説明

自動分析装置

【課題】測定対象物質の種類に応じてB/F分離における捕捉磁場強度を変化させることができ、測定対象物質の種類に係わらず高精度で安定した測定結果が得られる自動分析装置を提供する。
【解決手段】B/F分離機構10は、磁性粒子を含む液体試料を収容する反応容器11と、前記反応容器11を保持する反応容器保持部12と、前記反応容器保持部12の温度を調節する反応容器保持部温度調節機構13と、前記反応容器内の前記液体試料を撹拌する反応容器撹拌機構と、前記反応容器の外周に配置される磁場発生機構15とを具備し、前記磁場発生機構15は、前記反応容器11に対して対称に配置される複数の磁場発生部材15aと、前記磁場発生部材15aにより前記反応容器11の内部に生じる磁場強度を調整する磁場強度調整機構とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫反応を測定・分析する装置に関し、特に標識抗体法において、分析対象物質に結合している標識物質と結合していない標識物質とを磁気的に分離するB/F分離機構を備える自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫分析の代表的な手法として、標識抗体法が広く利用されている。一例として、抗原抗体反応を利用して分析対象物質(抗原または抗体)に対して磁性粒子と標識化合物(例えば、酵素等)とを結合させた免疫複合体を生成し、分析対象物質に結合した標識化合物を検出して、その量から分析対象物質を測定・分析する方法がある。このとき、反応液内に含まれる未反応の検体や標識化合物などを除去するB/F分離(Bound/Free分離)は、重要なステップの内の1つである。B/F分離が不十分であると、測定におけるシグナルのバックグラウンドが増大し、測定感度ひいては測定精度を低下させる。
【0003】
B/F分離に関連した技術として、例えば、特許文献1には、試料と試薬を反応させる反応容器と、該反応容器に磁性粒子を含んだ溶液を吐出する吐出機構と、前記反応容器を保持し前記溶液中の磁性粒子を該反応容器の内側壁に捕捉するための複数の磁石が内蔵された反応容器保持機構と、前記磁石により磁性粒子を捕捉した後に遊離した抗原または抗体を含んだ溶液を吸引除去する給排水ノズルと、を備えたB/F分離装置であって、前記磁性粒子を捕捉する際に、前記反応容器保持機構を回転させる回転手段を備え、かつ前記複数の磁石が形成する磁場の磁場勾配がほぼ0となる磁力の中心と前記回転手段の回転中心とがずれているB/F分離装置が開示されている。
【0004】
特許文献1によると、B/F分離を行う際に、磁力と遠心力を同時に作用させることにより、捕捉効率を上げることができ、分析時間の短縮につながるとされている。また、遠心力を付与する方法として反応容器単体で回転させているため、従来技術よりも装置の小型化につながり、かつ全周囲に磁石を配列することができるために捕捉効率が上がるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、試薬供給部に設けられ発光試薬液温度を測定する温度センサ(熱電対)と、B/F分離洗浄部に設けられB/F分離洗浄液温度を測定する温度センサ(熱電対)と、これら温度センサが測定した発光試薬液温度およびB/F分離洗浄液温度に基づいて最終検出値である発光値に対し補正を行う制御部とを具備する自動分析装置が開示されている。
【0006】
特許文献2によると、化学発光測定における測光時の検体温度変動による測定データヘの影響、特に化学発光測定時における検体温度変動による発光値データヘの影響を、装置構成を複雑化することなくキャンセルすることができ、精度の高い測定が可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4586054号公報
【特許文献2】特開2001−074749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
免疫分析の測定対象物質は、近年、腫瘍マーカーや感染症マーカーなど多様化してきている。測定精度向上のためには、各測定試薬の性質に合わせてB/F分離条件を最適化することが望ましい。特に、B/F分離ステップにおける捕捉磁場の強度は、B/F分離後の磁性粒子の分散性に影響するため、分析対象物質の種類ごとに最適化することが求められる。
【0009】
そのような要求に対し、特許文献1では、捕捉磁場の強度を大きくすることで磁性粒子捕捉効率を向上させているが、捕捉磁場強度を減少させることができないため、B/F分離条件を細かく調整することは困難である。また、特許文献2では、B/F分離実施時の温度変化による影響を補正することにより測定値の精度向上を図っているが、捕捉磁場強度等のB/F分離条件を測定対象物質ごとに最適化する方法には言及していない。
【0010】
したがって本発明の目的は、測定対象物質の種類に応じてB/F分離における捕捉磁場強度を変化させることができ、測定対象物質の種類に係わらず高精度で安定した測定結果が得られる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、上記目的を達成するため、B/F分離機構を備えた免疫分析用の自動分析装置であって、前記B/F分離機構は、磁性粒子を含む液体試料を収容する反応容器と、前記反応容器を保持する反応容器保持部と、前記反応容器保持部の温度を調節する反応容器保持部温度調節機構と、前記反応容器内の前記液体試料を撹拌する反応容器撹拌機構と、前記反応容器の外周に配置される磁場発生機構とを具備し、
前記磁場発生機構は、前記反応容器に対して対称に配置される複数の磁場発生部材と、前記磁場発生部材により前記反応容器の内部に生じる磁場強度を調整する磁場強度調整機構とを具備することを特徴とする自動分析装置を提供する。
【0012】
本発明は、上記の本発明に係る自動分析装置において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記磁場発生部材は永久磁石であり、前記磁場強度調整機構は、前記磁場発生部材を前記反応容器の径方向に平行移動して前記磁場発生部材と前記反応容器との間の距離を調整する磁場発生部材駆動部を具備する。
(ii)前記磁場発生部材は電磁石であり、前記磁場強度調整機構は、前記電磁石に流す電流値を制御する電流制御部を具備する。
(iii)前記磁場発生部材は永久磁石と電磁石との組み合わせであり、前記磁場強度調整機構は、前記磁場発生部材を前記反応容器の径方向に平行移動して前記磁場発生部材と前記反応容器との間の距離を調整する磁場発生部材駆動部と、前記電磁石に流す電流値を制御する電流制御部とを具備する。
(iv)前記自動分析装置は、前記反応容器内の液体を吸引除去する液体吸引機構と、前記反応容器内に液体を注入する液体注入機構とを更に備える。
(v)前記自動分析装置は恒温室を更に備え、前記恒温室内に少なくとも前記B/F分離機構が設置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分析対象物質の種類に応じて反応容器内の捕捉磁場強度を変化させることができるので、分析対象物質の種類ごとにB/F分離条件を最適化することができ、高精度で安定した測定結果が得られる自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係るB/F分離機構を備えた自動分析装置の1例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の実施例2に係るB/F分離機構を備えた自動分析装置の1例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の実施例3に係るB/F分離機構の1例を示す断面模式図である。
【図4】本発明の実施例4に係るB/F分離機構の1例を示す上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は、ここに取り上げる実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、同義の部材・部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0016】
(自動分析装置)
図1は、本発明の実施例1に係るB/F分離機構を備えた自動分析装置の1例を示す断面模式図である。図1に示したように、実施例1に係る自動分析装置100は、その主要構成として、B/F分離機構10と、液体吸引機構20と、液体注入機構30とを具備する。
【0017】
B/F分離機構10は、磁性粒子を含む液体試料を収容する反応容器11と、反応容器11を保持する反応容器保持部12と、反応容器保持部12の温度を調節する反応容器保持部温度調節機構13(加熱部材13a、温度制御部13b)と、反応容器11内の液体試料を撹拌する反応容器撹拌機構14と、反応容器11の外周に配置される磁場発生機構15とを具備する。加熱部材13aとしては、例えば、ペルチェ素子やヒータなどを用いることができる。磁場発生機構15の詳細は後述する。
【0018】
液体吸引機構20は、反応容器11内に挿入し液体試料から不要な成分を吸引する吸引ノズル21と、吸引/吐出方向を制御する第1バルブ22と、液体を吸引除去するための第1シリンジ23と、廃液を溜める廃液ボトル24とを有する。
【0019】
液体注入機構30は、反応容器11内に挿入し所定の液体を吐出する吐出ノズル31と、吸引/吐出方向を制御する第2バルブ32と、吐出する液体の種類を制御する第3バルブ33と、液体を吐出するための第2シリンジ34と、洗浄液を充填した洗浄液ボトル35と、調整液を充填した調整液ボトル36と、吐出する液体の温度を制御する吐出液温度調節機構37とを有する。吐出液温度調節機構37は、加熱部材と制御部とを内蔵する。
【0020】
また、自動分析装置100は、反応容器11を搬送・設置する反応容器搬送機構40と、吸引ノズル21および吐出ノズル31を洗浄するためのノズル洗浄機構50を具備することが望ましい。
【0021】
本実施形態において、反応容器11の外周に配置される磁場発生機構15は、磁場発生部材15aと、磁場発生部材15aを保持する磁場発生部材保持部15bと、磁場発生部材保持部15b(すなわち磁場発生部材15a)を移動する磁場発生部材駆動部15cとから構成される。磁場発生部材15aにより反応容器11の内部に生じる磁場の強さは、磁場発生部材駆動部15cによって磁場発生部材15aを移動して、反応容器11と磁場発生部材15aとの間の距離を変化させることで、制御される。このとき、磁場の強さが反応容器11内で極端に偏らないように、反応容器11に対して対称に複数(例えば4個)の磁場発生部材15aを配置することが好ましく、磁場発生部材15aを反応容器11の径方向に平行移動することが好ましい。
【0022】
磁場発生部材15aを反応容器11に接近させることで強まり、磁場発生部材15aを反応容器11から遠ざけることで弱くなる。このように、磁場発生部材15aの駆動により反応容器11内の磁場の強さを連続的に変化させることができるので、測定対象物質ごとに最適な強さの磁場を提供することができる。
【0023】
磁場発生部材15aとしては、永久磁石15a’(例えば、ネオジム磁石などの希土類磁石)を好適に用いることができる。磁場発生部材15aとしての永久磁石15a’の大きさや形状は特に限定されないが、例えば、内径6 mm、高さ30 mm、容量300μLの円筒形の反応容器11に対して、一辺5 mmの立方体の永久磁石を好適に用いることができる。
【0024】
磁場発生部材駆動部15cとしては、磁場発生部材保持部15b(すなわち磁場発生部材15a)の位置を連続的に変化させることができるものであれば特に限定されず、例えば、サーボモータを好適に用いることができる。反応容器11に掛かる磁場を実質的に除去するためには、反応容器11と磁場発生部材15aとの距離を反応容器11の直径以上にすることが好ましい。また、磁場発生部材15aと反応容器保持部12との間の距離(磁場発生部材駆動部15cの駆動範囲)は、0〜10 mm程度の範囲で変化させられることが好ましい。
【0025】
反応容器撹拌機構14として特段の限定はないが、例えば、パルスモーターを好適に用いることができる。モーターの回転速度を制御することにより、反応容器11の撹拌条件を変更できる。例えば、0 rpm(撹拌無し)から1500 rpm程度までの範囲で任意の回転速度に設定できることが好ましい。
【0026】
(B/F分離プロセス)
次に、実施例1に係る自動分析装置を用いてB/F分離を実施するときの手順を説明する。
【0027】
はじめに、液体試料準備機構(図示せず)において、分析対象物質(抗原または抗体)に対して抗原抗体反応を利用して磁性粒子と標識化合物とを結合させた免疫複合体を生成し、磁性粒子を含む液体試料(反応液とも言う)を準備する。反応液を反応容器11に入れる。反応容器11内で反応液の準備を行ってもよい。反応液の入った反応容器11を、反応容器輸送機構40によって反応容器保持部12に設置する。
【0028】
(a)第一磁場捕捉ステップ
磁場発生部材駆動部15cを作動させ、磁場発生部材15aを反応容器保持部12に近接させる。反応容器保持部12と磁場発生部材15aとの間の距離は、分析対象物質の種類に合わせて適宜設定される(例えば、1 mm)。これにより、反応容器11内に磁場が発生し、反応液に含まれる磁性粒子と結合した免疫複合体が、反応容器11の内壁に磁場捕捉される。この間、反応容器保持部12の温度は、反応容器保持部温度調節機構13により、例えば28±1℃に調節される。
【0029】
(b)第一溶媒置換ステップ
磁場捕捉を開始してから十分な時間が経過すると、液相中には磁場捕捉されない非磁性成分(未反応の検体や標識化合物など)が残留した状態となる。所定の時間が経過した後、吸引ノズル21を反応容器11内に挿入する。第1バルブ22と第1シリンジ23とを作動して、磁場捕捉された成分以外の成分を反応容器11から吸引し廃液ボトル24に排出する。
【0030】
次に、反応容器11内に吐出ノズル31を挿入する。第3バルブ33を洗浄液側に設定し、第2バルブ32と第2シリンジ34とを作動する。この動作によって、洗浄液ボトル35内の洗浄液が吐出ノズル31から反応容器11に吐出される。吸引ノズル21および吐出ノズル31をノズル洗浄機構50により洗浄する。
【0031】
測定に使用される洗浄液は、反応液中で遊離状態の抗原(または抗体)や、反応容器11の内壁や免疫複合体の磁性粒子表面に非特異的に吸着した余剰の試薬や検体の包含成分などを洗い流すための溶液である。一例としては、界面活性剤やpH調整剤などを用いることができる。
【0032】
また、反応容器11内に吐出される洗浄液は、吐出液温度調節機構37により所定の温度に調節されていることが好ましい。洗浄液の温度制御範囲としては、洗浄液の種類に応じた最適な洗浄効率の得られる温度範囲に設定したり、分析対象物質の温度安定性に応じた温度範囲に設定したりすればよい。通常は、反応容器保持部温度調節機構13の温度制御範囲と同様に設定される(例えば、28±1℃)。
【0033】
(c)第一撹拌ステップ
次に、磁場発生部材駆動部15cを作動させ、磁場発生部材15aを反応容器11から一旦離脱させて反応容器11内に掛かる磁場を除去する(例えば、反応容器保持部12と磁場発生部材15aと間の距離を10 mmにする)。これにより、反応容器11の内壁に磁場捕捉されていた免疫複合体は洗浄液内に拡散する。
【0034】
反応容器11内の磁場を除去した状態で反応容器撹拌機構14を作動させ、反応容器11内の液体を撹拌する(例えば、1200 rpmで10秒間実施する)。本工程により、洗浄液と免疫複合体とが混和され、反応容器11の内壁や免疫複合体の磁性粒子表面に非特異的に吸着した余剰の試薬や検体の包含成分などをより確実に洗浄することができる。言い換えると、液相吸引のみでは除去しきれなかった不純物を除去できるため、分析精度の向上に寄与する。
【0035】
(d)第二磁場捕捉ステップ
次に、磁場発生部材駆動部15cを作動させ、磁場発生部材15aを反応容器保持部12に近接させて反応容器11内に磁場を再び発生させる。これにより、免疫複合体(磁性粒子と結合した分析対象物質)は反応容器11の内壁に磁場捕捉される。このとき、反応容器保持部12と磁場発生部材15aとの間の距離を0 mmとし、第一磁場捕捉工程よりも強い磁場強度で磁性成分を捕捉する。これは、前ステップまでで反応溶液中のマトリクス成分の大部分が除去されているため、磁場捕捉時の磁場強度を強くしても磁性粒子の凝集や非特異吸着が起こりにくいためである。
【0036】
(e)第二溶媒置換ステップ
吸引ノズル21を反応容器11内に挿入する。第1バルブ22と第1シリンジ23を作動して、洗浄液を反応容器11から吸引し廃液ボトル24に排出する。次に、反応容器11内に吐出ノズル31を挿入する。第3バルブ33を調整液側に設定した後、第2バルブ32と第2シリンジ34を作動させて、調整液ボトル36内の調整液を反応容器11に吐出する。なお、反応容器11内に吐出する液体は洗浄液でもよく、測定条件によって選択可能である。吸引ノズル21および吐出ノズル31をノズル洗浄機構50により洗浄する。
【0037】
(f)第二撹拌ステップ
磁場発生部材駆動部15cを作動させ、磁場発生部材15aを反応容器11から最大距離(例えば10 mm)離脱させて反応容器11内に掛かる磁場を除去する。次に、反応容器撹拌機構14を作動させて反応容器11内の液体を撹拌する(例えば、1500 rpmで12秒間実施する)。第一撹拌工程よりも撹拌強度を強く撹拌時間を長くすることで、調整液(あるいは洗浄液)に対して免疫複合体が十分に混和されるようにする。以上の工程を経て、B/F分離が完了する。
【0038】
上記で説明したように、本発明によれば、分析対象物質の種類に応じて反応容器11内の捕捉磁場強度を変化させることができるので、分析対象物質の種類ごとにB/F分離条件を最適化することができ、高精度で安定した測定を行うことができる。
【実施例2】
【0039】
図2は、本発明の実施例2に係るB/F分離機構を備えた自動分析装置の1例を示す断面模式図である。図2に示したように、実施例2に係る自動分析装置200は、図1に示す構成に加えて恒温室60を具備し、少なくともB/F分離機構10が恒温室60内に設置されている。
【0040】
恒温室60内の温度は、温度センサ61を備えた恒温室温度調節機構62によって調節される。恒温室温度調節機構62は、反応容器保持部温度調節機構13と接続され連携していることが好ましい。このようにすることで、B/F分離プロセスにおける、温度変化による洗浄効率の低下や分離効率の低下を防止することができる。なお、図2では、吐出液温度調節機構37が恒温室60の外に設置されているが、吐出液温度調節機構37も恒温室60の内部に設置し、恒温室温度調節機構62および反応容器保持部温度調節機構13と接続して連携させてもよい。
【0041】
実施例2に係る自動分析装置200は、制御すべき温度が同じである分析試料を連続的に測定する場合に好適である。他の作用効果は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0042】
図3は、本発明の実施例3に係るB/F分離機構の1例を示す断面模式図である。図3に示したように、本実施例の磁場発生機構70は、磁場発生部材としての電磁石71と、磁場強度調整機構としての電流制御部72とから構成される。図3では、電流制御部72が温度制御部13bと別体に構成されているが、本実施例は、電流制御部72と温度制御部13bとが一体の構成であってもよい。
【0043】
実施例1においては、磁場発生部材15aとして永久磁石を用い、磁場発生部材15aと反応容器11との間の距離を変化させて反応容器11内の磁場の強さを制御していたが、磁場の強さは一般的に距離の自乗に反比例することから距離の変化に対して二次関数で増加/減少するため、微小な調整を比較的苦手とする。これに対し、本実施例は、磁場発生部材としての電磁石71を用い、電流量制御によって一次関数で磁場強度を調整することができるので、磁場強度の微小な調整を容易に行うことが可能となる。また、電流のオフによって、磁場を完全に除去することができる。他の作用効果は、実施例1と同様である。
【実施例4】
【0044】
図4は、本発明の実施例4に係るB/F分離機構の1例を示す断面模式図である。図4に示したように、本実施例の磁場発生機構80は、磁場発生部材として永久磁石15a’および電磁石71を有し、永久磁石15a’の磁場強度調整機構として磁場発生部材保持部15bおよび磁場発生部材駆動部15cを有し、電磁石71の磁場強度調整機構として電流制御部72を有する。簡単に言うと、本実施例の磁場発生機構80は、実施例1と実施例3とのハイブリッドの構成を有している。なお、図4に示した構成(配置)は1例であり、下記の効果を達成するように適宜設計できる。
【0045】
前述したように、電磁石71は、永久磁石よりも磁場強度の微小な調整が行える利点を有するが、一般的にネオジム磁石などの希土類磁石よりも磁場強度が小さい弱点がある。これに対し、本実施例は、永久磁石15a’と電磁石71との両方を有していることから、互いの弱点を補い合いかつ両方の利点を享受できる。
【0046】
具体的には、永久磁石15a’と同じ磁場方向となるように電磁石71の磁場を印加することにより、従来よりも高い磁場強度を発生させることができる。また、永久磁石15a’の移動に伴う急激な磁場強度変化を電磁石71の磁場により緩和させることができる。さらに、永久磁石15a’を最も遠ざけた場合でも反応容器11内に掛かる磁場を、電磁石71で反対方向の磁場を印加することによりキャンセルすることができる。他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0047】
以上説明したように、本発明に係るB/F分離機構を備えた自動分析装置は、磁場発生機構として、磁場発生部材と該磁場発生部材により反応容器の内部に生じる磁場強度を調整する磁場強度調整機構とを具備し、分析対象物質の種類に応じて反応容器内の捕捉磁場強度を変化させることができるので、分析対象物質の種類ごとにB/F分離条件を最適化することができる。その結果、本発明に係る自動分析装置は、高精度で安定した免疫測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
100,200…自動分析装置、
10…B/F分離機構、11…反応容器、12…反応容器保持部、
13…反応容器温度調節機構、13a…加熱部材、13b…温度制御部、
14…反応容器撹拌機構、15…磁場発生機構、15a…磁場発生部材、15a’…永久磁石、
15b…磁場発生部材保持部、15c…磁場発生部材駆動部、
20…液体吸引機構、21…吸引ノズル、22…第1バルブ、23…第1シリンジ、
24…廃液ボトル、
30…液体注入機構、31…吐出ノズル、32…第2バルブ、33…第3バルブ、
34…第2シリンジ、35…洗浄液ボトル、37…吐出液温度調節機構、
40…反応容器搬送機構、50…ノズル洗浄機構、
60…恒温室、61…温度センサ、62…恒温室温度調節機構、
70…磁場発生機構、71…電磁石、72…電流制御部、80…磁場発生機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B/F分離機構を備えた免疫分析用の自動分析装置であって、
前記B/F分離機構は、磁性粒子を含む液体試料を収容する反応容器と、
前記反応容器を保持する反応容器保持部と、
前記反応容器保持部の温度を調節する反応容器保持部温度調節機構と、
前記反応容器内の前記液体試料を撹拌する反応容器撹拌機構と、
前記反応容器の外周に配置される磁場発生機構とを具備し、
前記磁場発生機構は、前記反応容器に対して対称に配置される複数の磁場発生部材と、前記磁場発生部材により前記反応容器の内部に生じる磁場強度を調整する磁場強度調整機構とを具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記磁場発生部材は、永久磁石であり、
前記磁場強度調整機構は、前記磁場発生部材を前記反応容器の径方向に平行移動して前記磁場発生部材と前記反応容器との間の距離を調整する磁場発生部材駆動部を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記磁場発生部材は、電磁石であり、
前記磁場強度調整機構は、前記電磁石に流す電流値を制御する電流制御部を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記磁場発生部材は、永久磁石と電磁石との組み合わせであり、
前記磁場強度調整機構は、前記磁場発生部材を前記反応容器の径方向に平行移動して前記磁場発生部材と前記反応容器との間の距離を調整する磁場発生部材駆動部と、前記電磁石に流す電流値を制御する電流制御部とを具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記反応容器内の液体を吸引除去する液体吸引機構と、
前記反応容器内に液体を注入する液体注入機構とを更に備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記自動分析装置は恒温室を更に備え、
前記恒温室内に少なくとも前記B/F分離機構が設置されていることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88164(P2013−88164A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226617(P2011−226617)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】