説明

自動分析装置

【課題】校正試料や精度管理試料の状態を一定に保つことにより、より信頼性の高い校正や精度管理を行うことができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】分析対象試料が収容される試料容器17を載置する試料ラック18を搬送するための搬送ライン9,10と、搬送ライン9,10に沿って配置され、分析対象試料の定性・定量分析を行う複数の分析ユニット5〜8とを備えた自動分析装置において、分析表示部15に表示した精度管理試料登録情報画面200,300により、分析対象試料を分析に使用可能な状態にする調製処理の条件を定めた精度管理試料情報を設定し、その精度管理試料情報に基づいて分析対象試料の調製処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの試料(以下、検体と称する)の定性・定量分析を行う臨床検査の現場においては、検査の省力化や高速化のために自動分析装置が用いられている。
【0003】
このような自動分析装置では、分析結果の信頼性を担保するために必要に応じて、検量線を得るための検量線校正操作であるキャリブレーションや、その検量線が適性であることを確認するための精度管理等を実施している。しかしながら、キャリブレーションや精度管理は、その方法や用いる試料の種類が自動分析装置の種類や分析項目毎に異なる場合もあり、したがって、キャリブレーションや精度管理、或いはそれらに用いる非常に多種多量の試料(校正試料、精度管理試料)等の管理は非常に繁雑となっている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2006−343351号公報)には、キャリブレーション又は精度管理を行う必要が発生したことを容易にオペレータに知らせることにより、的確にキャリブレーション又は精度管理を実行させることを目的として、それぞれの分析ユニットにて分析対象を測定する複数の分析ユニットが検体ラックを搬送するための搬送ラインに沿って配置された自動分析装置に対して適用される自動分析装置支援システムにおいて、キャリブレーション又は精度管理の状態点検画面の表示要求手段と、該表示要求に伴って、キャリブレーション又は精度管理に関連する複数状態の分類に対応して設けられた複数の分類見出し、及び各分類見出しに対応した詳細情報の表示を指示するための指示ボタン、を有する状態点検画面を出現せしめる画面表示手段と、上記指示ボタンによる指示があったときに、該当する状態の分析項目名、及び該分析項目のキャリブレーション又は精度管理を実行すべき分析ユニット名、を上記状態点検画面上に表示せしめるように制御する制御手段とを備えた自動分析装置支援システムに関する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2009−294230号公報)には、オペレータが精度管理試料の投入という行為を行わなくとも、精度管理を実現することが出来ることを目的として、検体を分析する分析ユニットと、前記検体を保持する検体容器を載置する検体ラックを前記分析ユニットに搬送するラック搬送装置と、検体ラックを該ラック搬送装置に投入するラック投入口と、精度管理試料を前記ラックに設置した状態で装置内に保持する機構と、複数の同一項目の試薬を設置することが可能で、現在使用している試薬が第1の所定の条件になった時点で、待機中の他の試薬に自動で切り替えることが可能な自動分析装置において、現在使用している試薬の残数が第2の所定の条件になった時点で、待機中の試薬に対して、精度管理試料の測定依頼を生成し、装置内に保持された精度管理試料を分析するように搬送をする制御手段を備えた自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−343351号公報
【特許文献2】特開2009−294230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、自動分析装置のキャリブレーションに用いる校正試料や精度管理に用いる精度管理試料は、試薬メーカからの購入や、自動分析装置を用いる施設で独自にプール血清を精度管理試料として作成保管することにより調達している。これら校正試料や精度管理試料は、自動測定装置における装置状態確認のための基準としての役割もあるため、同一ロット(プール血清では同一試料を意味する)の校正試料や精度管理試料を品質を維持したまま長期間保存することが求められる。したがって、校正試料や精度管理試料は、凍結保存や凍結乾燥保存などの方法により保存される場合が多い。
【0008】
凍結保存や凍結乾燥保存により保存された校正試料あるいは精度管理試料は、そのままの状態では校正や精度管理での測定に用いることはできないので、調製処理を施すことによって測定可能な状態にしてから測定に用いる。このとき、調製処理を施した後の校正試料や精度管理試料の状態によって測定結果にも影響が出るため、信頼性の高い校正や精度管理を行うためには、校正や精度管理を行うたびに用いる試料の状態を一定に保つ必要がある。
【0009】
調製処理を施した後の校正試料や精度管理試料の状態を毎回一定にするためには、調製処理における各種条件を一定にしなければならない。しかしながら、校正試料や精度管理試料には多くの種類があって調製方法も異なり、また、対象となる項目によって使用するタイミングなどが異なるため、オペレータが全ての調製処理を実施するのに必要な手間と時間は膨大なものとなり、したがって、校正試料や精度管理試料の状態を一定に保つことは非常に困難であった。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、校正試料や精度管理試料の状態を一定に保つことにより、より信頼性の高い校正や精度管理を行うことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、分析対象試料が収容される試料容器を載置する試料ラックを搬送するための搬送手段と、前記搬送手段に沿って配置され、前記分析対象試料の定性・定量分析を行う複数の分析ユニットと、前記搬送手段により搬送される試料ラックを一時的に保管するためのラック保管手段と、前記分析対象試料を分析に使用可能な状態にする調製処理の条件を定めた調製プロトコルを設定する調製プロトコル設定画面を表示する表示手段と、オペレータが前記調製プロトコル設定画面を操作して前記調製プロトコルの設定操作を行うための操作手段と、前記調製プロトコルの設定に基づいて前記分析対象試料の調製処理を行う制御手段とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、校正試料や精度管理試料の状態を一定に保つことにより、より信頼性の高い校正や精度管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を示す図である。
【図2】表示部に表示されるメイン画面を示すものである。
【図3】調製処理として溶解調製処理を設定する場合の精度管理試料登録情報画面を示す図である。
【図4】調製処理として融解処理を設定する場合の精度管理試料登録情報画面を示す図である。
【図5】精度管理試料登録情報の開始タイミング設定画面を示す図である。
【図6】精度管理試料登録情報画面の表示欄に表示される精度管理試料の情報の一部を一覧形式で示す図である。
【図7】調製処理(精度管理試料調製処理)を含む試料投入の処理全体を示すフローチャートである。
【図8】図7に示した調製処理の詳細を示すフローチャートである。
【図9】精度管理処理を示すフローチャートである。
【図10】チェック処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
(1)自動分析装置
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を示す図である。
【0016】
図1において、本実施の形態の自動分析装置は、分析対象試料が収容される試料容器17を載置する試料ラック18を搬送するための搬送ライン9,10と、搬送ライン9,10に試料ラック18を投入するための試料ラック投入部1と、搬送ライン9,10により搬送される試料ラック18を一時的に保管するための試料ラック保管部2,3と、搬送ライン9,10に沿って配置され、分析対象試料に対して攪拌処理などを施す試料処理部4と、搬送ライン9,10に沿って配置され、分析対象試料の定性・定量分析を行う複数(例えば4つ)の分析ユニット5〜8と、分析が終了した試料ラック18を回収するための試料ラック回収部16と、自動分析装置における分析処理や各種動作の設定画面や結果表示画面を表示するための表示部と15と、表示部15の表示内容に基づいて入力操作することにより、各種操作を行う操作部14と、自動分析装置における各種情報やプログラム等を記憶する記憶部13と、自動分析装置全体の動作を制御す制御部12とから概略構成されている。
【0017】
なお、本実施の形態において、分析対象試料とは、一般検体(例えば、血清や全血、尿、或いは、それらを希釈処理した被検液など。以下、検体と称する)、校正(キャリブレーション)に用いる校正試料(キャリブレータ)、及び、精度管理に用いる精度管理試料を示す。校正試料は、一般検体の成分濃度を算出するための検量線を得るための測定(校正)に用いられる既知濃度の試料である。また、精度管理試料は、検量線が適正であるかどうかを確認するための測定(精度管理)に用いられる既知濃度の試料である。
【0018】
(1−1)試料ラック投入部1
試料ラック投入部1は、試料ラック18を自動分析装置に投入するための投入部であり、オペレータが複数の試料ラック18を同時に載置して順次自動投入できるように構成されている。試料ラック投入部1には、各試料ラック18あるいは各試料容器17にバーコードやICタグなどの形態で付与された識別情報(ID)を読み取る試料ID取得部11が設けられており、オペレータにより投入された試料ラック18や試料容器17ごとに識別情報が読み取られて制御部12に出力される。識別情報の読み取りが終了した試料ラック18及び試料容器17は、順次、搬送ライン9,10に送出される。試料容器17は、予め定められた規格に適合するものであれば良く、自動分析装置専用の試料容器のほか、試験管、採血容器などが用いられる。試料ラック18には、1つ以上(本実施の形態では5つ)の試料容器17が保持されており、試料ラック単位で搬送ライン9,10に搬送される。
【0019】
(1−2)搬送ライン9,10
搬送ライン9,10は、試料ラック18を試料ラック投入部1から試料ラック保管部2,3や試料処理部4、分析ユニット5〜8などを経由して試料ラック回収部16に送る経路である送り搬送ライン9と、試料ラック18を送り搬送ライン9の始点まで戻す戻り搬送ライン10とを有している。搬送ライン9,10は、制御部12からの指示に基づいて試料ラック18を自動分析装置の各所に搬送する。
【0020】
(1−3)試料ラック保管部2,3
試料ラック保管部2,3は、試料ラック投入部1から投入されて搬送ライン9,10により搬送される試料ラック18を一時的に保管するものであり、検体ラック18の送り搬送ライン9からの取り込みや送り搬送ライン9への搬出、検体ラック保管部2,3内に設けられた複数の保管位置2b,3bへの移動を行う試料ラック移動機構2a,2bを有している。各試料ラック18の保管位置2b,3bの情報と試料情報とは関連付けられて管理されており、その情報は記憶部13に記憶されている。また、試料ラック保管部2,3は、それぞれ、調温調湿機能を有しており、保管する試料ラック18に載置された試料容器17の試料に応じて、温度や湿度を調整し一定に保つ機能(恒温恒湿機能)を有している。
【0021】
(1−4)試料処理部4
試料処理部4は、送り搬送ライン9からの試料ラック18の取り込み、及び、送り搬送ライン9への送出機能を有するサンプリングライン4eと、サンプリングライン4eに設けられ、試料ラック18や試料容器17の識別情報を読取るための識別情報読取装置4cと、分析対象試料である校正試料や精度管理試料の調製処理の一種である溶解調製処理に用いられる溶解液を収容する溶解液容器4aと、溶解液容器4aから試料ラック18の試料容器17に溶解液を分注する溶解液分注部4bと、試料容器17に収容された試料を攪拌する攪拌部4dとを備えている。本実施の形態における調製処理とは、ある状態(例えば、凍結状態や凍結乾燥状態)の試料を測定可能な状態にする処理であり、後に詳述する。攪拌部4dは、試料容器17に収容された試料を攪拌混和する機能を有している。攪拌方法としては、例えば、ボルテックス攪拌、ピペッティング攪拌、超音波攪拌などがあり、試料容器単位、またはラック単位、複数ラック単位で攪拌処理を行う。
【0022】
(1−5)分析ユニット5〜8
分析ユニット5〜8は、送り搬送ライン9に対して着脱可能に設けられており、送り搬送ライン9からの試料ラック18の取り込み、サンプリング位置への置づけ、及び、送り搬送ライン9への送出機能を有するサンプリングライン5a〜8aと、各サンプリングライン5a〜8aに設けられ、試料ラック18や試料容器17の識別情報を読取るための識別情報読取装置5b〜8bと、分析対象試料と試料との分析項目に応じた反応を反応容器内で進めて反応液について例えば光学的に測定する反応部5c〜8cと、試料供給部5d〜8dと、分析ユニットを制御するためのコンピュータ5e〜8eとをそれぞれ備えている。分析ユニット5,6は、ディスペンサ方式の分析ユニットであり、固定された分析チャネルを有し、複数の試料吐出ノズルのそれぞれが試料ごとに専用化されている。分析ユニット7,8は、ピペッタ方式の分析ユニットであり、分析チャネルが固定されずにランダムアクセスに構成され、1本の試料ピペッティングノズルで順次分析項目に応じた試料を分注する。
【0023】
(1−6)制御部12
制御部12は、各分析ユニット5〜8の動作、搬送ライン9,10に関わる機構の動作及び自動分析装置における必要部分の動作制御を行うと共に、各種情報処理に必要な演算及び制御を実行する。制御部12には、記憶部13が設けられており、各種データや指示を入力するための操作部14と、情報を画面表示するための表示部15とが接続されている。記憶部13としては、例えば、内蔵型ハードディスクなどを用いることができる。制御部12で用いられるプログラムとしては、分析対象試料の分析処理を実行するための制御プログラムの他に、予め設定した調製プロトコルに基づいて校正試料や精度管理試料などの調製処理(精度管理試料調製処理など)を実行するための調製制御プログラム、精度管理試料を用いて精度管理処理を実行する精度管理プログラム、精度管理試料の使用可否を管理するチェック処理などがある。
【0024】
(2)調製処理
調製処理とは、そのままでは測定不可能である状態(例えば、凍結状態や凍結乾燥状態)にある分析対象試料を分析ユニット5〜8で測定し分析することが可能な状態にする処理であり、調製処理としては、融解調製処理や溶解調製処理などがある。調製処理は、その条件を定めた調製プロトコルに基づいて実行される。融解調製処理は、凍結状態で保存されているような分析対象試料を融解して測定可能な状態にする処理であり、処理手順、温度、時間、攪拌などに関して定めた融解調製プロトコルに基づいて実行される。また、溶解調製処理は、乾燥状態(凍結乾燥状態など)で保存されているような分析対象試料を溶解液などの添加により溶解して測定可能な状態にする処理であり、処理手順、温度、時間、攪拌、溶解液の種類などに関して定めた溶解調製プロトコルに基づいて実行される。
【0025】
(2−1)調製プロトコル
調製処理の調製プロトコルの設定は、制御部12の制御によって表示部15に精度管理試料登録情報画面200,300(後の図3,図4等参照)等を表示させ操作部14で操作することにより行われる。つまり、精度管理試料情報の登録や更新は、精度管理試料の調製プロトコルを設定するということであり、精度管理試料登録情報画面200,300やタイミング設定画面400などは、調製プロトコル設定画面を構成している。
【0026】
本実施の形態では、精度管理に用いる精度管理試料の調製処理を行う場合を例にとり、調製処理の設定および動作について説明する。なお、キャリブレーションに用いる校正試料について調製処理が必要な場合についても同様に調製プロトコルを設定できることは言うまでも無い。
【0027】
(2−1.1)メイン画面100
図2は、表示部15に表示されるメイン画面100を示すものである。
【0028】
メイン画面100には、各種情報を表示する情報表示領域106と、自動分析装置の動作を指示する各種指示ボタン127〜131と、オペレータの操作を補助する情報を表示するヘルプボタン132とが設けられている。
【0029】
(2−1.1.1)情報表示領域106
情報表示領域106には、ルーチン操作タブ101、試料タブ102、キャリブレーションタブ103、精度管理タブ104、ユーティリティタブ105が設けられており、これらのタブを選択することにより、情報表示領域106に目的の情報を表示させることができる。図2においては、精度管理タブ104が選択され、情報表示領域106に精度管理に関する情報を表示する精度管理情報表示領域112が表示された場合を示している。
【0030】
(2−1.1.2)精度管理情報表示領域112
精度管理情報表示領域112には、状況タブ107、日内タブ108、日差タブ109、コントロールタブ110、設定タブ111が設けられており、これらのタブを選択することにより、精度管理情報表示領域112に目的の情報を表示させることができる。図2においては、設定タブ111が選択され、精度管理情報表示領域112に精度管理試料の設定に関する情報が表示された場合を示している。
【0031】
設定タブ111が選択されると、精度管理情報表示領域112には、登録済みの精度管理試料のそれぞれに関する情報(精度管理試料情報)を一覧状に表示する、コントロール名欄113、種別欄114、精度管理試料番号欄115、ロット番号欄116、ID/ラックナンバー欄117、残量欄118、保持時間欄119、使用可否欄120、及び、状態121欄と、それらの情報の表示領域をするロールさせるスクロールボタン123と、精度管理試料の新規登録場合やカーソル122により選択した試料情報を確認する場合に精度管理試料登録情報画面200,300を表示させる試料登録ボタン124と、カーソル122により選択した試料情報を削除する試料情報削除ボタン125と、カーソル122により選択した試料の測定条件を確認する画面(図示せず)を表示させる分析項目登録ボタン126とが表示される。分析項目登録ボタン126の指示により表示される測定条件を確認する画面では、その試料はどの測定項目に対応するか、どういった際に自動で測定依頼を作成するか(精度管理処理実施間隔(時間)、精度管理処理実施間隔(検体数)、測定結果が異常を示したときに別の試料を測定して確認するかどうか、新規試薬登録時に測定するかどうか、検量線変更時に測定するか)といった事項を設定する。
【0032】
なお、制御部12は、登録済みの精度管理試料の情報について、上記の表示欄113〜121に示した情報のほか(ただし、一部重複する)に、図6に一覧形式で図示する試料状態情報として、測定に使用可能かどうかを示す使用可否、システムに投入されてからの経過時間を示す保持時間、調製処理が終了してからの経過時間を示す調製後時間、精度管理試料の残量、測定に用いた回数を示す測定回数、及び、前回の攪拌からの経過時間を示す攪拌後時間を保持し、記憶部15などに記憶している。
【0033】
(2−1.1.3)指示ボタン127〜131
メイン画面100には、オペレータが自動分析装置の動作を指示するための指示ボタン127〜131が設けられている。指示ボタンとしては、自動分析装置を停止させるためのストップボタン127と、サンプリングを停止させるためのサンプルストップボタン128、装置の異常を知らせるためのアラームボタン129と、印字を指示するための印字ボタン130と、自動分析装置を起動させるためのスタートボタン131とが配置されている。
【0034】
(2−1.2)精度管理試料登録情報画面200,300
図3及び図4は、精度管理試料登録情報画面を示す図であり、図3は調製処理として溶解調製処理を設定する場合、図4は調製処理として融解処理を設定する場合をそれぞれ示している。
【0035】
図3において、精度管理試料登録情報画面200には、精度管理試料の基本情報を入力するための基本情報領域201と調製処理に関する情報を入力するための調製情報領域202と、保持期限に関する情報を入力するための保持期限情報領域203と、攪拌に関する情報を入力するための攪拌情報領域204と、情報領域201〜204に入力した内容で精度管理試料を登録、又は、試料情報を更新し、メイン画面100に戻るための登録/更新ボタン226と、情報領域201〜204に入力した内容を破棄してメイン画面100に戻るためのキャンセルボタン227とが設けられている。
【0036】
基本情報領域201には、精度管理試料の名称、ID/ラック番号、種別、精度管理試料番号、ロット番号、有効期限、及び、容量(ul)をそれぞれを入力する入力欄205〜211が設けられている。各入力欄への入力は、操作部14の入力手段(例えば、キーボード、ポインティングデバイスなど)による直接入力のほか、種別の入力欄207のようにプルダウンにより選択的に入力するものもある。
【0037】
調製情報領域202には、精度管理試料に対する調製処理を実行するかどうかを設定する設定欄212a、調製処理の種類を入力する入力欄212、調製処理の開始タイミングを設定する開始タイミング設定画面400(後の図5参照)を表示させる開始タイミングボタン213、攪拌後に待機するかどうか(待機時間を設けるかどうか)を設定する設定欄218a、及び、攪拌後待機時間(hour.)を入力する入力欄218が設けられている。図3では、設定欄212aをチェックして調製処理を有効に設定し、調製処理の種類として溶解調製処理をプルダウンにより選択的に入力するとともに、攪拌後待機時間を有効に設定し、待機時間として2(hour.)を入力した場合を示している。図3に示すように、調製処理として溶解調製処理を入力した場合、調製情報領域202には、溶解調製処理の溶解液添加前に待機するかどうか(待機時間を設けるかどうか)を設定する設定欄214a、溶解前待機時間(min.)を入力する入力欄214、溶解液の種類を入力する入力欄215、溶解液量(ul)を入力する入力欄216、溶解調製処理の後に待機するかどうか(待機時間を設けるかどうか)を設定する設定欄217a、及び、溶解後待機時間(hour.)を入力する入力欄217が配置される。
【0038】
溶解前待機時間は、冷蔵されている精度管理試料を室温に戻してから使う場合や、自動分析装置上に搭載されている同種の精度管理試料の残量に余裕が有り、残量が減少してから(例えば、2時間後など)に溶かしたい場合などに用いる時間である。溶解後待機時間は、溶解液添加後すぐの攪拌において、容器形状や精度管理試料の粉末(調製処理前)の状態により生じる恐れのある溶け残りの発生を抑制するための時間である。また、攪拌後静置時間は、攪拌後に装置上で静置し、精度管理試料の状態を安定させるための時間である。この攪拌後待機時間が終了した時点が調製処理の終了時間となる。なお、添加する溶解液の種類は1種類のみでなくても良く、自動分析装置上に複数の種類の溶解液を搭載しておき、それらの中から複数を選択できるようにしても良い。
【0039】
保持期限情報領域203には、精度管理試料の保持期限(使用不可となるタイミング)として自動分析装置に投入してからの保持時間を用いるかどうかを設定する設定欄219a、保持期限としての保持時間(hour.)を入力する入力欄219、保持期限として調製後の経過時間を用いるかどうかを設定する設定欄220a、調製後経過時間(hour.)を入力する入力欄220、保持期限として測定回数を用いるかどうかを設定する設定欄221a、及び、測定回数(回)を入力する入力欄221が設けられている。
【0040】
精度管理試料が保持期限情報領域203で設定した条件に該当する状態となった場合は、その試料の使用可否情報は“否”となり、以後、測定には使用できない。なお、条件は1つでも複数でも設定可能であり、また、設定欄219a〜221aを全くチェックせず、保持期限を設定せずに使用することもできる。
【0041】
攪拌情報領域204には、サンプリング前に攪拌を行うかどうかを設定する設定欄222a、サンプリング前攪拌を行うタイミングを対象サンプリングの初回のみ、毎回、インターバルのうちから選択的に設定する設定欄223a〜225a、及び、インターバル(min.)を入力する入力欄225が設けられている。
【0042】
設定欄223a〜225aにおいて、初回のみを設定すると、最初の1回目のみ攪拌実行し2回目以降の測定では実行しない。毎回を設定すると、測定する前に毎回必ず攪拌する。また、インターバルを設定すると、その精度管理試料を最後に攪拌してから経過した時間が入力欄225で設定した時間を超過した場合にのみ攪拌を実行する。
【0043】
図4の精度管理試料登録情報画面300は、図3に示した精度管理試料登録情報画面200における調製情報領域202の入力欄212において融解処理を設定した場合を示す図である。精度管理試料登録情報画面300の基本情報領域301、保持期限情報領域303、攪拌情報領域304、登録/更新ボタン226、及び、キャンセルボタン227は、それぞれ、精度管理試料登録情報画面200の基本情報領域201、保持期限情報領域203、攪拌情報領域204、登録/更新ボタン323、及び、キャンセルボタン324と同様であり説明を省略する。
【0044】
精度管理試料登録情報画面300の調製情報領域312には、精度管理試料に対する調製処理を実行するかどうかを設定する設定欄312a、調製処理の種類を入力する入力欄312、調製処理の開始タイミングを設定する開始タイミング設定画面400(後の図5参照)を表示させる開始タイミングボタン313、攪拌後に待機するかどうか(待機時間を設けるかどうか)を設定する設定欄315a、及び、攪拌後待機時間(hour.)を入力する入力欄315が設けられている。図4では、設定欄312aをチェックして調製処理を有効に設定し、調製処理の種類として融解調製処理をプルダウンにより選択的に入力するとともに、攪拌後待機時間を無効に設定した場合を示している。図4に示すように、調製処理として融解調製処理を入力した場合、調製情報領域302には、融解調製処理として待機するかどうか(待機時間を設けるかどうか)を設定する設定欄314aと、凍結状態の精度管理試料が完全に解凍するまでの待機時間(min.)を入力する入力欄314とが配置される。攪拌後静置時間は、溶解調製処理と同様に、攪拌後に装置上で静置し、精度管理試料の状態を安定させるための時間である。
【0045】
(2−1.3)開始タイミング設定画面400
図5は、精度管理試料登録情報画面200,300の開始タイミングボタン313により表示される開始タイミング設定画面400を示す図である。
【0046】
図5において、開始タイミング設定画面400には、調製処理の開始タイミングとして日時指定を行うかどうかを設定する設定欄401aと、その日時として年月日および時間を入力する入力欄402〜406、調製処理の開始タイミングとしてチェンジオーバーを指定するかどうかを設定する設定欄407aと、その条件として精度管理試料の残量を指定するかどうかを設定する設定欄408aと、その残量(ul)を入力する入力欄409、チェンジオーバーを指定した場合の条件として使用可能時間を指定するかどうかを設定する設定欄410aと、その使用可能時間(hour.)を入力する入力欄411、開始タイミング設定画面400の内容で設定を登録又は更新して精度管理試料登録情報画面に200,300に戻るための登録/更新ボタン412、及び、開始タイミング設定画面400の内容を破棄して精度管理試料登録情報画面200,300に戻るためのキャンセルボタン413が設けられている。チェンジオーバーは、残量と使用可能時間の何れか一方を指定しても良い。なお、開始タイミング設定画面400において、日時指定およびチェンジオーバーを設定しない場合は、精度管理試料の自動分析装置への投入後すぐに調製処理が実行される。
【0047】
(2−2)精度管理試料調製処理
調製処理として、精度管理試料の調製処理である精度管理試料調製処理を行う場合について説明する。
【0048】
図7は、本実施の形態の調製処理(精度管理試料調製処理)を含む試料投入の処理全体を示すフローチャートである。
【0049】
制御部12は、試料ラック投入部1に試料(本例では精度管理試料)が収容された試料容器17が搭載された試料ラック18が投入されると(ステップS10)、試料ラック18あるいは各試料容器17に付与された識別情報を読み取り(ステップS20)、投入時刻を記録する(ステップS30)。次に、読み取った識別情報に該当する精度管理試料情報があるかどうかを判定し(ステップS40)、判定結果がNOの場合は、表示部15にアラームを表示し(ステップS41)、試料ラック18を試料ラック回収部16に搬送して(ステップS42)、処理を終了する。ステップS40での判定結果がYESの場合は、ステップS30で記録した投入時刻からの試料ラック18の保持時間のカウントを開始し(ステップS50)、続いて、精度管理試料情報に調製処理の実施が設定されているかどうかを判定し(ステップS60)、判定結果がYESの場合は、試料容器17の精度管理試料に調製処理を実施し(ステップS70)、試料ラック保管部2,3に搬送し(ステップS80)、精度管理試料情報の使用可否情報を“可”として記録し(ステップS90)、処理を終了する。また、ステップS60での判定結果がNOの場合は、調製処理を実施せずに試料ラック保管部2,3に搬送し(ステップS80)、精度管理試料情報の使用可否情報を“可”として(ステップS90)、処理を終了する。
【0050】
図8は、図7の調製処理(ステップS70)の詳細を示すフローチャートである。調製処理(ステップS70)では、まず、精度管理試料情報において溶解調製処理が設定されているかどうかを判定する(ステップS100)。ステップS100での判定結果がYESの場合は、溶解前待機時間が設定されているかどうかを判定し(ステップS110)、判定結果がYESの場合は、溶解前待機時間の設定時間だけ待機し(ステップS120)、その後に溶解液を添加し、その時刻を記録し(ステップS130)、判定結果がNOの場合は、待機せずすぐに溶解液を添加し、その時刻を記録する(ステップS130)。続いて、溶解後待機時間が設定されているかどうかを判定し(ステップS140)、判定結果がYESの場合は、溶解後待機時間の設定時間だけ待機し(ステップS150)、その後に攪拌を実行し、その時刻を記録し(ステップS160)、判定結果がNOの場合は、待機せずすぐに攪拌を実行し、その時刻を記録する(ステップS160)。続いて、攪拌後待機時間が設定されているかどうかを判定し(ステップS170)、判定結果がYESの場合は、攪拌後待機時間の設定時間だけ待機し(ステップS180)、その後に調製終了時刻を記録し(ステップS190)、判定結果がNOの場合は、待機せずすぐに調製終了時間を記録し(ステップS190)、処理を終了する。
【0051】
ステップS100での判定結果がNOの場合は、融解調製処理が設定されているかどうかを判定する(ステップS101)。ステップS101での判定結果がYESの場合は、待機時間が設定されているかどうかを判定し(ステップS102)、判定結果がYESの場合は、待機時間の設定時間だけ待機し(ステップS103)、その後に攪拌を実行し、その時刻を記録し(ステップS160)、判定結果がNOの場合は、待機せずすぐに攪拌を実行し、その時刻を記録する(ステップS160)。続いて、攪拌後待機時間が設定されているかどうかを判定し(ステップS170)、判定結果がYESの場合は、攪拌後待機時間の設定時間だけ待機し(ステップS180)、その後に調製終了時刻を記録し(ステップS190)、判定結果がNOの場合は、待機せずすぐに調製終了時間を記録し(ステップS190)、処理を終了する。また、ステップS101での判定結果がNOの場合は、精度管理試薬情報に設定された他の調製処理を実施し(ステップS104)、その後、調製終了時間を記録し(ステップS190)、処理を終了する。
【0052】
(3)精度管理処理
図9は、本実施の形態の精度管理処理を示すフローチャートである。
【0053】
制御部12は、操作部14による実施指示の入力、或いは、実施条件への適合などにより精度管理処理の実行が指示されると、まず、使用可能な精度管理試料はあるか(ステップS200)、及び、その残量は充分に残っているかを判定する(ステップS210)。ステップS200,S201での両方の判定結果が共にYESの場合は、攪拌条件に該当するかどうかを判定し(ステップS220)、判定結果がYESの場合は、攪拌を実行してその時刻を記録し(ステップS230)、その後に精度管理の対象となる分析ユニットにおいて測定を実施し(ステップS240)、精度管理試料情報を更新して(ステップS250)、処理を終了する。また、ステップS200,S210の少なくとも一方の判定結果がNOの場合は、表示部15にアラームを表示して(ステップS201)、処理を終了する。
【0054】
(4)チェック処理
図10は、本実施の形態のチェック処理を示すフローチャートである。
【0055】
制御部12は、精度管理試料の使用可否を管理するチェック処理を常時、或いは、予め定めた間隔ごとに実行している。チェック処理では、精度管理試料情報で設定した保持時間を超過したかと、調製後経過時間を超過したかと、測定回数を超過したかと、残量が設定値以下になったかどうかを判定し(ステップS300,S310,S320,S330)、その判定結果が全てNOの場合は、なにもせずに処理を終了する。また、ステップS300,S310,S320,S330の少なくとも1つの判定結果がYESの場合は、使用可否情報を“否”とし(ステップS301)、表示部15にアラームを表示し(ステップS302)、処理を終了する。
【0056】
(5)動作
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0057】
オペレータは、まず、検体や校正試料、精度管理試料などの分析対象試料に関する試料情報を表示部15に表示させたそれぞれの設定画面に基づいて操作部14などにより登録する。例えば、分析対象試料が精度管理試料の場合は、表示部15に表示させた精度管理試料登録情報画面200,300などの画面に基づいて、精度管理試料情報を登録する。続いて、分析対象試料が収容された試料容器17を載置した試料ラック18を試料ラック投入部1に投入する。
【0058】
分析対象試料として検体を収容した試料容器17を搭載した試料ラック18が試料ラック投入部1に投入されると、試料ID取得部11により試料IDが読み取られ、記憶部13に記憶された試料情報と照会される。続いて、試料ラック18は、試料情報に基づいて、搬送ライン9,10により、対象の試料ラック保持部2,3や分析ユニット5〜10に搬送され、試料容器17に収容された検体に対して適宜分析が実行される。分析結果は制御部12に送られて記憶部13に記憶されるとともに、表示部15に分析結果として表示される。分析の終了した検体ラック18は、試料ラック回収部16に送られ、分析処理が終了する。
【0059】
分析対象試料として精度管理に用いる精度管理試料を収容した試料容器17を搭載した試料ラック18が試料ラック投入部1に投入されると、試料ID取得部11により試料の識別情報(ID)が読み取られるとともに投入時間が記録され、記憶部13に記憶された試料情報(精度管理試料情報)と照会される(図7のステップS10〜S40)。取得した識別情報に該当する精度管理試料情報が無い場合は、表示部15にアラームが表示され、試料ラック18は試料ラック回収部16に搬送されて処理が終了する(図7のステップS41,S42)。
【0060】
取得した識別情報に該当する精度管理試料情報が有る場合は、投入時刻からの試料ラック18の保持時間のカウントを開始する(図7のステップS50)。続いて、精度管理試料情報に調製処理の実施が設定されている場合は、試料容器17の精度管理試料に精度管理試料調製処理を実施して試料ラック保管部2,3に搬送し、調製処理の実施が設定されていない場合はそのまま試料ラック保管部2,3に搬送する(図7のステップS60〜S80)。そして、精度管理試料情報の使用可否情報を“可”として記録し(図7のステップS90)、精度管理試料の調製処理を終了する。
【0061】
このようにして試料ラック保持部2,3に保持された試料ラック18に搭載された試料容器17に収容された制度管理試料については、その使用可否を管理するチェック処理を常時、或いは、予め定めた間隔ごとに実行する。チェック処理では、精度管理試料情報で設定した保持時間を超過したかと、調製後経過時間を超過したかと、測定回数を超過したかと、残量が設定値以下になったかどうかを確認し(図10のステップS300,S310,S320,S330)、その判定結果が全てNOの場合はなにもしない。また、少なくとも1つの条件を満たす状態となった場合は、使用可否情報を“否”として、表示部15にアラームを表示し(図10のステップS301,S302)、処理を終了する。
【0062】
このようにして精度管理試料が収容された試料容器17が搭載された試料ラック18が試料ラック保持部2,3に保持された状態で、操作部14による実施指示の入力、或いは、実施条件への適合などにより精度管理処理の実行が指示されると、まず、使用可能な精度管理試料はあるかと、その残量は充分に残っているかとの両方を確認し(図9のステップS200,S210)、どちらか一方でも条件を満たしていない場合は、表示部15にアラームを表示し(図9のステップS201)、精度管理処理を終了する。また、使用可能な精度管理試料があり、かつ、その残量が充分である場合は、続いて攪拌条件を確認する。攪拌実行が設定されている場合は、攪拌を実行してその時間を記録して精度管理の対象となる分析ユニットにおいて測定を実施し、攪拌実行が設定されていない場合はそのまま精度管理の対象となる分析ユニットにおいて測定を実施する(図9のステップS220〜S240)。そして、その測定結果に基づいて、精度管理試料情報を更新し(図9のステップS250)、制度管理処理を終了する。
【0063】
分析対象試料としてキャリブレーションに用いる校正試料を収容した試料容器17を搭載した試料ラック18が試料ラック投入部1に投入する場合においても、精度管理試料の場合と同様に動作する。
【0064】
(6)効果
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0065】
一般に、自動分析装置のキャリブレーションに用いる校正試料や精度管理に用いる精度管理試料は、試薬メーカからの購入や、自動分析装置を用いる施設で独自にプール血清を精度管理試料として作成保管することにより調達している。これら校正試料や精度管理試料は、自動測定装置における装置状態確認のための基準としての役割もあるため、同一ロット(プール血清では同一試料を意味する)の校正試料や精度管理試料を品質を維持したまま長期間保存することが求められる。したがって、校正試料や精度管理試料は、凍結保存や凍結乾燥保存などの方法により保存される場合が多い。
【0066】
凍結保存や凍結乾燥保存により保存された校正試料あるいは精度管理試料は、そのままの状態では校正や精度管理での測定に用いることはできないので、調製処理を施すことによって測定可能な状態にしてから測定に用いる。このとき、調製処理を施した後の校正試料や精度管理試料の状態によって測定結果にも影響が出るため、信頼性の高い校正や精度管理を行うためには、校正や精度管理を行うたびに用いる試料の状態を一定に保つ必要がある。
【0067】
調製処理を施した後の校正試料や精度管理試料の状態を毎回一定にするためには、調製処理における各種条件を一定にしなければならない。しかしながら、校正試料や精度管理試料には多くの種類があって調製方法も異なり、また、対象となる項目によって使用するタイミングなどが異なるため、オペレータが調製処理を施すのに必要な手間と時間は膨大なものとなり、したがって、校正試料や精度管理試料の状態を一定に保つことは非常に困難であった。
【0068】
これに対し、本実施の形態においては、分析対象試料であって、調製処理を施す前の精度管理試料を精度管理分析に使用可能な状態にする調製処理の条件を定めた精度管理情報、すなわち、調製プロトコルを設定し、この調製プロトコルの設定に基づいて精度管理試料の調製処理を行うように構成したので、校正試料や精度管理試料の状態を一定に保つことにより、より信頼性の高い校正や精度管理を行うことができる。
【0069】
例えば、調製処理の対象が凍結乾燥品の場合に実施する溶解作業が必要となるが、具体的には粉末状の対象試料に溶解液を添加し、一定時間静置した後に攪拌を行って溶液を均一化する。この際、試料中のタンパク質が時間とともに溶解液中の水分と水和して安定した状態となるような試料や、酵素を含む試料のように、溶解後時間が経過すると成分が分解してしまうような試料があり、したがって、試料によっては、溶解後すぐに測定するよりも、ある程度の時間が経ってからのほうが安定した測定結果が得られたり、溶解後すぐに測定した方が良かったりする。このような場合に、本実施の形態では、予め調製プロトコルを設定し、この調製プロトコルの設定に基づいて精度管理試料の調製処理を行うように構成したので、校正試料や精度管理試料の状態を一定に保つことにより、より信頼性の高い校正や精度管理を行うことができる。
【0070】
(7)その他
なお、本実施の形態においては、試料処理部4に、試料容器17に収容された試料を攪拌する攪拌部4dを備える構成としたが、これに限られず、例えば、分析モジュール5〜8に攪拌機能を備えたり、搬送ライン9,10に試料ラック18を小刻みに移動と停止を繰り返して試料容器17に収容された試料に乱流を発生させて攪拌する機能を備える構成としても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 試料ラック投入部
2,3 試料ラック保管部
2a,2b 試料ラック移動機構
2b,3b 保管位置
4 試料処理部
4a 溶解液容器
4b 溶解液分注部
4c 識別情報読取装置
4d 攪拌部
4e サンプリングライン
5〜8 分析ユニット
9,10 搬送ライン
11 試料ID取得部
12 制御部
13 記憶部
14 操作部
15 表示部
16 試料ラック回収部
17 試料容器
18 試料ラック
100 メイン画面
200,300 精度管理試料登録情報画面
400 開始タイミング設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象試料が収容される試料容器を載置する試料ラックを搬送するための搬送手段と、
前記搬送手段に沿って配置され、前記分析対象試料の定性・定量分析を行う複数の分析ユニットと、
前記搬送手段により搬送される試料ラックを一時的に保管するためのラック保管手段と、
前記分析対象試料を分析に使用可能な状態にする調製処理の条件を定めた調製プロトコルを設定する調製プロトコル設定画面を表示する表示手段と、
オペレータが前記調製プロトコル設定画面を操作して前記調製プロトコルの設定操作を行うための操作手段と、
前記調製プロトコルの設定に基づいて前記分析対象試料の調製処理を行う制御手段と
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記分析対象試料は、自動分析装置の精度管理に用いる精度管理試料であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記分析対象試料に溶解液を分注する分注手段と、
前記分析対象試料を攪拌する攪拌手段とを備え、
前記試料調製プロトコルは、前記分析対象試料に添加する溶解液に関する条件と、前記分析対象試料の攪拌に関する条件とを有する溶解調製プロトコルであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記分析対象試料を攪拌する攪拌手段を備え、
前記試料調製プロトコルは、前記分析対象試料の融解に関する条件と、前記分析対象試料の攪拌に関する条件とを有する融解調製プロトコルであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記ラック保管手段は、保管対象である前記試料ラックに載置された試料容器の試料の温度及び湿度を一定に保つ恒温恒湿機能を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試料容器の開栓を行う開栓手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記調製プロトコルには、分析対象試料の使用期限が設定可能であり、分析対象試料が使用期限を越えた場合には、そのことをオペレータに報知することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−24691(P2013−24691A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158971(P2011−158971)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】