自動分注装置及び自動分注方法
【課題】適正かつ正確に、効率よくメンブレンコームにサンプルを分注し得る自動分注装置及び自動分注方法を提供する。
【解決手段】サンプルをメンブレンコーム100に浸み込ませるように分注する。ノズルチップが装着されるノズルを位置決め移動可能な移動機構と、ノズルチップ13にサンプルを吸引及び吐出させるポンプ機構19と、メンブレンコーム100を保持するブロッティングトレイ12と、ノズルチップ13のメンブレンコーム100に対する接触状態を検知するジャミングセンサ28とを備える。先端ノズルがメンブレンコーム100の分注部位に沿って移動しながら、サンプルを吐出する。
【解決手段】サンプルをメンブレンコーム100に浸み込ませるように分注する。ノズルチップが装着されるノズルを位置決め移動可能な移動機構と、ノズルチップ13にサンプルを吸引及び吐出させるポンプ機構19と、メンブレンコーム100を保持するブロッティングトレイ12と、ノズルチップ13のメンブレンコーム100に対する接触状態を検知するジャミングセンサ28とを備える。先端ノズルがメンブレンコーム100の分注部位に沿って移動しながら、サンプルを吐出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的にはサンプルの吐出先である所謂メンブレンコームに、微量のサンプルを浸みこませるように分注するメンブレンコームの自動分注装置及び自動分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メンブレンコームは、たとえば幅0.9mmのメンブレンが櫛の歯状に1.5mmピッチで100本並設された形状をしており、各櫛歯状の部位に微量のサンプルを分注(ブロッティング)したものは、サンプルをDNAシーケンサに導入する前処理として用いられる。この場合、分注用チップを使って、手作業でコーム1つ当たり0.5μl程度の極めて微量のサンプルが分注される。
【0003】
なお、従来この種の微量サンプル分注装置において、たとえば特許文献1に記載の自動分注装置では、ノズルをXY方向に移動させ、分注と同時に試料の液面が平坦になるように試料を分注するようにしている。
また、特許文献2に記載の液体試料分注装置では、吐出容器に振動を与えて容器全体にサンプルを広げ、これにより微少量のサンプルを容器の底部全体に確実に広げて分注するようにしている。
さらに、特許文献3に記載の液体試料分注装置では、ディスポーザブルチップの先端に吐出口を設け、安定して精度よく微量試料をサンプリングプレートのマトリクス上の各ポイントに正確にサンプリングするようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−74957号公報
【特許文献2】特開平10−267937号公報
【特許文献3】特開2002−156382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した手作業で行われる従来の分注処理において、使用するチップ先端はたとえば外径φ0.8mmであり、このチップを使って分注先である幅0.9mmのメンブレンに分注するが、所謂、用手法処理であるため幅狭の分注先に正確に位置決めして分注する作業は、細心の注意を要し極めて手間がかからざるを得なかった。また、位置決めを正確に行った場合でも、分注先のコームの幅が極めて狭いため、吐出された液(サンプル)が染み込むまでに時間がかかり、完全に染み込む前に隣のコームへ流出したり、液滴が飛散してコンタミネーションを起こす可能性がある。
【0006】
また、サンプルの分注先であるコームの歯は長さが5〜6mm程度あり、かかるコームに対して手作業でその長さ方向に沿ってチップを移動させ、サンプルを均等に染み込ませるのは実質的に難しい。さらに、メンブレンコームは紙のように薄いため、曲がりや反りが生じ易く、その歯先が反って浮いていると、液を適性に染み込ませることができなくなる。
【0007】
具体的な従来例において、メンブレンコームに分注しようとすると、特許文献1の発明ではノズルをXY方向に移動させて、複数回に分けて分注する必要があり、効率が悪い。また、特許文献2の発明では吐出容器を振動させてサンプルを広げることによりサンプルを分注するものであり、メンブレンコームの分注にはコンタミネーションの問題があるため適さない。さらに、特許文献3の発明ではディスポーザブルチップの先端に吐出口を設けるための加工が必要になる。
【0008】
本発明はかかる実情に鑑み、適正かつ正確にメンブレンコームにサンプルを効率よく分注し得るメンブレンコームの自動分注装置及び自動分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による自動分注装置は、サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注装置であって、ノズルチップが装着されるノズルを位置決め移動可能な移動機構と、前記ノズルチップにサンプルを吸引及び吐出させるポンプ機構と、前記メンブレンコームを保持するブロッティングトレイと、前記ノズルチップの前記メンブレンコームに対する接触状態を検知するジャミングセンサとを備え、前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動しながら、前記サンプルを吐出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明による自動分注装置において、前記ブロッティングトレイは導電性を有するとともに、前記メンブレンコームをセットするための載置部を有し、前記メンブレンコームのサンプル吐出部位相互間を隔絶する仕切部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による自動分注装置において、前記ジャミングセンサは、ジャミングバネの変位により前記ノズルチップの変位量を検出する変位式ジャミングセンサと、前記ノズルチップの電気的導通により前記ノズルチップの接触状態を検出する電極式ジャミングセンサとを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による自動分注装置において、前記ノズルチップは、ディスポーザブルチップとして構成されるとともに、該ディスポーザブルチップを取り外すチップリムーバを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による自動分注方法は、サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注方法であって、サンプルを吸引したノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動させながら、前記サンプルを吐出することにより、前記メンブレンコームに前記サンプルを均等に分注するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による自動分注方法において、前記サンプルを吐出する際の前記ノズルチップの移動距離を予め設定するとともに、前記ノズルチップの移動開始点及び終点を、前記サンプルの吐出開始点及び終点と整合させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による自動分注方法において、前記ノズルチップの移動距離を設定する際、前記ノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に一旦接触させ、この接触状態でのノズルチップ移動中における該ノズルチップの電気的導通の変化に基づいて、前記移動距離を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による自動分注方法において、前記サンプルを吐出する際、前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位直上に位置するように前記ノズルチップの高さ位置を設定保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブロッティングトレイを使用することにより、これにメンブレンコームを適正且つ安定的に保持することができる。そして、ブロッティングトレイにおけるメンブレンコームの位置を検出することにより、サンプル吐出時の最適なパラメータで吐出移動を行うようにし、メンブレンコームに対してサンプルを円滑且つ適正に浸み込ませることができる。また、メンブレンコームに対するディスポーザブルチップの位置を適正に設定保持し、サンプルの落下不良やサンプル詰まり等を防止することができる。
【0018】
また、吐出パラメータを最適化することで、要処理時間を有効に短縮することができるとともに、サンプルを均等に吐出することができ、さらにメンブレンコームに曲がりや反り等があった場合でも事前にエラー検出が可能である等の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明における好適な実施の形態を説明する。
図1は、この実施形態における本発明装置の概略構成を示している。図2は、装置構成を示すブロック図である。この実施形態において、サンプル(試料)をメンブレンコームに浸透させるように分注するものとする。分注装置10のワークエリア上には図1のようにサンプルラック11が配置され、このサンプルラック11のサンプルが、ブロッティングトレイ12上にセットされたメンブレンコーム100(図5)に分注される。なお、サンプルラック11としては、たとえば96ウェルのマイクロプレートが使用される。
【0020】
また、この例では分注に際してディスポーザブルチップを使用し、多数のディスポーザブルチップ13がチップラック14に収納されている。ディスポーザブルチップ13は、後述するチップフィッティングに装着され、基本的には分注毎にチップフィッティングから取り外される。このためチップフィッティングからディスポーザブルチップを取り外すためのチップリムーバ15が配置されている。
【0021】
ここで、図2に示されるようにチップフィッティング16にはディスポーザブルチップ13が取り付けられ、このチップフィッティング16を介してディスポーザブルチップ13を所望位置に位置決めし、且つ搬送することができる。そのためチップフィッティング16をワークエリア上で自在に移動させるための搬送機構を有する。この搬送機構は、ここではその詳細構造について説明を省略するが、X,Y,Z3軸座標系で移動可能であり、X,Y軸方向に搬送ガイドするX−Y軸駆動機構と、Z軸方向(上下方向)に搬送ガイドするZ軸駆動機構とを持つ。これらの駆動機構は制御部17の命令によりX,Y,Z軸駆動部18を介して駆動制御され、協働してチップフィッティング16、従ってディスポーザブルチップ13を適正かつ円滑に搬送することができるように構成される。
【0022】
また、図2においてチップフィッティング16にはポンプ19が接続され、このポンプ19によってディスポーザブルチップ13に対する吸引及び吐出が行われる。ポンプ19は制御部17の命令によりポンプ駆動部20を介して駆動制御され、その出力である吸引及び吐出圧力は圧力センサ21により検出されるようになっている。圧力センサ21により検出された圧力値は増幅回路22によって増幅され、コンパレータ26によってメモリ24に記憶されたデータと比較される。コンパレータ26の比較結果は判定部27により判定される。
【0023】
また、この例では変位式ジャミングセンサ28を有し、その出力は増幅回路29を経てジャミング検出部30に送出される。この場合、チップフィッティング16にはジャミングバネが取り付けられており、このジャミングバネの変位量を測定することによりディスポーザブルチップ13の先端が対象物に接触したかどうかを判断することができる。変位式ジャミングセンサ28は0.1〜0.2mm程度の変位量を検出することが可能である。本発明ではまた、ディスポーザブルチップ13は導電性を有しており、これにより電極式ジャミングセンサが構成される。すなわち、ディスポーザブルチップ13はジャミング検出部31と接続され、その接触相手との導通の有無により接触状態を判定することができるようになっている。
【0024】
本発明装置においてまた、各種データ等の入力部32や各種情報等の表示部33を備えており、さらに装置動作上使用するデータ等を記憶するメモリ34を内蔵している。
【0025】
メンブレンコーム100がセットされるブロッティングトレイ12は、図3のようにブロッティングトレイラック35に搭載される。ここで、メンブレンコーム100は図5に示されるように、たとえば幅0.9mmのメンブレンが櫛の歯状に1.5mmピッチで形成されており、この櫛歯状のサンプル吐出部位100aにサンプルが吐出される。
【0026】
ブロッティングトレイ12は金属製、すなわち導電性を有するとともに、図4に示されるようにメンブレンコーム100をセットするための載置部12aを有する。この場合、セットされたメンブレンコーム100のサンプル吐出部位100a相互間を隔絶する仕切部12bが多数形成されている。なお、ブロッティングトレイラック35には、搭載されたブロッティングトレイ12のX,Y軸方向位置を微調整するためのアジャストスクリュ35a,35bが設けられている。
【0027】
また、この例ではブロッティングトレイ12の側近に、チップフィッティング16に装着されたディスポーザブルチップ13の曲がりを検出するチップ曲がりセンサ36が配置される。このチップ曲がりセンサ36は箱状を呈し、L字型のスリット36aの内側にたとえばフォトインタラプタ等のセンサが配設されている。スリット36aに沿ってディスポーザブルチップ13の先端部を走行させることで、フォトインタラプタの出力が曲がり検出部37(図2)に送出され、これによりディスポーザブルチップ13の曲がりを検出することができるようになっている。
【0028】
上記構成において、つぎに本発明装置の作動例を図7及び図8のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、ステップS1において図6に示されるように、ブロッティングトレイ12上の適正位置にメンブレンコーム100をセットする。一方、ステップS2において、チップフィッティング16にディスポーザブルチップ13を装着する。この場合、チップフィッティング16をチップラック14上に移動し、さらにZ軸方向に下降することにより所定のディスポーザブルチップ13が装着される。
【0029】
つぎに、ステップS3において、装着されたディスポーザブルチップ13をチップ曲がりセンサ36へ移動し、さらにステップS4において、そのディスポーザブルチップ13の先端の曲がりを検出するとともに、サンプルを吸引及び吐出する位置を補正する。予め基準チップを使用してチップ曲がりセンサ36によって基準値が設定されており、この基準値に基づき当該ディスポーザブルチップ13の位置補正が行われる。
【0030】
ステップS5において、ディスポーザブルチップ13をX,Y軸方向へ移動させ、ブロッティングトレイ12へ移動する。ここでは、分注を開始する予備段階としてメンブレンコーム100の形状(特に櫛歯状のサンプル吐出部位100a)を測定・確認する。つぎに、ステップS6において、ディスポーザブルチップ13をZ軸方向に下降させ、変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12を検出する。この場合、図9(a)のようにディスポーザブルチップ13の先端がメンブレンコーム100のサンプル吐出部位100aに接触した位置で停止させる。
【0031】
前述したように変位式ジャミングセンサ28は、ジャミングバネの変位量を測定することによりディスポーザブルチップ13の先端が対象物に接触したかどうかを判断することができる。変位式ジャミングセンサ28がオン(ON)することでZ軸を停止させると、そのときジャミングバネは0.1〜0.2mm程度収縮し、これによりディスポーザブルチップ13の先端は略100g程度の荷重で、ブロッティングトレイ12にセットされているメンブレンコーム100の吐出部位100aを押圧する。
【0032】
ステップS7において、この押圧状態でディスポーザブルチップ13を、図9(b)のようにY軸方向手前に移動する。このときディスポーザブルチップ13の先端は吐出部位100aの先端を通過すると、ジャミングバネによってさらに押し出され、これによりディスポーザブルチップ13の先端がブロッティングトレイ12(の上表面)と直接接触する。この接触により両者間の電位差がゼロ(0)となり、これによって電極式ジャミングセンサの信号がオンとなり、メンブレンコーム100の先端(櫛歯状部位)を検出することができる。
【0033】
ステップS8において、上記のように検出したメンブレンコーム100の先端位置(Y座標)が登録され、Y軸方向に沿った吐出時移動(Yチルト)距離Lを設定する。なお、吐出時移動距離Lを設定するに当たり、分注時にディスポーザブルチップ13の先端がメンブレンコーム100から外れないようにするために、実際にはYチルト終了位置は、検出されたメンブレンコーム100の先端位置よりも適度に内側もしくは奥側に設定する。このように一旦、吐出時移動距離Lを登録しておくことにより、同一のメンブレンコーム100上であれば全ての分注工程に適用することができる。
【0034】
ステップS9において、上記のように使用してきたディスポーザブルチップ13をチップリムーバ15によって一旦、取り外す。これにより分注の予備段階が終了する。
【0035】
つぎに、ステップS10において、上記と同様に新たなディスポーザブルチップ13を取り付ける。
ステップS11において、装着された新たなディスポーザブルチップ13をチップ曲がりセンサ36へ移動し、さらにステップS12において、そのディスポーザブルチップ13の先端の曲がりを検出するとともに、サンプルを吸引及び吐出する位置を補正する。
【0036】
なお、ステップS11におけるディスポーザブルチップ13の先端の曲がり検出後、上記と同様に変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12を検出し、さらに電極式ジャミングセンサによりメンブレンコーム100の先端を検出するとよい。
【0037】
つぎに、ステップS13において、ディスポーザブルチップ13をX,Y,Z軸方向へ移動させ、サンプルラック11の吸引位置へ移動する。ステップS14において、サンプルを吸引する。サンプル吸引に際して、制御部17によりポンプ駆動部20を介してポンプ19を作動させ、ディスポーザブルチップ13の先端より所定量、この例では0.5μlのサンプルを吸引する。サンプル吸引後、ステップS15においてZ軸方向の原点まで高速上昇する。
【0038】
つぎに、ステップS16において、ディスポーザブルチップ13をX,Y軸方向へ移動させ、ブロッティングトレイ12の吐出位置へ移動する。予め設定されたメンブレンコーム100の目標とする吐出部位100a位置に到達したら、ステップS17において図10(a)のようにブロッティングトレイ12面上1〜2mm(好適には1.5mm程度)までZ軸方向に高速下降し、この位置で一旦停止する。
【0039】
ステップS18において、Z軸方向に減速下降し、変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12にセットされたメンブレンコーム100を検出する。この場合、ステップS19において電極式ジャミングセンサの信号がオフなっているか、すなわち、メンブレンコーム100が適正にセットされ、吐出部位100aが正確に配置されているかを確認する。電極式ジャミングセンサの信号がオンの場合には適正にセットされていないことであるから、ステップS20においてエラー処理を行い、たとえば当該ディスポーザブルチップ13を取り外し、再度やり直す。
【0040】
ステップS21において、電極式ジャミングセンサがオフならばZ軸方向に停止後、低速上昇し、ディスポーザブルチップ13の先端をメンブレンコーム100(吐出部位100a)の上表面から0.2mm程度浮かせる。
【0041】
つぎに、ステップS22において、サンプルを吐出する。この場合、上記のようにディスポーザブルチップ13を僅かに浮かせた状態で、ポンプ19を作動させることにより図10(b)のようにサンプルの吐出を開始する。ステップS23において、サンプル吐出と同時にディスポーザブルチップ13をY軸方向に移動するが、予めサンプル吐出速度vpを決めておく。吐出時移動距離Lは既に設定されており、吐出量VとするとY軸方向の吐出時移動速度vyは次式により表される。
vy=L/(V/vp)
【0042】
サンプル吐出開始と同時にY軸方向の移動も開始し、またサンプル吐出終了と同時にディスポーザブルチップ13の先端はY軸方向の移動終点に到達する。このようにサンプル吐出量と吐出時移動速度の関係を設定することで、メンブレンコーム100の吐出部位100aに対してサンプルを均等に吐出することができる。ステップS24において、サンプル吐出後、適当なタイムラグを設定し(たとえば300ms程度)、ディスポーザブルチップ13内のサンプルが完全に吐出されるのを待つ。
【0043】
ステップS25において、ディスポーザブルチップ13の先端についている液滴をメンブレンコーム100に完全に分注するためにタッチオフ動作を行う。ここではディスポーザブルチップ13を低速下降させ、再び変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12のメンブレンコーム100を検出する。ついで、ステップS26において、Z軸方向に数mm(たとえば5mm程度)低速上昇させ、ステップS27において、Z軸方向の原点まで高速上昇させる。ステップS28において、使用後のディスポーザブルチップ13をチップリムーバ15によって取り外す。さらに、ステップS29において、所定数のサンプルを分注したら作業終了とする。なお、分注するサンプルが残存している場合には、同様の動作を繰り返す。
【0044】
上記の場合、たとえば図11に示すようにサンプル吐出時にメンブレンコーム100に曲がりや反り等があり、あるいはブロッティングトレイ12に適正にセットされていないとき、そのままでは図11(b)のように分注エラーが発生する。これに対して本発明では電極式ジャミングセンサの信号がオフなっているか、すなわちサンプルメンブレンコーム100が適正にセットされていることを確認し、この場合にのみ分注動作に移行する。したがって、上記のようなメンブレンコーム100のセット不良の場合でも、分注エラーが発生するのを確実に防止することができる。なお、電極式ジャミングセンサの信号がオンの場合には分注動作を中止し、ディスポーザブルチップ13内のサンプルを元の容器に戻してエラー表示を行うようにしてもよい。
【0045】
以上説明したように本発明によれば、変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12におけるメンブレンコーム100の位置を検出することにより、ディスポーザブルチップ13がメンブレンコーム100から離れ過ぎてサンプルが落下せず、あるいはディスポーザブルチップ13の先端がメンブレンコーム100に接近し過ぎてサンプル詰まりを起こす等のトラブルを防止することができる。
【0046】
また、たとえばサンプル吐出量と吐出時移動速度の関係を好適に設定し、このように最適なパラメータで吐出移動を行うようにした。これによりサンプルが液滴となって撥ねるのを防止し、メンブレンコーム100に対してサンプルを円滑且つ適正に浸み込ませることができる。
【0047】
また、上記のように吐出パラメータを最適化することで、要処理時間を有効に短縮することができる等の利点がある。また、メンブレンコーム100の吐出部位100aに対してサンプルを均等に吐出することができる上、メンブレンコーム100に曲がりや反り等があった場合でも事前にエラー検出が可能である。
【0048】
以上、本発明を種々の実施形態とともに説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
たとえば、メンブレンコーム100側をX,Y軸に移動可能に構成し、メンブレンコーム100側をY軸方向へ移動させながら、ディスポーザブルチップ13からメンブレンコーム100へサンプルを分注するようにしてもよい。
また、上記実施形態において説明した具体的数値等は、これらに限定されず必要に応じて適宜変更等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態におけるメンブレンコームの自動分注装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態における自動分注装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るブロッティングトレイ及びそのラックの例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態におけるブロッティングトレイの例を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるメンブレンコームの構成例を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態におけるメンブレンコーム及びブロッティングトレイの例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態における作動例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態における作動例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態におけるチップ移動距離の設定方法の例を示す図である。
【図10】本発明に実施形態におけるサンプル吐出動作の例を示す図である。
【図11】サンプル吐出時のエラーを仮想した動作例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 自動分注装置
11 サンプルラック
12 ブロッティングトレイ
13 ディスポーザブルチップ
14 チップラック
15 チップリムーバ
16 チップフィッティング
19 ポンプ
21 圧力センサ
28 変位式ジャミングセンサ
30 ジャミング検出部
100 メンブレンコーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的にはサンプルの吐出先である所謂メンブレンコームに、微量のサンプルを浸みこませるように分注するメンブレンコームの自動分注装置及び自動分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メンブレンコームは、たとえば幅0.9mmのメンブレンが櫛の歯状に1.5mmピッチで100本並設された形状をしており、各櫛歯状の部位に微量のサンプルを分注(ブロッティング)したものは、サンプルをDNAシーケンサに導入する前処理として用いられる。この場合、分注用チップを使って、手作業でコーム1つ当たり0.5μl程度の極めて微量のサンプルが分注される。
【0003】
なお、従来この種の微量サンプル分注装置において、たとえば特許文献1に記載の自動分注装置では、ノズルをXY方向に移動させ、分注と同時に試料の液面が平坦になるように試料を分注するようにしている。
また、特許文献2に記載の液体試料分注装置では、吐出容器に振動を与えて容器全体にサンプルを広げ、これにより微少量のサンプルを容器の底部全体に確実に広げて分注するようにしている。
さらに、特許文献3に記載の液体試料分注装置では、ディスポーザブルチップの先端に吐出口を設け、安定して精度よく微量試料をサンプリングプレートのマトリクス上の各ポイントに正確にサンプリングするようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−74957号公報
【特許文献2】特開平10−267937号公報
【特許文献3】特開2002−156382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した手作業で行われる従来の分注処理において、使用するチップ先端はたとえば外径φ0.8mmであり、このチップを使って分注先である幅0.9mmのメンブレンに分注するが、所謂、用手法処理であるため幅狭の分注先に正確に位置決めして分注する作業は、細心の注意を要し極めて手間がかからざるを得なかった。また、位置決めを正確に行った場合でも、分注先のコームの幅が極めて狭いため、吐出された液(サンプル)が染み込むまでに時間がかかり、完全に染み込む前に隣のコームへ流出したり、液滴が飛散してコンタミネーションを起こす可能性がある。
【0006】
また、サンプルの分注先であるコームの歯は長さが5〜6mm程度あり、かかるコームに対して手作業でその長さ方向に沿ってチップを移動させ、サンプルを均等に染み込ませるのは実質的に難しい。さらに、メンブレンコームは紙のように薄いため、曲がりや反りが生じ易く、その歯先が反って浮いていると、液を適性に染み込ませることができなくなる。
【0007】
具体的な従来例において、メンブレンコームに分注しようとすると、特許文献1の発明ではノズルをXY方向に移動させて、複数回に分けて分注する必要があり、効率が悪い。また、特許文献2の発明では吐出容器を振動させてサンプルを広げることによりサンプルを分注するものであり、メンブレンコームの分注にはコンタミネーションの問題があるため適さない。さらに、特許文献3の発明ではディスポーザブルチップの先端に吐出口を設けるための加工が必要になる。
【0008】
本発明はかかる実情に鑑み、適正かつ正確にメンブレンコームにサンプルを効率よく分注し得るメンブレンコームの自動分注装置及び自動分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による自動分注装置は、サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注装置であって、ノズルチップが装着されるノズルを位置決め移動可能な移動機構と、前記ノズルチップにサンプルを吸引及び吐出させるポンプ機構と、前記メンブレンコームを保持するブロッティングトレイと、前記ノズルチップの前記メンブレンコームに対する接触状態を検知するジャミングセンサとを備え、前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動しながら、前記サンプルを吐出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明による自動分注装置において、前記ブロッティングトレイは導電性を有するとともに、前記メンブレンコームをセットするための載置部を有し、前記メンブレンコームのサンプル吐出部位相互間を隔絶する仕切部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による自動分注装置において、前記ジャミングセンサは、ジャミングバネの変位により前記ノズルチップの変位量を検出する変位式ジャミングセンサと、前記ノズルチップの電気的導通により前記ノズルチップの接触状態を検出する電極式ジャミングセンサとを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による自動分注装置において、前記ノズルチップは、ディスポーザブルチップとして構成されるとともに、該ディスポーザブルチップを取り外すチップリムーバを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による自動分注方法は、サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注方法であって、サンプルを吸引したノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動させながら、前記サンプルを吐出することにより、前記メンブレンコームに前記サンプルを均等に分注するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による自動分注方法において、前記サンプルを吐出する際の前記ノズルチップの移動距離を予め設定するとともに、前記ノズルチップの移動開始点及び終点を、前記サンプルの吐出開始点及び終点と整合させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による自動分注方法において、前記ノズルチップの移動距離を設定する際、前記ノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に一旦接触させ、この接触状態でのノズルチップ移動中における該ノズルチップの電気的導通の変化に基づいて、前記移動距離を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による自動分注方法において、前記サンプルを吐出する際、前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位直上に位置するように前記ノズルチップの高さ位置を設定保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブロッティングトレイを使用することにより、これにメンブレンコームを適正且つ安定的に保持することができる。そして、ブロッティングトレイにおけるメンブレンコームの位置を検出することにより、サンプル吐出時の最適なパラメータで吐出移動を行うようにし、メンブレンコームに対してサンプルを円滑且つ適正に浸み込ませることができる。また、メンブレンコームに対するディスポーザブルチップの位置を適正に設定保持し、サンプルの落下不良やサンプル詰まり等を防止することができる。
【0018】
また、吐出パラメータを最適化することで、要処理時間を有効に短縮することができるとともに、サンプルを均等に吐出することができ、さらにメンブレンコームに曲がりや反り等があった場合でも事前にエラー検出が可能である等の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明における好適な実施の形態を説明する。
図1は、この実施形態における本発明装置の概略構成を示している。図2は、装置構成を示すブロック図である。この実施形態において、サンプル(試料)をメンブレンコームに浸透させるように分注するものとする。分注装置10のワークエリア上には図1のようにサンプルラック11が配置され、このサンプルラック11のサンプルが、ブロッティングトレイ12上にセットされたメンブレンコーム100(図5)に分注される。なお、サンプルラック11としては、たとえば96ウェルのマイクロプレートが使用される。
【0020】
また、この例では分注に際してディスポーザブルチップを使用し、多数のディスポーザブルチップ13がチップラック14に収納されている。ディスポーザブルチップ13は、後述するチップフィッティングに装着され、基本的には分注毎にチップフィッティングから取り外される。このためチップフィッティングからディスポーザブルチップを取り外すためのチップリムーバ15が配置されている。
【0021】
ここで、図2に示されるようにチップフィッティング16にはディスポーザブルチップ13が取り付けられ、このチップフィッティング16を介してディスポーザブルチップ13を所望位置に位置決めし、且つ搬送することができる。そのためチップフィッティング16をワークエリア上で自在に移動させるための搬送機構を有する。この搬送機構は、ここではその詳細構造について説明を省略するが、X,Y,Z3軸座標系で移動可能であり、X,Y軸方向に搬送ガイドするX−Y軸駆動機構と、Z軸方向(上下方向)に搬送ガイドするZ軸駆動機構とを持つ。これらの駆動機構は制御部17の命令によりX,Y,Z軸駆動部18を介して駆動制御され、協働してチップフィッティング16、従ってディスポーザブルチップ13を適正かつ円滑に搬送することができるように構成される。
【0022】
また、図2においてチップフィッティング16にはポンプ19が接続され、このポンプ19によってディスポーザブルチップ13に対する吸引及び吐出が行われる。ポンプ19は制御部17の命令によりポンプ駆動部20を介して駆動制御され、その出力である吸引及び吐出圧力は圧力センサ21により検出されるようになっている。圧力センサ21により検出された圧力値は増幅回路22によって増幅され、コンパレータ26によってメモリ24に記憶されたデータと比較される。コンパレータ26の比較結果は判定部27により判定される。
【0023】
また、この例では変位式ジャミングセンサ28を有し、その出力は増幅回路29を経てジャミング検出部30に送出される。この場合、チップフィッティング16にはジャミングバネが取り付けられており、このジャミングバネの変位量を測定することによりディスポーザブルチップ13の先端が対象物に接触したかどうかを判断することができる。変位式ジャミングセンサ28は0.1〜0.2mm程度の変位量を検出することが可能である。本発明ではまた、ディスポーザブルチップ13は導電性を有しており、これにより電極式ジャミングセンサが構成される。すなわち、ディスポーザブルチップ13はジャミング検出部31と接続され、その接触相手との導通の有無により接触状態を判定することができるようになっている。
【0024】
本発明装置においてまた、各種データ等の入力部32や各種情報等の表示部33を備えており、さらに装置動作上使用するデータ等を記憶するメモリ34を内蔵している。
【0025】
メンブレンコーム100がセットされるブロッティングトレイ12は、図3のようにブロッティングトレイラック35に搭載される。ここで、メンブレンコーム100は図5に示されるように、たとえば幅0.9mmのメンブレンが櫛の歯状に1.5mmピッチで形成されており、この櫛歯状のサンプル吐出部位100aにサンプルが吐出される。
【0026】
ブロッティングトレイ12は金属製、すなわち導電性を有するとともに、図4に示されるようにメンブレンコーム100をセットするための載置部12aを有する。この場合、セットされたメンブレンコーム100のサンプル吐出部位100a相互間を隔絶する仕切部12bが多数形成されている。なお、ブロッティングトレイラック35には、搭載されたブロッティングトレイ12のX,Y軸方向位置を微調整するためのアジャストスクリュ35a,35bが設けられている。
【0027】
また、この例ではブロッティングトレイ12の側近に、チップフィッティング16に装着されたディスポーザブルチップ13の曲がりを検出するチップ曲がりセンサ36が配置される。このチップ曲がりセンサ36は箱状を呈し、L字型のスリット36aの内側にたとえばフォトインタラプタ等のセンサが配設されている。スリット36aに沿ってディスポーザブルチップ13の先端部を走行させることで、フォトインタラプタの出力が曲がり検出部37(図2)に送出され、これによりディスポーザブルチップ13の曲がりを検出することができるようになっている。
【0028】
上記構成において、つぎに本発明装置の作動例を図7及び図8のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、ステップS1において図6に示されるように、ブロッティングトレイ12上の適正位置にメンブレンコーム100をセットする。一方、ステップS2において、チップフィッティング16にディスポーザブルチップ13を装着する。この場合、チップフィッティング16をチップラック14上に移動し、さらにZ軸方向に下降することにより所定のディスポーザブルチップ13が装着される。
【0029】
つぎに、ステップS3において、装着されたディスポーザブルチップ13をチップ曲がりセンサ36へ移動し、さらにステップS4において、そのディスポーザブルチップ13の先端の曲がりを検出するとともに、サンプルを吸引及び吐出する位置を補正する。予め基準チップを使用してチップ曲がりセンサ36によって基準値が設定されており、この基準値に基づき当該ディスポーザブルチップ13の位置補正が行われる。
【0030】
ステップS5において、ディスポーザブルチップ13をX,Y軸方向へ移動させ、ブロッティングトレイ12へ移動する。ここでは、分注を開始する予備段階としてメンブレンコーム100の形状(特に櫛歯状のサンプル吐出部位100a)を測定・確認する。つぎに、ステップS6において、ディスポーザブルチップ13をZ軸方向に下降させ、変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12を検出する。この場合、図9(a)のようにディスポーザブルチップ13の先端がメンブレンコーム100のサンプル吐出部位100aに接触した位置で停止させる。
【0031】
前述したように変位式ジャミングセンサ28は、ジャミングバネの変位量を測定することによりディスポーザブルチップ13の先端が対象物に接触したかどうかを判断することができる。変位式ジャミングセンサ28がオン(ON)することでZ軸を停止させると、そのときジャミングバネは0.1〜0.2mm程度収縮し、これによりディスポーザブルチップ13の先端は略100g程度の荷重で、ブロッティングトレイ12にセットされているメンブレンコーム100の吐出部位100aを押圧する。
【0032】
ステップS7において、この押圧状態でディスポーザブルチップ13を、図9(b)のようにY軸方向手前に移動する。このときディスポーザブルチップ13の先端は吐出部位100aの先端を通過すると、ジャミングバネによってさらに押し出され、これによりディスポーザブルチップ13の先端がブロッティングトレイ12(の上表面)と直接接触する。この接触により両者間の電位差がゼロ(0)となり、これによって電極式ジャミングセンサの信号がオンとなり、メンブレンコーム100の先端(櫛歯状部位)を検出することができる。
【0033】
ステップS8において、上記のように検出したメンブレンコーム100の先端位置(Y座標)が登録され、Y軸方向に沿った吐出時移動(Yチルト)距離Lを設定する。なお、吐出時移動距離Lを設定するに当たり、分注時にディスポーザブルチップ13の先端がメンブレンコーム100から外れないようにするために、実際にはYチルト終了位置は、検出されたメンブレンコーム100の先端位置よりも適度に内側もしくは奥側に設定する。このように一旦、吐出時移動距離Lを登録しておくことにより、同一のメンブレンコーム100上であれば全ての分注工程に適用することができる。
【0034】
ステップS9において、上記のように使用してきたディスポーザブルチップ13をチップリムーバ15によって一旦、取り外す。これにより分注の予備段階が終了する。
【0035】
つぎに、ステップS10において、上記と同様に新たなディスポーザブルチップ13を取り付ける。
ステップS11において、装着された新たなディスポーザブルチップ13をチップ曲がりセンサ36へ移動し、さらにステップS12において、そのディスポーザブルチップ13の先端の曲がりを検出するとともに、サンプルを吸引及び吐出する位置を補正する。
【0036】
なお、ステップS11におけるディスポーザブルチップ13の先端の曲がり検出後、上記と同様に変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12を検出し、さらに電極式ジャミングセンサによりメンブレンコーム100の先端を検出するとよい。
【0037】
つぎに、ステップS13において、ディスポーザブルチップ13をX,Y,Z軸方向へ移動させ、サンプルラック11の吸引位置へ移動する。ステップS14において、サンプルを吸引する。サンプル吸引に際して、制御部17によりポンプ駆動部20を介してポンプ19を作動させ、ディスポーザブルチップ13の先端より所定量、この例では0.5μlのサンプルを吸引する。サンプル吸引後、ステップS15においてZ軸方向の原点まで高速上昇する。
【0038】
つぎに、ステップS16において、ディスポーザブルチップ13をX,Y軸方向へ移動させ、ブロッティングトレイ12の吐出位置へ移動する。予め設定されたメンブレンコーム100の目標とする吐出部位100a位置に到達したら、ステップS17において図10(a)のようにブロッティングトレイ12面上1〜2mm(好適には1.5mm程度)までZ軸方向に高速下降し、この位置で一旦停止する。
【0039】
ステップS18において、Z軸方向に減速下降し、変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12にセットされたメンブレンコーム100を検出する。この場合、ステップS19において電極式ジャミングセンサの信号がオフなっているか、すなわち、メンブレンコーム100が適正にセットされ、吐出部位100aが正確に配置されているかを確認する。電極式ジャミングセンサの信号がオンの場合には適正にセットされていないことであるから、ステップS20においてエラー処理を行い、たとえば当該ディスポーザブルチップ13を取り外し、再度やり直す。
【0040】
ステップS21において、電極式ジャミングセンサがオフならばZ軸方向に停止後、低速上昇し、ディスポーザブルチップ13の先端をメンブレンコーム100(吐出部位100a)の上表面から0.2mm程度浮かせる。
【0041】
つぎに、ステップS22において、サンプルを吐出する。この場合、上記のようにディスポーザブルチップ13を僅かに浮かせた状態で、ポンプ19を作動させることにより図10(b)のようにサンプルの吐出を開始する。ステップS23において、サンプル吐出と同時にディスポーザブルチップ13をY軸方向に移動するが、予めサンプル吐出速度vpを決めておく。吐出時移動距離Lは既に設定されており、吐出量VとするとY軸方向の吐出時移動速度vyは次式により表される。
vy=L/(V/vp)
【0042】
サンプル吐出開始と同時にY軸方向の移動も開始し、またサンプル吐出終了と同時にディスポーザブルチップ13の先端はY軸方向の移動終点に到達する。このようにサンプル吐出量と吐出時移動速度の関係を設定することで、メンブレンコーム100の吐出部位100aに対してサンプルを均等に吐出することができる。ステップS24において、サンプル吐出後、適当なタイムラグを設定し(たとえば300ms程度)、ディスポーザブルチップ13内のサンプルが完全に吐出されるのを待つ。
【0043】
ステップS25において、ディスポーザブルチップ13の先端についている液滴をメンブレンコーム100に完全に分注するためにタッチオフ動作を行う。ここではディスポーザブルチップ13を低速下降させ、再び変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12のメンブレンコーム100を検出する。ついで、ステップS26において、Z軸方向に数mm(たとえば5mm程度)低速上昇させ、ステップS27において、Z軸方向の原点まで高速上昇させる。ステップS28において、使用後のディスポーザブルチップ13をチップリムーバ15によって取り外す。さらに、ステップS29において、所定数のサンプルを分注したら作業終了とする。なお、分注するサンプルが残存している場合には、同様の動作を繰り返す。
【0044】
上記の場合、たとえば図11に示すようにサンプル吐出時にメンブレンコーム100に曲がりや反り等があり、あるいはブロッティングトレイ12に適正にセットされていないとき、そのままでは図11(b)のように分注エラーが発生する。これに対して本発明では電極式ジャミングセンサの信号がオフなっているか、すなわちサンプルメンブレンコーム100が適正にセットされていることを確認し、この場合にのみ分注動作に移行する。したがって、上記のようなメンブレンコーム100のセット不良の場合でも、分注エラーが発生するのを確実に防止することができる。なお、電極式ジャミングセンサの信号がオンの場合には分注動作を中止し、ディスポーザブルチップ13内のサンプルを元の容器に戻してエラー表示を行うようにしてもよい。
【0045】
以上説明したように本発明によれば、変位式ジャミングセンサ28によりブロッティングトレイ12におけるメンブレンコーム100の位置を検出することにより、ディスポーザブルチップ13がメンブレンコーム100から離れ過ぎてサンプルが落下せず、あるいはディスポーザブルチップ13の先端がメンブレンコーム100に接近し過ぎてサンプル詰まりを起こす等のトラブルを防止することができる。
【0046】
また、たとえばサンプル吐出量と吐出時移動速度の関係を好適に設定し、このように最適なパラメータで吐出移動を行うようにした。これによりサンプルが液滴となって撥ねるのを防止し、メンブレンコーム100に対してサンプルを円滑且つ適正に浸み込ませることができる。
【0047】
また、上記のように吐出パラメータを最適化することで、要処理時間を有効に短縮することができる等の利点がある。また、メンブレンコーム100の吐出部位100aに対してサンプルを均等に吐出することができる上、メンブレンコーム100に曲がりや反り等があった場合でも事前にエラー検出が可能である。
【0048】
以上、本発明を種々の実施形態とともに説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
たとえば、メンブレンコーム100側をX,Y軸に移動可能に構成し、メンブレンコーム100側をY軸方向へ移動させながら、ディスポーザブルチップ13からメンブレンコーム100へサンプルを分注するようにしてもよい。
また、上記実施形態において説明した具体的数値等は、これらに限定されず必要に応じて適宜変更等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態におけるメンブレンコームの自動分注装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態における自動分注装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るブロッティングトレイ及びそのラックの例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態におけるブロッティングトレイの例を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるメンブレンコームの構成例を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態におけるメンブレンコーム及びブロッティングトレイの例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態における作動例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態における作動例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態におけるチップ移動距離の設定方法の例を示す図である。
【図10】本発明に実施形態におけるサンプル吐出動作の例を示す図である。
【図11】サンプル吐出時のエラーを仮想した動作例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 自動分注装置
11 サンプルラック
12 ブロッティングトレイ
13 ディスポーザブルチップ
14 チップラック
15 チップリムーバ
16 チップフィッティング
19 ポンプ
21 圧力センサ
28 変位式ジャミングセンサ
30 ジャミング検出部
100 メンブレンコーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注装置であって、
ノズルチップが装着されるノズルを位置決め移動可能な移動機構と、前記ノズルチップにサンプルを吸引及び吐出させるポンプ機構と、前記メンブレンコームを保持するブロッティングトレイと、前記ノズルチップの前記メンブレンコームに対する接触状態を検知するジャミングセンサとを備え、
前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動しながら、前記サンプルを吐出するようにしたことを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記ブロッティングトレイは導電性を有するとともに、前記メンブレンコームをセットするための載置部を有し、前記メンブレンコームのサンプル吐出部位相互間を隔絶する仕切部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記ジャミングセンサは、ジャミングバネの変位により前記ノズルチップの変位量を検出する変位式ジャミングセンサと、前記ノズルチップの電気的導通により前記ノズルチップの接触状態を検出する電極式ジャミングセンサとを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記ノズルチップは、ディスポーザブルチップとして構成されるとともに、該ディスポーザブルチップを取り外すチップリムーバを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動分注装置。
【請求項5】
サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注方法であって、
サンプルを吸引したノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動させながら、前記サンプルを吐出することにより、前記メンブレンコームに前記サンプルを均等に分注するようにしたことを特徴とする自動分注方法。
【請求項6】
前記サンプルを吐出する際の前記ノズルチップの移動距離を予め設定するとともに、前記ノズルチップの移動開始点及び終点を、前記サンプルの吐出開始点及び終点と整合させることを特徴とする請求項5に記載の自動分注方法。
【請求項7】
前記ノズルチップの移動距離を設定する際、前記ノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に一旦接触させ、この接触状態でのノズルチップ移動中における該ノズルチップの電気的導通の変化に基づいて、前記移動距離を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載の自動分注方法。
【請求項8】
前記サンプルを吐出する際、前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位直上に位置するように前記ノズルチップの高さ位置を設定保持することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の自動分注方法。
【請求項1】
サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注装置であって、
ノズルチップが装着されるノズルを位置決め移動可能な移動機構と、前記ノズルチップにサンプルを吸引及び吐出させるポンプ機構と、前記メンブレンコームを保持するブロッティングトレイと、前記ノズルチップの前記メンブレンコームに対する接触状態を検知するジャミングセンサとを備え、
前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動しながら、前記サンプルを吐出するようにしたことを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記ブロッティングトレイは導電性を有するとともに、前記メンブレンコームをセットするための載置部を有し、前記メンブレンコームのサンプル吐出部位相互間を隔絶する仕切部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記ジャミングセンサは、ジャミングバネの変位により前記ノズルチップの変位量を検出する変位式ジャミングセンサと、前記ノズルチップの電気的導通により前記ノズルチップの接触状態を検出する電極式ジャミングセンサとを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記ノズルチップは、ディスポーザブルチップとして構成されるとともに、該ディスポーザブルチップを取り外すチップリムーバを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動分注装置。
【請求項5】
サンプルをメンブレンコームに浸み込ませるように分注する自動分注方法であって、
サンプルを吸引したノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に沿って移動させながら、前記サンプルを吐出することにより、前記メンブレンコームに前記サンプルを均等に分注するようにしたことを特徴とする自動分注方法。
【請求項6】
前記サンプルを吐出する際の前記ノズルチップの移動距離を予め設定するとともに、前記ノズルチップの移動開始点及び終点を、前記サンプルの吐出開始点及び終点と整合させることを特徴とする請求項5に記載の自動分注方法。
【請求項7】
前記ノズルチップの移動距離を設定する際、前記ノズルチップを前記メンブレンコームの分注部位に一旦接触させ、この接触状態でのノズルチップ移動中における該ノズルチップの電気的導通の変化に基づいて、前記移動距離を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載の自動分注方法。
【請求項8】
前記サンプルを吐出する際、前記ノズルチップが前記メンブレンコームの分注部位直上に位置するように前記ノズルチップの高さ位置を設定保持することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の自動分注方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−349502(P2006−349502A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175978(P2005−175978)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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