説明

自動分析装置

【課題】準備処理を必要とする試薬を新たに搭載・登録した場合のターンアラウンドタイムを改善することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】試薬容器ディスクに新たな試薬を収容した試薬容器が保管され、かつ、その試薬に対応する分析項目が優先的に実施されるよう設定された場合、その試薬を使用可能な状態にする試薬準備処理を予め設定された他の分析項目よりも優先して実施する優先実施機能と、試薬準備処理と、分析項目の処理工程の内、試薬を用いる処理工程の前に行う処理工程の少なくとも1つとを並列して行う並列処理機能とを有する制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、実施する分析項目に対応した試薬を事前に試薬容器保管部などに搭載し、また、登録して、それらの試薬を用いて検体に対する分析処理を実施する。自動分析装置には十分な種類や量の試薬を搭載・登録して分析処理を開始することが望ましいが、分析処理の開始後に、試薬切れ、或いは、緊急的に未搭載・未登録の試薬を用いる分析の必要が生じ、試薬を新たに搭載・登録する必要が生じることが考えられる。
【0003】
自動分析装置における試薬の登録や交換に関する従来技術として、例えば、特許文献1(特開2006−337386号公報)には、分析用試薬保管手段の他に、補充用の試薬保管手段と、試薬ボトル搬送手段を設け、それら2つの試薬保管手段に保管される試薬の情報を管理することにより、分析処理中の試薬登録、試薬交換作業等の試薬管理を自動化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−337386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置で用いる試薬には、使用前に所定の準備処理(試薬準備処理)の実施を必要とするものがあり、分析処理の開始前に必要な準備処理をまとめて行っておくなどの運用を行っている。しかしながら、分析処理の開始後に試薬を新たに搭載・登録する必要が生じた場合、その試薬にも使用前に準備処理を施す必要がある。したがって、上記従来技術のように、分析処理中の試薬登録や試薬交換作業を行うだけでは、新たに登録した試薬を使用して分析処理を早急に実施することができず、実施中の分析処理の終了後などに準備処理を実施してから分析処理を開始する必要があり、分析処理のターンアラウンドタイムについて改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、準備処理を必要とする試薬を新たに搭載・登録した場合のターンアラウンドタイムを改善することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、1つ以上の処理工程からなる複数種類の分析項目にそれぞれ対応した試薬を収容した複数の試薬容器と、前記複数の試薬容器を保管可能な試薬容器保管部とを備え、前記複数種類の分析項目を予め設定された順番に実施する自動分析装置であって、前記試薬容器保管部に新たな試薬を収容した試薬容器が保管され、かつ、該試薬に対応する分析項目が優先的に実施されるよう設定された場合、該試薬を使用可能な状態にする試薬準備処理を予め設定された他の分析項目よりも優先して実施する優先実施機能と、前記試薬準備処理と、前記分析項目の処理工程の内、前記試薬を用いる処理工程の前に行う処理工程の少なくとも1つとを並列して行う並列処理機能とを有する制御部を備えたものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試薬準備処理を必要とする試薬を新たに搭載・登録する必要がある場合の緊急検査のターンアラウンドタイムを改善することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る試薬容器保管部である試薬容器ディスクをその周辺構成とともに抜き出して示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る優先項目登録画面を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るユニット指定画面を示す図である。
【図5】同一キャリブ使用条件設定画面を示す図である。
【図6】試薬の追加登録時に制御部の表示部に表示される試薬登録実行画面を示す図である。
【図7】制御部による試薬登録処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施の形態に係る試薬登録処理を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る試薬準備処理の詳細について示す図である。
【図10】通常項目の試薬登録処理の様子を時系列的に示す図である。
【図11】優先項目の試薬登録処理の様子を時系列的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0012】
図1において、自動分析装置100は、血液や尿などの生体サンプル(以下、試料と称する)を収容する複数のサンプル容器1が収納されたサンプル容器ラック2と、サンプル容器ラック2を搬送するラック搬送ライン3と、試薬容器保管部であって試料の分析に用いる種々の試薬が収容された複数の試薬容器4が収納・保温され試薬ディスクカバー7により覆われた試薬容器ディスク5と、試料と試薬を混合するための複数の反応容器8が収納されたインキュベータディスク9と、回転駆動や上下駆動によりサンプル容器1からインキュベータディスク9の反応容器8に試料を分注するサンプル分注ノズル10と、試薬ディスクカバー7に設けられた試薬ディスクカバー開口部7aを介して、回転駆動や上下駆動により試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に試薬を分注する試薬分注ノズル11と、反応容器8に収容された反応液を攪拌する反応容器攪拌機構14と、発光誘導試薬が収容された発光誘導試薬容器22と、洗浄試薬が収容された洗浄試薬容器23と、回転駆動及び上下駆動により、インキュベータディスク9の反応容器8で混合された反応液、発光誘導試薬容器22、或いは、洗浄試薬容器23に収容された試薬を吸引するノズル17と、ノズル17で吸引された反応液や試薬を用いて測定処理(電気信号測定など)を行う電機信号検出器18と、分析処理前に行う試薬準備処理や各部の分注動作、電機信号検出器18による測定処理などを含む自動分析装置100全体の動作を制御する制御部19とを概略備えている。試薬ディスク5には、発光標識を含む試薬を収容する試薬容器や磁性粒子を含む試薬を収容する試薬容器などが収納されている。なお、本実施の形態では測定処理の一例として電気信号測定を示して説明する。
【0013】
また、自動分析装置100は、未使用である複数の反応容器8やサンプル分注チップ10aが収納された反応容器・サンプル分注チップ収納部13、及び、その交換・補充用にスタンバイされた反応容器・サンプル分注チップ収納部12と、使用済みのサンプル分注チップ10a及び反応容器8を廃棄するための廃棄孔15と、サンプル分注チップ10a及び反応容器8を把持して搬送する搬送機構16とを備えている。搬送機構16は、X軸、Y軸、Z軸方向(図示せず)に移動可能に設けられ、反応容器・サンプル分注チップ収納部13に収納された反応容器8をインキュベータディスク9に搬送したり、使用済み反応容器8を廃棄孔15に破棄したり、未使用のサンプル分注チップ10aをチップ装着位置16aに搬送したりする。
【0014】
図2は、試薬容器保管部である試薬容器ディスクをその周辺構成とともに抜き出して示す図である。
【0015】
図2に示すように、試薬容器ディスク5には、複数の試薬容器4が搭載されており、その周辺には、試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に試薬を分注する試薬分注ノズル11と、試薬ディスク5に搭載された試薬容器4に収容された試薬を攪拌する試薬攪拌機構20と、試薬容器ディスク5の所定位置に試薬容器4を搭載したり、試薬容器ディスク5から試薬容器4を回収したりする試薬容器ローダ21とが設けられている。
【0016】
試薬容器4には、それぞれ、個体識別用標識であるバーコード4dが設けられており、バーコード4dを読取装置(図示せず)により読み取って登録することにより、試薬容器4を個別に管理する。なお、個体識別用標識は、試薬容器4の個体識別が可能であれば良く、RFIDタグなどを用いても良い。また、試薬容器4は、複数(本実施の形態では3つ)種類の試薬を収容する容器4a〜4cから構成されており、1つの試薬容器4には、対応する分析処理の種類(分析項目)に必要な1組の試薬が収容されている。試薬容器4の各容器4a〜4cに収容される試薬としては、発光標識を含む試薬(発光標識試薬)や磁性粒子を含む試薬(磁性粒子試薬)などがある。
【0017】
制御部19は、自動分析装置100全体の動作を制御するものであり、予め設定したプログラムや、入力装置19などにより入力されるオペレータからの指令に基づいて分析処理を行う。
【0018】
次に、本実施の形態における分析処理の一例を示し、その手順について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
まず、分析処理における準備として各種設定を行う。図3〜5は、制御部19の表示部19aに表示される、分析処理の実行前に各種設定を行う画面を示す図である。
【0020】
図3は、優先項目登録画面30を示す図である。優先項目とは、その分析項目に対応する試薬の搭載・登録を自動分析装置100がオペレーション状態のとき、すなわち、他の分析項目を含む分析処理の実施中に行った場合に、その試薬を使える状態にするための試薬準備処理を、他の分析項目に係る動作よりも優先して行うようにするものである。図3において、優先項目登録画面30は、優先項目として設定可能な分析項目を表示する設定可能項目表示部31と、優先項目として設定するために選択した分析項目を表示する優先項目表示部32と、設定可能項目表示部31において図示しないカーソルなどの手段で指定した分析項目を優先項目の登録対象として優先項目表示部32に表示させる登録ボタン33と、有線項目表示部32において図示しないカーソルなどの手段で指定した分析項目を優先項目の登録対象から解除する解除ボタン34と、優先項目登録画面30に表示中の設定を取り消して無効にする取消ボタン36と、優先項目登録画面30における設定内容を有効として、制御部19の記憶部(図示せず)に新たに登録する更新ボタン37とを備えている。また、優先項目登録画面30には、自動分析装置100において、複数の分析ユニット90を用いた構成とした場合に、優先項目登録画面30に表示中の設定が対象とする分析ユニット90を指定するためのユニット指定画面40(図4参照)を表示するユニット指定ボタン35が設けられている。
【0021】
図4は、ユニット指定画面40を示す図である。ユニット指定画面40には、自動分析装置100を構成する分析ユニット90に割り当てられた名称が一覧で表示され、それぞれに選択するためのラジオボタンが設けられている。図4では、例として、自動分析装置100にユニット1〜ユニット4までの4つの分析ユニットを用いた場合のユニット指定画面40を示している。ユニット指定画面40には、ユニット指定画面40に表示中の設定を取り消して無効にする取消ボタン41と、ユニット指定画面40における設定内容を有効として、制御部19の記憶部(図示せず)に新たに登録する更新ボタン42とを備えている。何れかの分析ユニット90の名称におけるラジオボタンを選択し、更新ボタン42を選択することにより、優先項目登録画面30における設定を所望の分析ユニット90に対して反映するよう設定する。
【0022】
図5は、同一キャリブ使用条件設定画面50を示す図である。同一キャリブ使用条件設定画面50は、試薬の搭載・登録を自動分析装置100がオペレーション状態のときに行った場合に、自動分析装置100に事前に搭載・登録しキャリブレーションを行った試薬のキャリブレーションデータを用いる対象の範囲条件を設定する画面である。同一キャリブ使用条件設定画面50には、自動分析装置100に既に登録されたキャリブレーションデータが、新たに搭載・登録した試薬と同一ロットの試薬のものであれば使用する場合と、同一検査項目であればロットに関係なく使用する場合とがラジオボタンにより選択できるように設けられている。何れかの条件のラジオボタンを選択し、更新ボタン52を選択することにより、試薬のキャリブレーションデータを用いる対象の範囲条件を設定する。
【0023】
この状態で、オペレータにより制御部19への入力部19bなどによる分析処理実行の指令に基づいて、分析処理を開始する。ここでは、一例として磁性粒子を含む試薬に試薬準備処理として攪拌処理を行ったものを用いる分析処理を行う場合について説明する。本実施の形態における分析処理では、まず、サンプル分注ノズル10によりサンプル容器1からインキュベータディスク9の反応容器8に試料を分注する検体サンプリングを行う。次に、試薬分注ノズル11により試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に試薬を分注する第1段階試薬吸引・添加を行う。この状態で、インキュベーションを行った後、試薬分注ノズル11により試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に試薬を分注する磁性粒子試薬吸引・添加を行う。なお、磁性粒子試薬吸引・添加では、吸引直前に試薬攪拌機構20による試薬攪拌処理を行う。次に、反応容器攪拌機構14により、反応容器8の反応液を攪拌して、さらに、インキュベーションをおこなう。そして、ノズル17により、このような処理を施した反応液、発光誘導試薬容器22、洗浄試薬容器23に収容された試薬などを吸引し、電気信号検出器18は電気信号測定などの測定処理を行う。
【0024】
以上のような分析処理のオペレーション中に、試薬切れ、或いは、緊急検体の分析依頼があった場合など緊急的に未搭載・未登録の試薬を用いる分析の必要が生じ、試薬を新たに搭載・登録する場合について説明する。
【0025】
図6は、試薬の追加登録時に制御部19の表示部19aに表示される試薬登録実行画面60である。試薬登録実行画面60には、追加する試薬に対応する分析項目を優先項目として処理するかどうかを選択するチェックボックス61と、試薬登録実行画面60に表示中の設定を取り消して試薬の追加登録を中止するいいえボタン62と、試薬登録実行画面60における設定内容を有効として、制御部19に試薬登録の実行指令を行うはいボタン63とが備えられている。試薬容器ローダ21に追加する試薬を搭載し、はいボタン63を選択することにより、試薬登録処理が実行される。
【0026】
図7は制御部19による試薬登録処理の処理内容を示すフローチャートであり、図8は試薬登録処理の詳細を説明する図である。
【0027】
図7に示すように、制御部19は、まず、自動分析装置100のオペレーション状態において動作する機構(例えば、検体分注に関する機構)と試薬準備処理で動作する機構(例えば、試薬攪拌に関する機構)の動作が干渉するかどうかを判定し(ステップS10)、判定結果がNOの場合は、試薬準備処を実施し(ステップS50)、処理を終了する。また、ステップS10での判定結果がYESの場合は、登録する試薬に対応する分析項目が優先項目であるかどうかを判定し(ステップS20)、判定結果がYESの場合は、検体分注を一時停止し(ステップS30)、試薬準備処理を実施し(ステップS50)、処理を終了する。ステップS20での判定結果がNOの場合は、検体分注を続行し(ステップS40)、その後、試薬準備処理を実施し(ステップS50)、処理を終了する。
【0028】
ここで、試薬登録処理における通常項目と優先項目の処理の違いについて説明する。図8では、通常項目αの試薬登録処理を行う場合と、優先項目βの試薬登録処理を行う場合を例示して説明する。図8に示すように、通常項目αの試薬登録処理を行う場合は、既に依頼済みの分析処理(例えば、依頼A〜依頼Z)が終了した後に、通常項目αの試薬準備処理が行われる。これは、通常項目αの試薬登録実行のタイミングに依存しない。一方、優先項目βの試薬登録処理を行う場合は、既に依頼済みの分析処理のうち、試薬登録実行のタイミングで実施中の依頼(図8では依頼A)の終了直後に項目βの試薬準備処理が行われる。このように、依頼済みの分析処理のうち依頼B〜依頼Zは一時停止し、優先項目βの試薬準備処理を優先して行う優先処理機能を有している。
【0029】
次に、図9を用いて試薬準備処理の詳細について説明する。図9において、工程a〜工程g、及び工程Zは、分析処理における各処理工程を示しており、通常項目の処理シーケンスAと優先項目の処理シーケンスBについて、各工程の実施状態を模式的に示している。
【0030】
工程aは、検体サンプリングであり、サンプル分注ノズル10によりサンプル容器1からインキュベータディスク9の反応容器8に試料を分注する工程である。工程bは、第1段階試薬吸引・添加であり、試薬分注ノズル11により試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に発光標識試薬などを分注する工程である。工程cは、磁性粒子試薬吸引・添加であり、試薬分注ノズル11により試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に磁性粒子試薬などを分注する工程である。なお、工程cでは、磁性粒子試薬吸引の直前に不図示の試薬の攪拌動作を行う。工程dは、反応液攪拌であり、反応容器8に収容された反応液を反応容器攪拌機構14により攪拌する工程である。工程eは、電気信号測定であり、ノズル17によりインキュベータディスク9の反応容器8で混合された反応液やその他試薬等を吸引し、電気信号検出器18により、測定処理として電気信号測定を行う工程である。工程f及び工程gは、インキュベーションであり、反応容器8の反応液に対して加温処理あるいは恒温処理を施し反応を促進する工程である。工程Zは、磁性粒子初期攪拌であり、試薬を使える状態にするための試薬準備処理として攪拌処理を行う工程である。
【0031】
図9に示すように、通常項目に対する試薬準備処理のシーケンスAでは、試薬登録実行後、まず、工程Zを行い(時間1)、その後、工程a(時間2)、工程b(時間3)、工程f(時間4,5)、工程c(時間6)、工程d(時間7)、工程g(時間8,9)、工程e(時間10)の順に処理を行う。これに対し、優先項目に対する試薬準備処理のシーケンスBでは、まず、工程a(時間1)、工程b(時間2)を行い、工程f(時間3,4)と同じ時間に工程Z(時間3)を行い、その後、工程c(時間5)、工程d(時間6)、工程g(時間7,8)、工程e(時間9)の順に処理を行う。このように、制御部19は、試薬準備処理(工程Z)と、処理工程の内、試薬を用いる処理工程の前に行う処理工程の少なくとも1つ(本例では工程f)とを並列して行う並列処理機能を有している。
【0032】
試薬登録処理の詳細を図面を参照しつつさらに説明する。
【0033】
図10は通常項目の試薬登録処理を、図11は優先項目の試薬登録処理の様子それぞれ時系列的に示す図である。図10及び図11では、分析項目A,Cを有する測定1〜測定5の5つの測定に、分析項目Bを有する測定6を追加する場合を示している。なお、図10及び図11において、工程a〜工程g、及び工程Zは、図9の説明で示したものと同様であり、分析処理における各処理工程を示している。
【0034】
図10に示すように、通常項目の分析処理では、測定1〜測定6に対して時間3と時間4の間に分析項目Bを登録した場合、既に依頼済みの測定1〜測定6が終了した後であって、自動分析装置100のオペレーション状態(磁性粒子試薬吸引・添加の項目c)において動作する機構と試薬準備処理で動作する機構(磁性粒子初期攪拌の項目Z)の動作が干渉しないタイミング(時間10)で、通常項目である分析項目Bの試薬準備処理が行われる。続いて、工程a〜工程eの順に処理が行われる。このとき、分析項目Bの登録から工程e(測定処理:電気信号測定)の終了までの時間であるターンアラウンドタイムは経過時間t1となる。
【0035】
図11に示すように、優先項目の分析処理では、通常項目と同様に、測定1〜測定5に対して時間3と時間4の間に分析項目Bを登録した場合、既に依頼済みの測定1〜測定4(分析項目A)が終了した後であって、自動分析装置100のオペレーション状態(磁性粒子試薬吸引・添加の項目c)において動作する機構と試薬準備処理で動作する機構(磁性粒子初期攪拌の項目Z)の動作が干渉しないタイミング(時間9)で、通常項目である分析項目Bの試薬準備処理が行われる。これに伴って、測定5(分析項目C)及び測定7(分析項目B:優先項目)は、それぞれ、時間6,7に工程a〜工程eの処理が開始される。このとき、分析項目Bの登録から工程e(測定処理:電気信号測定)の終了までの時間であるターンアラウンドタイムは経過時間t2となる。したがって、優先項目の分析処理におけるターンアラウンドタイムt2を通常項目の分析処理におけるターンアラウンドタイムt1よりも短くすることができる。
【0036】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0037】
自動分析装置で用いる試薬には、使用前に所定の試薬準備処理の実施を必要とするものがあり、分析処理の開始前に必要な試薬準備処理をまとめて行っておくなどの運用を行っており、分析処理の開始後に試薬を新たに搭載・登録する必要が生じた場合は、その試薬にも使用前に試薬準備処理を施す必要がある。しかしながら、従来技術のように、分析処理中の試薬登録や試薬交換作業を行うだけでは、新たに登録した試薬を使用して分析処理を早急に実施することができず、実施中の分析処理の終了後などに試薬準備処理を実施してから分析処理を開始する必要があり、したがって、緊急検査のターンアラウンドタイムについて改善の余地があった。
【0038】
これに対し本実施の形態においては、優先項目の試薬に対して、試薬準備処理を予め設定された他の分析項目よりも優先して実施する優先実施機能と、試薬準備処理と、分析項目の処理工程の内、試薬を用いる処理工程の前に行う処理工程の少なくとも1つとを並列して行う並列処理機能とを有するように構成したので、試薬準備処理を必要とする試薬を新たに搭載・登録した場合のターンアラウンドタイムを改善することができる。
【0039】
また、複数の分析ユニット90のそれぞれについて個別に優先試薬を設定するよう構成したり、事前登録以外に試薬を優先項目の試薬と同様に試薬準備処理を行わせることを選択できるように構成したので、検査室の運用形態の柔軟性を向上することができる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、試薬準備処理の対象試薬を磁性粒子試薬とし、試薬準備処理として攪拌処理を行う場合を例にとり説明したがこれに限られず、分析処理に使える状態にするために試薬準備処理を要する試薬に対して必要な試薬準備処理を行う場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 サンプル容器
2 サンプル容器ラック
3 ラック搬送ライン
4 試薬容器
4a〜4c 容器
4d バーコード
5 試薬容器ディスク
7 試薬ディスクカバー
7a 試薬ディスクカバー開口部
8 反応容器
9 インキュベータディスク
10 サンプル分注ノズル
10a サンプル分注チップ
11 試薬分注ノズル
12,13 反応容器・サンプル分注チップ収容部
14 反応容器攪拌機構
15 廃棄孔
16 搬送機構
16a チップ装着位置
17 ノズル
18 電気信号検出器
19 制御部
19a 表示部
20 試薬攪拌機構
21 試薬容器ローダ
22 発光誘導試薬容器
23 洗浄試薬容器
30 優先項目登録画面
40 ユニット指定画面
50 同一キャリブ使用条件設定画面
60 試薬登録実行画面
90 分析ユニット
100 自動分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の処理工程からなる複数種類の分析項目にそれぞれ対応した試薬を収容した複数の試薬容器と、
前記複数の試薬容器を保管可能な試薬容器保管部とを備え、
分析対象の検体に対して前記複数種類の分析項目を予め設定された順番に実施する自動分析装置であって、
前記試薬容器保管部に新たな試薬を収容した試薬容器が保管され、かつ、該試薬に対応する分析項目が優先的に実施されるよう設定された場合、該試薬を使用可能な状態にする試薬準備処理を予め設定された他の分析項目よりも優先して実施する優先実施機能と、前記試薬準備処理と、前記分析項目の処理工程の内、前記試薬を用いる処理工程の前に行う処理工程の少なくとも1つとを並列して行う並列処理機能とを有する制御部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記新たな試薬は磁性粒子試薬であり、前記試薬準備処理は攪拌であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
新たな試薬を収容した前記試薬容器の保管、及び、試薬準備処理は、他の分析項目の実施中に実施可能であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記分析項目が優先項目か通常項目かの設定を行う設定手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試薬容器保持部をそれぞれ有する複数の分析部と、
前記分析項目が優先項目か通常項目かの設定を前記複数の分析部のそれぞれに設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−8053(P2012−8053A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145469(P2010−145469)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】