説明

自動分析装置

【課題】定期点検の結果や部品の使用頻度により自動分析装置の現在の状態をリアルタイムでユーザに画面で通知し、不要な部品交換や異常による自動分析装置のダウンタイムを防止する。
【解決手段】日々の運用から自動的に実施する必要のあるメンテナンス項目を抽出し、任意もしくは自動的にメンテナンスを実施する。日常の運用状況から必要なメンテナンス項目を抽出し、自動もしくは任意に分類されたリストを作成する。このリストを自動分析装置の起動時または終了時にユーザにアナウンスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿の如き生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、測定する検体と同様の方式で反応容器にセルブランク液(蒸留水)を投入し、反応容器自体の吸光度を測定する手段を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置を正常に運用するために、自動分析装置の各機構のメンテナンスを定期的に実施している。メンテナンスは始業点検、終業点検、定期点検などから使用期間による部品交換を実施する場合と装置が異常な状態となった時に各機構の状態をチェックするメンテナンスがある。
【0003】
引用文献1には装置の使用状況をモニタリングするための検出器を備え、該検出器の出力の経時変化を追跡することによって装置の故障の兆候を診断する分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−184141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正常に運用するために自動分析装置にはメンテナンス機能が備わっている。自動分析装置のメンテナンスには、自動分析装置が自動で実施できる項目と、人の手による実施が必要な項目がある。前者には、各機構の洗浄や光度計、センサ等のチェック、リセット動作、システム水交換などがある。後者には、部品交換、清掃等がある。
【0006】
部品交換を必要とするメンテナンスでは、各部品に使用期限を設けて定期的な部品の交換を行っている。また、使用期限内であっても異常が発生した部品は交換を行う必要がある。
【0007】
部品交換の行うタイミングを判定するための指標として、当該部品の使用期間や装置のアラームの発生頻度などが基準となっている。しかし、各部品の使用頻度が部品交換タイミングの判定基準に含まれないため、実際はまだ使用可能な部品を強制的に交換させることや、通常の使用状況よりも使用頻度が高く早期に交換の必要がある部品を見逃して装置の異常を発生させる恐れがあった。
【0008】
特許文献1に開示された発明は、部品交換のための指標として使用状況をモニタリングすることによって故障の兆候を診断しているが、専用の検出器を備える必要があった。
【0009】
本発明は、専用の検出器を備えることなく、定期点検の結果や部品の使用頻度に基づいて自動分析装置の状態をリアルタイムでユーザに画面で通知し、不要な部品交換や異常による自動分析装置のダウンタイムを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
日々の運用から自動的に実施する必要のあるメンテナンス項目を抽出し、任意もしくは自動的にメンテナンスを実施する。日常の運用状況から必要なメンテナンス項目を抽出し、自動もしくは任意に分類されたリストを作成する。このリストを自動分析装置の起動時または終了時にユーザにアナウンスする。
【0011】
また、当該自動分析装置の運用中のアラーム、メンテナンス間隔、部品の駆動回数に基づいてリストの更新を行い、必要なメンテナンスをリストに追加する。
【0012】
また、メンテナンスの必要度を“必須”と“推奨”に分類し、“必須”に関しては随時自動的にメンテナンスを実施する。自動で行えるメンテナンス機能については、リスト化されたメンテナンス項目の実施に必要なl時間を表示し、運用の合間に実施するか、翌日に実施するかをユーザが任意に設定可能とする。
【0013】
また上記のリスト化されたメンテナンス項目の種類やアラームの頻度から自動分析装置の状態を表す尺度を設けてリアルタイムに異常、正常の現状値を変動させグラフ表示する。
【0014】
これにより、自動分析装置の状態をリアルタイムにユーザが認識可能とし常に正常な状態を保つことを可能とする。
【発明の効果】
【0015】
自動分析装置の安定稼働状態をリアルタイムでユーザに通知し、適切なメンテナンス実施をユーザに促す。これにより検査室における自動分析装置のダウンタイムを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の装置のメンテナンス状態を管理するテーブル。
【図2】本発明のメンテナンス状態のグラフを表示、印字する画面。
【図3】本発明の実施したメンテナンスを表示、印字する画面。
【図4】本発明の処理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の対象となるメンテナンス状態を可視化するメンテナンス管理テーブルの構成を図1に示す。
【0018】
装置全体のメンテナンス状態を示すメンテナンス状態100は、メンテナンス項目102毎の安全度104を加味して決定される。本実施例では安全度を足し合わせた値に基づいて決定する場合を説明するが、他の算定方法でメンテナンス状態100を決定しても良い。
【0019】
各メンテナンス項目102における安全度は、自動分析装置の定期メンテナンス結果や、アラーム発生により実施したメンテナンスの結果101と、メンテナンス毎に設定され、当該自動分析装置を安定して稼働させるためにこのメンテナンス項目が寄与する重要度103を係数とし、積算した結果から成る。これらのテーブルを用いて装置全体のメンテナンス状態を定量的な数値で可視化する。
【0020】
メンテナンス状態を表示する画面は図2に示す月毎のメンテナンス状態を示すグラフと図3に示す日毎に実施したメンテナンス項目で可視化する。
【0021】
図2に月毎のメンテナンス状態を示す状態グラフ画面を示す。状態グラフ画面は、年、日、月を表示するタイトル部210と、メンテナンス状態を日単位で表示するグラフ表示部213で構成し表示する。
【0022】
タイトル部210は、縦軸にメンテナンス状態表示欄212、横軸に年月日を配置する。グラフ表示部213は、図1のテーブルで蓄積している装置全体のメンテナンス状態を示すメンテナンス状態100を日単位で表示する。また表示したグラフをボタン214で印字することを可能とする。これにより、ユーザが装置のメンテナンス状態を認識し、早期に必要なメンテナンスを実施することを可能とする。
【0023】
図3に日毎に実施したメンテナンスを表示するメンテナンス実施リスト画面を示す。メンテナンス実施リスト画面は、年、日、月を表示するタイトル部310と、実施したメンテナンスを表示するメンテナンス状態表示欄311で構成し表示する。タイトル部310は、縦軸に年月日、横軸に実施したメンテナンス状態表示欄311で構成する。メンテナンス状態表示欄311は、図1のテーブルで蓄積している各メンテナンス項目102を実施したかを色で表示する。また、当日のメンテナンス状態をメンテナンス状態表示欄312に表示する。
【0024】
図4にメンテナンス状態の可視化処理フローを示す。図4に示す処理は自動分析装置が起動されてから定期的なタイマーで実施する。
【0025】
自動分析装置が起動された後、定期点検の実施を確認し(410)、定期点検結果を図1のメンテナンス管理テーブルに格納して(411)、図1の各メンテナンス項目102毎の安全度104を算出する。
【0026】
図2、図3の画面に表示されるメンテナンス状態を更新422する。
【0027】
次にユーザが任意にメンテナンスを実施したか判定し(420)、メンテナンスを実施した場合には実施結果を図1のメンテナンス管理テーブルに格納する(421)。
【0028】
また、装置でアラームが発生した場合(430)、アラームを取り除くためのメンテナンスを検索しメンテナンス管理テーブルに追加する(431)。
【0029】
上記の判定、更新処理を実施されたか判定し(440)、タイマーを起動してメンテナンス判定、更新処理を待機状態とする(441)。
【0030】
待機状態中は時刻監視を行い(452)、一定周期でメンテナンス判定、更新処理を繰り返す。
【0031】
図2、図3の画面より帳票出力が指示された場合(450)、メンテナンスリストを出力する(451)。
【0032】
これらの判定、登録、更新処理を一定周期で繰り返すことでリアルタイムにユーザへ自動分析装置のメンテナンス状態を通知することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
100 メンテナンス状態
101 メンテナンスの結果
102 メンテナンス項目
103 重要度
104 安全度
210、310 タイトル部
212、311、312 メンテナンス状態表示欄
213 グラフ表示部
214、313 印字ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を収容する反応容器と、
前記反応容器中の試料の成分もしくは状態を測定する測定手段と、
前記試料もしくは試薬に所定の処理を加える複数の機構と、
前記機構に対してメンテナンス項目を実行させる制御手段と、
を備えた自動分析装置において、
前記メンテナンス項目の実施記録またはメンテナンス項目に関るアラームの発生頻度から当該自動分析装置の状態を表す尺度を定量的に決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された尺度を表示する表示手段と、
を備えた自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御手段は、前記機構の運用実績から前記メンテナンス項目のうち実施が必要な項目を抽出し、
前記表示手段は、抽出したメンテナンス項目を自動もしくは任意に分類されたリストを作成して当該自動分析装置の起動時、終了時または運用時にユーザに提示する自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記表示手段は、メンテナンスの必要性のある項目リストを数値またはグラフで表示または印字する画面を表示する
自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−83452(P2013−83452A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221473(P2011−221473)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】