説明

自動取引装置、及び媒体搬送方法

【課題】挿入排出口を他の媒体が塞いだ場合でも、挿入排出口から排出されるべき一の媒体を適切に排出する
【解決手段】媒体の挿入口及び排出口を兼用する挿入排出口と、前記媒体を搬送する搬送部材と、前記搬送部材により搬送される前記媒体の搬送状態を検知する検知部材と、排出されるべき一の媒体を前記挿入排出口に向かう排出方向に搬送する際に、他の媒体が前記挿入排出口に挿入されて前記一の媒体が排出されないことを前記検知部材が検知した場合には、前記排出方向の反対方向に前記一の媒体を所定量搬送した後に、前記一の媒体を前記排出方向に再度搬送するリトライ搬送を実行する制御部と、を備えることを特徴とする、自動取引装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置、及び媒体搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関のATM(Automated teller machine)に代表される自動取引装置は、銀行等の金融機関の支店やコンビニエンスストア等の店舗に設置されている。このような自動取引装置は、顧客との間で通帳や取引カードを用いた取引処理を行う。
【0003】
上記の自動取引装置は、通帳が挿入されると共に、通帳が排出される挿入排出口を有する。このため、挿入排出口から挿入された通帳は、自動取引装置内で搬送中に印字等の取引処理が行われた後に、挿入排出口から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−210122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、挿入排出口が通帳の挿入口及び排出口を兼用するため、排出される一の通帳が挿入排出口に搬送される際に、顧客が他の通帳を挿入排出口に挿入して、挿入排出口を塞ぐことがある。かかる場合には、他の通帳が障害物となり、一の通帳が排出されず、取引処理の正常な運用が妨げられることとなる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、挿入排出口を他の媒体が塞いだ場合でも、挿入排出口から排出されるべき一の媒体を適切に排出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、媒体の挿入口及び排出口を兼用する挿入排出口と、前記媒体を搬送する搬送部材と、前記搬送部材により搬送される前記媒体の搬送状態を検知する検知部材と、排出されるべき一の媒体を前記挿入排出口に向かう排出方向に搬送する際に、前記一の媒体が排出されないことを前記検知部材が検知した場合には、前記排出方向の反対方向に前記一の媒体を所定量搬送した後に、前記一の媒体を前記排出方向に再度搬送するリトライ搬送を実行する制御部と、を備えることを特徴とする、自動取引装置が提供される。
【0008】
かかる自動処理装置によれば、リトライ搬送を実行することで、例えば他の媒体は挿入方向へ搬送されず、また一の媒体が他の媒体に接触する(押圧する)ことで、他の媒体に衝撃や振動が伝わる。このため、顧客は、他の媒体を挿入排出口に挿入するタイミングでないことに気付き、例えば他の媒体を取り除く処置を行う。これにより、その後、一の媒体を適切に排出できる。
【0009】
また、前記制御部は、前記リトライ搬送を実行した後に前記一の媒体が排出されない状態が解消されない場合には、前記リトライ搬送を繰り返し実行することとしても良い。
【0010】
また、報知を行う報知部を更に備え、前記制御部は、前記リトライ搬送を実行する際に、排出される前記一の媒体の搬送状態に関する報知を前記報知部に行わせることとしても良い。
【0011】
また、前記報知部は、音声を出力するスピーカーと、情報を表示する表示部と、光を発光する発光部のうちの少なくともいずれか一つであることとしても良い。
【0012】
また、前記制御部は、前記リトライ搬送を繰り返し実行し、前記報知部による報知パターンを、前記リトライ搬送を繰り返す度に異ならせることとしても良い。
【0013】
また、前記搬送部材は、回転することで前記媒体を搬送する搬送ローラであり、前記制御部は、前記リトライ搬送を実行する際の前記搬送ローラの回転速度を、前記リトライ搬送以外で前記媒体を搬送する際の前記搬送ローラの回転速度よりも小さくすることとしても良い。
【0014】
また、前記制御部は、前後の前記リトライ搬送の間の間隔を異ならせながら、前記リトライ搬送を複数回実行することとしても良い。
【0015】
また、前記挿入排出口よりも挿入方向下流側に設けられた開閉可能なシャッタを更に備え、前記シャッタは、前記挿入排出口から挿入された前記媒体が前記シャッタを通過してから、前記挿入排出口から排出されるべく搬送される迄は、閉じた状態であることとしても良い。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、挿入口及び排出口を兼用する挿入排出口から排出されるべき一の媒体を前記挿入排出口に向かう排出方向に搬送するステップと、前記排出方向に搬送される前記一の媒体の搬送状態を検知するステップと、前記一の媒体の前記排出方向への搬送の際に、前記一の媒体が排出されないことが検知された場合には、前記排出方向の反対方向に前記一の媒体を所定量搬送した後に、前記一の媒体を前記排出方向に再度搬送するリトライ搬送を実行するステップと、を有する、媒体搬送方法が提供される。
【0017】
かかる媒体搬送方法によれば、リトライ搬送を実行することで、他の媒体は挿入方向へ搬送されず、また一の媒体が他の媒体に接触することで、他の媒体に衝撃や振動が伝わる。このため、顧客は、他の媒体を挿入排出口に挿入するタイミングでないことに気付き、例えば他の媒体を取り除く処置を行う。これにより、その後、一の媒体を適切に排出できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、挿入排出口を他の媒体が塞いだ場合でも、挿入排出口から排出されるべき一の媒体を適切に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係る自動取引装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】通帳処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】通帳処理装置の内部構成を示す図である。
【図4】通帳を示す斜視図である。
【図5】通帳処理時の通帳の搬送状態を示す図である。
【図6】通帳排出時のジャムを説明するための図である。
【図7】リトライ搬送処理時の通帳処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】リトライ搬送処理時の搬送路での通帳の状態を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る通帳処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
<1.第1の実施形態>
(1−1.自動取引装置の構成)
自動取引装置は、例えば現金自動預払機であり、銀行等の金融機関の支店やコンビニエンスストア等の店舗に設置される。自動取引装置は、顧客との間で媒体の一例である通帳や取引カードを用いた取引処理を行う。
【0022】
図1を参照しながら、第1の実施形態に係る自動取引装置1の外観構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る自動取引装置1の外観構成を示す斜視図である。図1に示すように、自動取引装置1は、前面側に、操作表示部10と、挿入排出口の一例である通帳挿入排出口20と、第1発光部22と、カード挿入排出口30、第2発光部32と、スピーカー40等を有する。
【0023】
操作表示部10は、LCD等の表示画面とタッチパネル等の入力手段との組み合わせで構成される。表示画面は、取引選択画面や各種の入力画面、顧客の処置を促す画面等を表示する。例えば、ジャム発生時に、顧客の処置に関するガイダンスが表示画面に表示される。入力手段は、顧客からの入力を受け付ける。
【0024】
通帳挿入排出口20は、取引される顧客の通帳が挿入されると共に、取引後の通帳が排出される開口である。すなわち、通帳挿入排出口20は、通帳の挿入口及び排出口を兼用する。通帳挿入排出口20から通帳が挿入されると、装置内部の通帳処理装置(後述する通帳処理装置100)は、通帳の磁気ストライプ等に記録されている情報を読み書きし、取引内容を通帳に記帳する。なお、通帳処理装置の詳細構成については、後述する。
【0025】
第1発光部22は、通帳の挿入や通帳の排出を顧客に知らせるために、光を発光する。第1発光部22は、通帳挿入排出口20の周囲に設けられている。第1発光部22は、例えばLEDであり、所定のパターンで発光する。
【0026】
カード挿入排出口30は、取引される顧客のキャッシュカード等の取引カードが挿入されると共に、取引後の取引カードが排出される開口である。カード挿入排出口30から取引カードが挿入されると、装置内部のカード処理装置(不図示)は、取引カードの磁気ストライプやICチップ等に記録されている情報を読み書きする。
【0027】
第2発光部32は、取引カードの挿入や取引カードの排出を顧客に知らせるために、光を発光する。第2発光部32は、カード挿入排出口30の周囲に設けられている。第2発光部32は、例えばLEDであり、所定のパターンで発光する。
【0028】
スピーカー40は、取引処理の際に顧客に処置を促すように、音声を出力する。例えば、ジャム発生時に、顧客の処置に関するアナウンスをスピーカー40が発する。
【0029】
(1−2.通帳処理装置の構成)
図2〜図4を参照しながら、自動取引装置1の通帳処理装置100の構成について説明する。図2は、通帳処理装置100の構成を示すブロック図である。図3は、通帳処理装置100の内部構成を示す図である。図4は、通帳200を示す斜視図である。
【0030】
図2に示すように、通帳処理装置100は、搬送ユニット110と、ストライプ読取ユニット120と、ターンページユニット130と、ページ読取ユニット140と、印字ユニット150と、検知ユニット160と、制御ユニット170と、を有する。
【0031】
搬送ユニット110は、通帳挿入排出口20から挿入された通帳200を装置内で搬送する。搬送ユニット110は、図3に示すように、通帳200が搬送される搬送路112と、搬送路112に沿って設けられた搬送部材の一例である搬送ローラ114とを有する。搬送ローラ114は、通帳200を挟持しながら回転することで、通帳200を搬送方向(挿入方向又は排出方向)に搬送する。ストライプ読取ユニット120、ターンページユニット130、ページ読取ユニット140、及び印字ユニット150も、搬送路112上に設けられている。
【0032】
搬送ユニット110は、図3に示すように、通帳挿入排出口20よりも挿入方向下流側の近傍に設けられた開閉可能なシャッタ116を有する。シャッタ116は、通帳200が挿入可能でない時に、閉じて搬送路112を遮蔽し、通帳200が通帳挿入排出口20から挿入される時や排出される時に、開いて搬送路112を開放する。例えば、シャッタ116は、通帳挿入排出口20から挿入された一の通帳200がシャッタ116を通過してから、通帳挿入排出口20から排出されるべく搬送される迄は、閉じた状態を維持する。これにより、装置内で複数の通帳200が搬送されることを防止している。
【0033】
ストライプ読取ユニット120は、磁気ヘッド122(図3)を有し、図4に示す通帳200の磁気ストライプ216に記録された通帳データを読み取る。通帳データは、通帳200の口座番号や通帳種別、通帳200の印字が行われた印字済行、印字が行われた頁数等である。また、磁気ヘッド122は、通帳200に印字が行われたときに磁気ストライプ216に最終印字済行と最終印字頁等を書き込む機能も有する。
【0034】
ターンページユニット130は、搬送中の通帳200の頁捲りを行うためのものである。ターンページユニット130は、頁捲りローラ132(図3)を有し、通帳200の所定の頁まで捲る機能を有する。
【0035】
ページ読取ユニット140は、CCDセンサ142(図3)を有し、通帳200の印字面201に印字された頁マーク212(図4参照)を読み取る。また、ページ読取ユニット140は、印字面201の取引情報の日付214を読み取ることで、通帳200の印字済行を検出する。
【0036】
印字ユニット150は、印字ヘッド152(図3)とインクリボンを有し、通帳200に未記帳の取引データを印字する。印字ヘッド152は、搬送方向に直交する方向に移動可能である。印字ヘッド152は、ターンページユニット130で所定の頁に捲れた通帳200に対して、印字を行う。
【0037】
検知ユニット160は、通帳処理装置100内において通帳200を検知するためのものである。検知ユニット160は、図3に示すように、搬送路112の通帳挿入排出口20とシャッタ116の間に位置し、通帳200の挿入を検知するための挿入検知センサ162を有する。挿入検知センサ162が通帳200を検知すると、シャッタ116が開く。
【0038】
検知ユニット160は、搬送ローラ114で搬送される通帳200の搬送状態を検知するための搬送検知センサ164を、搬送路112に沿って複数有する。挿入検知センサ162及び搬送検知センサ164は、通帳200を検知するとON状態となり、通帳200を検知しないとOFF状態となる。このため、通帳200が挿入検知センサ162、搬送検知センサ164を通過する際に、ON状態からOFF状態へ(又は、OFF状態からON状態へ)、状態が切り替わる。
【0039】
制御ユニット170は、通帳処理装置100の全体動作を制御する。制御ユニット170は、図2に示すように、制御部172と、記憶部174を有する。制御部172は、上述した各ユニットの動作を制御する。記憶部174は、制御部162が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。
【0040】
通帳処置装置100は、搬送路112にてジャムが発生した場合や、顧客が通帳200を取り忘れた場合に、通帳200を取り込む取込部180(図3)を有する。取込部180には、搬送路切替機構(不図示)により、通帳200が搬送路112から搬送されて収納される。取込部180に収納された通帳200は、店員等によって回収される。
【0041】
(1−3.通帳処理)
図5を参照しながら、上述した構成の通帳処理装置100の通帳処理時の動作について説明する。図5は、通帳処理時の通帳200の搬送状態を示す図である。
【0042】
通帳処理は、顧客等が操作表示部10の表示画面で処理を選択することで開始される。また、操作表示部10は、通帳挿入排出口20に通帳200の挿入を促すガイダンスを表示する。
【0043】
ここで、顧客等が通帳200を通帳挿入排出口20に挿入したものとする(図3の状態)。すると、挿入された通帳200を挿入検知センサ162が検知し、シャッタ116が開く。シャッタ116が開いた状態で、搬送ローラ114が、回転することで通帳200を挿入方向に搬送する(図5(a))。通帳200が搬送される際に、搬送検知センサ164(164a〜164h)によって搬送状態が検知される。
【0044】
搬送中の通帳200が、搬送検知センサ164bによって磁気ヘッド122に至ったと検知されると、磁気ヘッド122が、通帳200の通帳ストライプ216に記録された通帳データを読み取る。読み取った通帳データに含まれる印字済行、印字頁から、通帳200の印字位置が決定される。一方で、搬送検知センサ164aが通帳200を検知しなくなると、図5(b)に示すようにシャッタ116が閉じる。
【0045】
通帳200は、後続するCCDセンサ142に向けて挿入方向に更に搬送される。搬送検知センサ164dによって通帳200がCCDセンサ142に至ったと検知されると、CCDセンサ142は、通帳200の開いている頁を確認する。印字すべき頁が開いている場合には、通帳200は、挿入方向に搬送され、印字ヘッド152に至る。
【0046】
一方で、印字すべき頁が開いていない場合には、通帳200は、排出方向に向けて搬送され、頁捲りローラ132に至る。頁捲りローラ132は、通帳200の印字すべき頁に捲る。印字すべき頁が開いた通帳200は、挿入方向に搬送され、印字ヘッド152に至る。
【0047】
搬送検知センサ164eによって通帳200が印字ヘッド152に至ったと検知されると(図5(c))、印字ヘッド152は、通帳200に取引データ等の所定の情報を印字する。印字が完了すると、通帳200は排出方向に搬送される。搬送中の通帳200が、搬送検知センサ164cによって磁気ヘッド122に至ったと検知されると、磁気ヘッド122は、通帳200の磁気ストライプ216に、更新された最終印字済行と最終印字頁等の情報を書き込む。
【0048】
その後、通帳200は、図5(d)に示すように、排出方向に更に搬送され、シャッタ116が開く。そして、搬送検知センサ164aによって通帳200の通過を検知すると、所定の距離を通帳200が通過したと判断されるタイミング(通帳200がシャッタ116を通過したと判断されるタイミング)で、シャッタ116が閉じる。
【0049】
そして、搬送ローラ114の回転も停止し、通帳200が、図5(e)に示すように、シャッタ116を通過した状態で停止する。顧客が通帳200を引き抜くことで、挿入検知センサ162がOFF状態となり、一連の処理が完了する。
【0050】
(1−4.通帳排出時のジャム)
上述したように印字が完了した通帳200は挿入排出口20から排出されるが、通帳200が排出される直前に顧客が他の通帳200を挿入排出口20に挿入することで、排出されるべき通帳200が排出されずに搬送路112で詰まる事象(いわゆるジャム)が発生することがある。
【0051】
図6を参照しながら、上記の事象を具体的に説明する。図6は、通帳排出時のジャムを説明するための図である。通帳処理時に、通帳200(ここでは、通帳200aと呼ぶ)の排出が行われる前はシャッタ116が閉じて(図5(b)、図5(c)参照)、搬送路112が遮蔽されているので、顧客が他の通帳200bを挿入排出口20に挿入した状態で待機することは通常考えられない。
【0052】
しかし、通帳200aが排出される際には、図6(a)に示すようにシャッタ116が開く。このようにシャッタが開かれていると、顧客が通帳を挿入できると勘違いして、図6(b)に示すように通帳200aが排出される前に顧客が他の通帳200bを挿入排出口20に挿入して待機している場合がある。ここで、顧客が通帳200bを挿入排出口20に挿入して待機している理由は、搬送ローラ114が回転して通帳200bを挿入方向に搬送するのを待っているためである。
【0053】
通帳200bが挿入排出口20に挿入されて待機している状態で通帳200aが排出方向に搬送される場合には、通帳200bが挿入排出口20を塞ぐ障害物となり、通帳200aが排出されずに搬送路112で詰まる。このような事象が発生すると、通帳処理装置100は、ジャムが発生したと判断して、通帳200aを取込部180に搬送してしまう。かかる場合には、顧客は通帳200aを受け取ることができないので、通帳処理の正常な運用の妨げとなる。
【0054】
そこで、本実施形態に係る通帳処理装置100は、上記の問題点を解消すべく、媒体搬送方法としてジャム解消処理を行う。このジャム解消処理は、通帳200bを挿入排出口20に挿入するタイミングでないことを顧客に気付かせることで、顧客に通帳200bを取り除かせて通帳200aを排出させることを目的としている。
【0055】
そして、ジャム解消処理として、排出されるべき一の通帳200aを排出方向に搬送する際に、他の通帳200bが通帳挿入排出口20に挿入されて通帳200aが排出されないことが検知された場合には、挿入方向に通帳200aを所定量搬送した後に、通帳200aを排出方向に再度搬送する(リトライ搬送)媒体搬送方法が実行される。リトライ搬送の詳細について、以下に説明する。
【0056】
(1−5.リトライ搬送処理)
図7及び図8を参照しながら、リトライ搬送処理時の通帳処理装置100の動作について説明する。図7は、リトライ搬送処理時の通帳処理装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図8は、リトライ搬送処理時の搬送路112での通帳200の状態を示す図である。
【0057】
リトライ搬送処理時の通帳処理装置100の動作は、制御ユニット170によって実行される。すなわち、制御部172が、記憶部174に記憶されたプログラムを実行することで、下記に説明する動作を実行する。
【0058】
まず、制御部172は、印字が完了した通帳200aが、一の回転方向(ここでは、正方向と呼ぶ)に回転する搬送ローラ114により排出方向に搬送される際に、検知ユニット160によってジャムが発生したか否かを判定する(ステップS102)。すなわち、搬送検知センサ164aを通帳200aが通過したか否かを判定する。
【0059】
図8(a)に示すように、通帳200bが挿入排出口20を塞ぐために通帳200aが搬送検知センサ164aを所定時間内に通過しない場合には、制御部172は、ステップS102においてジャムが発生したと判断し(Yes)、ジャムを解消する制御を行う。
【0060】
ジャムを解消すべく、制御部172は、搬送ローラ114を正方向の逆方向に所定量だけ回転させて、通帳200aを挿入方向へ所定量搬送する(ステップS104)。すると、通帳200aは、図8(b)に示す状態で停止する。ここで、停止位置は、挿入方向へ搬送された通帳200aが、搬送検知センサ164aを通過しない位置である。このため、搬送検知センサ164aは、ON状態を維持する。なお、通帳200aが搬送される際に、通帳200bは搬送ローラ114に挟持されていないので、搬送されない。
【0061】
その後、制御部172は、搬送ローラ114を正方向に回転させて、通帳200aを排出方向に搬送する(ステップS106)。このように、制御部172は、ジャムを解消すべく、ステップS104及びS106のリトライ搬送を行う。このようなリトライ搬送を行うことで、通帳200bは挿入方向へ搬送されず、また通帳200aが通帳200bに接触する(押圧する)ことで、通帳200b(又は、通帳200bを持っている顧客)に衝撃や振動が伝わる。このため、顧客は、通帳200bを挿入排出口20に挿入するタイミングでないことに気付き、例えば通帳200bを取り除く処置を行う。これにより、その後、通帳200aが排出されることとなる。
【0062】
ところで、リトライ搬送を行う際の搬送ローラ114の回転速度は、通常搬送時の搬送ローラ114の回転速度と異なっても良い。例えば、制御部172は、リトライ搬送を行う際の搬送ローラ114の回転速度を、通常搬送時の搬送ローラ114の回転速度よりも小さくする。これにより、リトライ搬送に要する時間が長くなり、また回転速度の小さい搬送ローラ114で搬送される通帳200aが通帳200bにゆっくり接触するため、通帳200bへの衝撃や振動も大きくなる。このため、顧客は、通帳200bを挿入排出口20に挿入するタイミングでないことに気付きやすくなる。この結果、通帳200bが取り除かれやすくなる。
【0063】
図7のフローチャートに戻って、説明を続ける。リトライ搬送後に、図8(c)に示すように通帳200bが挿入排出口20を塞ぐ状態が継続している場合には、搬送検知センサ164aがON状態を継続し、制御部172は、通帳200aが排出されていないと判定する(ステップS108:No)。そして、制御部172は、リトライ搬送が所定回数だけ繰り返されたか否かを判定する(ステップS110)。
【0064】
ステップS110でリトライ搬送が所定回数繰り返された場合には(Yes)、制御部172は、スピーカー140によりアラーム(警告音)を発生する(ステップS112)。これにより、顧客は、通帳200bを通帳挿入排出口20に挿入したことに起因して異常事態が発生したことに気付く。また、制御部172は、例えば通帳200aを挿入方向に搬送させて、取込部180に収納させても良い。
【0065】
ステップS110でリトライ搬送が所定回数行われていない場合には(No)、制御部172は、リトライ搬送を再度行う(ステップS104、S106)。すなわち、制御部172は、リトライ搬送を実行した後に通帳200aが排出されない状態が解消されない場合には、リトライ搬送を繰り返し実行する。このようにリトライ搬送が繰り返し実行されることで、通帳200bに衝撃や振動が伝わる回数が増えるので、通帳200bが取り除かれる可能性が高まる。
【0066】
ここで、リトライ搬送を複数回行う際には、リトライ搬送を行う間隔を変化させても良い。例えば、制御部172は、前後のリトライ搬送の間隔を異ならせるように(具体的には、段階的に長くするように)、リトライ搬送を複数回行わせる。また、リトライ搬送時を複数回行う際に、搬送ローラ114の回転速度をそれぞれ異ならせても良い。これにより、不規則なタイミングで通帳200bに衝撃や振動が伝わり、通帳200bを挿入排出口20に挿入するタイミングでないことに気付きやすくなる。
【0067】
そして、リトライ搬送が所定回数行わる間に、通帳200bが取り除かれた場合には、ステップS106で搬送される通帳200aが、図8(d)に示すように搬送検知センサ164aを通過する。これにより、搬送検知センサ164aの状態がON状態からOFF状態に切り替わり、制御部172は、通帳200aが排出されたと判定する(ステップS108:Yes)。
【0068】
搬送検知センサ164aがOFF状態に切り替わったから所定時間(通帳200aがシャッタ116を通過するのに要する時間)が経過すると、制御部172は、図8(e)に示すようにシャッタ116を閉じる(ステップS114)。その後、顧客は、排出された通帳200aを挿入排出口20から引き抜くことになる。
【0069】
(1−6.自動取引装置1の有効性)
上述したように、第1の実施形態に係る自動取引装置1は、図7及び図8に示すように、排出されるべき一の通帳200aを排出方向に搬送する際に、他の通帳200bが通帳挿入排出口20に挿入されて通帳200aが排出されないことが検知された場合には、挿入方向に通帳200aを所定量搬送した後に、通帳200aを排出方向に再度搬送するリトライ搬送を実行する。
【0070】
このようなリトライ搬送を実行することで、通帳200bは挿入方向へ搬送されず、また通帳200aが通帳200bに接触する(押圧する)ことで、通帳200bに衝撃や振動が伝わる。このため、顧客は、通帳200bを通帳挿入排出口20に挿入するタイミングでないことに気付き、例えば通帳200bを取り除く処置を行う。これにより、その後、通帳200aが適切に排出されることとなる。この結果、通帳200bに起因してジャムになった通帳200aが取込部180に取り込まれて正常な運用が妨げられることを防止できる。
【0071】
上記では、排出される一の通帳200aが通帳挿入排出口20に搬送される際に、顧客が他の通帳200bを挿入排出口20に挿入して挿入排出口20を塞ぐことにより、他の通帳200bが障害物となる例を説明した。しかし、障害物となるのは他の通帳に限られず、例えば、顧客が挿入排出口20に手を添えることにより、顧客の手が一の通帳200aの排出の障害物となる場合もある。このような場合でも、上述したリトライ搬送を実行することで、顧客の手に衝撃や振動が伝わり、顧客は挿入排出口20に添えた手を退かせることになる。この結果、一の通帳200aが適切に排出されることとなる。
【0072】
<2.第2の実施形態>
図9を参照しながら、第2の実施形態に係る通帳処理装置100の動作について説明する。図9は、第2の実施形態に係る通帳処理装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図9のフローチャートの処理は、前述した図7のフローチャートの処理と並行して実施される。
【0073】
まず、制御部172は、印字が完了した通帳200aが搬送ローラ114により排出方向に搬送される際に、検知ユニット160によってジャムが発生したか否かを判定する(ステップS202)。通帳200bが挿入排出口20を塞いで通帳200aが搬送検知センサ164aを通過しない場合には(ステップS204:Yes、図8(a)参照)、制御部172は、通帳200aが排出されないことを、スピーカー40や第1発光部22によって報知する(ステップS204)。すなわち、制御部172は、リトライ搬送を実行する際に、通帳200aの搬送状態に関する報知を行わせる。
【0074】
例えば、スピーカー40は、「通帳が出ますのでお取り下さい」又は「挿入排出口を塞がないで下さい」等の内容をアナウンスする。また、第1発光部22は、光を点灯・点滅する。このように顧客が分かりやすい方法で顧客に注意を促すため、顧客は、通帳200bを挿入排出口20に挿入するタイミングでないことに気付き、通帳200bを取り除く処置を行う可能性が高まる。なお、ステップS204の報知は、スピーカー40と第1発光部22の両方に実行させても良く、いずれか一方のみに実行させても良い。
【0075】
その後、通帳200bが取り除かれて、通帳200aがリトライ搬送されて排出される場合には(ステップS206:Yes)、制御部172は、スピーカー40や第1発光部22による報知を停止させる(ステップS208)。
【0076】
一方で、通帳200bが取り除かれずに、通帳200aがリトライ搬送されても排出されない場合には(ステップS206:No)、制御部172は、スピーカー40や第1発光部22による報知パターンを変更する(ステップS210)。例えば、制御部172は、スピーカー40でアナウンスする内容を変更し、第1発光部22による点灯・点滅パターンを変更する。このように、スピーカー40や第1発光部22による報知パターンを変えて再度報知する(リトライ搬送を繰り返す度に報知パターンを異ならせる)ことで、顧客は、通帳200bを挿入排出口20に挿入するタイミングでないことに気付き、通帳200bを取り除く処理を行いやすくなる。
【0077】
なお、上記では、ステップS204でスピーカー40や第1発光部22による報知を行うこととしたが、これに限定されず、操作表示部10による報知を行っても良い。例えば、操作表示部10は、挿入排出口20を塞がないようにガイダンスを表示する。すなわち、操作表示部10と第1発光部22とスピーカー40の少なくともいずれか一つが、報知部の機能を有する。
【0078】
上述した第2の実施形態によれば、リトライ搬送を実行する際に報知部により報知を行うことで、顧客は分かりやすい方法で注意を促されることになる。このため、顧客は、通帳200bを挿入排出口20に挿入するタイミングでないことに気付き、通帳200bを取り除く処置を行う可能性が高まる。この結果、通帳200aをその後に適切に排出できる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
上記では、挿入排出口から挿入・排出される媒体として、通帳挿入排出口20から挿入・排出される通帳200を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、媒体は、カード挿入排出口30から挿入・排出される取引カードであっても良い。かかる場合には、第1発光部22に代わって、第2発光部32が報知を行う。
【符号の説明】
【0081】
1 自動取引装置
10 操作表示部
20 通帳挿入排出口
22 第1発光部
40 スピーカー
100 通帳処理装置
110 搬送ユニット
112 搬送路
114 搬送ローラ
116 挿入排出口
120 ストライプ読取ユニット
130 ターンページユニット
140 ページ読取ユニット
150 印字ユニット
160 検知ユニット
162 挿入検知センサ
164 搬送検知センサ
170 制御ユニット
172 制御部
200 通帳


【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の挿入口及び排出口を兼用する挿入排出口と、
前記媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材により搬送される前記媒体の搬送状態を検知する検知部材と、
排出されるべき一の媒体を前記挿入排出口に向かう排出方向に搬送する際に、前記一の媒体が排出されないことを前記検知部材が検知した場合には、
前記排出方向の反対方向に前記一の媒体を所定量搬送した後に、前記一の媒体を前記排出方向に再度搬送するリトライ搬送を実行する制御部と、
を備えることを特徴とする、自動取引装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記リトライ搬送を実行した後に前記一の媒体が排出されない状態が解消されない場合には、前記リトライ搬送を繰り返し実行することを特徴とする、請求項1に記載の自動取引装置。
【請求項3】
報知を行う報知部を更に備え、
前記制御部は、前記リトライ搬送を実行する際に、排出される前記一の媒体の搬送状態に関する報知を前記報知部に行わせることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記報知部は、音声を出力するスピーカーと、情報を表示する表示部と、光を発光する発光部のうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする、請求項3に記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記リトライ搬送を繰り返し実行し、
前記報知部による報知パターンを、前記リトライ搬送を繰り返す度に異ならせることを特徴とする、請求項3又は4に記載の自動取引装置。
【請求項6】
前記搬送部材は、回転することで前記媒体を搬送する搬送ローラであり、
前記制御部は、前記リトライ搬送を実行する際の前記搬送ローラの回転速度を、前記リトライ搬送以外で前記媒体を搬送する際の前記搬送ローラの回転速度よりも小さくすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動取引装置。
【請求項7】
前記制御部は、前後の前記リトライ搬送の間の間隔を異ならせながら、前記リトライ搬送を複数回実行することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動取引装置。
【請求項8】
前記挿入排出口よりも挿入方向下流側に設けられた開閉可能なシャッタを更に備え、
前記シャッタは、前記挿入排出口から挿入された前記媒体が前記シャッタを通過してから、前記挿入排出口から排出されるべく搬送される迄は、閉じた状態であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動取引装置。
【請求項9】
挿入口及び排出口を兼用する挿入排出口から排出されるべき一の媒体を前記挿入排出口に向かう排出方向に搬送するステップと、
前記排出方向に搬送される前記一の媒体の搬送状態を検知するステップと、
前記一の媒体の前記排出方向への搬送の際に、前記一の媒体が排出されないことが検知された場合には、
前記排出方向の反対方向に前記一の媒体を所定量搬送した後に、前記一の媒体を前記排出方向に再度搬送するリトライ搬送を実行するステップと、
を有する、媒体搬送方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−69232(P2013−69232A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209054(P2011−209054)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】