説明

自動変速機の変速制御装置

【目的】 エンジンブレーキ時のダウンシフトが変速ショックを生じることなく速やかに行われるようにする。
【構成】 アクセルOFFのエンジンブレーキ時にダウンシフトする際に、S11においてスロットル弁開度θが(THa+ΔTH)となるようにスロットル開き制御を行うとともに、通常はエンジン出力に応じた伝達トルクが得られるようにS17においてスロットル弁開度θに応じてデューティ制御されるライン油圧を、上記スロットル開き制御に拘らずS12においてスロットル全閉時(θ=0)の油圧となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動変速機の変速制御装置に係り、特に、エンジンブレーキ時にダウンシフトする際の油圧制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合させられることによって複数の変速段が成立させられる自動変速機と、前記油圧式摩擦係合装置に選択的に係合油圧を作用させる油圧制御回路を切り換えて前記自動変速機の変速段を変更する変速制御手段とを有するオートマチック車両が多用されているが、かかる変速制御手段は一般に、アクセル操作量若しくはスロットル弁開度と車速とに基づいて変速段を変更するようになっている。図8は、4つの変速段を有する自動変速機の変速マップの一例で、アクセル操作量および車速に基づいて変速段が切り換えられる場合である。このような変速マップは通常、アクセル操作量が零すなわちOFF状態の場合でも車速に応じてアップシフトするようになっているため、下り坂でアクセルペダルを放した場合でも、充分なエンジンブレーキ力が得られずに車速が増加すると、アップシフトしてエンジンブレーキ力が更に低下するという問題があった。この対策として、アクセルOFF状態で車両の加速度が負以外であったり車速が一定時間増加し続けたりした場合には、自動変速機の変速比を大きくするようにダウンシフトさせてエンジンブレーキ力を増大させることが、例えば特開昭62−246650号公報や特開昭61−103044号公報等に開示されている。
【0003】ところで、このようにアクセルOFF状態時にエンジンブレーキ力を増大させるためにダウンシフトする場合、その変速段の切換えに要する変速時間が比較的長いとともに、その間は充分なエンジンブレーキ力が得られないため、変速中における車速の上昇幅が大きいという問題があった。すなわち、ダウンシフトでは自動変速機の変速比が大きくなるため、それだけエンジンの回転速度を上昇させる必要があるが、エンジンブレーキ時にダウンシフトする場合、スロットル弁は通常閉じているため、ダウンシフト後の変速段を達成するための油圧式摩擦係合装置、例えばクラッチやブレーキの伝達トルクによってアウトプット側のトルクがエンジン側へ伝達されることにより、エンジンの回転速度が上昇させられ、自動変速機のアウトプット側とインプット側の回転速度がダウンシフト後の変速比に応じて同期した時にクラッチやブレーキが完全係合させられてダウンシフトが達成される。したがって、アクセルが踏込み操作されたパワーオン時のダウンシフトに比較してエンジン回転速度の上昇が遅く、変速時間が長くなってしまうのである。
【0004】これに対し、本願出願人は、先に出願した特願平3−357758号において、エンジンブレーキ時にダウンシフトする際には一時的にスロットル弁を開いてエンジン出力を上昇させ、エンジン回転速度を高めてダウンシフトに要する変速時間を短縮することを提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようにダウンシフト時にエンジン出力を上昇させると、変速時間が短縮される反面、制動トルクが急増して変速ショックが発生し、乗り心地が悪化するという問題があった。すなわち、複数の変速段を成立させる前記油圧式摩擦係合装置の係合油圧は、一般に伝達トルクに応じて必要な係合摩擦力が得られるように、エンジン出力が大きくなる程高くなるようにスロットル弁開度等に応じて制御されるため、エンジン回転速度が吹き上がって自動変速機のアウトプット側とインプット側の回転速度が同期する前に摩擦係合装置の伝達トルクが上昇すると、制動トルクが急増して変速ショックを生じるのである。
【0006】なお、このような問題は、エンジンブレーキ力を増大するために自動でダウンシフトする変速制御装置に限らず、下り坂等で運転者がオーバードライブスイッチをOFF操作したり、シフトレバーをDレンジからSレンジ、Lレンジへ切り換えたりしてダウンシフトする場合にも、その変速時間を短縮するためにエンジン出力を一時的に上昇させるようにした変速制御装置においては同様に生じることである。
【0007】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、エンジンブレーキ時のダウンシフトが変速ショックを生じることなく速やかに行われるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するためには、エンジンブレーキ時のダウンシフトの際にはエンジン出力が上昇しても摩擦係合装置の係合油圧を上昇させないようにすれば良く、本発明は、図1のクレーム対応図に示されているように、(a)複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合させられることによって複数の変速段が成立させられる自動変速機と、(b)前記油圧式摩擦係合装置に選択的に係合油圧を作用させる油圧制御回路を切り換えて前記自動変速機の変速段を変更する変速制御手段と、(c)前記係合油圧をエンジン出力が大きい程高くなるように制御する油圧制御手段と、(d)エンジンブレーキ時に前記自動変速機をダウンシフトする際にエンジン出力を増大させるエンジン出力制御手段とを備えた自動変速機の変速制御装置において、(e)前記エンジンブレーキ時に前記自動変速機をダウンシフトする際には、少なくともそのダウンシフト時に係合制御される油圧式摩擦係合装置の係合油圧を前記油圧制御手段によりエンジン出力に応じて制御される油圧よりも低くする油圧制限手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
【作用】このような自動変速機の変速制御装置においては、エンジンブレーキ時にダウンシフトが行われる際に、エンジン出力制御手段によってエンジン出力が増大させられるため、エンジン回転速度が速やかに高められて変速時間が短縮される一方、通常はエンジン出力に応じた伝達トルクが得られるように油圧制御手段によって制御される油圧制御回路の係合油圧が、エンジンブレーキ時のダウンシフトの際には、油圧制限手段によってエンジン出力に対応する油圧よりも低い油圧に制限される。このため、上記エンジン出力制御手段によるエンジン出力の増大に拘らず係合油圧が低く維持され、ダウンシフトによって係合制御される低速段側の摩擦係合装置の伝達トルクが緩やかに上昇させられるとともに、その摩擦係合装置はエンジン出力の増大に伴うエンジン回転速度の上昇によって完全係合させられるようになり、伝達トルクの急増に起因して発生する変速ショックが軽減される。
【0010】
【発明の効果】このように、本発明の変速制御装置によれば、エンジンブレーキ時におけるダウンシフトが変速ショックを抑制しつつ短時間で行われるようになるのであり、これにより、乗り心地を損なうことなく変速中の車速の増加が小さくされる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】図2において、ガソリンエンジン10の燃焼室12内には、エアクリーナ14,エアフローメータ16,吸気通路18,スロットル弁20,バイパス通路22,サージタンク24,インテークマニホルド26,および吸気弁28を介して空気が吸入されるとともに、その空気には、インテークマニホルド26に設けられた燃料噴射弁30から噴射される燃料ガスが混合されるようになっている。エアフローメータ16は吸入空気量を測定するもので、その吸入空気量を表す信号をエンジン制御用コンピュータ32に出力する。スロットル弁20はエンジン10に吸入される空気量を連続的に変化させるもので、スロットル制御用コンピュータ35から供給されるスロットル制御信号DTHに従ってスロットル弁開度θが制御されるようになっているとともに、そのスロットル弁20にはスロットルポジションセンサ36が設けられて、スロットル弁開度θを表すスロットル弁開度信号Sθをエンジン制御用コンピュータ32、トランスミッション制御用コンピュータ34、およびスロットル制御用コンピュータ35に出力する。バイパス通路22はスロットル弁20と並列に配設されているとともに、そのバイパス通路22にはアイドル回転数制御弁38が設けられており、エンジン制御用コンピュータ32によってアイドル回転数制御弁38の開度が制御されることにより、スロットル弁20をバイパスして流れる空気量が調整されてアイドル時のエンジン回転数が制御される。燃料噴射弁30も、エンジン制御用コンピュータ32によってその噴射タイミングや噴射量が制御される。なお、上記エアフローメータ16の上流側には吸入空気の温度を測定する吸気温センサ40が設けられ、その吸気温を表す信号をエンジン制御用コンピュータ32に出力する。
【0013】エンジン10は、吸気弁28,排気弁42,ピストン44,および点火プラグ46を備えて構成されており、点火プラグ46は、エンジン制御用コンピュータ32によって制御されるイグナイタ48からディストリビュータ50を介して供給される高電圧によって点火火花を発生し、燃焼室12内の混合ガスを爆発させてピストン44を上下動させることによりクランク軸を回転させる。吸気弁28および排気弁42は、クランク軸の回転に同期して回転駆動されるカムシャフトにより開閉されるようになっているとともに、エンジン制御用コンピュータ32によって制御される図示しない可変バルブタイミング機構により、カムシャフトとクランク軸との回転位相が変更されて開閉タイミングが調整されるようになっている。そして、燃焼室12内で燃焼した排気ガスは、排気弁42からエキゾーストマニホルド54,排気通路56,触媒装置58を経て大気に排出される。エンジン10にはエンジン冷却水温を測定する水温センサ60が設けられており、そのエンジン冷却水温を表す信号をエンジン制御用コンピュータ32に出力するようになっているとともに、エキゾーストマニホルド54には排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ62が設けられており、その酸素濃度を表す信号をエンジン制御用コンピュータ32に出力する。また、ディストリビュータ50にはクランク軸の回転に同期してパルスを発生する回転角センサが設けられており、そのパルス信号すなわちエンジン回転速度NEを表すエンジン回転速度信号SNEをエンジン制御用コンピュータ32およびトランスミッション制御用コンピュータ34に出力する。
【0014】上記エンジン制御用コンピュータ32,トランスミッション制御用コンピュータ34,スロットル制御用コンピュータ35は、何れもCPU,RAM,ROM,入出力インタフェース回路,A/Dコンバータ等を備えて構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うもので、トランスミッション制御用コンピュータ34には、上記各信号の他、パターンセレクトスイッチ70から選択パターンを表すパターン信号SP、ブレーキランプスイッチ72からブレーキが踏込み操作されたことを表すブレーキ信号SB、オーバードライブスイッチ74からO/D変速段までの変速許可を表すO/D信号SO、アクセル操作量センサ76からアクセルペダルの操作量Acを表すアクセル操作量信号SAcがそれぞれ供給されるようになっている。アクセル操作量信号SAcはエンジン制御用コンピュータ32およびスロットル制御用コンピュータ35にも供給される。上記パターンセレクトスイッチ70は、動力性能を重視した変速マップによって自動変速機78の変速制御を行うパワーパターン、燃費を重視した変速マップによって変速制御を行うエコノミーパターンなど、予め定められた複数の走行パターンの中から運転者が好みの走行パターンを選択操作するものである。
【0015】自動変速機78は、例えば図3に示すようにトルクコンバータ110,第1変速機112,および第2変速機114を備えて構成されている。トルクコンバータ110のポンプ翼車は前記エンジン10のクランク軸118に連結されており、タービン翼車は入力軸120を介して第1変速機112のキャリヤ122に連結されている。第1変速機112は、サンギヤ124,リングギヤ126,およびキャリヤ122に回転可能に配設されてサンギヤ124,リングギヤ126と噛み合わされているプラネタリギヤ128から成る遊星歯車装置を含んで構成されており、サンギヤ124とキャリヤ122との間にはクラッチC0 および一方向クラッチF0 が並列に設けられ、サンギヤ124とハウジング130との間にはブレーキB0 が設けられている。
【0016】第2変速機114は、サンギヤ132,一対のリングギヤ134,136,キャリヤ138に回転可能に配設されてサンギヤ132,リングギヤ134と噛み合わされているプラネタリギヤ140,およびキャリヤ142に回転可能に配設されてサンギヤ132,リングギヤ136と噛み合わされているプラネタリギヤ144とから成る複合型の遊星歯車装置を含んで構成されており、リングギヤ136と前記第1変速機112のリングギヤ126との間にはクラッチC1 が設けられ、サンギヤ132とリングギヤ126との間にはクラッチC2 が設けられ、サンギヤ132とハウジング130との間にはブレーキB1 と、直列に配設された一方向クラッチF1 およびブレーキB2 とが並列に設けられ、キャリヤ138とハウジング130との間にはブレーキB3 および一方向クラッチF2 が並列に設けられている。また、リングギヤ134およびキャリヤ142は出力軸146に一体的に連結されており、その出力軸146は差動歯車装置等を介して駆動輪に連結されている。
【0017】上記クラッチC0 〜C2 およびブレーキB0 〜B3 (以下、特に区別しない場合にはクラッチC,ブレーキBという)は、多板式のクラッチやバンドブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、その油圧アクチュエータには、油圧制御回路150から作動油が供給されるようになっている。油圧制御回路150は多数の切換バルブ等を備えており、トランスミッション制御用コンピュータ34からの信号に従ってソレノイドS1,S2,およびS3の励磁,非励磁がそれぞれ切り換えられることにより、油圧回路が切り換えられて上記クラッチCおよびブレーキBが選択的に係合制御され、図4に示されているように前進4段のうちの何れかの変速段が成立させられる。かかる図4におけるソレノイドの欄の「○」印は励磁を意味し、クラッチおよびブレーキの欄の「○」印は係合を意味する。シフトポジションの「D」,「S」,「L」は運転席のシフトレバーの操作レンジであり、「D」レンジでは1stからO/Dまでの4段で変速制御が行われ、「S」レンジでは1stから3rdまでの3段で変速制御が行われ、「L」レンジでは1stおよび2ndの2段で変速制御が行われる。変速比(入力軸120の回転速度/出力軸146の回転速度)は、1stで最も大きく、2nd,3rd,O/Dとなるに従って小さくなり、3rdの変速比は1.0である。また、「D」レンジでは、3rdおよびO/Dでエンジンブレーキが作用し、1stおよび2ndでは一方向クラッチF2 ,F1の作用によりエンジンブレーキが効かないが、括弧書きで示されている(1st),(2nd)では、それぞれソレノイドS3が励磁されることによりブレーキB3 ,B1 が係合させられてエンジンブレーキが作用するようになる。「S」レンジの2ndおよび「L」レンジの1stおよび2ndでもエンジンブレーキが作用するようになっている。なお、図示は省略するが、シフトレバーが「R」レンジへ操作されると、油圧制御回路150のマニュアルシフトバルブが切り換えられて後進変速段が成立させられる。
【0018】また、かかる油圧制御回路150は、上記油圧アクチュエータに供給する作動油の元圧、すなわちライン油圧PLを調圧するための回路を備えている。図5R>5は、その調圧回路の一例であり、モジュレータ弁160は、ライン油圧PLが供給される入力ポート162とモジュレータ油圧PMを出力する出力ポート164との間を開閉するスプール弁子166と、スプール弁子166を開弁方向へ付勢するスプリング168と、スプール弁子166を閉弁方向へ付勢するためにモジュレータ油圧PMが導かれる油室170とを備え、ライン油圧PLの変動に拘らず一定のモジュレータ油圧PMをリニアソレノイド弁172へ出力する。リニアソレノイド弁172は、モジュレータ油圧PMが供給される入力ポート174と信号油圧PSを出力する出力ポート176との間を開閉するスプール弁子178と、スプール弁子178を閉弁方向へ付勢するスプリング180と、スプール弁子178を開弁方向へ付勢するリニアソレノイドS4と、スプール弁子178を閉弁方向へ付勢するために信号油圧PSが導かれる油室182とを備え、リニアソレノイドS4に供給される励磁電流SA(図3参照)に従って連続的に変化する信号油圧PSをライン油圧調圧弁184へ出力する。ライン油圧調圧弁184は、エンジン10によって回転駆動される油圧ポンプ186から作動油が供給されるライン油圧ポート188とライン油圧PLよりも低圧の第2ライン油圧PL2に調圧される第2ライン油圧ポート190および戻り油路に接続される戻り油ポート192との間を開閉するスプール弁子194と、そのスプール弁子194を閉弁方向へ付勢するスプリング196と、スプール弁子194を閉弁方向へ付勢するために信号油圧PSが導かれる油室198と、スプール弁子194を開弁方向へ付勢するためにライン油圧PLが導かれるフィードバック油室200とを備え、信号油圧PSに応じて高くなるようにライン油圧PLを調圧する。上記励磁電流SAは前記トランスミッション制御用コンピュータ34によってデューティ制御されるようになっており、その励磁電流SAが大きくなるに従って信号油圧PSは上昇させられ、それに伴ってライン油圧PLも上昇させられる。
【0019】前記自動変速機78には、一対の回転速度センサ80および82が配設されている。回転速度センサ80は第1変速機112のサンギヤ124の回転速度、すなわちクラッチC0 のハウジングの回転速度NC0を検出するもので、回転速度センサ82は出力軸146の回転速度NO を検出するものであり、それぞれその回転速度NC0,NO を表す回転速度信号SNC0,SNO をトランスミッション制御用コンピュータ34に出力する。また、油圧制御回路150にはニュートラルスタートスイッチ84が配設されており、シフトレバー操作によって切り換えられるマニュアルシフトバルブの位置から前記「D」,「S」,「L」,「R」等のシフトレンジを検出して、そのシフトレンジを表すシフトレンジ信号SRをトランスミッション制御用コンピュータ34に出力する。油圧制御回路150にはまた、作動油の油温TO を検出する油温センサ86が設けられ、その油温TO を表す油温信号STO をトランスミッション制御用コンピュータ34に出力するようになっている。
【0020】なお、各制御用コンピュータ32,34,35間では必要な情報が授受されるようになっており、前記スロットル弁開度信号Sθやエンジン回転速度信号SNE,アクセル操作量信号SAcは、少なくとも何れかの制御用コンピュータ32,34,または35に供給されるようになっておれば良い。また、例えばステアリングホイールの操舵角、路面の勾配、排気温度など、自動車の運転状態を表す他の種々の信号を取り込んで、エンジン制御や自動変速機78の変速制御,スロットル制御に利用することも可能である。
【0021】そして、上記エンジン制御用コンピュータ32は、前記吸入空気量やスロットル弁開度θ,エンジン回転速度NE,エンジン10の冷却水温度,吸入空気温度,排気通路56内の酸素濃度,アクセル操作量Acなどに応じて、例えば必要なエンジン出力を確保しつつ燃費や有害排出ガスを低減するように予め定められたデータマップや演算式などに基づいて、前記燃料噴射弁30による燃料ガスの噴射量や噴射タイミング、イグナイタ48による点火時期、アイドル回転数制御弁38によるアイドル回転数、および可変バルブタイミング機構による吸排気弁28,42の開閉タイミングなどを制御する。トランスミッション制御用コンピュータ34は、スロットル弁開度θ,エンジン回転速度NE,パターン信号SPが表す選択パターン,ブレーキ信号SBが表すブレーキ操作の有無,O/D信号SOが表すO/D変速段への変速の可否,アクセル操作量Ac,自動変速機78の出力軸回転速度NO などに基づいて、ソレノイドS1,S2,およびS3の励磁,非励磁をそれぞれ切り換えることにより自動変速機78の変速段を切換制御する。トランスミッション制御用コンピュータ34はまた、エンジン10の出力に対応するスロットル弁開度θに応じてリニアソレノイドS4の励磁電流SAを制御し、リニアソレノイド弁172による信号油圧PSを変化させてライン油圧PLを調圧することにより、前記クラッチCやブレーキBの係合摩擦力をエンジン出力の増加に伴って増大させる。更に、トルクコンバータ110のロックアップクラッチについても、油圧制御回路150に設けられた図示しないソレノイドをデューティ制御することにより、完全係合かスリップ状態か解放かを切り換えるとともに、スロットル弁20のスロットル弁開度θをアクセル操作量Acに応じて制御するため、スロットル制御用コンピュータ35にスロットル指令信号SQを出力する。スロットル制御用コンピュータ35は、基本的に上記スロットル指令信号SQに従ってスロットル弁開度θを制御するためのスロットル制御信号DTHをスロットル弁20に出力するようになっている。
【0022】上記トランスミッション制御用コンピュータ34はまた、下り坂などでアクセル操作量Acが略零とされたエンジンブレーキ時にダウンシフトを行う際に、変速ショックを抑制しつつ変速時間を短縮するため、前記スロットル弁開度θやライン油圧PLに関して上記とは異なる制御を行うようになっている。以下、このエンジンブレーキ時のダウンシフトについて、通常の変速制御と共に図6のフローチャートや図7のタイムチャートを参照しつつ具体的に説明する。なお、かかる変速制御は8〜32msec程度のサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0023】図6のステップS1では、アクセルがOFFすなわちアクセル操作量信号SAcが表すアクセル操作量Acが略零か否か、具体的には検出誤差などを考慮して5%程度以下か否かを判断し、アクセルOFFでない場合にはステップS13でフラグFを「0」とした後、ステップS14以下の通常の変速制御を行う。すなわち、ステップS14では基本的に、アクセル操作量信号SAcが表すアクセル操作量Ac(%)、および回転速度信号SNO が表す回転速度NO に対応する車速V(km/h)に基づいて、図8に示す変速マップに従って自動変速機78の変速段を切り換えるか否かを判断し、変速すべき判断が為された場合にはステップS15において、前記ソレノイドS1,S2,S3の励磁,非励磁を切り換えることにより変速を実行する。上記ステップS14では、前記シフトレンジ信号SRが表すシフトレンジが「D」で且つO/D信号SOがONの場合にはO/D変速段を含めて変速判断を行うが、O/D信号SOがOFFの場合やシフトレンジが「S」の場合には3rdまでで変速判断を行い、シフトレンジが「L」の場合には2ndまでで変速判断を行う。また、上記変速マップは、パターンセレクトスイッチ70によって選択できる複数の走行パターンに応じて複数種類のものが予め記憶されている。
【0024】続くステップS16では、アクセル操作量信号SAcが表すアクセル操作量Acに基づいて、予め定められたマップや演算式等からスロットル弁開度TH(Ac)を求め、そのスロットル弁開度TH(Ac)を目標スロットル弁開度THに設定するとともに、その目標スロットル弁開度THを表すスロットル指令信号SQをスロットル制御用コンピュータ35に出力する。スロットル弁開度TH(Ac)を求めるためのマップや演算式等は、アクセル操作量Acが大きくなるに従ってスロットル弁開度TH(Ac)も大きくなるように予め定められている。スロットル制御用コンピュータ35は、フィードバック制御等によりスロットル弁20の実際のスロットル弁開度θを上記スロットル指令信号SQが表す目標スロットル弁開度THと一致させるように、スロットル制御信号DTHをスロットル弁20に出力する。
【0025】また、ステップS17では、スロットル弁開度信号Sθが表す実際のスロットル弁開度θに基づいて、予め定められたマップや演算式等からデューティ比DUTYを求め、そのデューティ比に従って前記リニアソレノイドS4の励磁電流SAをデューティ制御する。デューティ比DUTYを求めるためのマップや演算式等は、スロットル弁開度θが大きくなるに従ってデューティ比も大きくなるように予め定められており、それに従って励磁電流SAが大きくされることにより、前記リニアソレノイド弁172から出力される信号油圧PSが高められるとともにライン油圧調圧弁184から出力されるライン油圧PLが上昇させられる。言い換えれば、スロットル弁開度θが大きくなってエンジン出力が上昇するに従ってライン油圧PLを上昇させるのであり、これにより、自動変速機78のクラッチCやブレーキBの係合油圧すなわち伝達トルクがエンジン出力に応じて高められる。
【0026】一方、前記ステップS1の判断がYES、すなわちアクセル操作量Acが略零の場合には、ステップS2以下のエンジンブレーキ時の変速制御を実行する。ステップS2ではフラグFが「0」か否かを判断し、フラグF=0の場合には、ステップS3においてエンジンブレーキが作用する次の低速段、すなわちDレンジにおける1st,2ndについては図4において括弧付きで示されている(1st),(2nd)へダウンシフトするか否かを判断する。かかるステップS3の変速判断は、基本的にはアクセル操作量信号SAcが表すアクセル操作量Ac(%)、および回転速度信号SNO が表す回転速度NO に対応する車速V(km/h)に基づいて、図8において破線で示されているダウンシフト用の変速マップに従って行うが、前記オーバードライブスイッチ74のOFF操作によりO/D信号SOがOFFへ切り替わった場合や、シフトレバー操作によりシフトレンジ信号SRが表すシフトレンジが「D」レンジから「S」レンジまたは「L」レンジへ切り替わった場合、「S」レンジから「L」レンジへ切り替わった場合には、その切替え後の変速段範囲に基づいてダウンシフトを行うか否かを判断する。
【0027】上記ステップS3においてダウンシフトすべき旨の変速判断が為されなかった場合には、前記ステップS13以下の通常の制御を実行するが、ダウンシフトすべき旨の判断が為された場合には、ステップS4においてタイマTをリセットするとともに、次のステップS5でソレノイドS1,S2,S3の励磁、非励磁を切り換えることにより変速を実行する。図7のタイムチャートは、O/D変速段から3rd変速段へダウンシフトする場合のもので、時間t1は、かかるステップS5において変速出力が為された時間である。また、続くステップS6においてフラグFを「1」とし、ステップS7においてスロットル弁開度(THa+ΔTH)を設定するとともに、ステップS8においてスロットル開きタイミング時間Taを設定する。ステップS6でフラグFが「1」とされることにより、以後のサイクルでは前記ステップS2に続いてステップS5以下、実質的にはステップS9以下が直ちに実行されるようになる。
【0028】上記ステップS7で設定されるスロットル弁開度(THa+ΔTH)は、アクセルOFF状態時のダウンシフトにおいてエンジン回転速度NEを速やかに高め、変速時間を短くするためのものである。図7のタイムチャートを参照しつつ具体的に説明すると、変速出力によってソレノイドS2がON(励磁)され、油圧制御回路150のバルブが切り換えられることによりブレーキB0 の係合油圧PB0が低下し、そのブレーキB0 が滑り始めると(時間t2)、スロットル弁20がアクセル操作量Acに対応して全閉状態の場合にはエンジン回転速度NEは実線で示されているように低下し、3rd変速段を成立させるためのクラッチC0の伝達トルクのみに基づいてエンジン回転速度NEは上昇させられることとなり、変速終了(時間t5)までに比較的長い時間を必要とする。これに対し、この変速時にスロットル弁20を一時的に開き、エンジン出力を増大させてエンジン回転速度NEを高めてやれば、回転速度NEおよびNC0は一点鎖線で示されているように速やかに変化し、変速終了(時間t3)までの時間を短くできるのである。
【0029】上記スロットル弁開度(THa+ΔTH)のうち、THaは、平坦地走行であれば変速後も現在の車速Vを維持できるスロットル弁開度、すなわち走行抵抗を見込んだ駆動力が略零となるスロットル弁開度(%)であり、変速後の変速段および車速Vに基づいて、例えば図9に示されているような予め記憶されたデータマップからマップ補間により算出する。図9のデータマップは、予め実験またはシミュレーションによって求められた図10に示すようなデータに基づいて、駆動力が走行抵抗と一致するスロットル弁開度を変速段および車速毎に求めたものであり、例えば車速が80km/hの場合のスロットル弁開度THa(%)は、平坦地における走行抵抗と一致する点Aのスロットル弁開度(角度)が約7.4゜であるから、これを全開の80゜に対して%に換算すると、(7.4/80)×100=9.3となる。すなわち、図9のデータマップにおいて、O/D変速段で車速80km/hの場合のスロットル弁開度TH45は、具体的には9.3%であり、このようにしてO/D変速段における各車速のスロットル弁開度TH41〜TH47は求められている。3rd変速段およびエンジンブレーキが作用する2nd変速段,1st変速段についても、上記O/D変速段の場合と同様にしてスロットル弁開度TH31〜TH37,TH21〜TH27,TH11〜TH17が求められている。このスロットル弁開度THaは、図10から明らかなように車速が大きい程大きくなり、同じ車速であれば変速比が大きい低速の変速段程大きくなる。また、ΔTHは、クランク軸118やトルクコンバータ110等のイナーシャ分を考慮して予め設定された一定値であるが、演算式やマップにより車速V等に応じて設定されるようにすることもできる。このΔTHを含んでTHaを設定しておいても差支えない。なお、図9のデータマップにはO/D変速段が含まれているが、スロットル弁開度THaはダウンシフト後の変速段で現在の車速Vを維持できるスロットル弁開度であるため、ステップS7においてO/D変速段のデータが使われることはない。
【0030】また、ステップS8で設定されるスロットル開きタイミング時間Taは、ステップS5の変速出力時からスロットル弁20を上記スロットル弁開度(THa+ΔTH)だけ開くまでの遅れ時間で、ダウンシフトによって解放制御される高速段側の摩擦係合装置に滑りが生じ始めてから、そのダウンシフトによって係合制御される低速段側の摩擦係合装置が係合して変速が終了する前までにエンジン回転が吹き上がるように、O/D→3rd変速,O/D→2nd変速等の変速の種類や車速V、油圧制御回路150の油温TO 等をパラメータとして予め実験やシミュレーション等によって定められたマップ等から算出される。図7を参照しつつ具体的に説明すると、O/D→3rdダウンシフト時に解放制御されるブレーキBO が滑り始める時間t2から、そのダウンシフト時に係合制御されるクラッチC0 がスロットル開き制御を行わない場合に完全に係合する時間t5までの間にエンジン回転が吹き上がるように設定されるのであり、本実施例では時間t2の直後に吹き上がるように定められている。
【0031】ステップS9では、前記ステップS4でリセットされたタイマTの時間がステップS8で設定されたスロットル開きタイミング時間Taに達したか否かを判断し、タイミング時間Taに達するまでは前記ステップS16以下を実行するが、タイミング時間Taに達するとステップS10を実行する。ステップS10では、回転速度NC0,NO ,および切換え後の変速段における変速比iL に基づいて、次式(1)を満足するか否かにより変速段の切り換えが終了したか否かを判断する。(1)式のN1 は測定誤差等を考慮して予め定められた正の一定値で、変速段の切換えが完全に終了するとNC0=NO ×iL となってステップS10の判断はYESとなる。
【0032】
【数1】NC0≧NO ×iL −N1 ・・・(1)
【0033】変速段の切換えが終了すると前記ステップS13以下を実行するが、タイマTがタイミング時間Taに達した当初は未だ変速は終了していないため、続いてステップS11を実行する。ステップS11では、前記スロットル弁開度(THa+ΔTH)を目標スロットル弁開度THに設定し、その目標スロットル弁開度THを表すスロットル指令信号SQをスロットル制御用コンピュータ35に出力することにより、スロットル弁20の実際のスロットル弁開度θがスロットル弁開度(THa+ΔTH)となるように制御する。そして、次のステップS12において、スロットル弁開度θが全閉の場合のデューティ比DUTYを前記ステップS17と同様にしてマップや演算式等から求め、そのデューティ比に従って前記リニアソレノイドS4の励磁電流SAをデューティ制御する。すなわち、変速出力からタイミング時間Taが経過すると、高速段側の摩擦係合装置に滑りが生じ始めた後にエンジン回転が吹き上がるようにステップS11においてスロットル弁20が開かれるが、ライン油圧PLについては、そのスロットル弁20の開きすなわちエンジン出力の上昇に拘らず、スロットル弁20の全閉時と同じ低い油圧に制御するのである。タイミング時間Taが経過した後は、変速が終了してステップS10の判断がYESとなるまでステップS16,S17は実行されないため、スロットル弁開度θは上記スロットル弁開度(THa+ΔTH)に維持され、ライン油圧PLはスロットル全閉時の低油圧に維持される。
【0034】ここで、ライン油圧PLをスロットル全閉時の低油圧に制御するのは、ダウンシフト時に係合制御される低速段側の摩擦係合装置の係合油圧が急増して変速ショックが生じることを防止するためである。すなわち、スロットル弁開度θに応じてライン油圧PLが上昇させられると、それに伴って低速段側の摩擦係合装置、O/D→3rd変速ではクラッチC0 の係合油圧PC0も図7において一点鎖線で示されるように急増するため、そのクラッチC0 の伝達トルク増大によりエンジン10が強制回転させられ、制動トルクが一時的に増大してショックを生じるのである。一点鎖線で示されている回転速度NE,NC0や駆動トルクのグラフは、このようにライン油圧PLがスロットル弁開度θに応じて上昇させられる場合である。これに対し、本実施例のようにライン油圧PLをスロットル全閉時の油圧に維持した場合には、クラッチC0 の係合油圧PC0が実線で示されているように緩やかに変化させられるため、回転速度NE,NC0は、スロットル弁20の開きに伴うエンジン出力の増加に伴って破線で示されているように滑らかに上昇させられ、トルク変動に伴うショックが軽減されるのである。図7の時間t4は、本実施例における変速終了時間であり、スロットル弁20の開き制御のみを行う場合(時間t3)に比較して変速時間は長くなるが、スロットル弁20の開き制御を行わない場合(時間t5)よりも短縮される。なお、クラッチC0 の係合油圧PC0の過渡特性は、油圧回路に設けられたオリフィスやアキュムレータなどの作用によるものである。また、スロットル弁開度(THa+ΔTH)は、平坦地であれば車速Vを維持できる程度にエンジン回転を吹き上げるように定められているため、この場合のクラッチC0 の係合油圧PC0をそれ程大きくする必要はなく、スロットル全閉時のライン油圧PLで何等差支えないのである。
【0035】このように本実施例では、アクセルOFFのエンジンブレーキ時にダウンシフトを行う際に、スロットル弁20のスロットル弁開度θを(THa+ΔTH)となるようにスロットル制御するとともに、そのダウンシフト時にはスロットル弁20の開きに拘らずライン油圧PLをスロットル全閉時の油圧に制御しているため、変速ショックを抑制しつつ変速時間を短縮でき、下り坂での変速中の車速増加を小さくできるのである。
【0036】本実施例では、トランスミッション制御用コンピュータ34による一連の信号処理のうちステップS3,S5,S14,およびS15を実行する部分が変速制御手段に相当し、ステップS12を実行する部分は油圧制限手段に相当する。また、ステップS7およびS11を実行する部分はスロットル弁20およびスロットル制御用コンピュータ35と共にエンジン出力制御手段を構成しており、ステップS17を実行する部分はリニアソレノイド弁172,ライン油圧調圧弁184と共に油圧制御手段を構成している。
【0037】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は他の態様で実施することもできる。
【0038】例えば、前記実施例ではオーバードライブスイッチ74やシフトレバーのマニュアル操作、或いは車速Vの低下によってダウンシフトを行う場合について説明したが、アクセルOFF時の車速Vを超えないようにダウンシフトする自動エンジンブレーキ制御等にも本発明は同様に適用され得る。
【0039】また、前記実施例ではスロットル弁開度θを制御してエンジン出力を増大させていたが、アイドル回転数制御弁38を開いたりオルタネータなどのエンジン補器を利用したりしてエンジン出力を増大させることもできる。スロットル弁開度θの開き量についても、予め一定値を設定したり、エンジン回転が吹き上がるまでは一時的に大きく開くようにしたりするなど適宜変更され得る。
【0040】また、前記実施例ではエンジン出力の代用値としてスロットル弁開度θを用いてライン油圧PLを調圧していたが、エアフローメータ16によって検出した実際の吸入空気量や吸気管圧力などを用いてライン油圧PLを調圧するようにしても差支えない。
【0041】また、前記実施例のステップS12ではライン油圧PLを制御してクラッチCやブレーキBの係合油圧が低くなるようにしていたが、スロットル弁開度θに応じてライン油圧PLを制御するスロットル油圧を調圧したり、ライン油圧PLはそのままで変速過渡時の係合油圧を制御するアキュムレータ背圧などを調圧したりしても良い。また、クラッチCやブレーキBの係合油圧を直接制御する電磁弁などを有する場合には、その係合油圧を直接調圧するようにしても良い。このステップS12では、少なくともダウンシフトによって係合制御される摩擦係合装置、前記実施例のO/D→3rd変速ではクラッチC0 の係合油圧を低くするようになっておれば良い。
【0042】また、上記ステップS12ではスロットル全閉時のライン油圧PLに制御していたが、少なくともスロットル弁開度(THa+ΔTH)に対応するライン油圧PLよりも低い油圧、具体的には図7に示されている係合油圧PC0が一点鎖線よりも小さくなるように制御すれば良い。なお、図6のフローチャートでは、ステップS9の判断がYESとなった後は変速が終了するまでステップS17が実行されないので、ステップS12を設けなくてもライン油圧PLはスロットル全閉時の油圧に制御されることとなり、ステップS12を省略することも可能である。また、このステップS12の油圧制限は、ステップS11のスロットル制御と同期して行う必要はなく、ステップS5の変速出力から変速が終了するまで行われるようになっていても良い。
【0043】また、前記実施例ではアクセルOFF状態時にステップS2以下を実行するようになっていたが、アクセルが完全にOFF状態でなくても駆動トルクが負のエンジンブレーキ時には、ステップS2以下が実行されるようにしても良い。駆動トルクが負か否かは、例えばエンジン回転速度NEとトルクコンバータ110のタービン回転速度すなわち入力軸120の回転速度とを比較すること等によって検出できる。
【0044】また、前記実施例ではスロットル開きタイミング時間TaがステップS5の変速出力時を起点として設定されていたが、例えば高速段側の摩擦係合装置に滑りが生じ始めた時を起点としてタイミング時間Taを設定することも可能である。高速段側の摩擦係合装置が滑り始めたか否かは、入力軸120の回転速度、出力軸回転速度NO 、変速前の変速段における変速比に基づいて検出できる。
【0045】また、前記実施例ではスロットル弁開度θがスロットル制御用コンピュータ35によって制御される車両について説明したが、スロットル弁20がアクセルペダルに機械的に連結されて開閉される車両にも本発明は適用可能である。自動変速機78の構成や変速段の数についても適宜変更できる。
【0046】また、前記実施例ではエンジン制御用コンピュータ32,トランスミッション制御用コンピュータ34,およびスロットル制御用コンピュータ35が別体に構成されていたが、それ等を単一のコンピュータにて構成することも可能である。前記ステップS7〜S11,S16のスロットル制御をエンジン制御用コンピュータ32によって行わせるようにしても良い。
【0047】その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクレーム対応図である。
【図2】本発明の一実施例である変速制御装置を備えた自動変速機およびエンジン等の構成を説明する図である。
【図3】図2の自動変速機の構成を説明する図である。
【図4】図3の自動変速機の変速段とそれを成立させるためのソレノイドの励磁、クラッチおよびブレーキの係合作動を示す図である。
【図5】図3の油圧制御回路においてライン油圧を調圧する部分を示す回路図である。
【図6】図2の変速制御装置の作動を説明するフローチャートである。
【図7】図2の自動変速機をO/D変速段から3rd変速段へダウンシフトする際の油圧や回転速度変化等を示すタイムチャートである。
【図8】図2の自動変速機の変速段を切り換える変速マップの一例である。
【図9】図6のステップS7において変速段および車速から走行抵抗を見込んだ駆動力が略零となるスロットル弁開度THaを求めるために用いられるデータマップの一例である。
【図10】図9のデータマップを作成するための基本データである。
【符号の説明】
10:エンジン
20:スロットル弁
34:トランスミッション制御用コンピュータ
35:スロットル制御用コンピュータ
78:自動変速機
150:油圧制御回路
172:リニアソレノイド弁
184:ライン油圧調圧弁
0 ,C1 ,C2 :クラッチ(油圧式摩擦係合装置)
0 ,B1 ,B2 ,B3 :ブレーキ(油圧式摩擦係合装置)
ステップS3,S5,S14,S15:変速制御手段
ステップS7,S11:エンジン出力制御手段
ステップS12:油圧制限手段
ステップS17:油圧制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合させられることによって複数の変速段が成立させられる自動変速機と、前記油圧式摩擦係合装置に選択的に係合油圧を作用させる油圧制御回路を切り換えて前記自動変速機の変速段を変更する変速制御手段と、前記係合油圧をエンジン出力が大きい程高くなるように制御する油圧制御手段と、エンジンブレーキ時に前記自動変速機をダウンシフトする際にエンジン出力を増大させるエンジン出力制御手段とを備えた自動変速機の変速制御装置において、前記エンジンブレーキ時に前記自動変速機をダウンシフトする際には、少なくとも該ダウンシフト時に係合制御される油圧式摩擦係合装置の係合油圧を前記油圧制御手段によりエンジン出力に応じて制御される油圧よりも低くする油圧制限手段を設けたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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