説明

自動変速機及び自動変速機を動作させるための方法

本発明は、油圧式制御装置2と、油圧によって操作可能な1つ又は複数の変速機ユニット3,4,31,61とを備え、油圧式制御装置2は、変速機ユニットにおける操作圧力17,18,32,63を調節するための調整ユニット5と、油圧式制御装置2のベース油圧16を調節するためのベース油圧調整弁8とを有する自動変速機であって、油圧式制御装置2は、ベース油圧調整弁8を操作圧力に応じて制御するための油圧式ユニット9を有し、操作圧力17,18,32,63をベース油圧調整弁8に油圧を伝えるように接続するための複数の手段23が備えられている変速機に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式制御装置と1つ又は複数の油圧式変速機ユニットとを備える自動変速機に関する。さらに、本発明は、自動変速機を動作させるための方法に関し、この方法では、油圧式制御装置におけるベース油圧をベース油圧調整弁を用いて調節し、変速機ユニットを操作するための操作圧力を適切な圧力調整弁を用いて設定する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第1635091号A1明細書により、ダブルクラッチ変速機の形態の自動変速機が知られている。この変速機は、第1サブ変速機を有する第1クラッチと、第2サブ変速機を有する第2クラッチと、第2サブ変速機のギアの出し入れのための切替システムとを備え、これらのクラッチ及び切替システムが、油圧によって操作可能な変速機ユニットを構成している。ダブルクラッチ変速機の油圧式制御装置は、両クラッチと切替システムとを操作するための調整弁を有する調整ユニットを備え、この調整ユニットは、調整可能な圧力及び/又は調整可能な体積流量を、クラッチ及び/又は切替システムのためにその都度設定することができる。さらに、油圧式制御装置は、調整ユニットとクラッチ又は切替システムとの間に配置された切替デバイスを備え、この切替デバイスを介して、各調整可能な圧力又は体積流量をクラッチ又は切替システムに接続可能である。この油圧式制御装置は、製造コストと機能性との間の良好な妥協点を示してはいるが、簡単に構成されてそれゆえに低コストの制御装置、すなわち、ダブルクラッチ変速機は、絶えず必要とされている。
【0003】
ベース油圧及び操作圧力をクラッチ及び切替システムのために準備するには、エネルギーが必要であり、このことは、ダブルクラッチ変速機の効率を下げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の第1目的は、簡単に形成され、高効率を有するダブルクラッチ変速機を提供することである。また、第2目的は、ダブルクラッチ変速機を動作させるための効率的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1目的は、請求項1に係る特徴の組み合わせにより達成される。請求項1は、ダブルクラッチ変速機の油圧式制御装置が、ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するための油圧式ユニットを有し、ベース油圧調整弁に操作圧力を伝えるように接続するための手段が設けられていることを特徴とする。ベース油圧は、操作圧力に応じて、特に、ベース油圧調整弁のみで調節可能であることが好ましい。
【0006】
本発明によれば、油圧式制御装置が、操作圧力の1つを伝えることのできるベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するための油圧式ユニットを備えることにより、その構造が簡単化され、これにより、油圧式制御装置の製造時及び交換時のコストを節約することができる。理想的には、このようなベース油圧調整弁を制御するために従来は一般的であった別個のパイロット弁を省くことができる。これだけで、特にダブルクラッチ変速機のための油圧式制御装置のベース油圧調整弁の実現に関し、数ユーロを既に獲得することができる。操作に応じたベース油圧により、ベース油圧の準備のためのエネルギー需要も減らすことができる。
【0007】
「ベース油圧調整弁」という概念は、ここでは、油圧式制御装置のメイン圧力調整弁のことであり、このメイン圧力調整弁を用いて、油圧式制御装置の油圧式配管システムの内側において、ベース油圧を調節することができる。
【0008】
自動変速機は、第1サブ変速機を係合及び解放するための第1クラッチと、第2サブ変速機を係合及び解放するための第2クラッチと、サブ変速機のギアを切り替えるための切替システムとが、油圧によって操作可能な変速機ユニットを構成するダブルクラッチ変速機であってもよい。しかしながら、自動変速機は、無段階変速機又はクラッチを1つだけ備えるマニュアル変速機であってもよい。
【0009】
ここでは、例えば油圧式制御装置の内側の圧力損失を補償することができるように、ベース油圧を、一時的に必要な最高操作圧力よりも増分デルタ(例えば、0から5バール、好ましくは、0.5から2バール)だけ大きく調節することが理想的で有利である。このベース油圧に基づいて、さらに必要な動作圧力を、適切な圧力調整弁を用いて、油圧式制御装置において常に安全に設定することができる。
【0010】
さらに、たとえ一時的に必要な最高操作圧力が略0に一旦下がるとしても、ベース油圧を好ましくは常に0よりも大きく調節することで、油圧式制御装置の内側の十分な冷却及び/又は潤滑のための油圧式最少供給量も常に確保できるようにする。
【0011】
「制御圧力に応じた制御」という概念は、ここでは、ベース油圧調整弁を、及び間接的には油圧式制御装置におけるベース油圧をも、必要な操作圧力、すなわち一時的に調整ユニットにより設定される操作圧力の1つに応じて制御できる、ということを意味する。言い換えれば、ベース油圧を、調整ユニットの圧力調整弁の油圧式出力信号に応じて決定することができる。特に、ダブルクラッチ変速機をその動作状態において適切に動作させるために、例えば一時的に比較的低い操作圧力しか必要ない場合、油圧式制御装置におけるベース油圧を、少なくとも一時的にこの比較的低い操作圧力に適合させることができる。又は、簡潔に言えば、ベース油圧は、油圧式制御装置によって少なくとも一時的に比較的低い操作圧力に調節可能である。この適合された比較的低いベース油圧により、油圧式制御装置を、及びダブルクラッチ変速機をも、効率的に動作させることができる。例えば、ベース油圧が相応に低減された場合、電流消費を約1300mAだけ減らすことができる。
【0012】
それゆえ、本発明の第2目的は、請求項17の方法によって達成される。この方法は、ダブルクラッチ変速機の動作圧力を操作圧力の1つによって調節することを特徴とする。これにより、ベース油圧を特に迅速に適合、特に低減することができると有利である。これにより、動作圧力を用意するためのエネルギー需要を著しく低減することができる。ベース油圧の調節は、操作圧力に応じて、特にベース油圧調整弁のみで行われることが好ましい。
【0013】
つまり、本発明によれば、ベース油圧調整弁は、操作圧力の1つによって制御される。それゆえ、油圧式制御装置のベース油圧を、一時的に必要な操作圧力の1つに応じて調節することができる。
【0014】
操作圧力に応じ且つベース油圧調整弁を制御し得る制御信号が、操作圧力を設定するための圧力調整弁の1つの出口側において決定される場合、ベース油圧は、特に迅速且つ確実に調節され得る。
【0015】
本発明の油圧式制御装置の第1の有利な形態は、調整ユニットがベース油圧調整弁のための油圧式プレ制御ユニットを備えていてもよい。これにより、これまで必要であったパイロット弁を構造的に特に簡単に省くことができる。
【0016】
異なる操作圧力及び/又は体積流量を油圧式制御装置において設定するためには、調整ユニットが対応して多くの圧力調整弁を備えていれば有利である。したがって、例えば、第1クラッチを操作するために、第1操作圧力を、そして、第2クラッチを操作するために、第1操作圧力とは異なる第2操作圧力を設定してもよい。
【0017】
例えば、調整ユニットは、第1圧力調整弁と少なくとも1つの更なる圧力調整弁とを備え、第1圧力調整弁を用いて、第1クラッチのための操作圧力を、そして、上記更なる圧力調整弁を用いて、第2クラッチ又は切替システムのための更なる操作圧力を調節可能であると有利である。
【0018】
これに関連して、それぞれの操作圧力を調節するための圧力調整弁は、ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するための各1つのプレ制御弁を直接に形成することができると有利である。それゆえ、油圧式制御装置を、構造的にさらに簡略化することができる。
【0019】
ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するためのユニットを、様々に形成することができる。例えば、対応する操作圧力に関連して決定されたデータは、電気的にベース油圧調整弁へ伝達されてもよく、次に、このベース油圧調整弁は、油圧式制御装置の内側のベース油圧を一時的に必要な操作圧力に適合させることができるように、このデータを参照して対応して制御される。
【0020】
しかしながら、構造的に特に有利な変形例は、ベース油圧調整弁に操作圧力を伝えるように接続するための手段を備え、これにより、油圧式制御装置のベース油圧を、ベース油圧調整弁によって操作圧力に応じて調節することができる。この制御装置が、ベース油圧調整弁に操作圧力を伝えるように接続するためのこのような手段を備えている場合、油圧式制御装置の構造的な経費をさらに低減できることが有利である。なぜなら、関連する操作圧力は、直接ベース油圧調整弁に作用することができるからである。構造的に非常に簡単な形態では、油圧を伝えるように接続するための手段は、ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するためのユニットの一部品又は部品群として構成されていてもよい。
【0021】
好ましい変形例は、油圧式制御装置が、両クラッチ及び/又は切替システムにおいて一時的に必要な最高操作圧力を決定するための手段を備えていてもよい。ダブルクラッチ変速機の適切な機能を常に保証することができるように、一時的に必要な最高操作圧力を決定できれば有利である。一時的に必要な最高操作圧力を決定するための手段も、ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するためのユニットの一部品又は部品群として形成されていても有利である。
【0022】
これに関して、ベース油圧が一時的に必要な最高操作圧力によって調節されるならば、手順的に有利である。油圧を伝えるように接続するための手段及び一時的に必要な最高操作圧力を決定するための手段は、理想的には同一の部品又は部品群によって実現され、それにより、この場合は構造的な経費をさらに低減できることが特に有利である。
【0023】
ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するためのユニットが、一時的に必要な最高操作圧力を伝達するための複数の手段を備えている場合、油圧によって作用するすなわち動作する変速機の構成部材を油圧式制御装置に接続する方法のバリエーションが広がる。これに関連する最初の実施例の一選択肢は、図の説明に関して以下で説明する。
【0024】
油圧によって作用するすなわち動作する構成部材を広範囲に及んで非常に簡単に接続できるように、一時的に必要な最高操作圧力を決定するための複数の手段がカスケード状に配置されていれば有利である。このようなカスケード構造すなわちカスケード的な調整では、複数の油圧式調整回路を互いに接続することができると有利である。その他の点では、このことは、ベース油圧調整弁に操作圧力を接続するための上記手段にも当てはまる。
【0025】
ここで説明する、一時的に必要な最高操作圧力を決定するための手段、及び/又は、このような操作圧力を接続するための手段は、ほぼ任意の方法で油圧式制御装置の内側に集積されていてもよい、ということが分かる。
【0026】
しかしながら、このような手段が、例えば、ダブルクラッチ変速機のクラッチに関しては油圧が伝わるように並列に接続され、さらに、ギアを切り替えるための切替システムとベース油圧調整弁との間において油圧が伝わるように接続されている場合、両クラッチの完全な機能を常に保証できるように、切替システムを操作するために一時的に必要な操作圧力が、クラッチの両操作圧力の一方よりも大きいように常に選択されていれば有利である。油圧式に並列とは、最終的に、一時的な最高圧力を決定するための各1つの別々の手段がそれぞれのクラッチに割り当てられていることを意味する。これにより、あるクラッチが他のクラッチによって影響を受けることを少なくすることができる。
【0027】
ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するためのユニットを様々に形成することができる、ということが分かる。操作圧力に応じた制御のためのユニットが少なくとも1つのシャトル弁、特に、ダブルボール逆止弁を備えている場合、構造的に考えられるところでは簡単且つ特に頑丈にこのユニットを形成することができる。シャトル弁のために、複数の手段が備えられていることが有利であり、これらの手段は、2つの変速機ユニットのための操作圧力が同じ大きさの場合でもこれら変速機ユニットが常に確実に油圧が伝わらないように互いに分離されている、ようにする。
【0028】
特に、ベース油圧調整弁を操作圧力に応じて制御するための、油圧によって動作するユニットを、この油圧式制御装置に集積することができるように、操作圧力に応じた制御のためのユニットを油圧が伝わるように接続するための複数の手段が存在していれば特に有利である。なお、これらの手段を用いて、操作圧力に応じた制御のためのユニットは、調整ユニットの出口側の油圧配管とベース油圧調整弁とに油圧が伝わるように接続されている。
【0029】
さらに、油圧式制御装置の油圧式配管システムの内側に油圧式絞りが配置されている場合、特に、圧力と流量との比率を、油圧式配管システムの内側で有利に変化させることができる。油圧式絞りは、ここでは、硬い調節不可能な部品として形成されていてもよい。
【0030】
油圧式制御装置の動作安全性をさらに高めることができるように、両クラッチとその上流に接続された圧力調整弁との間に各1つの切換弁がそれぞれ油圧を伝達可能に挿入されていれば有利である。このような切換弁を用いて、油圧式制御装置において、例えば変速機の緊急操作特性を、及びフェールセーフ特性をも構造的に簡単に達成することができる。
【0031】
切替システムとその上流に接続された圧力調整弁との間に、遮断弁が挿入されていることが有利である。第1ポジションにおいて、この遮断弁は、圧力調整弁を切替システムに油圧が伝わるように接続し、第2ポジションにおいて、この接続は、中断又は遮断され、切替システムは、同時に無加圧で切り替えられる。これにより、遮断弁は、切替システムにおける不都合な圧力生成を防止し、これにより、圧力調整弁は、遮断弁に対して、さらに操作圧力をかけることができる。これと同様に、少なくとも1つのクラッチとその上流に接続された圧力調整弁との間に、同じく遮断弁が備えられていてもよい。
【0032】
本発明の更なる利点、目的、特性を、図面の実施形態を参照して説明する。個々の図において少なくとも大部分に関してその機能が一致する構成部材は、ここでは同じ参照符号で示されていてもよく、これらの構成部材は、全ての図において番号が付けられて説明されているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の概略図である。
【図2】図2は、本発明の第2実施形態の概略図である。
【図3】図3は、本発明の第3実施形態の概略図である。
【図4】図4は、本発明の第4実施形態の概略図である。
【図5】図5は、本発明の第5実施形態の概略図である。
【図6】図6は、シャトル弁の他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から図5は、油圧式制御装置2と、第1クラッチ3と、第2クラッチ4とを備える、非常に限定的且つ概略的にのみ描かれたダブルクラッチ変速機をそれぞれ示す。両クラッチ3及び4を用いて、ダブルクラッチ変速機のサブ変速機を、周知の方法で、パワートレーン(ここには図示せず)と結合し、又は、パワートレーンから分離することができる。図1の実施形態を符号1によって示す。
【0035】
油圧式制御装置2は、基本的に、第1圧力調整弁6と、第2圧力調整弁7と、ベース油圧調整弁8と、ベース油圧調整弁8を操作圧力に応じて制御するためのユニット9と、油圧式配管システム10とを有する調整ユニット5を備え、この油圧式配管システム10を用いて、油圧式制御装置2のこれら構成要素は、油圧によって互いに作用接触され得る。
【0036】
油圧式制御装置2は、その作動油を、作動油ポンプ11を介してタンク12から取り出すことができ、作動油ポンプ11とタンク12との間には、作動油フィルタ13が配置されている。作動油温度を監視するために、対応する温度コントロールユニット15も設けられている。
【0037】
特に、作動油ポンプ11と、油圧式配管システム10と、ベース油圧調整弁8とを用いて、油圧式制御装置2におけるベース油圧16を準備することができる。次に、このベース油圧16は、クラッチ3及び4を操作するために、圧力調整弁6及び7を用いて各対応する操作圧力17及び18に適切に調整され得る。これらの操作圧力17及び18は、圧力調整弁6,7の外側19で設定され得る。ここでは、圧力調整弁6,7は、3ポート3位置切換弁として形成されている。ここでは、ベース油圧16は、油圧式制御装置2の内側での圧力損失を補償できるように、必要な操作圧力17,18よりも常にいくらか高い。
【0038】
しかしながら、最大のベース油圧16がダブルクラッチ変速機の多くの動作状態において全く必要ではないにもかかわらず油圧式制御装置2において最大のベース油圧16を常に準備しなくてもよいように、ベース油圧調整弁8を操作圧力に応じて制御する。したがって、例えば低い操作圧力しか必要でない場合は、ベース油圧16を必要に応じて低減することができる。それゆえ、ダブルクラッチ変速機を全体的により効率よく動作させることができると有利である。
【0039】
また、操作圧力に応じた制御のためのユニット9は、一方では、両圧力調整弁6及び7の出口側の各油圧配管20及び21と油圧が伝わるように接続されている。他方では、操作圧力に応じた制御のためのユニット9は、操作圧力17及び18の圧力比をベース油圧調整弁8に直接伝えることができるように、ベース油圧調整弁8のバネ側22と油圧が伝わるように接続されている。
【0040】
これに関して、操作圧力に応じた制御のための本ユニット9は、操作圧力17,18をベース油圧調整弁8に伝えるように接続するための手段23によって、構成的に簡単に実質的に実現され得る。
【0041】
冷却配管14を介して、油は、クラッチ3,4に冷却目的で供給される。この場合、ベース油圧調整弁8は、高い動作圧力が必要な場合に、その準備が冷却目的の油の流出によって妨げられることのないように構成されている。
【0042】
ベース油圧16を、一時的に必要な最高操作圧力17,18に常に適合させることができるように、操作圧力に応じた制御のためのユニット9が、各クラッチ3及び4において一時的に必要な最高操作圧力17及び18を決定するための手段24を備えていれば有利である。
【0043】
操作圧力に応じた制御のためのユニット9は、ここでは、構成的には特に簡単にダブルボール逆止弁25として形成されている。これにより、一時的に必要な最高操作圧力17又は18は、非常に簡単な方法で、常に直接ベース油圧調整弁8に作用し得る。
【0044】
調整ユニット5は、全体でベース油圧調整弁8のための油圧式プレ制御装置26を形成していると有利である。これに関し、圧力調整弁6及び7は、それぞれ、ベース油圧調整弁8のためのプレ制御弁27(説明のためのみ符号を付ける)である。
【0045】
油圧式制御装置2の全体の油圧式配管システム10には、更なる油圧式絞り28(ここでは説明のためのみ符号を付けるが、それ以外は×印で表されている)が設けられている。これにより、例えば、油圧式配管システム10の内側の圧力及び体積流量をさらに調節することができる、又は、不都合な動的作用に対処することができる。
【0046】
さらに、ダブルクラッチ変速機のフェールセーフ特性を保証できるように、調整ユニット5には、周知の方法で、ここには示していない複数の切換弁が下流に油圧が伝わるように接続されており、これらの切換弁は、両クラッチ3,4の上流に油圧が伝わるように接続されている。
【0047】
図2に示す第2実施形態30は、同じくダブルクラッチ変速機のための油圧式制御装置2である。それゆえ、以下では、基本的には相違点のみを説明する。
【0048】
第2実施形態30の油圧式制御装置2は、ダブルクラッチ変速機の2つのクラッチ3及び4に加えて、ここでは図示されていないサブ変速機のギアを切り替えるための切替システム31をさらに備えている。切替システム31において同じく独自の第3操作圧力32を設定することができるように、油圧式制御装置2の調整ユニット5は、第3圧力調整弁33を備えている。したがって、油圧式制御装置2は、全部で3つの圧力調整弁6,7,33を備え、これらは、それぞれ3ポート3位置切換弁として備えられていてもよく、それぞれベース油圧調整弁8のためのプレ制御弁27であってもよい。ここでも、ベース油圧調整弁8に関連して更なるパイロット弁(ここでは存在していない)を省ける点で有利である。なぜなら、3つの圧力調整弁6,7,33がその機能を担えるからである。
【0049】
ベース油圧調整弁8を操作圧力に応じて制御するためのここに示すユニット9は、ベース油圧調整弁8が切替システム31の第3操作圧力32に関しても制御され得るように、第1ダブルボール逆止弁25の他に、第2ダブルボール逆止弁34をさらに備えている。両ダブルボール逆止弁25及び34は、構造的にきわめて簡単に、一時的に必要な最高操作圧力17,18又は32がベース油圧調整弁8に常に作用し、それにより、適切なベース油圧16を調節できるように、ここでは、カスケード状に直列に接続されている。ここでは、第1ダブルボール逆止弁25を用いて、圧力調整弁6及び7の両操作圧力17及び18を直接互いに比較する。続いて、ここで高いほうの操作圧力17又は18を、第2ダブルボール逆止弁34を用いて、第3圧力調整弁33の第3操作圧力32と比較する。次に、この最後の比較における高いほうの操作圧力が、油圧式制御装置2のベース油圧調整弁8を、及びベース油圧16をも制御する。したがって、ベース油圧調整弁8を操作圧力に応じて制御するためのユニット9は、第1ダブルボール逆止弁25と第2ダブルボール逆止弁34と共に、カスケード調整ユニットを形成する。
【0050】
この第2実施形態30とは異なり、第3実施形態40(図3参照)の油圧式制御装置2の両ダブルボール逆止弁25及び34は、互いに並列に油圧が伝わるように接続されている。しかしながら、そのための条件として、第3操作圧力32が、切替システム31の操作時に、クラッチ3及び4を操作するための他の両操作圧力17及び18よりも常に高く設定されていなければならない。他の場合は、両圧力調整弁6及び7を短期間閉じてもよく、これにより、独立した圧力調整ができなくなるであろう。しかしながら、この並列接続によって、両ダブルボール逆止弁25及び34のボールが不注意にそのそれぞれの場所から離れてしまうのを阻止できる点で有利である。つまり、これにより、クラッチ3及び4にはエラーが生じない。さらに、図3に示す実施形態では、ベース油圧調整弁8を駆動するために必要な体積流量が各圧力調整弁6及び7のクラッチ圧力調整回路へ流入又は流出するのを防止することができる。もし流入又は流出すれば、同じく、エラーがクラッチ3及び4に生じるであろう。
【0051】
両ダブルボール逆止弁25及び34の接続以外は、第3実施形態40(図3)の油圧式制御装置2は、第2実施形態30(図2)の油圧式制御装置2と同じ構造を有しているので、これらの構造の再説明を省く。
【0052】
図4に示す第4実施形態50では、ベース油圧調整弁8を操作圧力に応じて制御するためのユニット9は、第2ダブルボール逆止弁34を用いて、第1クラッチ3に関する第1操作圧力17と、切替システム31に関する第3操作圧力32とを互いに直接比較することができるように形成されている。次に、ここで決定された高いほうの操作圧力を、第1ダブルボール逆止弁25に伝えられるように接続し、そこで、第2クラッチ4に関する第2操作圧力18と油圧の大きさによって比較する。これにより、ここで決定された高いほうの操作圧力が、ベース油圧調整弁8に作用し得る。
【0053】
これに関し、両ダブルボール逆止弁25及び34は、直列接続されている。しかしながら、ここでは、両圧力調整弁6及び33は、出口側19において第2ダブルボール逆止弁34を介して互いに直接接続されている。それゆえ、これにより、第3実施形態40の利点を、たとえ圧力調整弁33の操作圧力32が両圧力調整弁6及び7の操作圧力17及び18よりも小さくても両圧力調整弁6及び7に関する独立した圧力調整を実施することができる、という更なる可能性と組み合わせることができる。したがって、第4実施形態50(図4)に係る油圧式制御装置2は、3つの圧力調整弁6,7,33を使用する場合に特に好ましい変形例である。
【0054】
図5に示す第5実施形態60では、油圧式制御装置2は、切替システム31の他に、調整ユニット5の第4圧力調整弁62が上流に接続された切替システム61をさらに備えている。第4圧力調整弁62を用いて、第4操作圧力63を設定することができる。出力側19において、両圧力調整弁33及び62は、第3ダブルボール逆止弁64を介して互いに油圧が伝わるように接続されている。これに関して、対応して設定された両操作圧力32及び63を第3ダブルボール逆止弁64を用いて互いに比較し、この際、高いほうの操作圧力が、第2ダブルボール逆止弁34に伝わるように接続し、そこで、第1圧力調整弁6の第1操作圧力17と比較する。これにより決定された高いほうの操作圧力が、第1ダブルボール逆止弁25に伝わるように接続し、そこで、第2圧力調整弁7の第2操作圧力18と比較する。ここで決定された高いほうの操作圧力は、ベース油圧調整弁8を、及びベース油圧16をも制御する。
【0055】
したがって、ベース油圧調整弁8を操作圧力に応じて制御するためのユニット9は、全部で3つのダブルボール逆止弁25,34,64を備え、これらは、カスケード状に互いに接続されている。このことから、とりわけ、更なる第4圧力調整弁62をさらに使用するという可能性を有する第4実施形態50の利点が生じる。
【0056】
ダブルボール逆止弁25,34及び64の図5に示すカスケードも、他の形態で構成されていてもよい。例えば、弁34が操作圧力18及び32を互いに比較する一方で、弁64を操作圧力63及び17を比較するために使用してもよい。したがって、弁64及び34は、弁25を介して連結されていてもよい。このことは、4つの操作圧力17,18,32,63が、任意に弁25,34,64及びそれらのカスケード構成を介して互いに比較され得る、ということを示す。
【0057】
図1から図5において、ダブルボール逆止弁25,34及び64は、シャトル弁であり、これらシャトル弁では、例えばクラッチ3,4(図1参照)が同じ操作圧力である場合はこれらが油圧が伝わらないように互いに分離されていない恐れがあり、このことは問題となる可能性がある。図6は、シャトル弁の別な実施形態65を概略的に示し、このシャトル弁は、クラッチ3,4の操作圧力17,18が同じ大きさである場合は中間切替姿勢をとる。中間切替姿勢において、クラッチ3,4は確実に互いに分離されている。図6に示す切替姿勢において、操作圧力17は、操作圧力18よりも大きく、大きいほうの操作圧力17がベース油圧調整弁8に接続される。
【符号の説明】
【0058】
1 第1実施形態
2 油圧式制御装置
3 第1クラッチ
4 第2クラッチ
5 調整ユニット
6 第1圧力調整弁
7 第2圧力調整弁
8 ベース油圧調整弁
9 操作圧力に応じた制御のためのユニット
10 油圧式配管システム
11 作動油ポンプ
12 タンク
13 作動油フィルタ
14 冷却配管
15 温度コントロールユニット
16 ベース油圧
17 第1操作圧力
18 第2操作圧力
19 出口側
20 第1出口側油圧配管
21 第2出口側油圧配管
22 バネ側
23 操作圧力を油圧を伝えるように接続するための手段
24 高いほうの操作圧力を決定するための手段
25 第1ダブルボール逆止弁
26 油圧式プレ制御装置
27 プレ制御弁
28 油圧式絞り
30 第2実施形態
31 切替システム
32 第3操作圧力
33 第3圧力調整弁
34 第2ダブルボール逆止弁
40 第3実施形態
50 第4実施形態
60 第5実施形態
61 更なる切替システム
62 第4圧力調整弁
63 第4操作圧力
64 第3ダブルボール逆止弁
65 シャトル弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式制御装置(2)と、
油圧によって操作可能な1つ又は複数の変速機ユニット(3,4,31,61)とを備え、
前記油圧式制御装置(2)は、前記変速機ユニットにおける操作圧力(17,18,32,63)を調節するための調整ユニット(5)と、前記油圧式制御装置(2)のベース油圧(16)を調節するためのベース油圧調整弁(8)とを有している自動変速機であって、
前記油圧式制御装置(2)は、前記ベース油圧調整弁(8)を操作圧力に応じて制御するための油圧式ユニット(9)を備え、
前記操作圧力(17,18,32,63)を前記ベース油圧調整弁(8)に油圧を伝えるように接続するための複数の手段(23)が設けられている
ことを特徴とする変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機において、
前記ベース油圧は、前記油圧式制御装置(2)によって、少なくとも一時的に比較的低い操作圧力に調節可能である
ことを特徴とする変速機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の変速機において、
前記変速機は、ダブルクラッチ変速機として構成されており、
前記ダブルクラッチ変速機は、
油圧によって操作可能な変速機ユニット(3,4,31,61)として、
第1サブ変速機を駆動部に係合又は駆動部から解放するための第1クラッチ(3)と、
第2サブ変速機を前記駆動部に係合又は前記駆動部から解放するための第2クラッチ(4)と、
前記両サブ変速機のギアを切り替えるための切替システム(31,61)とを備えている
ことを特徴とする変速機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の変速機において、
前記変速機ユニットすなわち前記両クラッチ(3,4)及び/又は前記切替システム(31,63)において一時的に必要な最高操作圧力(17,18,32,63)を決定するための手段(24)が設けられている
ことを特徴とする変速機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の変速機において、
前記ベース油圧調整弁(8)を操作圧力に応じて制御するための前記ユニット(9)は、一時的に必要な最高操作圧力(17,18,32,63)を決定するための複数の手段(24)を備えている
ことを特徴とする変速機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の変速機において、
前記一時的に必要な最高操作圧力(17,18,32,63)を決定するための複数の手段(24)は、カスケード状に配置されている
ことを特徴とする変速機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の変速機において、
前記ベース油圧(16)は、前記一時的に必要な最高操作圧力(17,18,32,63)よりも増分デルタだけ大きく調節可能である
ことを特徴とする変速機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の変速機において、
前記ベース油圧調整弁(8)を操作圧力に応じて制御するための前記ユニット(9)は、少なくとも1つのシャトル弁、特に、ダブルボール逆止弁(25,34,64)を備えている
ことを特徴とする変速機。
【請求項9】
請求項8に記載の変速機において、
前記シャトル弁のために、前記変速機ユニット(3,4,31,61)を全ての操作圧力において油圧の高さの違いによって互いに分離する複数の手段が設けられている
ことを特徴とする変速機。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の変速機において、
前記調整ユニット(5)は、前記ベース油圧調整弁(8)のための油圧式プレ制御装置(26)を備えている
ことを特徴とする変速機。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の変速機において、
前記調整ユニット(5)は、第1圧力調整弁(6)と、少なくとも1つの更なる圧力調整弁(7,33,62)とを備え、
前記第1圧力調整弁(6)を用いて前記第1クラッチ(3)用の操作圧力(17)を、また、前記更なる圧力調整弁(7,33,62)を用いて、前記第2クラッチ(4)又は前記切替システム(31,61)のための更なる操作圧力(18,32,63)を調節可能に構成されている
ことを特徴とする変速機。
【請求項12】
請求項11に記載の変速機において、
前記各操作圧力(17,18,32,63)を調節するための前記圧力調整弁(6,7,33,62)は、前記ベース油圧調整弁(8)を操作圧力に応じて操作するためのプレ制御弁(27)をそれぞれ形成している
ことを特徴とする変速機。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の変速機において、
操作圧力に応じた制御のための前記ユニット(9)を油圧を伝えるように接続するための手段(10)を有することを特徴とし、
前記手段(10)によって、操作圧力に応じた制御のための前記ユニット(9)は、前記調整ユニット(5)の出口側油圧式配管(20,21)と前記ベース油圧調整弁(8)とに油圧が伝わるように接続されている
ことを特徴とする変速機。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の変速機において、
前記油圧式制御装置(2)の油圧式配管システム(10)の内側に、油圧式絞り(28)が配置されている
ことを特徴とする変速機。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の変速機において、
前記両クラッチ(3,4)とその上流に接続された前記圧力調整弁(6,7)との間に、各1つの切換弁がそれぞれ油圧を伝達可能に挿入されている
ことを特徴とする変速機。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の変速機において、
前記切替システム(31,61)を操作するために一時的に必要な操作圧力(32,63)は、前記クラッチ(3,4)の前記両操作圧力(17,18)の一方よりも常に大きい
ことを特徴とする変速機。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の変速機を動作させるための方法であり、ベース油圧調整弁(8)を用いて、前記油圧式制御装置(2)におけるベース油圧(16)を調節し、適切な圧力調整弁(6,7,33,62)を用いて、1つ又は複数の変速機ユニット(3,4,31,61)を操作するための操作圧力(17,18,32,63)を設定する方法であって、
前記操作圧力(17,18,32,63)を、前記ベース油圧調整弁(8)に接続し、
前記ベース油圧(16)を、前記操作圧力(17,18,32,63)のいずれか1つを用いて調節する
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記ベース油圧を、少なくとも一時的に、比較的低い操作圧力に適合させる
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法において、
前記ベース油圧(16)を、前記一時的に必要な最高操作圧力(17,18,32,63)を用いて調節する
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか1項に記載の方法において、
前記ベース油圧調整弁(8)を、前記操作圧力(17,18,32,63)のいずれか1つによって制御する
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17から20のいずれか1項に記載の方法において、
操作圧力に応じた、且つ、前記ベース油圧調整弁(8)を制御し得る制御信号を、前記圧力調整弁(6,7,33,62)の出口側において、操作圧力(17,18,32,63)を設定するために決定する
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530889(P2012−530889A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516778(P2012−516778)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059158
【国際公開番号】WO2010/149797
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506132120)ゲトラーク フォード トランスミシオーンス ゲーエムベーハー (18)
【Fターム(参考)】