説明

自動制動制御装置

【課題】自動制動により車両は減速するのか、または運転者の操作で車両を減速しなければならないかを容易に認識できる自動制動制御装置を提供する。
【解決手段】車両が進行すると推定される経路を進行推定経路24aとして表示する。この進行推定経路24aを車両が進行するものとして自動制動制御が実行される。進行推定経路24aは道路種別に基づいて推定される。たとえば、道路22cは細街路であるのに対し道路22bは国道であるので、進行推定経路24aは分岐点23aを通過した後、道路22bを通過する。進行推定経路24aは、車両の現在地から500m先まで推定されるので、進行推定経路24aは、500m先で途切れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両がコーナに進入するときに適切な速度に車速を制御する自動制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
設定経路による経路誘導を行わない状態で、車両の進行方向に複数の分岐路に分岐する交差点を検出したとき、最も走行難易度の低い分岐路の道路形状に基づいて自動減速制御を行う車両の走行安全装置が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。また、上述のように分岐路を検出した場合、自動減速制御を行わない車両の走行安全装置が従来技術として知られている(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−312798号公報
【特許文献2】特開2001−312799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1または2に記載されているような従来の車両の走行安全装置では、道路の分岐点において自動減速制御が行われるか否かを運転者が把握しづらいという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)請求項1の発明の自動制動制御装置は、車両の現在地を検出する現在地検出手段と、検出された車両の現在地に基づいて車両が進行する進行経路を推定する経路推定手段と、経路推定手段によって推定された進行経路を表示する経路表示手段と、進行経路上のコーナを検出するコーナ検出手段と、車両が検出されたコーナに進入するときの車両の速度を制御する車速制御手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の自動制動制御装置において、経路推定手段は、進行経路上に分岐点がある場合、分岐点より分岐する道路の種別および分岐点前後の道路に対応する一対のリンクのなすリンク角度の少なくとも一方に基づいて、車両が分岐点を通過後に進行する進行経路を推定することを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の自動制動制御装置において、経路推定手段は、進行経路を推定できないとき、分岐点まで、または分岐点の手前まで進行経路を推定することを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項2に記載の自動制動制御装置において、経路推定手段は、分岐点から3つ以上の道路が分岐しているとき、分岐点まで、または分岐点の手前まで進行経路を推定することを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項1に記載の自動制動制御装置において、経路推定手段は、進行経路上にクランクがある場合、クランクの手前まで進行経路を推定することを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、さらに、現在地検出手段によって検出された現在地から、推定された進行経路の終点までの距離を音声あるいは表示の少なくとも一方で通知することを特徴とする。
(7)請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、経路表示手段は、表示モニタ、ヘッドアップディスプレイによるフロントウインドシールドガラスおよびスピードメータを表示する液晶ディスプレイのいずれかに進行経路を表示することを特徴とする。
(8)請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、目的地までの推奨経路を探索する探索手段を備え、経路表示手段は、進行経路とともに、進行経路と表示形態を変えて推奨経路を表示することを特徴とする。
(9)請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、進行経路以外の分岐道路へ進入する場合は、運転者の操作で車両の制動を実行する必要があることを音声にて通知する音声通知手段を備えることを特徴とする。
(10)請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、経路表示手段は、進行経路以外の分岐道路に沿って、運転者の操作で車両の制動を実行する必要があることを示すアイコンを表示することを特徴とする。
(11)請求項11の発明の自動制動制御装置は、車両の現在地を検出する現在地検出手段と、検出された車両の現在地に基づいて車両が進行する進行経路を推定する経路推定手段と、進行経路上のコーナを検出するコーナ検出手段と、車両がコーナに進入するときの車両の速度を制御する車速制御手段と、車両が進行経路から外れると、車両が進行経路から外れたことを音声によって通知する音声通知手段とを備えることを特徴とする。
(12)請求項12の発明は、請求項11に記載の自動制動制御装置において、音声通知手段は、経路を外れると運転者の操作で車両の制動を実行する必要があることを通知することを特徴とする。
(13)請求項13の発明は、請求項11または12に記載の自動制動制御装置において、さらに、車両が進行経路から外れた後に、新たな進路推定を行い、新たに進路推定された推定経路を車両が走行していることを音声あるいは表示の少なくとも一方で通知することを特徴とする。
(14)請求項14の発明の自動制動制御装置は、車両の現在地を検出する現在地検出手段と、検出された車両の現在地に基づいて車両が進行する進行経路を推定する経路推定手段と、進行経路上のコーナを検出するコーナ検出手段と、車両がコーナに進入するときの車両の速度を制御する車速制御手段と、車両が進行経路から外れると、運転者の操作で車両の制動を実行する必要があることを音声によって通知する音声通知手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の自動制動制御装置によれば、自動制動制御の基礎とするために推定された経路が表示される。したがって、自動制動により車両は減速するのか、または運転者の操作で車両を減速しなければならないかを容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明の実施形態による自動制動制御装置1を示す。この自動制動制御装置1は、自動制動制御を実行するために推定した経路を表示モニタ16に表示する。自動制動制御装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、スピーカ17、入力装置18、制動装置19およびディスクドライブ110を有している。ディスクドライブ110には、地図データが記憶されたDVD−ROM111が装填されている。制動装置19以外はナビゲーション装置として機能する。
【0007】
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行して各種の制御を行う。制御回路11は、車両が道路のコーナを適正速度で通過できるようにするため、ブレーキなどの制動装置19を動作させて、車速を制御する。
【0008】
現在地検出装置14は車両の現在地を検出する装置である。現在地検出装置14は、振動ジャイロ14a、車速センサ14b、GPS(Global Positioning System)センサ14cなどからなる。振動ジャイロ14aは車両の進行方向を検出し、車速センサ14bは車速を検出し、GPSセンサ14cはGPS衛星からのGPS信号を検出する。自動制動制御装置1は、この現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、地図の表示範囲を決定するとともに、地図上にその現在地を表示する。制御回路11は、現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、車両が進行する経路を推定する。
【0009】
車両前方の道路に分起点が存在する場合、分起点から分岐する道路のうちのどの道路を車両が進行するかを推定しなくてはならない。このような場合、以下のようにして車両が進行する道路を推定する。分起点から分岐する道路の道路種別のうち、都市間高速道路、都市高速道路、有料道路、一般国道、都道府県道、市町村道、一般道路の順序で優先して走行経路を推定する。たとえば、車両がY字路に接近し、一方の道路が国道で他方の道路が県道の場合、車両は国道を進行すると推定する。一般道路より幅員が狭い細街路については推定から除外する。
【0010】
道路種別で選択できないときは、分岐点前後の道路に対応する一対のリンクのなすリンク角度に基づいて推定する。車両が分岐点に進入するリンク以外の分起点から分岐する各々のリンクについて、車両が分起点に進入するリンクと、分起点から分岐するリンクとの間のリンク角度を算出し比較する。そして、最もリンク角度が小さいリンクに対応する道路を車両が進行する道路として推定する。それでも推定できないときは、分起点より先の道路については、道路を推定せず、自動制動制御を行わない。つまり、推定する経路は分岐点または分岐点手前で途切れる。
【0011】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを格納する。この画像データは地図描画用データや各種の図形データからなり、それらはDVD−ROM111に記憶された地図データに基づいて、適宜生成される。自動制動制御装置1は、このようにして生成された画像データを用いることによって地図表示などを行うことができる。
【0012】
ディスクドライブ110は、DVD−ROM111から地図データを読み出す。地図データは、地図表示用データなどを含む。地図表示用データには、地図データに格納されている道路のリンク情報およびノード情報が含まれている。
【0013】
制御回路11は、上述のようにして推定した経路(以下、進行推定経路と呼ぶ)において、車速を制御する必要のあるコーナ、すなわち、曲率半径が所定値以下のコーナの有無を検出する。コーナの曲率半径は、地図データのノード情報に含まれるノードの配列の情報からノードを結んだ曲線より算出する。そして、曲線の曲率半径より、コーナを通過するのに適正な速度を算出する。車両がこの適正な速度を越えて道路のコーナに進入しようとすると、制御回路11は制動装置19を動作させ、車両を適正な速度に減速させる。
【0014】
制御回路11は、地図データに格納されている道路のリンク情報のリンクを構成するノードの座標より上述したリンク角度を算出する。
【0015】
地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有し、運転者の要求にしたがって、表示地図の縮尺を変更することができる。なお、DVD−ROM111以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより地図データを読み出してもよい。
【0016】
表示モニタ16は、地図データなどの各種情報に基づいて、自車位置付近の地図などの各種情報を画面表示として運転者に提供する。スピーカ17は、各種入力操作を運転者に指示したり、各種情報を報知したりするための音声を出力する。入力装置18は、運転者が各種コマンドを設定するための入力スイッチを有し、操作パネル上のボタンスイッチなどによって実現される。
【0017】
制動装置19は、ブレーキ装置などからなり、車両がコーナを安全に通過できるように車両を減速する。
【0018】
次に、図2〜4を参照して、本発明の一実施形態における自動制動制御装置1の自動制動制御の基礎となる進行推定経路の表示について説明する。自動制動制御装置1は車両が進行する進行推定経路を推定し、その進行推定経路を車両が通過するものとして自動制動制御を実行する。図2(a)は、自車位置周辺の地図20を表示した表示モニタ16の表示画面を示す図である。自車位置には、地図20に重ねて自車位置マーク21が表示される。車両は道路22aを走行しており、道路22bと道路22cとに分岐する分岐点23aに進入しようとしているものとして説明する。道路23a,23bは国道であり、道路22cは細街路とする。
【0019】
自動制動制御装置1は、進行推定経路24aとして地図20に重ねて表示する。道路22cは細街路であるのに対し道路22bは国道である。上述した道路種別に優先順位に基づいて、進行推定経路24aは分岐点23aから道路22bに進行する経路として推定される。
【0020】
自動制動制御装置1は、車両の現在地から、たとえば500m先までの道路において、車両が進行する道路を推定し、その道路の形状を検出する。したがって、図2(b)に示すように、地図20の縮尺率を小さくすると、進行推定経路24aは、500m先で途切れる。500m先に推定経路を設定してもよい。
【0021】
車両が分岐点23aより手前250mの地点にさしかかると、図3(a)に示すように、分岐点23aの拡大地図30aが分割画面として表示される。上述したように、進行推定経路24aは、分岐点23aから道路22bに進行する経路であり、この経路24aに対して車両が制動制御される。したがって、運転者が分岐点23aで右折しようとする場合、自ら車速を制御する必要がある。そこで、分岐点23aにおいて、図3(a)、(b)に示すように、進行推定経路以外の道路の脇に警報アイコン32を表示する。警報アイコン32は、ブレーキペダルの踏み込みを示唆する図柄である。警報アイコン32は、分岐点23aにおいて進行推定経路24aから外れる経路を進行する場合、警報アイコン32を見た運転者が直感的にブレーキ操作を行うような印象的な図柄とするのが好ましく、図3(a),(b)に示す図柄は一例である。
【0022】
図3(b)に示すように車両が分岐点23aの手前20mの地点にさしかかると、分岐点23aを右折する場合は運転者自身がブレーキを操作しなければならないことを通知するためにスピーカ17より音声ガイダンスが出力される。たとえば、「右折時の場合、ご自身でブレーキ制動をしてください。」という音声ガイダンスが出力される。
【0023】
次に、分岐点を通過後、車両がどの道路を通過するのか推定できないときの進行推定経路の表示について説明する。たとえば、図4(a)に示すように、車両は道路22dを走行しており、車両前方にはT字路の分岐路23bが存在するとする。この場合、分岐路23bから分岐している道路22e,22fは同じ種別の道路であるので、道路種別からどちらの道路22e,22fに車両は進行するか推定できない。また、道路22dのリンクと道路22eのリンクとの間のリンク角度は90°である。一方、道路22dのリンクと道路22fのリンクとの間のリンク角度も90°である。したがって、道路のリンク角度からも車両がどちらの道路22e,22fを進行するかを推定することはできない。この場合は、分岐点23bまたは分岐点23bの手前まで、車両が進行する経路を推定するにとどめる。つまり、図4(a)に示すように、進行推定経路24bは、分岐点23bまで、または分岐点23bの手前まで表示することになる。また、このような場合、自動制動制御装置1がどこまで、車両が進行する道路を推定しているのかをユーザが認識できるようにするため、拡大地図30bには、進行推定経路24bとともに進行推定経路24bの終了点(制御終了点)までの距離を示したインジケータ31aが表示される。インジケータ31aでは、車両と制御終了点との間の距離をバーの長さで表示する。車両が、制御終了点に近づくにしたがってバーの長さは短くなる。
【0024】
また、図4(b)に示すように、Y字路の分岐点23cより先の道路22h,22iがともに細街路である場合は、上述したように細街路は車両進行を推定する道路から除外されるため、分岐点23cより先の進路は推定されない。したがって、進行推定経路24cは、分岐点23cまで、または分岐点23bの手前までしか表示されない。この場合も、分岐点23cより先の進路は推定されないので、車両と制御終了点との間の距離を表示したインジケータ31aが表示される。
【0025】
次に、本発明の一実施形態における自動制動制御装置1の進行推定経路の表示処理について図5〜7のフローチャートを参照して説明する。図5〜7の処理は、表示モニタ16の表示画面に自車位置周辺の地図20を表示するとスタートするプログラムを実行して制御回路11において行われる。
【0026】
ステップS501では、現在地検出装置14によって、車両の現在地を検出する。ステップS502では、車両の現在地から所定距離先(たとえば、500m先)までの車両進行方向の道路を特定し、特定した道路の分岐点を検出する。
【0027】
ステップS503では、車両進行方向の道路に分岐点が存在するかを判定する。存在する場合はステップS503が肯定判定され、ステップS504へ進む。存在しない場合はステップS503が否定判定され、ステップS507へ進む。ステップS504では、分岐点より分岐する道路のうち車両が進行すると推定される道路を選択する。道路の選択は、上述したように道路種別と分岐点前後の道路のリンク角度に基づいて実行する。
【0028】
ステップS505では、車両が進行すると推定される道路が選択できたかを判定する。選択できた場合はステップS505が肯定判定され、ステップS506へ進む。選択できなかった場合(たとえば、図4(a),(b)のような場合)はステップS505が否定判定され、ステップS508へ進む。ステップS506では、選択された道路を通過する、自車位置から所定距離(たとえば、500m)までの車両進行が推定される経路を進行推定経路として表示する。
【0029】
ステップS507では、自車位置から所定距離までの車両進行が推定される経路を進行推定経路として表示する。ステップS508では、自車位置から分岐点までの車両進行が推定される経路を進行推定経路として表示する。
【0030】
図6のステップS601では、車両の現在地を検出する。ステップS602では、車両の現在地から分岐点までの距離を算出する。ステップS603では、分岐点までの距離が250m以下であるかを判定する。分岐点までの距離が250m以下の場合はステップS603が肯定判定され、ステップS604へ進む。分岐点までの距離が250mを越える場合はステップS603が否定判定され、図5のステップS504へ戻る。ステップS604では、分岐点の拡大地図を地図画面内に表示しているかを判定する。表示している場合はステップS604が肯定判定され、ステップS608へ進む。表示されていない場合はステップS604が否定判定され、ステップS605へ進む。
【0031】
ステップS605では、図3に示すように、分岐点周辺の拡大地図を表示する。ステップS606では、進行推定経路を分岐点までしか表示しない場合は、制御終了点までの距離を示すインジケータを表示する。ステップS607では、分岐点より分岐する道路のうちの進行推定経路として推定されていない道路に沿って警告アイコン32を表示する。
【0032】
ステップS608では、車両の現在地を検出する。ステップS609では、分岐点までの距離を算出する。ステップS610では、分岐点までの距離が20m以下であるか否かを判定する。分岐点までの距離が20m以下の場合はステップS610が肯定判定され、図7のステップS701へ進む。分岐点までの距離が20mを越える場合はステップS610が否定判定され、図5のステップS504へ戻る。
【0033】
図7のステップS701では、分岐点より進行推定経路として推定されていない道路に進入する場合は運転者の操作でブレーキを作動させなければならない旨の音声ガイダンスをスピーカ17から出力する。ステップS702では、車両の現在地を検出する。ステップS703では、分岐点までの距離を算出する。
【0034】
ステップS704では、車両は分岐点を通過したかを判定する。通過した場合はステップS704が肯定判定され、ステップS705へ進む。まだ通過していない場合はステップS704が否定判定され、ステップS702へ戻る。ステップS705では、拡大地図、表示したインジケータおよびアイコンを消去する。そして、リターンする。
【0035】
以上の実施形態による自動制動制御装置1は次のような作用効果を奏する。
(1)自動制動制御の基礎とされる進行推定経路24a〜24cが表示モニタ16に表示される。したがって、自動制動により車両は減速するのか、または運転者の操作で車両を減速しなければならないかが容易にわかる。
【0036】
(2)車両進行方向に分岐点23aがある場合、道路種別、および分岐点前後の道路に対応する2つのリンクのなす角度、すなわち、リンク角度に基づいて車両が進行する進行推定経路24aを推定する。車両は、幅員の大きな道路を道なりに進行することが多いので、精度よく車両が進行する進行推定経路24aを推定することができる。
【0037】
(3)道路種別、および分岐点前後の道路に対応する2つのリンクのなす角度、すなわちリンク角度に基づいて分岐点23b,23cを通過する進行推定経路を推定できないときは、進行推定経路24b,24cを分岐点までしか推定しない。したがって、不正確な進行推定経路が推定されるのを防止することができる。
【0038】
(4)進行推定経路24a〜24cは、車両進行方向を推定した範囲で途切れるので、自動制動制御装置1は、どこまで道路の形状を検出したかを容易に把握することができる。特に広域地図を表示した場合に便利である。
【0039】
(5)車両が分岐点手前250mに到達すると、進行推定経路24a〜24c以外の道路に沿って、運転者の操作でブレーキをかけなければならないことを示す警告アイコン32を表示した。したがって、警告アイコン32により運転者の操作で車両を減速する必要があることを認識できる。
【0040】
(6)分岐点24aに20mまで接近すると、進行経路以外の道路を進行する場合は、運転者の操作で車両の制動を実行しなければならないことを通知する音声ガイダンスをスピーカ17より出力するようにした。したがって、アイコン表示などを運転者が見落とした場合でも、進行推定経路以外の分岐路22cへ進行する場合は運転者のブレーキ操作が必要であることを確実に運転者に報知できる。
【0041】
(7)道路種別、および分岐点前後の道路に対応する2つのリンクのなす角度、すなわちリンク角度に基づいて分岐点23b,23cを通過する進行推定経路を推定できないときは、制御終了点までの距離をインジケータ31aで表示する。したがって、運転者のブレーキ操作のタイミングを容易に把握することができる。また、インジケータ31aが表示されることにより、通常より短い距離しか進行推定経路が推定されないことを認識することができる。
【0042】
以上の実施の形態の自動制動制御装置1を次のように変形することができる。
(1)図8(a)に示すように、分岐点23dより分岐する道路22j〜22oが4つ以上のときは、分岐点23dまで、または分岐点23dの手前までしか進行推定経路24dを表示しないようにしてもよい。分岐点23dより分岐する道路の数が多くなると、通過する道路22k〜22oの推定が外れる確率が高くなるからである。分岐点23dより先の道路22k〜22oについては、運転者の操作でブレーキをかけなければならないので、警告アイコン32を表示する。この場合も、分岐点23dより先の進路は推定されないので、車両と制御終了点との間の距離を表示したインジケータ31aが表示される。
【0043】
(2)図8(b)に示すように、車両がクランク22pに進入するときは、クランク22pに進入する地点(クランクポイント)23eまで、またはその手前までしか進行推定経路24eを表示しないようにしてもよい。現在地の検出精度の関係で、クランク22pにおける自動制動が難しいためである。たとえば、検出した車両の現在地が実際の現在地と異なったため、クランク22pのコーナを曲がる直前であるにもかかわらず自動的に車両が減速しない場合がある。クランク22pでは、運転者の操作でブレーキをかけなければならないので、警告アイコン32を表示する。この場合も、クランクポイント23eより先の進路は推定されないので、車両と制御終了点との間の距離を表示したインジケータ31aが表示される。
【0044】
(3)所定の目的地までの推奨経路を探索した場合、図9(a)に示すように、進行推定経路24aとともに推奨経路25aを表示するようにしてもよい。進行推定経路24aを探索するアルゴリズムと、推奨経路25aを推定するアルゴリズムとが異なる場合、常に進行推定経路24aと推奨経路25aとが一致するとは限らない。このような場合、推奨経路25aにしたがって走行すると自動制動が実行されないことを認識することができる。進行推定経路24bと推奨経路25bとは、それらが識別できるようにするため、表示色など異なる表示形態で表示される。
【0045】
また、進行推定経路24bと推奨経路25bとが一致する場合、図9(b)に示すように、拡大地図30bには推奨経路25bの一致する部分を省略するようにしてもよい。進行推定経路24bと推奨経路25aとが同じ道路に表示されると拡大地図30bが見づらくなるが、上記のようにすることによって見やすくなる。
【0046】
進行推定経路24bと推奨経路25bとをさらに見やすくするため、図10に示すように、進行推定経路24bおよび推奨経路25bを表示した地図20と、進行推定経路24bを表示した拡大地図30bと、推奨経路25bを表示した拡大地図100bとの3分割画面で推奨経路25bおよび進行推定経路24bを表示するようにしてもよい。
【0047】
(4)表示モニタ16に進行推定経路24aを表示するとともに、または表示する代わりに、ヘッドアップディスプレイを用いてフロントウインドシールドガラスに進行推定経路41a,41bを表示するようにしてもよい(図11参照)。図11に示すように、ヘッドアップディスプレイを用いてフロントウインドシールドガラスに表示する場合は、進行推定経路24aは、点滅する矢印41a,41bで表示される。また、進行推定経路24aとして推定されない道路22cは矩形41cで表示される。運転中、表示モニタ16をわざわざ見る必要がないので便利である。進行推定経路が、分岐点まで、または分岐点の手前までしか表示されない場合は、制御終了点までの距離を示すインジケータも表示される。
【0048】
また、図9(b)に示す場合と同様に、図12に示すようにヘッドアップディスプレイを用いて、進行推定経路41dとともに推奨経路41eをフロントウインドシールドガラスに表示するようにしてもよい。このように、ヘッドアップディスプレイを用いてフロントウインドシールドガラスに推奨経路41を表示した場合においても、推奨経路25bにしたがって走行すると自動制動を実行されないことを認識することができる。この場合も上述した音声ガイダンスを行ってもよい。
【0049】
(5)図13に示すように、スピードメータ51を液晶パネル50で表示する場合、進行推定経路51a,51bをその液晶パネル50に表示するようにしてもよい。スピードメータ51で車速を確認するときに、自動制動を実行する経路も一緒に確認することができ便利である。この場合も上述した音声ガイダンスを行ってもよい。
【0050】
(6)車両が分岐点23aに近づいたときに、スピーカよ17より音声ガイダンスを出力したが、車両が進行推定経路24aから外れたときに音声ガイダンスを出力するようにしてもよい。この場合、「自動的にブレーキが作動する経路から外れました。」など、車両が進行推定経路24aから外れた旨を通知する音声ガイダンスがスピーカ17から出力される。また、「この先はご自身でブレーキ制動をしてください。」など、運転者の操作でブレーキをかけなければならない旨を通知する音声ガイダンスをスピーカ17から出力するようにしてもよい。
【0051】
(7)車両が進行推定経路24aから外れた後、進行推定経路を再び推定し、前方にコーナがあるとき、自動制動制御装置1が自動的に制動を行うことを音声ガイダンスするようにしてもよい。再びコーナにおいて自動的に車両が減速するようになったことを運転者に通知することができ、便利である。また、車両が進行推定経路24aから外れた後、進行推定経路を再び推定し、車両が再び推定した進行推定経路を走行することになったとき、自動制動制御装置1が自動的に制動を行うことを音声ガイダンスするようにしてもよい。この場合も、再びコーナにおいて自動的に車両が減速するようになったことを運転者に通知することができ、便利である。自動制動制御装置1が進行推定経路を再び推定した場合は、再び推定した進行推定経路が表示モニタ16に表示される。
【0052】
(8)道路種別および分岐前後の道路のリンク角度に基づいて、分岐点から進行する道路を推定するようにしたが、道路種別のみ、または道路のリンク角度のみに基づいて分岐点を通過した後進行する道路を推定するようにしてもよい。
【0053】
(9)道路種別および分岐前後の道路のリンク角度に基づいて、分岐点から進行する道路を推定するようにしたが、道路種別のみ、または道路のリンク角度のみに基づいて分岐点を通過した後進行する道路を推定するようにしてもよい。
【0054】
(10)音声ガイダンスを行わずに、進行推定経路24a〜24cおよび警告アイコン32の表示によって、運転者の操作でブレーキをかけなければならない道路を運転者に通知するようにしてもよい。また、進行推定経路24a〜24cおよび警告アイコン32を表示せず、音声ガイダンスによって運転者の操作でブレーキをかけなければならない道路を運転者に通知するようにしてもよい。
【0055】
(11)道路種別、および分岐点前後の道路に対応する2つのリンクのなす角度、すなわちリンク角度に基づいて分岐点23b,23cを通過する進行推定経路を推定できないときは、制御終了点までの距離をインジケータ31aで表示した。しかし、制御終了点までの距離を音声によって通知するようにしてもよい。このようにしても、運転者のブレーキ操作のタイミングを容易に把握することができたり、通常より短い距離しか進行推定経路が推定されないことを認識したりすることができる。また、制御終了点までの距離をインジケータ31aと音声との両方によって通知するようにしてもよい。
【0056】
(12)図14に示すように、自動制動制御装置1Aをナビゲーション装置141とBCU(Brake Control Unit)142とをCAN(Control Area Network)で接続して構成するようにしてもよい。ナビゲーション装置141は、地図データより道路の曲率値(曲率半径など)を算出し、BCU142に送信する。BCU142は、ナビゲーション装置141から送信された曲率値(曲率半径など)より減速度などを算出し、その減速度に基づいて車両を制動制御する。
【0057】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0058】
特許請求の範囲の要素と実施の形態との対応関係を説明する。
本願発明の現在地検出手段は現在地検出装置14に対応し、経路推定手段は制御回路11に対応する。経路表示手段は制御回路11および表示モニタ16に対応し、コーナ検出手段は制御回路11、ディスクドライブ110およびDVD−ROM11に対応する。車速制御手段は制御回路11および制動装置19に対応し、探索手段は制御回路11に対応する。音声通知手段は制御回路11およびスピーカ17に対応する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係になんら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態の自動制動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は表示モニタの表示画面に表示された自車位置周辺の地図を説明するための図であり、図2(b)は図2(a)の地図の広域地図を説明するための図である。
【図3】図3(a)は分岐点までの距離が250mになったときに表示する表示画面を説明するための図であり、図3(b)は分岐点までの距離が20mになったときに表示する表示画面を説明するための図である。
【図4】図4(a)は車両がT字路に接近したときに表示する表示画面を説明するための図であり、図4(b)は車両がY字路の接近したときに表示する表示画面を説明するための図である。
【図5】進行推定経路を表示する表示処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】分岐点の拡大地図を表示する表示処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】分岐点から20m以内の位置から分岐点を通過するまでの分岐点の拡大地図を表示する表示処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8(a)は分岐点から分岐する道路数が4以上の場合の進行推定経路の表示を説明するための図であり、図8(b)は車両進行方向にクランクが存在する場合の進行推定経路の表示を説明するための図である。
【図9】図9(a)は進行推定経路とともに推奨経路を表示した表示画面を説明するための図であり、図9(b)は進行推定経路と重なる部分を省略して推奨経路を表示した表示画面を説明するための図である。
【図10】進行推定経路および推奨経路を表示した地図と、進行推定経路を表示した拡大地図と、推奨経路を表示した拡大地図との3分割画面で推奨経路および進行推定経路とを表示した表示画面を説明するための図である。
【図11】ヘッドアップディスプレイを用いてフロントウインドシールドガラスに表示した進行推定経路を説明するための図である。
【図12】ヘッドアップディスプレイを用いてフロントウインドシールドガラスに表示した進行推定経路と推奨経路とを説明するための図である。
【図13】メータ類を表示した液晶パネルにおける進行推定経路の表示を説明するための図である。
【図14】ナビゲーション装置とBCUとをCANで接続して構成した自動制動制御装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1,1A 自動制動制御装置
11 制御回路
14 現在地検出装置
16 表示モニタ
17 スピーカ
19 制動装置
21 自車位置マーク
22a〜22p,41c,41f,51c 道路
23a〜23d 分岐点
23e クランクポイント
24a〜24e,41a,41b,41d,51a,51b 進行推定経路
25a,25b,41e 推奨経路
31a インジケータ
32 警告アイコン
51 スピードメータ
110 ディスクドライブ
111 DVD−ROM
141 ナビゲーション装置
142 BCU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在地を検出する現在地検出手段と、
前記検出された車両の現在地に基づいて前記車両が進行する進行経路を推定する経路推定手段と、
前記経路推定手段によって推定された進行経路を表示する経路表示手段と、
前記進行経路上のコーナを検出するコーナ検出手段と、
前記車両が前記検出されたコーナに進入するときの前記車両の速度を制御する車速制御手段とを備えることを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動制動制御装置において、
前記経路推定手段は、前記進行経路上に分岐点がある場合、前記分岐点より分岐する道路の種別および前記分岐点前後の道路に対応する一対のリンクのなすリンク角度の少なくとも一方に基づいて、前記車両が分岐点を通過後に進行する進行経路を推定することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動制動制御装置において、
前記経路推定手段は、前記進行経路を推定できないとき、前記分岐点まで、または前記分岐点の手前まで前記進行経路を推定することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の自動制動制御装置において、
前記経路推定手段は、前記分岐点から3つ以上の道路が分岐しているとき、前記分岐点まで、または前記分岐点の手前まで前記進行経路を推定することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動制動制御装置において、
前記経路推定手段は、前記進行経路上にクランクがある場合、前記クランクの手前まで前記進行経路を推定することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、
さらに、前記現在地検出手段によって検出された現在地から、前記推定された進行経路の終点までの距離を音声あるいは表示の少なくとも一方で通知することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、
前記経路表示手段は、表示モニタ、ヘッドアップディスプレイによるフロントウインドシールドガラスおよびスピードメータを表示する液晶ディスプレイのいずれかに前記進行経路を表示することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、
目的地までの推奨経路を探索する探索手段を備え、
前記経路表示手段は、前記進行経路とともに、前記進行経路と表示形態を変えて前記推奨経路を表示することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、
前記進行経路以外の分岐道路へ進入する場合は、運転者の操作で前記車両の制動を実行する必要があることを音声にて通知する音声通知手段を備えることを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の自動制動制御装置において、
前記経路表示手段は、前記進行経路以外の分岐道路に沿って、運転者の操作で前記車両の制動を実行する必要があることを示すアイコンを表示することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項11】
車両の現在地を検出する現在地検出手段と、
前記検出された車両の現在地に基づいて前記車両が進行する進行経路を推定する経路推定手段と、
前記進行経路上のコーナを検出するコーナ検出手段と、
前記車両が前記コーナに進入するときの前記車両の速度を制御する車速制御手段と、
前記車両が前記進行経路から外れると、前記車両が進行経路から外れたことを音声によって通知する音声通知手段とを備えることを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の自動制動制御装置において、
前記音声通知手段は、経路を外れると運転者の操作で前記車両の制動を実行する必要があることを通知することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の自動制動制御装置において、
さらに、前記車両が前記進行経路から外れた後に、新たな進路推定を行い、前記新たに進路推定された推定経路を前記車両が走行していることを音声あるいは表示の少なくとも一方で通知することを特徴とする自動制動制御装置。
【請求項14】
車両の現在地を検出する現在地検出手段と、
前記検出された車両の現在地に基づいて前記車両が進行する進行経路を推定する経路推定手段と、
前記進行経路上のコーナを検出するコーナ検出手段と、
前記車両が前記コーナに進入するときの前記車両の速度を制御する車速制御手段と、
前記車両が前記進行経路から外れると、運転者の操作で前記車両の制動を実行する必要があることを音声によって通知する音声通知手段とを備えることを特徴とする自動制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−114778(P2008−114778A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301629(P2006−301629)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】