説明

自動変速機の試験装置

【課題】ダミーシャフト交換装置を1式とし、コンベアの幅方向の大きさを小さくするとともに、動作時間を短くし、かつ複雑な割り出し機構を不要とする。
【解決手段】外周にダミーシャフト6,7を支持するための複数の係合溝24aが設けられるとともに、コンベア2の内側にコンベア2と平行に回動自在に支持された一対の円弧状のダミーシャフト保持部24を有する1式のダミーシャフト交換装置20を設け、各ダミーシャフト保持部24の所定の係合溝24aをダミーシャフト6,7の一端と連結された連結部8,9と対応した位置に位置させ、連結部8,9により前記係合溝24aにダミーシャフト6,7を係脱させるとともに、自動変速機1のコンベア2上への搬入時には各ダミーシャフト保持部24をコンベア2の下方に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生産ライン等で用いられる自動変速機の試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の前輪駆動用自動変速機の試験装置の平面図を示し、1はコンベア2上に搬入、搬出される自動変速機、3は実車のエンジンに相当する駆動モータであり、駆動モータ3は入力軸4及び入力軸連結部5を介して自動変速機1の入力側と連結される。6,7は自動変速機1の左右の出力側に一端が着脱自在に連結された出力軸のダミーシャフトであり、ダミーシャフト6,7の他端は連結部8,9を介して連結軸10,11(スプラインシャフト)と連結され、連結軸10はギヤ12,13を介してダイナモメータ14と連結される。図6に示すように、連結部8,9はコンベア2の幅方向に移動自在である。一方、連結軸11はギヤ15,16に連結され、ギヤ16とダイナモメータ14との間にはフライホイル17を連結する。又、カセット移動装置18及びカセット19はコンベア2の左右に一対設けられたダミーシャフト6,7の交換装置を構成し、カセット19は種類の異なるダミーシャフトを円周状に複数保持している。
【0003】
前記構成において、駆動モータ3を回転させると、入力軸4を介して自動変速機1の入力側が回転し、その出力側が回転し、この回転はダミーシャフト6,7及びギヤ12,13,15,16を介してダイナモメータ14及びフライホイル17に伝えられ、実車走行負荷条件を再現しつつ動力を吸収する。そして、自動変速機1の種類が異なれば、ダミーシャフト6,7も異ならせる必要があり、ダミーシャフト交換装置を用いてダミーシャフト6,7の交換を行う。ダミーシャフト6,7の交換においては、まず図6に示すように、連結軸10,11をダミーシャフト6.7と共に自動変速機1に対してコンベア2の幅方向に後退させる。その後、図7に示すように、カセット移動装置18をカセット19と共に連結部8,9に近づく方向でかつコンベア2と平行に移動させ、連結部8,9に連結されているダミーシャフト6,7をカセット19の空きスペースに収納し、固定する。ここで、連結部8,9とダミーシャフト6,7とを切り離し、連結部8,9をコンベア2の幅方向に後退させる。次に、必要とするダミーシャフト6,7を選択して結合できるようにカセット19を回転させ、連結部8,9をオンベア2の幅方向に前進させて必要なダミーシャフト6,7を結合させる。その後、ダミーシャフト移動装置18及びカセット19をコンベア2と平行にかつ連結部8,9から遠ざかる方向に移動させることによって、結合させたダミーシャフト6,7とカセット19とを分離する。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行特許文献情報としては、次のものがある。
【特許文献1】特開平7−311122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、従来の前輪駆動用自動変速機の試験装置においては、自動変速機の出力側が両側に突出しているので、ダミーシャフト交換装置が2式必要となり、スペースが大きくなるとともに、高価になった。又、ダミーシャフト交換装置がコンベア2の外側に設けられているので、コンベア2の幅方向の寸法が大きくなるとともに、連結部8,9の後退時のストロークも長くなり、工場内での設置スペースが大きくなる。又、ダミーシャフト6,7の交換の動作時間も長くなる。さらに、複雑な機構である割り出し機構(ダミーシャフト位置合わせ機構)を必要とした。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、ダミーシャフト交換装置を1式とするとともに、一対のダミーシャフト支持部をコンベアの内側に設け、コンベアの幅方向の寸法を小さくすることができるとともに、動作時間を短くすることができ、複雑な割り出し機構でダミーシャフトを交換することができる自動変速機の試験装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の請求項1に係る自動変速機の試験装置は、コンベア上に搬入、搬出される自動変速機の入力側に入力側駆動部を連結するとともに、左右ダミーシャフトの一端を連結部を介してダイナモメータに着脱自在に連結し、かつ自動変速機の出力側に左右のダミーシャフトの他端を連結した自動変速機の試験装置において、モータにより回動自在に設けられたアームと、前記アームの先端に設けられるとともに、ダミーシャフトを保持するための複数の係合溝が設けられた一対の円弧状のダミーシャフト保持部とを有するダミーシャフト交換装置を設けたものである。
【0008】
請求項2に係る自動変速機の試験装置は、前記ダミーシャフト交換装置の円弧状のダミーシャフト保持部が、自動変速機の搬入時にはダミーシャフト保持部を回動させ、ダミーシャフト保持部がコンベア内部に収納されるものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のようにこの発明の請求項1によれば、ダミーシャフト交換装置を1式としたので、スペースが小さくなるとともに、安価にすることができる。又、複数の係合溝を有する円弧状のダミーシャフト支持部を回動自在に設けたことにより、回転と移動という従来のような複雑な機構を不要とすることができ、回転のみの簡単な割り出し機構を構成することができる。
【0010】
請求項2によれば、ダミーシャフト保持部をコンベアの内部に収納するようにしたので、コンベア及びダミーシャフト保持部の幅方向の寸法が小さくなり、これにより、(1)連結部の後退時のストロークが短くなった。(2)ダミーシャフト交換の作業時間が短くなった。(3)ダミーシャフトの交換が不要な場合には、ダミーシャフト交換装置をオプションとし、ダミーシャフト交換装置の有無に拘わらず、全体レイアウトの再設計を不変とすることができる。(4)自動変速機の搬入時にはダミーシャフト保持部をコンベア内部に収納することにより、搬入に支障がないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図1はこの発明の実施最良形態による前輪駆動用自動変速機の試験装置の平面図を示し、20は1式だけ設けられたダミーシャフト交換装置であり、左右6対のダミーシャフト6,7が装着されている。図1のその他の符号部分は図5〜図7の従来と同様である。図2(a),(b)はこの実施最良形態によるダミーシャフト交換装置及びコンベアの概略平面図及び概略正面図、図3(a),(b)は実施最良形態によるダミーシャフト交換装置の正面図及びその一部拡大図、図4(a),(b)は実施最良形態によるダミーシャフト交換装置の平面図及び側面図を示す。図3及び図4において、21はダミーシャフト交換装置20の支持脚であり、支持脚21には回動軸22を介してアーム23が回動自在に支持され、アーム23の先端には一対のダミーシャフト保持部24が取り付けられ、各ダミーシャフト保持部24の外周にはそれぞれ6個のダミーシャフト係合溝24aが設けられ、各ダミーシャフト係合溝24aにはそれぞれ種類の異なるダミーシャフト6,7を水平に係合支持する。25はアーム23を回動するモータである。ダミーシャフト交換装置20の一対のダミーシャフト保持部24はコンベア2の内側に設けられている。
【0012】
次に、前記構成の動作手順、即ちダミーシャフトの交換手順について説明する。ダミーシャフト交換装置20の一対のダミーシャフト保持部24はコンベア2の内側に設けられている。各ダミーシャフト保持部24はそれぞれ6本のダミーシャフト6,7を係合溝24aに水平に支持している。そのうちの1本を連結部8,9に接続し、図1に示すように自動変速機1にダイナモメータ14を結合し、自動変速機1の試験を行う。次に、コンベア2上を流れてくる自動変速機1の種類が前回と異なる場合には、ダミーシャフト6,7を交換する必要がある。この場合には、交換すべきダミーシャフト6,7の一端と連結された連結部8,9を図1の矢印方向に示すように一旦軸方向に後退させ、図2〜図4に示すようにモータ25により各ダミーシャフト保持部24を回動させ、空いているダミーシャフト係合溝24aを連結部8,9と対応した位置とし、空いているダミーシャフト係合溝24aの開放された上方から交換すべきダミーシャフト6,7を係合溝24aに係合させ、連結部8,9を後退させてダミーシャフト6,7を取り外す。次に、ダミーシャフト保持部24を回動させ、異なる種類の自動変速機1に適合するダミーシャフト6´,7´を連結部8,9と対応した位置とし、連結部8,9を再び前進(矢印と反対方向)させて新たなダミーシャフト6´,7´と連結させ、連結部8,9を上方へ移動させ、係合溝24aからダミーシャフト6´,7´を引き抜き、矢印方向へ後退させる。そして、図3(a)の二点鎖線で示すように自動変速機1の搬入に支障がないようにダミーシャフト保持部24を下方へ回動してコンベア2内に収納退避させた後、自動変速機1をコンベア2上に搬入する。そして、再び各連結部8,9を図1の矢印と反対方向に前進させ、ダミーシャフト6´,7´を自動変速機1の出力側に接続し、自動変速機1の試験を行う。
【0013】
前記した実施最良形態においては、ダミーシャフト交換装置20が従来のコンベア2の左右にある2式からコンベア2の内側に設けられた1式になったので、スペースが小さくなるとともに、安価になった。又、ダミーシャフト保持部24をコンベア2の内側に設けたので、コンベア2及びダミーシャフト保持部24の幅方向の大きさが小さくなり、また連結部8,9の後退時のストロークも短くなり、コンベア2及びダミーシャフト保持部24の幅方向のスペースが試験装置1台に付き1m程度小さくなる。通常、これらの試験装置は5,6台並設した場合が多く、5〜6mも設置スペースを小さくすることができる。又、連結部8,9のストロークが短くなったことにより、ダミーシャフトの交換に要する動作時間も短くなった。さらに、複数の係合溝24aを有する円弧状のダミーシャフト保持部24を回動自在に設けたことにより、複雑な機構の割り出し機構を不要とすることができる。又、自動変速機1の種類によっては、ダミーシャフト6,7の交換が不要となることがあるが、この場合にはダミーシャフト交換装置20をオプションとし、ダミーシャフト交換装置20の有無に拘わらず、全体レイアウトの再設計を不変とすることができる。
【0014】
なお、モータ25を図2(a)のようにコンベア2の外側に設けるのではなく、コンベア2の内側に設けることも可能であり、ダミーシャフト交換装置20を全体的にコンベア2の内側に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施最良形態による前輪駆動用自動変速機の試験装置の平面図である。
【図2】実施最良形態によるダミーシャフト交換装置及びコンベアの概略平面図及び概略正面図である。
【図3】実施最良形態によるダミーシャフト交換装置の正面図及びその一部拡大図である。
【図4】実施最良形態によるダミーシャフト交換装置の平面図及び側面図である。
【図5】従来の前輪駆動用自動変速機の試験装置の平面図である。
【図6】従来の前輪駆動用自動変速機の試験装置の動作を説明する平面図である。
【図7】従来の前輪駆動用自動変速機の試験装置の動作を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…自動変速機
2…コンベア
3…駆動モータ
4…入力軸
6,7…ダミーシャフト
8,9…連結部
10,11…連結軸
14…ダイナモメータ
20…ダミーシャフト交換装置
22…回動軸
24…ダミーシャフト保持部
24a…係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア上に搬入、搬出される自動変速機の入力側に入力側駆動部を連結するとともに、左右ダミーシャフトの一端を連結部を介してダイナモメータに着脱自在に連結し、かつ自動変速機の出力側に左右のダミーシャフトの他端を連結した自動変速機の試験装置において、モータにより回動自在に設けられたアームと、前記アームの先端に設けられるとともに、ダミーシャフトを保持するための複数の係合溝が設けられた一対の円弧状のダミーシャフト保持部とを有するダミーシャフト交換装置を設けたことを特徴とする自動変速機の試験装置。
【請求項2】
前記ダミーシャフト交換装置の円弧状のダミーシャフト保持部は、自動変速機の搬入時にはダミーシャフト保持部を回動させ、前記ダミーシャフト保持部がコンベア内部に収納されることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−139201(P2009−139201A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315320(P2007−315320)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】