説明

自動原稿送り装置

【課題】自動原稿送り装置の搬送路を開放させる際の操作性を向上させる。
【解決手段】一端部40A側が装置本体12Aに回転可能に支持され、他端部40B側が装置本体12Aから離れる方向に移動して搬送路30を開放する搬送路部材40と、他端部40B側に設けられた回転軸48に取り付けられると共に、装置本体12Aの被掛止部34に掛止される第1回転方向に付勢され、被掛止部34に掛止されて搬送路部材40を搬送路30の閉塞状態に保持する掛止部材44と、搬送路部材40が露出される露出位置へ装置本体12Aを移動させたときに、第1回転方向とは逆方向の第2回転方向における操作位置まで自重によって回転されると共に、操作位置よりも第2回転方向への回転操作に伴い掛止部材44が第2回転方向へ回転して被掛止部34から離脱するように、回転軸48に周方向に遊びを持って取り付けられた操作部材46と、を有する自動原稿送り装置12とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動原稿送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動原稿送り装置内に滞留した原稿を取り除く際に、一端部が支持された原稿押さえ部材の他端部を下方へ移動させ、その原稿押さえ部材の上部に形成された原稿搬送路を開放させるようにした原稿読取装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4331668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、搬送路を開放させる際の操作性を向上できる自動原稿送り装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の自動原稿送り装置は、装置本体内で原稿が搬送される搬送路を構成する搬送路面を備えるとともに、一端部側が装置本体に回転可能に支持され、他端部側が前記装置本体から離れる方向に移動することで、前記搬送路を開放する搬送路部材と、前記搬送路部材の他端部側に設けられた回転軸に取り付けられるとともに、装置本体の被掛止部に掛止される第1回転方向に付勢され、前記被掛止部に掛止されることで、前記搬送路部材を前記搬送路の閉塞状態に保持する掛止部材と、前記搬送路部材が露出される露出位置へ前記装置本体を移動させたときに、前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向における操作位置まで自重又は付勢力によって回転されるとともに、前記操作位置よりも前記第2回転方向への回転操作に伴い前記掛止部材が前記第2回転方向へ回転して前記被掛止部から離脱するように、前記回転軸に該回転軸の周方向に遊びを持って取り付けられた操作部材と、を有することを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に記載の自動原稿送り装置は、請求項1に記載の自動原稿送り装置であって、自重又は付勢力によって前記操作位置まで回転した前記操作部材は、前記装置本体を前記露出位置から戻すように移動させたときに、前記装置本体へ向かう外力が相対的に加えられることによって、前記第1回転方向に回転されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、搬送路部材が露出される露出位置へ装置本体を移動させたときに、操作部材が、自重又は付勢力によって、掛止部材を被掛止部に掛止させる第1回転方向とは逆方向である第2回転方向における操作位置まで回転されない構成に比べて、搬送路を開放させる際の操作性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、装置本体を搬送路部材が露出された露出位置から戻すように移動させたときに、操作部材が、装置本体へ向かう外力が相対的に加えられることによって、掛止部材を被掛止部に掛止させる第1回転方向に回転されない構成に比べて、操作部材を格納し易い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る自動原稿送り装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略図
【図2】本実施形態に係る自動原稿送り装置の搬送路部材が閉塞されている状態を示す概略図
【図3】本実施形態に係る自動原稿送り装置の搬送路部材が開放されている状態を示す概略図
【図4】本実施形態に係る自動原稿送り装置の搬送路を開放させるレバー部材を操作する状態を示す概略斜視図
【図5】本実施形態に係る自動原稿送り装置が閉塞されているときのレバー部材の状態を示す概略図
【図6】本実施形態に係る自動原稿送り装置が開放されているときのレバー部材の状態を示す概略図
【図7】本実施形態に係る自動原稿送り装置を閉塞するときのレバー部材の状態を示す概略図
【図8】本実施形態に係る自動原稿送り装置のレバー部材の構成を示す概略斜視図
【図9】本実施形態に係る自動原稿送り装置のレバー部材の構成を示す概略正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図1で示す矢印UPを画像形成装置100の上方向とする。また、以下においては、自動原稿送り装置12が第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74を閉塞した状態を基準にして、上下方向の表現をする。本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙等の記録媒体Pに画像を記録する画像記録装置110と、原稿の画像を読み取る画像読取装置10と、を備えている。
【0011】
画像読取装置10は、画像形成装置100の上側に配置され、原稿の画像を読み取るとともに、その読み取った画像を画像信号に変換するようになっている。画像記録装置110は、画像形成装置100の下側に配置されており、画像読取装置10が変換した画像信号に基づいて記録媒体Pへ画像を記録可能とされている。まず、画像記録装置110の構成について説明する。
【0012】
画像記録装置110は、サイズの異なる用紙等の記録媒体Pがそれぞれ収容される複数の記録媒体収容部130と、記録媒体Pにトナー画像を形成する画像形成部120と、記録媒体収容部130から画像形成部120へ記録媒体Pを搬送する搬送部148と、画像形成部120によって形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置136と、定着装置136によってトナー画像が定着された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部140と、を備えている。
【0013】
画像形成部120は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像が形成される画像形成ユニット122Y、122M、122C、122Kと、画像形成ユニット122Y、122M、122C、122Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写体の一例としての中間転写ベルト124と、画像形成ユニット122Y、122M、122C、122Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト124に転写する一次転写部材の一例としての一次転写ロール126と、中間転写ベルト124に転写されたトナー画像を記録媒体Pに転写する二次転写部材の一例としての二次転写ロール128と、を備えている。
【0014】
画像形成ユニット122Y、122M、122C、122Kは、形成される画像を保持する像保持体として、一方向(図1で示す矢印A方向)へ回転する感光体ドラム112をそれぞれ有している。
【0015】
各感光体ドラム112の周囲には、感光体ドラム112の回転方向上流側から順に、感光体ドラム112を帯電させる帯電装置114と、帯電した感光体ドラム112を露光して感光体ドラム112に静電潜像を形成する露光装置116と、感光体ドラム112に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置118と、トナー画像が中間転写ベルト124に転写された後の感光体ドラム112の表面に残留しているトナーを除去する除去装置144と、が設けられている。
【0016】
中間転写ベルト124は、二次転写ロール128に対向する対向ロール134及び支持ロール146によって支持され、感光体ドラム112と接触しながら一方向(図1における時計回り方向)へ循環移動するようになっている。
【0017】
一次転写ロール126は、中間転写ベルト124を挟んで、感光体ドラム112に対向している。一次転写ロール126と感光体ドラム112との間には、感光体ドラム112に形成されたトナー画像が、中間転写ベルト124に一次転写される一次転写位置が形成されている。
【0018】
二次転写ロール128は、中間転写ベルト124を挟んで対向ロール134と対向している。二次転写ロール128と対向ロール134との間には、中間転写ベルト124に一次転写されたトナー画像が、記録媒体Pに二次転写される二次転写位置が形成されている。
【0019】
搬送部148は、記録媒体収容部130に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール132と、送出ロール132によって送り出された記録媒体Pを二次転写位置へ搬送する搬送ロール対142と、を備えている。
【0020】
定着装置136は、二次転写位置より搬送方向下流側に配置されており、二次転写位置で転写されたトナー画像を記録媒体Pへ定着させるようになっている。そして、定着装置136よりも搬送方向下流側には、記録媒体Pを記録媒体排出部140へ排出する排出ロール対138が配置されている。
【0021】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置100における、画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0022】
本実施形態に係る画像記録装置110において、記録媒体Pへ画像を形成する場合は、まず記録媒体収容部130から送り出された記録媒体Pが、搬送ロール対142によって二次転写位置へ送り込まれる。
【0023】
一方、中間転写ベルト124には、画像形成ユニット122Y、122M、122C、122Kで形成された各色のトナー画像が重ねられて、カラー画像が形成される。そして、二次転写位置へ送り込まれた記録媒体Pには、中間転写ベルト124に形成されたカラー画像が転写される。
【0024】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置136へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置136によって定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール対138により記録媒体排出部140へ排出される。以上のようにして、一連の画像形成動作が行われる。
【0025】
なお、画像記録装置110の構成は、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、中間転写体を有さない直接転写型の画像記録装置や、インクジェット方式による画像記録装置でもよく、上記以外の構成によって画像が記録可能な画像記録装置としてもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る画像読取装置10の構成について説明する。本実施形態に係る画像読取装置10は、搬送される原稿及び静止された原稿の両方を読み取ることが可能とされている。
【0027】
すなわち、この画像読取装置10は、搬送される原稿の表面における画像及び静止された原稿の表面における画像を読み取る表面読取機構70と、搬送される原稿の裏面における画像を読み取る裏面読取機構94を内蔵した自動原稿送り装置12と、表面読取機構70や裏面読取機構94によって読み取られた画像の画像信号を処理する処理装置92と、を備えている。
【0028】
まず、表面読取機構70について説明する。表面読取機構70は、画像読取装置10の下側に設けられている。表面読取機構70は、静止させた状態で画像が読み取られるべき原稿が載置される載置部材の一例としての第1プラテンガラス72と、搬送される原稿へ照射される光を透過させる透過部材の一例としての第2プラテンガラス74と、を備えている。なお、第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74の周縁部外側には、金属製の外枠部73が設けられている。
【0029】
また、表面読取機構70は、第1プラテンガラス72に沿って移動可能な第1移動体76及び第2移動体78を備えている。第1移動体76には、原稿に光を照射する光照射部80と、原稿で反射した反射光を受光する第1ミラー82と、が設けられている。第2移動体78には、第1ミラー82から得られた光を導く第2ミラー84及び第3ミラー86が設けられている。
【0030】
更に、表面読取機構70は、第3ミラー86から得られた光学像を光学的に縮小する結像用レンズ88と、結像用レンズ88によって結像された光学像を光電変換するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ90と、を備えている。そして、CCDイメージセンサ90によって得られた画像信号は、処理装置92によって露光装置116へ送られるようになっている。
【0031】
ここで、第1プラテンガラス72に載置された原稿の画像を読み取る場合には、第1移動体76と第2移動体78とが、例えば2:1の割合でスキャン方向(矢印B方向)に移動する。このとき、第1移動体76の光照射部80の光が原稿の被読取面に照射されるとともに、その原稿からの反射光が第1ミラー82、第2ミラー84、及び第3ミラー86の順に反射されて結像用レンズ88に導かれる。
【0032】
結像用レンズ88に導かれた光は、CCDイメージセンサ90の受光面に結像される。CCDイメージセンサ90は1次元のセンサであり、1ライン分を同時に処理している。このライン方向(スキャンの主走査方向)の1ラインの読み取りが終了すると、主走査方向とは直交する方向(副走査方向)に第1移動体76を移動させ、原稿の次のラインを読み取る。これを原稿サイズ全体に亘って実行することで、1ページの原稿読み取りを完了させる。
【0033】
一方、自動原稿送り装置12によって搬送された原稿は、第2プラテンガラス74の上を通過するようになっている。このとき、第1移動体76と第2移動体78とは、図1に示す実線の位置に停止した状態にある。まず、原稿の1ライン目の反射光が、第1ミラー82、第2ミラー84、及び第3ミラー86を経て結像用レンズ88にて結像され、CCDイメージセンサ90によって画像が読み込まれる。
【0034】
すなわち、1次元のセンサであるCCDイメージセンサ90によって主走査方向の1ライン分を同時に処理した後、自動原稿送り装置12によって搬送された原稿の次の主走査方向の1ラインが読み込まれる。つまり、原稿の先端が第2プラテンガラス74の読み取り位置に到達した後、その原稿が第2プラテンガラス74の読み取り位置を通過することによって、副走査方向に亘って1ページの原稿読み取りが完了する。
【0035】
次に、裏面読取機構94の構成について説明する。裏面読取機構94は、図2、図3でも示されているように、自動原稿送り装置12に内蔵されており、後述する搬送路部材40の搬送路面38に対向して、原稿の(裏面の)画像を読み取る読取面96Aを備えた読取部の一例としてのイメージセンサ96を備えている。このイメージセンサ96は、発光ダイオード等の発光部からの光を原稿に照射し、反射した光を受光部で受光することによって原稿の画像を光学的に読み取るようになっている。
【0036】
次に、自動原稿送り装置12の構成について説明する。この自動原稿送り装置12は、画像読取装置10の上側に設けられ、表面読取機構70及び裏面読取機構94に原稿を読み取らせるために、その原稿を自動的に搬送するようになっている。そして、この自動原稿送り装置12は、図1の紙面奥側にヒンジ部(図示省略)が設けられ、そのヒンジ部を支点にして、図1の紙面手前側が上下方向へ移動可能となるように、即ち第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74を開放、閉塞可能となるように構成されている。
【0037】
図1で示すように、自動原稿送り装置12は、原稿を収容、載置可能な原稿収容部の一例としての原稿載置台14と、原稿載置台14に載置された原稿を後述する原稿排出部18へ搬送する搬送部20と、搬送部20における搬送路30を搬送された原稿が排出される原稿排出部18とを備えている。
【0038】
原稿載置台14には、原稿載置台14を上昇及び下降させる昇降装置16が設けられている。この昇降装置16は、原稿載置台14に原稿が載置されると、その原稿が後述する送出ロール22に接触する位置まで原稿載置台14を上昇させるようになっている。
【0039】
搬送部20は、原稿載置台14から原稿を送り出す送出ロール22と、原稿載置台14から送り出された原稿が搬送される搬送路30と、搬送路30に沿って原稿を搬送する複数の搬送ロール24と、搬送路30中に配置された第2プラテンガラス74に対向して配置された対向部材26と、原稿排出部18へ原稿を排出させる排出ロール28と、を備えている。
【0040】
また、この自動原稿送り装置12の第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74と対向する下部側には、搬送路30の一部を構成する搬送路面38を備えた搬送路部材40が設けられている。図2、図3で示すように、この搬送路部材40は、側面視で扁平な略台形状に形成されており、その上面側が搬送路面38とされている。
【0041】
そして、この搬送路部材40は、原稿搬送方向下流側(排出ロール28側)である一端部40A側が、自動原稿送り装置12の装置本体12Aに回転可能に支持されている。詳細には、搬送路部材40の一端部40A側に形成された貫通孔(図示省略)に、装置本体12Aに設けられた支軸32が挿入されている。
【0042】
したがって、搬送路部材40の他端部40B側は、その支軸32を中心に上下方向に移動可能に支持され、装置本体12Aから離れる方向である下方へ移動(回転)することにより、搬送路30の一部を開放させることができるようになっている。
【0043】
また、この搬送路部材40の回転軸方向側の側壁部のうち、自動原稿送り装置12の開放側(図1の紙面手前側)における側壁部42には、掛止部材の一例としてのフック部材44と操作部材の一例としてのレバー部材46が設けられている。このフック部材44とレバー部材46とは、搬送路部材40の原稿搬送方向上流側である他端部40B側に回転可能に設けられた断面「D」字状の回転軸48に取り付けられており、正逆両方向に回転するようになっている。
【0044】
詳細には、フック部材44の下端部には、内周縁部が回転軸48の断面形状と略同一の「D」字状とされた円環部44Aが一体に形成されており、その円環部44Aが回転軸48に嵌められて取り付けられている。これにより、フック部材44が回転軸48と一体になって図示の時計回り方向及び反時計回り方向に回転可能となる構成である。
【0045】
そして、レバー部材46の上端部には、図5、図6でも示されているように、内周縁部46Eが回転軸48の断面形状よりも大きい略「D」字状(「D」字型形状に、中心角が鋭角の扇型形状を追加したような形状)とされた円環部46Aが一体に形成されており、その円環部46Aが回転軸48に嵌められて取り付けられている。
【0046】
すなわち、この円環部46Aの内周縁部46Eは、断面「D」字状とされた回転軸48に対して、その周方向(回転方向)に遊びを持つような形状に形成されており、レバー部材46は、その周方向(回転方向)における遊びを除いた範囲内で回転軸48を回転させられる構成になっている。
【0047】
そして、図5で示すように、自動原稿送り装置12によって第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74が閉塞されている(搬送路部材40の下面が露出されていない)状態のときには、レバー部材46のアーム部46Bは、外枠部73の上面に接触して(外枠部73に相対的に上方へ向かって押されて)格納される構成になっている。
【0048】
したがって、図4〜図6で示すように、自動原稿送り装置12を、ヒンジ部を支点として上方へ移動させる(搬送路部材40の下面を露出させる露出位置へ移動させる)と、レバー部材46のアーム部46Bが、回転軸48を中心に自重によって下方(図示の反時計回り方向であり、以下「第2回転方向」という場合がある)へ回転(突出)しつつ、そのアーム部46Bにおける下端部46C(図7参照)が外枠部73上から離れるようになっている。
【0049】
なお、図6で示すように、レバー部材46の円環部46Aの内周縁部46Eにおける直線部分が断面「D」字状とされた回転軸48のフラット面48Aに当たって、レバー部材46(アーム部46B)の下方(第2回転方向)への回転移動が規制された位置が、レバー部材46(アーム部46B)を手指で操作する操作位置となる。
【0050】
また、フック部材44は、図示しないトーションバネ等の付勢部材により、装置本体12Aに設けられた被掛止部の一例としての引掛部34に掛止される方向(図示の時計回り方向であり、以下「第1回転方向」という場合がある)へ常に付勢されている。そして、このフック部材44は、搬送路部材40を上方へ移動させて搬送路30を閉塞したときに、その上端部に形成された爪部44Bが、引掛部34を乗り越えて掛止されるように、図示しないストッパー部によって予め決められた位置(姿勢)に保持されている。
【0051】
したがって、図4、図6で示すように、回転軸48を中心に自重で下方へ回転移動して操作位置に保持されたレバー部材46のアーム部46Bを、更に手指で下方(図示の反時計回り方向であり、第2回転方向)へ向かって回転させると、そのレバー部材46の回転操作に伴って、回転軸48が同方向に回転し、フック部材44が付勢力に抗して同方向へ向かって回転する。
【0052】
これにより、フック部材44の爪部44Bが引掛部34から離脱される構成であり、搬送路部材40のロック(搬送路30の閉塞状態)が解除される構成である。つまり、これにより、搬送路部材40の他端部40B側が下方へ移動可能となる構成であり、搬送路30を開放可能となる構成である(図3参照)。
【0053】
また、このレバー部材46のアーム部46Bが自重で下方へ移動したときの下端部46Cの高さ位置は、図7で示すように、自動原稿送り装置12を、ヒンジ部を支点として下方へ移動させる(上記露出位置から戻すように移動させる)動作に伴って、その下端部46Cが接触する外枠部73によって相対的に押し上げられる(第1回転方向へ回転させられる)高さ位置となっている。
【0054】
詳細には、レバー部材46のアーム部46Bが自重で下方へ移動したときの下端部(自動原稿送り装置12を、ヒンジ部を支点として下方へ移動させたときに外枠部73の上面に最初に当たる部位)46Cとレバー部材46の回転中心Oとを結ぶ直線Lと、外枠部73とでなす角度θが60度以下(θ≦60°)となるように、断面「D」字状とされた回転軸48に対して、円環部46Aの内周縁部46Eの形状が構成されている。
【0055】
これは、その角度θが60度より大きいと、自動原稿送り装置12を、ヒンジ部を支点として下方へ移動させたときに、レバー部材46のアーム部46Bが外枠部73に当たるとともに、第2回転方向へ回転する方向の摩擦力が過大となって突っ張り、そのレバー部材46によって、自動原稿送り装置12が第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74を閉塞できなくなるおそれがあるからである。
【0056】
なお、図4〜図7で示すように、レバー部材46のアーム部46Bの下端部46Cとは上下反対側の壁部には、手指が掛け易いように、かつ手指が滑り難くなるように、側面視略半円弧状に膨出する膨出部46Dが一体に形成されている。
【0057】
また、搬送路部材40の側壁部42とは反対側の側壁部(図示省略)は、自動原稿送り装置12のヒンジ部側(図1の紙面奥側)であって手指を挿入し難いため、引掛部34に掛止される方向へ常に付勢され、レバー部材46の回転操作により側壁部42側のフック部材44と連動して引掛部34から離脱されるフック部材44のみが設けられており、レバー部材46は設けられていない。
【0058】
また、図2、図3で示すように、この搬送路部材40の側壁部42には、搬送路部材40の他端部40B側が支軸32を中心に下方へ移動したときに、装置本体12Aの係止部36に当たって、その移動が規制されるようにする被係止部54を備えた支持部材の一例としてのリンク部材50が設けられている。
【0059】
このリンク部材50は、薄板状のベース部52と、そのベース部52の板厚方向に一体に形成された厚板状の被係止部54と、を含んで構成されており、搬送路部材40と同軸で相対回転可能とされている。詳細には、このリンク部材50の一端部側には、円環部56が形成されており、その円環部56が、搬送路部材40の貫通孔周りに突設された円筒状のボス部45に相対回転可能に嵌められて取り付けられている。
【0060】
そして、このリンク部材50のベース部52において、円環部56とは反対側である他端部側には、鈎状の取付部58が形成されている。この取付部58に付勢部材の一例としてのコイルバネ60の一端部が取り付けられており、コイルバネ60の他端部は、搬送路部材40の側壁部42における他端部40B側、即ち回転軸48に隣接した位置に設けられた取付部47に取り付けられている。
【0061】
このコイルバネ60により、後述する突起部43が後述するストッパー部53に接触する方向(図示の時計回り方向)へ、常に付勢される構成である。すなわち、リンク部材50(ベース部52)の取付部58の直下部分には、板厚方向に平板状に突出する規制部の一例としてのストッパー部53が形成されている。
【0062】
そして、搬送路部材40の側壁部42には、コイルバネ60によって図示の時計回り方向へ付勢され、ストッパー部53に接触する(当たる)被規制部の一例としての突起部43が形成されている。この突起部43は、ストッパー部53に対して垂直に当たる(線接触する)リブ状とされており、この突起部43により、搬送路部材40の他端部40B側の装置本体12Aに近づく方向の相対回転が規制されるようになっている。
【0063】
つまり、図3で示すように、搬送路部材40の他端部40B側が支軸32を中心に下方へ移動し、被係止部54が係止部36に当たってリンク部材50の位置が規制されたときに、コイルバネ60の付勢力によって、突起部43がストッパー部53に接触する(当たる)ことで、搬送路部材40の他端部40B側の装置本体12Aに近づく方向の移動が規制されるようになっている。これにより、搬送路部材40の他端部40B側が開放位置に支持される構成である。
【0064】
以上のような構成の搬送路部材40を備えた自動原稿送り装置12において、次にその作用について説明する。原稿載置台14に原稿を載置し、画像形成装置100を作動させると、自動原稿送り装置12によって原稿が搬送される。
【0065】
すなわち、原稿載置台14の原稿は、送出ロール22によって搬送路30へ送り出され、搬送路30に送り出された原稿は、複数の搬送ロール24によって搬送路30を搬送され、その表面に記録されている画像が第2プラテンガラス74を通過することによって、表面読取機構70に読み込まれる。
【0066】
なお、原稿の裏面に記録されている画像を読み込む場合には、原稿が搬送路面38上を搬送されたときに、裏面読取機構94によって、その裏面の画像が読み込まれる。こうして少なくとも表面の画像が読み込まれた原稿は、排出ロール28によって原稿排出部18へ排出される。
【0067】
ここで、原稿が搬送路面38上で滞留してしまった(所謂ジャムが発生した)場合には、自動原稿送り装置12の手前側を、奥側のヒンジ部を支点として上方へ持ち上げる。すると、搬送路30を開放させる(搬送路部材40のロックを解除する)レバー部材46は、回転軸48に対して、その周方向に遊びを持っているので、そのアーム部46Bが自重によって下方(第2回転方向)へ回転移動しつつ外枠部73から離れる。これにより、レバー部材46のアーム部46Bが装置本体12Aから下方へ突出した操作位置に保持される(図4、図6参照)。
【0068】
したがって、裏面読取機構94が内蔵され、レバー部材46のアーム部46Bと装置本体12Aとの間に隙間が形成され難い(小型化されたために手指を挿入するスペースが確保され難い)構成とされた自動原稿送り装置12の場合であっても、そのアーム部46Bと装置本体12Aとの間に手指を挿入し易くなり、そのアーム部46Bの膨出部46Dに手指を掛け易くなる。よって、搬送路30を開放させる際のレバー部材46に対する操作性を向上させることができる。
【0069】
さて、レバー部材46のアーム部46Bが自重によって下方へ回転移動したら(操作位置に保持されたら)、図4、図6で示すように、手指を膨出部46Dに掛け、アーム部46Bを更に下方(第2回転方向)へ回転移動させる。すると、回転軸48が同方向に回転し、それと一体のフック部材44が付勢力に抗して同方向に回転する。これにより、一対のフック部材44の爪部44Bが引掛部34から離脱し、搬送路部材40のロックが解除される。
【0070】
つまり、図3で示すように、搬送路部材40の他端部40B側が、一端部40A側における支軸32を回転中心として自重で下方へ移動し、搬送路30(搬送路面38)を開放する。なお、このとき、リンク部材50の被係止部54が、装置本体12Aの係止部36に当たって、搬送路部材40の他端部40B側の下方への移動が規制される。
【0071】
そして、係止部36に係止された被係止部54を備えたリンク部材50が、コイルバネ60を介して、即ちコイルバネ60の付勢力によって突起部43がストッパー部53に当たることにより、搬送路部材40の他端部40B側を支持する。これにより、搬送路部材40の他端部40B側は、図3で示す開放位置に支持され、搬送路面38上に滞留した原稿が取り除き可能となる。
【0072】
一方、搬送路部材40によって搬送路30(搬送路面38)を閉塞する場合には、搬送路部材40の他端部40B側を手動で上方へ移動させる。すると、一対のフック部材44(爪部44B)は、常に引掛部34に掛止される方向に付勢され、かつ引掛部34を乗り越えて掛止可能となる姿勢(位置)に保持されているので、自動的にその引掛部34に掛止される。これにより、搬送路部材40は、搬送路30を閉塞した状態に保持される。
【0073】
そして、自動原稿送り装置12を、ヒンジ部を支点として下方へ移動させる(第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74を閉塞する)と、レバー部材46の下端部46Cが外枠部73に当たり、その下方への移動動作に伴ってアーム部46Bが相対的に上方へ向かって押圧され(外力が加えられ)、第1回転方向に回転移動する。
【0074】
ここで、このレバー部材46の下端部46Cと回転中心Oとを結ぶ直線Lと、外枠部73とでなす角度θが60度以下とされている。したがって、自動原稿送り装置12のヒンジ部を支点とした下方への移動に伴い、レバー部材46のアーム部46Bは、外枠部73に当たって突っ張るような不具合はなく、その外枠部73によって相対的に上方へ向かって押圧され、図5で示す位置に自動的に保持される(容易に格納される)。
【0075】
なお、図8、図9で示すように、フック部材44とレバー部材46との間の回転軸48に付勢部材の一例としてのトーションバネ62を配置してもよい。すなわち、自動原稿送り装置12を、ヒンジ部を支点として上方へ移動させる動作に伴って、レバー部材46のアーム部46Bが、そのトーションバネ62の付勢力によって強制的に下方へ回転(突出)しつつ、その下端部46Cが外枠部73上から離れるように構成してもよい。
【0076】
詳細には、トーションバネ62のコイル部62Aを回転軸48に嵌め、トーションバネ62の一端部62Bをフック部材44に、その爪部44Bが第1回転方向に付勢されるように係止させる。そして、トーションバネ62の他端部62Cをレバー部材46に、そのアーム部46Bが第2回転方向に付勢されるように係止させる。
【0077】
これによれば、レバー部材46のアーム部46Bが自重によって下方へ回転移動し難い形状(例えば、レバー部材46の重心が回転中心側に偏っている形状)であっても、そのアーム部46Bを強制的に下方へ(操作位置まで)回転移動させることができる。したがって、上記と同様に、アーム部46Bと装置本体12Aとの間に手指を挿入し易くなり、搬送路30を開放させる際のレバー部材46に対する操作性を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態に係るレバー部材46のアーム部46Bは、自動原稿送り装置12が第1プラテンガラス72及び第2プラテンガラス74を閉塞しているときには、常に金属製の外枠部73に接触する構成になっている。したがって、レバー部材46を導電性樹脂材料又は金属材料で成形すれば、そのレバー部材46を自動原稿送り装置12の接地手段(アース)として利用することができる。
【0079】
以上、本実施形態に係る自動原稿送り装置12について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る自動原稿送り装置12は、図示のものに限定されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【0080】
例えば、リンク部材50及びコイルバネ60は、搬送路部材40の側壁部42のみに設けられる構成に限定されるものではなく、それとは反対側の側壁部にも設けられる構成にしてもよい。また、表面読取機構70及び裏面読取機構94としては、上記の構成に限定されるものではなく、上記以外の構成により、原稿の画像を読み取る構成としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 画像読取装置
12 自動原稿送り装置
12A 装置本体
30 搬送路
34 引掛部(被掛止部の一例)
38 搬送路面
40 搬送路部材
40A 一端部
40B 他端部
44 フック部材(掛止部材の一例)
46 レバー部材(操作部材の一例)
48 回転軸
70 表面読取機構
94 裏面読取機構
100 画像形成装置
110 画像記録装置
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内で原稿が搬送される搬送路を構成する搬送路面を備えるとともに、一端部側が装置本体に回転可能に支持され、他端部側が前記装置本体から離れる方向に移動することで、前記搬送路を開放する搬送路部材と、
前記搬送路部材の他端部側に設けられた回転軸に取り付けられるとともに、装置本体の被掛止部に掛止される第1回転方向に付勢され、前記被掛止部に掛止されることで、前記搬送路部材を前記搬送路の閉塞状態に保持する掛止部材と、
前記搬送路部材が露出される露出位置へ前記装置本体を移動させたときに、前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向における操作位置まで自重又は付勢力によって回転されるとともに、前記操作位置よりも前記第2回転方向への回転操作に伴い前記掛止部材が前記第2回転方向へ回転して前記被掛止部から離脱するように、前記回転軸に該回転軸の周方向に遊びを持って取り付けられた操作部材と、
を有することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項2】
自重又は付勢力によって前記操作位置まで回転した前記操作部材は、前記装置本体を前記露出位置から戻すように移動させたときに、前記装置本体へ向かう外力が相対的に加えられることによって、前記第1回転方向に回転されることを特徴とする請求項1に記載の自動原稿送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81147(P2013−81147A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221372(P2011−221372)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】