説明

自動取引装置

【課題】供給会社が用意する模擬券以外の模擬券を用いても保守を行うことができるようにする。
【解決手段】紙幣認識部4を備え、模擬券51を鑑別して保守を行う自動取引装置1において、前記模擬券51を少なくとも当該サイズおよびマーク52により設定する模擬券設定手段としての操作部16と、前記設定による模擬券設定データを格納する記憶手段21、3a、4aと、を備え、前記模擬券設定データに基づいて模擬券51を鑑別できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模擬券を用いて保守を行う現金自動預払機や現金処理機などの自動取引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動取引装置を保守する場合、本物の紙幣(以下、「本券」という)を用いると大量な本券を必要とし本券の滅失、毀損等のおそれもあるため、保守員は本券を使わず、模擬紙幣(以下、「模擬券」という)を使って、保守や点検を行う場合が多い。
【0003】
この模擬券を用いて自動取引装置の保守を行うために、「本券モード」と「模擬券モード」を設け、「模擬券モード」とした場合、認識部による模擬券の鑑別や、模擬券が搬送路を正確に搬送されるか否かの搬送テストなどが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このとき用いられる模擬券は、製造メーカ(以下、「供給会社」という)がそれぞれ、独自のデザインで作成するため、この模擬券以外は使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−162751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、OEM(Original Equipment Manufacturer)にて自動取引装置の供給を受け、自社ブランドにて販売する場合に、供給を受ける会社(以下、「被供給会社」という)が、他の供給会社からすでに別の模擬券を購入し保持している場合でも、今回供給を受ける供給会社から専用の模擬券を改めて購入しなければならず、被供給会社としては、模擬券の購入のために高額な支払をしなければならなかったり、入手までに時間を要してしまったりするという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、鑑別手段を備え、模擬券を鑑別して保守を行う自動取引装置において、前記模擬券を少なくともサイズおよびマークにより設定する手段と、前記設定による模擬券設定データを格納する記憶手段と、を備え、前記模擬券設定データに基づいて模擬券を鑑別できるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動取引装置によれば、鑑別手段を備え、模擬券を鑑別して保守を行う自動取引装置において、前記模擬券を少なくともサイズおよびマークにより設定する手段と、前記設定による模擬券設定データを格納する記憶手段と、を備え、前記模擬券設定データに基づいて模擬券を鑑別できるようにしたので、供給会社が用意する模擬券以外の模擬券を用いても保守を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の自動取引装置の外観斜視図である。
【図2】実施例1の自動取引装置の制御系ブロック図である。
【図3】実施例1の自動取引装置の要部機能構成図である。
【図4】実施例1の自動取引装置の模擬券の設定の動作説明図である。
【図5】実施例1の自動取引装置の模擬券設定の例示図である。
【図6】実施例1の自動取引装置の模擬券の設定の動作フローチャート図である。
【図7】実施例1の自動取引装置の動作フローチャート図である。
【図8】実施例1の自動取引装置の動作フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0011】
(構成)
図1は、実施例1の自動取引装置の外観を示す斜視図である。同図に示したように、実施例1の自動取引装置1は、取引開始前の認証のためのキャッシュカードを挿入し排出するカード挿入排出口11と、顧客や保守員が操作する透明タッチパネル上に取引操作画面などを表示するLCDを積層した操作部16と、紙幣を投入または出金する紙幣入出金口14と、硬貨を入金または出金する硬貨入出金口15と、通帳での取引を行う場合に通帳を挿入または排出する通帳挿入排出口12と、取引明細票を排出する明細書出力口13を備える。
【0012】
また、実施例1の自動取引装置1の制御系は、図2に示したような構成となっている。すなわち、自動取引装置1の制御系は、各部を制御する主制御部20と、これに接続される前述の操作部16と、スピーカ等から構成され音声案内を行なう音声案内部22と、キャッシュカードに記録された情報のリードライトを行うカード処理部23と、通帳記帳等の通帳処理を行う通帳記帳部24と、取引履歴を取引明細として印字出力する明細票印字部25と、投入された紙幣の鑑別計数等の入金処理および紙幣を出金する出金処理を行う紙幣入出金部26と、硬貨について同様の処理を行う硬貨入出金部27が備えられている。
【0013】
さらに、実施例1の自動取引装置1は、各部に電源を供給する電源部28と、主制御部20の記憶手段としての記憶部21と、回線31にて接続された金融機関等のホスト装置40とのインタフェイスを制御するインタフェイス部30とが備えられている。
【0014】
次に、後述する模擬券の設定および当該設定の模擬券を用いた保守に係る要部機能構成を図3に示す。同図に示したように、実施例1の係る機能構成は、記憶部21を有し前述の音声案内部22等とからなるユニット装置群5を統括制御する主制御部20と、顧客または保守員が操作する模擬券設定手段としての操作部16と、紙幣入出金部26とからなる。
【0015】
そして、紙幣入出金部26は、記憶手段としてのメモリ部3aを有する紙幣処理部3と、記憶手段としてのメモリ部4aを有する鑑別手段としての紙幣認識部4とからなる。また、主制御部20と操作部16間、主制御部20と紙幣処理部3間、紙幣処理部3と紙幣認識部4間は、ハードウエアにより接続されており、それぞれがコマンドの送信、レスポンスの受信による通信が行えるようになっている。
【0016】
そして、本券モード用コマンド、模擬券モード用コマンドが用意されており、紙幣処理部3から当該コマンドが紙幣認識部4に送信されると、各モードのコマンドに応じて、紙幣認識部4のメモリ部4aに格納されている本券用紙幣鑑別プログラム4bまたは模擬券用紙幣鑑別プログラム4cを実行できる構成となっている。
【0017】
なお、「本券モード用コマンド」は運用時に本券による鑑別を行うときに使用されるコマンドであり、「模擬券モード用コマンド」は装置開発時や保守時に模擬券による鑑別を行うときに使用されるコマンドである。
【0018】
(動作)
以上の構成により実施例1の自動取引装置は、以下のように動作する。この動作を、図4の模擬券設定の動作説明図と図5の模擬券設定の例示図と、図6の模擬券設定の動作フローチャート図、図7および図8の入金時の動作フローチャート図を用いて以下詳細に説明する。
【0019】
まず、実施例1の模擬券の設定動作について、図4ないし図6を用いて説明する。模擬券51は図4(a)のように表わされ、図4(b)に示したように金額、通貨単位、新旧の属性、サイズ、マークにより設定され、サイズは図4(c)のに基づいて短辺S、長辺L、厚さTにより設定され、マーク52は図4(d)に基づいてマークの有無、文字、正方向または逆方向の文字の方向、置かれるエリアA〜D(53a〜53d)として設定される。
【0020】
例えば、模擬券51の設定例である図5は、金種1としてエリアA(53a)に正方向に文字「5」が印刷された現行の5ユーロ、金種2としてエリアA(53a)に正方向に文字「10」が印刷された現行の10レアル、金種3としてエリアB(53b)に正方向に文字「10」が印刷された新紙幣の10レアルの模擬券を使用する場合の設定例となっている
【0021】
次に、模擬券51の設定動作について、図6の動作フローチャート図を用いて、以下詳細に説明する。なお、本動作フローチャート図においては、主制御部20の各ステップをSA、紙幣処理部3の各ステップをSB、紙幣認識部4の各ステップをSRとして表示している。
【0022】
まず、操作部16を保守モードに切り替えると、主制御部20はベンダAPI(アプリケーションプログラムインタフェイス)を起動し(ステップSA01)、操作部16に保守画面を表示する。
【0023】
そして、保守員が保守画面の模擬券設定を選択すると、主制御部20は模擬券設定ログラムを開始し(ステップSA02)、模擬券のサイズの設定画面を表示し、保守員が、図4(c)に基づいてサイズの設定を設定1として実施すると(ステップSA03)、次に、模擬券のマークの設定画面を表示し、図4(d)に基づいてマークの設定を設定2として実施する(ステップSA04)。
【0024】
そして、設定1および設定2を終了すると(ステップSA05)、設定結果を主制御部20の記憶部21に一旦格納するとともに、当該設定結果をDATA Writeコマンドとともに紙幣処理部3に送信する(ステップSA06)。
【0025】
当該コマンドを受信した紙幣処理部3は、紙幣処理部3のメモリ部3aに前記設定結果を模擬券設定データとして一旦格納するとともに、紙幣認識部4に当該模擬券設定データを送信する(ステップSB01)。
【0026】
この模擬券設定データを受信した紙幣認識部4は、模擬券設定データを紙幣認識部4のメモリ部4aに格納し(ステップSR01)、紙幣認識部4のメモリ部4aの本券用紙幣鑑別プログラム4bを模擬券用紙幣鑑別プログラム4cに置き換える(ステップSR02)。
【0027】
そして、模擬券設定および当該置き換えが正常に行われたときは(ステップSR03)、紙幣処理部3に正常終了の旨を返信し、本処理を終了する。なお、ステップSR03にて模擬券設定およびプログラム置き換えができないときはエラー表示等のエラー処理を実施し(ステップSR04)、本処理を終了する。
【0028】
紙幣認識部4からの正常終了のレスポンスを受信した紙幣処理部3は、ステップSB01にて一旦格納した設定データを確定データとして設定更新し、主制御部20に正常終了の旨をDATA Writeレスポンスとして通知する(ステップSB02)。
【0029】
そして、DATA Writeレスポンスを受信した主制御部20は、ステップSA06にて一旦格納した設定データを確定データとして設定更新し(ステップSA07)、本処理を終了する。
【0030】
以上の動作により、例えば図5に示した模擬券設定データが、主制御部20、紙幣処理部3、紙幣認識部4の記憶手段としての記憶部21、メモリ部3a、4aに格納されることになる。
【0031】
次に、上記動作により設定された模擬券設定データに基づいて模擬券を用いた入金による保守動作を図7および図8の動作フローチャートを用いて以下詳細に説明する。なお、本フローチャートにおいては、操作部16の各ステップをSS、主制御部20の各ステップをSA、紙幣処理部3の各ステップをSB、紙幣認識部4の各ステップをSRとして表示している。また、図7と図8の動作フローチャート図は連結子A〜Dにより接続されている。
【0032】
まず、操作部16の取引選択画面にて入金取引を選択すると(ステップSS11)、主制御部20に入金取引開始を通知し、これを受信した主制御部20はカード挿入画面に切り替えさせる(ステップSS12)。このとき、アイドル状態(ステップSB11)の紙幣処理部3に入金準備コマンドを送信し、これを受信した紙幣処理部3は入金準備動作を開始し(ステップSB12)、準備を完了すると入金準備正常終了のレスポンスを返信する。
【0033】
紙幣処理部3からの入金準備正常終了のレスポンスを受信した主制御部20は、カードの確認をし(ステップSA11)、入金取引を可能にし(ステップSA12)、シャッタオープンコマンドを紙幣処理部3に送信し、紙幣の挿入待ち状態とする(ステップSA13)。
【0034】
シャッタオープンコマンドを受信した紙幣処理部3はシャッタオープンをし(ステップSB13)、シャッタオープン正常終了のレスポンスを主制御部20に返信する。これを受信した主制御部20は、紙幣を投入するように促す画面を操作部16に表示させる(ステップSS13)。このとき、主制御部20は、紙幣の挿入を監視するコマンドを紙幣処理部4に送信する。
【0035】
紙幣処理部3は、紙幣挿入を監視し紙幣挿入が完了したときは(ステップSB14)、紙幣挿入監視正常終了のレスポンスを主制御部20に返信する。これに対し主制御部20はシャッタクローズコマンドを紙幣処理部3に送信し、紙幣処理部3がシャッタを閉じるシャッタクローズ正常終了のレスポンスを主制御部20に返信する(ステップSB15)。
【0036】
シャッタクローズ正常終了のレスポンスを受信した主制御部20は紙幣挿入を完了し(ステップSA14)、紙幣計数を開始し(ステップSA15)、操作部16に紙幣計数中の画面を表示させ(ステップSS14)、紙幣処理部3には入金計数コマンドを送信して紙幣計数を開始させ(SB16)、連結子Cを経由して図8に以降し、本券モードのときは(ステップSB17)、紙幣認識部4への計数コマンドに本券モードをセットし(ステップSB18)、模擬券モードのときは模擬券モードをセットする(ステップSB19)。
【0037】
そして、紙幣処理部3は、前記モードとともに鑑別準備コマンドを紙幣認識部4に送信し、これを受信した紙幣認識部4は、アイドル状態(ステップSR11)から鑑別準備動作を開始する(ステップSR12)。
【0038】
なお、このとき、本券モードのときは基準となる本券用設定値にて紙幣認識を行う本券用紙幣鑑別プログラム4bにて鑑別準備動作を開始し、模擬券モードのときは、前述の模擬紙幣設定データに基づいて模擬紙幣用紙幣鑑別プログラム4cにて鑑別準備動作を開始する。
【0039】
そして、鑑別準備正常終了を前記モードとともに紙幣処理部3に返信すると、紙幣処理部3は、紙幣分離処理を開始し(ステップSB20)、1枚目を分離すると(ステップSB21)、紙幣認識部4に当該紙幣を搬送し、紙幣認識部4はこれを鑑別し(ステップSR13)、1枚目の鑑別結果を紙幣処理部3に通知し、これを受信した紙幣処理部3は鑑別結果を保存する(ステップSB22)。
【0040】
同様に、2枚目からN枚目の鑑別を行い(ステップSB23〜SB25、SR14、SR15)、紙幣分離を完了し(ステップSB26)、N枚目の鑑別結果を受信して保存を終了し(ステップSB27)、入金計数正常終了のレスポンスをN枚の金種別枚数とともに主制御部20に送信するとともに、紙幣認識部4に鑑別準備解除コマンドを送信する。
【0041】
これを受信した紙幣認識部4は、鑑別準備を解除し(ステップSR16)、鑑別準備解除正常終了を紙幣処理部4に送信しアイドル状態とし(ステップSR17)、本処理を終了する。
【0042】
一方、鑑別準備解除正常終了を受信した紙幣処理部4は、入金処理を完了し(ステップSB28)、アイドル状態として(ステップSB29)、本処理を終了する。
【0043】
N枚の金種別枚数とともに入金計数正常終了のレスポンスを受信した主制御部20は、計数結果を確認し(ステップSA16)、計数結果を操作部16に表示させて、顧客または保守員がこれを確認し(ステップSS15)、本処理が終了する。
【0044】
以上のように、所望の模擬券に応じて模擬券の設定をし、当該模擬券を用いた入金取引を実施することにより、供給会社が用意した模擬券以外の模擬券であっても、容易に保守を行うことができる。
【0045】
(実施例1の効果)
以上のように実施例1の自動取引装置によれば、鑑別手段を備え、模擬券を鑑別して保守を行う自動取引装置において、前記模擬券を少なくともサイズおよびマークにより設定する手段と、前記設定による模擬券設定データを格納する記憶手段と、を備え、前記模擬券設定データに基づいて模擬券を鑑別できるようにしたので、供給会社が用意する模擬券以外の模擬券を用いても保守を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上述べたように、本発明は、模擬券を用いて保守を行う現金自動預払機や現金処理機などの自動取引装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 自動取引装置
3 紙幣処理部
3a メモリ部
4 紙幣認識部
4a メモリ部
4b 本券用紙幣鑑別プログラム
4c 模擬券用紙幣鑑別プログラム
11 カード挿入排出口
14 紙幣入出金口
16 操作部
20 主制御部
21 記憶部
26 紙幣入出金部
51 紙幣
52 マーク
53a〜53d エリアA〜エリアD
S 短辺
L 長辺
T 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑別手段を備え、模擬券を鑑別して保守を行う自動取引装置において、
前記模擬券を少なくとも当該サイズおよびマークにより設定する模擬券設定手段と、
前記設定による模擬券設定データを格納する記憶手段と、を備え、
前記模擬券設定データに基づいて模擬券を鑑別できるようにしたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記サイズは、前記模擬券の長辺、短辺の長さおよび厚さにより設定し、前記マークは、所定のエリアに分割したエリアおよび文字および当該方向により設定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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