自動分析装置
【課題】被検試料を精度よく分注することができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】自動分析装置は、被検試料を試料容器から吸引し、反応容器に吐出するための試料プローブ9と、試料容器に対して試料プローブを昇降するプローブ昇降機構10と、第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作の後に第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行う場合、第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作のうち最後の吸引動作における試料プローブの試料液面への突入速度よりも、第2の被検試料についての試料プローブによる吸引動作における試料プローブの試料液面への突入速度を速くするようにプローブ昇降機構を制御する制御部32とを具備する。
【解決手段】自動分析装置は、被検試料を試料容器から吸引し、反応容器に吐出するための試料プローブ9と、試料容器に対して試料プローブを昇降するプローブ昇降機構10と、第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作の後に第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行う場合、第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作のうち最後の吸引動作における試料プローブの試料液面への突入速度よりも、第2の被検試料についての試料プローブによる吸引動作における試料プローブの試料液面への突入速度を速くするようにプローブ昇降機構を制御する制御部32とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれている成分を分析する自動分析装置及びその分注方法に係り、特に、ヒトの血液や尿などの体液を分注して体液に含まれる成分を自動的に測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、反応容器に分注した被検試料と分析を行う生化学や免疫などの測定項目に該当する試薬との混合液の反応によって生ずる色調などの変化を光の透過量を測定することにより、被検試料中の様々な被測定物質の濃度や酵素の活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に分析条件の設定により測定可能になった多数の項目の中から、検査に応じて選択された測定項目の測定が行われる。そして、被検試料及び測定項目に該当する試薬は、サンプル及び試薬分注プローブにより反応容器に分注され、反応容器に分注された被検試料及び試薬は撹拌子により混合され、混合された混合液は測光部により測定される。更に、被検試料及び試薬に接触したサンプル及び試薬分注プローブ、混合液に接触した反応容器及び撹拌子は、洗浄された後に繰り返し測定に使用される。
【0004】
最近の自動分析装置では、多数の被検試料及び多項目の高速処理が可能なように、被検試料の測定動作を一定の短い分析サイクル内に入るように、各分析ユニットを互いに連動させしかも高速で動作させている。
【0005】
そして、被検試料の分注では、1分析サイクルの間に、吸引及び吐出動作を行うサンプル分注ポンプとサンプル分注プローブ間のチューブ、及びサンプル分注プローブ内に封入された水などの圧力伝達媒体を介して、サンプル分注プローブから試料容器内の被検試料を吸引し、サンプル分注アームで水平及び上降下させたサンプル分注プローブから吸引した被検試料を反応容器に吐出する。
【0006】
被検試料を複数回分注する場合の1回目の分注における吸引動作では、サンプル分注プローブの試料容器上方への水平移動と共にサンプル分注プローブ内にまずエアを吸引する。次に、試料容器の上方への水平移動の後のエアを吸引する。次に、試料容器内の被検試料に向けてサンプル分注プローブを降下し、サンプル分注プローブが試料容器内の被検試料に突入した時に、被検試料の液面を検出器で検出する。そして、その検出位置から被検試料の吸引が可能な程度の浅い吸引位置で停止させる。
【0007】
サンプル分注プローブが降下した後に、試料容器からサンプル分注プローブ内にダミーの被検試料及び測定用の1回目の分注に応じた被検試料を吸引し、反応容器に測定用の1回目の被検試料だけを吐出する。
【0008】
n回目(n≧2)の分注では、1回目と同様のタイミングで動作し、サンプル分注プローブ内に測定用のn回目の分注に応じた被検試料だけを吸引した後、反応容器に測定用のn回目の被検試料だけを吐出する。その被検試料のすべての分注が終了した後に1回目のときに吸引したエア及びダミーの被検試料を排出し、排出後にサンプル分注プローブの内外の洗浄を行う。
【0009】
この1回目の分注における吸引により、サンプル分注プローブ内に形成されたエア及びダミーの被検試料の層は、サンプル分注プローブ内に吸引された測定用の毎回の被検試料を圧力伝達媒体から隔離し、圧力伝達媒体の拡散などによる混入で測定用の被検試料が希釈されて被検試料の分注精度が低下するのを防ぐために設けられることが知られている(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、分注における吸引のときに、サンプル分注プローブを試料容器内の被検試料に高速で突入させるため、同じ被検試料からの分注回数が増えると吸引位置に停止した時の衝撃の回数が増えて、サンプル分注プローブ内のエア層に圧力伝達媒体が混入して一部のエアが分散し、エア層が薄くなる問題や、エア層が薄くなることにより圧力伝達媒体が混入して1回目に形成されたダミー被検試料が希釈される問題がある。この問題により、同じ被検試料からの分注回数が増えると、その被検試料の分注精度を悪化させる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−162401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、被検試料を精度よく分注することができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被検試料を試料容器から吸引し、反応容器に吐出するための試料プローブと、前記試料容器に対して前記試料プローブを昇降するプローブ昇降機構と、第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作の後に第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行う場合、前記第1の被検試料についての前記試料プローブによる前記複数回の吸引動作のうち最後の吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度よりも、前記第2の被検試料についての前記試料プローブによる吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度を速くするように前記プローブ昇降機構を制御する制御部とを具備することを特徴とする自動分析装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に係るサンプル部と反応部の構成の一部を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施例に係るサンプル分注工程の構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例に係る1回目のサンプル分注工程を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施例に係るn回目のサンプル分注工程を示すフローチャートである。
【図7A】図7Aは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階のエア吸引動作を示す図である。
【図7B】図7Bは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階のダミー吸引動作を示す図である。
【図7C】図7Cは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階の1回目の試料吸引動作を示す図である。
【図7D】図7Dは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階の2回目の試料吸引動作を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施例に係る1回目のサンプル分注工程とn回目のサンプル分注工程とを示すタイミングチャートである。
【図9A】図9Aは、本発明の実施例に係る被検試料を吸引するための1回目のサンプル分注プローブの降下の動作を示す図である。
【図9B】図9Bは、本発明の実施例に係る被検試料を吸引するためのn回目のサンプル分注プローブの降下の動作を示す図である。
【図10A】図10Aは、図9A、図9Bに対応するサンプル分注プローブの速度シーケンスを示す図である。
【図10B】図10Bは、図9A、図9Bに対応するサンプル分注プローブの他の速度シーケンスを示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施例に係る自動分析装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の実施例に係る測定項目設定画面の一例を示す図である。
【図13】図13は、本発明の実施例に係る測定項目設定画面から選択入力された被検試料毎の各測定項目に対応するサンプル分注工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図13を参照して説明する。 図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、様々な測定項目のキャリブレータや被検試料毎に選択入力された測定項目を測定する分析部19と、分析部19の測定動作の制御を行う分析制御部30と、分析部19から出力された分析信号を処理して分析データを生成する分析データ処理部40と、分析データ処理部40からの分析データを出力する出力部50と、測定項目毎の分析条件の設定や被検試料毎の測定項目の選択入力、各種コマンド信号を入力する操作部60と、上述したこれらのユニットを統括して制御するシステム制御部70とを備えている。
【0015】
分析部19は、測定項目毎のキャリブレータ、被検試料などのサンプルを取り扱う分析ユニットなどを有するサンプル部20と、サンプルの測定項目の成分と化学反応させるための試薬を取り扱う分析ユニットなどを有する試薬部21と、サンプルと試薬の混合液の測定するための分析ユニットなどを有する反応部22とを備えている。そして、キャリブレータや被検試料の測定により生成されたキャリブレータ信号や分析信号などは、反応部22から分析データ処理部40に出力される。
【0016】
分析制御部30は、分析部19の分析ユニットなどを駆動する各機構を有する機構部31と、機構部31の各機構を制御する制御部32とを備えている。
【0017】
分析データ処理部40は、分析部19の反応部22から出力されたキャリブレータ信号や分析信号などから、各測定項目のキャリブレーションテーブルの作成、各被検試料の各測定項目の分析データの算出などを行う演算部41と、演算部41で作成されたキャリブレーションテーブルや算出された分析データなどが保存される記憶部42とを備えている。
【0018】
演算部41は、分析部19の反応部22から出力された各測定項目のキャリブレータ信号から各測定項目のキャリブレーションテーブルを作成して、出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。また、分析部19の反応部22から出力された各被検試料の各測定項目の分析信号に対して、記憶部42から測定項目のキャリブレーションテーブルを読み出した後、このキャリブレーションテーブルを用いて分析データを算出して、出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。
【0019】
記憶部42は、ハードディスクなどを備え、演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどが被検試料毎に保存される。
【0020】
出力部50は、分析データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどを印刷出力する印刷部51及び表示出力する表示部52を備えている。
【0021】
印刷部51は、プリンタなどを備え、分析データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷出力する。
【0022】
表示部52は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、分析データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブルや分析データ、被検体のID及び氏名などを入力する被検体情報入力画面、測定項目毎の分析条件を設定するための分析条件設定画面、被検試料毎に測定項目を選択設定するための測定項目設定画面などの表示を行う。
【0023】
操作部60は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、測定項目毎の分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検試料毎の測定項目の選択入力、各測定項目のキャリブレーションや被検試料測定などの様々な操作が行われる。
【0024】
システム制御部70は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作部60から供給される操作者のコマンド信号、測定項目の分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を記憶した後、これらの情報に基づいて、分析部19を構成する各分析ユニットなどを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、キャリブレーションテーブルの作成、分析データの算出と出力などシステム全体の制御を行う。
【0025】
次に、図2乃至図3を参照して、分析部19及び分析制御部30の構成の詳細を説明する。図2は、分析部19のサンプル部20、試薬部21、及び反応部22の構成を説明するための斜視図である。
【0026】
サンプル部20は、キャリブレータ、被検試料などのサンプルを収容した試料容器17と、サンプルを収容した試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ6と、ディスクサンプラ6の試料容器17からサンプルを吸引して反応部22の吐出位置から吐出し、同一サンプルの吸引及び吐出による分注終了毎に図示しないサンプル分注プローブ洗浄用位置の洗浄プールで洗浄されるサンプル分注プローブ16と、このサンプル分注プローブ16をキャリブレータ吸引用位置又は被検試料吸引用位置、反応部22のサンプル吐出用位置、及びサンプル分注プローブ洗浄用位置の各位置間の水平移動、及び各位置での上降下を可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0027】
サンプル分注アーム10は、プローブ昇降機構を有する。このプローブ昇降機構は、サンプル分注アーム10の昇降速度を調整可能に構成される。プローブ昇降機構によるサンプル分注アーム10の昇降速度は、制御部32の制御下にある。このプローブ昇降機構によるサンプル分注アーム10の昇降速度、特に降下速度の制御の詳細については後述する。
【0028】
また、サンプル部20は、キャリブレータ吸引用位置又は被検試料吸引用位置に水平移動した後に、降下したサンプル分注プローブ16の先端部が試料容器17内のサンプルに突入した時に、そのサンプルの液面を検出する検出器18aを備え、検出されたサンプルの検出信号は、分析制御部30の制御部32に出力される。そして、サンプル分注プローブ16は、検出器18aからの検出信号に基づく制御部32の制御により、その液面からサンプルの吸引が可能な所定の深さの吸引位置で停止する。
【0029】
なお、サンプル分注プローブ16の停止位置が被検試料の液面から深すぎると、サンプル分注プローブ16の外側の上方にまでサンプルが付着し、その後、上方に付着したサンプルが下方に移動する。そして、サンプル吐出時には、設定料のサンプルと共に下方に移動したサンプルも吐出されてしまう問題がある。また、同一サンプルの分注終了後に、サンプル分注プローブ洗浄用位置の洗浄プールで洗浄するときに、サンプル分注プローブ16の外側の上方まで洗浄するのは困難である。このような問題を避けるため、液面からサンプルの吸引が可能な程度の浅い例えば2mm程度の所定の深さの吸引位置で停止するようになっている。
【0030】
試薬部21は、第1試薬部21aと第2試薬部21bとで構成されている。第1試薬部21aは、サンプルに対して選択的に反応する第1試薬が入った試薬ボトル7a、この試薬ボトル7aを収納する試薬ラック1aと、この試薬ラック1aを回動可能に保持する試薬庫2とを備えている。また、第2試薬部21bは、第1試薬と対をなす第2試薬が入った試薬ボトル7bと、この試薬ボトル7bを収納する試薬ラック1bと、この試薬ラック1bを回動可能に保持する試薬庫3とを備えている。
【0031】
また、第1試薬部21aは、第1試薬吸引用位置に停止した試薬ボトル7aから第1試薬を吸引して反応部22の第1試薬吐出用位置から吐出するプローブであって、第1試薬分注終了毎に第1試薬分注プローブ洗浄用位置の洗浄プールで洗浄される第1試薬分注プローブ14を備えている。同様に第2試薬部21bは、第2試薬吸引用位置に停止した試薬ボトル7bから第2試薬を吸引して反応部22の第2試薬吐出用位置から吐出するプローブであって、第2試薬分注終了毎に第2試薬洗浄用位置の洗浄プールで洗浄される第2試薬分注プローブ15を備えている。
【0032】
更に、第1試薬部21aは、第1試薬分注プローブ14を第1試薬吸引用位置、反応部22の第1試薬吐出用位置、及び第1試薬分注プローブ洗浄用位置の各位置間で水平移動、及び各位置で上降下を可能に保持する第1試薬分注アーム8を備えている。同様に第2試薬部21bは、第2試薬分注プローブ15を第2試薬吸引用位置、反応部22の第2試薬吐出用位置、及び第2試薬分注プローブ洗浄用位置の各位置間で水平移動、及び各位置で上降下を可能に保持する第2試薬分注アーム9を備えている。
【0033】
反応部22は、サンプル吐出用位置に停止したサンプル分注プローブ16から吐出されたサンプルと、第1試薬吐出用位置に停止した第1試薬分注プローブ14から吐出された第1試薬と、第2試薬吐出用位置に停止した第2試薬分注プローブ15から吐出された第2試薬とを受入れる円周上に複数配置された反応容器4と、この反応容器4を回転可能に保持する反応ディスク5とを備えている。そして、反応ディスク5は、例えば4.5秒の分析サイクルで反時計回りに回転して停止し、例えば4分析サイクルで1周と1個分の反応容器4を加算した角度だけ回転する。
【0034】
また、反応部22は、第1撹拌用位置に停止した反応容器4内のサンプル及び第1試薬の混合液を撹拌する攪拌ユニットであって、この混合液の撹拌終了毎に第1撹拌洗浄用位置の洗浄プールで洗浄する第1撹拌子を、第1撹拌用位置と第1撹拌子洗浄用位置間を回動、及び各位置での上降下を可能に保持する第1撹拌ユニット11aを備えている。
【0035】
また、反応部22は、第2撹拌用位置に停止した反応容器4内のサンプル、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する攪拌ユニットであって、この混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子洗浄用位置の洗浄プールで洗浄する第2撹拌子を、第2撹拌用位置と第2撹拌洗浄用位置間を回動、及び各位置での上降下を可能に保持する第2撹拌ユニット11bを備えている。
【0036】
更に、反応部22は、第1或いは第2撹拌後の混合液の入った反応容器4が測光位置を通過する時に光を照射して、透過した光から設定波長の吸光度を測定して分析信号を生成する測光ユニット13と、洗浄及び乾燥用位置に停止した反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄する洗浄ノズル及び乾燥する乾燥ノズルを上降下可能に保持する洗浄ユニット12とを備えている。そして、反応容器4は、洗浄ユニット12で洗浄及び乾燥された後、再び測定に使用される。
【0037】
次に、分析制御部30の機構部31の構成を説明する。
この機構部31は、サンプル部20のディスクサンプラ6、第1試薬部21aの試薬庫2、及び第2試薬部21bの試薬庫3を各回動する機構、反応部22の反応ディスク5を回転する機構、サンプル部20のサンプル分注アーム10、第1試薬部21aの第1試薬分注アーム8、第2試薬部21bの第2試薬分注アーム9、反応部22の第1撹拌ユニット11a、及び第2撹拌ユニット11bを各回動及び上降下する機構、反応部22の洗浄ユニット12の上降下を行う機構を備えている。
【0038】
また、機構部31は、水などの圧力伝達媒体を介してサンプル分注プローブ16内へのサンプルの吸引や、サンプル分注プローブ16からのサンプルの吐出を行わせるサンプル分注ポンプ10aを駆動する機構を備えている。また、第1試薬分注プローブ14から第1試薬の吸引及び吐出を行う試薬ポンプを駆動する機構、第2試薬分注プローブ15から第2試薬の吸引及び吐出を行う試薬ポンプを駆動する機構を備えている。また、第1撹拌ユニット11aの第1撹拌子を撹拌駆動する機構、第2撹拌ユニット11bの第2撹拌子を撹拌駆動する機構を備えている。また、洗浄ユニット12の洗浄ノズルから洗浄液の吐出及び吸引を行う洗浄ポンプを駆動する機構を備えている。また、洗浄ユニット12の乾燥ノズルから吸引を行う乾燥ポンプを駆動する機構等を備えている。
【0039】
制御部32は、機構部31の各機構を制御する制御回路を備えている。制御部32からの信号に基づき機構部31は分析サイクル単位で、ディスクサンプラ6、試薬庫2、試薬庫3、反応ディスク5、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌ユニット11a、第2撹拌ユニット11b、洗浄ユニット12、サンプル分注ポンプ10a、試薬ポンプ、第1撹拌子、第2撹拌子、洗浄ポンプ、乾燥ポンプなどを作動する。
【0040】
また、制御部32は、サンプル部20の検出器18aから出力されたサンプルの検出信号に基づいて、機構部31のサンプル分注アーム10を駆動する機構(例えば、ステッピングモータ)を制御し、サンプル分注プローブ16をそのサンプルの吸引位置に停止させる。
【0041】
図3は、分析部19のサンプル部20と反応部22の構成の一部を上から見た図である。サンプル分注アーム10は、中央の回動軸を中心として上死点における高さで矢印R1及びR2方向に回動して、上死点におけるサンプル分注プローブ16を図3に破線で示した移動軌跡に沿って水平移動する。
【0042】
このサンプル分注プローブ16の移動軌跡上には、反応部22上のサンプル吐出用位置T1と、サンプル部20上の被検試料吸引用位置T2及びキャリブレータ吸引用位置T3と、サンプル吐出用位置T1と被検試料吸引用位置T2及びキャリブレータ吸引用位置T3の間に位置するサンプル分注プローブ洗浄用位置T4とがある。そして、サンプル分注プローブ16は、サンプル吐出用位置T1と被検試料吸引用位置T2の間、サンプル吐出用位置T1とサンプル分注プローブ洗浄用位置T4の間、及びサンプル分注プローブ洗浄用位置T4と被検試料吸引用位置T2及びキャリブレータ吸引用位置T3の間を水平移動する。
【0043】
即ち、サンプル分注プローブ16は、被検試料の入った試料容器17などを保持するディスクサンプラ6がR1又はR2方向に回動した後、被検試料吸引用位置T2の下方に停止したところの所定の試料容器17から被検試料を吸引する。そして、反応部22上のサンプル吐出用位置T1に水平移動され、その下方に停止したところの所定の反応容器4に吸引した被検試料を吐出する。その後、その試料容器17のサンプル分注終了毎にサンプル分注プローブ洗浄用位置T4の下方にある洗浄プールで洗浄される。
【0044】
次に、図1乃至図10Bを参照して、被検試料を分注するサンプル分注動作の詳細を説明する。図4は、被検試料を分注するサンプル分注工程を示した図である。
【0045】
このサンプル分注工程S1は、被検試料吸引用位置T2の試料容器17に収容された被検試料を1回目に分注する第1のサンプル分注工程S10と、被検試料をn回目(n≧2)に分注する第nのサンプル分注工程S30から構成される。そして、システム制御部70からの測定の指示に基づいて、分析制御部30の制御部32は機構部31の上述した各機構を制御して反応ディスク5、サンプル分注アーム10、サンプル分注ポンプ10aなどの各分析ユニットを駆動する。
【0046】
第1のサンプル分注工程S10は、被検試料吸引用位置T2に停止した試料容器17の被検試料を1回目に分注するときに実行し、第nのサンプル分注工程S30は、第1のサンプル分注工程S10と同じ要領で同じ被検試料を複数回分注するときのn回目の分注のときに実行する。そして、各サンプル分注工程は夫々1分析サイクルの間に実行される。 図5は、図4に示した第1のサンプル分注工程S10の詳細を示したフローチャートである。第1のサンプル分注工程S10は、サンプル分注アーム10の動作によるステップS11,S13,S15,S16,S17,S19,S20と、サンプル分注ポンプ10aの動作によるステップ12,S14,S18とにより構成される。また、ステップS12,S14におけるサンプル分注ポンプ10aによるサンプル分注プローブ16内への吸引動作を図7A、図7B、図7Cに示す。
【0047】
まずサンプル分注アーム10は、図3のR2方向に回動してホームポジションであるサンプル分注プローブ洗浄用位置T4から被検試料吸引用位置T2にサンプル分注プローブ16を水平移動する(ステップS11)。
【0048】
サンプル分注プローブ16の水平移動に並行して、サンプル分注ポンプ10aは、図7Aに示したエアの吸引動作を行い、サンプル分注プローブ16内にエアを吸引させる(ステップS12)。
【0049】
サンプル分注ポンプ10a内へのエアの吸引後に、サンプル分注アーム10は、被検試料吸引用位置T2の下方に停止した測定対象の試料容器17内の被検試料に向けてサンプル分注プローブ16を降下する。そして、サンプル分注プローブ16を第1の速度v1でその被検試料に突入させ、検出器18aで検出される検出位置(第1の検出位置)から減速して吸引位置(第1の停止位置)で停止させる(ステップS13)。
【0050】
なお、以下の説明において、サンプル分注プローブ16の降下/上昇の動作には、実際には、加速/減速期間が含まれる。つまり、プローブ16の降下/上昇に際しては、所定速度まで加速し、所定速度に達した時点で定速移動に移行し、減速して停止する。ここでは説明の便宜上、加速/減速についての説明は省略する。
【0051】
サンプル分注プローブ16の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、被検試料を測定するための1回目の被検試料の吸引動作を行う。この時、試料容器17からサンプル分注プローブ16内に図7Bに示すように測定に使用しないダミーの被検試料を吸引させた後、1回目の分注として図7Cに示すように予め設定されたサンプル量に応じた測定用の被検試料を吸引させる(ステップS14)。
【0052】
なお、被検試料は、サンプル分注ポンプ10aとサンプル分注プローブ16間の流路に封入された圧力伝達媒体を介してサンプル分注プローブ16から吸引及び吐出される。サンプル分注プローブ16内に吸引された測定用の1回目の被検試料と圧力伝達媒体の間には、エアの層及び測定に使用されないダミーの被検試料層が設けられる。このエア層及びダミー層により圧力伝達媒体の混入による測定用の被検試料の希釈を防ぐことができる。 1回目の被検試料の吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を被検試料吸引用位置T2まで上昇する(ステップS15)。
【0053】
被検試料吸引用位置T2への上昇後に、サンプル分注アーム10は、図3のR1方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に水平移動する(ステップS16)。
【0054】
サンプル吐出用位置T1への水平移動後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止した反応容器4の吐出位置まで降下する(ステップS17)。
【0055】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、1回目の被検試料をサンプル分注プローブ16から反応容器4に吐出させる(ステップS18)。
【0056】
1回目の被検試料吐出動作の後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1まで上昇する(ステップS19)。
【0057】
サンプル吐出用位置T1への上昇後に、サンプル分注アーム10は、R2方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をホームポジションに水平移動する(ステップS20)。
【0058】
図6は、図4に示した第nのサンプル分注工程S30の詳細を示したフローチャートである。第nのサンプル分注工程S30は、サンプル分注アーム10の動作によるステップS31,S32,S34,S35,S36,S38,S39と、サンプル分注ポンプ10aの動作によるステップ33,S37とにより構成される。また、ステップS33におけるサンプル分注ポンプ10aによるサンプル分注プローブ16内への吸引動作を図7Dに示す。
【0059】
サンプル分注アーム10は、R2方向に回動してホームポジションから被検試料吸引用位置T2にサンプル分注プローブ16を水平移動する(ステップS31)。
【0060】
サンプル分注プローブ16の水平移動後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を降下する。この時、サンプル分注プローブ16を第1の速度v1よりも遅い第2の速度v2で1回目と同じ被検試料に突入させ、検出器18aで検出位置(第nの検出位置)から減速して吸引位置(第nの停止位置)で停止させる(ステップS32)。 サンプル分注プローブ16の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、1回目と同じ被検試料に対するn回目の分注における被検試料の吸引動作を行う。この時、図7Dに示すように、1回目に吸引したエア及びダミーの被検試料を残した状態で、n回目の設定サンプル量に応じた測定用の被検試料をサンプル分注プローブ16内に吸引させる(ステップS33)。
【0061】
n回目の被検試料の吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を被検試料吸引用位置T2まで上昇する(ステップS34)。
【0062】
被検試料吸引用位置T2への上昇後に、サンプル分注アーム10は、R1方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に水平移動する(ステップS35)。
【0063】
サンプル吐出用位置T1への水平移動後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止した反応容器4の吐出位置まで降下する(ステップS36)。
【0064】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、n回目の被検試料をサンプル分注プローブ16から反応容器4に吐出させる(ステップS37)。
【0065】
n回目の被検試料吐出動作の後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1まで上昇する(ステップS38)。
【0066】
サンプル吐出用位置T1への上昇後に、サンプル分注アーム10は、R2方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をホームポジションに水平移動する(ステップS39)。
【0067】
そして、同一被検試料の最後の測定項目のサンプル分注が終了した次の分析サイクルで、サンプル分注プローブ洗浄用位置T4に設けられる洗浄プールで、サンプル分注プローブ16からエア及びダミーの被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16を洗浄するための動作を行う。洗浄後に、サンプル分注プローブ16は、ホームポジションに上昇して次の被検試料の分注に備えて待機する。
【0068】
このように、第nのサンプル分注工程S30では、第1のサンプル分注工程S10におけるステップS12のサンプル分注プローブ16内へのエア吸引動作、及びステップS14のサンプル分注プローブ16内へのダミーの被検試料の吸引動作を含んでいない。1サンプル分注工程は1分析サイクルと設定していることから、第nのサンプル分注工程S30では、第1のサンプル分注工程S10のステップS12,S14の動作時間を、ステップS32の動作時間に割り当てることができる。
【0069】
図8は、図5及び図6に示した第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30における各ステップのタイミングを示したタイミングチャートである。
【0070】
このタイミングチャート80の上側には、第1のサンプル分注工程S10のステップS11乃至S20に対応したサンプル分注アーム10の回動及び上降下とサンプル分注ポンプ10aの吸引及び吐出の動作タイミングが表されている。また、下側には第nのサンプル分注工程S30のステップS31乃至S39に対応したサンプル分注アーム10の回動及び上降下とサンプル分注ポンプ10aの吸引及び吐出の動作タイミングが表されている。
【0071】
そして、各動作のタイミングは、各測定項目の分析条件に最大サンプル量が設定されたときに、1分析サイクルの間にディスクサンプラ6に配置され吸引が可能な最低の高さに被検試料の液面を設定した試料容器17から、最大サンプル量の被検試料を吸引し、更に反応容器4に吸引した最大サンプル量の被検試料を吐出することが可能なように割り当てられている。
【0072】
まず、第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30におけるサンプル分注アーム10の動作のタイミングを説明する。タイミングチャート80の第1のサンプル分注工程S10におけるステップS11,S13,S15,S16,S17,S19,S20、及び第nのサンプル分注工程S30におけるステップS31,S32,S34,S35,S36,S38,S39の「回動」、「降下」、及び「上昇」は、サンプル分注アーム10の回動動作及び上降下動作と時間を示している。
【0073】
また、ステップS13,S32の「降下」及びステップS15,S34の「上昇」には、吸引が可能な最低の高さに被検試料の液面を設定した試料容器17内の吸引位置と被検試料吸引用位置T2の間を上降下するのに要する時間が割り当てられている。
【0074】
第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30のステップS11,S16,S20,S31,S35,S39における「水平移動」の動作開始及び終了タイミングは分析サイクル毎に不変である。また、ステップS13,S15,S17,S19,S32,S34,S36,S38における「降下」及び「上昇」における分析サイクル毎の動作開始のタイミングも不変であり、動作終了タイミングは試料容器17内の被検試料の液面の高さによって変わる。即ち、その被検試料の液面が低い位置にあるほど「降下」及び「上昇」に時間を要し、動作終了のタイミングが遅くなる。
【0075】
次に、第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30におけるサンプル分注ポンプ10aの動作のタイミングを説明する。タイミングチャート80の第1のサンプル分注工程S10におけるステップS12,S14,S18及び第nのサンプル分注工程S30におけるステップS33,S37の「エア吸引」、「被検試料吸引」、及び「被検試料吐出」は、サンプル分注ポンプ10aのエア吸引動作、被検試料吸引動作、及び被検試料吐出動作とその動作時間に対応している。この動作時間には、各測定項目の分析条件に最大サンプル量が設定されたときに、その最大サンプル量を吸引及び吐出するのに要する時間が割り当てられている。
【0076】
第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30の各ステップにおける動作開始タイミング、及びステップS12における「エア吸引」の動作終了のタイミングは不変であり、ステップS14,S18,S33,S37における動作終了のタイミングは、測定項目毎に設定されたサンプル量によって変わる。即ち、設定されたサンプル量が多いほど「被検試料吸引」及び「被検試料吐出」に時間を要し、動作終了のタイミングが遅くなる。
【0077】
次に、第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30共に同じ動作が含まれるステップの動作タイミングを対比させて説明する。
【0078】
ステップS11は、ステップS31と同じタイミングで動作を開始し、同じ動作時間が割り当てられている。ステップS15乃至S20は、夫々ステップS34乃至S39と同じタイミングで動作を開始し、同じ動作時間が割り当てられている。
【0079】
ステップS14は、「被検試料吸引」の内のダミーの被検試料を吸引する分だけステップS33よりも早く動作を開始し、同じ動作終了タイミングが割り当てられている。
【0080】
被検試料吸引用位置T2から被検試料の吸引位置にサンプル分注プローブ16を降下させるステップS32では、ステップS12の「エア吸引」の動作がないのでステップS13よりも早いタイミングで動作を開始し、ステップS14で吸引する被検試料の内のダミーの吸引が不要な分だけステップS13よりも遅い動作終了タイミングが割り当てられている。これにより、ステップS32では、サンプル分注プローブ16を第1の速度v1よりも遅い第2の速度v2で試料容器17内の被検試料に突入させることができる。
【0081】
図9A、図9Bは、ステップS13,S32におけるサンプル分注プローブ16の降下動作の一例を示した図である。図9Aは、図10A(一点鎖線)とともに、ステップS13でプローブ起点(最も高い位置)T2から最下点(第1の停止位置)まで降下するサンプル分注プローブ16の1回目の動作を示している。図9Aに示すように、サンプル分注プローブ16は、突入前区間L11において、速度V11で降下する。サンプル分注プローブ16は、その速度V12(V12=V11)を維持したまま、液面を中心としたその前後所定距離の区間(突入区間)L12を通過して、所定の最下位置で停止する。突入区間L12のいずれかの位置で、サンプル分注プローブ16は試料容器17内の被検試料に突入する。突入前区間L11から突入区間L12にわたって一定速度で降下するのは、液面の高さが不明であることをその理由とする。
【0082】
図9Bは、図10A(二点鎖線)とともに、ステップS32でプローブ起点T2から最下点まで降下するサンプル分注プローブ16の2回目以降の動作を示している。なお、2回目以降では、制御部32は、1回目の降下動作の中でプローブ16の先端に取り付けられたセンサの出力変化に基づいて被検試料の液面の高さを認識している。従って2回目以降のプローブ16の降下動作では、突入前区間L21と、突入区間L22とは区別されることができる。
【0083】
図9Bに示すように、サンプル分注プローブ16は、突入前区間L21において、速度V21で降下する。速度V21は、後述の突入区間L22の降下速度V22より速く設定される。また、速度V21は、1回目の降下動作における突入前区間L11の降下速度V11よりも速く設定される。
【0084】
突入前区間L21を高速で通過して突入区間L22において、サンプル分注プローブ16の降下速度V22は、突入前区間L21の速度V21よりも遅くされる。この降下速度V22は、1回目の突入区間L12の速度V12よりも遅くされる。その遅い降下速度V22を維持したまま、突入区間L22のほぼ中央位置で、サンプル分注プローブ16は試料容器17内の被検試料に突入する。
【0085】
サンプル分注プローブ16が被検試料にできるだけ遅い速度で突入することにより、その被検試料の分注精度の悪化を抑制でき、またコンタミネーションを軽減できる。
【0086】
ステップS32のn回目の動作で、サンプル分注プローブ16の降下に使うことができる時間Tnは、図8のn回目のサンプル分注工程を1回目のサンプル分注工程と比較して理解され得るように、1回目の降下に要する時間T1よりも長時間を確保することができる。その理由は、1回目の動作で必要であったエア−吸引及びダミー吸引がn回目の動作では不要になることにある。
【0087】
上記の通り、制御部32は、被検試料の1回目の吸引のための被検試料の液面へのサンプル分注プローブ16の突入速度よりも、被検試料のn回目(n≧2)の吸引のための被検試料の液面へのサンプル分注プローブ16の突入速度を遅くする。制御部32は、n回目の吸引において、被検試料の液面を中心とした前後所定距離の区間L22におけるサンプル分注プローブ16の突入速度V22よりも速い速度V21で、サンプル分注プローブ16を突入の前段階の区間L21を降下させるためにプローブ昇降機構を制御する。制御部32は、1回目の吸引において、プローブ16を一定速度で降下させる。制御部32は、1回目の吸引においてプローブ16を一定の速度V11(=V12)で降下させ、n回目の吸引において被検試料の液面へのプローブ16の突入速度V22よりも速く且つ速度V11よりも速い速度V21で降下させる。
【0088】
図10Bに示すように、制御部32は、1回目の吸引においてプローブ16を区間L11,L12にわたって、一定速度V11で降下させ、n回目の吸引においてプローブ16を区間L21,L22にわたって、速度V11よりも遅い一定速度V21(=V22)で降下させてもよい。
【0089】
なお、上記実施例に限定されるものではなく、n回目の吸引のときに、サンプル分注プローブ16を第2の速度v2よりも遅い第3の速度v3で試料容器17内の被検試料に突入させるようにしてもよい。この場合の実施例を以下に説明する。
【0090】
(n−1)回目の吸引に際し、被検試料吸引用位置T2から第(n−1)の検出位置までサンプル分注プローブ16を降下させるためにサンプル分注アーム10の駆動機構の例えばステッピングモータに供給した駆動パルス数を制御部32の内部記憶回路に記憶しておく。そして、その記憶した駆動パルス数に基づいて被検試料吸引用位置T2から第(n−1)の検出位置よりも上方の第(n−1)aの位置、及び第(n−1)aの位置よりも下方で第(n−1)の検出位置よりも上方の第(n−1)bの位置にサンプル分注プローブ16を降下させるのに要する駆動パルス数を制御部32に算出させる。
【0091】
そして、n回目の吸引のときに、(n−1)回目の吸引のときに算出した駆動パルス数に基づいて、サンプル分注プローブ16を被検試料吸引用位置T2から第1の速度v1よりも速い第4の速度v4で第(n−1)aの位置まで降下する。次いで、第(n−1)aの位置から第(n−1)bの位置まで減速した後、一旦停止し又は連続して第(n−1)bの位置から第4の速度v4よる降下で余った時間を割り当てることにより可能となる第2の速度v2よりも遅い第3の速度v3でサンプル分注プローブ16を降下して試料容器17内の被検試料に突入させ、検出器18aで検出される第nの検出位置から減速して第nの停止位置で停止させるようにする。これにより、第2の速度v2よりも遅い第3の速度v3で被検試料に突入させることができるので、停止位置に停止させたときの衝撃を第2の速度v2のときよりも小さくすることができる。
【0092】
このように、被検試料をn回目に吸引するときに、1回目の第1の速度v1よりも遅い第2の速度v2又は第3の速度v3で試料容器17の被検試料にサンプル分注プローブ16を突入させることにより、吸引位置で停止させたときの衝撃を1回目よりも小さくすることができる。これにより、2回目以降の分注でサンプル分注プローブ16内の1回目の吸引で形成されたエア層が薄くなるのを低減し、この低減により1回目に吸引したダミー被検試料が希釈されるのを低減することが可能となり、同一の被検試料を複数回分注したときの2回目以降の被検試料を精度よく分注することができる。
【0093】
また、実際に動作させた実験結果によれば、サンプル分注プローブ16を介して、前に分注した被検試料が、次の被検試料が収容された試料容器内17内に持ち込まれるを低減することができる。
【0094】
次に、図1乃至図13を参照して、自動分析装置100の動作を説明する。図11は、自動分析装置100の動作の一例を示したフローチャートである。図12は、表示部52に表示される測定項目設定画面の一例を示す。図13は、測定項目設定画面から選択入力された被検試料毎の各測定項目に対応するサンプル分注工程を示す。
【0095】
操作部60からのキャリブレーション操作により、分析データ処理部40の記憶部42には予め各測定項目のキャリブレーションテーブルが保存されている。また、操作部60からの測定項目選択入力により、システム制御部70の内部記憶回路には、被検試料毎に選択入力された測定項目が保存されている。
【0096】
図12は、表示部52に表示される選択入力された測定項目設定画面の一例を示した図である。この測定項目設定画面53は、被検体情報入力画面で入力された被検体のIDを表示する「ID」の欄と、項目名を略称で表示する「項目」の欄と、「ID」の欄に表示された被検体のID毎に「項目」の欄に表示された項目名の測定項目を設定するための測定項目設定エリア53aから構成される。
【0097】
「ID」の欄には、予め入力された例えば「1」乃至「3」の被検体のIDが表示されている。また、「項目」の欄には、例えば「GOT」、「GPT」、「Ca」、「TP」などの項目名が表示されている。
【0098】
測定項目設定エリア53aには、「ID」の欄の各被検体のIDに対応した「項目」の欄の項目名が設定された場合には「○」が表示され、設定されない場合には「・」が表示される。そして、操作部60から例えば「ID」の欄に表示された「1」に対して、「GOT」、「GPT」、「Ca」、及び「TP」が設定されると、測定項目設定エリア53aに1テスト乃至4テスト欄に「○」が表示される。
【0099】
また、「ID」の欄に表示された「2」に対して「GPT」及び「TP」が設定されると、測定項目設定エリア53aに5テスト及び6テスト欄に「○」が表示され、「ID」の欄に表示された「3」に対して「Ca」が設定されると、測定項目設定エリア53aに7テスト欄に「○」が表示される。
【0100】
測定項目設定画面53から設定入力された測定項目設定情報は、システム制御部70の内部記憶回路に保存される。そして、被検試料の測定は測定項目設定画面53から選択入力された測定項目の情報に基づいて行われ、「ID」の最上段の「1」に対応した被検試料から順に、各被検体のIDの左の設定された測定項目「GOT」から順に測定されることになる。
【0101】
まず、操作部60からの測定開始操作により、自動分析装置100は動作を開始する(図11のステップS1)。
【0102】
システム制御部70は、分析制御部30、分析データ処理部40、及び出力部50に、内部記憶回路に保存されている被検試料毎の測定項目の測定を指示する。分析制御部30の制御部32は、分析部19の各分析ユニットを一旦ホームポジションに移動させてから測定動作を開始させる(図11のステップS2)。
【0103】
図13に示すように、測定動作を開始した分析部19は、1分析サイクルにて測定項目設定画面53で選択入力された被検体ID「1」の「GOT」を測定するための被検試料を分注する第1のサンプル分注工程S10を実行する。また、2乃至4分析サイクルにて「GPT」、「Ca」、及び「TP」を測定するための第2乃至第4のサンプル分注工程S30を実行する(図11のステップS3)。
【0104】
第1のサンプル分注工程S10では、サンプル分注アーム10は、R1方向に回動してサンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4から被検体ID「1」の被検試料を収容した試料容器17が停止した被検試料吸引用位置T2に水平移動する。サンプル分注プローブ16の水平移動動作と並行して、サンプル分注ポンプ10aはサンプル分注プローブ16内にエアを吸引させる。
【0105】
サンプル分注ポンプ10aのエア吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、被検試料吸引用位置T2でサンプル分注プローブ16を降下して第1の速度v1でその被検試料に突入させ、更に検出器18aに検出される第1の検出位置から減速して第1の停止位置で停止させる。
【0106】
サンプル分注プローブ16の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注プローブ16内にダミーの被検試料及び「GOT」(図12の1テスト)の被検試料を試料容器17から吸引する動作を行う。
【0107】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、上昇、R2方向への回動、及び降下動作により、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止した反応容器4の吐出位置に移動する。
【0108】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注プローブ16から「GOT」の被検試料を反応容器4に吐出させる。
【0109】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吐出動作後に、サンプル分注アーム10は、上昇及びR1方向への回動により、サンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4に移動する。
【0110】
被検体ID「1」の「GPT」の被検試料を分注するための第2のサンプル分注工程S30は、第1のサンプル分注工程S10から連続して実行される。
【0111】
サンプル分注アーム10は、R1方向に回動してサンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4から被検試料を収容した試料容器17の被検試料吸引用位置T2に水平移動した後、更に降下して第2の速度v2で被検体ID「1」の被検試料に突入させ、更に検出器18aに検出される第2の検出位置から減速して第2の停止位置で停止させる。
【0112】
サンプル分注プローブ16の下移後に、サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注プローブ16内に「GPT」(図12の2テスト)の被検試料を吸引させる。
【0113】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吸引後に、サンプル分注アーム10は、上昇、R2方向への回動、及び降下動作により、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止している反応容器4の吐出位置に移動する。
【0114】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、吸引動作を行い、サンプル分注プローブ16から「GPT」の被検試料を反応容器4に吐出させる。
【0115】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吐出後に、サンプル分注アーム10は、上昇及びR1方向への回動により、サンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4に移動する。
【0116】
次に、図13の3及び4分析サイクルでは、分析部19は、2分析サイクルの動作と同様にして、夫々被検体ID「1」の「Ca」及び「TP」の被検試料を分注するための第3及び第4のサンプル分注工程S30を実行する。
【0117】
次に、図13の5分析サイクルでは、分析部19は、サンプル分注プローブ16内のエア及び被検体ID「1」のダミー被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16に付着した被検試料を洗い落とすためのサンプル分注プローブ洗浄動作を実行する(図11のステップS4)。
【0118】
即ち、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16の先端部がサンプル分注プローブ洗浄用位置に設けられた洗浄プールの洗浄液吐出口に達するまで降下して停止する。
【0119】
サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注プローブ16の内壁洗浄を行う。また、洗浄プールの洗浄液吐出口からの洗浄液によりサンプル分注プローブ16の外壁も洗浄される。
【0120】
サンプル分注プローブ16の洗浄の後に、図13の6分析サイクルでは、分析部19は、被検体ID「2」の「GPT」を測定するための被検試料を分注する第1のサンプル分注工程S10を実行し、図13の7分析サイクルでは、被検体ID「2」の「TP」を測定するための被検試料を分注する第2のサンプル分注工程S30を実行し(図11のステップS5)。
【0121】
そして、図13の8分析サイクルでは、分析部19は、サンプル分注プローブ16内のエア及び被検体ID「2」のダミー被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16に付着した被検体ID「2」の被検試料を洗い落とすためのサンプル分注プローブ洗浄動作をする(図11のステップS6)。
【0122】
次に、図13の9分析サイクルでは、分析部19は、被検体ID「3」の「Ca」を測定するための被検試料を分注する第1のサンプル分注工程S10を実行する(図11のステップS7)。
【0123】
そして、図13の10分析サイクルでは、分析部19は、サンプル分注プローブ16内のエア及び被検体ID「3」のダミー被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16に付着した被検体ID「3」の被検試料を洗い落とすためのサンプル分注プローブ洗浄動作をする(図11のステップS8)。
【0124】
これらの動作を繰り返し実行して、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料を分注しサンプル分注プローブ洗浄動作をした後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料が分注された反応容器4が第1試薬吐出用位置に停止した時に、第1試薬分注プローブ14から各反応容器4の測定項目に該当する第1試薬が吐出される(図11のステップS9)。 第1試薬が吐出された後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料と第1試薬の混合液が入った反応容器4が第1撹拌位置に停止した時に、第1撹拌ユニット11aの第1撹拌子によって各反応容器4内の混合液が撹拌される(図11のステップS10)。
【0125】
第1の撹拌の後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料と第1試薬の混合液が入った反応容器4が第2試薬吐出用位置に停止した時に、第2試薬分注プローブ15から各反応容器4に「GOT」、「GPT」、「Ca」の2試薬系の測定項目に該当する第2試薬が吐出される(図11のステップS11)。
【0126】
第2試薬の吐出の後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液が入った反応容器4が第2撹拌用位置に停止した時に、第2撹拌ユニット11bの第2撹拌子によって反応容器4内の混合液が撹拌される(図11のステップS12)。
【0127】
第2の撹拌の後に、被検試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液や、被検試料及び第1試薬の混合液が入った反応容器4が測光位置を通過した時に、測光ユニット13は、反応容器4に光を照射して、透過した光から設定波長の吸光度を測定する。そして、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料の各測定項目の分析信号を生成して分析データ処理部40に出力する(図11のステップS13)。
【0128】
測定の後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料の混合液が入った反応容器4が洗浄及び乾燥用位置に停止した時に、洗浄ユニット12は、反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄及び乾燥する(図11のステップS14)。 分析データ処理部40の演算部41は、測光ユニット13から出力された分析信号から各被検試料の各測定項目の分析データを生成して記憶部42に保存すると共に、出力部50に出力する(図11のステップS15)。
【0129】
そして、全ての反応容器4の洗浄及び乾燥が終了し、被検体ID「1」乃至「3」の全ての測定項目の分析データが出力された時点で、自動分析装置100は、測定動作を終了する(図11のステップS16)。
【0130】
以上述べた本発明の実施例によれば、同じ被検試料を複数回分注する場合、1回目の分注の動作の内の2回目以降の分注で不要となる動作の時間を、試料容器17の上方から被検試料を吸引するために降下するサンプル分注プローブ16の動作時間に割り当てることにより、2回目以降の分注における吸引のときに1回目よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16を試料容器17内の被検試料に突入させることができる。これにより、同一の被検試料を複数回分注したときの2回目以降における被検試料の分注精度の向上が可能となり、被検試料を精度よく測定することができる。
【0131】
なお、本発明は上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0132】
100…自動分析装置、19…分析部、30…分析制御部、40…分析データ処理部、50…出力部、60…操作部、70…システム制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれている成分を分析する自動分析装置及びその分注方法に係り、特に、ヒトの血液や尿などの体液を分注して体液に含まれる成分を自動的に測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、反応容器に分注した被検試料と分析を行う生化学や免疫などの測定項目に該当する試薬との混合液の反応によって生ずる色調などの変化を光の透過量を測定することにより、被検試料中の様々な被測定物質の濃度や酵素の活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に分析条件の設定により測定可能になった多数の項目の中から、検査に応じて選択された測定項目の測定が行われる。そして、被検試料及び測定項目に該当する試薬は、サンプル及び試薬分注プローブにより反応容器に分注され、反応容器に分注された被検試料及び試薬は撹拌子により混合され、混合された混合液は測光部により測定される。更に、被検試料及び試薬に接触したサンプル及び試薬分注プローブ、混合液に接触した反応容器及び撹拌子は、洗浄された後に繰り返し測定に使用される。
【0004】
最近の自動分析装置では、多数の被検試料及び多項目の高速処理が可能なように、被検試料の測定動作を一定の短い分析サイクル内に入るように、各分析ユニットを互いに連動させしかも高速で動作させている。
【0005】
そして、被検試料の分注では、1分析サイクルの間に、吸引及び吐出動作を行うサンプル分注ポンプとサンプル分注プローブ間のチューブ、及びサンプル分注プローブ内に封入された水などの圧力伝達媒体を介して、サンプル分注プローブから試料容器内の被検試料を吸引し、サンプル分注アームで水平及び上降下させたサンプル分注プローブから吸引した被検試料を反応容器に吐出する。
【0006】
被検試料を複数回分注する場合の1回目の分注における吸引動作では、サンプル分注プローブの試料容器上方への水平移動と共にサンプル分注プローブ内にまずエアを吸引する。次に、試料容器の上方への水平移動の後のエアを吸引する。次に、試料容器内の被検試料に向けてサンプル分注プローブを降下し、サンプル分注プローブが試料容器内の被検試料に突入した時に、被検試料の液面を検出器で検出する。そして、その検出位置から被検試料の吸引が可能な程度の浅い吸引位置で停止させる。
【0007】
サンプル分注プローブが降下した後に、試料容器からサンプル分注プローブ内にダミーの被検試料及び測定用の1回目の分注に応じた被検試料を吸引し、反応容器に測定用の1回目の被検試料だけを吐出する。
【0008】
n回目(n≧2)の分注では、1回目と同様のタイミングで動作し、サンプル分注プローブ内に測定用のn回目の分注に応じた被検試料だけを吸引した後、反応容器に測定用のn回目の被検試料だけを吐出する。その被検試料のすべての分注が終了した後に1回目のときに吸引したエア及びダミーの被検試料を排出し、排出後にサンプル分注プローブの内外の洗浄を行う。
【0009】
この1回目の分注における吸引により、サンプル分注プローブ内に形成されたエア及びダミーの被検試料の層は、サンプル分注プローブ内に吸引された測定用の毎回の被検試料を圧力伝達媒体から隔離し、圧力伝達媒体の拡散などによる混入で測定用の被検試料が希釈されて被検試料の分注精度が低下するのを防ぐために設けられることが知られている(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、分注における吸引のときに、サンプル分注プローブを試料容器内の被検試料に高速で突入させるため、同じ被検試料からの分注回数が増えると吸引位置に停止した時の衝撃の回数が増えて、サンプル分注プローブ内のエア層に圧力伝達媒体が混入して一部のエアが分散し、エア層が薄くなる問題や、エア層が薄くなることにより圧力伝達媒体が混入して1回目に形成されたダミー被検試料が希釈される問題がある。この問題により、同じ被検試料からの分注回数が増えると、その被検試料の分注精度を悪化させる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−162401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、被検試料を精度よく分注することができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被検試料を試料容器から吸引し、反応容器に吐出するための試料プローブと、前記試料容器に対して前記試料プローブを昇降するプローブ昇降機構と、第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作の後に第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行う場合、前記第1の被検試料についての前記試料プローブによる前記複数回の吸引動作のうち最後の吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度よりも、前記第2の被検試料についての前記試料プローブによる吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度を速くするように前記プローブ昇降機構を制御する制御部とを具備することを特徴とする自動分析装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に係るサンプル部と反応部の構成の一部を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施例に係るサンプル分注工程の構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例に係る1回目のサンプル分注工程を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施例に係るn回目のサンプル分注工程を示すフローチャートである。
【図7A】図7Aは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階のエア吸引動作を示す図である。
【図7B】図7Bは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階のダミー吸引動作を示す図である。
【図7C】図7Cは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階の1回目の試料吸引動作を示す図である。
【図7D】図7Dは、本発明の実施例に係る被検試料の吸引段階の2回目の試料吸引動作を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施例に係る1回目のサンプル分注工程とn回目のサンプル分注工程とを示すタイミングチャートである。
【図9A】図9Aは、本発明の実施例に係る被検試料を吸引するための1回目のサンプル分注プローブの降下の動作を示す図である。
【図9B】図9Bは、本発明の実施例に係る被検試料を吸引するためのn回目のサンプル分注プローブの降下の動作を示す図である。
【図10A】図10Aは、図9A、図9Bに対応するサンプル分注プローブの速度シーケンスを示す図である。
【図10B】図10Bは、図9A、図9Bに対応するサンプル分注プローブの他の速度シーケンスを示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施例に係る自動分析装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の実施例に係る測定項目設定画面の一例を示す図である。
【図13】図13は、本発明の実施例に係る測定項目設定画面から選択入力された被検試料毎の各測定項目に対応するサンプル分注工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図13を参照して説明する。 図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、様々な測定項目のキャリブレータや被検試料毎に選択入力された測定項目を測定する分析部19と、分析部19の測定動作の制御を行う分析制御部30と、分析部19から出力された分析信号を処理して分析データを生成する分析データ処理部40と、分析データ処理部40からの分析データを出力する出力部50と、測定項目毎の分析条件の設定や被検試料毎の測定項目の選択入力、各種コマンド信号を入力する操作部60と、上述したこれらのユニットを統括して制御するシステム制御部70とを備えている。
【0015】
分析部19は、測定項目毎のキャリブレータ、被検試料などのサンプルを取り扱う分析ユニットなどを有するサンプル部20と、サンプルの測定項目の成分と化学反応させるための試薬を取り扱う分析ユニットなどを有する試薬部21と、サンプルと試薬の混合液の測定するための分析ユニットなどを有する反応部22とを備えている。そして、キャリブレータや被検試料の測定により生成されたキャリブレータ信号や分析信号などは、反応部22から分析データ処理部40に出力される。
【0016】
分析制御部30は、分析部19の分析ユニットなどを駆動する各機構を有する機構部31と、機構部31の各機構を制御する制御部32とを備えている。
【0017】
分析データ処理部40は、分析部19の反応部22から出力されたキャリブレータ信号や分析信号などから、各測定項目のキャリブレーションテーブルの作成、各被検試料の各測定項目の分析データの算出などを行う演算部41と、演算部41で作成されたキャリブレーションテーブルや算出された分析データなどが保存される記憶部42とを備えている。
【0018】
演算部41は、分析部19の反応部22から出力された各測定項目のキャリブレータ信号から各測定項目のキャリブレーションテーブルを作成して、出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。また、分析部19の反応部22から出力された各被検試料の各測定項目の分析信号に対して、記憶部42から測定項目のキャリブレーションテーブルを読み出した後、このキャリブレーションテーブルを用いて分析データを算出して、出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。
【0019】
記憶部42は、ハードディスクなどを備え、演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどが被検試料毎に保存される。
【0020】
出力部50は、分析データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどを印刷出力する印刷部51及び表示出力する表示部52を備えている。
【0021】
印刷部51は、プリンタなどを備え、分析データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷出力する。
【0022】
表示部52は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、分析データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブルや分析データ、被検体のID及び氏名などを入力する被検体情報入力画面、測定項目毎の分析条件を設定するための分析条件設定画面、被検試料毎に測定項目を選択設定するための測定項目設定画面などの表示を行う。
【0023】
操作部60は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、測定項目毎の分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検試料毎の測定項目の選択入力、各測定項目のキャリブレーションや被検試料測定などの様々な操作が行われる。
【0024】
システム制御部70は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作部60から供給される操作者のコマンド信号、測定項目の分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を記憶した後、これらの情報に基づいて、分析部19を構成する各分析ユニットなどを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、キャリブレーションテーブルの作成、分析データの算出と出力などシステム全体の制御を行う。
【0025】
次に、図2乃至図3を参照して、分析部19及び分析制御部30の構成の詳細を説明する。図2は、分析部19のサンプル部20、試薬部21、及び反応部22の構成を説明するための斜視図である。
【0026】
サンプル部20は、キャリブレータ、被検試料などのサンプルを収容した試料容器17と、サンプルを収容した試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ6と、ディスクサンプラ6の試料容器17からサンプルを吸引して反応部22の吐出位置から吐出し、同一サンプルの吸引及び吐出による分注終了毎に図示しないサンプル分注プローブ洗浄用位置の洗浄プールで洗浄されるサンプル分注プローブ16と、このサンプル分注プローブ16をキャリブレータ吸引用位置又は被検試料吸引用位置、反応部22のサンプル吐出用位置、及びサンプル分注プローブ洗浄用位置の各位置間の水平移動、及び各位置での上降下を可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0027】
サンプル分注アーム10は、プローブ昇降機構を有する。このプローブ昇降機構は、サンプル分注アーム10の昇降速度を調整可能に構成される。プローブ昇降機構によるサンプル分注アーム10の昇降速度は、制御部32の制御下にある。このプローブ昇降機構によるサンプル分注アーム10の昇降速度、特に降下速度の制御の詳細については後述する。
【0028】
また、サンプル部20は、キャリブレータ吸引用位置又は被検試料吸引用位置に水平移動した後に、降下したサンプル分注プローブ16の先端部が試料容器17内のサンプルに突入した時に、そのサンプルの液面を検出する検出器18aを備え、検出されたサンプルの検出信号は、分析制御部30の制御部32に出力される。そして、サンプル分注プローブ16は、検出器18aからの検出信号に基づく制御部32の制御により、その液面からサンプルの吸引が可能な所定の深さの吸引位置で停止する。
【0029】
なお、サンプル分注プローブ16の停止位置が被検試料の液面から深すぎると、サンプル分注プローブ16の外側の上方にまでサンプルが付着し、その後、上方に付着したサンプルが下方に移動する。そして、サンプル吐出時には、設定料のサンプルと共に下方に移動したサンプルも吐出されてしまう問題がある。また、同一サンプルの分注終了後に、サンプル分注プローブ洗浄用位置の洗浄プールで洗浄するときに、サンプル分注プローブ16の外側の上方まで洗浄するのは困難である。このような問題を避けるため、液面からサンプルの吸引が可能な程度の浅い例えば2mm程度の所定の深さの吸引位置で停止するようになっている。
【0030】
試薬部21は、第1試薬部21aと第2試薬部21bとで構成されている。第1試薬部21aは、サンプルに対して選択的に反応する第1試薬が入った試薬ボトル7a、この試薬ボトル7aを収納する試薬ラック1aと、この試薬ラック1aを回動可能に保持する試薬庫2とを備えている。また、第2試薬部21bは、第1試薬と対をなす第2試薬が入った試薬ボトル7bと、この試薬ボトル7bを収納する試薬ラック1bと、この試薬ラック1bを回動可能に保持する試薬庫3とを備えている。
【0031】
また、第1試薬部21aは、第1試薬吸引用位置に停止した試薬ボトル7aから第1試薬を吸引して反応部22の第1試薬吐出用位置から吐出するプローブであって、第1試薬分注終了毎に第1試薬分注プローブ洗浄用位置の洗浄プールで洗浄される第1試薬分注プローブ14を備えている。同様に第2試薬部21bは、第2試薬吸引用位置に停止した試薬ボトル7bから第2試薬を吸引して反応部22の第2試薬吐出用位置から吐出するプローブであって、第2試薬分注終了毎に第2試薬洗浄用位置の洗浄プールで洗浄される第2試薬分注プローブ15を備えている。
【0032】
更に、第1試薬部21aは、第1試薬分注プローブ14を第1試薬吸引用位置、反応部22の第1試薬吐出用位置、及び第1試薬分注プローブ洗浄用位置の各位置間で水平移動、及び各位置で上降下を可能に保持する第1試薬分注アーム8を備えている。同様に第2試薬部21bは、第2試薬分注プローブ15を第2試薬吸引用位置、反応部22の第2試薬吐出用位置、及び第2試薬分注プローブ洗浄用位置の各位置間で水平移動、及び各位置で上降下を可能に保持する第2試薬分注アーム9を備えている。
【0033】
反応部22は、サンプル吐出用位置に停止したサンプル分注プローブ16から吐出されたサンプルと、第1試薬吐出用位置に停止した第1試薬分注プローブ14から吐出された第1試薬と、第2試薬吐出用位置に停止した第2試薬分注プローブ15から吐出された第2試薬とを受入れる円周上に複数配置された反応容器4と、この反応容器4を回転可能に保持する反応ディスク5とを備えている。そして、反応ディスク5は、例えば4.5秒の分析サイクルで反時計回りに回転して停止し、例えば4分析サイクルで1周と1個分の反応容器4を加算した角度だけ回転する。
【0034】
また、反応部22は、第1撹拌用位置に停止した反応容器4内のサンプル及び第1試薬の混合液を撹拌する攪拌ユニットであって、この混合液の撹拌終了毎に第1撹拌洗浄用位置の洗浄プールで洗浄する第1撹拌子を、第1撹拌用位置と第1撹拌子洗浄用位置間を回動、及び各位置での上降下を可能に保持する第1撹拌ユニット11aを備えている。
【0035】
また、反応部22は、第2撹拌用位置に停止した反応容器4内のサンプル、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する攪拌ユニットであって、この混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子洗浄用位置の洗浄プールで洗浄する第2撹拌子を、第2撹拌用位置と第2撹拌洗浄用位置間を回動、及び各位置での上降下を可能に保持する第2撹拌ユニット11bを備えている。
【0036】
更に、反応部22は、第1或いは第2撹拌後の混合液の入った反応容器4が測光位置を通過する時に光を照射して、透過した光から設定波長の吸光度を測定して分析信号を生成する測光ユニット13と、洗浄及び乾燥用位置に停止した反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄する洗浄ノズル及び乾燥する乾燥ノズルを上降下可能に保持する洗浄ユニット12とを備えている。そして、反応容器4は、洗浄ユニット12で洗浄及び乾燥された後、再び測定に使用される。
【0037】
次に、分析制御部30の機構部31の構成を説明する。
この機構部31は、サンプル部20のディスクサンプラ6、第1試薬部21aの試薬庫2、及び第2試薬部21bの試薬庫3を各回動する機構、反応部22の反応ディスク5を回転する機構、サンプル部20のサンプル分注アーム10、第1試薬部21aの第1試薬分注アーム8、第2試薬部21bの第2試薬分注アーム9、反応部22の第1撹拌ユニット11a、及び第2撹拌ユニット11bを各回動及び上降下する機構、反応部22の洗浄ユニット12の上降下を行う機構を備えている。
【0038】
また、機構部31は、水などの圧力伝達媒体を介してサンプル分注プローブ16内へのサンプルの吸引や、サンプル分注プローブ16からのサンプルの吐出を行わせるサンプル分注ポンプ10aを駆動する機構を備えている。また、第1試薬分注プローブ14から第1試薬の吸引及び吐出を行う試薬ポンプを駆動する機構、第2試薬分注プローブ15から第2試薬の吸引及び吐出を行う試薬ポンプを駆動する機構を備えている。また、第1撹拌ユニット11aの第1撹拌子を撹拌駆動する機構、第2撹拌ユニット11bの第2撹拌子を撹拌駆動する機構を備えている。また、洗浄ユニット12の洗浄ノズルから洗浄液の吐出及び吸引を行う洗浄ポンプを駆動する機構を備えている。また、洗浄ユニット12の乾燥ノズルから吸引を行う乾燥ポンプを駆動する機構等を備えている。
【0039】
制御部32は、機構部31の各機構を制御する制御回路を備えている。制御部32からの信号に基づき機構部31は分析サイクル単位で、ディスクサンプラ6、試薬庫2、試薬庫3、反応ディスク5、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌ユニット11a、第2撹拌ユニット11b、洗浄ユニット12、サンプル分注ポンプ10a、試薬ポンプ、第1撹拌子、第2撹拌子、洗浄ポンプ、乾燥ポンプなどを作動する。
【0040】
また、制御部32は、サンプル部20の検出器18aから出力されたサンプルの検出信号に基づいて、機構部31のサンプル分注アーム10を駆動する機構(例えば、ステッピングモータ)を制御し、サンプル分注プローブ16をそのサンプルの吸引位置に停止させる。
【0041】
図3は、分析部19のサンプル部20と反応部22の構成の一部を上から見た図である。サンプル分注アーム10は、中央の回動軸を中心として上死点における高さで矢印R1及びR2方向に回動して、上死点におけるサンプル分注プローブ16を図3に破線で示した移動軌跡に沿って水平移動する。
【0042】
このサンプル分注プローブ16の移動軌跡上には、反応部22上のサンプル吐出用位置T1と、サンプル部20上の被検試料吸引用位置T2及びキャリブレータ吸引用位置T3と、サンプル吐出用位置T1と被検試料吸引用位置T2及びキャリブレータ吸引用位置T3の間に位置するサンプル分注プローブ洗浄用位置T4とがある。そして、サンプル分注プローブ16は、サンプル吐出用位置T1と被検試料吸引用位置T2の間、サンプル吐出用位置T1とサンプル分注プローブ洗浄用位置T4の間、及びサンプル分注プローブ洗浄用位置T4と被検試料吸引用位置T2及びキャリブレータ吸引用位置T3の間を水平移動する。
【0043】
即ち、サンプル分注プローブ16は、被検試料の入った試料容器17などを保持するディスクサンプラ6がR1又はR2方向に回動した後、被検試料吸引用位置T2の下方に停止したところの所定の試料容器17から被検試料を吸引する。そして、反応部22上のサンプル吐出用位置T1に水平移動され、その下方に停止したところの所定の反応容器4に吸引した被検試料を吐出する。その後、その試料容器17のサンプル分注終了毎にサンプル分注プローブ洗浄用位置T4の下方にある洗浄プールで洗浄される。
【0044】
次に、図1乃至図10Bを参照して、被検試料を分注するサンプル分注動作の詳細を説明する。図4は、被検試料を分注するサンプル分注工程を示した図である。
【0045】
このサンプル分注工程S1は、被検試料吸引用位置T2の試料容器17に収容された被検試料を1回目に分注する第1のサンプル分注工程S10と、被検試料をn回目(n≧2)に分注する第nのサンプル分注工程S30から構成される。そして、システム制御部70からの測定の指示に基づいて、分析制御部30の制御部32は機構部31の上述した各機構を制御して反応ディスク5、サンプル分注アーム10、サンプル分注ポンプ10aなどの各分析ユニットを駆動する。
【0046】
第1のサンプル分注工程S10は、被検試料吸引用位置T2に停止した試料容器17の被検試料を1回目に分注するときに実行し、第nのサンプル分注工程S30は、第1のサンプル分注工程S10と同じ要領で同じ被検試料を複数回分注するときのn回目の分注のときに実行する。そして、各サンプル分注工程は夫々1分析サイクルの間に実行される。 図5は、図4に示した第1のサンプル分注工程S10の詳細を示したフローチャートである。第1のサンプル分注工程S10は、サンプル分注アーム10の動作によるステップS11,S13,S15,S16,S17,S19,S20と、サンプル分注ポンプ10aの動作によるステップ12,S14,S18とにより構成される。また、ステップS12,S14におけるサンプル分注ポンプ10aによるサンプル分注プローブ16内への吸引動作を図7A、図7B、図7Cに示す。
【0047】
まずサンプル分注アーム10は、図3のR2方向に回動してホームポジションであるサンプル分注プローブ洗浄用位置T4から被検試料吸引用位置T2にサンプル分注プローブ16を水平移動する(ステップS11)。
【0048】
サンプル分注プローブ16の水平移動に並行して、サンプル分注ポンプ10aは、図7Aに示したエアの吸引動作を行い、サンプル分注プローブ16内にエアを吸引させる(ステップS12)。
【0049】
サンプル分注ポンプ10a内へのエアの吸引後に、サンプル分注アーム10は、被検試料吸引用位置T2の下方に停止した測定対象の試料容器17内の被検試料に向けてサンプル分注プローブ16を降下する。そして、サンプル分注プローブ16を第1の速度v1でその被検試料に突入させ、検出器18aで検出される検出位置(第1の検出位置)から減速して吸引位置(第1の停止位置)で停止させる(ステップS13)。
【0050】
なお、以下の説明において、サンプル分注プローブ16の降下/上昇の動作には、実際には、加速/減速期間が含まれる。つまり、プローブ16の降下/上昇に際しては、所定速度まで加速し、所定速度に達した時点で定速移動に移行し、減速して停止する。ここでは説明の便宜上、加速/減速についての説明は省略する。
【0051】
サンプル分注プローブ16の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、被検試料を測定するための1回目の被検試料の吸引動作を行う。この時、試料容器17からサンプル分注プローブ16内に図7Bに示すように測定に使用しないダミーの被検試料を吸引させた後、1回目の分注として図7Cに示すように予め設定されたサンプル量に応じた測定用の被検試料を吸引させる(ステップS14)。
【0052】
なお、被検試料は、サンプル分注ポンプ10aとサンプル分注プローブ16間の流路に封入された圧力伝達媒体を介してサンプル分注プローブ16から吸引及び吐出される。サンプル分注プローブ16内に吸引された測定用の1回目の被検試料と圧力伝達媒体の間には、エアの層及び測定に使用されないダミーの被検試料層が設けられる。このエア層及びダミー層により圧力伝達媒体の混入による測定用の被検試料の希釈を防ぐことができる。 1回目の被検試料の吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を被検試料吸引用位置T2まで上昇する(ステップS15)。
【0053】
被検試料吸引用位置T2への上昇後に、サンプル分注アーム10は、図3のR1方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に水平移動する(ステップS16)。
【0054】
サンプル吐出用位置T1への水平移動後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止した反応容器4の吐出位置まで降下する(ステップS17)。
【0055】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、1回目の被検試料をサンプル分注プローブ16から反応容器4に吐出させる(ステップS18)。
【0056】
1回目の被検試料吐出動作の後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1まで上昇する(ステップS19)。
【0057】
サンプル吐出用位置T1への上昇後に、サンプル分注アーム10は、R2方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をホームポジションに水平移動する(ステップS20)。
【0058】
図6は、図4に示した第nのサンプル分注工程S30の詳細を示したフローチャートである。第nのサンプル分注工程S30は、サンプル分注アーム10の動作によるステップS31,S32,S34,S35,S36,S38,S39と、サンプル分注ポンプ10aの動作によるステップ33,S37とにより構成される。また、ステップS33におけるサンプル分注ポンプ10aによるサンプル分注プローブ16内への吸引動作を図7Dに示す。
【0059】
サンプル分注アーム10は、R2方向に回動してホームポジションから被検試料吸引用位置T2にサンプル分注プローブ16を水平移動する(ステップS31)。
【0060】
サンプル分注プローブ16の水平移動後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を降下する。この時、サンプル分注プローブ16を第1の速度v1よりも遅い第2の速度v2で1回目と同じ被検試料に突入させ、検出器18aで検出位置(第nの検出位置)から減速して吸引位置(第nの停止位置)で停止させる(ステップS32)。 サンプル分注プローブ16の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、1回目と同じ被検試料に対するn回目の分注における被検試料の吸引動作を行う。この時、図7Dに示すように、1回目に吸引したエア及びダミーの被検試料を残した状態で、n回目の設定サンプル量に応じた測定用の被検試料をサンプル分注プローブ16内に吸引させる(ステップS33)。
【0061】
n回目の被検試料の吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を被検試料吸引用位置T2まで上昇する(ステップS34)。
【0062】
被検試料吸引用位置T2への上昇後に、サンプル分注アーム10は、R1方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に水平移動する(ステップS35)。
【0063】
サンプル吐出用位置T1への水平移動後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止した反応容器4の吐出位置まで降下する(ステップS36)。
【0064】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、n回目の被検試料をサンプル分注プローブ16から反応容器4に吐出させる(ステップS37)。
【0065】
n回目の被検試料吐出動作の後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1まで上昇する(ステップS38)。
【0066】
サンプル吐出用位置T1への上昇後に、サンプル分注アーム10は、R2方向に回動してサンプル分注分注プローブ16をホームポジションに水平移動する(ステップS39)。
【0067】
そして、同一被検試料の最後の測定項目のサンプル分注が終了した次の分析サイクルで、サンプル分注プローブ洗浄用位置T4に設けられる洗浄プールで、サンプル分注プローブ16からエア及びダミーの被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16を洗浄するための動作を行う。洗浄後に、サンプル分注プローブ16は、ホームポジションに上昇して次の被検試料の分注に備えて待機する。
【0068】
このように、第nのサンプル分注工程S30では、第1のサンプル分注工程S10におけるステップS12のサンプル分注プローブ16内へのエア吸引動作、及びステップS14のサンプル分注プローブ16内へのダミーの被検試料の吸引動作を含んでいない。1サンプル分注工程は1分析サイクルと設定していることから、第nのサンプル分注工程S30では、第1のサンプル分注工程S10のステップS12,S14の動作時間を、ステップS32の動作時間に割り当てることができる。
【0069】
図8は、図5及び図6に示した第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30における各ステップのタイミングを示したタイミングチャートである。
【0070】
このタイミングチャート80の上側には、第1のサンプル分注工程S10のステップS11乃至S20に対応したサンプル分注アーム10の回動及び上降下とサンプル分注ポンプ10aの吸引及び吐出の動作タイミングが表されている。また、下側には第nのサンプル分注工程S30のステップS31乃至S39に対応したサンプル分注アーム10の回動及び上降下とサンプル分注ポンプ10aの吸引及び吐出の動作タイミングが表されている。
【0071】
そして、各動作のタイミングは、各測定項目の分析条件に最大サンプル量が設定されたときに、1分析サイクルの間にディスクサンプラ6に配置され吸引が可能な最低の高さに被検試料の液面を設定した試料容器17から、最大サンプル量の被検試料を吸引し、更に反応容器4に吸引した最大サンプル量の被検試料を吐出することが可能なように割り当てられている。
【0072】
まず、第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30におけるサンプル分注アーム10の動作のタイミングを説明する。タイミングチャート80の第1のサンプル分注工程S10におけるステップS11,S13,S15,S16,S17,S19,S20、及び第nのサンプル分注工程S30におけるステップS31,S32,S34,S35,S36,S38,S39の「回動」、「降下」、及び「上昇」は、サンプル分注アーム10の回動動作及び上降下動作と時間を示している。
【0073】
また、ステップS13,S32の「降下」及びステップS15,S34の「上昇」には、吸引が可能な最低の高さに被検試料の液面を設定した試料容器17内の吸引位置と被検試料吸引用位置T2の間を上降下するのに要する時間が割り当てられている。
【0074】
第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30のステップS11,S16,S20,S31,S35,S39における「水平移動」の動作開始及び終了タイミングは分析サイクル毎に不変である。また、ステップS13,S15,S17,S19,S32,S34,S36,S38における「降下」及び「上昇」における分析サイクル毎の動作開始のタイミングも不変であり、動作終了タイミングは試料容器17内の被検試料の液面の高さによって変わる。即ち、その被検試料の液面が低い位置にあるほど「降下」及び「上昇」に時間を要し、動作終了のタイミングが遅くなる。
【0075】
次に、第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30におけるサンプル分注ポンプ10aの動作のタイミングを説明する。タイミングチャート80の第1のサンプル分注工程S10におけるステップS12,S14,S18及び第nのサンプル分注工程S30におけるステップS33,S37の「エア吸引」、「被検試料吸引」、及び「被検試料吐出」は、サンプル分注ポンプ10aのエア吸引動作、被検試料吸引動作、及び被検試料吐出動作とその動作時間に対応している。この動作時間には、各測定項目の分析条件に最大サンプル量が設定されたときに、その最大サンプル量を吸引及び吐出するのに要する時間が割り当てられている。
【0076】
第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30の各ステップにおける動作開始タイミング、及びステップS12における「エア吸引」の動作終了のタイミングは不変であり、ステップS14,S18,S33,S37における動作終了のタイミングは、測定項目毎に設定されたサンプル量によって変わる。即ち、設定されたサンプル量が多いほど「被検試料吸引」及び「被検試料吐出」に時間を要し、動作終了のタイミングが遅くなる。
【0077】
次に、第1及び第nのサンプル分注工程S10,S30共に同じ動作が含まれるステップの動作タイミングを対比させて説明する。
【0078】
ステップS11は、ステップS31と同じタイミングで動作を開始し、同じ動作時間が割り当てられている。ステップS15乃至S20は、夫々ステップS34乃至S39と同じタイミングで動作を開始し、同じ動作時間が割り当てられている。
【0079】
ステップS14は、「被検試料吸引」の内のダミーの被検試料を吸引する分だけステップS33よりも早く動作を開始し、同じ動作終了タイミングが割り当てられている。
【0080】
被検試料吸引用位置T2から被検試料の吸引位置にサンプル分注プローブ16を降下させるステップS32では、ステップS12の「エア吸引」の動作がないのでステップS13よりも早いタイミングで動作を開始し、ステップS14で吸引する被検試料の内のダミーの吸引が不要な分だけステップS13よりも遅い動作終了タイミングが割り当てられている。これにより、ステップS32では、サンプル分注プローブ16を第1の速度v1よりも遅い第2の速度v2で試料容器17内の被検試料に突入させることができる。
【0081】
図9A、図9Bは、ステップS13,S32におけるサンプル分注プローブ16の降下動作の一例を示した図である。図9Aは、図10A(一点鎖線)とともに、ステップS13でプローブ起点(最も高い位置)T2から最下点(第1の停止位置)まで降下するサンプル分注プローブ16の1回目の動作を示している。図9Aに示すように、サンプル分注プローブ16は、突入前区間L11において、速度V11で降下する。サンプル分注プローブ16は、その速度V12(V12=V11)を維持したまま、液面を中心としたその前後所定距離の区間(突入区間)L12を通過して、所定の最下位置で停止する。突入区間L12のいずれかの位置で、サンプル分注プローブ16は試料容器17内の被検試料に突入する。突入前区間L11から突入区間L12にわたって一定速度で降下するのは、液面の高さが不明であることをその理由とする。
【0082】
図9Bは、図10A(二点鎖線)とともに、ステップS32でプローブ起点T2から最下点まで降下するサンプル分注プローブ16の2回目以降の動作を示している。なお、2回目以降では、制御部32は、1回目の降下動作の中でプローブ16の先端に取り付けられたセンサの出力変化に基づいて被検試料の液面の高さを認識している。従って2回目以降のプローブ16の降下動作では、突入前区間L21と、突入区間L22とは区別されることができる。
【0083】
図9Bに示すように、サンプル分注プローブ16は、突入前区間L21において、速度V21で降下する。速度V21は、後述の突入区間L22の降下速度V22より速く設定される。また、速度V21は、1回目の降下動作における突入前区間L11の降下速度V11よりも速く設定される。
【0084】
突入前区間L21を高速で通過して突入区間L22において、サンプル分注プローブ16の降下速度V22は、突入前区間L21の速度V21よりも遅くされる。この降下速度V22は、1回目の突入区間L12の速度V12よりも遅くされる。その遅い降下速度V22を維持したまま、突入区間L22のほぼ中央位置で、サンプル分注プローブ16は試料容器17内の被検試料に突入する。
【0085】
サンプル分注プローブ16が被検試料にできるだけ遅い速度で突入することにより、その被検試料の分注精度の悪化を抑制でき、またコンタミネーションを軽減できる。
【0086】
ステップS32のn回目の動作で、サンプル分注プローブ16の降下に使うことができる時間Tnは、図8のn回目のサンプル分注工程を1回目のサンプル分注工程と比較して理解され得るように、1回目の降下に要する時間T1よりも長時間を確保することができる。その理由は、1回目の動作で必要であったエア−吸引及びダミー吸引がn回目の動作では不要になることにある。
【0087】
上記の通り、制御部32は、被検試料の1回目の吸引のための被検試料の液面へのサンプル分注プローブ16の突入速度よりも、被検試料のn回目(n≧2)の吸引のための被検試料の液面へのサンプル分注プローブ16の突入速度を遅くする。制御部32は、n回目の吸引において、被検試料の液面を中心とした前後所定距離の区間L22におけるサンプル分注プローブ16の突入速度V22よりも速い速度V21で、サンプル分注プローブ16を突入の前段階の区間L21を降下させるためにプローブ昇降機構を制御する。制御部32は、1回目の吸引において、プローブ16を一定速度で降下させる。制御部32は、1回目の吸引においてプローブ16を一定の速度V11(=V12)で降下させ、n回目の吸引において被検試料の液面へのプローブ16の突入速度V22よりも速く且つ速度V11よりも速い速度V21で降下させる。
【0088】
図10Bに示すように、制御部32は、1回目の吸引においてプローブ16を区間L11,L12にわたって、一定速度V11で降下させ、n回目の吸引においてプローブ16を区間L21,L22にわたって、速度V11よりも遅い一定速度V21(=V22)で降下させてもよい。
【0089】
なお、上記実施例に限定されるものではなく、n回目の吸引のときに、サンプル分注プローブ16を第2の速度v2よりも遅い第3の速度v3で試料容器17内の被検試料に突入させるようにしてもよい。この場合の実施例を以下に説明する。
【0090】
(n−1)回目の吸引に際し、被検試料吸引用位置T2から第(n−1)の検出位置までサンプル分注プローブ16を降下させるためにサンプル分注アーム10の駆動機構の例えばステッピングモータに供給した駆動パルス数を制御部32の内部記憶回路に記憶しておく。そして、その記憶した駆動パルス数に基づいて被検試料吸引用位置T2から第(n−1)の検出位置よりも上方の第(n−1)aの位置、及び第(n−1)aの位置よりも下方で第(n−1)の検出位置よりも上方の第(n−1)bの位置にサンプル分注プローブ16を降下させるのに要する駆動パルス数を制御部32に算出させる。
【0091】
そして、n回目の吸引のときに、(n−1)回目の吸引のときに算出した駆動パルス数に基づいて、サンプル分注プローブ16を被検試料吸引用位置T2から第1の速度v1よりも速い第4の速度v4で第(n−1)aの位置まで降下する。次いで、第(n−1)aの位置から第(n−1)bの位置まで減速した後、一旦停止し又は連続して第(n−1)bの位置から第4の速度v4よる降下で余った時間を割り当てることにより可能となる第2の速度v2よりも遅い第3の速度v3でサンプル分注プローブ16を降下して試料容器17内の被検試料に突入させ、検出器18aで検出される第nの検出位置から減速して第nの停止位置で停止させるようにする。これにより、第2の速度v2よりも遅い第3の速度v3で被検試料に突入させることができるので、停止位置に停止させたときの衝撃を第2の速度v2のときよりも小さくすることができる。
【0092】
このように、被検試料をn回目に吸引するときに、1回目の第1の速度v1よりも遅い第2の速度v2又は第3の速度v3で試料容器17の被検試料にサンプル分注プローブ16を突入させることにより、吸引位置で停止させたときの衝撃を1回目よりも小さくすることができる。これにより、2回目以降の分注でサンプル分注プローブ16内の1回目の吸引で形成されたエア層が薄くなるのを低減し、この低減により1回目に吸引したダミー被検試料が希釈されるのを低減することが可能となり、同一の被検試料を複数回分注したときの2回目以降の被検試料を精度よく分注することができる。
【0093】
また、実際に動作させた実験結果によれば、サンプル分注プローブ16を介して、前に分注した被検試料が、次の被検試料が収容された試料容器内17内に持ち込まれるを低減することができる。
【0094】
次に、図1乃至図13を参照して、自動分析装置100の動作を説明する。図11は、自動分析装置100の動作の一例を示したフローチャートである。図12は、表示部52に表示される測定項目設定画面の一例を示す。図13は、測定項目設定画面から選択入力された被検試料毎の各測定項目に対応するサンプル分注工程を示す。
【0095】
操作部60からのキャリブレーション操作により、分析データ処理部40の記憶部42には予め各測定項目のキャリブレーションテーブルが保存されている。また、操作部60からの測定項目選択入力により、システム制御部70の内部記憶回路には、被検試料毎に選択入力された測定項目が保存されている。
【0096】
図12は、表示部52に表示される選択入力された測定項目設定画面の一例を示した図である。この測定項目設定画面53は、被検体情報入力画面で入力された被検体のIDを表示する「ID」の欄と、項目名を略称で表示する「項目」の欄と、「ID」の欄に表示された被検体のID毎に「項目」の欄に表示された項目名の測定項目を設定するための測定項目設定エリア53aから構成される。
【0097】
「ID」の欄には、予め入力された例えば「1」乃至「3」の被検体のIDが表示されている。また、「項目」の欄には、例えば「GOT」、「GPT」、「Ca」、「TP」などの項目名が表示されている。
【0098】
測定項目設定エリア53aには、「ID」の欄の各被検体のIDに対応した「項目」の欄の項目名が設定された場合には「○」が表示され、設定されない場合には「・」が表示される。そして、操作部60から例えば「ID」の欄に表示された「1」に対して、「GOT」、「GPT」、「Ca」、及び「TP」が設定されると、測定項目設定エリア53aに1テスト乃至4テスト欄に「○」が表示される。
【0099】
また、「ID」の欄に表示された「2」に対して「GPT」及び「TP」が設定されると、測定項目設定エリア53aに5テスト及び6テスト欄に「○」が表示され、「ID」の欄に表示された「3」に対して「Ca」が設定されると、測定項目設定エリア53aに7テスト欄に「○」が表示される。
【0100】
測定項目設定画面53から設定入力された測定項目設定情報は、システム制御部70の内部記憶回路に保存される。そして、被検試料の測定は測定項目設定画面53から選択入力された測定項目の情報に基づいて行われ、「ID」の最上段の「1」に対応した被検試料から順に、各被検体のIDの左の設定された測定項目「GOT」から順に測定されることになる。
【0101】
まず、操作部60からの測定開始操作により、自動分析装置100は動作を開始する(図11のステップS1)。
【0102】
システム制御部70は、分析制御部30、分析データ処理部40、及び出力部50に、内部記憶回路に保存されている被検試料毎の測定項目の測定を指示する。分析制御部30の制御部32は、分析部19の各分析ユニットを一旦ホームポジションに移動させてから測定動作を開始させる(図11のステップS2)。
【0103】
図13に示すように、測定動作を開始した分析部19は、1分析サイクルにて測定項目設定画面53で選択入力された被検体ID「1」の「GOT」を測定するための被検試料を分注する第1のサンプル分注工程S10を実行する。また、2乃至4分析サイクルにて「GPT」、「Ca」、及び「TP」を測定するための第2乃至第4のサンプル分注工程S30を実行する(図11のステップS3)。
【0104】
第1のサンプル分注工程S10では、サンプル分注アーム10は、R1方向に回動してサンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4から被検体ID「1」の被検試料を収容した試料容器17が停止した被検試料吸引用位置T2に水平移動する。サンプル分注プローブ16の水平移動動作と並行して、サンプル分注ポンプ10aはサンプル分注プローブ16内にエアを吸引させる。
【0105】
サンプル分注ポンプ10aのエア吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、被検試料吸引用位置T2でサンプル分注プローブ16を降下して第1の速度v1でその被検試料に突入させ、更に検出器18aに検出される第1の検出位置から減速して第1の停止位置で停止させる。
【0106】
サンプル分注プローブ16の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注プローブ16内にダミーの被検試料及び「GOT」(図12の1テスト)の被検試料を試料容器17から吸引する動作を行う。
【0107】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吸引動作後に、サンプル分注アーム10は、上昇、R2方向への回動、及び降下動作により、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止した反応容器4の吐出位置に移動する。
【0108】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注プローブ16から「GOT」の被検試料を反応容器4に吐出させる。
【0109】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吐出動作後に、サンプル分注アーム10は、上昇及びR1方向への回動により、サンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4に移動する。
【0110】
被検体ID「1」の「GPT」の被検試料を分注するための第2のサンプル分注工程S30は、第1のサンプル分注工程S10から連続して実行される。
【0111】
サンプル分注アーム10は、R1方向に回動してサンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4から被検試料を収容した試料容器17の被検試料吸引用位置T2に水平移動した後、更に降下して第2の速度v2で被検体ID「1」の被検試料に突入させ、更に検出器18aに検出される第2の検出位置から減速して第2の停止位置で停止させる。
【0112】
サンプル分注プローブ16の下移後に、サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注プローブ16内に「GPT」(図12の2テスト)の被検試料を吸引させる。
【0113】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吸引後に、サンプル分注アーム10は、上昇、R2方向への回動、及び降下動作により、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出用位置T1に停止している反応容器4の吐出位置に移動する。
【0114】
サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注ポンプ10aは、吸引動作を行い、サンプル分注プローブ16から「GPT」の被検試料を反応容器4に吐出させる。
【0115】
サンプル分注ポンプ10aの被検試料吐出後に、サンプル分注アーム10は、上昇及びR1方向への回動により、サンプル分注プローブ16をサンプル分注プローブ洗浄用位置T4に移動する。
【0116】
次に、図13の3及び4分析サイクルでは、分析部19は、2分析サイクルの動作と同様にして、夫々被検体ID「1」の「Ca」及び「TP」の被検試料を分注するための第3及び第4のサンプル分注工程S30を実行する。
【0117】
次に、図13の5分析サイクルでは、分析部19は、サンプル分注プローブ16内のエア及び被検体ID「1」のダミー被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16に付着した被検試料を洗い落とすためのサンプル分注プローブ洗浄動作を実行する(図11のステップS4)。
【0118】
即ち、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16の先端部がサンプル分注プローブ洗浄用位置に設けられた洗浄プールの洗浄液吐出口に達するまで降下して停止する。
【0119】
サンプル分注ポンプ10aは、サンプル分注アーム10の降下後に、サンプル分注プローブ16の内壁洗浄を行う。また、洗浄プールの洗浄液吐出口からの洗浄液によりサンプル分注プローブ16の外壁も洗浄される。
【0120】
サンプル分注プローブ16の洗浄の後に、図13の6分析サイクルでは、分析部19は、被検体ID「2」の「GPT」を測定するための被検試料を分注する第1のサンプル分注工程S10を実行し、図13の7分析サイクルでは、被検体ID「2」の「TP」を測定するための被検試料を分注する第2のサンプル分注工程S30を実行し(図11のステップS5)。
【0121】
そして、図13の8分析サイクルでは、分析部19は、サンプル分注プローブ16内のエア及び被検体ID「2」のダミー被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16に付着した被検体ID「2」の被検試料を洗い落とすためのサンプル分注プローブ洗浄動作をする(図11のステップS6)。
【0122】
次に、図13の9分析サイクルでは、分析部19は、被検体ID「3」の「Ca」を測定するための被検試料を分注する第1のサンプル分注工程S10を実行する(図11のステップS7)。
【0123】
そして、図13の10分析サイクルでは、分析部19は、サンプル分注プローブ16内のエア及び被検体ID「3」のダミー被検試料を排出した後、サンプル分注プローブ16に付着した被検体ID「3」の被検試料を洗い落とすためのサンプル分注プローブ洗浄動作をする(図11のステップS8)。
【0124】
これらの動作を繰り返し実行して、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料を分注しサンプル分注プローブ洗浄動作をした後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料が分注された反応容器4が第1試薬吐出用位置に停止した時に、第1試薬分注プローブ14から各反応容器4の測定項目に該当する第1試薬が吐出される(図11のステップS9)。 第1試薬が吐出された後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料と第1試薬の混合液が入った反応容器4が第1撹拌位置に停止した時に、第1撹拌ユニット11aの第1撹拌子によって各反応容器4内の混合液が撹拌される(図11のステップS10)。
【0125】
第1の撹拌の後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料と第1試薬の混合液が入った反応容器4が第2試薬吐出用位置に停止した時に、第2試薬分注プローブ15から各反応容器4に「GOT」、「GPT」、「Ca」の2試薬系の測定項目に該当する第2試薬が吐出される(図11のステップS11)。
【0126】
第2試薬の吐出の後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液が入った反応容器4が第2撹拌用位置に停止した時に、第2撹拌ユニット11bの第2撹拌子によって反応容器4内の混合液が撹拌される(図11のステップS12)。
【0127】
第2の撹拌の後に、被検試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液や、被検試料及び第1試薬の混合液が入った反応容器4が測光位置を通過した時に、測光ユニット13は、反応容器4に光を照射して、透過した光から設定波長の吸光度を測定する。そして、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料の各測定項目の分析信号を生成して分析データ処理部40に出力する(図11のステップS13)。
【0128】
測定の後に、被検体ID「1」乃至「3」の被検試料の混合液が入った反応容器4が洗浄及び乾燥用位置に停止した時に、洗浄ユニット12は、反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄及び乾燥する(図11のステップS14)。 分析データ処理部40の演算部41は、測光ユニット13から出力された分析信号から各被検試料の各測定項目の分析データを生成して記憶部42に保存すると共に、出力部50に出力する(図11のステップS15)。
【0129】
そして、全ての反応容器4の洗浄及び乾燥が終了し、被検体ID「1」乃至「3」の全ての測定項目の分析データが出力された時点で、自動分析装置100は、測定動作を終了する(図11のステップS16)。
【0130】
以上述べた本発明の実施例によれば、同じ被検試料を複数回分注する場合、1回目の分注の動作の内の2回目以降の分注で不要となる動作の時間を、試料容器17の上方から被検試料を吸引するために降下するサンプル分注プローブ16の動作時間に割り当てることにより、2回目以降の分注における吸引のときに1回目よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16を試料容器17内の被検試料に突入させることができる。これにより、同一の被検試料を複数回分注したときの2回目以降における被検試料の分注精度の向上が可能となり、被検試料を精度よく測定することができる。
【0131】
なお、本発明は上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0132】
100…自動分析装置、19…分析部、30…分析制御部、40…分析データ処理部、50…出力部、60…操作部、70…システム制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料を試料容器から吸引し、反応容器に吐出するための試料プローブと、
前記試料容器に対して前記試料プローブを昇降するプローブ昇降機構と、
第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作の後に第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行う場合、前記第1の被検試料についての前記試料プローブによる前記複数回の吸引動作のうち最後の吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度よりも、前記第2の被検試料についての前記試料プローブによる吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度を速くするように前記プローブ昇降機構を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記試料分注プローブを洗浄する洗浄部を更に備え、
前記制御部は、前記第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作後、前記洗浄部が前記試料プローブの洗浄動作を行った後に前記第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行うように前記プローブ昇降機構を制御することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項1】
被検試料を試料容器から吸引し、反応容器に吐出するための試料プローブと、
前記試料容器に対して前記試料プローブを昇降するプローブ昇降機構と、
第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作の後に第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行う場合、前記第1の被検試料についての前記試料プローブによる前記複数回の吸引動作のうち最後の吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度よりも、前記第2の被検試料についての前記試料プローブによる吸引動作における前記試料プローブの前記試料液面への突入速度を速くするように前記プローブ昇降機構を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記試料分注プローブを洗浄する洗浄部を更に備え、
前記制御部は、前記第1の被検試料についての試料プローブによる複数回の吸引動作後、前記洗浄部が前記試料プローブの洗浄動作を行った後に前記第2の被検試料について試料プローブによる吸引動作を行うように前記プローブ昇降機構を制御することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−61355(P2013−61355A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−696(P2013−696)
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2012−17234(P2012−17234)の分割
【原出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2012−17234(P2012−17234)の分割
【原出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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