説明

自動化学分析装置

【課題】本発明は、試料容器内の液量が微量である場合に吸引吐出動作におけるノイズによる誤動作を防止し、吸引吐出を精度よく行い測定精度や信頼性の高いサンプリングを実現できる自動化学分析装置を提供する。
【解決手段】被検試料を収納する収納容器と、試料容器を配置するサンプラを有している。そして、プローブをアームにより昇降水平移動させ、被検試料を吸引する。サンプラ内あるいはサンプラ外には、微量の被検試料を収納する試料容器の配置位置を設けている。これにより、被検試料が微量の場合には、専用の配置位置を区別することができるので、例えばノイズによる誤動作を防止して測定精度及び信頼性の高い装置を提供することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料を試薬と反応させ、その反応を測定する自動化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体の血清等を対象としてこれを試料(サンプル)として用い、これに所望の試薬を加えて化学反応を起こさせて、この反応液内の特定成分の濃度を例えば比色法により測定して診断に供するようにした自動化学分析装置が知られている。
【0003】
このような化学分析を行うに当たっては分析すべき試料を予め用意し、この試料を測定項目に応じて複数の反応容器に分配する動作が必要になる。
【0004】
図18(A)は、このような分配動作の概要を示すものであり、試料510が満たされた複数の試料容器502が例えば円形テーブル503に収納されたサンプラ501と、複数の反応容器504が収納されこれらを一定サイクルで搬送、停止状態を繰り返して間欠移動させる反応ディスク505と、の間にはサンプリングアーム506が配置されている。このサンプリングアーム506は、先端にプローブ507を備えると共に基部のセンタシャフト508を支点として矢印C、Dの方向に揺動可能に構成されている。
【0005】
このような構成で、サンプリングアーム506のプローブ507を先ずサンプラ501の試料容器502の上に位置させてサンプリングアーム506と共にプローブ507を下降させて試料510を吸入した後再上昇させる。次に、サンプリングアーム506を揺動させて反応ディスク505の反応容器504上に位置させサンプリングアーム506を前記同様に下降させ吸入している試料510を反応容器504内に吐出することにより試料510の分配動作いわゆるサンプリングが行われる。このようなサンプリング動作は各サイクル毎に繰り返され、分析すべき試料の測定項目に応じて複数の反応容器504に対するサンプリングが行われる。
【0006】
また、反応ディスク505の周囲の他の位置には試薬部(図示せず)等が配置され、反応容器504に所望の試薬の分配が行われるように構成されている。
【0007】
ここで、通常サンプリングは、図18(B)に示すように、試料容器502中の試料510の液面を図示しない液面センサーにて検知し、吸引量に見合う程度にプローブ507(ノズル)を試料中に下降させる、あるいは吸引量に見合うだけ連続的にプローブを下降させることによって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような自動化学分析装置では、プローブ507の吸引吐出の条件はサンプルによらず共通であった。さらに、装置の高速化に伴い、各ユニットの動作スピードも高速化し、試料容器502周辺の静電容量、あるいは導電率の感度等の点から、試料容器502が小さく、かつ試料510が少量の場合、プローブ507による試料510の吸引吐出動作時に、誤動作を起こす場合がある。
【0009】
すなわち、通常試料510の液面検出は、静電容量あるいは導電率検出方式で行われる為に、試料510の液量が微量である場合には、図17に示すようなノイズNが発生し、特に吸引時に誤動作を引き起こすおそれがあった。
【0010】
加えて、吸引吐出動作自体の高速化によって、吸引吐出性能への悪影響が考えられる。
【0011】
このため、例えば新生児、小児などの微量な試料の測定のための吸引が困難であると共に、吸引吐出動作を、適切に精度良く行う事は困難であった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、試料容器内の液量が微量である場合に、吸引吐出動作におけるノイズによる誤動作を防止しながらも、吸引吐出を精度よく行い測定精度や信頼性の高いサンプリングを実現することのできる自動化学分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被検試料を収納する試料容器と、前記被検試料を吸引し、反応管へ吐出するプローブと、前記プローブを下降移動又は上昇移動させる昇降手段と、前記試料容器内における前記被検試料の液面を検知する液面検知手段と、第1の制御条件、又は少なくとも前記プローブによって前記被検試料を吸引する期間が当該第1の制御条件よりも長い第2の制御条件に基づいて前記プローブを制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、被検試料を収納する試料容器と、前記被検試料を吸引し、反応管へ吐出するプローブと、前記プローブを下降移動又は上昇移動させる昇降手段と、第1の制御条件、又は少なくとも前記被検試料吸引後の前記プローブの上昇速度が当該第1の制御条件よりも遅い第2の制御条件に基づいて前記昇降手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、被検試料を収納する試料容器と、前記被検試料を吸引し、反応管へ吐出するプローブと、前記プローブを下降移動又は上昇移動させる昇降手段と、第1の制御条件、又は少なくとも前記プローブの吸引工程時間が当該第1の制御条件よりも長い第2の制御条件に基づいて前記プローブ又は前記昇降手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、各サイクルでプローブ付きアームによる液の分配動作を行っているとき、多量の検体の無駄を生じさせることなく測定効率の向上を図ることが可能な自動化学分析装置を提供できる。
【0017】
また、微量サンプルのサンプリングの信頼性が向上し、新生児や小児、老人などの微量サンプルの測定を誤動作なく正しく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる自動化学分析装置の実施の形態の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】図1の自動化学分液装置の構成を示す説明図である。
【図3】図1の自動化学分析装置の表示画面を示す説明図である。
【図4】図1の自動化学分析装置の動作の概要を示すタイミングチャートである。
【図5】図1の自動化学分析装置の処理手順の概要を示すフローチャートである。
【図6】本発明にかかる自動化学分析装置の他の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図7】本発明にかかる自動化学分析装置の他の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図8】本発明にかかる自動化学分析装置の他の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図9】本発明にかかる自動化学分析装置の他の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図10】本発明にかかる自動化学分析装置の他の実施の形態の動作の概要を示すタイミングチャートである。
【図11】本発明にかかる自動化学分析装置の他の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図12】図11の自動化学分析装置の詳細を示す説明図である。
【図13】図11の自動化学分析装置を示す機能ブロック図である。
【図14】図11の自動化学分析装置の動作の概要を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明にかかる自動化学分析装置の他の実施の形態の一例を示す説明図である。
【図16】図15の自動化学分析装置の詳細を示す説明図である。
【図17】自動化学分析装置の動作時に信号出力と液量との関係を示す説明図である。
【図18】同図(A)は、従来の自動化学分析装置の概要を示す説明図であり、同図(B)は、同図(A)の自動化学分析装置においてサンプラにプローブが挿入する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態の一例について、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0020】
(概略説明)
先ず、本発明の自動化学分析装置の全体の概略構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本例の自動化学分析装置を示す機能ブロック図である。図2は、図1の自動化学分析装置の構成を示す説明図である。
【0021】
本例の自動化学分析装置1は、図1及び図2に示すように、分析対象の試料(液、反応液)を吸引及び吐出するプローブ11付きのアームであるサンプリングアーム10と、サンプリングアーム10を昇降させると共に、揺動時の軸となるセンタシャフト12と、このセンタシャフト12とともにサンプリングアーム10を駆動する駆動手段であるアーム移動モータ14及びアーム上下動モータ6と、第1及び第2の各試料容器22、24が複数配列されたサンプラ20と、このサンプラ20を間欠回転駆動するためのモータ28と、反応容器32が複数配列された反応ディスク30と、反応ディスク30を間欠回転駆動するためのモータ34と、プロープ11を介して試料を吸入吐出するためのサンプリングポンプ40と、このサンプリングポンプ40を駆動するためのモータ42と、を含んで構成されている。なお、アーム移動モータ14は、センタシャフト12を基軸としてサンプリングアーム10の先端部のプローブ11を揺動(水平移動)させるように機能し、アーム上下動モータ16は、センタシャフト12を昇降させることによりサンプリングアーム10を昇降させるように機能する。このようなアーム移動モータ14とアーム上下動モータ16により駆動手段を構成している。さらに、サンプリングアーム10には、図示しない液面センサが取り付けられている。また、サンプリングポンプ40は、プローブ11による試料の吸入、吐出の動作を制御するためのものである。なお、サンプリングポンプコントロール部63の一例として、吸入、吐出の動作を制御するプローブ電磁弁等が挙げられる。
【0022】
そして、このような自動化学分析装置1において、図2に示すように、試料(液)を、第1及び第2の各試料容器22、24が複数配列されたサンプラ20から反応容器32が複数配列された反応ディスク30に分配することによって、一定のサイクルで試料(液)、特に反応液内の特性成分の濃度を分析することができる。
【0023】
さらに、本例の自動化学分析装置1は、図1に示すように、サンプラ20内の、予め試料が第1の量にて注入された第1の試料容器22が配置される少なくとも1つの第1の配置位置(図2のX1)と、第1の量より少ない第2の量にて注入された第2の試料容器24が配置される少なくとも1つの第2の配置位置(図2のX2)と、を設定する設定手段50と、設定手段50の設定位置に基づいて、各サイクルの分配動作時に、第1の配置位置にてサンプリングアーム10の昇降動作を制御し、第2の配置位置にてサンプリングアーム10の昇降速度を第1の配置位置での昇降速度よりも少なくとも遅くするように制御する制御手段60と、を含んで構成される。
【0024】
(制御系について)
次に、制御手段60について図1を用いて説明する。制御手段60は、上述のアーム移動モータ14及びアーム上下動モータ16の駆動を制御することでサンプリングアーム10を制御するサンプリングアームコントロール部61と、モータ28の駆動を制御することでサンプラ20を制御するサンプラコントロール部62と、モータ42の駆動を制御することでサンプリングポンプ40を制御するサンプリングポンプコントロール部63と、モータ34の駆動を制御することにより反応ディスク30を制御する反応ディスクコントロール部64と、これらの各部を例えばシーケンス制御によって制御することで、サンプリング動作全体の制御を行うサンプリングシーケンスコントロール部65と、を含んで構成される。なお、本例では、これら各部を制御するためのシーケンスは、後述する図4に示すタイミングチャートに基づいて実行される。
【0025】
設定手段50は、制御手段60の制御における各種の条件を設定するためのものであり、各種の情報を表示する表示手段であるCRT51と、このCRT上にて入力された各種の条件に関する情報を格納して、制御手段60に当該情報を供給するためのデータベース52と、を含んで構成される。
【0026】
上述のような構成の自動化学分析装置1において、オペレータがCRT51上の表示画面により、各種の条件情報を入力すると、データベース52は、これらの情報を格納する。そして、予めデータベース52に格納された情報とオペレータが入力した条件情報に基づいて、制御手段60は各部の制御を行うこととなる。
【0027】
これによって、例えばサンプリングアーム10の昇降速度、揺動速度、サンプリングポンプ40の吸引期間及び吐出期間、サンプラ20及び反応ディスク30の回転速度等を、入力条件によって自在に制御できることとなる。
【0028】
以上、自動化学分析装置1の制御系の機能の概略について述べてきたが、以下そのハードウエアの具体的構成について詳述する。
【0029】
(具体的構成)
本例の自動化学分析装置1は、図2に示すように、サンプラ20には分析すべき試料が満たされた複数の第1及び第2の各試料容器22、24が円形テーブル26に収納され、円状に配置されている。反応ディスク30には複数の反応容器32が収納され、これら反応容器32はモータ34(図1)によって一定のサイクルで搬送、停止状態を繰り返して例えば反時計方向に間欠回転移動される。
【0030】
サンプラ20と反応ディスク30との間には先端にプローブ11が取り付けられセンタシャフト12を支点として揺動(水平移動)を行うサンプリングアーム10が配置され、サンプラ20と反応ディスク30間を各サイクル毎に往復して第1及び第2の各試料容器22、24の試料を反応容器32に分配可能に構成されている。
【0031】
反応ディスク30の周囲には、試薬庫70が設けられて、これには試薬が満たされた複数の試薬容器72が収納され、試薬アーム74によって試薬容器72の試薬が前記反応容器32に分配可能に構成されている。
【0032】
また、反応ディスク30の周囲には反応容器32に分配された試料と試薬とから成る反応液を攪拌するための攪拌アーム80、反応液内の特定成分の濃度を測定するための測光部82、反応容器32を洗浄するためのキュベット洗浄エレベータ84が各々設けられている。また、サンプラ20と反応ディスク30間にはプローブ11を洗浄するための洗浄プール86が設けられている。
【0033】
この他、吸入、吐出後の不要又は残りの試料を洗浄するための図示しないプローブ洗浄ポンプ、反応容器32(キュベット)の洗浄のために用いられる図示しないキュベット洗浄ポンプが配設されている。
【0034】
測光部82の測光データは、A/Dコンバータ57及びバス55を介して上述の制御手段60に含まれるCPU(中央演算処理装置)54に送られる。また、各部(サンプリングアーム10、サンプラ20、反応ディスク30、試薬庫70、攪拌アーム80、キュベット洗浄エレベータ84等)の制御するための各種信号及びデータは、メカインターフェース56及びバス55を介して入出力される。
【0035】
CPU54は、専用のマイクロプロセッサから構成され分析を行うのに必要な装置全体の制御動作を司っている。
【0036】
また、このCPU54は後述のように、サンプリングに関する一連の所定の動作を行うように制御する機能を有している。
【0037】
操作入力手段53は、分析を行うに当たり所望のデータを入力するためのもの、CRT51は、分析結果を表示するためのもの、プリンタ58は、分析結果をプリントするためのものである。
【0038】
(表示画面について)
次に、CRT51上に表示される表示画面について説明する。CRT51上に表示される表示画面の操作は、操作入力手段53(図2)による操作入力に基づいて行われる。この操作入力手段53により操作入力された入力情報(条件情報)は、予め蓄積された各種の制御情報、条件情報、位置情報等とともにデータベースに格納される。このようにして、設定手段50(図1)での設定に基づき、制御手段60を制御することができる。
【0039】
この自動化学分析装置における上述のようなサンプリング動作の制御条件(条件情報)を設定する場合には、図3に示すような測定依頼用のメニュー画面100を、操作入力手段53によりCRT51上に表示するように操作する。
【0040】
このメニュー画面100には、上部表示エリアにおいては、検体番号入力欄102―1、患者情報入力欄102―2、位置情報入力欄102―3の各欄が形成されている。
【0041】
検体番号入力欄102―1には、予め割当てられた第1、第2の各試料容器22、24の検体番号を入力する表示箇所である。
【0042】
この各表示欄の下部の表示エリアにおいては、検体種別選択欄104―1、検体希釈入力欄104―2、サンプル分注入力欄104―3の各欄が形成されている。
【0043】
検体種別選択欄104―1では、例えば「一般検体」、「微量検体」、「至急検体」、「標準液」、「コントロール」等の各選択項目のうちいずれかの項目を選択する表示箇所である。
【0044】
検体希釈入力欄104―2では、検体希釈がある場合は、「あり」の項目を選択すると共に、その数値が何倍であるかを入力し、検体希釈がない場合は、「ない」の項目を、操作入力手段53の操作により選択する。
【0045】
サンプル分注入力欄104―3では、分注のタイプに応じて例えば「タイプ1」「タイプ2」「タイプ3」「タイプ4」のうちのいずれかの項目を選択することができる。この場合、例えばタイプ1では、サンプラ20上の第2の試料容器24の各位置を設定するタイプのものであるとする。
【0046】
そして、メニュー画面100には、さらに測定項目表示欄106が形成され、各測定項目が表示されるようになっている。
【0047】
なお、メニュー画面100の下部表示エリアには、各種の選択キー108―1、108―2、及びメニュー画面終了キー108―3が形成され、操作入力手段53の操作に基づき、選択することができる。
【0048】
なお、上述の表示画面及びその表示画面内の各表示エリア並びに各表示欄を表示するための図示しない表示処理手段、表示制御手段等が予め制御手段60に設けられている。
【0049】
また、上述の表示画面及びそのレイアウト等は、一例にすぎず、少なくとも上述の各欄を表示する機能、各欄に入力された各入力情報等に基づいて各処理を行う機能を有していれば、上記以外の表示画面及びレイアウト等であっても構わない。
【0050】
(動作について)
次に、図4及び図5を参照して上述のような構成の自動化学分析装置1の動作を説明する。
【0051】
(シーケンス動作)
図4は、ある所定サイクルの分配動作を行う場合の各ユニットのシーケンス動作を示すタイミングチャートである。
【0052】
この例はサンプリングアーム(プローブ付きアーム)10によってサンプラ20の第1、第2の各試料容器22、24の試料を吸引して反応ディスク30の反応容器32に分配動作を行う動作について示している。
【0053】
先ず、サンプリングアーム10が反応ディスク30からサンプラ20へ移動するタイミングから図4を用いて説明する。
【0054】
通常の量の試料溶液で分注動作を行う通常の期間(非選択期間)t1では、サンプリングアーム10が反応ディスク30から洗浄プール86を経てサンプラ20まで移動する期間t11、サンプリングアーム10がサンプラ20の上方からサンプラ20上の第1の試料容器22の配置位置まで下降する期間t12、プローブ11が第1の試料容器内に挿入された状態でプローブ11による試料の吸引動作を行う期間t13、試料吸引後サンプリングアーム10を上昇させる期間t14、の各期間は、通常のタイミングで行う。
【0055】
次に、プローブ11による試料吸引後、サンプラ20から反応ディスク30まで移動する期間t15、反応ディスク30内の反応容器32に向けてサンプリングアーム10を降下させる期間t16、サンプリングアーム10に取り付けられたプローブ11より反応容器32内に試料を吐出する期間t17、試料吐出後、サンプリングアーム10を上昇させる期間t18、の各期間も、通常のタイミングで行う。このようにして1サイクルが行われることとなる。
【0056】
なお、期間t15〜t18まで等の吐出工程は、試料の容量が微量サンプルであるか、通常のサンプル量であるかにかかわらず、各期間のタイミング設定はほぼ同一でよい。
【0057】
また、通常のサンプル量の試料の場合は、期間t11〜t14までの吸引工程の期間t1と、上述の吐出工程の期間とでは、ほぼ同じ期間に設定しておいても差し障りはない。
【0058】
次に、微量サンプルで分注動作を行う場合の期間(選択期間)t2について説明する。この期間では、いわゆる微量サンプルが第2の試料容器24に注入されている場合である。この選択期間t2では、サンプリングアーム10が反応ディスク30からサンプラ20まで移動する期間t21に関しては、通常吸引工程期間t1のt11とほぼ同じ期間に設定してよい。そして、サンプリングアーム10がサンプラ20の上方からサンプラ20上の第2の試料容器24の配置位置まで下降する期間t22は、通常吸引工程期間t1のt12の期間よりも少なくとも長く設定する。これにより、微量サンプルの場合は、下降動作を遅くすることで、サンプリングアーム10の振動によるノイズを抑制して静電容量及び導電率の感度に起因する液面センサーの誤動作を防止できる。従って、吸引にかかる精度が向上して信頼性が向上する。
【0059】
また、プローブ11による試料容器24からの試料吸引期間t23は、通常吸引工程期間t1のt13の期間よりも少なくとも長く設定する。これにより、微量サンプルの吸引が安定して行われることになる。
【0060】
次いで、第2の試料容器24でのサンプリングアーム10の上昇期間t24は、第1の試料容器22での上昇期間t14よりも少なくとも長く設定する。これにより、サンプリングアーム10が上昇する際の振動によるノイズを低減することができ、もって液面センサー等の誤動作を防止できる。このように、下降期間t22だけだなく、上昇期間t24においても期間を長く設定することで、本吸引工程全般に亘ってさらなる振動によるノイズを低減して、吸引の信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
次に、第2の試料容器24の上方位置から反応ディスク30の反応容器32への移動期間であるが、これらの移動期間t25、反応容器に対するサンプリングアームの降下期間t26、吐出期間t27、上昇期間t28は、それぞれ上記吐出工程期間のt15、t16、t17、t18とそれぞれ同様の期間に設定される。
【0062】
このようにして、本例のサンプリングの工程では、第2の試料容器における試料を吸引する工程のみ、サンプリングアーム10の上昇、下降の各工程の期間を、第1の試料容器22に対する各工程の各期間よりも長く設定することにより、サンプリングアーム10の動作に起因するノイズを低減して、吸引精度の向上を図ることができる。
【0063】
また、例えば、第2の試料容器における試料(微量サンプル)の吸引工程の期間(試料吸引時間を含むt22〜t24)を第1の試料容器における試料の吸引工程(t12〜t14あるいはt16〜t18)よりも長くすることによっても吸引精度の向上を図ることができる。この場合、例えば、第2の試料容器における試料(微量サンプル)を吸引する場合に、通常の動作と比べてプローブ11をゆっくり下降させ、ゆっくり試料を吸引し、その後プローブ11をゆっくり上昇させるようにプローブ11の移動および試料の吸引動作を制御することを含む。
【0064】
このように本例では、上述のようなシーケンス動作を行う制御手段60を構成している。ここで、通常のサンプル以外の微量サンプル用にサンプラ20の一部の位置に専用位置を設け、ここに微量カップにて形成された第2の試料容器24がセットされている。
【0065】
この場所は、設定手段50からの設定入力等により、予めシステムに微量用の位置と認識させてあり、この場所でのサンプリングのためのプローブ11の上下動作や吸引吐出動作を、通常動作と変えて、信頼性良く微量サンプルの吸引を行わせる。
【0066】
そして、本例では、通常動作に対する動作条件の変更として、微量サンプルの場合は、通常に比べてプローブの移動スピードあるいは吸引スピードを変えるようにしている。このため、下降動作時のノイズを減らして液面検知、サンプリングの信頼性を上げることができる。
【0067】
(操作を行う場合の動作)
次に本例によりサンプリング動作を行う場合の全体動作を図1、図2、図4、及び図5を参照して説明する。
【0068】
先ず、自動化学分析装置を用いて分析を行う前に、オペレータは、CRT51(図2参照)の表示画面に表示されるメニュー画面100(図4参照)を参照しながら、操作入力手段53(図2参照)を用いて各種の設定情報を入力する。
【0069】
具体的には、図4に示すメニュー画面100において、例えば分析対象となる一の試料が注入された第1の試料容器22の検体番号を検体番号入力欄102−1に、前記一の試料の患者情報(例えば氏名、年齢、性別等)を患者情報入力欄102−2に、前記第1の試料容器22が配置される反応ディスク20上の位置情報(例えば図2のX1の位置<第1の位置>に対応する位置番号、本例では仮にX1とする)を位置情報入力欄102−3に、前記一の試料の検体種別(例えば試料が通常の量であれば一般検体)の選択を検体種別選択欄104−1に、前記一の試料の検体希釈の有無を検体希釈選択欄104−1に、サンプル分注のタイプをサンプル分注入力欄104−3に、各々入力することとなる。
【0070】
このようにして一の試料に関してCRT51上から設定情報を入力すると、図1に示すデータベース52にこれらの設定情報が格納される。
【0071】
前記一の試料に関する設定情報の入力を終えると、オペレータは、同様にして他の試料に関する設定情報の入力をCRT52上から行うこととなる。すなわち、例えば分析対象となる他の試料が注入された第2の試料容器24の検体番号情報、前記第2の試料容器24が配置される反応ディスク20上の位置情報(例えば図2のX2位置<第2の位置>に対応する位置番号、本例では仮にX2とする)、検体種別(例えば試料が通常の量より少なければ微量検体)等の入力を行う。
【0072】
以下、複数の試料容器を図2に示す反応ディスク20上に配置しつつ、図4に示すメニュー画面100上から順次複数の試料について各々設定情報を入力していくこととなる。もちろん、これらの各種設定情報は、逐次図1のデーターベース52に入力されることとなる。
【0073】
これらの一連の作業が終了し、設定情報を入力し終えると、オペレータは、CRT51上の例えば図4のメニュー画面100において、メニュー画面終了キー108−3を操作して、他の画面に遷移し、自動化学分析装置1の実行操作部等のキーを操作して自動化学分析装置1の分析動作が開始されることとなる。
【0074】
そして、本例の自動化学分析装置1を動作させると、図1に示すサンンプリングシーケンスコントロール部65は、上述の各種設定情報を格納したデーターベース52から先ず被検者の検体情報を得る(ステップ、以下「S」101)。この検体情報としては、例えば通常の量の試料が注入された第1の試料容器22の検体番号や、通常よりも量の少ない微量の試料が注入された第2の試料容器24の検体番号等が挙げられる。
【0075】
これらの情報は、予めオペレータが入力した各種の情報が格納されたデータベース52から出力される。
【0076】
次に、図1に示すサンプリングシーケンスコントロール部65は、上述のデーターベース52に入力された検体番号に対応する位置情報から、サンプリングアームコントロール部61及びサンプラコントロール部62を使ってサンプラ20を間欠回転させるとともにサンプリングアーム10を移動させる。
【0077】
すなわち、例えば第1の試料容器22の配置位置(位置情報X1)へサンプリングアーム10を移動するように制御する(S102)。そして、サンプリングアーム10の降下動作によって、プローブ11を第1の試料容器22内(検体)に降ろす(S103)。次に、プローブ11が液面に接触する位置にまで下降すると、液面センサから出力されるセンサ信号により試料容器内の液面を検知してプローブ11の下降動作を止めるように制御される(S104)。次いで、プローブ11が試料溶液内の位置にて停止すると、プローブ11により試料溶液(検体)を吸引するように制御される(S105)。
【0078】
試料溶液を吸引すると、サンプリングアーム10の上昇と共に、第1の試料容器22内の試料溶液内の位置よりプローブ11を上昇させる(S106)。
【0079】
次に、サンプリングアーム10を反応ディスクの反応容器32位置(分注位置)にまで移動するように制御する(S107)。反応容器32位置に移動すると、サンプリングアーム10を降下させることによって、プローブ11を降下させ、上記試料溶液を反応容器32内に注入(分注)する(S108)。
【0080】
第1の試料容器22に関しての分注動作が終了すると、次に、例えば第2の試料容器24についての動作が開始されることとなる。すなわち、上記S102同様に、例えば第2の試料容器24の配置位置(位置情報X2)へサンプリングアーム10を移動するように制御する。そして、サンプリングアーム10の降下動作によって、プローブ11を第2の試料容器24内(検体)に降ろす(S103)。以降は、上記同様である。このようにして、上記設定情報に基づき試料溶液の分注動作が順次行われていく。
【0081】
なお、第2の試料容器24の配置位置にてサンプリングアーム10が下降する期間(第2の試料容器に対するS103の動作)は、第1の試料容器22の配置位置にてサンプリングアーム10が下降する期間(第1の試料容器に対するS103の動作)よりも長く設定される。加えて、第2の試料容器24からプローブ11が試料を吸引する期間(第2の試料容器に対するS105の動作)は、第1の試料容器22からプローブが試料を吸引する期間(第1の試料容器22に対するS105の動作)よりも長く設定される。さらに加えて、第2の試料容器24の配置位置にてサンプリングアーム10が上昇する期間(第2の試料容器に対するS106の動作)は、第1の試料容器22の配置位置にてサンプリングアーム10が上昇する期間(第1の試料容器に対するS106の動作)よりも長く設定される。
【0082】
このようにして、第2の試料容器24に対しての動作が行われるS103〜S106と、第1の試料容器22に対しての動作が行われるS103〜S106とでは、異なるタイミングのシーケンス制御が行われ、特に、第2の試料容器24における試料(微量検体)に対しては、第1の試料容器22における試料(通常検体)の動作と比べて、プローブ11をゆっくり下降させ、ゆっくり試料を吸引し、その後プローブ11をゆっくり上昇させるように制御が行われる。
【0083】
これにより、微量検体の場合は、下降及び上昇動作を各々遅くすることで、サンプリングアーム10の振動によるノイズを抑制して、静電容量及び導電率の感度に起因する液面センサーの誤動作を防止でき、しかも、吸引動作もゆっくり行うので吸引量など吸引にかかる精度が向上して信頼性の向上を図ることができる。
【0084】
尚、反応容器32内に試料を吐出した後、プローブ11を上げ、サンプリングアーム10を再び洗浄プール86上に移動し、プローブ11を洗浄プール86に下ろし、サンプリング流路の電磁弁をオンにし、プローブ11を洗浄するステップを加えてもよい。
【0085】
以上の各ステップによって1サイクルの試料の分配動作が終了する。この動作は前記したようにCPU54の制御動作によって行われる。
【0086】
以上のように本実施の形態によれば、各サイクルでプローブ付のサンプリングアームによる液の分配動作を行っているとき、多量の検体の無駄を生じさせることなく測定効率の向上を図ることが可能な自動化学分析装置を提供できる。
【0087】
また、微量サンプルのサンプリングの信頼性が向上し、新生児や小児、老人などの微量サンプルの測定を誤動作なく正しく行うことができる。
【実施例2】
【0088】
次に、本発明にかかる第2の実施の形態について、図6に基づいて説明する。なお、以下には、前記第1の実施の形態の実質的に同様の構成に関しては説明を簡略し、異なる部分を中心に詳述する。図6は、本例の自動化学分析装置のサンプラの部分を示す説明図である。
【0089】
上述の第1の実施の形態では、サンプラ内の、第2の試料容器の配置位置を、第1の試料容器が円状に配置される通常の配置位置と兼用して、設定手段による設定割り当てによって識別する構成としたが、本例では、図6示すように、サンプラ内にて、第1の試料容器が配置される円状の配置位置とは別個に、その円状内に第2の試料容器専用の配置位置を設けている。
【0090】
すなわち、本例の自動化学分析装置110では、サンプラ120には、円形テーブル126上に、通常の量(第1の量)にて試料が注入される第1の試料容器が配置される第1の配置位置121と、微量(第2の量)にて試料が注入される第2の試料容器が配置される第2の配置位置123と、を設けている。
【0091】
そして、第1の配置位置121は、円形テーブル126の周縁に沿って複数配置されており、第2の配置位置123は、これらの第1の配置位置121が形成された配置位置の同心円内に、円状に配置されている。
【0092】
このようにして、同心円の内と外とで、配置位置の区別を行うことにより上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、以下の作用効果を有する。例えば第1の実施の形態の場合には、設定手段50のデータベース52に、一つの同心円の各配置位置の番号情報を設け、各配置位置に、第1の配置位置か第2の配置位置かの識別符号(識別テーブル)のカテゴリーを専用に設けなければならなかった。これに対して本例では、同心円の内側と外側のどちらかを区別する位置情報のみをデータベースの制御テーブルに組み込んでおけばよく、上述の各々の番号情報や各々の識別符号等の情報は不要となり、蓄積情報量の低減化、メモリ容量内の記憶情報の低減化により、メモリを有効に活用でき、かつ、情報処理速度の向上、それにより低消費電力化を図ることができる。
【0093】
上記では、一つの円形サンプラ上で第1の試料容器の配置と第2の試料容器の配置を同心円状に設ける例を示したが、もちろん設け方はこれに限るものではなく、例えば、円形サンプラ上に第1の試料容器の配置を円形に設け、その内側あるいは外側に1ヶ所あるいは複数ヶ所設けるようにしてもよい。
【0094】
さらに、サンプラとして多重同心円状で独立駆動のサンプラを採用し、第1の試料容器の配置と第2の試料容器の配置をそれぞれ別に同心円状に設けるようにする他、同一の同心円状に第1の試料容器の配置と第2の試料容器の配置を設けるようにしてもよい。
【実施例3】
【0095】
次に、本発明にかかる第3の実施の形態について、図7に基づいて説明する。図7は、本発明に係る第3の実施の形態を示す説明図である。
【0096】
この自動化学分析装置においては、各試料容器配置位置に、第1の試料容器用の大きさの収容部と、第2の試料容器用の大きさの収容部とで、その底面高さ位置を異なる位置に形成している。
【0097】
すなわち、本例の自動化学分析装置130は、サンプラ140には、円形テーブル146上に、通常の量(第1の量)にて試料が注入される第1の試料容器が配置される第1の配置位置141と、微量(第2の量)にて試料が注入される第2の試料容器が配置される第2の配置位置143と、を設けている。
【0098】
そして、第1の配置位置141は、円形テーブル146の周縁に沿って複数配置されており、第2の配置位置143は、これらの第1の配置位置141が形成された配置位置の同心円内に、円状に配置されている。
【0099】
さらに、第2の配置位置143の凹部(収容部)開口から凹部底面までの深さH2は、第1の配置位置141の凹部開口から凹部底面までの深さH1よりも短く形成されている。
【0100】
これにより、上述の各実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、プローブが下降する下端位置が一定であっても、第2の配置位置では、第2の試料容器内の低い位置にプローブの下端が停止するので、第2の試料容器での微量サンプルの吸引を正確に行うことができる。
【実施例4】
【0101】
次に、本発明にかかる第4の実施の形態について、図8に基づいて説明する。図8は、本発明に係る第4の実施の形態を示す説明図である。
【0102】
この自動化学分析装置においては、第2の試料容器の下部位置にまで、プローブの下端位置が位置するように、プローブの昇降が制御される。
【0103】
すなわち、本例の自動化学分析装置150は、第2の試料容器160の底面からの高さがL2の位置にて、プローブ11の下降先端位置が停止するように、予め設定手段50において設定され、制御手段60にて制御されるように構成される。
【0104】
ここで、高さL2の位置は、第2の試料容器160内の微量サンプルでの試料溶液の液面高さL3よりも下方の位置になるように設定される。
【0105】
このように、通常動作に対する動作条件の変更として、微量サンンプルの場合には、予め決められた機械的下降最下点までプローブ11を下げて吸引するので、予め機械的に下降最下点が決められ、液面検知によらず下降最下点までプローブを下げ吸引することができる。
【0106】
すなわち、予め微量サンプルでの試料溶液の高さL3よりも下方位置にてプローブの下端が停止することが設定されているので、微量サンプルであっても、試料(サンプル、検体)を確実に吸引することができ、検査の信頼性が向上する。
【実施例5】
【0107】
次に、本発明にかかる第5の実施の形態について、図9に基づいて説明する。図9は、本発明に係る第5の実施の形態を示す説明図である。
【0108】
この自動化学分析装置おいては、第2の試料容器の形状を、第1の試料容器の形状とは異なるようにしている。例えば、図9のように、高さ、幅を各々異なるように形成している。このように、微量サンプル用の試料容器を通常のサンプルの試料容器とは異なる形状とすることで、微量サンプルを識別することができる。
【実施例6】
【0109】
次に、本発明にかかる第6の実施の形態について、図10に基づいて説明する。図10は、本発明に係る第6の実施の形態の動作の概要を示すタイミングチャートである。
【0110】
この自動化学分析装置においては、第1の実施の形態での、サンプリングアームの昇降動作を長く設定するのに加えて、サンプラでのプローブによる吸引動作を、第2の試料容器が選択される選択期間と、第2の試料容器が選択されない非選択期間とで、その期間間隔を異なるように形成している。尚、簡単のため各部の符号は第1の実施の形態と同様の符号を用いて説明する。
【0111】
より詳細には、本例の自動化学分析装置190では、図10に示すように、通常の量の試料溶液で分注動作を行う通常の期間(非選択期間)t1では、サンプリングアーム10が反応ディスク30からサンプラ20まで移動する期間t11、サンプリングアーム10がサンプラ20の上方からサンプラ20上の第1の試料容器22の配置位置まで下降する期間t12、プローブ11が第1の試料容器22内に挿入された状態でプローブ11による試料の吸引動作を行う期間t13、試料吸引後サンプリングアーム10を上昇させる期間t14、の各期間は、通常のタイミングで行う。
【0112】
次に、プローブ11による試料吸引後、サンプラ20から反応ディスク30まで移動する期間t15、反応ディスク30内の反応容器32に向けてサンプリングアーム10を降下させる期間t16、サンプリングアーム10に取り付けられたプローブ11より反応容器32内に試料を吐出する期間t17、試料吐出後、サンプリングアーム10を上昇させる期間t18、の各期間も、通常のタイミングで行う。このようにして1サイクルが行われることとなる。
【0113】
なお、期間t15〜t18まで等の吐出工程は、試料の容量が微量サンプルであるか、通常のサンプル量であるかにかかわらず、各期間のタイミング設定はほぼ同一でよい。
【0114】
また、通常のサンプル量の試料の場合は、期間t11〜t14までの吸引工程の期間t1と、上述の吐出工程の期間とでは、ほぼ同じ期間に設定しておいても差し障りはない。反応ディスク32からサンプラ20まで移動する期間t11も、サンプラ20から反応ディスク32まで移動する期間t15とほぼ同じに設定してもよい。
【0115】
次に、微量サンプルで分注動作を行う場合の期間(選択期間)t2について説明する。この期間では、いわゆる微量サンプルが第2の試料容器24に注入されている場合である。この選択期間t2では、サンプリングアーム10が反応ディスク30からサンプラ20まで移動する期間t21に関しては、通常吸引工程期間t1のt11とほぼ同じ期間に設定してよい。そして、サンプリングアーム10がサンプラ20の上方からサンプラ20上の第2の試料容器24の配置位置まで下降する期間t22は、通常吸引工程期間t1のt12の期間よりも少なくとも長く設定する。これにより、微量サンプルの場合は、下降動作の期間を遅くすることで、サンプリングアーム10の振動によるノイズを抑制して静電容量及び導電率の感度に起因する液面センサーの誤動作を防止できる。従って、吸引にかかる精度が向上して信頼性が向上する。
【0116】
さらに加えて、本例では、第2の試料容器24での吸引期間t23も、第1の試料容器22での吸引期間t13より長く設定している。これにより、吸引動作を長くすることで、微量サンプルであっても吸引精度が向上し、信頼性の高いサンプリング動作を行うことができる。
【0117】
次いで、第2の試料容器24でのサンプリングアーム10の上昇期間t23は、第1の試料容器22での上昇期間t13よりも少なくとも長く設定する。これにより、サンプリングアーム10が上昇する際の振動によるノイズを低減することができ、もって液面センサー等の誤動作を防止できる。このように、下降期間t22だけだなく、上昇期間t24においても期間を長く設定することで、本吸引工程全般に亘ってさらなる振動によるノイズを低減して、吸引の信頼性の向上を図ることができる。
【0118】
次に、第2の試料容器24の上方位置から反応ディスク30の反応容器32への移動期間であるが、これらの移動期間t25、反応容器に対するサンプリングアームの降下期間t26、吐出期間t27、上昇期間t28は、それぞれ上記吐出工程期間のt15、t16、t17、t18とそれぞれ同様の期間に設定される。
【0119】
このようにして、本例のサンプリングの工程では、第2の試料容器24を吸引する工程のみ、サンプリングアーム10の上昇、下降の各工程並びに吸引工程の期間を、第1の試料容器22に対する各工程の各期間よりも長く設定することにより、サンプリングアーム動作に起因するノイズを低減して、吸引精度の向上を図ることができる。
【0120】
加えて、第2の試料容器24に対するサイクルタイムt2の期間を、第1の試料容器22に対するサイクルタイムt1と異なる期間に設定することによって、比較的低速動作による動作全般における各機構からのノイズを低減することができる。
【0121】
このように、通常動作に対する動作条件の変更として、微量サンプルの吸引時には、通常のサイクルタイムの数倍長くし、動作スピードを遅くして検出精度、吸引吐出精度を向上させることができる。
【実施例7】
【0122】
次に、本発明にかかる第7の実施の形態について、図11に基づいて説明する。図11は、本発明に係る第7の実施の形態を示す説明図である。
【0123】
この自動化学分析装置においては、第2の試料容器が配設される専用の第2のサンプラを、第1の試料容器が配設される第1のサンプラとは、別個に独立して設け、微量サンプル専用アダプタとして機能する。
【0124】
すなわち、本例の自動化学分析装置200は、図11〜図13に示すように、予め液が第1の量にて注入された第1の試料容器222が複数配列された第1のサンプラ220と、第1の量より少ない第2の量にて注入された第2の試料容器292が一又は複数配列された第2のサンプラ290と、第1のサンプラ220及び第2のサンプラ290の各位置を設定する設定手段250と、設定手段250の設定に基づいて、第1のサンプラ220と第2のサンプラ290とで、各々異なるサイクルにて分配動作を行うように制御する制御手段260と、を含み構成される。
【0125】
なお、本例の図11に示す自動化学分析装置において、第2のサンプラ290以外の構成は、すべて、図2の各構成における各符号を各々200番台にしたのみで、図2の構成と実質的に同様の構成なので、その詳細な説明は省略する。また、本例の自動化学分析装置200は、図11にて符号された各構成があるものとみなす。
【0126】
ここで、本例の特徴の第2のサンプラ290について、図12を用いて説明する。図12に示すように、第2のサンプラ290は、サンプリングアーム210の揺動経路Y上に配置され、Z方向に上下動可能であると共に、θ方向に間欠又は連続的に回転可能に構成される。そして、第1のサンプラ220の第1の試料容器222の配列レイアウト同様、第2のサンプラ290においても第2の試料容器292を円状に配設して構成されている。なお、第2のサンプラ290自体の揺動経路Y上の配置位置は、サンプリングのサイクルタイムに応じて最適な位置に設定することが好ましい。
【0127】
さらに、第2のサンプラ290を揺動経路Y上の洗浄プール286と干渉しない範囲で、A方向、B方向に揺動可能に形成してもよい。
【0128】
図13には、上述のような自動化学分析装置200の制御系の機能ブロック図が開示されている。同図において、第1の実施の形態の図1の機能ブロック図と異なり、自動化学分析装置200は、微量専用サンプラである第2のサンプラ290と、この第2のサンプラ290を間欠回転駆動、昇降駆動、揺動駆動等を行うため第2サンプラ駆動手段であるモータ294と、第1の実施の形態の図1と共通の各部(符号は200番台にしてある)の構成と、を含んで構成されている。
【0129】
これによって、制御手段260は、第1の実施の形態の各部の構成に加えて、モータ294を制御することによって第2のサンプラ290の駆動を制御する第2サンプラ制御手段である第2サンプラコントロール部265を有することとなる。
【0130】
なお、第1のサンプラ220は、第1サンプラコントロール部262によって制御される。従って、これら第1のサンプラ220及び第2のサンプラ290を制御する第1サンプラコントロール部262及び第2サンプラコントロール部263を、サンプリングシーケンスコントロール部266によって制御することとなる。
【0131】
本例では、通常のサンプル以外の微量サンプル用に専用位置を設けている。ここに、第2の試料容器292をセットする。この場所は、予めシステムに微量用サンプラであることを認識させてあり、この場所でのサンプリングのためのプローブ上下動作や吸引吐出動作を第1のサンプラ時の通常動作と変えて、信頼性良く微量サンプルの吸引を行わせる。
【0132】
また、上記のような自動化学分析装置200において、第2のサンプラ290を設けたことで、サンプリングアーム210の移動距離が短くなる。すなわち、図12に示すように、第2のサンプラ290の配置位置と反応ディスク230との間の移動ストロークは、第1のサンプラ220と反応ディスク230との移動ストロークよりも短いので、サンプリングアーム210が移動する際には、図14に示すように、第2のサンプラ220の選択期間t2では、サンプリングアーム210の移動期間t21となり、通常時の移動期間t11に対して短くなる。また、期間t25も期間t15に対して短くなる。
【0133】
これにより、上述の各実施の形態と同様の作用効果を奏しながらも、微量サンプルを選択する選択期間を短縮することができる。すなわち、サンプリングアームの昇降期間、吸引吐出期間を長く形成したとしても、サンプリングアームの移動期間が短くなったことにより、結果として1サイクルの期間t2を、期間t1に対して全体としてさほど長く形成せずに済む。これによって、複数サイクルでのトータル期間では、昇降及び吐出期間の遅延による装置全体の処理時間への影響はほとんどなくなる。
【実施例8】
【0134】
次に、本発明にかかる第8の実施の形態について、図15に基づいて説明する。図15は、本発明に係る第8の実施の形態を示す説明図である。
【0135】
この自動化学分析装置においては、予め第2の試料容器、あるいは第2の試料容器が配置される配置位置に識別用のマーキングをサンプラ周囲にマークしておき、当該マークを、検出手段であるモニタによって識別するというものである。
【0136】
すなわち、本例の自動化学分析装置400は、図15に示すように、検出手段としてのモニタ492を有している。なお、この自動化学分析装置400は、モニタ492以外の構成は、すべて図2の各構成における各符号を各々400番台にしたのみで、他の構成は図2の構成と実質的に同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。また、本例の自動化学分析装置400は、図15にて符号された各構成があるものとみなす。
【0137】
図16には、このような自動化学分析装置400の制御系の機能ブロック図が開示されている。同図において、自動化学分析装置400は、第1の試料容器422と第2の試料容器424とを識別するための識別手段490と、この識別手段490の識別結果に基づいて各部を制御する制御手段460と、図1に示す第1の実施の形態と共通の各部の構成(符号を400番台にしてある)と、を含んで構成される。なお、本例の自動化学分析装置400は、図16にて符号された各構成があるものとみなす。
【0138】
識別手段490は、サンプラ内の、予め液が第1の量にて注入された第1の試料容器422が配置される少なくとも1つの第1の配置位置(図15のX1)と、第1の量より少ない第2の量にて注入された第2の試料容器424が配置された少なくとも1つの第2の配置位置(図15のX2)と、を識別する機能を有する。
【0139】
そして、識別手段490は、第1の配置位置又は第2の配置位置のいずれか一方を識別するマーキングを検出する検出手段であるモニタ492と、モニタ492の検出結果に基づいて、第1の配置位置と第2の配置位置とを判定制御する検出制御手段であるモニタコントロール部496と、第1及び第2の各試料容器の液面を検出する液面検出手段である液面センサー494と、この液面センサー494を制御するセンサーコントロール部498と、を含んで構成される。
【0140】
制御手段465は、識別手段490の識別結果、すなわち、モニタコントロール部496やセンサーコントロール部498からの各種制御信号及びデータ等の情報に基づいて、第1の配置位置と第2の配置位置とで、各々異なるサイクルにて分配動作を行うように制御する。すなわち、サンプリングシーケンスコントロール部465には、上述の各種制御信号及びデータ等が入力されるとともに、データベース452との間でもデータの入出力が行われる。具体的には、モニタ492からの検出結果がデータベース452に一旦格納され、検出結果に対応して現在位置の容器がいずれの種類の容器であるか対応する情報を制御手段465は引き出すことになる。
【0141】
これにより、サンプラ420の試料が配置される位置特に第2の配置位置には、予めマーキングが施されており、このマーキングをモニタ492で検出することで、第2の配置位置を認識し、識別することができる。
【0142】
加えて、制御手段465は、これらの識別情報に基づいて、マーキング位置にて、通常の動作よりもサンプリングアーム410の昇降動作及びプローブ411の吸引動作が遅くなるように制御する。
【0143】
このようにしてマーキング位置を識別する手法を用いることで、微量サンプルの位置をリアルアイムで的確に把握することができ、微量サンプルの検査の信頼性がさらに向上する。なお、検出手段としては、モニタ492以外にも液面センサー494等の試料量検出手段を用いることができる。
【0144】
さらに、第2の試料容器上にバーコードあるいはその他の識別表示を行うようにし、バーコード読み取り装置あるいはその他の読み取り装置により、その試料容器が第2の試料容器であることを認識するようにしてもよい。
【0145】
なお、本発明にかかる装置と方法は、そのいくつかの特定の実施の形態に従って説明してきたが、当業者は本発明の主旨および範囲から逸脱することなく本発明の本文に記述した実施の形態に対して種々の変形が可能である。例えば、上述の各実施の形態では、サンプリングアームを用いて試料の分配動作を行う例で説明したが、試薬の分配動作を行う場合にも同様に適用することができる。
【0146】
上述の各実施の形態では、例えば被検者が大人等の場合には試料の量が通常の量であり、被検者が子供等の場合には試料の量が微量であることから、通常の量(第1の量)と、微量(第2の量)とに応じてサンプリングアームの昇降速度及びプローブの吸引吐出期間を各々設定することにしたが、このような例に限定されず、大人男性等の通常の量(第1の量)、子供老人等の微量(第2の量)、中高学生、女性等の中間の量(第3の量)の各量に応じて、サンプリングアームの昇降速度及びプローブの吸引吐出期間を各々設定する構成であってもよい。もちろん、これらの第1〜第3の量は、必要に応じて第1〜第nの各量に応じて複数段階的に分け、この分けられた各量に応じて、サンプリングアームの昇降速度及びプローブの吸引吐出期間を各々設定する構成であってもよい。
【0147】
さらに、上述の各実施の形態では、サンプリング動作の制御を、設定手段により予め各昇降、吸引吐出、移動期間を設定し、この設定データに基づく、シーケンス制御により行ったが、これに限定されるものではない。例えば、上述の制御構成に加えて、選択期間、非選択期間等を指定するための複数の各選択信号を出力することにより、シーケンス動作中であっても、任意に各期間を設定手段により指定して制御できるような構成であってもよい。なお、上記各選択信号を生成、制御するための各種手段も有していることは言うまでもない。
【0148】
さらにまた、第1の試料容器と第2の試料容器とを識別する識別手段としては、検出手段であるモニタや液面センサーに限らず、各種のセンサーや光学機器、測定機器等を用いてもよい。
【0149】
また、上述の各実施の形態のいずれか及び変形例の組み合わせによる例も含むことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0150】
微量検体の自動化学分析に適用できる。
【符号の説明】
【0151】
1 自動化学分析装置
10 サンプリングアーム
20 サンプラ
22 第1の試料容器
24 第2の試料容器
30 反応ディスク
32 反応容器
40 サンプリングポンプ
50 設定手段
60 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料を収納する試料容器と、
前記被検試料を吸引し、反応管へ吐出するプローブと、
前記プローブを下降移動又は上昇移動させる昇降手段と、
前記試料容器内における前記被検試料の液面を検知する液面検知手段と、
第1の制御条件、又は少なくとも前記プローブによって前記被検試料を吸引する期間が当該第1の制御条件よりも長い第2の制御条件に基づいて前記プローブを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする自動化学分析装置。
【請求項2】
被検試料を収納する試料容器と、
前記被検試料を吸引し、反応管へ吐出するプローブと、
前記プローブを下降移動又は上昇移動させる昇降手段と、
第1の制御条件、又は少なくとも前記被検試料吸引後の前記プローブの上昇速度が当該第1の制御条件よりも遅い第2の制御条件に基づいて前記昇降手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする自動化学分析装置。
【請求項3】
被検試料を収納する試料容器と、
前記被検試料を吸引し、反応管へ吐出するプローブと、
前記プローブを下降移動又は上昇移動させる昇降手段と、
第1の制御条件、又は少なくとも前記プローブの吸引工程時間が当該第1の制御条件よりも長い第2の制御条件に基づいて前記プローブ又は前記昇降手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする自動化学分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−96776(P2010−96776A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20341(P2010−20341)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【分割の表示】特願2000−223469(P2000−223469)の分割
【原出願日】平成12年7月25日(2000.7.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】