説明

自動分析装置

【課題】装置の大型化および複雑化を伴うことなく、装置分析部の自動校正を行い、また装置の状態を保証できる自動分析装置を提供する。
【解決手段】測光位置に配置されるとともに試料と試薬との混合液を収容する反応容器に光を照射する光源と、前記混合液からの透過光または散乱光を検出する光度計を備えた自動分析装置であって、前記反応容器が配置される反応ディスクに、前記光度計の校正および状態チェックに用いる校正部材を備えており、前記校正部材により、光度計の校正が定期的に自動で実施され、光度計の光量変動や、反応容器の汚れ、恒温槽循環水の異物による汚れなど装置分析部の状態チェックが定期的に自動で実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液や尿などの試料(以下、サンプルとも言う)に含まれる成分量を分析する自動分析装置の校正および状態管理に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる成分量を分析する分析装置として、光源からの光を、試料、または試料と試薬とが混合した反応液に照射し、その結果得られる単一または複数の波長の透過光量を測定し吸光度を算出して、Lambert-Beerの法則にしたがい、吸光度と濃度の関係から成分量を割り出す自動分析装置が広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
これらの装置においては、回転と停止を繰り返す反応ディスクに、反応液を保持する多数の反応容器が円周状に並べられ、反応ディスク回転中に、予め配置された透過光測定部により、約10分間、一定の時間間隔で吸光度の経時変化が測定される。測定終了後、反応容器は洗浄機構により洗浄されて、再び分析に使用される。
【0004】
反応液の反応には、基質と酵素との呈色反応と、抗原と抗体との凝集反応の大きく2種類の反応が用いられる。
【0005】
前者は生化学分析であり、検査項目としてLDH(乳酸脱水素酵素)、ALP(アルカリホスファターゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェナーゼ)などがある。後者は免疫分析であり、検査項目としてCRP(C反応性蛋白)、IgG(免疫グロブリン)、RF(リウマトイド因子)などがある。
【0006】
後者の免疫分析で測定される測定物質は血中濃度が低いため高感度な検出系が要求される。例えば、ラテックス粒子の表面に抗体を感作(結合)させた試薬を用い、試料中に含まれる抗原との抗原抗体反応によりラテックス粒子を凝集させる際に、反応液に光を照射し、ラテックス凝集塊に散乱されずに透過した光量を測定することでサンプル中に含まれる成分量を定量するラテックス凝集法での高感度化が図られてきた。
【0007】
さらに自動分析装置としては、透過光量を測定するのではなく、散乱光量を測定することによる高感度化も試みられている。
【0008】
ところで、高感度化においては、装置依存のわずかな光量データの変動も、ごく微小な光量変化を高感度検出する際には大きな障害となり得る。また、高感度検出する際には測定時の基準を安定させる必要があり、安定した装置校正を実施する必要があった。これらの要求に対して、透明材料が封入された容器の吸光度を基準として光度計のドリフトを補正する技術(特許文献2参照)や、透明部材の内部に粒子を模したレーザー光線による溶融痕を多数配置することで、校正坂内の粒子の材料成分や着色のロットによるばらつきに左右されない校正板を作製する技術(特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4451433号公報
【特許文献2】特開2000−065744号公報
【特許文献3】特開2007−322206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2の提案は、反応ディスクに配置された透明材料が封入された容器には反応容器洗浄用の洗浄ノズルを挿入できないため、通常は複数の洗浄ノズルを同時に上下動作させる機構に対し、洗浄ノズルを独立に動作制御することが必要であり機構が複雑になってしまうという問題があった。また、特許文献3の提案は、校正作業が自動化されておらず、常に装置状態を管理できる技術とはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本願発明は、試料と試薬の混合液を収める反応容器を円周上に載置する反応ディスクと、該反応容器に光を照射する光源と、光源からの照射された光を検出する光度計と、該反応容器の底に接触した際に衝撃を緩和するクッション機構を備えた、該反応容器を洗浄するための複数のノズルと、該反応容器を載置する箇所に載置され、ノズルが挿入される凹部を備える、光度計を校正するための校正部材とを備える自動分析装置である。
【0013】
また、別の本願発明は、当該校正部材により、光度計の校正が自動的に行うことができる自動分析装置である。また、定期的に自動で実施され、光度計の光量変動や、反応容器の汚れ、恒温槽循環水の異物による汚れなど装置分析部の状態チェックが定期的に自動で実施される自動分析装置である。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
本発明によれば、反応ディスクに配置された校正部材により、装置の大型化や複雑化を伴うことなく、光度計の校正および装置分析部の状態チェックが可能となる。また、自動での光度計の校正も可能となる。したがって、データの正確性や安定性を高め、測定対象物質の高感度な検出が可能な自動分析装置を提供できる。
【0016】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態である自動分析装置の全体構成を示すシステムブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態における校正部材および反応容器洗浄機構の概略図である。
【図3】本発明の一実施の形態における原点用および基準光量用一体型の校正部材の概略図である。
【図4】本発明の一実施の形態における原点用と基準光量用が別体型の校正部材の概略図である。
【図5】(a)〜(h)は、本発明の自動分析装置における基準光源による校正の動作フロー図である。
【図6】(a)〜(l)は、本発明の自動分析装置における装置光源による校正の動作フロー図である。
【図7】(a)〜(l)は、本発明の自動分析装置における分析中の原点および基準光量チェックの動作フロー図である。
【図8】(a)〜(m)は、本発明の自動分析装置における基準光量校正部材チェックの動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態である自動分析装置の全体構成を示すシステムブロック図である。図1に示すように、自動分析装置1は、主に、反応ディスク10、サンプルディスク20、試薬ディスク30a、30b、光源40、光度計41およびコンピュータ50から構成されている。光度計41は、多波長吸光光度計であっても、光散乱光度計であってもよい。
【0020】
反応ディスク10は、間欠回転可能に設けられており、ディスク上に透光性材料からなる多数の反応容器11が周方向に沿って装着されている。反応容器11は、恒温槽12により所定温度(例えば37℃)に維持されている。恒温槽12内の流体は、恒温維持装置13により温度調整されている。
【0021】
サンプルディスク20上には、血液、尿等の生体サンプルを収容する多数の検体容器21が、図示の例では二重に、周方向に沿って載置されている。また、サンプルディスク20の近傍には、サンプル分注機構22が配置されている。このサンプル分注機構22は、可動アーム23と、これに取り付けられたピペットノズル24とから主に構成されている。この構成により、サンプル分注機構22は、サンプル分注時にはピペットノズル24が可動アーム23により分注位置に適宜移動して、サンプルディスク20の吸入位置に位置する検体容器21から所定量のサンプルを吸入し、そのサンプルを反応ディスク10上の吐出位置にある反応容器11内に吐出する。
【0022】
試薬ディスク30a、30bは、互いに概ね同径かつ同形状のディスクであり、試薬保冷庫31a、31bがそれぞれ周方向に沿って配置されている。この試薬保冷庫31a、31bには、バーコードのように試薬識別情報を表示したラベルが貼られた複数の試薬ボトル32a、32bが、試薬ディスク30a、30bの周方向に沿ってそれぞれ載置されている。これらの試薬ボトル32a、32bには、自動分析装置1により分析され得る分析項目に対応する試薬液が収容されている。また、各試薬保冷庫31a、31bは、バーコード読み取り装置33a、33bが付属されており、これらの装置が試薬登録時に各試薬ボトル32a、32bの外壁に表示されているバーコードを読み取る。読み取られた試薬情報は、試薬ディスク30a、30b上のポジションとともにメモリ56に登録される。
【0023】
また、試薬ディスク30a、30bの近傍には、サンプル分注機構22と概ね同様の機構をなす試薬分注機構34a、34bがそれぞれ配置されている。試薬分注時には、これらが備えるピペットノズルにより、反応ディスク10上の試薬受け入れ位置に位置付けられる検査項目に応じた試薬ボトル32a、32bから試薬液を吸入し、該当する反応容器11内へ吐出する。
【0024】
反応ディスク10、試薬ディスク30a、30bおよび試薬分注機構34a、34bに囲まれる位置には、攪拌機構35a、35bが配置されている。反応容器11内に収容されたサンプルと試薬との混合液は、この攪拌機構35a、35bにより攪拌されて反応が促進される。
【0025】
ここで、光源40は反応ディスク10の中心部付近に、光度計41は反応ディスク10の外周側に配置されており、攪拌を終えた反応容器11の列は光源40と光度計41とによって挟まれた測光位置を通るように回転移動する。光度計41は恒温槽12の別ポジションに多波長吸光光度計または光散乱光度計を備えてもよく、散乱光と透過光の両方を使って濃度演算を行ってもよい。なお、光源40と光度計41は光検出系を構成する。
【0026】
各反応容器11内におけるサンプルと試薬との反応液は、反応ディスク10の回転動作中に光度計41の前を横切る度に測光される。サンプル毎に測定された散乱光のアナログ信号は、A/D(アナログ/ディジタル)変換器54に入力される。使用済みの反応容器11は、反応ディスク10の近傍に配置された反応容器洗浄機構36により、内部が洗浄されて繰り返しの使用を可能にする。
【0027】
次に、図1の自動分析装置1における制御系及び信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ50は、インターフェース51を介して、サンプル分注制御部52、試薬分注制御部53、A/D変換器54に接続されている。コンピュータ50は、サンプル分注制御部52に対して指令を送り、サンプルの分注動作を制御する。また、コンピュータ50は、試薬分注制御部53に対して指令を送り、試薬の分注動作を制御する。さらに、コンピュータ50は、制御部を備え、反応ディスク10の回転、光源40と光度計41を制御する。
【0028】
A/D変換器54によってディジタル信号に変換された測光値は、コンピュータ50に取り込まれる。
【0029】
インターフェース51には、印字するためのプリンタ55、記憶装置であるメモリ56や外部出力メディア57、操作指令等を入力するためのキーボード58、画面表示するためのCRTディスプレイ(表示装置)59が接続されている。表示装置59としては、CRTディスプレイの他に液晶ディスプレイなどを採用できる。メモリ56は、例えばハードディスクメモリまたは外部メモリにより構成される。メモリ56には、各操作者のパスワード、各画面の表示レベル、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、分析結果等の情報が記憶される。
【0030】
次に、図1の自動分析装置1におけるサンプルの分析動作を説明する。自動分析装置1によって分析可能な項目に関する分析パラメータは、予めキーボード58等の情報入力装置を介して入力されておリ、メモリ56に記憶されている。操作者は、操作機能画面を用いて各サンプルに依頼されている検査項目を選択する。
【0031】
この際に、患者IDなどの情報もキーボード58から入力される。各サンプルに対して指示された検査項目を分析するために、サンプル分注機構22のピペットノズル24は、分析パラメータにしたがって、検体容器21から反応容器11へ所定量のサンプルを分注する。
【0032】
サンプルが分注された反応容器11は、反応ディスク10の回転によって移送され、試薬受け入れ位置に停止する。試薬分注機構34a、34bのピペットノズルは、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応容器11に所定量の試薬液を分注する。サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0033】
その後、攪拌機構35a、35bにより、サンプルと試薬との攪拌が行われ、混合される。この反応容器11が、測光位置を横切る時、光度計41により反応液の透過光または/および散乱光が測光される。測光された透過光または/および散乱光は、A/D変換器54により光量に比例した数値に変換され、インターフェース51を経由して、コンピュータ50に取り込まれる。
【0034】
この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ55やCRTディスプレイ59の画面に出力される。
【0035】
以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析測定に必要な種々のパラメータの設定や試料の登録を、CRTディスプレイ59の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果をCRTディスプレイ59上の操作画面により確認する。
【0036】
図2は、本発明の一実施の形態における光検出系の校正部材および反応容器洗浄機構36の概略図である。原点校正部材66および基準光量校正部材67は反応ディスク10に反応容器11とともに組み込まれている例を示している。すなわち、これらの校正部材は、反応容器11を載置する箇所に載置される。図中の矢印69は、光源40から光が照射される測光部の高さbを表しており、光検出系の最少測光液量の高さより高く設定されている。例えば、セルの幅4.5mm、光路長5mm、最少測光液量120μLとすると液量高さは5.33mmとなるので、b>5.33mmと設定される。
【0037】
原点校正部材66の測光部は、恒温槽12の循環水が存在することになり、原点校正部材66の汚れに関係なく、安定した測光が可能となる。つまり、原点校正部材66に関しては、光源と光度計との間の光路に部材が存在しない。さらに恒温槽循環流路に、循環水内での小気泡の発生を抑えるために脱気装置を追加したり、循環水内の異物を除去するためにフィルターを追加すれば、より安定した測光が可能となる。
【0038】
基準光量校正部材67は、光を散乱させるための微粒子等が均一に分散された透明材料や、光を吸収するように着色された材料からなり、光を照射したときの透過光や散乱光が一定に保たれるようになっている。特に、光散乱光度計を校正する場合において、透明材料では原理的に散乱光が発生しないため校正することはできない。そこで、ラテックス標準粒子の混合液等で校正する技術があるが、固液混合の校正液では粒子の分散が流動的になり散乱光が安定しないことや、気泡や異物の混入による測光への影響や、コストの観点から、基準光量校正部材67のような固形物である校正部材を用いることは非常に有効な手段といえる。
【0039】
反応容器洗浄機構36は、反応液吸引/洗剤吐出ノズル61、洗剤吸引/洗浄水吐出ノズル62、洗浄水吸引ノズル63、ブランク水吐出ノズル64、ブランク水吸引ノズル65を備え、分析に使用した反応容器11を洗浄する。さらに、反応容器11の光学的個体差をキャンセルするためのセルブランク値を算出するため、反応容器11にブランク水を吐出し透過光量または/および散乱光量を光度計41により測光し、次の分析に備える。各ノズル、特に吸引用ノズルは、確実に反応容器内の液体を吸い取るために、反応容器11の底に接触させる。その際、ノズル先端を確実に反応容器11の底に接触させ、かつノズルへの衝撃を緩和する目的で、各ノズルには衝撃を緩和するクッション機構60が備えられている。図中の矢印68は、クッション機構60のストローク量aを表している。ストローク量aは、「反応容器洗浄動作時のクッション量」+「校正部材の測光部高さb」+「祐度」となっている。両校正部材66、67には、ダミーの反応容器状部位が備わっており、反応容器洗浄機構36のノズルが校正部材内に降下してきても、クッション機構60のストローク量にて裕度を持ってストロークできる構造となっている。したがって、特に特別な機構を用いることなく、校正部材を反応ディスク中に設置することが可能となる。両校正部材の共通の特徴として、ノズルが挿入される凹部が備えられている点であり、この特徴により特別な機構を用いることなく、従来の自動分析装置に適用できる。また、サンプル分注制御部52と試薬分注制御部53により、分析中にこれらの校正部材には検体や試薬は分注されないように制御される。
【0040】
図3に、本発明の一実施の形態における原点/基準光量一体型校正部材70の概略図を示す。この校正部材は、光を散乱させるための微粒子が均一に分散された透明材料や、光を吸収するように着色された材料により作製されている。反応ディスク10の定められた位置に精度よく取り付けられるように、位置決め穴が設けられている。
【0041】
図4に本発明の一実施の形態における原点/基準光量別体型校正部材の概略図を示す。この校正部材は、校正部材ホルダ71、第1基準光量校正部材72、第2基準光量校正部材73からなる。図のように、基準光量校正部材を複数箇所に入れられるようにすれば、光の散乱特性や吸収特性が異なる材料による多点校正や、光検出系のチェックができる。また、基準光量校正部材を汚れや劣化により交換する場合に、個別に対応できる。また、吸光光度計用と光散乱光度計用の校正部材を個別にもつ構成も考えられる。つまり、光を吸収するように着色された材料からなる校正部材と光を散乱させるための粒子が均一に分散された透明材料からなる校正部材とを組み合わせることができる。また、透過率を変えるために色の濃さを変えた着色材料同士とを組み合わせることも、散乱させるための粒子密度を変えることで散乱量を変えた透明材料同士とを組み合わせることもできる。複数の基準光量校正部材を組み合わせることでより高度な校正などを行うことができる。基準光量校正部材の種類や数については、必要に応じて任意に設定してよい。
【0042】
以下、図5〜図8において具体的な校正フローを説明する。下記のフローは、コンピュータ50に備えられた制御部により、各フローは自動的に制御させる。例えば、制御部は、原点校正部材と基準光量校正部材とを、光源と光度計とによる測光が行われるよう、反応ディスクを回転移動させ、制御部は、当該測光結果に基づき、光度計を校正する。図5、6は基準光量の校正に関するフローであるが、図7、8は当該校正とは別に、各種の異常を検知するためのフローである。これらは、いずれも原点校正部材66と基準光量校正部材67の両方、若しくは、いずれかを用いて制御させる。
【0043】
図5(a)〜(h)は、本発明の自動分析装置における基準光源による校正の動作フロー図である。本校正は、自動分析装置の製造時など必要に応じて実施する。(a)基準光源による光検出系の校正が開始されると、測光部に原点校正部材66が移動し、(b)予め設定された既定時間(例えば10分間)に複数回(例えば34回)にわたりIR0の測光を実施する。このとき、原点校正部材66を測光部に停止させて測光してもよいし、通常の分析動作と同様に反応ディスク10を回転させて測光してもよい。IR0の測光が完了すると、(c)既定時間におけるIR0の変動が、予め設定された既定範囲内であるか確認され、測定が正しく行われたかチェックされる。IR0の変動が既定範囲内であった場合、IR0の測定結果の平均値または中央値により原点の校正が行われ、結果がメモリ56に記憶される。IR0の変動が既定範囲外であった場合、再びIR0の測光を実施する。
【0044】
次に、測光部に基準光量校正部材67が移動し、(e)予め設定された既定時間に複数回にわたりIRSの測光を実施する。このとき、基準光量校正部材67を測光部に停止させて測光してもよいし、通常の分析動作と同様に反応ディスク10を回転させて測光してもよい。IRSの測光が完了すると、(f)既定時間におけるIRSの変動が、予め設定された既定範囲内であるか確認され、測定が正しく行われたかチェックされる。IRSの変動が既定範囲内であった場合、IRSの測定値の平均値または中央値により光度計の基準光量の校正が行われ、結果がメモリ56に記憶される。ここで記載する基準光量の校正とは、予め光量が既知の基準光源と、前記基準光源の照射光による散乱光強度が既知である基準光量校正部材67により、光度計の光量出力値を校正し、メモリ56に記憶することであり、図6で説明する装置光源による光検出系の校正のチェック基準として用いる。IRSの変動が既定範囲外であった場合、再びIR0から測光を実施する。このようにして、光検出系の最も基本となる装置固有の校正値が取得される。基準光量校正部材67は、既知の光の吸収率や、散乱度合いが既知のため、どの程度が既定範囲内かが予め分かるため、基準光量の校正が可能となる。
【0045】
図6(a)〜(l)は、本発明の自動分析装置における装置光源による光検出系の校正の動作フロー図である。本校正は、定期的(例えば毎日1回)に実施され、次回の装置光源による校正までの基準となる。ここで記載する装置光源による光検出系の校正は、装置光源による装置実装状態での光度計の光量出力値の校正であり、光源の光量低下による測定感度の低下をキャンセルできる。しかしながら、測定感度の低下をキャンセルするためには、装置の光量出力の最小単位に対し、A/D変換器54の最小単位が十分に小さいことが必要である。(a)装置光源による校正が開始されると、(b)予め設定された既定時間に複数回にわたりI0の測光を実施する。このとき、基準光量校正部材67を測光部に停止させて測光してもよいし、通常の分析動作と同様に反応ディスク10を回転させて測光してもよい。I0の測光が完了すると、(c)既定時間におけるI0の変動が、予め設定された既定範囲内であるか確認され、測定が正しく行われたかチェックされる。I0の変動が既定範囲内であった場合、(d)I0がIR0と比較して、両者の乖離が予め設定された既定範囲内であるか確認される。比較には、例えばI0/IR0などが用いられる。I0とIR0の乖離が既定範囲内であった場合、(e)I0の測定値の平均値または中央値により原点の校正が行われ、結果がメモリ56に記憶される。
【0046】
次に、測光部に基準光量校正部材67が移動し、(f)予め設定された既定時間に複数回にわたりISの測光を実施する。このとき、基準光量校正部材67を測光部に停止させて測光してもよいし、通常の分析動作と同様に反応ディスク10を回転させて測光してもよい。ISの測光が完了すると、(g)既定時間におけるISの変動が、予め設定された既定範囲内であるか確認され、測定が正しく行われたかチェックされる。ISの変動が既定範囲内であった場合、(h)ISがIRSと比較して、両者の乖離が予め設定された既定範囲内であるか確認される。比較には、例えばIS/IRSなどが用いられる。ISとIRSの乖離が既定範囲内であった場合、(i)ISの測定値の平均値または中央値により光度計の基準光量の校正が行われ、結果がメモリ56に記憶される。
【0047】
一方、I0とIR0、ISとIRSの乖離が既定範囲外であった場合、(j)光量異常アラームが付加され、(k)光源交換依頼を出力し、光源の交換を促す。このようにして、光検出系の日常分析における基本となる校正値が取得される。
【0048】
図7(a)〜(l)は、本発明の自動分析装置における分析中の原点および基準光量チェックの動作フロー図である。本機能により、分析直前および分析中に光源光量や、光検出系のドリフトや、反応容器11の状態などがチェックされる。(a)分析が開始されると、(b)原点校正部材66が測光部を通過するタイミングでI0iが測光され、(c)I0iがI0と比較して、両者の乖離が予め設定された既定範囲内であるか確認される。比較には、例えばI0i/I0などが用いられる。I0iとI0の乖離が既定範囲内であった場合、(d)基準光量校正部材67が測光部を通過するタイミングでISiが測光され、(e)ISiがISと比較して、両者の乖離が予め設定された既定範囲内であるか確認される。比較には、例えばISi/ISなどが用いられる。ISiとISの乖離が既定範囲内であった場合、(f)セルブランクICBiが測光され、(g)ICBiがI0と比較して、両者の乖離が予め設定された既定範囲内であるか確認される。比較には、例えばICBi/I0などが用いられる。セルブランク値の確認は従来から行われているように、予め取得したセルブランク値との比較や、複数回取得した値同士を比較して判断しても良い。しかしながら、従来のセルブランク値の確認方法では、基準となるセルブランク値取得時に反応容器内壁に気泡等が付着すると正しい値が測定できずアラーム発生につながったが、気泡の影響がないI0を基準に用いることにより正しく安定した結果が得られる。ICBiが既定範囲内であった場合、分析依頼が残っているか確認され、残っている場合は引き続き分析およびチェックが繰り返される。
【0049】
一方、I0i、ISi、ICBiが既定範囲外であった場合に、それぞれ(i)原点異常アラーム、(j)基準光量異常アラーム、(k)セルブランク異常アラームが付与される。
【0050】
図5、図6、図7に記載した光検出系の校正やチェックは、原点校正部材66および基準光量校正部材67を用いて、多点校正や多点チェックを実施するほうが望ましいが、原点校正部材66または基準光量校正部材67のみで実施する方法も考えられる。
【0051】
図8(a)〜(m)は、本発明の自動分析装置における基準光量校正部材チェックの動作フロー図である。本機能は、分析前に定期的(例えば毎日1回)実施され、分析に備える。(a)基準光量校正部材チェックが開始されると測光部に原点校正部材66が移動し、(b)予め設定された既定時間に複数回にわたりI0iの測光を実施する。このとき、原点校正部材66を測光部に停止させて測光してもよいし、通常の分析動作と同様に反応ディスク10を回転させて測光してもよい。I0iの測光が完了すると、(c)既定時間におけるI0iの変動が、予め設定された既定範囲内か確認され、測定が正しく行われたかチェックされる。I0iの変動が既定範囲内であった場合、(d)I0iがIR0と比較して、両者の乖離が予め設定された既定範囲内か確認される。比較には、例えばI0i/IR0が用いられる。I0iが既定範囲内であった場合、測光部に基準光量校正部材67が移動し、(e)予め設定された既定時間に複数回にわたりISiの測光を実施する。このとき、基準光量校正部材67を測光部に停止させて測光してもよいし、通常の分析動作と同様に反応ディスク10を回転させて測光してもよい。ISiの測光が完了すると、(f)既定時間におけるISiの変動が、予め設定された既定範囲内か確認され、測定が正しく行われたかチェックされる。ISiの変動が既定範囲内であった場合、(g)ISiがIRSと比較して、両者の乖離が予め設定された既定範囲内か確認される。比較には、例えばISi/IRSなどが用いられる。ISiが既定範囲内であった場合、(h)ISi/I0iの値が予め設定した既定範囲内であるか確認される。I0iは水を測光した結果であり汚れ等による経時劣化の影響を受けにくいため常に安定した値となる。光学系の汚れや劣化の影響は、ISiとI0iで同等であるため、I0iを基準とすればISiの汚れや光学的劣化を検出できる。ISi/I0iが既定範囲内であれば、基準光量校正部材チェックは終了する。ISi/I0iが既定範囲外の場合は、(k)基準光量校正部材異常アラームを付加し、(l)基準光量校正部材交換依頼を出力し、基準光量校正部材の交換を促す。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を、実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、血液や尿などの試料に含まれる成分量を分析する自動分析装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 自動分析装置
10 反応ディスク
11 反応容器
12 恒温槽
13 恒温維持装置
20 サンプルディスク
21 検体容器
22 サンプル分注機構
23 可動アーム
24 ピペットノズル
30a、30b 試薬ディスク
31a、31b 試薬保冷庫
32a、32b 試薬ボトル
33a、33b バーコード読み取り装置
34a、34b 試薬分注機構
35a、35b 攪拌機構
36 反応容器洗浄機構
40 光源
41 光度計
50 コンピュータ
51 インターフェース
52 サンプル分注制御部
53 試薬分注制御部
54 A/D変換器
55 プリンタ
56 メモリ
57 外部出力メディア
58 キーボード
59 CRTディスプレイ(表示装置)
60 クッション機構
61 反応液吸引/洗剤吐出ノズル
62 洗剤吸引/洗浄水吐出ノズル
63 洗浄水吸引ノズル
64 ブランク水吐出ノズル
65 ブランク水吸引ノズル
66 原点校正部材
67 基準光量校正部材
68 クッション機構ストローク
69 校正部材測光部高さ
70 原点/基準光量一体型校正部材
71 校正部材ホルダ
72 第1基準光量校正部材
73 第2基準光量校正部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬の混合液を収める反応容器を円周上に載置する反応ディスクと、
該反応容器に光を照射する光源と、
前記光源からの照射された光を検出する光度計と、
該反応容器の底に接触した際に衝撃を緩和するクッション機構を備えた、該反応容器を洗浄するための複数のノズルと、
該反応容器を載置する箇所に載置され、前記ノズルが挿入される凹部を備える、前記光度計を校正するための校正部材とを備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記校正部材は、前記凹部と、前記凹部の下方に形成され、前記光源と前記光度計との間の光路に配置された測光部と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記測光部は、光を散乱させるための粒子が均一に分散された透明材料、もしくは、光を吸収するように着色された材料から成ることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記校正部材は、前記光源と前記光度計との間の光路に部材が存在しないことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記校正部材は、前記凹部と、前記凹部の下方に形成され、前記光源と前記光度計との間の光路に配置された測光部と、を備え、
さらに、該反応容器を載置する箇所に載置され、前記ノズルが挿入される凹部を有する前記光度計を校正するための第2の校正部材を備え、
前記第2の校正部材は、前記光源と前記光度計との間の光路に部材が存在しないことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項2記載の自動分析装置において、
さらに、前記反応ディスクと前記光源と前記光度計を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記校正部材と前記第2の校正部材とを、前記光源と前記光度計とによる測光が行われるよう、前記反応ディスクを回転移動させ、
前記制御部は、当該測光結果に基づき、前記光度計を校正することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68443(P2013−68443A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205498(P2011−205498)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】