説明

自動券売機

【課題】定期券を基にして特急券を発行できるようにする。
【解決手段】自動券売機の本体に挿入された在来線の定期券に記録されているデータを読取る読取手段と、読取られたデータ中から前記定期券の定期券乗車区間を抽出する定期券乗車区間抽出手段と、抽出された定期券乗車区間の全部又は一部を含む優等列車線の優等列車乗車区間を抽出する優等列車乗車区間抽出手段と、抽出された定期券乗車区間及び優等列車乗車区間を照合し、その優等列車乗車区間に含まれないその定期券乗車区間外の不足区間を抽出する不足区間抽出手段と、抽出された不足区間の運賃を算出する算出手段と、抽出された優等列車乗車区間に係る料金及び不足区間の運賃の金額を満たす金銭が前記自動券売機の本体に投入されたときにその優等列車乗車区間に乗車できる所定の乗車券を発行する発行手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動券売機に係り、特に、定期券を基にして優等列車線に乗車できる特急券等の料金券を発行できるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、特開2001−319249号公報などに示される料金券(以下、特急券を例にして説明する。)を発行できる自動券売機は、その自動券売機の本体に特急券の発駅及び着駅の入力を行うとともに、その特急券の料金とその乗車区間の運賃の合計金額を満たす金銭(本発明における金銭には、プリペイドカード等のカード類も含まれる。)の投入を条件に発行されるように構成されている。
【0003】
また、特急券の発駅が利用者(旅客)の所持している定期券(本発明で定期券というときは、磁気券又は無線通信機能を備えたICカードからなる非接触券の両方を含んでいる。)の乗車区間内で、かつ、その特急券の乗車区間が定期券の乗車区間内であれば、利用者は、乗車券を購入することなく特急券のみを購入し、その購入した特急券及び定期券を用いて優等列車(以下、特急列車を例にして説明する。)に乗車することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の特急券(料金券)を発行することのできる自動券売機は、定期券の乗車区間内に特急券の乗車区間が含まれているときは、その定期券の乗車区間内に設置されている自動券売機で乗車券を購入することなく特急券のみを購入して特急列車に乗車することができるが、特急券の乗車区間の一部の乗車区間の定期券を有している場合は、特急券を購入することができないという不便があった
【0005】
図4の路線図を基にさらに説明すると、利用者が特急列車で優等列車内のA駅からB駅に乗車しようとしており、しかも、その利用者が優等列車線と平行な在来線のa1 駅及びa3 駅間を乗車区間とする定期券を所持しているときは、A駅に設置されている自動券売機では購入できず、利用者は、係員窓口において、A駅からB駅までの特急券とA駅からa1 駅までの乗車券及びa3 からB駅までの乗車券を購入してA駅から特急列車に乗車しなければならなかった。なお、図4に示される路線図は、説明を容易にするために、優等列車線と在来線とを別々に示しているが、一つの線路を特急列車も普通列車も走行する場合であってもよい。
【0006】
そこで、本発明は、上記の不便を解消するためになされたものであって、その目的は、利用者の所持している定期券を基に特急券を購入できるようにした自動券売機を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る自動券売機は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、自動券売機の本体に挿入された在来線の定期券に記録されているデータを読取る読取手段と、読取られたデータ中から前記定期券の定期券乗車区間を抽出する定期券乗車区間抽出手段と、抽出された定期券乗車区間の全部又は一部を含む優等列車線の優等列車乗車区間を抽出する優等列車乗車区間抽出手段と、抽出された定期券乗車区間及び優等列車乗車区間を照合し、その優等列車乗車区間に含まれないその定期券乗車区間外の不足区間を抽出する不足区間抽出手段と、抽出された不足区間の運賃を算出する算出手段と、抽出された優等列車乗車区間に係る料金及び不足区間の運賃の金額を満たす金銭が前記自動券売機の本体に投入されたときにその優等列車乗車区間に乗車できる所定の乗車券を発行する発行手段と、を有することを特徴としている。
本発明の請求項2に記載の自動券売機は、抽出された定期券乗車区間の発駅又は着駅が抽出された優等列車乗車区間の発駅又は着駅と一致しないときに、その定期券乗車区間の発駅又は着駅に近い優等列車線の停車駅を表示させる停車駅表示手段を有することを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の自動券売機は、表示される停車駅は、定期券乗車区間の発駅又は着駅から所定範囲内の複数の停車駅であることを特徴としている。本発明の請求項4に記載の自動券売機は、表示された複数の停車駅の中から所定の停車駅を選択することを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、一実施の形態に係る自動券売機の本体(以下、「券売機本体」という。)aの正面図である。この券売機本体aの正面中央部には、タッチパネル式の表示画面1と、その表示画面1の左隣りには、係員と応答したいときに押下される呼出釦2a及び乗車券の購入動作を途中で中止したいときに押下される取消釦2bが設けられている。
【0009】
券売機本体aの正面の下部上段には、乗車券の購入代金をプリペイドカード等のカード類で支払うときのカード、及び本発明に係る定期券イを挿入するカード挿入口3a、乗車券の購入代金を紙幣で支払うときの紙幣を挿入する紙幣投入口3b、及びその購入代金を硬貨で支払うときの硬貨を投入する硬貨投入口3cが設けられている。
【0010】
券売機本体aの正面下段には、釣銭硬貨の排出口4a、釣札の排出口4b、及び乗車券が発行される発券口5が設けられている。図1中、Cは、マイクロコンピュータ(CPU)を中心に形成された、券売機本体aを統括的に制御する制御器であって、その電気的構成は後述する図2に示されている。
【0011】
図2は、券売機本体aの制御器Cの電気的構成を示している。この制御器CのCPU10は、第1メモリ11に格納されている乗車券発行用の運賃データ及び料金データ等の所定のデータ及び第2メモリ12に格納されている制御プログラムを用いて演算処理を行うように構成されている。また、このCPU10は、表示画面1の表示を駆動制御する可変表示部13と、表示画面1の入力を駆動制御するタッチパネル入力部14と、硬貨投入口3cから投入された硬貨を検銭処理する硬貨処理部15と、紙幣挿入口3bから挿入された紙幣を検銭処理する紙幣処理部16と、券面に所定の内容を印字するとともに、所定の磁気データを記録した乗車券を作成して発券口5に送出する発券処理部17と、券売機本体aの裏面側に設けられ、券売機本体aを発券モード等の各種のモードに設定したり、あるいは券売機本体aの保守点検時に係員によって操作されるテンキーを有する係員操作部18と、釣銭の排出口4a及び釣札の排出口4bに釣銭を排出する釣銭処理部19と、カード挿入口3aに挿入されたカード(図示せず)又は定期券イを処理するカード・定期券処理部20と、座席指定券を含む特急券を管理制御するホストコンピュータからなる上位機器(図示せず)と通信を行うための通信制御部21とが接続されている。なお、券売機本体aが無線通信機能を備えたICカードからなる非接触券も使用可能な区間で用いられているとき、カード挿入口3aには、図示しないリーダライタのアンテナが設けられる。
【0012】
以下、図3のフローチャート及び図4の路線図を用いて制御動作を説明する。今、券売機本体aがA駅に設置されているものとし、利用者の所持する在来線の定期券イの定期券乗車区間は、a1 駅からa3 駅とする。そして、A駅に設置されている券売機本体aのカード挿入口3aに定期券イが挿入されると(ステップ100肯定。以下、ステップを「S」とする。)、カード・定期券処理部20によりその定期券イに記録されているデータが読取られ、その読取られたデータを基にして定期券乗車区間(a1 駅〜a3 駅)が抽出される(S102)。
【0013】
抽出された定期券イの定期券乗車区間が優等列車線に含まれていないときは、その定期券イは特急列車の乗車区間の運賃に当てることができないから、その定期券イを基にした特急券の購入はできないので、券売機本体aの表示画面1に定期券イを基にした特急券の購入ができない旨の案内が行われる(S104否定、S105)。
【0014】
抽出された定期券イの定期券乗車区間の一部又は全部が優等列車線に含まれるときは(S104肯定)、その定期券イを特急券の運賃に当てることができるので特急券の発行が可能である。この場合、定期券乗車区間内に特急券の発駅及び着駅が含まれるとき(例えば、図4の路線図において、購入しようとしている特急券の発駅がA駅で着駅がB駅のときに、定期券乗車区間がA駅〜B駅以降(例えばC駅))であれば、その定期券イは、特急券の乗車区間(A駅〜B駅)の運賃を満たしているの、A駅からB駅までの特急料金を券売機本体aの硬貨投入口3c等に投入すると、特急券の発行を受けることができる(S106肯定、S108、S110肯定、S112、S114肯定、S116)。なお、このように、特急料金の投入のみで特急券が購入できる場合であっても、図3のフローチャートでは省略されているが、優等列車(特急列車)の停車駅の中からA駅及びB駅が選択される。具体的には、表示画面1に表示された駅群の中のA駅及びB駅が押下(タッチ)される。
【0015】
定期券を特急券の乗車区間の運賃に当てることができる場合であっても、図4の路線図に示されるように、定期券イの乗車区間が乗車しようとする特急列車の発駅又は着駅と一致しないときは(S106否定)、定期券イの乗車区間(図4の例では、a1 駅〜a3 駅)の発駅又は着駅から一定範囲内の優等列車の停車駅群がその発駅又は着駅に近い順から順に表示画面に表示される(S118)。したがって、利用者は、表示された停車駅群の中から所定の発駅又は着駅を選択して特急券の乗車区間を決定することができる(S120肯定、S110肯定〜S116。又はS120否定、S122、S118、S120肯定、S110肯定〜S116。)。図4の例では、特急券の発駅としてA駅が選択され、着駅としてB駅が選択される。この場合において、定期券イで特急券の運賃を充当できない部分の不足運賃(A駅〜a1 駅及びa3 駅〜B駅)は、券売機本体aに投入する必要があるとともに、特急料金(A駅〜B駅間の特急料金)の投入も必要とされる。
【0016】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の自動券売機は、自動券売機の本体に挿入された在来線の定期券に記録されているデータを読取る読取手段と、読取られたデータ中から前記定期券の定期券乗車区間を抽出する定期券乗車区間抽出手段と、抽出された定期券乗車区間の全部又は一部を含む優等列車線の優等列車乗車区間を抽出する優等列車乗車区間抽出手段と、抽出された定期券乗車区間及び優等列車乗車区間を照合し、その優等列車乗車区間に含まれないその定期券乗車区間外の不足区間を抽出する不足区間抽出手段と、抽出された不足区間の運賃を算出する算出手段と、抽出された優等列車乗車区間に係る料金及び不足区間の運賃の金額を満たす金銭が前記自動券売機の本体に投入されたときにその優等列車乗車区間に乗車できる所定の乗車券を発行する発行手段とからなるので、定期券を基にして優等列車(特急列車)に乗車できる乗車券(特急券)の発行を受けることができ、利用者の利便向上を図ることができる。
本発明の請求項2に記載の自動券売機は、抽出された定期券乗車区間の発駅又は着駅が抽出された優等列車乗車区間の発駅又は着駅と一致しないときに、その定期券乗車区間の発駅又は着駅に近い優等列車線の停車駅を表示させる停車駅表示手段とからなるので、優等列車の発駅又は着駅を容易に選択することができる。
本発明の請求項3に記載の自動券売機は、表示される停車駅は、定期券乗車区間の発駅又は着駅から所定範囲内の複数の停車駅であるので、優等列車の発駅又は着駅を容易に選択することができる。
本発明の請求項4に記載の自動券売機は、表示された複数の停車駅の中から所定の停車駅を選択するので、優等列車の発駅又は着駅を容易に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動券売機の正面図である。
【図2】制御器の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】制御動作を示すフローチャートである。
【図4】路線図である。
【符号の説明】
1 表示画面
2a 呼出釦
2b 取消釦
3a カード挿入口
3b 紙幣投入口
3c 硬貨投入口
4a,4b 排出口
5 発券口
C 制御器
a 自動券売機の本体(券売機本体)
イ 定期券

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動券売機の本体に挿入された在来線の定期券に記録されているデータを読取る読取手段と、
読取られたデータ中から前記定期券の定期券乗車区間を抽出する定期券乗車区間抽出手段と、
抽出された定期券乗車区間の全部又は一部を含む優等列車線の優等列車乗車区間を抽出する優等列車乗車区間抽出手段と、
抽出された定期券乗車区間及び優等列車乗車区間を照合し、その優等列車乗車区間に含まれないその定期券乗車区間外の不足区間を抽出する不足区間抽出手段と、
抽出された不足区間の運賃を算出する算出手段と、
抽出された優等列車乗車区間に係る料金及び不足区間の運賃の金額を満たす金銭が前記自動券売機の本体に投入されたときにその優等列車乗車区間に乗車できる所定の乗車券を発行する発行手段と、
を有することを特徴とする自動券売機。
【請求項2】
請求項1に記載の自動券売機において、抽出された定期券乗車区間の発駅又は着駅が抽出された優等列車乗車区間の発駅又は着駅と一致しないときに、その定期券乗車区間の発駅又は着駅に近い優等列車線の停車駅を表示させる停車駅表示手段を有することを特徴とする自動券売機。
【請求項3】
請求項2に記載の自動券売機において、表示される停車駅は、定期券乗車区間の発駅又は着駅から所定範囲内の複数の停車駅であることを特徴とする自動券売機。
【請求項4】
請求項3に記載の自動券売機において、表示された複数の停車駅の中から所定の停車駅を選択することを特徴とする自動券売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2004−110261(P2004−110261A)
【公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−270045(P2002−270045)
【出願日】平成14年9月17日(2002.9.17)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】