説明

自動取引装置の個別操作誘導方法

【目的】 装置の各操作者に適した個別の操作誘導サービスを行なう。
【構成】 各操作者は、操作時に、自己に対して与えらたカード20又は通帳30を挿入する。そして、取引回数や操作所要時間・ミス回数等の操作状況を代表する各種のパラメータを当該カード20又は通帳30のストライプ21又は31に記憶する。その後、当該カード20又は通帳30を排出し、操作者に返却する。後に、その操作者が再度操作するため、自己のカード20又は通帳30を再度挿入したときは、ストライプ21又は31に記憶されたパラメータを自動取引装置側で予め用意した基準パラメータと比較する。そして、当該比較結果により操作者の操作の習熟度を判別し、当該操作の習熟度に応じた操作誘導を行なう。これにより、操作者ごとに個別の操作誘導が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金融機関における自動取引装置の個別操作誘導方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金融機関等において、専門の操作者によらずに顧客のみにより操作を行なえる自動取引装置が広く普及している。この種の自動取引装置は、顧客の行なう操作について主にディスプレイ装置による表示及び音声の出力によりその操作を誘導する。従来、その誘導内容は、各々の顧客にとって「最も分かり易い」という条件で決定された均一的・画一的なものであった。また、タッチパネル式のディスプレイ入力装置に表示される入力キーについても統一された1種類だけのものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の技術には、次のような問題があった。即ち、上述した操作誘導では、個々の顧客の操作に対する習熟度を考慮していないため、ある操作者にとっては、操作が容易でも別の操作者にとっては使い勝手が悪いという問題があった。例えば、ある取引についての操作を初めて行なう操作者にとっては、画面に表示される操作案内の文言が詳しいほうが操作が分かり易い。これに対し、その取引操作を何回も行なっている操作者にとっては、毎回長文の文言を読むのは煩わしい。
【0004】また、例えば、操作において、カードの挿入等が一定時間内に行なわれない場合には、操作者に対してカードの挿入を促す音声案内が出される。このような音声の出力はある操作者にとっては適切であっても別の操作者にとっては耳障りなこともある。更に、入力キー画面についても、ある操作者に操作し易いものであっても、別の操作者にはそうでないこともある。本発明は、以上の点に着目してなされたもので、あらゆる操作者に対して適切な操作誘導を行なうべく、各操作者に対する個別のサービスを提供できるようにした自動取引装置の個別操作誘導方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の自動取引装置の個別操作誘導方法は、自動取引装置を操作する各操作者に対して与えられる媒体のいずれかを自動取引装置の操作時に挿入し、当該媒体が挿入されている間に自動取引装置に加えられる操作の状況を代表する各種のパラメータを当該媒体の記憶領域に記憶し、操作の終了後当該媒体を排出し、当該媒体が再度挿入されたときは、当該媒体の記憶領域に格納されたパラメータを自動取引装置側で予め用意した基準パラメータと比較し、当該比較結果により当該媒体を使用する操作者の操作の習熟度を判別し、当該操作の習熟度に応じた操作誘導を行なうことにより、挿入される各媒体ごとに個別の操作誘導を行なうことを特徴とするものである。
【0006】
【作用】本発明の自動取引装置の個別操作誘導方法においては、自動取引装置を操作する各操作者は、まず、自己に対して与えらた媒体を自動取引装置の操作開始時に挿入する。そして、当該媒体が挿入されている間に自動取引装置に加えられる操作の状況を代表する各種のパラメータを当該媒体の記憶領域に記憶する。この操作の終了後当該媒体を排出し、操作者に返却する。後に、その操作者が自動取引装置を再度操作するときは、当該媒体が再度挿入されたとき、自動取引装置は当該媒体の記憶領域に格納されたパラメータを自動取引装置側で予め用意した基準パラメータと比較する。そして、当該比較結果により当該媒体を使用する操作者の操作の習熟度を判別し、当該操作の習熟度に応じた操作誘導を行なう。これにより、操作者ごとに個別の操作誘導が行なわれる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の自動取引装置の個別操作誘導方法を適用した自動取引装置の内部構成の一実施例を示すブロック図である。図示の装置は、CPU1と、そのバスラインに接続された、カードリーダ/プリンタ2と、通帳プリンタ3と、メモリ4と、ディスプレイ5と、タッチパネル6と、スピーカ7等から成る。CPU1は、メモリ4に格納されたプログラムを逐次読み出して取引処理等を行なう。カードリーダ/プリンタ2は、顧客(操作者)が所持する媒体であるカード20を吸入し、その記憶領域であるストライプ21のリード及びライトを行なう。ストライプ21は、一般的には磁気ストライプである。
【0008】通帳プリンタ3は、顧客が所持する媒体である通帳30を吸入し、記帳印字を行なうとともに、その記憶領域であるストライプ31のリード及びライトを行なう。ストライプ31は、通帳の表紙に貼付された磁気ストライプから成るのが一般的である。メモリ4は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)等から成り、取引処理におけるプログラムやデータを一時的に格納する。ディスプレイ5は、CRT等から成り、操作案内や操作キー等を表示する。タッチパネル6は、ディスプレイ5の画面上に載置された透明電極板等から成り、顧客がディスプレイ5に表示されたキーの部分を指等で押圧することにより顧客が選択したキーを検出する。スピーカ7は、顧客に対し、音声メッセージを出力するためのものである。上記以外のI/O8は、ジャーナル情報用の外部記憶装置やプリンタ等である。その他、ホストコンピュータとの通信制御装置も接続される。
【0009】図2は、媒体のストライプのデータフォーマット例を示す図である。図2のデータフォーマットは、操作者の操作状況を代表するパラメータを格納する部分のみを示す。図示のデータフォーマット内のパラメータは、取引種別ごとに記憶される。即ち、入金、出金、振込の各取引種別ごとに、取引回数、操作時間、操作ミス回数が記憶される。取引回数は、顧客の取引した回数である。この回数は、顧客がその取引を行なうための操作を習熟するまでの回数が記録できれば十分であり、数ビット程度の情報量で十分である。この取引回数が所定の基準回数以上か否かによって、顧客の操作の習熟度を決定し、操作案内の表示内容を決定する。
【0010】操作時間は、取引において操作開始指示が出されてから顧客が操作を完了するまでの時間である。この操作時間は、例えば、カードと通帳による出金取引を選択した場合に、顧客が最初に挿入したカードのストライプに記憶された出金操作時間に応じて通帳挿入を促す音声メッセージを出すか否かを決定するために参照される。つまり、前回の出金操作で操作時間が比較的長かった顧客は、まだ操作に不慣れであり、通帳の挿入を忘れているものと推定されるので、音声メッセージを出す。一方、前回の出金操作で操作時間が比較的短かった顧客は、操作には習熟しており、通帳を挿入すべきことは承知しているのであるが、かばん等の中から捜し出せずにいるものと推定し、耳障りとなり得る催促メッセージは控えるようにする。この情報量も、秒単位で数10秒記憶できれば十分であるので、数ビットで十分である。
【0011】また、この操作時間は、例えば、出金取引においては、カード挿入指示を出してから顧客がカードを挿入するまでの時間、暗証番号入力指示を出してから顧客が暗証番号の入力を完了するまでの時間、出金額入力指示を出してから顧客が出金額の入力を完了するまでの時間、カードを差し出してから顧客がカードを受け取るまでの時間、現金を差し出してから顧客が現金を受け取るまでの時間の各操作について記憶するようにしてもよい。この場合、各操作ごとに操作案内等の画面表示の内容を変えることができる。これにより、全体の出金操作のうち、特に顧客がなかなか習熟できない部分の操作のみについて懇切丁寧にガイドする等、よりきめ細かなサービスが可能となる。
【0012】操作ミス回数は、例えば、暗証番号入力において、顧客が入力ミスした回数を記憶する。この種のミスは、ディスプレイに表示されたキーの操作性によって左右されるものと考えられる。つまり、表示キーが小さい場合には、顧客によっては操作ミスを起こしやすい。従って、最初の取引で標準的な大きさのキーを表示し、そのキーで操作をミスした顧客には次回から大きなキーを表示するようにする。この情報量も、数ビットで十分である。特に、ミスをしたかしなかったかで十分であるなら、1ビットでもよい。更に、上述した複数のパラメータを組合せて習熟度を求めるようにしてもよい。例えば、取引回数が所定回数以上で且つ操作時間が所定時間以内で且つ操作ミスがない場合に所定の習熟度に達したこととするなどである。
【0013】図3は、図1の自動取引装置の取引処理の遷移を説明するフローチャートである。まず、ステップS1において、顧客の取引選択に応じ、入金か出金か振込か等の取引を決定する。次に、ステップS2において、ステップS1により決定した取引に必要な媒体を自動取引装置の中に吸入する。即ち、カードの場合は、図1R>1に示すカードリーダ/プリンタ2により、また、通帳の場合は、図1に示す通帳プリンタ3により吸入する。次に、ステップS3の処理において、ステップS2で吸入した媒体のストライプの内容を図1に示すメモリ4上に読み込む。ここに、前述した図2に示すように、ストライプの内容は以下の項目を持つものとする。
(1)各取引の回数(2)操作要求発生から操作を開始するまでの時間(3)操作ミスの回数
【0014】ステップS4の処理では、ステップS3で取得した情報に基づいて当該顧客(操作者)の当該取引における習熟度を求める。習熟度の求め方は、基本的には、取引回数によるものとし、取引回数が所定の基準回数(例えば、3回)以上であれば、その取引には習熟したものとする。このパラメータは、例えば、ディスプレイに表示される案内画面の内容の決定に用いる。また、操作時間が所定の基準時間(例えば、10秒)以内であれば、その操作には、習熟したものとする。このパラメータは、例えば、音声メッセージを出すか否かの決定に用いる。更に、操作ミスを起こしたか否かにより操作キーの大きさを決定する。
【0015】次に、求めた習熟度によりステップS5の判定処理で以降行なう取引の操作内容を決定する。このとき、習熟度が所定の基準以上の顧客を“レベル1”、それ未満の顧客を“レベル2”と位置付け、ステップS6又はS7の処理へ移行する。また、ステップS5の処理は、顧客に対し、操作要求が発生する都度行ない、当該顧客の当該取引の操作のレベルに合わせた操作誘導を行なうものとする。ステップS8では、一連の操作の中のストライプに持たせておく項目についてその更新を行なう。ステップS9の処理において、当該顧客の次の取引の際に参照するべく、ステップS3で取得した同項目についてステップS8で更新した内容をストライプに書き込む。最後に、ステップS9の処理により当該顧客にストライプ更新後の媒体を返却して取引処理を終わらせる。
【0016】図4は、操作者ごとの操作案内例を示す図である。図3のステップS5で取引回数について“レベル2”とされた顧客には、ステップS7の処理において、図4(a)に示すように、丁寧で詳しい操作案内がされる。例えば、カードの挿入操作においては、“カードを右上のカード挿入口にお入れ下さい。”というように、カードの挿入口の位置まで含めた指示が出される。一方、図3のステップS5で取引回数について“レベル1”とされた顧客には、ステップS6の処理において、図4(b)に示すように、簡潔な操作案内がされる。例えば、カードの挿入操作においては、“カードを挿入して下さい。”というような一目で分かる指示が出される。
【0017】また、図3のステップS5で操作時間について“レベル2”とされた顧客には、ステップS7の処理において、図4(a)に示すように、操作指示の後の所定時間経過後に操作を促す音声メッセージが出される。例えば、カードの挿入操作においては、“カードをそうにゅうしてください。”という音声メッセージがスピーカから出される。一方、図3のステップS5で操作時間について“レベル1”とされた顧客には、ステップS6の処理において、図4(b)に示すように、音声メッセージが出されない。
【0018】図5は、操作者ごとの入力画面例を示す図である。図3のステップS5で操作ミス回数について“レベル1”とされた顧客には、ステップS6の処理において、図5(b)に示すように、標準の入力キー画面が表示される。一方、図3のステップS5で操作ミス回数について“レベル2”とされた顧客には、ステップS7の処理において、図5(a)に示すように、標準より大きなキーの入力キー画面が表示される。尚、上述した実施例においては、顧客の習熟度を、取引回数、操作時間、操作ミスの頻度の3つの観点について、それぞれ“レベル1”、“レベル2”の2段階としたが、3段階以上何段階にしてもよいことはもちろんである。この場合、図3のステップS5の判定が複数になることはいうまでもない。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の自動取引装置の個別操作誘導方法によれば、取引を行なう操作者の操作状況を代表するパラメータを操作者の所持する媒体の記憶領域に記憶し、このパラメータから操作者の操作についての習熟度を判別して、その結果に応じた操作誘導を行なうようにしたので、取引の操作に不慣れな顧客に対して適切な誘導を行なうことができるとともに、操作に習熟した顧客にも適切な誘導を行なうことができる。即ち、顧客ごとに個別の適切な操作誘導サービスを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を適用した装置の一実施例のブロック図である。
【図2】媒体のストライプのデータフォーマット例を示す図である。
【図3】取引処理の遷移を説明するフローチャートである。
【図4】操作者ごとの操作案内例の説明図である。
【図5】操作者ごとの入力画面例の説明図である。
【符号の説明】
1 CPU
2 カードリーダ/プリンタ
3 通帳プリンタ
4 メモリ
5 ディスプレイ
6 タッチパネル
7 スピーカ
20 カード
21 ストライプ
30 通帳
31 ストライプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動取引装置を操作する各操作者に対して与えられる媒体のいずれかを自動取引装置の操作時に挿入し、当該媒体が挿入されている間に自動取引装置に加えられる操作の状況を代表する各種のパラメータを当該媒体の記憶領域に記憶し、操作の終了後当該媒体を排出し、当該媒体が再度挿入されたときは、当該媒体の記憶領域に格納されたパラメータを自動取引装置側で予め用意した基準パラメータと比較し、当該比較結果により当該媒体を使用する操作者の操作の習熟度を判別し、当該操作の習熟度に応じた操作誘導を行なうことにより、挿入される各媒体ごとに個別の操作誘導を行なうことを特徴とする自動取引装置の個別操作誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−274526
【公開日】平成5年(1993)10月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−98720
【出願日】平成4年(1992)3月25日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)