自動分析装置
【課題】膨大な量の基準データを必要とせずに様々な原因による分注の異常を高精度に検出して信頼性の高い分析ができる自動分析装置を実現する。
【解決手段】サンプルプローブ15の先端が試料内に浸かった状態でプランジャ66を所定量下降して試料をプローブ内に吸引する。吸引動作中の圧力変動を圧力センサ26で検出し、AD変換器75でデジタル変換して信号処理器76に送る。信号処理器76は吸引波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの統計距離Dを計算する。統計距離Dと閾値thとが比較され、統計距離Dが閾値th以上の場合は、吸引に異常ありと判定する。統計距離Dが閾値thより小さい場合は、吐出動作に移行する。吐出動作後、吐出波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの統計距離Dを計算する。統計距離Dが定められた閾値th以上の場合は吐出に異常ありと判定する。
【解決手段】サンプルプローブ15の先端が試料内に浸かった状態でプランジャ66を所定量下降して試料をプローブ内に吸引する。吸引動作中の圧力変動を圧力センサ26で検出し、AD変換器75でデジタル変換して信号処理器76に送る。信号処理器76は吸引波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの統計距離Dを計算する。統計距離Dと閾値thとが比較され、統計距離Dが閾値th以上の場合は、吸引に異常ありと判定する。統計距離Dが閾値thより小さい場合は、吐出動作に移行する。吐出動作後、吐出波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの統計距離Dを計算する。統計距離Dが定められた閾値th以上の場合は吐出に異常ありと判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の成分を自動的に分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの生体試料からなるサンプルをサンプル容器から反応ライン上の反応容器へサンプルを分注し、更に試薬容器から反応ライン上の反応容器へ試薬を分注し、サンプルと試薬の混合液を光度計の如き測定手段によって測定して定性あるいは定量分析を行う装置である。
【0003】
サンプル、試薬共に分注動作の際には分注対象の液体内へ分注プローブの先端を浸漬させるが、その浸漬深さが大きいほどプローブ外壁への液体付着量が増しコンタミネーションが大きくなる。
【0004】
そこで、分注プローブの液体内への浸漬深さを極力低減する為に、容器内の液体の液面を検出しプローブの先端が液面より僅かに下に達した位置でプローブの下降動作を停止させ、次いでプローブ内へ所定量の液体を吸引するように動作制御する手法が一般的である。被分注液の液面を検出する手段としては、分注プローブと被分注液間の静電容量を測定する方法などが使われている。この方法では、分注プローブと被分注液が接触すると静電容量が大きく変化することを利用して液面を検出している。
【0005】
分注プローブを用いた分注では、分注液上の泡などによる液面検出の失敗や、分注液中の固形物などのために、予定した量の分注が正常に行われない可能性がある。このことは、自動分析装置における分析信頼性を大きく損なうことになる。
【0006】
このような不具合を解決する手段として、サンプルプローブを含む分注流路内に圧力センサを設け、圧力変動を元にサンプルプローブの詰りなどを検出するようにしたものが数多く提案されている。
【0007】
特許文献1には、吸引時の圧力センサの出力値の時系列データを比較データとし、正常に吸引された場合の圧力の時系列データから作成した基準データと上記比較データとから計算したマハラノビス距離に基づいて吸引の異常を検出する技術が開示されている。
【0008】
これによると、分注量を含む分注条件に応じて基準データを用意し、異なる分注条件で正しく異常を検出することができる。また、吸引開始から終了後まで全区間に渡る圧力の時系列データを基にマハラノビス距離を計算して異常を検出するので、特定の原因によって生じる異常のみでなく、様々な原因による異常を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−125780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、基準データとして正常に分注した場合の圧力波形のデータを記憶しておく必要があるが、高精度に異常検出を行うためには、分注量毎に別々に基準データを用意する必要があり、その装置で対応する分注量の種類が多い場合は、膨大な量の基準データが必要になる。このため、基準データの作成に多くの時間が必要であると共に、その膨大な量の基準データのための記憶領域を確保しなければならないという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、膨大な量の基準データを必要とせずに、様々な原因による分注の異常を高精度に検出して、信頼性の高い分析ができる自動分析装置及び分注動作正常異常判定方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成される。
【0013】
本発明による自動分析装置及び分注動作正常異常判定方法は、試料または試薬を反応容器に分注する分注プローブを有する分注機構と、上記反応容器内の試料を分析する分析部とを備えた自動分析装置の分注動作正常異常判定方法であって、上記分注プローブの分注動作時におる分注プローブ内の複数時点の圧力データと、予め定めた基準圧力変化データとの統計距離を算出し、算出した統計距離が一定の閾値未満か否かにより、上記分注プローブの分注動作が正常に行われたか否かを判断する。
【発明の効果】
【0014】
膨大な量の基準データを必要とせずに、様々な原因による分注の異常を高精度に検出して、信頼性の高い分析ができる自動分析装置及び分注動作正常異常判定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用される自動分析装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1における主要部(プローブ圧力信号処理部)の説明図である。
【図3】信号処理器の内部構成図である。
【図4】本発明の実施例1の特徴変数を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例1における吸引波形の判別例を示したグラフである。
【図6】本発明の実施例1における分注量と駆動パターンとの関係を説明する図である。
【図7】図6に示した分注量で吸引した場合の、プローブ内の圧力波形を示す図である。
【図8】本発明の実施例1の試薬分注プローブにおける試薬吸引時の圧力波形を示す図である。
【図9】本発明の実施例1のサンプルプローブにおける吐出時の圧力波形を示す図である。
【図10】本発明の実施例1のサンプルプローブにおける吐出時の圧力波形を示す図である。
【図11】本発明の実施例1の判別動作のフロー図である。
【図12】本発明の実施例2の判別動作のフロー図である。
【図13】本発明の実施例3の判別動作のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
図1は、本発明が適用される自動分析装置の概略構成図であり、図2は本発明の実施例1における主要部(プローブ圧力信号処理部)の説明図である。
【0018】
図1において、自動分析装置は、試料を保持するサンプル容器10を複数搭載可能なサンプルディスク12と、試薬を保持する試薬容器40を複数搭載可能な第1試薬ディスク41および第2試薬ディスク42と、周上に複数の反応容器35を配置した反応ディスク36とを備える。
【0019】
また、自動分析装置は、サンプル容器10から吸引した試料を反応容器35に分注するサンプルプローブ15と、第1試薬ディスク41内の試薬容器40から吸引した試薬を反応容器35に分注する第1試薬プローブ20と、第2試薬ディスク42内の試薬容器40から吸引した試薬を反応容器35に分注する第2試薬プローブ21と、反応容器35内の液体を撹拌する攪拌装置30と、反応容器35を洗浄する容器洗浄機構45と、反応ディスク36の外周付近に設置された光源50と、分光検出器51と、分光検出器51に接続されたコンピュータ61と、装置全体の動作を制御し、外部とのデータの交換を行うコントローラ60とを備える。
【0020】
サンプルプローブ15は、分注流路24により定量ポンプ25と接続され、分注流路24の途中には圧力センサ26が設けられている。図1には示していないが、第1試薬プローブ20及び第2試薬プローブ21にも、サンプルプローブ15と同様に、分注流路、定量ポンプ、圧力センサが接続されている。
【0021】
図2に詳細を示すように、サンプルプローブ15の先端には断面積の小さい絞り部65が設けられている。また、定量ポンプ25には駆動機構67で駆動されるプランジャ66が設けられている。定量ポンプ25は、バルブ68を通してポンプ69に接続されている。圧力センサ26はAD変換器75を介して信号処理器(信号処理部)76に接続されている。サンプルプローブ15は図示しない移動機構を有しており、上下、回転してサンプル容器10と反応容器35に移動できる。
【0022】
本実施例の装置は以下のように動作する。
【0023】
サンプル容器10には血液等の検査対象の試料が入れられ、サンプルディスク12にセットされる。それぞれの試料で必要な分析の種類はコントローラ60に入力される。サンプルプローブ15によってサンプル容器10から採取された試料は反応ディスク36に並べられている反応容器35に一定量分注される。そして、一定量の試薬が試薬ディスク41または42に設置された試薬容器40から試薬プローブ20または21により反応容器35に分注され、攪拌装置30にて攪拌される。この試料および試薬の分注量は、分析の種類毎に予め設定されている。
【0024】
反応ディスク36は、周期的に回転、停止を繰り返し、反応容器35が光源50の前を通過するタイミングで分光検出器51にて測光が行われる。10分間の反応時間の間に測光を繰り返し、その後、容器洗浄機構45で反応容器35内の反応液の排出および洗浄がなされる。それらの間に別の反応容器35では、別の試料、試薬を用いた動作が並行して実施される。分光検出器51にて測光したデータはコンピュータ61で演算し、分析の種類に応じた成分の濃度を算出してコンピュータ61のディスプレイに表示される。
【0025】
サンプルプローブ15の動作を図2を用いて詳細に説明する。
【0026】
試料を吸引する前に、まず、コントローラ60は、バルブ68を開閉してサンプルプローブ15の流路内部をポンプ69から供給されるシステム液77で満たす。次に、コントローラ60は、サンプルプローブ15の先端が空中にある状態で、駆動機構67によりプランジャ66を下降動作させ、分離空気78を吸引する。
【0027】
次に、コントローラ60は、サンプルプローブ15をサンプル容器10の中に下降させ、その先端が試料内に浸かった状態でプランジャ66を所定量下降して試料をプローブ内に吸引する。この場合、吸引液79は試料である。吸引から引続く動作中の圧力変動を圧力センサ26で検出し、AD変換器75でデジタル変換されて信号処理器76に送る。その後、サンプルプローブ15を反応容器35上に移動して試料を吐出する。
【0028】
試料吐出時から引続く動作中に再び、圧力変動を圧力センサ26で検出し、AD変換器75でデジタル変換されて信号処理器76に送る。引続いてサンプルプローブ15はバルブ68の開閉で内外部が洗浄され、次の分析に備える。
【0029】
信号処理器76では吸引時、および吐出時の圧力波形から分注の異常の有無を判別し、異常があったと判断された場合は、その分析を中止させ、アラームを表示して、復帰動作をする。復帰動作は、異常の原因を除いて再分注する、別の試料の検査に移る、装置を停止するなどの中から選択される。
【0030】
図3は、信号処理器76の内部構成図である。信号処理器76は、統計距離算出部76aと、メモリ76bと、比較部76cと、判定部76dとを備える。
【0031】
信号処理器76の判定部76dは、その判定結果をコントローラ60に伝達する。信号処理器76は、コントローラ60とは別箇に設けられていてもよいし、コントローラ60内に備えられていてもよいものである。
【0032】
信号処理器76で行われる分注の異常の有無の判別の詳細を図3を用いて説明する。図4は圧力センサ26で検出される圧力の吸引時前後の変動波形を示したグラフであり、横軸は時間、縦軸は圧力である。図4中の曲線が圧力変動波形である。
【0033】
吸引時間は、プランジャ66を下降動作させている時間であり、サンプルプローブ15の先端から試料を吸引している。図4に示すように、吸引時間中はサンプルプローブ15内の圧力が低下し、吸引終了後は圧力は上昇し、吸引前と同様な値に戻るが、吸引開始時と吸引停止時には圧力値は振動的になる。
【0034】
図4に示したX1からX27は特徴変数である。本発明の一実施例の場合は、吸引開始時刻を第1基準時刻とし、第1基準時刻前後の一定時間間隔ごとの圧力平均値をX1からX7とする。そして、第1基準時刻後の最初の極小点の圧力値をX8、タイミングをX9、最初の極大点の圧力値をX10、タイミングをX11、2番目の極小点の圧力値をX12、タイミングをX13とする。
【0035】
また、吸引終了時刻を第2基準時刻とし、第2基準時刻前後の一定時間間隔ごとの圧力平均値をX14からX19とする。第2基準時刻後の最初の極大点の圧力値をX20、タイミングをX21、その後の最初の極小点の圧力値をX22、タイミングをX23、2番目の極大点の圧力値をX24、タイミングをX25とする。
【0036】
また、吸引時間中の圧力の平均値をX26、吸引時間の一部分の圧力のRMS値をX27とする。
【0037】
信号処理器76では、統計距離算出部76aが、AD変換器75から送られてくる圧力波形のデジタル信号について、X1からX27の特徴変数を計算する。また、信号処理器76は、サンプルプローブ15が正常に試料を分注できた場合の特徴変数X1からX27の結果を正常群データとして内部メモリ76bに保持しており、統計距離算出部76aは、計算した特徴変数X1からX27の正常群データからの統計距離Dを計算する。そして、比較部76cは、統計距離Dと、メモリ76bに記憶された予め定めた閾値とを比較し、その差分を判定部76dに供給する。判定部76dは、統計距離Dと閾値との差が大きい場合に吸引に異常があったと判定し、小さい場合は正常に吸引が行えたと判定する。
【0038】
吐出についても、上述した吸引の場合と同様の処理を行い、正常に吐出が行えたかどうかを判定部76dが判定する。
【0039】
統計距離Dは、複数の特徴変数で代表される2つの事象間の類似性を数値化した指標であり、本発明の一実施例の場合は、正常群データの集合に対して、その時に測定したデータが、どれだけ離れているかの計算になる。統計距離Dの計算法には、マハラノビス距離、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、多変量正規密度、ミンコフスキー距離などいくつもの計算法があるが、ここでは、統計距離Dは次式(1)、(2)で計算する。
【0040】
ui=(Xi−μi)/σi ・・・(1)
D=uR−1u' ・・・(2)
上記式(1)、(2)において、R、μ、σは、それぞれ正常群データの相関行列、平均値ベクトル、標準偏差ベクトルで、添え字iはベクトルのi番目の要素を表す。また、Dはマハラノビス距離である。また、uiは正規化した特徴変数であり、uはuiを要素とするベクトルである。u'は、uの転置ベクトルである。
【0041】
次に、本実施例での判別の例を図5から図10を用いて説明する。
【0042】
図5は、試料吸引の判別の例である。波形(a)、波形(b)は正常範囲内の低粘性試料、高粘性試料を吸引した場合の波形であり、計算した統計距離Dは30以下である((a)はD=29、(b)はD=27)。
【0043】
波形(c)はサンプルプローブ15が試料に届かずに、空中で吸引してしまった場合の波形(空吸い(D=307))である。波形(d)は試料上部に泡が存在している状態で、サンプルプローブ15が泡の部分で吸引してしまった場合の波形である(泡吸引(D=1078)。この場合、異常判定閾値を100程度(標準偏差μの3倍値を考慮した値)に設定しておくことで、波形(a)、(b)は正常、波形(c)、(d)は異常と判断される。
【0044】
図6は、本実施例で扱う代表的な分析の種類での試薬分注量における、駆動機構67の駆動パターンである。横軸は時間で、縦軸はプランジャ66の移動速度である。分注量1、2、3は、互いに同一の速度であって、速度小の場合である。分注量4、5は、互いに同一の速度であって、速度大の場合である。図6に示すように、分注量の違いにより、吸引時間、吸引速度が大きく異なる。
【0045】
図7は、図6に示した分注量で吸引した場合の、プローブ15内の圧力波形を示す図である。図7において、波形(a)から(e)は、分注量1から5において、正常に吸引した場合の波形である。分注量は、駆動機構67の駆動パターンの違いにより、圧力の変化時間、変化量が大きく異なる。圧力の変化時間、変化量が大きく異なるこの場合も、比較する正常群データは共通であるが、計算した統計距離Dは(a)から(e)に対しては30以下であった(D=18〜28)。
【0046】
図7の(f)は分注量4の条件で泡を吸ってしまった場合の波形である。計算した統計距離Dは309であった。閾値を100程度に設定しておくことで、波形(a)〜(e)は正常であり、波形(f)は異常であると判断でき、吸引の正常と異常とを正しく判別することが可能である。
【0047】
このように、吸引パターンが異なる条件であっても、吸引の正常及び異常判別が正しく行えるのは、第1基準時刻(吸引開始時)を基準にした特徴変数と、第2基準時刻(吸引終了時)を基準にした特徴変数を利用しているので、吸引時間の違う条件でも適正な特徴を抽出できているからである。
【0048】
図8は、第1試薬分注プローブ20における試薬吸引時の圧力波形を示す図である。試薬は試料に比べて分注量が多いので、試薬分注プローブ20は、先端の絞り部65がサンプルプローブ15に比べて太くなっている。そのため、吸引流体の粘性の違いが圧力波形に与える影響が小さい。
【0049】
本実施例では、図8に示すように、正常吸引の場合の波形(a)、(b)は統計距離Dが15と21であり、共に30以下である。泡を吸引してしまった場合の波形(c)は、統計距離Dが598と大きく、閾値を100程度に設定しておけば異常の有無を正しく判別できる。
【0050】
このように、圧力の変化の差が小さい条件でも判別できるのは、吸引開始時と終了時の振動波形の極大、極小値の圧力値およびタイミングを特徴変数に取り込んでいるからである。プローブ先端の絞り部65での圧力損失に差が小さくても、気泡を吸引してしまうとプローブ内部での空気量が増えて振動特性に差が生じ、振動の極値のタイミングがずれるのを本実施例の方法では捕らえられるからである。
【0051】
図9は、サンプルプローブ15における吐出時の圧力波形を示す図である。図9において、試料吐出中は、試料吸引中とは逆に圧力が上昇しており、試料吐出終了後に吐出前の圧力に戻る。吐出開始時および終了時の圧力に、振動波形が生じるが、吸引時の振動よりは小さい。
【0052】
図9において、波形(a)、(b)は正常範囲内の低粘性試料および高粘性試料の場合であるが、統計距離Dは、波形(a)が20、波形(b)が42であり、どちらも50以下である。波形(c)は空吸引してしまった場合の吐出時における圧力波形であり、統計距離Dは714であった。波形(d)は、吸引時に泡を一緒に吸ってしまった場合の吐出時における波形であり、統計距離Dは829であった。この場合も、閾値を100程度に設定しておくことで、吸引時における正常と異常とを吐出時において正しく判別することができる。
【0053】
図10は、サンプルプローブ15における吐出時の圧力波形の別の例を示す図である。図10において、波形(a)は正常に分注できた場合で統計距離Dは28であった。波形(b)は吐出後に吐出した試料の液滴の1部がサンプルプローブ15の先端に付着してしまった場合である。波形(b)の場合は、付着した試料をサンプルプローブ15が持ち帰ってしまうので、分注量が不足してしまう。この場合も、統計距離Dは307と大きく、正常な場合と判別できる。
【0054】
このような波形の違いが小さいような異常も正しく判別できるのは、正しい波形のみの正常群データを用いていることと、吐出終了時刻を基準とした特徴変数を用いているために吐出終了後の波形の特徴を的確に捉えられているからである。
【0055】
図11は、本実施例1の判別動作のフロー図である。
【0056】
図11において、サンプルプローブ15にて吸引動作を行い(ステップS1)、統計処理算出部76aが吸引波形の特徴変数の値を抽出し、メモリ76bに格納された正常群データからの統計距離Dを計算する(ステップS2、S3)。比較部76cにより、統計距離Dとメモリ76bに格納された閾値thとが比較され、その結果が判定部76dに供給される(ステップS4)。
【0057】
判定部76dは、統計距離Dが定められた閾値th以上の場合は、吸引に異常ありと判定し、復帰処理1を実施する(ステップS5)。この復帰処理1は、判定部76dがコントローラ60、コンピュータ61に吸引異常ありを伝達し、アラーム処理及び次の検体の処理に進む動作を、コントローラ60、コンピュータ61の制御により実行する処理である。
【0058】
統計距離Dが閾値thより小さい場合は、判定部76dからの指令に従って、コントローラ60の制御により、吐出動作に移行する(ステップS6)。吐出動作後、吐出波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの統計距離Dを計算する(ステップS7、S8)。そして、統計距離Dが定められた閾値th以上の場合は、吐出に異常ありと判定し(ステップS9)、復帰動作2を行う(ステップS10)。この復帰動作2は、、判定部76dがコントローラ60、コンピュータ61に吐出異常ありを伝達し、アラーム処理及びその検体の分析は実行せず、その検体に使用した反応容器を洗浄する動作を、コントローラ60、コンピュータ61の制御により実行する処理である。
【0059】
統計距離Dが閾値thより小さい場合は、分注に異常なしと判定して判別動作を終了する。
【0060】
以上のように、本実施例1では、サンプルプローブ15で試料を吸引または吐出するときの圧力変動から、プランジャ動作開始時および終了時を第1基準時刻、第2基準時刻として、それぞれの基準時刻を基にした一定タイミングの圧力平均値と極大、極小点の圧力値およびタイミングを特徴変数として取り込み、正常群データとの統計距離Dを閾値と比較するので、分注時に起こる圧力変動が、正常に分注できた場合の圧力変動と異なる特徴がある場合を感度よく検出することができ、分注時の異常を判定でき、分注時の不良を見逃した誤った分析結果を出力することを防ぐことができ、信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0061】
また、本実施例1の場合は、複数の特徴変数を用いて計算した正常群データからの統計距離Dを1つの閾値thと比較すると単純な論理で異常の有無を判定するので、圧力波形の各時刻の値を個々に正常データと比較して複雑な判定基準と比較する必要がなく、かつ、さまざまな原因で発生する分注の異常を見逃すことなく検出できるので、単純な演算で分注の異常の有無を正確に判別できる信頼性の高い自動分析装置を提供することができる。
【0062】
また、本実施例1の場合は、正常な範囲の試料の取りうる粘性範囲の液体で取得した正常群データを用いることで、空気を吸引してしまった場合、泡を吸引してしまった場合、正常範囲外の高粘性の試料であった場合、試料中の固形物による詰りが発生した場合などの複数の原因による分注の異常を見逃すことなく検出でき、信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0063】
また、本実施例1の場合は、圧力変動の時系列データから少数の特徴変数を抽出し、特徴変数に対して統計距離を計算するので、統計距離の計算に要する演算量が少なくてすみ、さまざまな原因による異常に対応しながらも高速な判別処理が可能で、高処理能力でかつ信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0064】
また、本実施例1の場合は、吸引または吐出時のプランジャ動作開始時を基準とした特徴変数と、プランジャ動作終了時を基準とした特徴変数の両方を用いているので、プランジャ動作時間や動作速度などの条件の異なる分注動作に対しても共通の正常群データに含めても正しく異常を判別することができる。そのため、分注の条件が異なるさまざまな種類の分析を行う装置でも、正常群データの数が少数で済み、判別のための処理が単純で済む。そのため、多種の分析条件に対応しながら信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0065】
また、プランジャ動作時間や動作速度などの条件の異なる分注動作に対して共通の正常群データとすることで、ばらつきの大きい正常郡データとすることができる。正常なのに異常と判断してしまう誤判定を防ぐためには、正常群データに、正常範囲内でのばらつきの大きいデータを含ませることが必要であるが、複数の分注条件を共通の正常群データとすることで正常群データ全体の数が少なくてもばらつきの大きいデータを含ませることができ、正常群データを収集する手間を簡略化でき、少ない正常群データでも精度の高い異常の判別ができる、信頼性の高い自動分析装置を提供することができる。
【0066】
また、本実施例1の場合は、圧力変動の極大点、および極小点の圧力値とタイミングを特徴変数として抽出して統計距離の計算に用いているため、プローブ先端の内径の太い試薬分注系のように時刻毎の圧力値の比較では判別が困難な条件でも精度よく異常の判別ができ、検体分注と試薬分注の異常を検出できる信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供できる。
【0067】
また、本実施例1の場合は、吸引時の異常の有無と吐出時の異常の有無を両方判別するので、吸引時に発生する異常と吐出時に発生する異常を全て見逃さずに判別することができ、信頼性の高い分析ができる自動分析装置の提供が可能である。
【0068】
また、本実施例1の場合は、吸引動作が終わった時点で吸引波形の異常を判別して、異常と判定した場合は回復動作を行うので、吐出動作開始前に回復動作を行うメリットがある。例えば、空吸いや泡吸いをした状態で反応容器35内に吐出すると、反応容器35内に泡を吐出してしまい洗浄が困難になるが、吸引動作で異常を検出した場合の復帰動作で反応容器35への吐出を停止させれば、反応容器35の内部を泡で汚すことがない。また、検体吸引時に異常を検出した場合は、引続く試薬分注を停止することができ、検体分注が正しく行えていないのに試薬を消費してしまうことを防ぐことができる。
【0069】
このように、本実施例1では反応セルを汚したり試薬を無駄に消費したりすることを防ぐことができる。
【0070】
また、本実施例1では、吐出波形に対してプランジャ動作開始時および終了時を第1基準時刻、第2基準時刻として、それぞれの基準時刻を基にした一定タイミングの圧力平均値と極大、極小点の圧力値およびタイミングを特徴変数として取り込み、正常群データとの統計距離Dを閾値と比較するので、吐出後に試料の一部をサンプルプローブ15の先端に付着させたまま持ち帰ってしまうことによる分注不良を正しく検出することができ、信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
(実施例2)
図12は、本発明の他の実施例である実施例2の判別動作のフロー図である。実施例1との違いは、吸引動作と吐出動作に分けずに、吐出が終えてから吸引、吐出の両方の波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの特徴変数Dを計算して閾値thと比較するようにしている点である。他の構成については、実施例1と同様であるので、詳細な説明及び図示は省略する。また、図12には、図11に示したステップと同様なステップは、同等の参照符号を示すものとする。
【0071】
図12において、吸引動作(ステップS1)、吐出動作(ステップS6)を行った後、吸引波形及び吐出波形の特徴変数を抽出し(ステップS2、S7)、正常群データとの統計距離Dを算出する(ステップS3、S8)。この場合、統計距離算出部76aは、吸引時における吸引波形及び吐出時における吐出波形をメモリ76bに格納しておき、吐出動作終了後に、メモリ76bから読み出し、特徴変数の抽出及び統計距離Dの算出を行う。
【0072】
そして、算出した統計距離Dが閾値より大の場合は、復帰処理を行う(ステップS10)。算出した統計距離Dが閾値D未満であれば、処理は終了となる。
【0073】
本実施例2の場合は、吸引時の情報と吐出時の情報を両方利用して1回の判別を行うので、雑音などの影響を受けにくく、かつ吸引時の異常と吐出時の異常を見逃すことがない正確な異常の判別が行え、信頼性の高い分析のできる自動分析装置を提供できる。
【0074】
つまり、吸引時には、液体試料を吸引しながら液面を検知し、プローブを液面に追従して動作させる必要があるため、そのための機構が動作しており、ノイズが発生する可能性が高い。これに対して、試料吐出時には、プローブを液面に追従して動作させる必要はないため、ノイズの発生が少ないからである。
【0075】
なお、吸引時及び吐出時共にDが閾値未満であれば正常と判断し、吸引時及び吐出時共にDが閾値以上であれば異常と判断することができる。吸引時か吐出時のうちのいずれか一方のDが閾値以上の場合は、Dと閾値との差に応じて、正常か異常かを判断するように構成することもできる。
【0076】
また、本実施例2の場合、吸引時と吐出時の波形をまとめて1回の判別処理を行うので、判別処理が単純化でき、処理能力の高い自動分析装置が提供できる。
【0077】
なお、本実施例2では、吸引時と吐出時の両方の波形から特徴変数を抽出しているが、吸引時、または吐出時の片方の波形でもよく、更にプローブ移動時や洗浄時の変動波形を利用することも可能である。
(実施例3)
図13は、本発明の他の実施例である実施例3の判別動作のフロー図である。実施例3のステップS1、S6、(S2、S7)、(S3、S8)、(S4、S9)は、実施例2のステップS1、S6、(S2、S7)、(S3、S8)、(S4、S9)と同様である。実施例3の実施例2との相違は、実施例3においては、空吸いが生じた場合及び詰りが生じた場合をも判断する点である。
【0078】
この実施例3においては、予め、正常群データのみでなく、空吸いが生じた場合のデータと、詰りが生じた場合の群データを用意しておく。つまり、メモリ76bに格納しておく。
【0079】
吸引、吐出動作から抽出した特徴変数をまず正常群データからの統計距離Dを計算し(ステップ3、S8)、閾値th以上と判断した場合は(ステップS4、S9)、更に空吸い群データからの統計距離Dを統計距離算出部76aが計算する(ステップS8a)。そして、統計距離Dが閾値th未満か否かを判断し(ステップS9a)、閾値th未満のときには、空吸いのアラームを出力し(ステップS10a)、復帰処理を行う(ステップS10)。
【0080】
ステップS9aにおいて、閾値th以上の場合は、更に詰り群データからの統計距離Dを計算する(ステップS8b)。そして、統計距離Dが閾値th未満か否かを判断し(ステップS9b)、Dが閾値th未満のときは詰りアラームを出力し(ステップS10b)、復帰処理を行う(ステップS10)。
【0081】
ステップS9bにおいて、Dが閾値th以上の場合はその他アラームを出力し(ステップS10c)、復帰処理(ステップS10)を行って判別動作を終了する。
【0082】
本実施例3の場合は、異常の有無だけでなく、異常の種類を判別してそれぞれに最適な動作を選択することが可能である。
【0083】
また、本実施例3で示した異常の種類は空吸いと詰りだけであるが、それ以外にも異常粘性や流路漏れ、温度や気圧などの環境異常、異常振動など様々な種類の異常に対応させることが可能である。
【0084】
また、異常の種類の判別に限らず、定量的に異常の程度を示すことも可能である。定量的に異常の程度を示す方法の一つは、特徴変数の値を入力とした回帰分析を利用することであり、それにより、例えば試料の粘性の大きさや、吐出量の推定値を出力することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10・・・サンプル容器、 12・・・サンプルディスク、 15・・・サンプルプローブ、 20・・・第1試薬プローブ、 21・・・第2試薬プローブ、 24・・・分注流路、 25・・・定量ポンプ、 26・・・圧力センサ、 30・・・攪拌装置、 35・・・反応容器、 36・・・反応ディスク、 40・・・試薬容器、 41・・・第1試薬ディスク、 42・・・第2試薬ディスク、 45・・・容器洗浄機構、 50・・・光源、 51・・・分光検出器、 60・・・コントローラ、 61・・・コンピュータ、 65・・・絞り部、 66・・・プランジャ、 67・・・駆動機構、 68・・・バルブ、 69・・・ポンプ、 75・・・A/D変換器、 76・・・信号処理器、 77・・・システム液、 78・・・分離空気、 79・・・吸引液
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の成分を自動的に分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの生体試料からなるサンプルをサンプル容器から反応ライン上の反応容器へサンプルを分注し、更に試薬容器から反応ライン上の反応容器へ試薬を分注し、サンプルと試薬の混合液を光度計の如き測定手段によって測定して定性あるいは定量分析を行う装置である。
【0003】
サンプル、試薬共に分注動作の際には分注対象の液体内へ分注プローブの先端を浸漬させるが、その浸漬深さが大きいほどプローブ外壁への液体付着量が増しコンタミネーションが大きくなる。
【0004】
そこで、分注プローブの液体内への浸漬深さを極力低減する為に、容器内の液体の液面を検出しプローブの先端が液面より僅かに下に達した位置でプローブの下降動作を停止させ、次いでプローブ内へ所定量の液体を吸引するように動作制御する手法が一般的である。被分注液の液面を検出する手段としては、分注プローブと被分注液間の静電容量を測定する方法などが使われている。この方法では、分注プローブと被分注液が接触すると静電容量が大きく変化することを利用して液面を検出している。
【0005】
分注プローブを用いた分注では、分注液上の泡などによる液面検出の失敗や、分注液中の固形物などのために、予定した量の分注が正常に行われない可能性がある。このことは、自動分析装置における分析信頼性を大きく損なうことになる。
【0006】
このような不具合を解決する手段として、サンプルプローブを含む分注流路内に圧力センサを設け、圧力変動を元にサンプルプローブの詰りなどを検出するようにしたものが数多く提案されている。
【0007】
特許文献1には、吸引時の圧力センサの出力値の時系列データを比較データとし、正常に吸引された場合の圧力の時系列データから作成した基準データと上記比較データとから計算したマハラノビス距離に基づいて吸引の異常を検出する技術が開示されている。
【0008】
これによると、分注量を含む分注条件に応じて基準データを用意し、異なる分注条件で正しく異常を検出することができる。また、吸引開始から終了後まで全区間に渡る圧力の時系列データを基にマハラノビス距離を計算して異常を検出するので、特定の原因によって生じる異常のみでなく、様々な原因による異常を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−125780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、基準データとして正常に分注した場合の圧力波形のデータを記憶しておく必要があるが、高精度に異常検出を行うためには、分注量毎に別々に基準データを用意する必要があり、その装置で対応する分注量の種類が多い場合は、膨大な量の基準データが必要になる。このため、基準データの作成に多くの時間が必要であると共に、その膨大な量の基準データのための記憶領域を確保しなければならないという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、膨大な量の基準データを必要とせずに、様々な原因による分注の異常を高精度に検出して、信頼性の高い分析ができる自動分析装置及び分注動作正常異常判定方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成される。
【0013】
本発明による自動分析装置及び分注動作正常異常判定方法は、試料または試薬を反応容器に分注する分注プローブを有する分注機構と、上記反応容器内の試料を分析する分析部とを備えた自動分析装置の分注動作正常異常判定方法であって、上記分注プローブの分注動作時におる分注プローブ内の複数時点の圧力データと、予め定めた基準圧力変化データとの統計距離を算出し、算出した統計距離が一定の閾値未満か否かにより、上記分注プローブの分注動作が正常に行われたか否かを判断する。
【発明の効果】
【0014】
膨大な量の基準データを必要とせずに、様々な原因による分注の異常を高精度に検出して、信頼性の高い分析ができる自動分析装置及び分注動作正常異常判定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用される自動分析装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1における主要部(プローブ圧力信号処理部)の説明図である。
【図3】信号処理器の内部構成図である。
【図4】本発明の実施例1の特徴変数を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例1における吸引波形の判別例を示したグラフである。
【図6】本発明の実施例1における分注量と駆動パターンとの関係を説明する図である。
【図7】図6に示した分注量で吸引した場合の、プローブ内の圧力波形を示す図である。
【図8】本発明の実施例1の試薬分注プローブにおける試薬吸引時の圧力波形を示す図である。
【図9】本発明の実施例1のサンプルプローブにおける吐出時の圧力波形を示す図である。
【図10】本発明の実施例1のサンプルプローブにおける吐出時の圧力波形を示す図である。
【図11】本発明の実施例1の判別動作のフロー図である。
【図12】本発明の実施例2の判別動作のフロー図である。
【図13】本発明の実施例3の判別動作のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
図1は、本発明が適用される自動分析装置の概略構成図であり、図2は本発明の実施例1における主要部(プローブ圧力信号処理部)の説明図である。
【0018】
図1において、自動分析装置は、試料を保持するサンプル容器10を複数搭載可能なサンプルディスク12と、試薬を保持する試薬容器40を複数搭載可能な第1試薬ディスク41および第2試薬ディスク42と、周上に複数の反応容器35を配置した反応ディスク36とを備える。
【0019】
また、自動分析装置は、サンプル容器10から吸引した試料を反応容器35に分注するサンプルプローブ15と、第1試薬ディスク41内の試薬容器40から吸引した試薬を反応容器35に分注する第1試薬プローブ20と、第2試薬ディスク42内の試薬容器40から吸引した試薬を反応容器35に分注する第2試薬プローブ21と、反応容器35内の液体を撹拌する攪拌装置30と、反応容器35を洗浄する容器洗浄機構45と、反応ディスク36の外周付近に設置された光源50と、分光検出器51と、分光検出器51に接続されたコンピュータ61と、装置全体の動作を制御し、外部とのデータの交換を行うコントローラ60とを備える。
【0020】
サンプルプローブ15は、分注流路24により定量ポンプ25と接続され、分注流路24の途中には圧力センサ26が設けられている。図1には示していないが、第1試薬プローブ20及び第2試薬プローブ21にも、サンプルプローブ15と同様に、分注流路、定量ポンプ、圧力センサが接続されている。
【0021】
図2に詳細を示すように、サンプルプローブ15の先端には断面積の小さい絞り部65が設けられている。また、定量ポンプ25には駆動機構67で駆動されるプランジャ66が設けられている。定量ポンプ25は、バルブ68を通してポンプ69に接続されている。圧力センサ26はAD変換器75を介して信号処理器(信号処理部)76に接続されている。サンプルプローブ15は図示しない移動機構を有しており、上下、回転してサンプル容器10と反応容器35に移動できる。
【0022】
本実施例の装置は以下のように動作する。
【0023】
サンプル容器10には血液等の検査対象の試料が入れられ、サンプルディスク12にセットされる。それぞれの試料で必要な分析の種類はコントローラ60に入力される。サンプルプローブ15によってサンプル容器10から採取された試料は反応ディスク36に並べられている反応容器35に一定量分注される。そして、一定量の試薬が試薬ディスク41または42に設置された試薬容器40から試薬プローブ20または21により反応容器35に分注され、攪拌装置30にて攪拌される。この試料および試薬の分注量は、分析の種類毎に予め設定されている。
【0024】
反応ディスク36は、周期的に回転、停止を繰り返し、反応容器35が光源50の前を通過するタイミングで分光検出器51にて測光が行われる。10分間の反応時間の間に測光を繰り返し、その後、容器洗浄機構45で反応容器35内の反応液の排出および洗浄がなされる。それらの間に別の反応容器35では、別の試料、試薬を用いた動作が並行して実施される。分光検出器51にて測光したデータはコンピュータ61で演算し、分析の種類に応じた成分の濃度を算出してコンピュータ61のディスプレイに表示される。
【0025】
サンプルプローブ15の動作を図2を用いて詳細に説明する。
【0026】
試料を吸引する前に、まず、コントローラ60は、バルブ68を開閉してサンプルプローブ15の流路内部をポンプ69から供給されるシステム液77で満たす。次に、コントローラ60は、サンプルプローブ15の先端が空中にある状態で、駆動機構67によりプランジャ66を下降動作させ、分離空気78を吸引する。
【0027】
次に、コントローラ60は、サンプルプローブ15をサンプル容器10の中に下降させ、その先端が試料内に浸かった状態でプランジャ66を所定量下降して試料をプローブ内に吸引する。この場合、吸引液79は試料である。吸引から引続く動作中の圧力変動を圧力センサ26で検出し、AD変換器75でデジタル変換されて信号処理器76に送る。その後、サンプルプローブ15を反応容器35上に移動して試料を吐出する。
【0028】
試料吐出時から引続く動作中に再び、圧力変動を圧力センサ26で検出し、AD変換器75でデジタル変換されて信号処理器76に送る。引続いてサンプルプローブ15はバルブ68の開閉で内外部が洗浄され、次の分析に備える。
【0029】
信号処理器76では吸引時、および吐出時の圧力波形から分注の異常の有無を判別し、異常があったと判断された場合は、その分析を中止させ、アラームを表示して、復帰動作をする。復帰動作は、異常の原因を除いて再分注する、別の試料の検査に移る、装置を停止するなどの中から選択される。
【0030】
図3は、信号処理器76の内部構成図である。信号処理器76は、統計距離算出部76aと、メモリ76bと、比較部76cと、判定部76dとを備える。
【0031】
信号処理器76の判定部76dは、その判定結果をコントローラ60に伝達する。信号処理器76は、コントローラ60とは別箇に設けられていてもよいし、コントローラ60内に備えられていてもよいものである。
【0032】
信号処理器76で行われる分注の異常の有無の判別の詳細を図3を用いて説明する。図4は圧力センサ26で検出される圧力の吸引時前後の変動波形を示したグラフであり、横軸は時間、縦軸は圧力である。図4中の曲線が圧力変動波形である。
【0033】
吸引時間は、プランジャ66を下降動作させている時間であり、サンプルプローブ15の先端から試料を吸引している。図4に示すように、吸引時間中はサンプルプローブ15内の圧力が低下し、吸引終了後は圧力は上昇し、吸引前と同様な値に戻るが、吸引開始時と吸引停止時には圧力値は振動的になる。
【0034】
図4に示したX1からX27は特徴変数である。本発明の一実施例の場合は、吸引開始時刻を第1基準時刻とし、第1基準時刻前後の一定時間間隔ごとの圧力平均値をX1からX7とする。そして、第1基準時刻後の最初の極小点の圧力値をX8、タイミングをX9、最初の極大点の圧力値をX10、タイミングをX11、2番目の極小点の圧力値をX12、タイミングをX13とする。
【0035】
また、吸引終了時刻を第2基準時刻とし、第2基準時刻前後の一定時間間隔ごとの圧力平均値をX14からX19とする。第2基準時刻後の最初の極大点の圧力値をX20、タイミングをX21、その後の最初の極小点の圧力値をX22、タイミングをX23、2番目の極大点の圧力値をX24、タイミングをX25とする。
【0036】
また、吸引時間中の圧力の平均値をX26、吸引時間の一部分の圧力のRMS値をX27とする。
【0037】
信号処理器76では、統計距離算出部76aが、AD変換器75から送られてくる圧力波形のデジタル信号について、X1からX27の特徴変数を計算する。また、信号処理器76は、サンプルプローブ15が正常に試料を分注できた場合の特徴変数X1からX27の結果を正常群データとして内部メモリ76bに保持しており、統計距離算出部76aは、計算した特徴変数X1からX27の正常群データからの統計距離Dを計算する。そして、比較部76cは、統計距離Dと、メモリ76bに記憶された予め定めた閾値とを比較し、その差分を判定部76dに供給する。判定部76dは、統計距離Dと閾値との差が大きい場合に吸引に異常があったと判定し、小さい場合は正常に吸引が行えたと判定する。
【0038】
吐出についても、上述した吸引の場合と同様の処理を行い、正常に吐出が行えたかどうかを判定部76dが判定する。
【0039】
統計距離Dは、複数の特徴変数で代表される2つの事象間の類似性を数値化した指標であり、本発明の一実施例の場合は、正常群データの集合に対して、その時に測定したデータが、どれだけ離れているかの計算になる。統計距離Dの計算法には、マハラノビス距離、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、多変量正規密度、ミンコフスキー距離などいくつもの計算法があるが、ここでは、統計距離Dは次式(1)、(2)で計算する。
【0040】
ui=(Xi−μi)/σi ・・・(1)
D=uR−1u' ・・・(2)
上記式(1)、(2)において、R、μ、σは、それぞれ正常群データの相関行列、平均値ベクトル、標準偏差ベクトルで、添え字iはベクトルのi番目の要素を表す。また、Dはマハラノビス距離である。また、uiは正規化した特徴変数であり、uはuiを要素とするベクトルである。u'は、uの転置ベクトルである。
【0041】
次に、本実施例での判別の例を図5から図10を用いて説明する。
【0042】
図5は、試料吸引の判別の例である。波形(a)、波形(b)は正常範囲内の低粘性試料、高粘性試料を吸引した場合の波形であり、計算した統計距離Dは30以下である((a)はD=29、(b)はD=27)。
【0043】
波形(c)はサンプルプローブ15が試料に届かずに、空中で吸引してしまった場合の波形(空吸い(D=307))である。波形(d)は試料上部に泡が存在している状態で、サンプルプローブ15が泡の部分で吸引してしまった場合の波形である(泡吸引(D=1078)。この場合、異常判定閾値を100程度(標準偏差μの3倍値を考慮した値)に設定しておくことで、波形(a)、(b)は正常、波形(c)、(d)は異常と判断される。
【0044】
図6は、本実施例で扱う代表的な分析の種類での試薬分注量における、駆動機構67の駆動パターンである。横軸は時間で、縦軸はプランジャ66の移動速度である。分注量1、2、3は、互いに同一の速度であって、速度小の場合である。分注量4、5は、互いに同一の速度であって、速度大の場合である。図6に示すように、分注量の違いにより、吸引時間、吸引速度が大きく異なる。
【0045】
図7は、図6に示した分注量で吸引した場合の、プローブ15内の圧力波形を示す図である。図7において、波形(a)から(e)は、分注量1から5において、正常に吸引した場合の波形である。分注量は、駆動機構67の駆動パターンの違いにより、圧力の変化時間、変化量が大きく異なる。圧力の変化時間、変化量が大きく異なるこの場合も、比較する正常群データは共通であるが、計算した統計距離Dは(a)から(e)に対しては30以下であった(D=18〜28)。
【0046】
図7の(f)は分注量4の条件で泡を吸ってしまった場合の波形である。計算した統計距離Dは309であった。閾値を100程度に設定しておくことで、波形(a)〜(e)は正常であり、波形(f)は異常であると判断でき、吸引の正常と異常とを正しく判別することが可能である。
【0047】
このように、吸引パターンが異なる条件であっても、吸引の正常及び異常判別が正しく行えるのは、第1基準時刻(吸引開始時)を基準にした特徴変数と、第2基準時刻(吸引終了時)を基準にした特徴変数を利用しているので、吸引時間の違う条件でも適正な特徴を抽出できているからである。
【0048】
図8は、第1試薬分注プローブ20における試薬吸引時の圧力波形を示す図である。試薬は試料に比べて分注量が多いので、試薬分注プローブ20は、先端の絞り部65がサンプルプローブ15に比べて太くなっている。そのため、吸引流体の粘性の違いが圧力波形に与える影響が小さい。
【0049】
本実施例では、図8に示すように、正常吸引の場合の波形(a)、(b)は統計距離Dが15と21であり、共に30以下である。泡を吸引してしまった場合の波形(c)は、統計距離Dが598と大きく、閾値を100程度に設定しておけば異常の有無を正しく判別できる。
【0050】
このように、圧力の変化の差が小さい条件でも判別できるのは、吸引開始時と終了時の振動波形の極大、極小値の圧力値およびタイミングを特徴変数に取り込んでいるからである。プローブ先端の絞り部65での圧力損失に差が小さくても、気泡を吸引してしまうとプローブ内部での空気量が増えて振動特性に差が生じ、振動の極値のタイミングがずれるのを本実施例の方法では捕らえられるからである。
【0051】
図9は、サンプルプローブ15における吐出時の圧力波形を示す図である。図9において、試料吐出中は、試料吸引中とは逆に圧力が上昇しており、試料吐出終了後に吐出前の圧力に戻る。吐出開始時および終了時の圧力に、振動波形が生じるが、吸引時の振動よりは小さい。
【0052】
図9において、波形(a)、(b)は正常範囲内の低粘性試料および高粘性試料の場合であるが、統計距離Dは、波形(a)が20、波形(b)が42であり、どちらも50以下である。波形(c)は空吸引してしまった場合の吐出時における圧力波形であり、統計距離Dは714であった。波形(d)は、吸引時に泡を一緒に吸ってしまった場合の吐出時における波形であり、統計距離Dは829であった。この場合も、閾値を100程度に設定しておくことで、吸引時における正常と異常とを吐出時において正しく判別することができる。
【0053】
図10は、サンプルプローブ15における吐出時の圧力波形の別の例を示す図である。図10において、波形(a)は正常に分注できた場合で統計距離Dは28であった。波形(b)は吐出後に吐出した試料の液滴の1部がサンプルプローブ15の先端に付着してしまった場合である。波形(b)の場合は、付着した試料をサンプルプローブ15が持ち帰ってしまうので、分注量が不足してしまう。この場合も、統計距離Dは307と大きく、正常な場合と判別できる。
【0054】
このような波形の違いが小さいような異常も正しく判別できるのは、正しい波形のみの正常群データを用いていることと、吐出終了時刻を基準とした特徴変数を用いているために吐出終了後の波形の特徴を的確に捉えられているからである。
【0055】
図11は、本実施例1の判別動作のフロー図である。
【0056】
図11において、サンプルプローブ15にて吸引動作を行い(ステップS1)、統計処理算出部76aが吸引波形の特徴変数の値を抽出し、メモリ76bに格納された正常群データからの統計距離Dを計算する(ステップS2、S3)。比較部76cにより、統計距離Dとメモリ76bに格納された閾値thとが比較され、その結果が判定部76dに供給される(ステップS4)。
【0057】
判定部76dは、統計距離Dが定められた閾値th以上の場合は、吸引に異常ありと判定し、復帰処理1を実施する(ステップS5)。この復帰処理1は、判定部76dがコントローラ60、コンピュータ61に吸引異常ありを伝達し、アラーム処理及び次の検体の処理に進む動作を、コントローラ60、コンピュータ61の制御により実行する処理である。
【0058】
統計距離Dが閾値thより小さい場合は、判定部76dからの指令に従って、コントローラ60の制御により、吐出動作に移行する(ステップS6)。吐出動作後、吐出波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの統計距離Dを計算する(ステップS7、S8)。そして、統計距離Dが定められた閾値th以上の場合は、吐出に異常ありと判定し(ステップS9)、復帰動作2を行う(ステップS10)。この復帰動作2は、、判定部76dがコントローラ60、コンピュータ61に吐出異常ありを伝達し、アラーム処理及びその検体の分析は実行せず、その検体に使用した反応容器を洗浄する動作を、コントローラ60、コンピュータ61の制御により実行する処理である。
【0059】
統計距離Dが閾値thより小さい場合は、分注に異常なしと判定して判別動作を終了する。
【0060】
以上のように、本実施例1では、サンプルプローブ15で試料を吸引または吐出するときの圧力変動から、プランジャ動作開始時および終了時を第1基準時刻、第2基準時刻として、それぞれの基準時刻を基にした一定タイミングの圧力平均値と極大、極小点の圧力値およびタイミングを特徴変数として取り込み、正常群データとの統計距離Dを閾値と比較するので、分注時に起こる圧力変動が、正常に分注できた場合の圧力変動と異なる特徴がある場合を感度よく検出することができ、分注時の異常を判定でき、分注時の不良を見逃した誤った分析結果を出力することを防ぐことができ、信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0061】
また、本実施例1の場合は、複数の特徴変数を用いて計算した正常群データからの統計距離Dを1つの閾値thと比較すると単純な論理で異常の有無を判定するので、圧力波形の各時刻の値を個々に正常データと比較して複雑な判定基準と比較する必要がなく、かつ、さまざまな原因で発生する分注の異常を見逃すことなく検出できるので、単純な演算で分注の異常の有無を正確に判別できる信頼性の高い自動分析装置を提供することができる。
【0062】
また、本実施例1の場合は、正常な範囲の試料の取りうる粘性範囲の液体で取得した正常群データを用いることで、空気を吸引してしまった場合、泡を吸引してしまった場合、正常範囲外の高粘性の試料であった場合、試料中の固形物による詰りが発生した場合などの複数の原因による分注の異常を見逃すことなく検出でき、信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0063】
また、本実施例1の場合は、圧力変動の時系列データから少数の特徴変数を抽出し、特徴変数に対して統計距離を計算するので、統計距離の計算に要する演算量が少なくてすみ、さまざまな原因による異常に対応しながらも高速な判別処理が可能で、高処理能力でかつ信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0064】
また、本実施例1の場合は、吸引または吐出時のプランジャ動作開始時を基準とした特徴変数と、プランジャ動作終了時を基準とした特徴変数の両方を用いているので、プランジャ動作時間や動作速度などの条件の異なる分注動作に対しても共通の正常群データに含めても正しく異常を判別することができる。そのため、分注の条件が異なるさまざまな種類の分析を行う装置でも、正常群データの数が少数で済み、判別のための処理が単純で済む。そのため、多種の分析条件に対応しながら信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
【0065】
また、プランジャ動作時間や動作速度などの条件の異なる分注動作に対して共通の正常群データとすることで、ばらつきの大きい正常郡データとすることができる。正常なのに異常と判断してしまう誤判定を防ぐためには、正常群データに、正常範囲内でのばらつきの大きいデータを含ませることが必要であるが、複数の分注条件を共通の正常群データとすることで正常群データ全体の数が少なくてもばらつきの大きいデータを含ませることができ、正常群データを収集する手間を簡略化でき、少ない正常群データでも精度の高い異常の判別ができる、信頼性の高い自動分析装置を提供することができる。
【0066】
また、本実施例1の場合は、圧力変動の極大点、および極小点の圧力値とタイミングを特徴変数として抽出して統計距離の計算に用いているため、プローブ先端の内径の太い試薬分注系のように時刻毎の圧力値の比較では判別が困難な条件でも精度よく異常の判別ができ、検体分注と試薬分注の異常を検出できる信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供できる。
【0067】
また、本実施例1の場合は、吸引時の異常の有無と吐出時の異常の有無を両方判別するので、吸引時に発生する異常と吐出時に発生する異常を全て見逃さずに判別することができ、信頼性の高い分析ができる自動分析装置の提供が可能である。
【0068】
また、本実施例1の場合は、吸引動作が終わった時点で吸引波形の異常を判別して、異常と判定した場合は回復動作を行うので、吐出動作開始前に回復動作を行うメリットがある。例えば、空吸いや泡吸いをした状態で反応容器35内に吐出すると、反応容器35内に泡を吐出してしまい洗浄が困難になるが、吸引動作で異常を検出した場合の復帰動作で反応容器35への吐出を停止させれば、反応容器35の内部を泡で汚すことがない。また、検体吸引時に異常を検出した場合は、引続く試薬分注を停止することができ、検体分注が正しく行えていないのに試薬を消費してしまうことを防ぐことができる。
【0069】
このように、本実施例1では反応セルを汚したり試薬を無駄に消費したりすることを防ぐことができる。
【0070】
また、本実施例1では、吐出波形に対してプランジャ動作開始時および終了時を第1基準時刻、第2基準時刻として、それぞれの基準時刻を基にした一定タイミングの圧力平均値と極大、極小点の圧力値およびタイミングを特徴変数として取り込み、正常群データとの統計距離Dを閾値と比較するので、吐出後に試料の一部をサンプルプローブ15の先端に付着させたまま持ち帰ってしまうことによる分注不良を正しく検出することができ、信頼性の高い分析が可能な自動分析装置を提供することができる。
(実施例2)
図12は、本発明の他の実施例である実施例2の判別動作のフロー図である。実施例1との違いは、吸引動作と吐出動作に分けずに、吐出が終えてから吸引、吐出の両方の波形の特徴変数の値を抽出し、正常群データからの特徴変数Dを計算して閾値thと比較するようにしている点である。他の構成については、実施例1と同様であるので、詳細な説明及び図示は省略する。また、図12には、図11に示したステップと同様なステップは、同等の参照符号を示すものとする。
【0071】
図12において、吸引動作(ステップS1)、吐出動作(ステップS6)を行った後、吸引波形及び吐出波形の特徴変数を抽出し(ステップS2、S7)、正常群データとの統計距離Dを算出する(ステップS3、S8)。この場合、統計距離算出部76aは、吸引時における吸引波形及び吐出時における吐出波形をメモリ76bに格納しておき、吐出動作終了後に、メモリ76bから読み出し、特徴変数の抽出及び統計距離Dの算出を行う。
【0072】
そして、算出した統計距離Dが閾値より大の場合は、復帰処理を行う(ステップS10)。算出した統計距離Dが閾値D未満であれば、処理は終了となる。
【0073】
本実施例2の場合は、吸引時の情報と吐出時の情報を両方利用して1回の判別を行うので、雑音などの影響を受けにくく、かつ吸引時の異常と吐出時の異常を見逃すことがない正確な異常の判別が行え、信頼性の高い分析のできる自動分析装置を提供できる。
【0074】
つまり、吸引時には、液体試料を吸引しながら液面を検知し、プローブを液面に追従して動作させる必要があるため、そのための機構が動作しており、ノイズが発生する可能性が高い。これに対して、試料吐出時には、プローブを液面に追従して動作させる必要はないため、ノイズの発生が少ないからである。
【0075】
なお、吸引時及び吐出時共にDが閾値未満であれば正常と判断し、吸引時及び吐出時共にDが閾値以上であれば異常と判断することができる。吸引時か吐出時のうちのいずれか一方のDが閾値以上の場合は、Dと閾値との差に応じて、正常か異常かを判断するように構成することもできる。
【0076】
また、本実施例2の場合、吸引時と吐出時の波形をまとめて1回の判別処理を行うので、判別処理が単純化でき、処理能力の高い自動分析装置が提供できる。
【0077】
なお、本実施例2では、吸引時と吐出時の両方の波形から特徴変数を抽出しているが、吸引時、または吐出時の片方の波形でもよく、更にプローブ移動時や洗浄時の変動波形を利用することも可能である。
(実施例3)
図13は、本発明の他の実施例である実施例3の判別動作のフロー図である。実施例3のステップS1、S6、(S2、S7)、(S3、S8)、(S4、S9)は、実施例2のステップS1、S6、(S2、S7)、(S3、S8)、(S4、S9)と同様である。実施例3の実施例2との相違は、実施例3においては、空吸いが生じた場合及び詰りが生じた場合をも判断する点である。
【0078】
この実施例3においては、予め、正常群データのみでなく、空吸いが生じた場合のデータと、詰りが生じた場合の群データを用意しておく。つまり、メモリ76bに格納しておく。
【0079】
吸引、吐出動作から抽出した特徴変数をまず正常群データからの統計距離Dを計算し(ステップ3、S8)、閾値th以上と判断した場合は(ステップS4、S9)、更に空吸い群データからの統計距離Dを統計距離算出部76aが計算する(ステップS8a)。そして、統計距離Dが閾値th未満か否かを判断し(ステップS9a)、閾値th未満のときには、空吸いのアラームを出力し(ステップS10a)、復帰処理を行う(ステップS10)。
【0080】
ステップS9aにおいて、閾値th以上の場合は、更に詰り群データからの統計距離Dを計算する(ステップS8b)。そして、統計距離Dが閾値th未満か否かを判断し(ステップS9b)、Dが閾値th未満のときは詰りアラームを出力し(ステップS10b)、復帰処理を行う(ステップS10)。
【0081】
ステップS9bにおいて、Dが閾値th以上の場合はその他アラームを出力し(ステップS10c)、復帰処理(ステップS10)を行って判別動作を終了する。
【0082】
本実施例3の場合は、異常の有無だけでなく、異常の種類を判別してそれぞれに最適な動作を選択することが可能である。
【0083】
また、本実施例3で示した異常の種類は空吸いと詰りだけであるが、それ以外にも異常粘性や流路漏れ、温度や気圧などの環境異常、異常振動など様々な種類の異常に対応させることが可能である。
【0084】
また、異常の種類の判別に限らず、定量的に異常の程度を示すことも可能である。定量的に異常の程度を示す方法の一つは、特徴変数の値を入力とした回帰分析を利用することであり、それにより、例えば試料の粘性の大きさや、吐出量の推定値を出力することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10・・・サンプル容器、 12・・・サンプルディスク、 15・・・サンプルプローブ、 20・・・第1試薬プローブ、 21・・・第2試薬プローブ、 24・・・分注流路、 25・・・定量ポンプ、 26・・・圧力センサ、 30・・・攪拌装置、 35・・・反応容器、 36・・・反応ディスク、 40・・・試薬容器、 41・・・第1試薬ディスク、 42・・・第2試薬ディスク、 45・・・容器洗浄機構、 50・・・光源、 51・・・分光検出器、 60・・・コントローラ、 61・・・コンピュータ、 65・・・絞り部、 66・・・プランジャ、 67・・・駆動機構、 68・・・バルブ、 69・・・ポンプ、 75・・・A/D変換器、 76・・・信号処理器、 77・・・システム液、 78・・・分離空気、 79・・・吸引液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料または試薬を反応容器に分注する分注プローブを有する分注機構と、上記反応容器内の試料を分析する分析部とを備えた自動分析装置において、
上記プローブ内の圧力を検出する圧力センサと、
上記圧力センサにより検出された上記分注プローブの分注動作時における分注プローブ内の複数時点の圧力データと、予め定めた基準圧力変化データとの統計距離を算出し、算出した統計距離が一定の閾値未満か否かにより、上記分注プローブの分注動作が正常に行われたか否かを判断する信号処理部と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記分注機構は、定量の吸引、吐出が可能な定量ポンプを有し、上記信号処理部は、上記圧力センサからの圧力データから、上記定量ポンプの動作の複数のタイミングを基準時刻として特徴変数を抽出して、上記基準圧力変化データとの統計距離を算出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部は、上記基準圧力変化データ及び異常判定閾値とが格納されたメモリと、このメモリに格納された上記基準圧力変化データと上記圧力センサにより検出された圧力データとの統計距離を算出する統計距離算出部と、この統計距離算出部により算出された統計距離と上記メモリに格納された異常判定閾値とを比較する比較部と、この比較部による比較結果に基づいて、分注機構の分注動作が異常か正常かを判定する判定部とを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、上記信号処理部のメモリに格納された上記基準圧力変化データは、試薬または試料の分注量を含む分注条件が異なる複数種類の基準圧力変化データであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の自動分析装置において、上記特徴変数は、基準時刻を基にした一定タイミングの圧力値と、基準時刻から圧力変動が極大または極小となるまでの時間と、極大または極小となった時の圧力値を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部が算出する統計距離は、マハラノビス距離、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、多変量正規密度、ミンコフスキー距離のいずれかであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部は、上記分注プローブの試料または試薬の吸引時および吐出時の両方の圧力データを用いて、分注動作が正常に行われたか否かを判断することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項2に記載の自動分析装置において、上記定量ポンプの動作の複数のタイミングとする基準時刻は、上記定量ポンプの駆動開始時刻と駆動終了時刻であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の自動分析装置において、基準圧力変化データは、正常の試料または試薬と同等の粘性範囲をもつ液体を分注した圧力波形のデータであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部は、特定原因による異常群圧力データを基準圧力変化データとして用い、上記分注プローブが、正常に分注できなかったと判断した場合に、異常の種類を判別することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
試料または試薬を反応容器に分注する分注プローブを有する分注機構と、上記反応容器内の試料を分析する分析部とを備えた自動分析装置の分注動作正常異常判定方法において、
上記分注プローブの分注動作時におる分注プローブ内の複数時点の圧力データと、予め定めた基準圧力変化データとの統計距離を算出し、算出した統計距離が一定の閾値未満か否かにより、上記分注プローブの分注動作が正常に行われたか否かを判断することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記分注機構は、定量の吸引、吐出が可能な定量ポンプを有し、上記圧力データから、上記定量ポンプの動作の複数のタイミングを基準時刻として特徴変数を抽出して、上記基準圧力変化データとの統計距離を算出することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項13】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記基準圧力変化データは、試薬または試料の分注量を含む分注条件が異なる複数種類の基準圧力変化データであることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項14】
請求項12に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記特徴変数は、基準時刻を基にした一定タイミングの圧力値と、基準時刻から圧力変動が極大または極小となるまでの時間と、極大または極小となった時の圧力値を含むことを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項15】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、算出する上記統計距離は、マハラノビス距離、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、多変量正規密度、ミンコフスキー距離のいずれかであることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項16】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記分注プローブの試料または試薬の吸引時および吐出時の両方の圧力データを用いて、分注動作が正常に行われたか否かを判断することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項17】
請求項12に記載の分注動作正常異常判定方法において、
上記定量ポンプの動作の複数のタイミングとする基準時刻は、上記定量ポンプの駆動開始時刻と駆動終了時刻であることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項18】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、基準圧力変化データは、正常の試料または試薬と同等の粘性範囲をもつ液体を分注した圧力波形のデータであることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項19】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、特定原因による異常群圧力データを基準圧力変化データとして用い、上記分注プローブが、正常に分注できなかったと判断した場合に、異常の種類を判別することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項1】
試料または試薬を反応容器に分注する分注プローブを有する分注機構と、上記反応容器内の試料を分析する分析部とを備えた自動分析装置において、
上記プローブ内の圧力を検出する圧力センサと、
上記圧力センサにより検出された上記分注プローブの分注動作時における分注プローブ内の複数時点の圧力データと、予め定めた基準圧力変化データとの統計距離を算出し、算出した統計距離が一定の閾値未満か否かにより、上記分注プローブの分注動作が正常に行われたか否かを判断する信号処理部と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記分注機構は、定量の吸引、吐出が可能な定量ポンプを有し、上記信号処理部は、上記圧力センサからの圧力データから、上記定量ポンプの動作の複数のタイミングを基準時刻として特徴変数を抽出して、上記基準圧力変化データとの統計距離を算出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部は、上記基準圧力変化データ及び異常判定閾値とが格納されたメモリと、このメモリに格納された上記基準圧力変化データと上記圧力センサにより検出された圧力データとの統計距離を算出する統計距離算出部と、この統計距離算出部により算出された統計距離と上記メモリに格納された異常判定閾値とを比較する比較部と、この比較部による比較結果に基づいて、分注機構の分注動作が異常か正常かを判定する判定部とを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、上記信号処理部のメモリに格納された上記基準圧力変化データは、試薬または試料の分注量を含む分注条件が異なる複数種類の基準圧力変化データであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の自動分析装置において、上記特徴変数は、基準時刻を基にした一定タイミングの圧力値と、基準時刻から圧力変動が極大または極小となるまでの時間と、極大または極小となった時の圧力値を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部が算出する統計距離は、マハラノビス距離、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、多変量正規密度、ミンコフスキー距離のいずれかであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部は、上記分注プローブの試料または試薬の吸引時および吐出時の両方の圧力データを用いて、分注動作が正常に行われたか否かを判断することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項2に記載の自動分析装置において、上記定量ポンプの動作の複数のタイミングとする基準時刻は、上記定量ポンプの駆動開始時刻と駆動終了時刻であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の自動分析装置において、基準圧力変化データは、正常の試料または試薬と同等の粘性範囲をもつ液体を分注した圧力波形のデータであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記信号処理部は、特定原因による異常群圧力データを基準圧力変化データとして用い、上記分注プローブが、正常に分注できなかったと判断した場合に、異常の種類を判別することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
試料または試薬を反応容器に分注する分注プローブを有する分注機構と、上記反応容器内の試料を分析する分析部とを備えた自動分析装置の分注動作正常異常判定方法において、
上記分注プローブの分注動作時におる分注プローブ内の複数時点の圧力データと、予め定めた基準圧力変化データとの統計距離を算出し、算出した統計距離が一定の閾値未満か否かにより、上記分注プローブの分注動作が正常に行われたか否かを判断することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記分注機構は、定量の吸引、吐出が可能な定量ポンプを有し、上記圧力データから、上記定量ポンプの動作の複数のタイミングを基準時刻として特徴変数を抽出して、上記基準圧力変化データとの統計距離を算出することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項13】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記基準圧力変化データは、試薬または試料の分注量を含む分注条件が異なる複数種類の基準圧力変化データであることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項14】
請求項12に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記特徴変数は、基準時刻を基にした一定タイミングの圧力値と、基準時刻から圧力変動が極大または極小となるまでの時間と、極大または極小となった時の圧力値を含むことを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項15】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、算出する上記統計距離は、マハラノビス距離、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、多変量正規密度、ミンコフスキー距離のいずれかであることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項16】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、上記分注プローブの試料または試薬の吸引時および吐出時の両方の圧力データを用いて、分注動作が正常に行われたか否かを判断することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項17】
請求項12に記載の分注動作正常異常判定方法において、
上記定量ポンプの動作の複数のタイミングとする基準時刻は、上記定量ポンプの駆動開始時刻と駆動終了時刻であることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項18】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、基準圧力変化データは、正常の試料または試薬と同等の粘性範囲をもつ液体を分注した圧力波形のデータであることを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【請求項19】
請求項11に記載の分注動作正常異常判定方法において、特定原因による異常群圧力データを基準圧力変化データとして用い、上記分注プローブが、正常に分注できなかったと判断した場合に、異常の種類を判別することを特徴とする分注動作正常異常判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−53868(P2013−53868A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190664(P2011−190664)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]