングで測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して被検試料データを生成する。そして、生成した被検試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0071】
このように、測定工程Tbでは、被検信号92の安定したスタティックな部分を測定時間毎に収集することにより、被検試料データを精度良く生成することができる。また、測定工程Tbの前にモニタ工程Taを設け、モニタ工程Taでは、被検信号92のダイナミックな変動を含む部分をモニタ時間毎に収集することにより、モニタデータを無闇に増やすことなく生成することができる。これにより、信号処理部26における信号処理にかかる負荷や信号処理に要する時間を抑制することができる。また、多数の被検試料を測定することにより、記憶部32に保存する量が膨大になるモニタデータの量を抑制することができる。
【0072】
校正信号93は、被検試料吸引工程TSの後に連なる校正試料吸引工程TCのタイミングで増幅器64から出力される。そして、イオンセンサユニット60内が被検試料を含む混合試料から校正試料に入れ替わる吸引工程Ta1において、イオンセンサユニット60内の電解質が校正試料に含まれる濃度方向である低濃度方向へ変化することにより、校正信号93は低い方向へ変動する。また、イオンセンサユニット60内が校正試料で満たされた安定化工程Ta2及び測定工程Tbにおいて、イオンセンサユニット60内の電解質濃度が均一になり、イオンセンサユニット60内の校正試料が複合電極65と同じ温度になることにより、吸引時の電解質濃度の変動や混合試料の温度変動に応答したISE651の電位が収束する。この収束により、校正信号93は安定する。
【0073】
信号処理部26は、増幅器64から出力される校正信号93をモニタ工程Taのタイミングでモニタ時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のモニタデータを生成する。そして、生成した複数のモニタデータを判定部40に出力する。また、増幅器64から出力される校正信号93を測定工程Tbのタイミングで測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して被検試料データ校正用の校正試料データを生成する。そして、生成した校正試料データをデータ処理部30及び判定部40に出力する。
【0074】
このように、測定工程Tbでは、校正信号93の安定したスタティックな部分を測定時間毎に収集することにより、校正試料データを精度良く生成することができる。また、測定工程Tbの前にモニタ工程Taを設け、モニタ工程Taでは、校正信号93のダイナミックな変動を含む部分をモニタ時間毎に収集することにより、モニタデータを無闇に増やすことなく生成することができる。これにより、信号処理部26における信号処理にかかる負荷や信号処理に要する時間を抑制することができる。また、多数の被検試料を測定することにより、記憶部32に保存する量が膨大になるモニタデータの量を抑制することができる。
【0075】
校正信号91は、被検試料吸引工程TSの前に連なる校正試料吸引工程TCのタイミングで増幅器64から出力される。信号処理部26は、測定工程Tbのタイミングで増幅器64から出力される校正信号91を測定時間毎に収集し、収集した信号をデジタル信号に変換した複数のデータを処理して校正試料データを生成する。そして、生成した校正試料データを判定部40に出力する。
【0076】
次に、図3乃至図9を参照して、データ処理部30における電解質項目の検量線の作成及び分析データの生成の一例を説明する。
図9は、第1の標準試料データ及びこのデータ校正用の校正試料データ、第2の標準試料データ及びこのデータ校正用の校正試料データ、並びに被検試料データ及びこのデータ校正用の校正試料データの一例を示した図である。データ処理部30の演算部31は、第1及び第2の標準試料の測定により信号処理部26から出力される第1の標準試料データEL及びこのデータの校正用の校正試料データELC、並びに第2の標準試料データEH及びこのデータの校正用の校正試料データEHCに基づいて検量線を作成する。
【0077】
ここで、第1の標準試料データELから校正試料データELCを差し引いて第1の標準試料校正データΔELを求める。また、第2の標準試料データEHから校正試料データEHCを差し引いて第2の標準試料校正データΔEHを求める。求めた第1及び第2の標準試料校正データΔEL,ΔEH、並びに予め設定された第1の標準試料に含まれる電解質の濃度を示す第1の標準値CL及び第2の標準試料に含まれる電解質の濃度を示す第2の標準値CHから、図10に示すように、第1の関数{Y=ΔEL+S×(lnX−lnCL)}{S=(ΔEH―ΔEL)/ln(CH/CL)}で表される検量線Dを作成する。
【0078】
また、被検試料の測定により信号処理部26から出力され被検試料データES及びこのデータの校正用の校正試料データESCに基づいて分析データを生成する。ここで、被検試料データESから校正試料データESCを差し引いて被検試料校正データΔESを求める。そして、第1の関数の項Yに被検試料校正データΔESを代入して項Xを求めることにより、被検試料に含まれる電解質の濃度である分析データCSを生成する。
【0079】
判定部40は、信号処理部26から出力される各モニタデータに基づいて、そのモニタデータの後に生成される、第1の標準試料データEL、校正試料データELC、第2の標準試料データEH、校正試料データEHC、被検試料データES、及び校正試料データESCの各試料データが正常であるか否かを判定する。
【0080】
そして、第1の標準試料データEL若しくは校正試料データELCが異常であると判定した場合、又は第2の標準試料データEH若しくは校正試料データEHCが異常であると判定した場合、検量線Dが異常であると判定する。また、被検試料データES若しくは校正試料データESCが異常であると判定した場合、分析データCSが異常であると判定する。
【0081】
次に、図3乃至図12を参照して、判定部40における判定の一例を説明する。
図11は、被検試料の測定により信号処理部26で生成されたモニタデータの一例を示した図である。このモニタデータは、増幅器64から出力された被検信号92aをモニタ工程Taのタイミングで収集することにより生成された複数のモニタデータS2M、及び被検信号92aに引き続き出力された校正信号93aをモニタ工程Taのタイミングで収集することにより生成された複数のモニタデータC2Mにより構成される。
【0082】
モニタデータS2Mは、被検信号92aの前に増幅器64から出力された校正信号91aの収集により生成された校正試料データESC1の後に生成され、被検信号92aの収集により生成された例えば校正試料データESC1よりも高い値を示す被検試料データES2の前に生成されたデータである。そして、モニタデータS2Mは、吸引工程Ta1のタイミングで収集することにより生成された複数の吸引モニタデータS2M1、及び安定化工程Ta2のタイミングで収集することにより生成された複数の安定化モニタデータS2M2により校正される。
【0083】
モニタデータC2Mは、被検試料データES2の後に生成され、校正信号93aの収集により生成された校正試料データESC2の前に生成されたデータである。そして、モニタデータC2Mは、吸引工程Ta1のタイミングで収集することにより生成された複数の吸引モニタデータC2M1、及び安定化工程Ta2のタイミングで収集することにより生成された複数の安定化モニタデータC2M2により構成される。
【0084】
判定部40は、吸引モニタデータS2M1及び安定化モニタデータS2M2に基づいて、被検試料データES2が正常であるか否かを判定する。
先ず、吸引モニタデータS2M1に基づいて判定する。モニタデータS2Mの前に生成された校正試料データESC1及びモニタデータS2Mの後に生成された被検試料データES2の高い方の値に予め設定された許容値を加えた値を上限値とし、低い方の値から前記許容値を差し引いた値を下限値とする許容範囲W1を設ける。そして、すべての吸引モニタデータS2M1が許容範囲W1内である場合、被検試料データES2が正常であると判定する。また、少なくとも1つの吸引モニタデータS2M1が許容範囲W1から外れている場合、被検試料データES2が異常であるとであると判定する。
【0085】
次いで、安定化モニタデータS2M2に基づいて判定する。安定化モニタデータS2M2の傾きを求め、求めた傾きが予め設定された許容傾斜範囲内である場合、被検試料データES2が正常であると判定する。また、図12に示すように、求めた傾きが大きく傾いて許容傾斜範囲から外れている場合、被検試料データES2が不安定であると判定する。
【0086】
ここでは、すべての吸引モニタデータS2M1が許容範囲W1に入っており、且つ安定化モニタデータS2M2の傾きが0付近で許容傾斜範囲内であるため、被検試料データES2が正常であると判定する。
【0087】
判定部40は、吸引モニタデータC2M1及び安定化モニタデータC2M2に基づいて、校正試料データESC2が正常であるか否かを判定する。
先ず、吸引モニタデータC2M1に基づいて判定する。モニタデータC2Mの前に生成された被検試料データES2及びモニタデータC2Mの後に生成された校正試料データESC2の高い方の値を予め設定された許容値を加えた値を上限値とし、低い方の値から前記許容値を差し引いた値を下限値とする許容範囲W2を設ける。そして、すべての吸引モニタデータC2M1が許容範囲W2内である場合、校正試料データESC2が正常であると判定する。また、少なくとも1つの吸引モニタデータC2M1が許容範囲W2から外れている場合、校正試料データESC2が異常であるとであると判定する。
【0088】
次いで、安定化モニタデータC2M2に基づいて判定する。安定化モニタデータC2M2の傾きを求め、求めた傾きが予め設定された許容傾斜範囲内である場合、校正試料データESC2が正常であると判定する。また、許容傾斜範囲から外れている場合、校正試料データESC2が不安定であると判定する。
【0089】
ここでは、吸引モニタデータC2M1の内の例えば2つの吸引モニタデータC2M11,C2M12が許容範囲W2から外れているため、校正試料データESC2が異常であると判定する。従って、校正試料データESC2に基づいて生成される分析データ、即ち被検試料データES2から校正データESC2を差し引いて被検試料校正データΔES2を求め、求めた被検試料校正データΔES2を図10の第1の関数の項Yに代入して項Xを求めることにより生成される分析データが異常であると判定する。
【0090】
そして、表示部52に表示された異常情報が付加された分析データを、操作部53からの入力により指定した後、グラフ表示させる入力操作が行われると、演算部31は、記憶部32に保存された校正試料データESC1、モニタデータS2M、被検試料データES2、モニタデータC2M、及び校正試料データESC2の判定に用いられた各データを読み出して、時系列に並べたグラフを作成する。次いで、作成したグラフを表示部52に表示出力する。
【0091】
このように、分析データの判定に使用された各データをグラフ化して表示部52に表示させることができる。これにより、装置の故障診断を容易に行うことができる。
【0092】
次に、校正試料データESC2が異常であると判定した場合の原因の一例を説明する。イオンセンサユニット60内が被検試料を含む混合試料から校正試料に入れ替わる吸引工程Ta1において、例えば校正試料ボトル611内の校正試料が不足して貯留容器612に供給されない場合、イオンセンサユニット60内に校正試料が吸引されず、空気が吸引されることになる。そして、吸引ポンプ62により吸引動作が行われているとき、貫通孔65aに流入する空気により電気的に切断されて例えばISE651と参照電極654との間の抵抗が異常に高くなり、増幅器64で測定不可能となる。このため、校正信号93aは、吸引工程Ta1において、図11に示すように、破線で示したピークで表される信号を示す。これにより、許容範囲W2から外れる吸引モニタデータC2M11,C2M12が生成される。
【0093】
吸引動作が停止した後、貫通孔65aを形成している壁面に残存する混合試料によりISE651と参照電極654の間が増幅器64で測定可能な程度に抵抗が下がって電気的に接続されると、ISE651の感応膜表面に残存する混合試料により、安定化工程Ta2の校正信号93aは、安定化工程Ta2の被検信号92aとほぼ同じレベルを示す。これにより、校正試料データESC2は、被検試料データES2とほぼ同じ値を示す。このため、分析データは、校正試料に含まれる電解質濃度よりも高い濃度にかかわらずと校正試料に含まれる電解質濃度と同じ値を示すことになる。
【0094】
なお、吸引ノズル66が屈曲して反応容器3に収容された混合試料や貯留容器612に収容された校正試料に進入させることができないと、上述した原因でイオンセンサユニット60内に空気が吸引されることになり、被検試料データや校正試料データが異常であると判定されることになる。
【0095】
また、吸引動作が停止した後、ISE651と参照電極654の間が空気により増幅器64で測定不可能な程度に電気的に切断されていると、増幅器64で測定不可能な状態が続くため、校正試料データESC2は異常な値を示す。これにより、校正試料データESC2を用いて生成される分析データが異常であると容易に判定することができる。
【0096】
なお、複合電極65が設定された所定の温度に保たれていないとき、反応容器3内の混合試料が設定された所定の温度に保たれていないとき、貯留容器612内の校正試料が設定された所定の温度に保たれていないとき、又はISE651の感応膜が劣化して応答速度が低下しているときには、各安定化モニタデータS2M2,C2M2の傾きが許容傾斜範囲から外れ、被検試料データES2、校正試料データESC2が不安定であると判定することができる。
【0097】
このように、モニタデータS2Mに基づいて、このデータに引き続き生成される被検試料データES2が正常であるか否かを判定することができる。また、モニタデータC2Mに基づいて、このデータに引き続き生成される校正試料データESC2が正常であるか否かを判定することができる。そして、吸引モニタデータS2M1又は吸引モニタデータC2M1が異常であると判定した場合、被検試料データES2及び校正試料データESC2に基づいて生成される分析データが異常であると判定することができる。また、安定化モニタデータS2M2又は安定化モニタデータC2M2が不安定であると判定した場合、被検試料データES2及び校正試料データESC2に基づいて生成される分析データが不安定なデータであると判定することができる。
【0098】
なお、安定化モニタデータS2M2及び安定化モニタデータC2M2の判定結果よりも吸引モニタデータS2M1及び吸引モニタデータC2M1の判定結果を優先する。従って、安定化モニタデータS2M2又は安定化モニタデータC2M2が不安定であると判定しても、吸引モニタデータS2M1又は吸引モニタデータC2M1が異常であると判定すると、分析データが異常であると判定する。
【0099】
以上述べた実施形態によれば、第1及び第2の標準試料吸引工程TL,TH、被検試料吸引工程TS、及び校正試料吸引工程TCの各試料吸引工程における測定工程Tbでは、第1の標準信号、第2の標準信号、被検信号、及び校正信号の各信号を測定時間毎に収集することにより、第1の標準試料データ、第2の標準試料データ、被検試料データ、及び校正試料データの各試料データを精度良く生成することができる。また、測定工程Tbの前にモニタ工程Taを設け、モニタ工程Taでは、各信号をモニタ時間毎に収集することにより、モニタデータを無闇に増やすことなく生成することができる。これにより、信号処理部26における信号処理にかかる負荷や信号処理に要する時間を抑制することができる。また、多数の被検試料を測定することにより、記憶部32に保存する量が膨大になるモニタデータの量を抑制することができる。
【0100】
そして、モニタデータS2Mに基づいて、このデータに引き続き生成される被検試料データES2が正常であるか否かを判定することができる。また、モニタデータC2Mに基づいて、このデータに引き続き生成される校正試料データESC2が正常であるか否かを判定することができる。そして、吸引モニタデータS2M1又は吸引モニタデータC2M1が異常であると判定した場合、被検試料データES2及び校正試料データESC2に基づいて生成される分析データが異常であると判定することができる。また、安定化モニタデータS2M2又は安定化モニタデータC2M2が異常であると判定した場合、被検試料データES2及び校正試料データESC2に基づいて生成される分析データが不安定なデータであると判定することができる。これにより、異常情報を出力部50に出力することができる。
【0101】
以上により、簡単な構成で分析データの異常を検出することが可能となり、分析データの異常による誤診を防ぐことができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
3 反応容器
22 電解質測定ユニット
25 分析制御部
26 信号処理部
30 データ処理部
31 演算部
32 記憶部
40 判定部
60 イオンセンサユニット
61 校正部
62 吸引ポンプ
63 チューブ
64 増幅器
65 複合電極
66 吸引ノズル
67 排液タンク
611 校正試料ボトル
612 貯留容器
613 校正試料ポンプ
614 排液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された試料を吸引する吸引手段と、
前記吸引手段により吸引された試料に含まれる成分を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された信号を、モニタ工程のタイミングでモニタ時間毎に収集して複数のモニタデータを生成し、前記モニタ工程の後に連なる測定工程のタイミングで測定時間毎に収集して試料データを生成する信号処理手段と、
前記試料データ及び予め作成された正常な検量線に基づいて、分析データを生成する演算手段と、
前記モニタデータに基づいて前記分析データが正常であるか否かを判定する判定手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記測定工程は、前記モニタ工程よりも短い時間であり、
前記測定時間は、前記モニタ時間よりも短い時間であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記モニタ工程は、前記吸引手段により試料が吸引されている時間を含む吸引工程及びこの吸引工程の後に連なる安定化工程に区分され、
前記信号処理手段は、前記検出手段により検出された信号を前記吸引工程のタイミングで収集して吸引モニタデータを生成し、
前記判定手段は、前記吸引工程の前に連なる前記測定工程のタイミングで生成された第1の試料データ、及び前記安定化工程の後に連なる前記測定工程のタイミングで生成された第2の試料データの高い方の値に予め設定された許容値を加えた値を上限値とし、低い方の値から前記許容値を差し引いた値を下限値とする許容範囲を設け、前記吸引モニタデータが前記許容範囲内である場合に前記第2の試料データが正常であると判定し、前記吸引モニタデータが前記許容範囲から外れている場合に前記第2の試料データが異常であると判定するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記信号処理手段は、前記検出手段により検出された信号を前記安定化工程のタイミングで収集して安定化モニタデータを生成し、
前記判定手段は、前記安定化モニタデータの傾きを求め、前記傾きが予め設定された許容傾斜範囲内である場合、前記第2の試料データが正常であると判定し、前記傾きが前記許容傾斜範囲から外れている場合、前記第2の試料データが不安定であると判定するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記容器は、被検体から採取された被検試料を含む混合試料を収容した反応容器及び前記混合試料を校正するための校正試料を収容した貯留容器からなり、
前記第1の試料データは、前記混合試料又は前記校正試料の一方の試料の吸引により生成されたデータであり、
前記第2の試料データは、他方の試料の吸引により生成されたデータであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記検出手段は、イオン選択性電極及び参照電極であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−42359(P2012−42359A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184445(P2010−184445)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】