説明

自動加振健康器具

【課題】使用者が安定した状態で容易にシートに乗降することができる自動加振健康器具を提供する。
【解決手段】自動加振健康器具1は、主枠22と、シート8と、加振装置30と、制御部80と、補助機構60とを備える。主枠22は、設置面上から所定の高さに支持される。シート8は、主枠22の内側に振動自在に張設される。加振装置30は、シート8の外周縁部に設けられ、シート8の少なくとも中央部を上下方向に振動させる振動力を発生させる。制御部80は、加振装置30の動作を制御する。補助機構60は、シート8の下面に位置する乗降時姿勢と、シート8の下面から離間する使用時姿勢とに姿勢を変更可能である。補助機構60は、乗降時姿勢となることでシート8の沈降を制限して、使用者のシート8への乗降を補助する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が容易に体を振動させることができる自動加振健康器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状または多角形状に形成された枠の内側に、シートを振動自在に張設した健康器具である、所謂トランポリン(登録商標)が知られている。使用者は、トランポリンを用いることで、地面での運動とは異なる様々な運動を行うことができる。使用者は、平衡感覚等の身体能力の向上、および気分の高揚という効果を得ることもできる。よって、トランポリンは、様々な年代の人々に幅広く用いられている。
【0003】
最近では、トランポリンが健康器具またはリハビリ器具として使用されている。具体的には、使用者がトランポリンのシート上に寝た状態で、シートが振動することで、血行の促進、血糖値の減少、平衡感覚の改善等、多くの効用を使用者にもたらすことができる。さらに、使用者自らが他人の補助を要することなくトランポリンの振動を得るための自動加振健康器具も提案された。特許文献1が開示している自動加振健康器具は、加振手段によって自動でシートを上下させる。使用者がシート上に寝た状態で、振動開始の指示を自動加振健康器具に入力することで、振動が開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動加振健康器具のシートは、振動自在な状態で枠に張設されている。従って、使用者がシートに乗り込むと、シートは沈降する。沈降するシートに乗降するのは不安定であるため、使用者は、慎重にシートへ乗り込まなければならなかった。
【0006】
本発明は、使用者が安定した状態で容易にシートに乗降することができる自動加振健康器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動加振健康器具は、設置面上から所定の高さに支持される主枠と、前記主枠の内側に振動自在に張設されるシートと、前記シートの外周縁部に設けられ、前記シートの少なくとも中央部を上下方向に振動させる振動力を発生させる加振手段と、前記加振手段の動作を制御する加振制御手段と、前記シートの下面に位置する乗降時姿勢と、前記シートの下面から離間する使用時姿勢とに姿勢を変更可能であり、前記乗降時姿勢となることで前記シートの沈降を制限して使用者の前記シートへの乗降を補助する補助手段とを備えている。
【0008】
本発明に係る自動加振健康器具は、補助手段によってシートの沈降を制限することができる。使用者は、補助手段によってシートの沈降が制限されている状態でシートへの乗降を行うことで、容易且つ安全にシートに乗降することができる。
【0009】
前記自動加振健康器具は、前記補助手段の姿勢が前記使用時姿勢となっているか否かを検出する検出手段と、前記補助手段の姿勢が前記使用時姿勢となっていないことが前記検出手段によって検出されている場合に、前記加振手段による加振動作を禁止する加振禁止手段とをさらに備えてもよい。この場合、自動加振健康器具は、シートの沈降が制限された状態のまま加振動作を実行することがない。よって、使用者は、より安全に振動を得ることができる。自動加振健康器具は、動作不良の発生等の不具合を起こす可能性も低い。
【0010】
前記自動加振健康器具は、前記補助手段の姿勢を前記乗降時姿勢または前記使用時姿勢に変更する姿勢変更手段と、前記姿勢変更手段による前記補助手段の姿勢の変更を制御する姿勢制御手段とをさらに備えてもよい。この場合、使用者が自ら補助手段の姿勢を変更する必要はない。よって、使用者は、より容易且つ安全に自動加振健康器具を使用することができる。
【0011】
前記自動加振健康器具は、使用者からの加振開始の指示を受け付ける受付手段をさらに備えてもよい。前記姿勢制御手段は、前記受付手段によって前記加振開始の指示が受け付けられた場合に、前記補助手段の姿勢を前記使用時姿勢に変更してもよい。使用者が加振開始の指示を入力すると、補助手段の姿勢が自動的に使用時姿勢に変更される。よって、使用者は、シート上に安定した状態で乗り込むことができることに加え、さらに容易に自動加振健康器具を使用することができる。
【0012】
前記自動加振健康器具は、前記加振手段による前記シートの加振動作が終了したか否かを判断する判断手段をさらに備えてもよい。前記姿勢制御手段は、前記判断手段によって加振動作が終了したと判断された場合に、前記補助手段の姿勢を前記乗降時姿勢に変更してもよい。この場合、加振動作が終了すると共に、補助手段の姿勢が乗降時姿勢に変更される。よって、使用者は、特段の作業を行わなくても安全にシートから降りることができる。
【0013】
前記補助手段は、前記シートの下方に配置され、上面が設置面に平行なシート支持部と、前記シート支持部を昇降させるリフトとを備えてもよい。この場合、自動加振健康器具は、シート支持部を上昇させてシートの下面に位置させることで、シートの沈降を容易に制限し、安定性を高めることができる。自動加振健康器具は、シート支持部を昇降させるだけで、乗降時姿勢と使用時姿勢とを容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自動加振健康器具1の外観斜視図である。
【図2】自動加振健康器具1の内部構造を示す斜視図である。
【図3】主枠22およびシート8へのソレノイド31の接続構造を示す斜視図である。
【図4】振動検出器50の斜視図である。
【図5】補助機構60の斜視図である。
【図6】自動加振健康器具1の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】制御部80で行われる駆動処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具現化した一実施の形態である自動加振健康器具1について、図面を参照して説明する。図1および図2の左下側を、自動加振健康器具1の正面側とする。図1および図2の右上側を、自動加振健康器具1の背面側とする。図1および図2の右下側を、自動加振健康器具1の右側とする。図1および図2の左上側を、自動加振健康器具1の左側とする。以下参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0016】
図1を参照して、自動加振健康器具1の構成について概略的に説明する。自動加振健康器具1は、略直方体状の本体2と、乗降補助具3とを備える。乗降補助具3は、第一段部4、第二段部5、および左右の手すり6を備える。第一段部4は、本体2よりも高さが低い箱状の部材である。第二段部5は、第一段部4よりもさらに高さが低い箱状の部材である。第一段部4は、第二段部5を内部に収納することができる。よって、使用者は、自動加振健康器具1の使用時には、第二段部5を第一段部4から引き出して踏み台とすることができる。非使用時(例えば、運搬時、待機時等)には、第二段部5を第一段部4の内部に収納してスペースを確保することができる。第一段部4の上面の左右のそれぞれには、逆U字状の手すり6が設けられている。使用者は、手すり6を把持し、且つ第一段部4および第二段部5を踏み台とすることで、容易に自動加振健康器具1に乗降することができる。乗降補助具3は、本体2のいずれの箇所に設置してもよい。
【0017】
本体2は、上面中央に、長方形状のシート8を備える。シート8を振動自在に張設するための構造については、後述する。シート8の背面側には、使用者の頭部を保護するために、弾性を有する頭部クッション9が配設されている。シート8の正面側には、使用者の脚部を保護するために、脚部クッション10が配設されている。本体2の上面、正面、背面、右側面、および左側面のうち、シート8およびクッション9,10が設けられていない部分は、内部にウレタンを備えたカバー11によって覆われている。カバー11も弾性を有するため、使用者はより安全に自動加振健康器具1を使用することができる。本体2の上面の左右のそれぞれには、正面側から背面側へ延びる棒状の手すり12が設けられている。
【0018】
さらに、本体2の背面側には、使用者が加振動作の開始および停止の指示を入力するための操作部13が配設されている。使用者は、シート8に乗り込んでから操作部13を操作して加振動作を開始させることができる。使用者は、シート8の振動中に乗降を行う必要はない。乗降の途中で加振動作が開始されることも無い。よって、使用者は、操作部13がシート8から離間した位置に設置される場合に比べて、安全に乗降を行うことができる。
【0019】
図2を参照して、自動加振健康器具1の内部構造について説明する。自動加振健康器具1の本体2(図1参照)は、支持枠21、主枠22、および複数の柱部23を備える。支持枠21は、平面視略長方形状であり、車輪を備える。支持枠21は、床面に接して自動加振健康器具1を支持する。主枠22は、支持枠21と同様に平面視略長方形状である。複数の柱部23は、主枠22を支持枠21から所定の高さに支持する。主枠22の内側には、複数のリング25が固定されている。主枠22に取り囲まれた空間を覆うように、主枠22よりも小さい長方形状のシート8が配設されている。シート8の外周縁部には、複数の穴26が形成されている。ゴムケーブル28が、リング25とシート8の穴26との間に配設されることで、シート8は上下方向に振動自在に張設されている。
【0020】
主枠22の左右には、加振装置30が設けられている。加振装置30は、シート8の外周縁部を特定のタイミングで引き込むことで、シート8の中央部を上下方向に振動させる。また、主枠22の正面側には、振動検出器50が設けられている。振動検出器50は、シート8の外周縁部の移動距離によって、シート8の上下方向の振動を検出する。さらに、自動加振健康器具1の内部の中央下部には、シート支持部61およびリフト62を備えた補助機構60が配設されている。補助機構60は、シート支持部61を上昇させてシート8の下面に位置させることで、シート8の状態を平坦に保ち、シート8の沈降を制限する。また、自動加振健康器具1の内部には、マイクロコンピュータを備えた制御部80が設けられている。以下、各部の詳細について説明する。
【0021】
図2および図3を参照して、加振装置30について説明する。図2に示すように、加振装置30は、左右対称となる位置に5つずつ配設されたソレノイド31を有する。図3に示すように、主枠22の内側の面(図3の左下側の面)には、L字型の取付金具32が複数箇所に固定されている。取付金具32の内側へ突出する部分には、主枠22と平行な方向に貫通穴33が形成されている。貫通穴33は、円柱状のシャフト34を回動可能に保持する。
【0022】
ソレノイド31は、矩形の取付板36にねじ37によって固定されている。取付板36の下面の主枠22側の端部には、主枠22と平行な方向に延びる貫通穴を有するブロック38が固定されている。取付金具32に保持されたシャフト34は、ブロック38の貫通穴に挿入される。その結果、ソレノイド31は、シャフト34を回転中心として、シート8のシート面の角度に合わせて回転できるように、主枠22に取り付けられている。
【0023】
主枠22の内側の面には、取付板36の外側の端部よりも上方の位置に、棒状の位置決め部材39が内側へ向けて突設されている。ソレノイド31のプランジャ41の先端部が下方へ回動すると、取付板36の上面に配設されたゴム板40が位置決め部材39に接触する。従って、ゴム板40によって騒音および破損の発生が防止され、且つ、シャフト34を回転中心としたソレノイド31の回動範囲が適切に制限される。
【0024】
ソレノイド31のプランジャ41とシート8とは、ゴムケーブル28によって接続されている。ソレノイド31が駆動すると、プランジャ41がゴムケーブル28を介してシート8の端部を断続的に牽引する。その結果、シート8が上下に振動する。また、取付板36は、プランジャ41の移動をガイドするためのガイド部材として機能する。取付板36には、プランジャ41の移動方向と平行な方向を長径とするガイド穴42が形成されている。プランジャ41に固定されたねじ43が、ガイド穴42に移動可能に挿通されている。その結果、プランジャ41の往復移動がガイドされ、且つ、プランジャ41の移動範囲が適切に制限される。よって、自動加振健康器具1は、ソレノイド31の消耗速度を低下させることができる。
【0025】
図4を参照して、振動検出器50について説明する。振動検出器50は、ブラケット51、ロータリエンコーダ52、牽引ばね53、ロープ54、および滑車55を備える。ブラケット51は、柱部23の下部に固定されている。ロータリエンコーダ52は、回転軸57の軸心が主枠22と平行となるように、ブラケット51に固定されている。
【0026】
柱部23と主枠22との接続部分には、主枠22と平行な方向を軸心とする滑車55が配設されている。柱部23の長手方向略中心には、棒状のばね接続部58が固定されており、ばね接続部58に牽引ばね53の一端が接続している。牽引ばね53の他端に接続されたロープ54は、ロータリエンコーダ52の回転軸57に架かり、さらに滑車55に架かって、シート8の外周縁部に固定される。
【0027】
シート8の中央が下方へ沈み込むと、シート8の外周縁部はシート8の中心側(図4の右下側)へ移動し、ロープ54は牽引ばね53の牽引力に抗して引っ張られる。ロータリエンコーダ52の回転軸57は、シート8の外周縁部の移動距離に比例して回転する。一方、沈み込んだシート8の中央が上方への移動を開始すると、シート8の外周縁部は外側(図4の左上側)へ移動する。すると、ロープ54は、牽引ばね53によって引っ張られ、ロータリエンコーダ52の回転軸57が回転する。ロータリエンコーダ52は、回転軸57の回転角度を検出することで、シート8の振動を検出することができる。
【0028】
図5を参照して、補助機構60について説明する。図5の左下側を、補助機構60の正面側とする。図5の右上側を、補助機構60の背面側とする。図5の右下側を補助機構60の右側とし、左上側を補助機構60の左側とする。補助機構60は、シート支持部61およびリフト62を備える。シート支持部61は、シート8と同一の長方形の形状を有する板部材である。リフト62は、基台63と、第一アーム64,65と、第二アーム67,68と、天板69と、電動油圧ポンプ70とを主に備える。
【0029】
基台63は、平面視長方形状に形成され、補助機構60の全体を支持する。天板69は、シート支持部61の底面中央を昇降可能に支持する。右側の第一アーム64の下端は、基台63の右背面の角部に軸支され、上端は天板69の右縁部の略中心に軸支される。同様に、左側の第一アーム65の下端は、基台63の左背面の角部に軸支され、上端は天板69の左縁部の略中心に軸支される。2つの第一アーム64,65は、連結棒66によって互いに固定される。右側の第二アーム67の下端は、前後方向に移動可能な状態で基台63の右縁部に接続し、上端は天板69の右縁部のやや背面側に軸支される。同様に、左側の第二アーム68の下端は、前後方向に移動可能な状態で基台63の左縁部に接続し、上端は天板69の左縁部のやや背面側に軸支される。右側の第一アーム64の略中心と、右側の第二アーム67の略中心とは、連結軸72によって回転可能な状態で連結されている。同様に、左側の第一アーム65の略中心と、左側の第二アーム68の略中心とは、連結軸73によって回転可能な状態で連結されている。
【0030】
電動油圧ポンプ70の後端は、基台63の正面側縁部において、上下方向に揺動可能に軸支されている。電動油圧ポンプ70の出力軸71の先端は、連結棒66に接続する。電動油圧ポンプ70が出力軸71を押し出すと、連結棒66によって連結された第一アーム64,65が回動する。第一アーム64,65が回動すると、第二アーム67,68は、下端を前方に移動させながら、連結軸72,73を中心として回動する。その結果、天板69およびシート支持部61が上昇する。シート支持部61は、上昇してシート8の下面に位置することで、シート8の沈降を制限してシート8を平坦に保つことができる。以下、シート支持部61がシート8の下面に位置している状態の補助機構60の姿勢を、乗降時姿勢という。一方、電動油圧ポンプ70が出力軸71を引き込むと、シート支持部61は下降する。その結果、シート8は上下方向に振動できる状態となる。以下、シート支持部61が昇降範囲の下端に位置している状態の補助機構60の姿勢を、使用時姿勢という。
【0031】
第二アーム68の下端には、リミットスイッチ74が設けられている。電動油圧ポンプ70が出力軸71を引き込み、第二アーム68の下端が基台63の正面側端部まで移動すると、リミットスイッチ74が基台63に接触する。リミットスイッチ74は、基台63に接触することで、補助機構60の姿勢が使用時姿勢となったことを検出する。また、電動油圧ポンプ70が出力軸71を押し出し、シート支持部61がシート8の下面に位置すると、リミットスイッチ74が図示外の接点に接触する。リミットスイッチ74は、接点に接触することで、補助機構60の姿勢が乗降時姿勢となったことを検出する。
【0032】
図6を参照して、自動加振健康器具1の電気的構成について説明する。自動加振健康器具1は、制御部80を備える。制御部80は、マイクロコンピュータを備え、自動加振健康器具1の動作を司る。制御部80には、操作部13、ロータリエンコーダ52、温度センサ77、リミットスイッチ74、電動油圧ポンプ70、スピーカ79、および駆動部90が接続されている。
【0033】
操作部13は、始動ボタン14、停止ボタン15、およびランプ16を備える。操作部13は、始動ボタン14および停止ボタン15が操作された場合に、操作信号を制御部80に出力する。また、操作部13に設けられたランプ16は、シート8への安定した乗降が可能であるか否かを使用者に通知する。ロータリエンコーダ52は、検出した回転角度を制御部80に出力する。温度センサ77は、複数のソレノイド31の少なくともいずれかに設けられており、ソレノイド31の温度を検出して制御部80に出力する。リミットスイッチ74は、補助機構60の姿勢が使用時姿勢になったことを示す信号、および乗降時姿勢となったことを示す信号を、制御部80に出力する。電動油圧ポンプ70は、制御部80からの信号を受けて動作し、補助機構60の姿勢を使用時姿勢または乗降時姿勢に変更する。スピーカ79は、主に、シート8への安定した乗降が可能となったことを示す音声を出力する。駆動部90は、右側の5つのソレノイド31を駆動する右ソレノイド駆動スイッチ91と、左側の5つのソレノイド31を駆動する左ソレノイド駆動スイッチ92とを備える。
【0034】
制御部80には、使用者に振動の強さ(本実施の形態では、「弱」、「中」、「強」)を決定させるためのパワー切替スイッチ81が設けられている。さらに、制御部80は、各種時間を計測するための計時手段である連続運転タイマ82、駆動開始タイマ83、駆動時間タイマ84、および下降時間タイマ85として機能する。連続運転タイマ82は、加振装置30による加振動作が連続して行われている時間を計測する。駆動開始タイマ83は、シート8が上昇を開始してからソレノイド31の駆動(引き込み動作)を開始させるまでの時間を計測する。駆動時間タイマ84は、ソレノイド31の1回の駆動が開始してからの時間を計測する。下降時間タイマ85は、シート8が下降している時間、すなわち、シート8が下降を開始してから上昇を開始するまでの時間を計測する。計測された各種時間は、後述する駆動処理(図7参照)でソレノイド31の駆動を制御するために用いられるが、この詳細は後述する。
【0035】
そして、制御部80は、入力された情報、および算出した各種時間等に応じて、ソレノイド31を駆動させるための駆動信号を駆動部90に出力する。駆動部90は、右側の5つのソレノイド31を駆動する右ソレノイド駆動スイッチ91と、左側の5つのソレノイド31を駆動する左ソレノイド駆動スイッチ92とを備えている。駆動部90は、制御部80から入力された駆動信号に応じて、10個のソレノイド31を同じタイミングで駆動させることで、シート8を上下に振動させる。さらに、制御部80は、操作部13およびリミットスイッチ74から入力された信号に応じて電動油圧ポンプ70を駆動させて、補助機構60の姿勢を変更する。補助機構60の状態を、ランプ16およびスピーカ79を用いて使用者に通知する。
【0036】
図7を参照して、自動加振健康器具1の制御部80で行われる駆動処理について説明する。自動加振健康器具1の電源がオンとされると、制御部80のマイクロコンピュータ(図示外)のCPUが、ROMに記憶されたプログラムに従って駆動処理を実行する。
【0037】
駆動処理が開始されると、まず、温度センサ77によって検出されるソレノイド31の温度が正常範囲内であるか否かが判断される(S1)。ソレノイド31は、所定温度以上に達すると、動作不良および故障等を生じる場合がある。従って、温度センサ77によって検出された温度が、あらかじめ定められた所定温度以上であり、正常範囲内でないと判断された場合には(S1:NO)、制御部80に設けられた表示部(図示外)にエラーが表示される(S2)。処理はS1の判断へ戻る。
【0038】
ソレノイド31の温度が正常範囲内であれば(S1:YES)、操作部13の始動ボタン14が操作されたか否かが判断される(S3)。操作されていなければ(S3:NO)、処理はS1の判断へ戻り、S1およびS2の判断が繰り返される。使用者が始動ボタン14を操作した場合には(S3:YES)、シート8の振動を開始させるために、シート8の沈降が可能な状態とされる。
【0039】
まず、電動油圧ポンプ70に出力軸71を押し出させて、シート支持部61を上昇させるように制御される(S4)。つまり、補助機構60の姿勢を乗降時姿勢から使用時姿勢に変更するための制御が行われる。次いで、リミットスイッチ74から入力される信号によって、補助機構60の姿勢が使用時姿勢となったか否かが判断される(S5)。使用時姿勢となっていなければ(S5:NO)、シート8を振動させる処理は行われることなく、処理はS4へ戻る。そして、電動油圧ポンプ70の制御、および使用時姿勢となったか否かの判断が繰り返される(S4,S5)。
【0040】
補助機構60の姿勢が使用時姿勢となると(S5:YES)、ソレノイド31を駆動してシート8を振動させる処理が開始される。まず、シート8が上昇中であるか否かが、ロータリエンコーダ52から出力される信号によって判断される(S6)。シート8が上昇中でなければ(S6:NO)、シート8の1往復の振動における下降時間が計測される(S7)。次いで、ソレノイド31による加振動作が連続して行われている時間である連続運転時間が計測され、計測された連続運転時間が表示部(図示外)に表示される(S12)。
【0041】
一方で、シート8が上昇中であると判断された場合には(S6:YES)、上昇が開始されてからソレノイド31の駆動を開始させるまでの時間である駆動開始時間が計測される(S8)。この駆動開始時間は、使用者によってあらかじめ設定され、制御部80のEEPROM(図示外)に記憶されている。ここで、自動加振健康器具1では、使用者の体重が重いほどシート8の振幅は大きくなる。その結果、シート8が上昇を開始してからソレノイド31を駆動させるまでの適切な時間は長くなる。そこで、使用者は、体重に適した駆動開始時間を適宜設定することで、スムーズな振動を発生させることができる。
【0042】
次いで、設定されている駆動開始時間が到来したか否かが判断される(S9)。到来していなければ(S9:NO)、処理はS12へ移行する。駆動開始時間が到来した場合には(S9:YES)、パワー切替スイッチ81(図6参照)によって設定されている振動の強さに応じて、ソレノイド31の駆動時間が算出される(S10)。駆動時間とは、ソレノイド31を1回駆動させる際の最大の駆動時間であり、ソレノイド31の駆動終了のタイミングを判断するために用いられる。自動加振健康器具1では、振動の強さに応じて、「弱」、「中」、「強」の順で大きくなる3つの定数が定められている。S10では、直前に計測されたシート8の下降時間に、設定されている振動の強さに応じた定数を掛けることで、駆動時間が算出される。
【0043】
次いで、ソレノイド31の動作を制御する処理が行われる(S11)。まず、駆動開始時間が到来すると、全てのソレノイド31が同時に駆動される。その結果、シート8の外周縁部が外側に引き込まれ、使用者を上方に引き上げるための力がシート8に加えられる。その後、算出された駆動時間が経過するか、またはシート8の上昇が終了して下降が開始されるまで、ソレノイド31の駆動が継続される。駆動時間が経過した場合、または、シート8の下降開始がロータリエンコーダ52によって検出された場合に、全てのソレノイド31の駆動が同時に停止される。処理はS12へ移行する。
【0044】
連続運転時間の計測および表示が終了すると(S12)、連続運転の終了条件が成立したか否かが判断される(S13)。本実施の形態では、停止ボタン15の操作、および、あらかじめ定められた連続運転時間の経過が、連続運転の終了条件とされている。いずれの条件も成立していなければ(S13:NO)、連続運転を継続させるため、S6の判断へ戻る。
【0045】
停止ボタン15が操作された場合、または連続運転時間が経過した場合には(S13:YES)、連続運転が終了する。次いで、補助機構60の姿勢が変更される。まず、電動油圧ポンプ70に出力軸71を引き込ませて、シート支持部61を下降させるように制御される(S14)。つまり、補助機構60の姿勢を使用時姿勢から乗降時姿勢に変更するための制御が行われる。次いで、リミットスイッチ74から入力される信号によって、補助機構60の姿勢が乗降時姿勢となったか否かが判断される(S15)。乗降時姿勢となっていなければ(S15:NO)、処理はS14に戻る。補助機構60の姿勢が乗降時姿勢となると(S15:YES)、電動油圧ポンプ70の動作が停止される。そして、安定した状態でシート8に乗降できる状態であることが、ランプ16の発光、およびスピーカ79による音声によって使用者に通知される。なお、状態の通知方法は適宜変更できることは言うまでもない。例えば、ランプ16の発光のみを用いてもよい。スピーカ79から発生させる音声は、ブザー音でもよいし、音声メッセージでもよい。液晶パネル等を用いて状態を通知してもよい。その後、処理はS1の判断へ戻る。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態の自動加振健康器具1は、使用者のシート8への乗降を補助する補助機構60を備える。補助機構60は、シート8の下面に位置する乗降時姿勢と、シート8の下面から離間する使用時姿勢とに姿勢を変更できる。補助機構60が使用時姿勢となっている場合、シート8は上下方向に振動可能な状態となり、使用者は加振装置30による振動を得ることができる。補助機構60が乗降時姿勢となっている場合、板状のシート支持部61がシート8の下面に位置し、シート8の沈降が制限される。従って、使用者は、安定した状態のシート8に容易に乗降することができる。
【0047】
自動加振健康器具1は、補助機構60が使用時姿勢となっている場合には、シート8を振動させることがない。よって、使用者は、より安全に振動を得ることができる。自動加振健康器具1は、動作不良の発生等の不具合を起こす可能性も低い。
【0048】
自動加振健康器具1は、補助機構60の姿勢を変更するための電動油圧ポンプ70を備える。制御部80が電動油圧ポンプ70の動作を制御し、使用者は自ら補助機構60の姿勢を変更する必要はない。よって、使用者は、より容易且つ安全に自動加振健康器具1を使用することができる。また、制御部80は、使用者からの加振開始の指示操作を受け付けると、補助機構60の姿勢を自動的に使用時姿勢に変更する。よって、使用者は、シート8に安定した状態で乗り込むことができることに加え、さらに容易に自動加振健康器具1を使用することができる。さらに、制御部80は、シート8の加振動作が終了すると、補助機構60の姿勢を自動的に乗降時姿勢に変更する。よって、使用者は、特段の操作を行わなくても安全にシート8から降りることができる。
【0049】
自動加振健康器具1は、上面が設置面に平行なシート支持部61を上昇させてシートの下面に位置させることで、シート8の沈降を容易に制限し、安定性を高めることができる。自動加振健康器具1は、シート支持部61をリフト62によって昇降させるだけで、乗降時姿勢を使用時姿勢とを容易に変更することができる。
【0050】
本実施の形態における加振装置30が、本発明の「加振手段」に相当する。図7のS6〜S13で加振装置30のソレノイド31の動作を制御する制御部80が、本発明の「加振制御手段」として機能する。補助機構60が本発明の「補助手段」に相当する。リミットスイッチ74が「検出手段」に相当する。図7のS5で、補助機構60の姿勢が使用時姿勢となっていない場合に加振動作を禁止する制御部80が、「加振禁止手段」として機能する。電動油圧ポンプ70が「姿勢変更手段」に相当する。図7のS4およびS14で電動油圧ポンプ70の動作を制御する制御部80が「姿勢制御手段」として機能する。操作部13の始動ボタン14が「受付手段」に相当する。図7のS13でシート8の加振動作が終了したか否かを判断する制御部80が「判断手段」として機能する。
【0051】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、各種の変更が可能である。例えば、上記実施の形態の自動加振健康器具1はソレノイド31を備え、電機を動力としてシート8を振動させる。しかし、加振装置の構成はこれに限られない。例えば、ソレノイド31の代わりにエアシリンダを配置し、エアシリンダとエアコンプレッサとをエアチューブで接続する。そして、電磁弁を用いてエアシリンダへの圧縮空気の流入を制御することで、シート8を加振させてもよい。また、モータ等を用いてシート8を加振させてもよい。また、上記実施の形態では、シート8と主枠22とがゴムケーブル28によって接続されている。しかし、ゴムケーブル28の代わりに金属製のばね等を用いてもよいことは言うまでもない。シート自体が伸縮性を有し、シートを主枠22に直接接続してもよい。
【0052】
上記実施の形態では、シート支持部61をリフト62によって昇降させることで、補助機構60の乗降時姿勢と使用時姿勢とが変更される。しかし、補助機構60の構成は変更できる。例えば、補助機構は、シート支持部を平行または斜めに移動させることで姿勢を変更してもよい。シート支持部は、複数に分割されていてもよいし、折り畳み可能であってもよい。また、上記実施の形態では、シート支持部61が可動範囲の下端に位置した状態が使用時姿勢とされている。しかし、シート支持部61がシート8の下面から所定距離以上離間した状態の姿勢を全て使用時姿勢としてもよい。
【0053】
上記実施の形態では、制御部80が電動油圧ポンプ70を制御することでリフト62が昇降し、自動的に補助機構60の姿勢が変更される。しかし、リフト62の代わりに手動リフトまたは足踏みリフトを配置し、使用者が自らリフトを昇降させてもよい。また、上記実施の形態の自動加振健康器具1は、加振動作の開始および終了を、補助機構60の姿勢を変更する契機とする。しかし、自動加振健康器具1は、補助機構60の姿勢の変更指示を使用者が入力するための操作部を備え、操作部が操作させることを契機として姿勢を変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 自動加振健康器具
13 操作部
14 始動ボタン
16 ランプ
22 主枠
30 加振装置
31 ソレノイド
60 補助機構
61 シート支持部
62 リフト
70 電動油圧ポンプ
74 リミットスイッチ
79 スピーカ
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上から所定の高さに支持される主枠と、
前記主枠の内側に振動自在に張設されるシートと、
前記シートの外周縁部に設けられ、前記シートの少なくとも中央部を上下方向に振動させる振動力を発生させる加振手段と、
前記加振手段の動作を制御する加振制御手段と、
前記シートの下面に位置する乗降時姿勢と、前記シートの下面から離間する使用時姿勢とに姿勢を変更可能であり、前記乗降時姿勢となることで前記シートの沈降を制限して使用者の前記シートへの乗降を補助する補助手段と
を備えたことを特徴とする自動加振健康器具。
【請求項2】
前記補助手段の姿勢が前記使用時姿勢となっているか否かを検出する検出手段と、
前記補助手段の姿勢が前記使用時姿勢となっていないことが前記検出手段によって検出されている場合に、前記加振手段による加振動作を禁止する加振禁止手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動加振健康器具。
【請求項3】
前記補助手段の姿勢を前記乗降時姿勢または前記使用時姿勢に変更する姿勢変更手段と、
前記姿勢変更手段による前記補助手段の姿勢の変更を制御する姿勢制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動加振健康器具。
【請求項4】
使用者からの加振開始の指示を受け付ける受付手段をさらに備え、
前記姿勢制御手段は、前記受付手段によって前記加振開始の指示が受け付けられた場合に、前記補助手段の姿勢を前記使用時姿勢に変更することを特徴とする請求項3に記載の自動加振健康器具。
【請求項5】
前記加振手段による前記シートの加振動作が終了したか否かを判断する判断手段をさらに備え、
前記姿勢制御手段は、前記判断手段によって加振動作が終了したと判断された場合に、前記補助手段の姿勢を前記乗降時姿勢に変更することを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の自動加振健康器具。
【請求項6】
前記補助手段は、
前記シートの下方に配置され、上面が設置面に平行なシート支持部と、
前記シート支持部を昇降させるリフトと
を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自動加振健康器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−16443(P2012−16443A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154915(P2010−154915)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(510188034)株式会社ワットワン (1)