説明

自動分析装置

【課題】試料ノズルの先端と反応容器の底との間隔を反応容器や試料ノズルの個体差に関係なく制御でき試料ノズルへの試料付着を抑制可能な自動分析装置を実現する。
【解決手段】試料分注機構の試料ノズル11aの先端が座標測定用台に接触してから停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知するまでのアーム42の移動距離を算出しメモリに保存する。反応容器2の底面に向かって試料ノズル11aを移動させ、停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知した時点で移動を停止させ、その位置からメモリに保存された移動距離だけ、アーム42を上方に移動させる。試料ノズル11aの先端を反応容器2の底面に接触させた状態であり、試料ノズル11aのしなり(撓み)を抑制した状態で試料ノズル11aを停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の成分を定量あるいは定性分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿等の生体試料に含まれる特定成分の定量あるいは定性分析を行う自動分析装置は、分析結果の再現性、処理速度の高さ等から現在の診断には欠かせないものとなっている。
【0003】
自動分析装置の測定方法は、試料中の分析対象成分と反応し、反応液の色が変わるような試薬を用いる分析法(比色分析)と、対象成分と直接あるいは間接的に特異的に結合する物質に標識体を付加した試薬を用い、標識体をカウントする分析法(免疫分析)に大別される。
【0004】
いずれの分析法においても試料に所定量の試薬を混合して分析を行うが、近年、分析コストの削減要求に伴い、分析に使用する試薬の量を低減できる分析装置が求められている。現在の自動分析装置での1回の分析に使用する試料は1桁マイクロリットルのオーダーであり、同時に高い分注精度を維持することが求められる。
【0005】
1マイクロリットル程度の低分注量において、高い分注再現性を維持する方法として、特許文献1に記載の方法では、試料を試料容器内に吐出後、ノズルが試料から離脱するまでノズルを低速で動作させることでノズルに対する試料の付着量を低減させ、試料の分注精度を向上させている。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法では、反応容器に試料を吐出する際に、反応容器底とサンプルプローブ先端の隙間を一定に保ち、試料を分注させながらサンプルプローブを上昇させることでサンプルプローブ側面へのサンプル付着を防止し、分注精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−271203号公報
【特許文献2】特開2010−175417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の技術には、以下の欠点がある。
【0009】
特許文献1に記載の技術では、装置の時間当たりの処理能力を落とさないために、ノズルを低速で移動させる距離を吐出した試料からノズルが離脱するまでとしているが、離脱に要するノズルの上昇距離については十分な言及がなされていない。
【0010】
また、ノズルを反応容器底面近傍に下降するとあるが、実際の装置においては、数百個の反応容器が環状に設置されており、これら反応容器の全ての底面の高さを一定に保つことは困難である。このため、ノズルを弾性体で支持し、ノズルが全ての反応容器で弾性接触するように下降させることが一般的であり、この弾性接触の距離も含めて試料ノズルを低速で動作させる必要がある。したがって、試料からノズルを離脱するに要する時間が長くなる。
【0011】
また、ノズルの長さにも個体差があり、ノズルの取り付け取り外し、交換によってノズル先端と反応容器の相対位置が変化してしまうため、基準位置に対して位置補正を行うか、弾性接触の距離を長くするかの対応が必要となり、後者は低速での移動距離がさらに長くなる。
【0012】
例えば、低速でのノズルの移動速度が10mm/sであるとすると、移動距離が1mm増えれば移動時間が0.1s加算されることになり、単位時間当たりの処理能力が落ちる原因となる。
【0013】
また、弾性接触状態(ノズルがしなっている(撓んでいる状態)からノズルが上昇し元の状態(ノズルにしなりが無い状態)に戻ると、ノズルが振動し、ノズル側面に付着したサンプルを反応容器側面へ飛散らせる可能性ある。
【0014】
また、特許文献2に記載の技術では、反応容器に試料を吐出する際に、反応容器底とサンプルプローブ先端の隙間を一定に保ち、試料を分注させながらサンプルプローブを上昇させることでサンプルプローブ側面へのサンプル付着を防止し、分注精度を向上させているが、上記の方法では、サンプルプローブとサンプル用ポンプの動作との同期を取らなければならず、制御が難しい。
【0015】
さらに、サンプルプローブから吐出した試料が反応容器底でどのように濡れ広がるかは、汚れや傷等による反応容器底の試料に対する濡れ性の変化や、反応容器洗浄後の残水の影響で変化するため、ノズル先端の反応容器底からの距離と、吐出した試料液面の反応容器底からの距離を同一に制御することは非常に困難である。
【0016】
また、試料を吐出しながらサンプルプローブが上昇動作を行うため、上昇動作に伴うサンプルプローブの振動が分注精度に影響を及ぼす可能性がある。
【0017】
本発明の目的は、試料ノズル先端と反応容器底との間隔を反応容器や試料ノズルの個体差に関係なく試料分注ごとに制御でき、試料ノズル先端への試料の付着を抑制可能な自動分析装置を及び自動分析装置における試料分注方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
反応容器に試料ノズルを下降させ、前記試料ノズルを前記反応容器と弾性接触させ、停止位置検知器で停止させる。前記試料ノズル停止後、前記試料ノズルを前記反応容器の弾性接触開始点まで上昇させる。試料の吐出の開始については、弾性接触開始点まで上昇した後に開始しても良いし、上昇前の段階で開始させても良い。後者の場合は、吐出時間が同じ場合には、前者に比べ、試料ノズルが障害物検出器で停止してから吐出完了するまでの時間を短くすることができる。
【0019】
前記弾性接触開始点への上昇距離については、座標測定位置において、静電容量検出器と停止位置検知器における停止位置を記憶し、上記停止位置の差分を用いる。
試料吐出後、試料から前記試料ノズル先端が離脱するまで前記試料ノズルを低速で移動させ、試料から離脱後、前記試料ノズルを高速で移動させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、反応容器、試料ノズルの個体差に関係なく、試料を反応容器に吐出する際には、試料ノズルは反応容器底との弾性接触開始点にあるため(試料ノズルと容器底は接触状態にあるため)、試料ノズルは振動せず、また、試料は反応容器底に対して確実に濡れ広がるよう吐出可能である。さらに、吐出後、最小の低速移動距離で試料ノズルを試料からの離脱させることができ、低速での移動時間を節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用される自動分析装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例における試料分注機構11の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施例におけるコントローラ21の内部構成図である。
【図4】本発明の一実施例における弾性接触移動距離48の測定方法の説明図である。
【図5】本発明の一実施例における弾性接触移動距離48の測定方法の説明図である。
【図6】本発明の一実施例における反応容器2のへの試料ノズル11aの下降方法を説明する図である。
【図7】本発明の一実施例における反応容器2のへの試料ノズル11aの下降方法を説明する図である。
【図8】本発明の一実施例における、反応容器2のへの試料の吐出方法を説明する図である。
【図9】本発明の一実施例における、反応容器2のへの試料の吐出方法を説明する図である。
【図10】本発明の一実施例における、反応容器2のへの試料の吐出方法を説明する図である。
【図11】本発明の一実施例における弾性接触移動距離48を求める他の方法の説明図である。
【図12】本発明の一実施例における弾性接触移動距離48を求める他の方法の説明図である。
【図13】停止位置検知器及び静電容量検出器の出力信号とアーム駆動距離との関係を説明する図である。
【図14】アームの移動速度と時間との関係を説明する図である。
【図15】停止位置検知器及び静電容量検出器の出力信号とアーム駆動距離との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0023】
図1は、本発明が適用される自動分析装置の概略構成図である。
【0024】
図1において、反応ディスク1には反応容器2が円周状に並んでいる。試薬ディスク9の中には複数の試薬ボトル10が円周上に配置可能である。反応ディスク1の近くには試料容器15を載せたラック16を移動する試料搬送機構17が設置されている。反応ディスク1と試薬ディスク9との間には試薬分注機構7、8が設置されている。
【0025】
また、反応ディスク1と試料搬送機構17との間には、回転及び上下動可能な試料分注機構11が設置されており、この試料分注機構11は試料分注ノズル(試料ノズルと略す)11aを備えている。試料ノズル11aには試料用ポンプ19が接続されている。試料ノズル11aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試料容器15から反応容器2への試料分注を行う。
【0026】
反応ディスク1の周囲には、洗浄機構3、分光光度計4、攪拌機構5、6、試薬ディスク9、試料搬送機構17が配置され、洗浄機構3には洗浄用ポンプ20が接続されている。試薬分注機構7、8、試料分注機構11、攪拌機構5、6の動作範囲上に洗浄槽13、30、31、32、33がそれぞれ設置されている。試薬分注機構7、8には、試薬用ポンプ18が接続されている。
【0027】
試料容器15には血液等の検査試料が含まれ、ラック16に載せられて試料搬送機構17によって運ばれる。また、各機構はコントローラ21に接続され、コントローラ21によって動作制御される。また、コントローラ21は、反応容器2内の検査試料を分析する分析部としての機能を有する。
【0028】
洗浄槽13の近辺には、座標測定用台47が配置されている。
【0029】
図2は、本発明の一実施例における試料分注機構11の概略構成図である。図2において、試料分注機構11は、試料の吸引、吐出を行う試料ノズル11aと、試料ノズル11aを保持するアーム42と、試料ノズル11aを弾性的に支持する弾性体45と、試料ノズル11aの静電容量変化を検知する静電容量検出器46と、試料ノズル11aに接続される停止位置検知板43と、停止位置検知板43の移動を検知するアーム42に設置された停止位置検知器44と、アーム42を上下、回転動作させる上下、回転機構41とを備える。停止位置検知板43と停止位置検知器44は障害物検知板、障害物検知器として兼用してもよいし、各々独立した別のものでもよい。
【0030】
図3は、本発明の一実施例におけるコントローラ21の内部構成図である。図3において、コントローラ21は、静電容量検出器46からの静電容量検出信号が供給され、静電容量検出信号が一定値以上変化したことにより試料ノズル11aが液面又は物体に接触したことを判断する接触判断部21aと、停止位置検知器44から停止位置検知信号が供給される移動検知部21cと、メモリ21bと、接触判断部21a及び停止位置検知器44からの信号とメモリ21bに格納されたデータか試料ノズル11の動作を制御する動作制御部21dとを備える。なお、コントローラ21は、反応ディスク1等の他の機構の動作を制御する機能を備えている。
【0031】
次に、図4、図5、図13を参照して、本発明の一実施例における、弾性接触移動距離48の測定方法について説明する。
【0032】
図4に示すように、上下、回転機構41によりアーム42と試料ノズル11aは、座標測定用台47に向かって下降し、試料ノズル11aの先端が座標測定用台47に接触すると、図13の(B)に示すように、静電容量検出器46が静電容量の変化を検出し(アーム駆動距離da)、これを接触判断部21aが判断すると、動作制御部21dは、アーム42と試料ノズル11aの下降動作を停止させる。動作停止した位置はメモリ21bに格納される。
【0033】
なお、静電容量変化を測定するため、座標測定用台47は導電性材料、例えば金属製、導電性プラスチック製であることが望ましい。座標測定用台47を導電性材料とした理由は、接触した際に静電容量の変化が検知し易いためである。後述のように、静電容量検出器46で反応容器2の底部との接触を判定することは難しいため、座標測定用台47は、少なくとも反応容器2に用いられる材料よりも高い導電率の材料のものであることが望ましい。さらに、座標測定用台47は、静電容量の変化を検知し易くするために、アースに接続されていることが望ましい。
【0034】
次に、図5の(A)に示すように、上下、回転機構41によりアーム42は、試料ノズル11aの先端部が座標測定用台47に接触した状態からさらに下降し、試料ノズル11aが弾性接触しながら、つまり、弾性体45の弾性力を受けながら下降する。そして、図5の(B)に示すように、停止位置検知板43が停止位置検知器44の検知領域に入ると図13の(A)に示すように、停止位置検知器44の信号が変化し(アーム駆動距離db)、移動検知部21cは、それを判断し、動作制御部21dが、アーム42の下降動作を停止させる。
【0035】
このときの位置はメモリ21bに格納される。停止位置検知器44としては、フォトインタラプタなどのセンサを使用することが考えられる。
【0036】
コントローラ21のメモリ21bに保存された停止位置情報から、動作制御部21dは、試料ノズル11aの弾性接触移動距離48、つまり、試料ノズル11aが座標測定用台47に接触した状態から、停止位置検知板43が停止位置検知器44により検知されるまでの距離を算出する。この距離は、図13に示すとおり、静電容量検出器46により検出された停止位置と停止位置検知器44により検知された停止位置との差である。算出した距離はメモリ21bに格納される。
【0037】
上記の測定方法により、試料ノズル11aの寸法のバラツキと、停止位置検知器44と停止位置検知板43の距離のバラツキを含めた弾性接触移動距離48を求めることができる。これは、個々の自動分析装置毎に行う。また、ノズルの交換等が行われた後にも行われる。
【0038】
図6、図7は本発明の一実施例における、反応容器2のへの試料ノズル11aの下降方法を説明する図である。
【0039】
試料容器15より試料を採取した試料ノズル11aは、上下、回転機構41により反応容器2の上方位置に移動された後、図6に示すように、反応容器2の底部に向かって下降する。反応容器2内の溶液は分光光度計4によって計測を行うため、その材質は透過率の高いガラスやプラスチックが主に用いられ、静電容量検出器46で試料ノズル11aと反応容器2の底部と接触を判定することは難しい。
【0040】
そこで、試料ノズル11aが反応容器2の底部と接触した後、弾性接触し、その後、アーム42が下降して、図7の(A)に示すように、停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知したところでアーム42を停止させる。
【0041】
次に、図7の(B)に示すように、上述した弾性接触移動距離48だけアーム42を上昇することで、試料ノズル11aを試料容器2の底面との弾性接触開始点に移動することができる。
【0042】
上記方法を取ることで、自動分析装置に設置された全反応容器2の寸法のバラツキに関係なく、試料ノズル11aの先端位置を試料容器2の底面との弾性接触開始点に位置するように動作制御することが可能となる。
【0043】
また、試料ノズル11aが弾性接触開始点に移動されることにより、試料ノズル11aのしなりが開放されても、反応容器2の底面と試料ノズル11aは接触状態にあるため、試料ノズル11aは振動しない。
図8、図9、図10は、本発明の一実施例における、反応容器2のへの試料の吐出方法を説明する図である。
【0044】
図8に示すように、試料ノズル11aが、反応容器2の底面の弾性接触開始点に停止した状態で、コントローラ21からの指令により試料用ポンプ19が動作して試料ノズル11aから試料を吐出する。
【0045】
試料ノズル11aから試料を吐出した後、図9に示すように、試料ノズル11aは反応容器2の底面にある吐出試料50から離脱する試料離脱距離49を図14に示すように低速(例えば、10mm/s)で上昇動作する(図14の時間tからt)。なお、図14の時間tからtまでは、図7の(A)に示す状態から図7の(B)に示す状態への移動を示し、図14の時間tからtまでは、図8の状態を示している。
【0046】
ここで、試料離脱距離49は静電容量検出器46等の検出信号によって決定されるものであっても良いし、試料の吐出量から計算できる試料高さに応じた距離であっても良い。吐出量から計算できる試料高さを試料離脱距離49として用いる場合には、汚れや傷等による反応容器2の底面の試料に対する濡れ性の変化や、反応容器2の洗浄後の残水の影響だけではなく、試料ノズル11aと試料の濡れ性も離脱距離に影響するため、吐出量から計算できる試料高さに対して、余分に移動量を加えることが望ましい。
【0047】
試料ノズル11aは試料離脱距離(低速移動距離)49だけ移動後、コントローラ21からの指令に従って、図10、図14に示すように、上下、回転機構41により高速(例えば、12mm/s)で上昇し、反応容器2から完全に離脱する。試料ノズル11aの低速移動距離49だけ移動した後は、例えば、図14の時間tからtまでに10mm/sから12mm/sに加速した後、一定速度12mm/sとして、上昇させることができる。
【0048】
なお、試料ノズル11aから反応容器2への試料の吐出は、図7の(A)に示すように、試料ノズル11aが反応容器2の底面に接触し、かつ、停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知した状態から、接触移動距離だけアーム42を上方に接触移動距離だけ移動させた後に行うこともできるし、図7の(A)に示す状態から試料を吐出させながらアーム42を上方に移動させることもできる。さらに、図7の(A)に示す状態から、先に試料を吐出させた後に、接触移動距離だけアーム42を上方に接触移動距離だけ移動させこともできる。
【0049】
以上のように、図4〜図10、図13、図14に示したように試料ノズル11aが動作することで、反応容器2、試料ノズル11aの個体差に関係なく、試料を反応容器2に吐出する際には、試料ノズル11aは反応容器2の底面との弾性接触開始点にある。このため、試料ノズル11aは、試料吐出開始時点で振動しておらず、試料は反応容器2の底面に対して確実に濡れ広がるよう吐出可能である。
【0050】
さらに、反応容器2への試料の吐出後、最小の低速移動距離49で試料ノズル11aを試料から離脱させることができるため、サイクルタイムの向上が期待できる。
【0051】
図11、図12、図15は本発明の一実施例における弾性接触移動距離48を求める他の方法の説明図である。この方法は、座標測定用台47を使用することなく弾性接触移動距離48を求める方法である。
【0052】
図11に示すように、上下、回転機構41により試料ノズル11aは、反応容器2に向かって下降する。反応容器2の中には試料分注機構11又は試薬分注機構7若しくは8のいずれかの分注機構によって吐出された溶液53が存在する。
【0053】
溶液53の反応容器2の底面からの液高さ51は、いずれかの分注機構11、7、8の吐出量と、反応容器2の断面積から容易に算出可能である。
【0054】
上下、回転機構41によって下降した試料ノズル11aは、図12の(C)に示すように、溶液53の液面に接触し、それを図15の(B)に示す通り、静電容量検出器46で検出してコントローラ21の指令により停止し、液面停止位置(アーム駆動距離d)をコントローラ21のメモリ21bに保存する。
【0055】
次に、上下、回転機構41により試料ノズル11aは、反応容器2内の溶液53内に突っ込みながら下降し、反応容器2の底面に弾性接触し(図12の(A))、さらにアーム42が下降し、図15の(A)に示す通り、停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知することで停止する(図12の(B))。そのときの停止位置(図15の(B)のアーム駆動距離d)をコントローラ21のメモリ21bに保存する。
【0056】
コントローラ21のメモリ21bに保存されている停止位置情報と液高さ51から、試料ノズル11aの弾性接触移動距離48は、図15の(B)の通り、静電容量検出器46による停止位置(d)と停止位置検知器44による停止位置(d)の差の絶対値(突っ込み距離)52から、液高さ51(d)の差をとった値となる。つまり、(アーム駆動距離52)―(液面高さ51)=(弾性接触移動距離48)となる。
【0057】
上記の方法を取ることで、座標測定用台47のような特別な物を用意しなくても弾性接触移動距離48を測定することが可能である。
【0058】
以上のように、本発明の一実施例によれば、試料分注機構11の試料ノズル11aの先端が、座標測定用台47に接触してから、停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知するまでの試料ノズル11aを支持するアーム42の移動距離48を算出し、メモリ21bに保存する。座標測定用台47を使用しない場合は、試料分注機構11の試料ノズル11aの先端が、反応容器2内の液面に接触してから、停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知するまでの試料ノズル11aを支持するアーム42のアーム駆動距離52を算出し、算出したアーム駆動距離52から反応容器2内の液面高さ51を減算して、移動距離48を算出しメモリ21bに保存する。
【0059】
そして、反応容器2の底面に向かって試料ノズル11aを移動させ、停止位置検知器44が停止位置検知板43を検知した時点で移動を停止させ、その位置から、メモリ21bに保存された移動距離48だけ、アーム42を上方に移動させる。これにより、試料ノズル11aの先端を反応容器2の底面に接触させた状態であり、試料ノズル11aのしなり(撓み)を抑制した状態で試料ノズル11aを停止させることができる。
【0060】
したがって、試料ノズル先端と反応容器底との間隔を反応容器や試料ノズルの個体差に関係なく試料分注ごとに制御でき、試料ノズル先端への試料の付着を抑制可能な自動分析装置及び自動分析装置における試料分注方法を実現することができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・反応ディスク、 2・・・反応容器、 3・・・洗浄機構、4・・・分光光度計、 5、6・・・攪拌機構、 7、8・・・試薬分注機構、 9・・・試薬ディスク、 10・・・試薬ボトル、11・・・試料分注機構、 11a・・・試料ノズル、 13・・・洗浄槽、 15・・・試料容器、 16・・・ラック、 17・・・試料搬送機構、 18・・・試薬用ポンプ、 19・・・試料用ポンプ、 20・・・洗浄用ポンプ、 21・・・コントローラ、 21a・・・接触判断部、 21b・・・メモリ、 21c・・・移動検知部、 21d・・・動作制御部、 30〜33・・・洗浄槽、 41・・・上下、回転機構 42・・・アーム、 43・・・停止位置検知板、 44・・・停止位置検知器、 45・・・弾性体、 46・・・静電容量検出器、 47・・・座標測定用台、 48・・・弾性接触移動距離、 49・・・試料離脱距離、 50・・・吐出試料、 51・・・液高さ、 52・・・アーム駆動距離、 53・・・溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を反応容器に分注する試料ノズル及びこの試料ノズルを弾性部材を介して支持する支持アームを有する分注機構と、上記支持アームを上下移動及び回転移動を制御するとともに反応容器内の試料を分析するコントローラとを備えた自動分析装置において、
上記分注機構に設置され、上記試料ノズルの静電容量変化を検出する静電容量検出器と、
上記試料ノズルに形成された検知部材と、
上記支持アームに設置され、上記検知部材を検知する停止位置検知器と、
を備え、上記コントローラは、上記静電容量検出器により、上記試料ノズルの静電容量が一定以上変化したときの上記支持アームの位置と、上記停止位置検知器が上記検知部材を検知したときの上記支持アームとの位置とに基づいて接触移動距離を算出して記憶し、上記試料ノズルを反応容器に向かって下方向に移動させて、上記停止位置検知器が上記検知部材を検知したとき、上記試料ノズルの下方向への移動を停止させ、上記接触移動距離だけ上記支持アームを上方向に移動させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
座標測定用台を備え、上記コントローラは、上記試料ノズルを上記座標測定用台に向かって下降させ、上記静電容量検出器により、上記試料ノズルの静電容量が一定以上変化したときの上記支持アームの位置と、上記停止位置検知器が上記検知部材を検知したときの上記支持アームとの位置との差を算出し、算出した上記差を接触移動距離として記憶することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
上記コントローラは、上記反応容器の底に上記試料ノズルが接触した状態で試料を吐出させた後、上記試料ノズルの先端が上記反応容器の底から上記試料液面を離脱するまでの液面離脱距離における上記試料ノズルの移動速度が、上記試料ノズルの液面離脱後の上記試料ノズルの上昇移動速度よりも低速となるように動作制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、
上記試料ノズルの先端が上記反応容器の底から上記試料液面を離脱するまでの液面離脱距離は、上記静電容量検出器により液面離脱を検知するまでの距離であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項3に記載の自動分析装置において、
上記試料ノズルの先端が上記反応容器の底から上記試料液面を離脱するまでの液面離脱距離は、上記試料ノズルの上記反応容器への試料の吐出量に基づいて算出された距離であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
上記コントローラは、液体が収容されている反応容器に向かって上記試料ノズルを下降させ、上記静電容量検出器により、上記分注ノズルの静電容量が一定以上変化したときの上記支持アームの位置と、上記停止位置検知器が上記検知部材を検知したときの上記支持アームとの位置との差を算出し、上記反応容器に収容された液体の高さを算出し、上記差から上記液体高さを減算した値を接触移動距離として記憶することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、
上記コントローラは、上記静電容量検出器からの検出信号に基づいて上記試料ノズルが液面又は物体に接触したことを判断する接触判断部と、上記停止位置検知器により上記検知部材を検知したことを判断する移動検知部と、上記試料ノズルの先端位置及び上記接触移動距離が格納されるメモリと、上記接触移動距離を算出するとともに、上記分注機構の動作を制御する動作制御部とを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
試料を反応容器に分注する試料ノズル及びこの試料ノズルを弾性部材を介して支持する支持アームを有する分注機構と、上記支持アームを上下移動及び回転移動を制御するとともに反応容器内の試料を分析するコントローラとを備えた自動分析装置における試料分注方法において、
上記試料ノズルの静電容量を検出し、検出した静電容量が一定以上変化したときの上記支持アームの位置と、上記試料ノズルに形成された検知部材が上記支持アームに設置された停止位置検知器により上記検知部材が検知されたときの上記支持アームとの位置とに基づいて接触移動距離を算出して記憶し、上記試料ノズルを反応容器に向かって下方向に移動させて、上記停止位置検知器が上記検知部材を検知したとき、上記試料ノズルの下方向への移動を停止させ、上記接触移動距離だけ上記支持アームを上方向に移動させることを特徴とする試料分注方法。
【請求項9】
請求項8に記載の自動分析装置における試料分注方法において、
上記自動分析装置は座標測定用台を備え、上記試料ノズルを上記座標測定用台に向かって下降させ、上記試料ノズルの静電容量が一定以上変化したときの上記支持アームの位置と、上記停止位置検知器が上記検知部材を検知したときの上記支持アームとの位置との差を算出し、算出した上記差を接触移動距離として記憶することを特徴とする試料分注方法。
【請求項10】
請求項8に記載の自動分析装置における試料分注方法において、
上記反応容器の底に上記試料ノズルが接触した状態で試料を吐出させた後、上記試料ノズルの先端が上記反応容器の底から上記試料液面を離脱するまでの液面離脱距離における上記試料ノズルの移動速度が、上記試料ノズルの液面離脱後の上記試料ノズルの上昇移動速度よりも低速となるように動作制御することを特徴とする試料分注方法。
【請求項11】
請求項10に記載の自動分析装置における試料分注方法において、
上記試料ノズルの先端が上記反応容器の底から上記試料液面を離脱するまでの液面離脱距離は、上記静電容量検出器により液面離脱を検知するまでの距離であることを特徴とする試料分注方法。
【請求項12】
請求項10に記載の自動分析装置において、
上記試料ノズルの先端が上記反応容器の底から上記試料液面を離脱するまでの液面離脱距離は、上記試料ノズルの上記反応容器への試料の吐出量に基づいて算出された距離であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項8に記載の自動分析装置における試料分注方法において、
液体が収容されている反応容器に向かって上記試料ノズルを下降させ、上記分注ノズルの静電容量が一定以上変化したときの上記支持アームの位置と、上記停止位置検知器が上記検知部材を検知したときの上記支持アームとの位置との差を算出し、上記反応容器に収容された液体の高さを算出し、上記差から上記液体高さを減算した値を接触移動距離として記憶することを特徴とする試料分注方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−68540(P2013−68540A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207745(P2011−207745)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】