説明

自動分析装置

【課題】反応容器洗浄時、反応容器の内側壁面に付着した水滴を除去する。
【解決手段】反応容器洗浄機構は、空気噴射ノズル23を搭載する。反応容器4上面から底面に向け、空気噴射ノズル23から噴射された空気は、反応容器4の内側壁面に付着した水滴29を吹き飛ばす(A)。次に、壁面に付着していた水滴29は、吹き飛ばされながら微小なサイズとなり底面に集められる(B)。そして最後、微小となった水滴は噴射された空気と共に、吸引ノズルb16−8から吸引され、吸引チューブを経由し真空瓶へ排出される(C)。反応容器内の水滴が、ほぼ完全に排出されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液,尿等の生体試料を定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に試料と試薬を混合しその反応液の色の変化を検出して生体試料中の分析対象成分の分析を行い、分析終了後、反応液を洗浄する洗浄機構を備える自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検体と試薬を反応させる反応容器は、分析終了後に自動分析装置に備えられている洗浄機構で洗浄され、繰り返し利用される。反応容器の洗浄は、反応容器内に洗浄ノズルを挿入し、洗浄液である洗剤と純水の注入・排出を繰り返すことで行われる。洗浄の最後に行われる純水の排出においては、液滴が反応容器内に残ると次の測定の測定値に影響を及ぼすため、できるだけ液滴を残さないように工夫が施されてきた。例えば、特許文献1記載の技術では、先端がブロック状になった吸引ノズルを用い、ブロックの先端から残水を吸引することで、反応容器の内壁とブロックとの隙間に強い流れを生じさせている。この流れにより、内壁に付着した液滴を吸い取ることで残水を少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−62431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、反応容器内壁への液滴の付着はかなり少なくなるが、一方で、ブロック先端の吸引孔の直下に液滴が残る場合があった。
【0005】
本発明の目的は、洗浄後に反応容器に残る洗浄水を特許文献1以上に低減し、信頼性の高い自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0007】
検体と試薬を反応させる反応容器と、該反応容器を円周上に複数配置した反応ディスクと、前記反応容器内での検体と試薬の反応を分析する分析機構と、前記反応容器内での反応後の反応液を吸引除去する反応容器洗浄機構と、を備えた自動分析装置において、前記反応容器洗浄機構は、反応容器上方から気体を噴出させる気体噴出口と、該気体噴出口に隣接して設けられた該反応容器内部の気体を吸引する気体吸引口と、を備えた自動分析装置。前記洗浄機構は、請求項の記載では省略しているが、反応後の反応液を吸引する反応液吸引機構、洗浄液を反応容器に注入する洗浄液注入機構などを備えることが一般的である。反応容器内に噴出する気体は圧縮空気であっても良い。噴出する気体の圧力や流量は、反応容器の内容積などにより適宜設定可能である。気体噴出口に隣接して気体吸引口を設けるが、“隣接”とは、隣り合って接触している必要はなく、反応容器の開口部に気体噴出口と気体吸引口が臨んでいれば良い。気体噴出口は反応容器内にノズル状に突き出していても良い。
【発明の効果】
【0008】
前記洗浄機構のノズルから噴射された空気は、反応容器内壁側面に付着した水滴を吹き飛ばし、前記洗浄水の水滴は、反応容器上面の吸引ノズルに向かって流れ、排出される。
【0009】
このように、反応容器内壁側面の水滴をほぼ完全に排出することで、洗浄後に反応容器に残る洗浄水が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動分析装置の構成図。
【図2】反応容器洗浄機構の模式図。
【図3】反応容器洗浄の流れを示した模式図。
【図4】反応容器内に吸引ノズルが挿入された状態を、部分的に断面を取って示す正面図。
【図5】図4に示す吸引ノズルの作用を説明する、正面の断面図。
【図6(A)】反応容器内に吸引チップが挿入された状態を、(A)部分的に断面を取って示す上面図。
【図6(B)】反応容器内に吸引チップが挿入された状態を、(B)吸引チップ先端図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
まず自動分析装置の概要について図1を用いて説明する。
【0013】
自動分析装置は検体架設部,反応部から構成されている。検体架設部では、検体容器1に分取された血清や尿等の検体が検体架設部2にセットされ、検体分注機構3によって検体容器1から反応容器4へ吐出される。反応容器4は、反応部にある反応ディスク5の円周上に配置されており、反応ディスク5が回転することにより、検体が分注された反応容器4は試薬添加位置まで移動し、試薬ディスク6にセットされた試薬容器7から試薬分注機構8によって試薬が添加される。試薬が添加された反応容器4は、反応ディスク5が回転することにより、攪拌位置まで移動し反応容器攪拌機構9が回転することにより攪拌される。反応液が入った反応容器4は、反応ディスク5の回転により、光度計10の光軸上を一定間隔で通過し、その都度吸光度が測定される。測定された吸光度から、反応液中の目的成分の濃度が算出され結果が出力される。なお使用後の反応容器4は、反応容器洗浄機構11によって洗浄され、次の測定に使用される。
【0014】
次に、反応容器4が反応容器洗浄機構11によって洗浄される流れを図2,図3,図4,図5を用いて説明する。
【0015】
図2は、反応容器洗浄機構11の一部を示す模式図である。反応容器洗浄機構11は、洗浄液を反応容器4へ供給する給水ポンプ12,洗浄水供給チューブ13(図は13と記載),電磁弁14−1,洗浄水吐出ノズル15からなる洗浄液供給部と、反応容器4から反応液や洗浄液を排出する吸引ノズル16,吸引チューブ17(図は17と記載),廃液を一時的に蓄える真空瓶18,真空タンク19を一定の負圧に保つ真空ポンプ20,真空チューブ21,電磁弁14−2,14−3からなる洗浄液排出部で構成される。
【0016】
洗浄水吐出ノズル15は、ノズル昇降機構22により昇降可能である。反応ディスク5の回転により反応容器洗浄機構11からアクセス可能になった反応容器4に対し、洗浄水吐出ノズル15が、ノズル昇降機構22の下降により挿入される。そして洗浄水が、電磁弁14−1の開放により、給水ポンプ12から洗浄水供給チューブ13,洗浄水吐出ノズル15を経由して、反応容器4上面まで吐出される。この時、洗浄水吐出ノズル15は、ノズル昇降機構22の上昇により、上がりながら洗浄水を反応容器4へ吐出する。そして、洗浄水吐出ノズル15から反応容器4に吐出された洗浄水が、反応容器4から溢れ出る(以下オーバフロー)直前、電磁弁14−3が開放され、吸引ノズル16はオーバフローする洗浄水を吸引する。
【0017】
次に反応容器4内へ吐出された洗浄水を排出する流れを述べる。洗浄水で満たされた反応容器4に対し、吸引ノズル16が、ノズル昇降機構22の下降により挿入される。吸引ノズル16が反応容器4へ挿入される直前、電磁弁14−3が開放され、吸引ノズル16は下降しながら反応容器4の洗浄水を吸引する。吸引ノズル16で吸引された洗浄水は、吸引チューブ17から真空瓶18へ送られ、電磁弁14−2の開放により、廃液タンクへ流れる。吸引ノズル16が反応容器4底面に接触した後、電磁弁14−3が閉じられ、吸引ノズル16による洗浄水の吸引が終了し、洗浄水の吐出が、上記の通り洗浄水吐出ノズル15で開始される。このように、洗浄液の供給と排出を繰り返すことで反応容器4の洗浄が行われる。
【0018】
次に、反応容器4の洗浄工程について図3を用いて説明する。
【0019】
図3は、反応容器洗浄の流れを示した模式図である。ノズル昇降機構22に設置されている洗浄ノズル15,16、反応ディスク5に配置されている反応容器4を示している。反応容器4の洗浄は、純水洗浄→アルカリ洗浄→酸洗浄→純水洗浄→純水洗浄、の順に実行される。以下、詳細な反応容器4の洗浄工程を述べる。
【0020】
最初に反応ディスク5の位置aで、純水洗浄が行われる。反応液吸引ノズル16−1で反応容器4内の反応液が吸引され、純水が純水吐出ノズル15−1から反応容器4内へ一定量吐出される。
【0021】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクbの位置に移動され、この位置においてアルカリ洗浄が行われる。純水吸引ノズル16−2で反応容器4内の洗浄水が吸引され、アルカリ洗剤がアルカリ洗剤吐出ノズル15−2から反応容器4内へ一定量吐出される。
【0022】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクcの位置に移動され、この位置において酸洗浄が行われる。アルカリ洗剤吸引ノズル16−3で反応容器4内の洗浄水が吸引され、酸洗剤が酸洗剤吐出ノズル15−3から反応容器4内へ一定量吐出される。
【0023】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクdの位置に移動され、この位置において純水洗浄が行われる。酸洗剤吸引ノズル16−4で反応容器4内の洗浄水が吸引され、純水が純水吐出ノズル15−4から反応容器4内へ一定量吐出される。
【0024】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクeの位置に移動され、この位置において位置dと同様、純水洗浄が行われる。純水吸引ノズル16−5で反応容器4内の洗浄水が吸引され、純水が純水吐出ノズル15−5から反応容器4内へ一定量吐出される。
【0025】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクfの位置に移動され、この位置において洗浄水吸引が行われる。純水吸引ノズル16−6で反応容器4内の洗浄水が吸引される。
【0026】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクgの位置に移動され、この位置において、セルブランク測定のための純水が吐出される。純水がセルブランク水吐出ノズル15−6から反応容器4内へ一定量吐出される。
【0027】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクhの位置に移動され、この位置において、セルブランク測定のために吐出された純水の吸引が行われる。吸引ノズルa16−7で反応容器4内のセルブランク水が吸引される。
【0028】
以上の反応容器洗浄機構11による吸引と吐出動作は、図2で説明した通りである。
【0029】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクiの位置に移動される。反応容器4内のセルブランク水は、吸引ノズルaで吸引されるが、セルブランク水の水滴が、反応容器4の内側壁面や底面に残る。この位置において、反応容器4内に残っている水滴の吸引が行わる動作を図4から説明する。
【0030】
図4は、反応容器4に吸引ノズルが挿入された状態を、部分的に断面をとって示す正面図である。空気噴射ノズル23が、ノズル昇降機構22の下降により反応容器4に挿入されると、電磁弁14−4が開放され、空気タンク24に貯められた空気が、反応容器4の上面から底面に向け、空気供給チューブ25を経由し、空気噴射ノズル23から噴射される。空気タンク24には、予め空気ポンプ26から空気が供給されており、空気タンク24の空気量は圧力センサで監視されている。空気噴射ノズル23で空気の噴射が開始された後、電磁弁14−3の開放により、反応容器4内の水滴、そして噴射された空気が吸引ノズルb16−8から排出される。吸引ノズルb16−8により吸引された水滴と空気は、吸引チューブ17−2から真空瓶18へ送られ、電磁弁14−2の開放により、廃液タンクへ送られる。電磁弁14−2,3が閉じられると、吸引と空気噴射が終了する。
【0031】
反応容器4内の水滴が、吸引ノズルb16−8から排出される様子を図5で説明する。図5は、本発明の吸引ノズルの作用を示す正面の断面図である。ここでの吸引工程は、大きく3つに分類される。
【0032】
まず始め、反応容器4上面から底面に向け、空気噴射ノズル23から噴射された空気は、反応容器4の内側壁面に付着した水滴29を吹き飛ばす(図5−A)。次に、壁面に付着していた水滴29は、吹き飛ばされながら微小なサイズとなり底面に集められる(図5−B)。そして最後、電磁弁14−3が開放されると、微小となった水滴は噴射された空気と共に、吸引ノズルb16−8から吸引され、吸引チューブ17(図は17と記載)を経由し真空瓶19へ排出される(図5−C)。なお、吸引ノズルb16−8と−空気噴射ノズル23の先端部には、吹き飛ばされた水滴が反応容器4から飛び出さないよう反応容器をカバーする蓋28が付いており、ノズル昇降機構22の下降でこの蓋が反応容器と接触することで、反応容器がカバーされる。
【0033】
次いで、反応ディスク5が回転することにより、反応容器4は反応ディスクjの位置に移動され、この位置において最後の吸引を行う。吸引チップ16−9が、ノズル昇降機構22の下降により反応容器4に挿入された時、反応容器4上面からの断面図を図6(A)に示す。外側が直方体の形状をした吸引チップ16−9が反応容器4に挿入される直前、電磁弁14−3が開放され、反応容器4に残った水滴は、吸引チップ16−9内部の円筒形の吸引ノズルc16−10から吸引される。吸引チップ16−9の先端は、図6(B)に示す通り凹凸の構造をしており、反応容器4底面に接触しても、吸引チップ16−9先端と反応容器4底面にできた隙間から、水滴が吸引される。吸引チップ16−9が反応容器4の底面に接触した後、電磁弁14−3が閉じられ、吸引チップ16−9による吸引が終了する。
【0034】
従来、反応容器洗浄機構11には、空気噴射ノズル23は搭載されておらず、セルブランク水の排出は、吸引ノズルa16−7と吸引チップ16−9で行われている。吸引ノズルa16−7でセルブランク水が排出された後、反応容器4の内側壁面に水滴29が残ることがある。この水滴は、吸引チップ16−9で吸引されず反応容器4に残ってしまう。
【0035】
本発明では、反応容器洗浄機構11に図5に示す空気噴射ノズル23を搭載し、反応容器内の水滴が、ほぼ完全に排出されるようにした。
【符号の説明】
【0036】
1 検体容器
2 検体架設部
3 検体分注機構
4 反応容器
5 反応ディスク
6 試薬ディスク
7 試薬容器
8 試薬分注機構
9 反応容器攪拌機構
10 光度計
11 反応容器洗浄機構
12 給水ポンプ
13 洗浄水供給チューブ
14 電磁弁(14−1,14−2,14−3,14−4)
15 洗浄水吐出ノズル
15−1,15−4,15−5 純水吐出ノズル
15−2 アルカリ洗剤吐出ノズル
15−3 酸洗剤吐出ノズル
15−6 セルブランク水吐出ノズル
16 吸引ノズル
16−1 反応液吸引ノズル
16−2,16−5,16−6 純水吸引ノズル
16−3 アルカリ洗剤吸引ノズル
16−4 酸洗剤吸引ノズル
16−7 吸引ノズルa
16−8 吸引ノズルb
16−9 吸引チップ
16−10 吸引ノズルc
17 吸引チューブ
18 真空瓶
19 真空タンク
20 真空ポンプ
21 真空チューブ
22 ノズル昇降機構
23 空気噴射ノズル
24 空気タンク
25 空気供給チューブ
26 空気ポンプ
27 分配コネクタ
28 反応容器カバー
29 水滴
30 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬を反応させる反応容器と、該反応容器を円周上に複数配置した反応ディスクと、前記反応容器内での検体と試薬の反応を分析する分析機構と、前記反応容器内での反応後の反応液を吸引除去する反応容器洗浄機構と、を備えた自動分析装置において、
前記反応容器洗浄機構は、反応容器上方から気体を噴出させる気体噴出口と、該気体噴出口に隣接して設けられた該反応容器内部の気体を吸引する気体吸引口と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記気体噴出口は、前記反応容器に挿入されるノズルを備え、かつ該ノズルから気体を噴出した際に、該反応容器内の液体が反応容器上面から飛び散らないようにするための該反応容器の開口部を覆うカバーを備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記カバーは前記気体噴出口のノズルと一体で形成され、ノズルの上下動と連動して該カバーも上下動することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6(A)】
image rotate

【図6(B)】
image rotate


【公開番号】特開2012−88132(P2012−88132A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234115(P2010−234115)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】