説明

自動変速機のマニュアル操作スイッチ

【課題】この発明は、ステアリングハンドルに設けたスイッチ操作部の操作ストロークを短くして応答性の向上を図ることができる自動変速機のマニュアル操作スイッチを提供することを目的とする。
【解決手段】ステアリングハンドル1のベース部材12に取付けたスイッチ本体23と、該スイッチ本体23に設けられ、ステアリングハンドル1の面方向で上下に延びる揺動軸24と、該揺動軸24を中心に揺動可能に設けられたシフトアップ用の一方の第1スイッチ操作部21と、該第1スイッチ操作部21に設けられ、該第1スイッチ操作部21の操作方向と逆方向の操作によって作動するシフトダウン用の他方の第2スイッチ操作部22とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動変速機をマニュアル操作するシフトアップ用のスイッチ操作部とシフトダウン用のスイッチ操作部とをステアリングハンドルに設けた自動変速機のマニュアル操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の変速機制御装置として、車速やエンジン負荷などの車両走行状態に応じて、変速機の変速比が自動的に切り替わる自動変速モードと、車両に備えられたスイッチからなるマニュアル操作手段を操作することにより、1段ずつシフトアップ又はシフトダウンが実行されるマニュアル変速モードの両方を備え、運転者の好みや車両の走行状況に応じてそのいずれかを選択出来るものが知られおり、上記マニュアル操作手段についても、種々の構造のものが提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、シフトアップ指令信号出力用のスイッチ操作部(以下、シフトアップ用のスイッチ操作部と略記する)、及びシフトダウン指令信号出力用のスイッチ操作部(以下、シフトアップ用のスイッチ操作部と略記する)の両方をステアリングハンドルに設けたマニュアル操作スイッチが開示されている。
【0004】
この場合、シフトアップ用のスイッチ操作部、シフトダウン用のスイッチ操作部を操作する際には、ステアリングハンドルから手を離すことなくスイッチ操作が行えるため、操作性が良好となる。
【0005】
【特許文献1】欧州特許第941886号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1には、上記シフトアップ用のスイッチ操作部とシフトダウン用のスイッチ操作部とが一体化された構成が開示されている。
【0007】
このような構成は、例えば、図8、図9に示すような自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段60(以下、スイッチ手段60と略記する)を設けることにより実現できる。図8は、従来のスイッチ手段60が設けられたステアリングハンドル1の表側を示す斜視図であり、図9は、同平面図である。車室内に設けられるステアリング機構には、ステアリングハンドル1のリング部11と、ベース部材12(図9参照)と、該ベース部材12の頂部の中央部を覆うホーンパッド13と、中央部のベース部材12からステアリングハンドル1のリング部11の径方向に向けてアーム状に延びるスポーク部14、15…が設けられている。なお、図中において矢印(F)は車両前方、矢印(R)は車両後方を示し、矢印(IN)は車両内方、矢印(OUT)は車両外方を示す。さらに、本明細書において、表側とは、上記運転席を向く側(後側)を意味し、裏側とは、車両前後方向において表側と反対側(前側)を意味する。
【0008】
スポーク部14、15…のうち、第1スポーク部14はベース部材12から略左右方向に延びてステアリングハンドル1のリング部11に連続されており、第2スポーク部15はほぼ真っ直ぐ下方に延びてステアリングハンドル1のリング部11に連続されている。
【0009】
ここで、第1スポーク部14には、第1スイッチ操作部61及び第2スイッチ操作部62を一体成形したスイッチ手段60が設けられている。
【0010】
スイッチ手段60には、ステアリングハンドル1のリング部11より前方の、第1スポーク部14の裏側の位置に第1スイッチ操作部61が形成されるとともに、第1スポーク部14との間に所定の隙間gを形成するように、スポーク部14の上方でステアリングハンドル1のハンドル面近傍まで突出する突出部60aが設けられ、突出部60aの表側に平面状の第2スイッチ操作部62が形成されている。
【0011】
即ち、図8、図9に示すスイッチ手段60においては、第1スイッチ操作部61及び第2スイッチ操作部62が一体化された構成となっている。
【0012】
このようなスイッチ手段60を備えた車両において、マニュアル変速モードが選択された時には、運転者が上述のシフトアップ指令信号を出力するための第1スイッチ操作部61を矢印Mで示すように手前側(運転席側、後側)に押圧操作するか、または上述のシフトダウン指令信号を出力するための第2スイッチ操作部62を矢印Nで示すように奥側(前側)に押圧操作することによって、スイッチ本体63(図9参照)で1段のシフトアップ指令信号あるいはシフトダウン指令信号が生成、出力される。
【0013】
具体的には、スイッチ手段60はスイッチ本体63に設けられた揺動軸64(図9参照)を中心に揺動可能とされ、これにより、第1スイッチ操作部61の手前側への押圧操作並びに第2スイッチ操作部62の奥側への押圧操作が可能となっている。
【0014】
しかしながら、上述のように第1スイッチ操作部61と第2スイッチ操作部62とが一体化された場合、揺動軸64は、いずれの操作時であってもマニュアル操作スイッチ手段60が揺動可能となるように、その位置を厳密に設定しなければならない。例えば、二点鎖線で示す揺動軸64’のように、第1スイッチ操作部61に極端に近接した位置に設定すると、第2スイッチ操作部62の押圧操作時の指(二点鎖線で示す)と揺動軸64’とが対向する位置関係となり、第2スイッチ操作部62の操作時、スイッチ手段60をうまく揺動させることができず、シフトダウン操作の操作性を低下させることになってしまう。
【0015】
従って、いずれの操作時であってもマニュアル操作スイッチ手段60をスムーズに揺動させるために、揺動軸64は、第1スイッチ操作部61を通り、且つステアリングハンドル1の左右方向に延びる仮想線D2(一点鎖線で示す)上の、第2スイッチ操作部62からステアリングハンドル1の中心側に十分離間した位置に設定されなければならない。ここで、仮想線D2と揺動軸64−第2スイッチ操作部62間を結ぶ仮想線D3(一点鎖線で示す)とは略同じ長さに設定される。
【0016】
このような理由から、上記特許文献1に開示された構成では、スイッチ本体63にてシフトダウン指令信号あるいはシフトアップ指令信号を生成するのに必要な角度αだけスイッチ手段60を揺動させるために大きな操作ストロークが要求されることになる。従って、上記特許文献1に開示された構成は、結果として応答性の低下を招くものとなっていた。
【0017】
この発明は、ステアリングハンドルに設けたスイッチ操作部の操作ストロークを短くして応答性の向上を図ることができる自動変速機のマニュアル操作スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明の自動変速機のマニュアル操作スイッチは、自動変速機をマニュアル操作するシフトアップ用のスイッチ操作部とシフトダウン用のスイッチ操作部とをステアリングハンドルに設けた自動変速機のマニュアル操作スイッチであって、上記ステアリングハンドルのベース部材に取付けたスイッチ本体と、該スイッチ本体に設けられ、上記ステアリングハンドルの面方向で上下に延びる揺動軸と、該揺動軸を中心に揺動可能に設けられたシフトアップ用またはシフトダウン用の一方のスイッチ操作部と、該一方のスイッチ操作部に設けられ、該一方のスイッチ操作部の操作方向と逆方向の操作によって作動するシフトアップ用またはシフトダウン用の他方のスイッチ操作部とを設けたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、上記一方のスイッチ操作部と他方のスイッチ操作部とが独立した別部材とされ、互いが分離された構成となっているため、上記一方のスイッチ操作部の揺動中心(揺動軸の位置)を上記他方のスイッチ操作部によらず任意の位置に設定することができる。このため、上記一方のスイッチ操作部の操作ストロークを短くすることができ、その応答性を向上させることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記スイッチ本体が、上記ステアリングハンドルの左右に延びるスポーク部の裏側に位置するとともに、上記一方のスイッチ操作部が、上記スポーク部の裏側に位置する部分を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、上記一方のスイッチ操作部と他方のスイッチ操作部とが独立した別部材とされ、互いが分離された構成となっているため、上記スイッチ操作部の操作ストロークの逃げ部となる上記スポーク部との間の隙間を抑制してデザイン性能の向上を図ることができる。
【0022】
特に、上記スイッチ本体が上記スポーク部の裏側に位置し、且つ上記一方のスイッチ操作部が上記スポーク部の裏側に位置する部分を有する場合、運転席から上記隙間が見えてしまう構成となるため、上記隙間を抑制してデザイン性能の向上を図る効果はより顕著なものとなる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、上記一方のスイッチ操作部に、上記スポーク部の上方で上記ステアリングハンドルのハンドル面近傍まで突出する突出部を設け、該突出部の表側に上記他方のスイッチ操作部を設けたことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、上記他方のスイッチ操作部をハンドル表側の指の位置に合わせることができるため、その操作性を確保することができる。
【0025】
この発明の一実施態様においては、上記一方のスイッチ操作部に、上記スポーク部の上方で上記ステアリングハンドルのハンドル面近傍まで突出する操作突部を設け、上記一方のスイッチ操作部の、上記スポーク部の裏側に位置する部分の裏側に上記他方のスイッチ操作部を設けたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、上記操作突部、上記他方のスイッチ操作部を、それぞれハンドル表側、裏側の指の位置に合わせることができるため、これらの操作性を確保することができる。
【0027】
この発明の一実施態様においては、上記一方のスイッチ操作部に近接して上記揺動軸を配設したことを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、上記スイッチ操作部の操作ストロークを可能な限り短くして、その応答性を向上させることができる
この発明の一実施態様においては、上記突出部を上記スポーク部の上辺に近接して配設したことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、非操作時における上記スポーク部との間の隙間を少なくして見映えの向上を図ることができる。
【0030】
この発明の一実施態様においては、上記操作突部を上記スポーク部の上辺に近接して配設したことを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、上記一方のスイッチ操作部の非操作時における上記スポーク部との間の隙間を可能な限り少なくして(無くして)見映えの向上を図ることができる。
【0032】
この発明の一実施態様においては、上記一方のスイッチ操作部の、上記ステアリングハンドルの中心側に、該ステアリングハンドルの面方向で上下に延びる第2の揺動軸を設け、上記他方のスイッチ操作部を、上記第2の揺動軸を中心に揺動可能に設けたことを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、上記他方のスイッチ操作部をハンドルを握って操作する指の操作軌跡に沿って揺動させることができるため、その操作性をより向上させることができる。
【0034】
この発明の一実施態様においては、上記シフトアップ用のスイッチ操作部が、上記ステアリングハンドルを握った手のハンドル裏側に位置する指で手前側に操作可能に設定されることを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、シフトアップ操作(加速)時の運転者の挙動に合わせたシフトアップ操作を行うことができる。
【0036】
この発明の一実施態様においては、上記シフトダウン用のスイッチ操作部が、上記ステアリングハンドルを握った手のハンドル表側に位置する指で奥側に操作可能に設定されたことを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、シフトダウン操作(減速)時の運転者の挙動に合わせたシフトダウン操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、上記一方のスイッチ操作部と他方のスイッチ操作部とが独立した別部材とされ、互いが分離された構成となっているため、上記一方のスイッチ操作部の操作ストロークを短くすることができ、その応答性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図4に示す第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段2(以下、スイッチ手段2と略記する)の表側を示す斜視図である。本実施形態では、ステアリングハンドル1の第1スポーク部14に、それぞれ別部材とされたシフトアップ用の第1スイッチ操作部21及びシフトダウン用の第2スイッチ操作部22を備えたマニュアル操作スイッチ手段2を設けている。なお、本実施形態において、スイッチ手段2以外の構成については従来とほぼ同様であるから、図1〜図4において図8、図9と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0040】
また、第1スポーク部14は、ステアリングハンドル1に左右一対として設けられるものであり、スイッチ手段2も第1スポーク部14に対応して左右一対として設けられるものとする。この場合、変速機は、左右のスイッチ手段2のいずれの信号によっても変速するので、左右一方のスイッチのみ操作することで、シフトが可能である。従って、本明細書では一方のみを図示し、他方の詳細な説明は省略する。
【0041】
第1スイッチ操作部21には、所定の隙間Gを形成する程度にスポーク部14の上辺に近接し、ステアリングハンドル1のハンドル面近傍まで突出する突出部21aが設けられ、ステアリングハンドル1のリング部11より前方の、第1スポーク部14の裏側には、略リング状をなす部分(アーム部21b)が形成されている。
【0042】
また、第1スイッチ操作部21は、第1スポーク部14の裏側に位置するスイッチ本体23に設けた揺動軸24を中心に揺動可能とされている。この揺動軸24は、スイッチ本体23において、ステアリングハンドル1の面方向で上下に延びるように設けられており、これにより第1スイッチ操作部21は手前側(図中矢印A方向)への押圧操作が可能となっている。
【0043】
一方、第2スイッチ操作部22は、突出部21aの表側において、第1スイッチ操作部21に対して相対的に変位可能な押しボタンにより構成されており、第1スイッチ操作部21の操作方向と逆方向(この場合奥側となり、図中矢印B方向)への押圧操作が可能となっている。
【0044】
即ち、本実施形態では、第2スイッチ操作部22が第1スイッチ操作部21に組み付けられつつも、両者が独立した別部材とされ、互いが分離された構成となっている。
【0045】
ところで、車両の変速機制御装置として、自動変速モードとマニュアル変速モードの両方を備える場合、例えば図2に示すようなレンジ・モード選択装置3が運転席側部に設けられる。
【0046】
ここで、運転者がマニュアル変速モードで走行しようとする場合には、先ず、レンジ・モード選択装置3のレバー31を、レンジ選択表示部32の長穴33に設けられたドライブレンジ「D」の位置に移動させ、さらにレバー31を連絡溝の方に揺動させて、長穴33に設けられたマニュアルレンジ「M」の位置に移動させることにより、マニュアル変速モードを選択することができる。
【0047】
図3は、自動変速機のスイッチ手段2が設けられたステアリングハンドル1を示す平面図であり、図4は、図3におけるX−X線矢視断面図である。スイッチ手段2は、スイッチ本体23が図3に示すステアリングハンドル1のベース部材12に取付けられることでステアリングハンドル1に取付けられている。
【0048】
このようなスイッチ手段2を備えた車両において、上記マニュアル変速モードが選択された時には、運転者がステアリングハンドル1を握った手のハンドル裏側に位置する指(例えば親指以外の指)を使って第1スイッチ操作部21のアーム部21bを手前側に押圧操作することで、第1スイッチ操作部21は揺動軸24を揺動中心として揺動しながら図4の二点鎖線で示す手前側の位置まで変位するようになっており、これによりスイッチ本体23で1段のシフトアップ指令信号が生成、出力されるようになっている。
【0049】
第1スイッチ操作部21は、バネ等の付勢手段(不図示)により奥側に付勢されており、非操作時には図1に示すような第1スポーク部14と隙間Gを形成する初期位置へ戻るようになっている。第1スイッチ操作部21は、この隙間Gにより手前側へ所定角度α(図3参照)だけ揺動できるようになっている。
【0050】
一方、上記マニュアル変速モードにおいて運転者がステアリングハンドル1を握った手のハンドル表側にある指(例えば親指)を使って第2スイッチ操作部22を奥側(矢印Bで示す方向)に押圧操作することで、第1スイッチ操作部21は不動のまま第2スイッチ操作部22が押下され、スイッチ本体23で1段のシフトダウン指令信号が生成、出力されるようになっている。
【0051】
また、この第2スイッチ操作部22は、非操作時に自動的に手前側に突出して初期位置に戻るようになっており、所謂自動復帰型の押しボタンとなっている。
【0052】
このように、本実施形態では、従来と異なり第1スイッチ操作部21と第2スイッチ操作部22とが独立した別部材とされ、互いが分離された構成となっているため、第1スイッチ操作部21の揺動中心(揺動軸24の位置)を第2スイッチ操作部22によらず任意の位置に設定することができる。このため、図3に示す仮想線D1(一点鎖線で示す)のように、第1スイッチ操作部21の揺動中心を指の位置に近接して設定でき、第1スイッチ操作部21を角度αだけ揺動させるのに必要とされる操作ストロークを可能な限り短くすることができる。
【0053】
従って、アーム部21bのより少ない操作量でスイッチ本体23にシフトアップ指令信号を生成、出力させることができ、第1スイッチ操作部21の応答性を向上させることができる。
【0054】
また、第1スイッチ操作部21が第1スポーク部14の裏側に位置するアーム部21bを有することで、これと反対側の突出部21aの表側に第2スイッチ操作部22を設けることが可能となっている。このように、第2スイッチ操作部22を突出部21aの表側に設けることで、これを図中二点鎖線で示すハンドル表側の指の位置に合わせることができるため、その操作性を確保することができる。
【0055】
ところで、従来のスイッチ手段60では、上述したように大きな操作ストロークが必要とされることから、この操作ストロークの逃げ部となる大きな隙間g(図8参照)を第1スポーク部14との間に設けなければならず、この隙間gがデザイン性能の低下につながるものとなっていた。
【0056】
これに対し、本実施形態では、第1スイッチ操作部21の操作ストロークを短くすることができるため、隙間Gを抑制してデザイン性能の向上を図ることができる。
【0057】
特に、本実施形態のようにスイッチ本体23を第1スポーク部14の裏側に位置させつつ、第1スイッチ操作部21のアーム部21bを第1スポーク部14の裏側に位置させるようにした場合、運転席から隙間Gが見えてしまうことになるため、隙間Gを抑制してデザイン性能の向上を図る効果はより顕著なものとなる。
【0058】
また、本実施形態では、突出部21aが第1スポーク部14の上辺に近接して配設されているため、非操作時における隙間Gを少なくして見映えの向上を図ることができる。
【0059】
また、第1スイッチ操作部21について、ステアリングハンドル1を握った手のハンドル裏側に位置する指(二点鎖線で示す)で手前側に操作可能に設定されることで、シフトアップ操作(加速)時の運転者の挙動、即ち体重移動の方向に合わせたシフトアップ操作を行うことができる。
【0060】
一方、第2スイッチ操作部22についても、第1スイッチ操作部21と分離されることで、従来よりも少ない操作量でスイッチ本体23にシフトダウン指令信号を生成、出力させることができるようになっており、その応答性の向上が図られている。
【0061】
また、第2スイッチ操作部22が、ステアリングハンドル1を握った手のハンドル表側に位置する指(二点鎖線で示す)で奥側に操作可能に設定されることで、シフトダウン操作(減速)時の運転者の挙動、即ち体重移動の方向に合わせたシフトダウン操作を行うことができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、図5に示す第2実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係るマニュアル操作スイッチ手段40(以下、スイッチ手段40と略記する)の裏側を示す斜視図であり、図6は、第2スイッチ操作部42の操作を説明するための要部拡大図である。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0063】
第1実施形態では、ステアリングハンドル1のハンドル面近傍まで突出する突出部21aが設けられたシフトアップ用の第1スイッチ操作部21にシフトダウン用の第2スイッチ操作部22を組み付ける構成となっているが、本発明は必ずしもこれに限定されず、図5に示すように、ステアリングハンドル1のハンドル面近傍まで突出する操作突部41aが設けられたシフトダウン用の第1スイッチ操作部41にシフトアップ用の第2スイッチ操作部42を組み付ける構成としてもよい。
【0064】
第1スイッチ操作部41には、第1スポーク部14の上辺に近接し、ステアリングハンドル1のハンドル面近傍まで突出する操作突部41aが設けられ、ステアリングハンドル1のリング部11より前方の、第1スポーク部14の裏側の部分には、その裏側に平板状をなす第2スイッチ操作部42が設けられている。
【0065】
第1スイッチ操作部41は、第1スポーク部14の裏側に位置するスイッチ本体43に設けた第1揺動軸44を中心に揺動可能とされている。この第1揺動軸44は、スイッチ本体43においてステアリングハンドル1の面方向で上下に延びるように設けられており、これにより第1スイッチ操作部41は奥側(図中矢印Cで示す方向)への押圧操作が可能となっている。
【0066】
一方、第2スイッチ操作部42は、第1スイッチ操作部41に設けた第2揺動軸45を中心に揺動可能とされ、第1スイッチ操作部41の裏面に形成した開口41bにて出没可能に設けられている。従って、第2スイッチ操作部42は、第1スイッチ操作部41に対して相対的に変位可能となっている。ここで、第2揺動軸45は、第1スイッチ操作部41のステアリングハンドル1の中心側において、ステアリングハンドル1の面方向で上下に延びるように設けられている。
【0067】
なお、スイッチ手段40は、第1実施形態と同様、スイッチ本体43がステアリングハンドル1のベース部材12に取付けられることでステアリングハンドル1に取付けられている。
【0068】
このようなスイッチ手段40を備えた車両において、マニュアル変速モードが選択された時には、運転者がステアリングハンドル1を握った手のハンドル表側に位置する指(例えば親指)を使って、第1スイッチ操作部41の操作突部41aを奥側に押圧操作することで、第1スイッチ操作部41は揺動軸44を揺動中心として揺動しながら奥側に変位するようになっており、これによりスイッチ本体43にて1段のシフトダウン指令信号が生成、出力されるようになっている。
【0069】
また、第1スイッチ操作部41は、バネ等の付勢手段(不図示)により付勢されており、非操作時には第1スポーク部14と略隙間なく当接する初期位置へ戻るようになっている。
【0070】
一方、上記マニュアル変速モードにおいて運転者がステアリングハンドル1を握った手のハンドル裏側に位置する指(例えば親指以外の指)を使って第2スイッチ操作部42を手前側(矢印Dで示す方向)に押圧操作することで、第1スイッチ操作部41は不動のまま第2スイッチ操作部42が第2揺動軸45を揺動中心として揺動しながら手前側に変位するようになっており、これによりスイッチ本体43で1段のシフトアップ指令信号が生成、出力されるようになっている。
【0071】
ここで、本実施形態では、第1スイッチ操作部41と第2スイッチ操作部42とが独立した別部材とされ、互いが分離された構成となっているため、第1、第2スイッチ操作部41、42の一方の揺動中心(揺動軸44、45の位置)を他方によらず任意の位置に設定することができる。このため、第1、第2スイッチ操作部41、42の揺動中心を指の位置に近接して設定でき、第1、第2スイッチ操作部41、42の操作ストロークを可能な限り短くすることができる。従って、第1実施形態と同様、第1、第2スイッチ操作部41、42の応答性を向上させることができる。
【0072】
また、第1スイッチ操作部41は、第1スポーク部14の裏側に位置する部分を有していることで、その裏側には第2スイッチ操作部42を設けることができ、これと反対側に操作突部41aを設けることが可能となっている。このため、操作突部41a、第2スイッチ操作部42を、それぞれハンドル表側、裏側の指の位置に合わせることができ、これらの操作性を確保することができる。
【0073】
また、本実施形態では、第1スポーク部14の裏側に位置する第1スイッチ操作部41の部分の裏側に第2スイッチ操作部42を設けたため、スイッチ手段40の操作ストロークの逃げ部となる隙間を抑制し、ひいては該隙間を無くして互いを当接させることが可能となり、デザイン性能の向上を図ることができる。
【0074】
本実施形態では、スイッチ本体43が第1スポーク部14の裏側に位置するとともに、第1スイッチ操作部41が第1スポーク部41の裏側に位置する部分を有する構成をなすことにより、運転席から上記隙間が見えてしまうことになるため、第1実施形態と同様、上記隙間を抑制して(無くして)デザイン性能の向上を図る効果はより顕著なものとなる。
【0075】
また、本実施形態では、操作突部41aが第1スポーク部14上辺に近接して配設されているため、第1スイッチ操作部41の非操作時における上記隙間を可能な限り少なくし、ひいては該隙間を無くして見映えの向上を図ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、揺動軸45をステアリングハンドル1の中心側に設けることで、ステアリングハンドル1を握って操作する指、特にここではハンドル裏側に位置する指(図6にて二点鎖線で示す)の操作軌跡(同図の矢印D参照)に沿って第2スイッチ操作部42を揺動させることができるため、その操作性をより向上させることができる。
【0077】
なお、第1、第2スイッチ操作部41、42と、ステアリングハンドル1を握った手の指との関係は第1実施形態と略同様である。従って、本実施形態においてもシフトアップ操作時、シフトダウン操作時(加減速時)の運転者の挙動に合わせたシフトダウン操作並びにシフトアップ操作を行うことができる。
【0078】
(第3実施形態)
ところで、上述した第1、第2実施形態では、第1スイッチ操作部21、41が第1スポーク部14の裏側に位置する部分を有する構成となっているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、図7に示すマニュアル操作スイッチ手段50(以下、スイッチ手段50と略記する)のように、突出部51aを設けた第1スイッチ操作部51がスポーク部14の表側に位置する部分(アーム部51b)を有する構成としてもよい。
【0079】
この場合、図示のように奥側に突出部51aを設けたシフトダウン用の第1スイッチ操作部51に、シフトアップ用の第2スイッチ操作部52を組み付ける構成とすることができる。
【0080】
第1スイッチ操作部51は、スイッチ本体(不図示)に設けた揺動軸(不図示)を中心に揺動可能とされ、これにより第1スイッチ操作部51のアーム部51bを奥側に押圧操作することで図中二点鎖線で示す位置まで変位するようになっている。そして、バネ等の付勢手段(不図示)により手前側に付勢されており、非操作時には第1スポーク部14と隙間G’を形成する初期位置へ戻るようになっている。第1スイッチ操作部51は、この隙間G’により奥側へ所定角度だけ揺動できるようになっている。
【0081】
一方、第2スイッチ操作部52は、突出部51aの裏側において、第1スイッチ操作部51に対して相対的に変位可能な自動復帰型の押しボタンにより構成されており、第1スイッチ操作部51の操作方向と逆方向(この場合前側)への押圧操作が可能となっている。
【0082】
即ち、本実施形態においても第1スイッチ操作部51と第2スイッチ操作部52とが独立した別部材とされ、互いが分離された構成となっている。従って、第1スイッチ操作部51の揺動中心を他方によらず任意の位置に設定することができ、揺動中心を指の位置に近接して設定することで、上述した各実施形態と同様、各スイッチ操作部の応答性を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、奥側を向いた突出部51aにより、運転者が第2スイッチ操作部52の位置を把握することが容易になるため、第2スイッチ操作部52の操作性の向上を図ることができる。
【0084】
(その他の実施形態)
第1、第3実施形態において、それぞれ第2スイッチ操作部22、52を押しボタンで構成しているが、これに限らず、揺動軸を設けて揺動可能に構成してもよい。この場合、第2実施形態(図6参照)と同様、揺動軸を第2スイッチ操作部22、52のステアリングハンドル1の中心側において、ステアリングハンドル1の面方向で上下に延びるように設けることが好ましい。
【0085】
また、第2実施形態において、第1スイッチ操作部41は、スポーク部14の裏側に位置する部分を有する構成となっているが、これに限らず、表側に位置する部分を有する構成としてもよい。この場合、第2スイッチ操作部は上記第1スイッチ操作部の表側に配設されることになる。
【0086】
また、第2実施形態において、第2スイッチ操作部44の揺動軸45はステアリングハンドル1のハンドル面に沿って上下方向に延びるように設けられているが、これに限らず、上記ハンドル面の左右方向に延びるように設けてもよい。この場合、揺動軸の位置、即ち第2スイッチ操作部の揺動中心は上下いずれでもよい。
【0087】
また、第1、第2スイッチ操作部の変位する方向は、必ずしも前後方向とすることに限定されず、例えばステアリングハンドル1の左右方向であってもよい。
【0088】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の一方のスイッチ操作部は、第1スイッチ操作部21、41、51に対応し、
以下同様に、
他方のスイッチ操作部は、第1スイッチ操作部22、42、52に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段の表側を示す斜視図。
【図2】レンジ・モード選択装置を示す斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段が設けられたステアリングハンドルを示す平面図。
【図4】図3におけるX−X線矢視断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段の裏側を示す斜視図。
【図6】第2スイッチ操作部の操作を説明するための要部拡大図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段を示す側断面図。
【図8】従来の自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段が設けられたステアリングハンドルの表側を示す斜視図。
【図9】従来の自動変速機のマニュアル操作スイッチ手段が設けられたステアリングハンドルを示す平面図。
【符号の説明】
【0090】
1…ステアリングハンドル
2、40、50、60…マニュアル操作スイッチ手段
12…ベース部材
14…第1スポーク部
15…第2スポーク部
21、41、51、61…第1スイッチ操作部
21a、60a…突出部
22、42、52、62…第2スイッチ操作部
23、43、63…スイッチ本体
24、64、64’…揺動軸
41a…操作突部
44…第1揺動軸
45…第2揺動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機をマニュアル操作するシフトアップ用のスイッチ操作部とシフトダウン用のスイッチ操作部とをステアリングハンドルに設けた自動変速機のマニュアル操作スイッチであって、
上記ステアリングハンドルのベース部材に取付けたスイッチ本体と、
該スイッチ本体に設けられ、上記ステアリングハンドルの面方向で上下に延びる揺動軸と、
該揺動軸を中心に揺動可能に設けられたシフトアップ用またはシフトダウン用の一方のスイッチ操作部と、
該一方のスイッチ操作部に設けられ、該一方のスイッチ操作部の操作方向と逆方向の操作によって作動するシフトアップ用またはシフトダウン用の他方のスイッチ操作部とを設けた
自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項2】
上記スイッチ本体は、上記ステアリングハンドルの左右に延びるスポーク部の裏側に位置するとともに、
上記一方のスイッチ操作部は、上記スポーク部の裏側に位置する部分を有する
請求項1記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項3】
上記一方のスイッチ操作部に、上記スポーク部の上方で上記ステアリングハンドルのハンドル面近傍まで突出する突出部を設け、
該突出部の表側に上記他方のスイッチ操作部を設けた
請求項2記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項4】
上記一方のスイッチ操作部に、上記スポーク部の上方で上記ステアリングハンドルのハンドル面近傍まで突出する操作突部を設け、
上記一方のスイッチ操作部の、上記スポーク部の裏側に位置する部分の裏側に上記他方のスイッチ操作部を設けた
請求項2記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項5】
上記一方のスイッチ操作部に近接して上記揺動軸を配設した
請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項6】
上記突出部を上記スポーク部の上辺に近接して配設した
請求項3記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項7】
上記操作突部を上記スポーク部の上辺に近接して配設した
請求項4記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項8】
上記一方のスイッチ操作部の、上記ステアリングハンドルの中心側に、該ステアリングハンドルの面方向で上下に延びる第2の揺動軸を設け、
上記他方のスイッチ操作部を、上記第2の揺動軸を中心に揺動可能に設けた
請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項9】
上記シフトアップ用のスイッチ操作部が、上記ステアリングハンドルを握った手のハンドル裏側に位置する指で手前側に操作可能に設定される
請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。
【請求項10】
上記シフトダウン用のスイッチ操作部が、上記ステアリングハンドルを握った手のハンドル表側に位置する指で奥側に操作可能に設定された
請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動変速機のマニュアル操作スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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