説明

自動取引装置

【課題】ATMを用いた取引中は特定の利用者にのみ音声案内が聞こえ、その利用者がATMから離れたときにも音声案内が聞こえるようにする。
【解決手段】媒体の取り忘れが発生したときには、利用者52の存在を近接センサ19で検知し、利用者52がATM10の前方の近傍にいるときには、指向性スピーカ20により媒体取り忘れ案内を出力し、利用者52がATM10を離れたと判断されたときには、無指向性スピーカ17により媒体取り忘れ案内を出力する。このため、利用者52がATM10を操作しているときには、隣接するATM10の他の利用者にその音声案内が聞こえないようにすることが可能となる。更に、利用者52がATM10から離れた直後には、音声案内が利用者52に聞こえるという効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者により取引操作を行う現金自動預け払い機(以下「ATM」という。)や無人契約機等の自動取引装置に係り、特に自動取引装置における音声案内の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動取引装置の1つであるATMは、金融機関のロビーやCSコーナ(キャッシュサービスコーナ)を始め、コンビニエンスストア等のいろいろな場所に設置されており、一般利用者が操作することにより、現金の引き出し、預け入れ、振り込み等の取引が可能になっている。
【0003】
ATMは、キャッシュカード(以下、単に「カード」という。)、明細書(レシート)、通帳、紙幣、硬貨等の取引媒体を取り扱うことができるように構成されている。ATMは、これらの取引媒体(カード、レシート、通帳、紙幣、硬貨)毎にそれぞれ専用に設けられた取引媒体の受け渡し口を有している。
【0004】
これらの受け渡し口には、利用者による取引媒体の取り忘れを防止する等の目的で、媒体センサが設けられている。媒体センサが、取引媒体の取り忘れを検知したときには、注意喚起の音声案内や画面表示により、利用者への通知を行うように構成されている。
【0005】
下記の特許文献1には、このような音声案内を行う際に使用される指向性スピーカの技術が記載されている。特許文献2には、画像データにおける顔領域の検出技術が記載されている。又、特許文献3には、水平方向及び垂直方向の首振りが可能な画像カメラの技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−204492号公報
【特許文献2】特開2000−102524号公報
【特許文献3】特開2008−263503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のATMでは、利用者がATMを操作しているときに、音声案内を行うと、隣接するATMの他の利用者にその音声案内が聞こえてしまうという課題があった。
【0008】
この課題を解決するために、特許文献1には、指向性スピーカを用いて特定の利用者にのみ必要な音声案内が聞こえるようにする技術が開示されている。この場合、指向性スピーカを用いて音声案内を行うと、利用者がATMから離れた後には、音声案内が利用者に聞こえないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自動取引装置は、利用者の操作によって取引を行う自動取引装置であって、前記利用者との間で取引媒体を受け渡しするための受け渡し口と、前記受け渡し口に設けられ、前記受け渡し口における前記取引媒体を検知する媒体検知手段と、前記利用者の存在を検知する人体検知手段と、前記媒体検知手段の検知結果に基づき、前記取引媒体の取り忘れの有無を判定する取り忘れ媒体判定手段とを備えている。
【0010】
更に、前記取り忘れ媒体判定手段が取り忘れ有りと判定し、前記人体検知手段が前記利用者の存在を検知したときには、第1の音声案内情報を出力し、前記取り忘れ媒体判定手段が取り忘れ有りと判定し、前記人体検知手段が前記利用者の存在を検知しないときには、第2の音声案内情報を出力する音声案内手段と、前記第1又は第2の音声案内情報に基づき、音声信号を出力する音声信号発生部と、前記音声信号を入力し、前記音声信号と搬送波とを加算して第1の音波を生成し、特定の方向に前記第1の音波を出力する指向性スピーカと、前記音声信号を入力し、第2の音波を生成し、略前方向に前記第2の音波を出力する無指向性スピーカとを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動取引装置によれば、媒体の取り忘れが発生したときには、利用者の存在を人体検知手段で検知し、利用者が自動取引装置の前方の近傍にいるときには、指向性スピーカにより媒体取り忘れ案内を出力し、利用者が自動取引装置を離れたと判断されたときには、無指向性スピーカにより媒体取り忘れ案内を出力するようにしている。このため、利用者が自動取引装置を操作しているときには、隣接する自動取引装置の他の利用者にその音声案内が聞こえないようにすることが可能である。更に、利用者が自動取引装置から離れた直後には、音声案内が利用者に聞こえるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施例1における図2のATMを示す概略の機能ブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における自動取引装置(例えば、ATM)を示す概略の外観図である。
【図3】図3は図2中の指向性スピーカを示す構成図である。
【図4】図4は図1のATMの利用形態を示す図である。
【図5】図5は図2中の顧客操作部上に取引開始前に表示される取引選択画面を示す図である。
【図6】図6は本発明の実施例1におけるATMの出金取引時のフローチャートである。
【図7】図7は図6におけるステップS10のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図8は本発明の実施例2におけるATMを示す概略の機能ブロック図である。
【図9】図9は図8のATMの利用形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
(実施例1の構成)
図2は、本発明の実施例1における自動取引装置(例えば、ATM)10を示す概略の外観図である。
【0015】
本実施例1のATM10は、銀行の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者自身の操作により、現金の預け入れ(入金)、現金の引き出し(出金)、振り込み、残高照会、通帳記入等の取引を行うためのものである。これらの取引は、利用者が取引媒体(例えば、カード、通帳、紙幣、硬貨、明細書等)をATM10との間で互いに授受することで実行される。
【0016】
ATM10は、熱や衝撃に対し一定の強度を有する鉄材で作られたキャビネット11で覆われている。ATM10の前面には、利用者が操作するための操作面11aが略水平に利用者の方向に突き出している。操作面11aの奥方向には、操作面11aから連続して投入面11bが設置されている。更に、投入面11bに連続して挿入面11cが略垂直に立ち上がっている。
【0017】
前記操作面11aには、操作のためのガイダンスを表示し、各種取引のための入力を行う顧客操作部12が設けられている。投入面11bには、入出金取引等、現金を扱う取引で使用する取引媒体の受け渡し口(例えば、紙幣投入受取口13、硬貨投入受取口14)が設けられている。
【0018】
挿入面11cには、通帳の受け渡し口(例えば、通帳挿入受取口)15と、カード及び明細書の受け渡し口(例えば、カード/レシート挿入受取口)16と、特定の方向に第1の音波を出力する指向性スピーカ20と、略前方向に第2の音波を出力する無指向性スピーカ17と、利用者の画像を撮影する画像カメラ18とが設けられている。カードには、磁気ストライプが設けられており、磁気ストライプには、金融機関コードや利用者の口座番号、氏名等の利用者情報が記憶されている。
【0019】
ATM10の前面には、利用者の存在を検知する人体検知手段(例えば、近接センサ)19が設けられている。
【0020】
図1は、本発明の実施例1における図2のATM10を示す概略の機能ブロック図である。
【0021】
ATM10は、プログラム等を記憶する図示しないリードオンリメモリ(以下「ROM」という。)と、ROMから読み出したプログラムや各種データを一時記憶する図示しないランダムアクセスメモリ(以下「RAM」という。)と、プログラムを実行する図示しないプロセッサから構成される制御部31とを有している。
【0022】
制御部31は、プログラム制御によりATM10全体を制御するものであり、
取引媒体の取り忘れの有無を判定する取り忘れ媒体判定手段31aと、取引媒体の取り忘れがあったときには、取引媒体の取り忘れを利用者に知らせる音声案内情報S31bを出力する音声案内手段31bと、利用者の顔の位置に基づき指向性スピーカ20の第1の音波の出力方向を示す方向情報を出力する方向制御手段31cとを有している。前記音声案内情報S31bは、取引媒体の取り忘れを利用者に知らせる所定の音声案内データS31b−1と、指向性スピーカ20又は無指向性スピーカ17の選択を指示するスピーカ選択信号S31b−2とを有している。
【0023】
制御部31により制御される顧客操作部12は、文字や図形等で構成される操作画面を表示する液晶(以下「LCD」という。)表示部12aと、情報入力のためのタッチパネル部12bとを有している。
【0024】
更に、ATM10は、制御部31により制御される紙幣入出金部33、硬貨入出金部34、通帳記帳部35、カードリーダ・ライタ部36、音声発生部37、撮像部38、スピーカ駆動部39、ホストコンピュータ等の外部装置と通信を行う通信制御部40、及び不揮発性の記憶装置であるハードディスクドライブ(以下「HDD」という。)41を有している。
【0025】
紙幣入出金部33は、紙幣の真贋を鑑別し、計数し、入出金処理を行うものである。紙幣入出金部33には、紙幣投入受取口13が接続されており、紙幣投入受取口13には、媒体検知手段(例えば、媒体センサ)13aが設けられている。
硬貨入出金部34は、硬貨の真贋を鑑別し、計数し、入出金処理を行うものである。硬貨入出金部34には、硬貨投入受取口14が接続されており、硬貨投入受取口14には、媒体検知手段(例えば、媒体センサ)14aが設けられている。
【0026】
通帳記帳部35は、通帳の記帳処理を行うものである。通帳記帳部35には、通帳挿入受取口15が接続されており、通帳挿入受取口15には、媒体検知手段(例えば、媒体センサ)15aが設けられている。
【0027】
カードリーダ・ライタ部36は、カード内容の読み取り/書き込みを行い、更に、明細書を印字して発行する機能を有している。カードリーダ・ライタ部36には、カード/レシート挿入受取口16が接続されており、カード/レシート挿入受取口16には、媒体検知手段(例えば、媒体センサ)16aが設けられている。
【0028】
音声信号発生部37は、音声案内手段31bから、利用者に取引媒体の取り忘れを知らせる音声案内情報S31bが入力されるように構成されている。音声案内情報S31bは、取引媒体の取り忘れを利用者に知らせる所定の音声案内データS31b−1と、指向性スピーカ20又は無指向性スピーカ17の選択を指示するスピーカ選択信号S31b−2とを有している。
【0029】
音声信号発生部37は、音声案内データS31b−1を音声信号S37に変換し、更に、入力したスピーカ選択信号S31b−2に基づき、指向性スピーカ20又は無指向性スピーカ17を選択して音声信号S37を出力する機能を有している。
【0030】
撮像部38には、利用者の画像を撮影する画像カメラ18が接続されており、撮像部38は、その画像から利用者の顔の位置を検出する機能を有している。スピーカ駆動部39は、方向制御手段31cの出力する第1の音波の出力方向を示す方向情報を入力し、この方向情報に基づき、指向性スピーカ20を回動して第1の音波の出力方向を変化させる機能を有している。
【0031】
図3は、図1中の指向性スピーカ20を示す構成図である。
指向性スピーカ20の原理は、次の通りである。
【0032】
例えば、搬送波である超音波の振幅を音声信号によりAM変調をかけて出力すると、超音波は指向性を有しているので特定方向に進行する。AM変調をかけられた超音波は、空気中を伝搬する際の非線形性により、一定の距離を伝搬したところで元の音声信号が可聴音として出現する。ここで、非線形性とは、空気分子が圧縮されるときよりも、圧縮が元に戻るときの方が、時間がかかることをいう。この非線形性により、圧縮されて戻りきらない空気分子に、後から来た音波の空気分子が衝突して衝撃波が生じる。その結果、元の可聴音が出現する。
【0033】
図3に示す指向性スピーカ20は、搬送波である超音波を発生させる搬送波発生部21a、及び音声信号S37と搬送波とを加算して変調波S21bを出力する加算部21bを有する指向性音波生成部21と、変調波S21bを増幅する増幅器22と、増幅された変調波S21bにより、物理的に振動して第1の音波を空中に出力する振動体23とを有している。
【0034】
(実施例1の動作)
図4は、図2のATM10の利用形態を示す図である。
【0035】
図4は、ATM10の前方において、利用者52が取引操作を行っている状態を示している。紙幣投入受取口13には、紙幣51が集積されている。近接センサ19は、利用者52がATM10の前方にいることを検知し、媒体センサ13aは、紙幣投入受取口13に紙幣51があることを検知している。出金取引の場合、その状態で、一定時間が経過したときには、制御部31は、媒体取り忘れと判断して、紙幣51の取り忘れを利用者52に知らせる音声案内情報S31bを出力する。
【0036】
音声信号発生部37は、制御部31から、利用者52に紙幣51の取り忘れを知らせる音声案内情報S31bを入力し、この音声案内情報S31bに含まれる音声案内データS31b−1を音声信号S37に変換し、更に、入力したスピーカ選択信号S31b−2に基づき、指向性スピーカ20を選択して音声信号S37を出力する。
【0037】
指向性スピーカ20は、入力された音声信号S37と搬送波とを加算して第1の音波20aを生成して、利用者52の顔方向に出力する。
【0038】
図5は、図2中の顧客操作部12上に取引開始前に表示される取引選択画面を示す図である。
【0039】
本取引選択画面は、ATM10に電源が投入されたときに表示される。取引選択画面上には、取引科目を表す、預入れボタン12a―1、引出しボタン12a―2、振込ボタン12a―3、公共料金払込みボタン12a―4、残高照会ボタン12a―5、通帳記入ボタン12a―6、振替ボタン12a―7、及び暗証番号変更ボタン12a―8といった複数の取引選択ボタン12a(=12a−1〜12a−8)が配列されている。
【0040】
図6は、本発明の実施例1におけるATM10の出金取引時のフローチャートである。
【0041】
利用者52がATM10に接近すると、近接センサ19がこれを検知し、顧客操作部12に電源が投入される。電源が投入されると、顧客操作部12に、図5の取引選択画面が表示される。図5の取引選択画面では、預入れボタン12a―1、引出しボタン12a―2、振込ボタン12a―3、公共料金払込みボタン12a―4、残高照会ボタン12a―5、通帳記入ボタン12a―6、振替ボタン12a―7及び暗証番号変更ボタン12a―8が、顧客操作部12にグラフィック表示され、利用者52に取引の選択を促す。利用者52がこれらの取引選択ボタン12a(=12a−1〜12a−8)の1つを選択し、押下することにより、該当する取引が開始される。
【0042】
ステップS1において、利用者52が引出しボタン12a―2を押下することにより、出金取引が開始される。出金取引が開始されると、通帳及びカードの插入を促すメッセージが操作画面に表示される。通帳が通帳挿入受取口15に挿入されると、通帳記帳部35は、その通帳を取り込み、記帳の準備を行う。カードが、カード/レシート挿入受取口16に挿入されると、カードリーダ・ライタ部36は、カードの磁気ストライプを読み取り、図示しないRAMに記憶する。
【0043】
ステップS2において、顧客操作部12には、暗証番号と利用者52の希望する出金額とを入力するための操作画面が表示される。この操作画面を用いて、利用者52により暗証番号及び出金額が入力される。図示しない確認ボタンの押下により、口座番号、金額、暗証番号等が制御部31で編集され、図示しないホストコンピュータに送信される。ホストコンピュータでは、ATM10からの電文を受信すると、受信した口座番号から当該利用者52の口座ファイルから口座情報を読み出し、受信した暗証番号とホストコンピュータが保持している暗証番号とが一致するか否かをチェックする。
【0044】
暗証番号が不一致のときは、ホストコンピュータは、その旨をATM10に送信する。ATM10は、暗証番号入力画面を顧客操作部12に表示し、利用者52に暗証番号の再入力を促す。
【0045】
ステップS3において、暗証番号が一致したときは、ホストコンピュータは、当該取引を有効とし、当該口座ファイルの残高から受信した出金額を減算して新残高とする。未記帳分の通帳記帳データがあれば、新残高とともにATM10に送る。ATM10では、それを受信すると、通帳記帳部35で取り込んだ通帳にホストコンピュータから受信した記帳データを印刷する。
【0046】
ステップS4において、紙幣入出金部33では、ATM10内部の図示しない保管庫から紙幣51を取り出し、計数し、紙幣投入受取口13にセットする。硬貨があれば、硬貨入出金部34も同様に、保管庫から硬貨を取り出し、計数し、硬貨投入受取口14にセットする。カード/レシート挿入受取口16には、カード及び明細書がセットされる。通帳挿入受取口15には、記帳済みの通帳が返却される。顧客操作部12には、通帳、キャッシュカード及び現金の取り出しを促すメッセージが表示され、利用者52は、紙幣投入受取口13、硬貨投入受取口14、通帳挿入受取口15、及びカード/レシート挿入受取口16から現金、通帳、及びキャッシュカードを取り出す。
【0047】
ステップS5において、取り忘れ媒体判定手段31aは、媒体センサ13a,14a,15a,16aにより、取引媒体の取り忘れを判定する。取引媒体の残留が検知されなければ(NO)、本取引を終了する。いずれかの取引媒体が残留していたときには(YES)、ステップS6へ進む。
【0048】
ステップS6において、取引媒体の残留を時間監視する。取引媒体の残留が一定時間継続したときには(YES)、受け取りタイムアウト1としてステップS7へ進む。ステップS7において、再度、媒体センサ13a,14a,15a,16aにより、取引媒体の残留を判定する。取引媒体の残留が検知されなければ(NO)、本取引を終了する。いずれか1つ以上の取引媒体が残留していたときには(YES)、ステップS8へ進む。
【0049】
ステップS8において、取り忘れ媒体判定手段31aは、近接センサ19の状態を確認する。近接センサ19がオフ状態のときには(NO)、ATM10の前方の近傍には、利用者52がいないと判定し、無指向性スピーカ17による媒体取り忘れ案内を行うため、ステップS9へ進む。近接センサ19がオン状態のときには(YES)、ATM10の前方の近傍に利用者52がいると判断して、指向性スピーカ20による媒体取り忘れ案内を行うため、ステップS10へ進む。
【0050】
ステップS9において、音声案内手段31bは、媒体取り忘れを利用者52に知らせる音声案内データS31b−1と、無指向性スピーカ17の選択を指示するスピーカ選択信号S31b−2とを生成して音声信号発生部37に出力し、ステップS11へ進む。
【0051】
ステップS10において、音声案内手段31bは、媒体取り忘れを利用者52に知らせる音声案内データS31b−1と、指向性スピーカ20の選択を指示するスピーカ選択信号S31b−2とを生成して音声信号発生部37に出力し、ステップS11へ進む。
【0052】
ステップS11において、取引媒体の残留を再度時間監視する。取引媒体の残留状態が一定時間継続したときには(YES)、受け取りタイムアウト2としてステップS12へ進む。取引媒体の残留状態が未だ一定時間継続していないときには(NO)、ステップS7に戻る。
【0053】
ステップS12において、取り忘れ媒体をATM10内に取り込むための取り忘れ媒体処理を実行して本処理を終了する。
【0054】
図7は、図6におけるステップS10のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0055】
図6のステップS10における指向性スピーカによる取り忘れ案内処理について、図7を用いて説明する。
【0056】
本サブルーチンは、取引媒体の残留があり、近接センサ19がオン状態のとき、即ち、ATM10の前方の近傍に利用者52がいるときに起動される。本サブルーチンの処理は、利用者52の顔の位置が、利用者52の身長により異なるため、指向性スピーカ20が出力する第1の音波20aの方向を変化させて、利用者52の顔に第1の音波20aが届くように制御する処理である。
【0057】
ステップS21において、方向制御手段31cは、撮像部38及び映像カメラ18により利用者52の画像を取得する。この利用者52の撮影画像データは、制御部31内の図示しないRAMに格納される。
【0058】
ステップS22において、撮像部38は、撮影画像データを解析し、利用者52の顔の位置を検出して位置情報を出力する。顔領域の抽出は、例えば、特許文献2記載の公知の画像処理技術によって行う。顔の位置の検出は、撮影画像データを構成する画素にアドレスを付与し、顔領域のアドレスを確定して基準値と比較することで可能である。
【0059】
ステップS23において、方向制御手段31cは、顔の位置情報に基づいて、指向性スピーカ20の向きを示す方向情報を、スピーカ駆動部39に出力する。ステップS24において、スピーカ駆動部39は、方向制御手段31cの出力した方向情報に基づき、指向性スピーカ20を適宜回動して、第1の音波20aの出力方向を利用者52の顔に向ける。
【0060】
ステップS25において、音声案内手段31bは、媒体取り忘れを利用者52に知らせる音声案内データS31b−1と、指向性スピーカ20の選択を指示するスピーカ選択信号S31b−2とを生成し、音声案内情報S31bとして音声信号発生部37に出力する。
【0061】
ステップS26において、音声信号発生部37は、入力した音声案内情報S31bに基づき、音声案内データS31b−1を音声信号S37に変換し、スピーカ選択信号S31b−2により、指向性スピーカ20を選択して出力する。
【0062】
ステップS27において、指向性スピーカ20は、指向性音波生成部21において、搬送波発生部21aから搬送波である超音波を発生させ、加算部21bにより音声信号S37と搬送波とを加算して変調波S21bを出力する。増幅器22は、この変調波S21bを増幅する。増幅された変調波S21bにより、振動体23を物理的に振動して第1の音波20aを空中に出力する。
【0063】
(実施例1の効果)
実施例1のATM10によれば、次の(1)及び(2)のような効果がある。
【0064】
(1) 媒体の取り忘れが発生したときには、利用者52の存在を近接センサ19で検知し、利用者52がATM10の前方の近傍にいると判断されたときには、指向性スピーカ20により媒体取り忘れ案内を出力し、利用者52がATM10を離れたと判断されたときには、無指向性スピーカ17により媒体取り忘れ案内を出力するようにしている。このため、利用者52がATM10を操作しているときには、隣接するATMの他の利用者にその音声案内が聞こえないようにすることが可能である。更に、利用者52がATM10から離れた直後には、音声案内が利用者52に聞こえるという効果がある。
【0065】
(2) 画像カメラ18により撮影した利用者52の画像から、顔の位置を検出し、スピーカ駆動部39により指向性スピーカ20の第1の音波20aの出力方向を顔の位置に合わせるようにしたので、利用者52の身長の差異に拘らず、指向性スピーカ20による取り忘れ媒体の案内が可能となる。
【実施例2】
【0066】
(実施例2の構成)
図8は、本発明の実施例2におけるATM10Aを示す概略の機能ブロック図である。
【0067】
本実施例2におけるATM10Aの構成は、実施例1のATM10とほぼ同様である。実施例1との第1の相違点は、指向性スピーカ20Aが取引中の利用者52の顔に対して略下方の位置に配置され、顔に対して第1の音波20aを出力するように設けられている点である。第2の相違点は、実施例1の方向制御部31cとスピーカ駆動部39が削除されている点である。第3の相違点は、撮像部38Aが利用者52の画像データから顔の位置を検出する機能を有していない点である。
【0068】
(実施例2の動作)
図9は、図8のATM10Aの利用形態を示す図である。
【0069】
図9は、ATM10Aの前方において、利用者52bが取引操作を行っている状態を示している。利用者52bは、車椅子23を使用しており、顔の位置が直立している利用者52aの顔の位置より低いところにある。
【0070】
本実施例2においては、指向性スピーカ20Aを、取引中の利用者52a,52bの顔に対して略下方の位置に配置し、顔に対して第1の音波20aを出力するように設けている。このため、利用者52a,52bの顔の位置に拘らず、第1の音波20aを利用者52a,52bに届けることが可能となる。実施例2のその他の動作は、実施例1とほぼ同様である。
【0071】
(実施例2の効果)
実施例2のATM10Aによれば、実施例1の効果に加え、指向性スピーカ20Aを、取引中の利用者52a,52bの顔に対して略下方の位置に配置し、顔に対して第1の音波20aを出力するように設けたので、利用者52a,52bの顔の位置に拘らず、第1の音波20aを利用者52a,52bに届けることが可能となる。このため、実施例1と比べて、方向制御手段31c、スピーカ駆動部39等が不要となり、低コストにより、指向性スピーカ20Aの活用が可能となる。
【0072】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(d)のようなものがある。
【0073】
(a) 実施例1、2では、ATM10,10Aの例で説明したが、駅に設置されている券売機や、チケット販売機、航空券発行機等の自動取引装置であってもよい。
【0074】
(b) 実施例1、2では、出金取引を例に説明したが、例えば、振り込み取引や残高照会等の他の取引でも適用可能である。
【0075】
(c) 図3で説明した指向性スピーカ20の構成は、一例であり、他の構成のものであってもよい。
【0076】
(d) 実施例1、2では、音声信号発生部37がスピーカ選択信号S31b−1を入力して指向性スピーカ20又は無指向性スピーカ17を選択するように構成したが、多様な構成が考えられる。例えば、音声信号発生部37の出力側に切り替えスイッチを設け、この切り替えスイッチに、指向性スピーカ20及び無指向性スピーカ17を接続し、制御部31の制御より、切り替えスイッチを切り替えて、指向性スピーカ20又は無指向性スピーカ17を選択するように構成してもよい。これにより、実施例1、2とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0077】
10,10A ATM
12 顧客操作部
13 紙幣投入受取口
13a,14a,15a,16a 媒体センサ
17 無指向性スピーカ
18 画像カメラ
19 近接センサ
20,20A 指向性スピーカ
20a 第1の音波
31 制御部
31a 取り忘れ媒体判定手段
31b 音声案内手段
31c 方向制御手段
33 紙幣入出金部
38,38A 撮像部
39 スピーカ駆動部
51 紙幣
52,52a,52b 利用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の操作によって取引を行う自動取引装置において、
前記利用者との間で取引媒体を受け渡しするための受け渡し口と、
前記受け渡し口に設けられ、前記受け渡し口における前記取引媒体を検知する媒体検知手段と、
前記利用者の存在を検知する人体検知手段と、
前記媒体検知手段の検知結果に基づき、前記取引媒体の取り忘れの有無を判定する取り忘れ媒体判定手段と、
前記取り忘れ媒体判定手段が取り忘れ有りと判定し、前記人体検知手段が前記利用者の存在を検知したときには、第1の音声案内情報を出力し、
前記取り忘れ媒体判定手段が取り忘れ有りと判定し、前記人体検知手段が前記利用者の存在を検知しないときには、第2の音声案内情報を出力する音声案内手段と、
前記第1又は第2の音声案内情報に基づき、音声信号を出力する音声信号発生部と、
前記音声信号を入力し、前記音声信号と搬送波とを加算して第1の音波を生成し、特定の方向に前記第1の音波を出力する指向性スピーカと、
前記音声信号を入力し、第2の音波を生成し、略前方向に前記第2の音波を出力する無指向性スピーカと、
を備えたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の音声案内情報は、
前記取引媒体の取り忘れを前記利用者に知らせる所定の音声案内データと、
前記指向性スピーカ又は前記無指向性スピーカの選択を指示するスピーカ選択信号と、
を有することを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記自動取引装置は、更に、
前記利用者の画像を撮影する画像カメラと
撮影された前記画像から前記利用者の顔の位置を検出する撮像部と、
検出された前記顔の位置に基づき、前記指向性スピーカの前記第1の音波の出力方向を示す方向情報を出力する方向制御手段と、
前記方向情報に基づき、前記指向性スピーカを回動して前記第1の音波の出力方向を変化させるスピーカ駆動部と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記指向性スピーカは、
前記取引中の前記利用者の顔に対して略下方向の位置に配置され、前記顔に対して前記第1の音波を出力するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記取引媒体は、
キャッシュカード、通帳、紙幣、硬貨、明細書、又はチケットのいずれか1つ又は複数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138040(P2012−138040A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291528(P2010−291528)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】