説明

自動変速機用油温センサの異常診断方法

【課題】油温センサ値が正常な値から乖離するオフセット異常モードであるか否かの判定結果を、車両走行を条件とすることなくエンジンの再始動直後に取得すること。
【解決手段】AT油温センサ64の異常診断方法は、暖機判定手順と、センサ正常動作判定手順と、仮判定手順と、を備える。暖機判定手順は、エンジンコントロールモジュール3において、エンジン側温度センサ54,55からのセンサ値がエンジン暖機状態を示しているか否かを判定する。センサ正常動作判定手順は、エンジン1を再始動すると、暖機判定結果を含みエンジン側温度センサ54,55が正常に温度検知動作をしているか否かの判定を開始する。仮判定手順は、ATコントロールユニット4において、エンジン1を再始動したとき、水温センサ値と油温センサ値との上下乖離幅が所定閾値以下であるか否かを判定する。本判定手順は、エンジンコントロールモジュール3から許可信号を入力すると、仮判定手順による判定結果を確定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンコントロールモジュールと自動変速機コントロールユニットの間での相互診断により油温センサ値の異常を診断する自動変速機用油温センサの異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機用油温センサの異常判定方法としては、油温センサ値が異常な値を示す場合、異常な値の状態が所定時間以上継続するか否かに基づいて、油温センサの異常判定を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、自動変速機用油温センサの異常判定方法としては、エンジン吸気温センサと外気温センサからの信号をATコントロールユニットに取り込み、外気温と油温を比較して外気温よりも油温の方が低い場合に油温センサが異常であると判定するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−301315号公報
【特許文献2】特開2004−11869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された自動変速機用油温センサの異常判定方法にあっては、油温センサ値のみを用いて油温センサの異常を判定している。このため、油温センサ値が、正常な値から乖離するオフセット異常を判定することができない。加えて、油温センサ値が異常な値を示しても、異常な値を示してから少なくとも所定時間を待たないと判定結果が得られない、という問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載された自動変速機用油温センサの異常判定方法にあっては、エンジン始動して車両走行状態が所定時間以上を経過した後、ATコントロールユニットのみを用いて油温センサの異常を判定している。このため、油温センサ値が、正常な値から高い側に乖離するオフセット異常を判定することができない。加えて、エンジン始動後、十分な車両走行時間を待たないと判定結果が得られない、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、油温センサ値が正常な値から乖離するオフセット異常モードであるか否かの判定結果を、車両走行を条件とすることなくエンジンの再始動直後に取得することができる自動変速機用油温センサの異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機用油温センサの異常診断方法は、暖機判定手順と、センサ正常動作判定手順と、仮判定手順と、を備える。
前記暖機判定手順は、エンジンを制御するエンジンコントロールモジュールにおいて、エンジン暖機状態でのエンジン側温度センサからのセンサ値がエンジン暖機状態を示しているか否かを判定する。
前記センサ正常動作判定手順は、前記エンジンコントロールモジュールにおいて、前記エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待って前記エンジンを再始動すると、前記暖機判定手順による暖機判定結果を読み込み、暖機判定結果を含み前記エンジン側温度センサが正常に温度検知動作をしているか否かの判定を開始する。
前記仮判定手順は、前記エンジンに連結された自動変速機を制御する自動変速機コントロールユニットにおいて、前記エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待って前記エンジンを再始動したとき、前記エンジン側温度センサからのセンサ値を入力し、自動変速機用油温センサからの油温センサ値との上下乖離幅が所定閾値以下であるか否かを判定する。
前記本判定手順は、前記自動変速機コントロールユニットにおいて、前記エンジンコントロールモジュールから前記エンジン側温度センサが正常に動作しているとの判定に基づき出力される許可信号を入力すると、前記仮判定手順による判定結果を確定させる。
【発明の効果】
【0009】
上記のように、エンジン側温度センサが正常に動作しているかどうかを判定するエンジンコントロールモジュール側診断は、エンジンを再始動したとき、前回のエンジン暖機状態におけるセンサ値と、今回のエンジン再始動時におけるセンサ値と、を対比監視することにより行われる。この理由は、エンジン暖機状態とエンジン冷機状態では温度環境が異なり、エンジン側温度センサが正常に動作していれば大きな温度差が生じることによる。
一方、自動変速機用油温センサの異常を判定する自動変速機コントロールユニット側診断は、先ず、今回のエンジン再始動時、エンジン側温度センサからのセンサ値と、自動変速機用油温センサからの油温センサ値と、の上下乖離幅が所定閾値以下であるか否を判定する仮判定がなされる。この仮判定を本判定に先行して行う理由は、エンジン再始動直後であることで、何れのセンサ値も正常であるならば外気温相当の値になることによる。
そして、エンジン側温度センサのセンサ値が正常に動作しているとの判定に基づき、エンジンコントロールモジュールから出力される許可信号を、自動変速機コントロールユニットが入力すると、仮判定の結果をそのまま確定させる本判定がなされる。
このように、油温センサ値が正常な値から乖離するオフセット異常モードの本判定は、エンジンコントロールモジュール側診断と自動変速機コントロールユニット側診断の相互診断によりなされる。そして、本判定が行われるタイミングは、今回のエンジン再始動からエンジン側温度センサのセンサ値の正常動作判定に必要な時間(例えば、0秒〜300秒程度)を待ったエンジン再始動直後のタイミングになる。
この結果、油温センサ値が正常な値から乖離するオフセット異常モードであるか否かの判定結果を、車両走行を条件とすることなくエンジンの再始動直後に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法が適用されるシステムを示すシステム構成図である。
【図2】実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法を分担する制御ブロックを示す制御ブロック構成図である。
【図3】実施例1のエンジンコントロールモジュールにて1トリップ目に実行される暖機判定手順の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1のエンジンコントロールモジュールにて2トリップ目に実行されるセンサ正常動作判定手順の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1のATコントロールユニットにて2トリップ目に実行される仮判定手順及び本判定手順の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の仮判定手順におけるOK判定とNG判定の判定手法を示す判定手法説明図である。
【図7】実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法にて検知されるオフセット異常モードを示すオフセット異常モード説明図である。
【図8】相互診断手法を適用した実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法によるエンジン稼働/停止・イグニッションON/OFF・各判定タイミング・ECMでの判定温度・ATCUでの判定温度の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の自動変速機用油温センサの異常診断方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法を、「異常診断方法が適用されるシステム構成」、「異常診断方法を分担する制御ブロック構成」、「暖機判定手順」、「センサ正常動作判定手順」、「仮判定手順及び本判定手順」、「AT油温センサの異常検知課題」、「相互診断によるオフセット異常モード検知作用」に分けて説明する。
【0013】
[異常診断方法が適用されるシステム構成]
図1は、実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法が適用されるシステムを示す。以下、図1に基づき、異常診断方法が適用されるシステム構成を説明する。
【0014】
実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法が適用されるシステムは、図1に示すように、エンジン1と、自動変速機2と、エンジンコントロールモジュール3と、ATコントロールユニット4(自動変速機コントロールユニット)と、を備えている。
【0015】
前記エンジン1は、ガソリンや軽油等を燃料とする混合気により稼働する内燃機関であり、燃焼した後の排気ガスを外気に排出する排気管11を有する。
【0016】
前記自動変速機2は、エンジン1のクランクシャフトに連結され、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ21、オイルポンプ22、ギヤトレーン23等を有する。この自動変速機2の変速機ケース24には、変速機作動油を溜めるオイルパン25と、オイルポンプ22からの吐出圧を元圧として、ロックアップ圧やライン圧や変速圧等を作り出すコントロールバルブユニット26と、が設けられている。また、自動変速機2の変速機出力軸27は、図外の駆動輪に連結される。
【0017】
前記エンジンコントロールモジュール3(ECM)は、エンジン1の始動制御や燃料噴射制御等の様々なエンジン関連制御を行う電子制御モジュールである。このエンジンコントロールモジュール3には、イグニッションスイッチ51、エンジン回転数センサ52、吸気温センサ53、燃温センサ54(エンジン側温度センサ)、水温センサ55(エンジン側温度センサ)、等からのスイッチ信号やセンサ信号が入力される。吸気温センサ53は、エンジン1の吸気管系に設けられ、エンジン1への吸入空気温度を検出する。燃温センサ54は、図外の燃料タンクに設けられ、エンジン1への燃料温度を検出する。水温センサ55は、エンジン1の冷却水循環系に設けられ、エンジン冷却水温度を検出する。
【0018】
前記ATコントロールユニット4(ATCU)は、自動変速機2のロックアップ制御やライン圧制御や変速制御等の様々な自動変速機関連制御を行う電子制御ユニットである。このATコントロールユニット4には、車速センサ61、アクセル開度センサ62、インヒビタースイッチ63、AT油温センサ64(自動変速機用油温センサ)、等からのスイッチ信号やセンサ信号が入力される。AT油温センサ64は、変速機作動油循環系に設けられ、変速機作動油温度を検出する。このAT油温センサ64は、自動変速機2の制御をATコントロールユニット4において行う際、油温センサ値を油温情報としてロックアップ制御やライン圧制御や変速制御等に用いる排気ガス関連部品である。
なお、エンジンコントロールモジュール3とATコントロールユニット4は、お互いの情報交換が可能な双方向通信線7(例えば、CAN通信線)により接続されている。
【0019】
[異常診断方法を分担する制御ブロック構成]
図2は、実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法を分担する制御ブロックを示す。以下、図2に基づき、異常診断方法を分担する制御ブロック構成を説明する。
【0020】
前記エンジンコントロールモジュール3(ECM)は、図2に示すように、暖機判定部31と、ソーク判定部32と、リコンファーム判定部33と、判定許可信号出力部34と、を有する。
【0021】
前記暖機判定部31は、燃温センサ54と水温センサ55からのセンサ信号を入力し、エンジン暖機状態である前回のトリップにおいて各センサ54,55からのセンサ値が、エンジン暖機状態を示している値であるか否か判定する。
【0022】
前記ソーク判定部32は、燃温センサ54と水温センサ55からのセンサ信号を入力し、エンジン冷機状態である今回のトリップにおいて各センサ54,55からのセンサ値が、外気温相当を示している値であるか否かを判定する。
【0023】
前記リコンファーム判定部33は、燃温センサ54と水温センサ55からのセンサ信号を入力し、ブロックヒーター等の外部要因により、外部要因に応じた温度変化があることを示している値の変化であるか否かを判定する。
【0024】
前記判定許可信号出力部34は、暖機判定部31とソーク判定部32とリコンファーム判定部33からの判定結果が全てYes判定であるとき、判定許可信号をATコントロールユニット4の本OK/NG判定部43に出力する。
【0025】
前記ATコントロールユニット4(ATCU)は、図2に示すように、仮OK/NG判定許可条件判定部41と、仮OK/NG判定部42と、本OK/NG判定部43と、MIL点灯カウンター部44と、を有する。
【0026】
前記仮OK/NG判定許可条件判定部41は、水温センサ55からの水温センサ値とAT油温センサ64からの油温センサ値を入力し、水温センサ値と油温センサ値を正しい状態で取得するための仮OK/NG判定許可条件を判定する。ここで、仮OK/NG判定許可条件とは、イグニッションスイッチ51オン後経過タイマと規定電圧以上等であり、仮OK/NG判定許可は、前回のトリップによるエンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまでの十分な時間を経過していることで実施される。
【0027】
前記仮OK/NG判定部42は、仮OK/NG判定許可条件が成立しているとき、水温センサ値と油温センサ値を比較し、仮判定によりOK判定かNG判定かを出す。ここで、水温センサ値と油温センサ値の上下乖離幅が所定閾値以下のときはOK判定を出し、水温センサ値と油温センサ値の上下乖離幅が所定閾値を超えるときはNG判定を出す。なお、乖離幅の閾値は、上側乖離閾値と下側乖離閾値を同じ値にしても良いし、また、上側乖離閾値と下側乖離閾値を異なる値にしても良い。
【0028】
前記本OK/NG判定部43は、エンジンコントロールモジュール3の判定許可信号出力部34から判定許可信号を入力すると、仮OK/NG判定部42からの判定結果(OK判定又はNG判定)を確定させる。
【0029】
前記MIL点灯カウンター部44は、本OK/NG判定部43からOK判定を入力するとカウンターをカウントクリアし、本OK/NG判定部43からNG判定を入力するとカウンターをカウントアップする。そして、NG判定に基づきカウントアップされると、車室内のドライバーから視認できる位置に配置した排気警告灯8を点灯させる(排気警告手順)。
【0030】
[暖機判定手順]
図3は、実施例1のエンジンコントロールモジュール3(ECM)にて1トリップ目に実行される暖機判定手順の流れを示す。以下、図3のフローチャートに基づき、暖機判定手順を説明する。
【0031】
ステップS31では、イグニッションスイッチ51からのスイッチ信号がONであるか否かを判断する。Yes(IGN-ON)の場合はステップS32へ進み、No(IGN-OFF)の場合はステップS31の判断を繰り返す。
【0032】
ステップS32では、ステップS31でのIGN-ONであるとの判断、あるいは、ステップS34でのIGN-ONであるとの判断に続き、燃温センサ54と水温センサ55からのセンサ値が、いずれもエンジン暖機状態を示している値であるか否かのエンジン暖機判定を行い、ステップS33へ進む。
【0033】
ステップS33では、ステップS32でのエンジン暖機判定に続き、エンジン暖機判定による判定結果をメモリに記憶し、ステップS34へ進む。
ここで、エンジン暖機判定による判定結果は、各温度センサ54,55からのセンサ値のいずれもがエンジン暖機状態を示している値である場合、「判定結果:Yes」と記憶され、各温度センサ54,55からのセンサ値の少なくとも一つがエンジン暖機状態を示していない値である場合、「判定結果:No」と記憶される。そして、このメモリ記憶は、IGN-ONからIGN-OFFまでの間におけるエンジン暖機判定毎に更新され、最後に更新された判定結果をメモリ記憶に残す。
【0034】
ステップS34では、ステップS33での判定結果のメモリ記憶に続き、イグニッションスイッチ51からのスイッチ信号がOFFであるか否かを判断する。Yes(IGN-OFF)の場合は終了へ進み、No(IGN-ON)の場合はステップS32へ戻る。
【0035】
したがって、イグニッションスイッチ51をOFFからONにすると、図3のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS34へと進む。そして、イグニッションスイッチ51がONに維持されている間、図3のフローチャートにおいて、ステップS32→ステップS33→ステップS34へと進む流れが繰り返される。
【0036】
したがって、イグニッションスイッチ51をOFFからONにした直後であって、エンジン1が暖機状態に到達しない間は、各温度センサ54,55からのセンサ値がいずれもエンジン暖機状態を示していない値であるため、ステップS33では、「判定結果:No」と記憶される。
一方、イグニッションスイッチ51をOFFからONにして所定時間経過した後であって、エンジン1が暖機状態に到達すると、センサ異常がない限り各温度センサ54,55からのセンサ値がいずれもエンジン暖機状態を示す値になるため、ステップS33では、「判定結果:Yes」と記憶される。
そして、イグニッションスイッチ51をONからOFFに切り替える直前において、最後に更新された判定結果がメモリ記憶に残される。
【0037】
すなわち、図3に示すフローチャートは、エンジン1を制御するエンジンコントロールモジュール3において、エンジン暖機状態でのエンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)からの各センサ値がエンジン暖機状態を示しているか否かを判定する暖機判定手順に相当する。
【0038】
[センサ正常動作判定手順]
図4は、実施例1のエンジンコントロールモジュール3(ECM)にて2トリップ目に実行されるセンサ正常動作判定手順の流れを示す。以下、図4のフローチャートに基づき、センサ正常動作判定手順を説明する。
【0039】
ステップS41では、イグニッションスイッチ51からのスイッチ信号がONであるか否かを判断する。Yes(IGN-ON)の場合はステップS42へ進み、No(IGN-OFF)の場合はステップS41の判断を繰り返す。
【0040】
ステップS42では、ステップS41でのIGN-ONであるとの判断に続き、暖機判定手順(図3)によりなされた前回のトリップ(=1Trip目)での暖機判定による判定結果を読み込み、「判定結果:Yes」であるか否かを判断する。「判定結果:Yes」の場合はステップS44へ進み、「判定結果:No」の場合はステップS43へ進む。
【0041】
ステップS43では、ステップS42での「判定結果:No」であるとの判断に続き、AT油温センサ64の異常診断を禁止する。
【0042】
ステップS44では、ステップS42での「判定結果:Yes」であるとの判断に続き、燃温センサ54と水温センサ55からのセンサ値が、エンジン冷機状態である今回のトリップ(=2Trip目)において外気温相当を示している値であるか否かというソーク判定をする。「判定結果:Yes」の場合はステップS46へ進み、「判定結果:No」の場合はステップS45へ進む。
【0043】
ステップS45では、ステップS44での「判定結果:No」であるとの判断に続き、AT油温センサ64の異常診断を禁止する。
【0044】
ステップS46では、ステップS44での「判定結果:Yes」であるとの判断に続き、燃温センサ54と水温センサ55からのセンサ値が、ブロックヒーター等の外部要因により、外部要因に応じた温度変化があることを示している値の変化であるか否かというリコンファーム判定をする。「判定結果:Yes」の場合はステップS48へ進み、「判定結果:No」の場合はステップS47へ進む。
【0045】
ステップS47では、ステップS46での「判定結果:No」であるとの判断に続き、AT油温センサ64の異常診断を禁止する。
【0046】
ステップS48では、ステップS46での「判定結果:Yes」であるとの判断に続き、ATコントロールユニット4に判定許可信号(0→1に信号を変更する)を送り、終了へ進む。
【0047】
したがって、1トリップ目からエンジン停止後の2トリップ目にイグニッションスイッチ51をOFFからONにしたとき、暖機判定で「判定結果:No」の場合には、図4のフローチャートにおいて、ステップS41→ステップS42→ステップS43へと進み、ステップS43では、AT油温センサ64の異常診断が禁止される。
また、1トリップ目からエンジン停止後の2トリップ目にイグニッションスイッチ51をOFFからONにしたとき、暖機判定は「判定結果:Yes」であるが、ソーク判定は「判定結果:No」である場合には、図4のフローチャートにおいて、ステップS41→ステップS42→ステップS44→ステップS45へと進み、ステップS45では、AT油温センサ64の異常診断が禁止される。
さらに、1トリップ目からエンジン停止後の2トリップ目にイグニッションスイッチ51をOFFからONにしたとき、暖機判定は「判定結果:Yes」であり、ソーク判定は「判定結果:Yes」であるが、リコンファーム判定は「判定結果:No」である場合には、図4のフローチャートにおいて、ステップS41→ステップS42→ステップS44→ステップS46→ステップS47へと進み、ステップS47では、AT油温センサ64の異常診断が禁止される。
【0048】
一方、1トリップ目からエンジン停止後の2トリップ目にイグニッションスイッチ51をOFFからONにしたとき、暖機判定とソーク判定とリコンファーム判定が全て「判定結果:Yes」である場合には、図4のフローチャートにおいて、ステップS41→ステップS42→ステップS44→ステップS46→ステップS48へと進み、ステップS48では、ATコントロールユニット4に判定許可信号が送られる。
【0049】
すなわち、図4に示すフローチャートは、エンジンコントロールモジュール3において、エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待ってエンジン1を再始動すると、暖機判定手順による暖機判定結果を読み込み、暖機判定結果を含みエンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)が正常に温度検知動作をしているか否かの判定を開始するセンサ正常動作判定手順に相当する。
【0050】
この図4のフローチャートに示すセンサ正常動作判定手順では、暖機判定手順による暖機判定結果が正常であり、かつ、エンジン側の各温度センサ54,55のソーク判定結果が正常であり、かつ、エンジン側の各温度センサ54,55のリコンファーム判定結果が正常であるとき、エンジンコントロールモジュール3からATコントロールユニット4に対し許可信号を出力するようにしている。
【0051】
[仮判定手順及び本判定手順]
図5は、実施例1のATコントロールユニット4(ATCU)にて2トリップ目に実行される仮判定手順及び本判定手順の流れを示す。図5に示すフローチャートに基づき、仮判定手順及び本判定手順を説明する。
【0052】
ステップS51では、イグニッションスイッチ51からのスイッチ信号がONであるか否かを判断する。Yes(IGN-ON)の場合はステップS52へ進み、No(IGN-OFF)の場合はステップS51の判断を繰り返す。
【0053】
ステップS52では、ステップS51でのIGN-ONであるとの判断に続き、水温センサ55からの水温センサ値とAT油温センサ64からの油温センサ値を正しい状態で取得するための仮OK/NG判定許可条件を判定する。「判定結果:Yes」の場合はステップS53へ進み、「判定結果:No」の場合はステップS54へ進む。
ここで、仮OK/NG判定許可条件とは、イグニッションスイッチ51オン後経過タイマと規定電圧以上等である。前回のトリップ(=1トリップ目)によるエンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまでの十分な時間を経過して今回のトリップ(=2トリップ目)が開始されているという時間条件を満足する。
【0054】
ステップS53では、ステップS52での「判定結果:No」であるとの判断に続き、AT油温センサ64の異常診断を禁止する。
【0055】
ステップS54では、ステップS52での「判定結果:Yes」であるとの判断に続き、水温センサ値と油温センサ値を比較し、OK判定かNG判定かを出す仮判定を行い、ステップS55へ進む。
ここで、仮判定では、図6に示すように、水温センサ値<油温センサ値とき、水温センサ値に対する油温センサ値の上側乖離幅が、上側乖離閾値以下のときはOK判定を出し、上側乖離閾値を超えるときはNG判定を出す。水温センサ値>油温センサ値とき、水温センサ値に対する油温センサ値の下側乖離幅が、下側乖離閾値以下のときはOK判定を出し、下側乖離閾値を超えるときはNG判定を出す。
【0056】
ステップS55では、ステップS54での仮OK/NG判定に続き、エンジンコントロールモジュール3から判定許可信号が入力されたか否かを判断する。Yes(判定許可信号有り)の場合はステップS56へ進み、No(判定許可信号無し)の場合はステップS55の判断を繰り返す。
【0057】
ステップS56では、ステップS55での判定許可信号有りであるとの判断に続き、ステップS54での仮OK/NG判定による判定結果(OK判定又はNG判定)を確定させる本判定を行い、終了へ進む。
【0058】
したがって、1トリップ目からエンジン停止後の2トリップ目にイグニッションスイッチ51をOFFからONにしたとき、仮OK/NG判定許可条件判定で「判定結果:No」の場合には、図5のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS53へと進み、ステップS53では、AT油温センサ64の異常診断が禁止される。
【0059】
一方、1トリップ目からエンジン停止後の2トリップ目にイグニッションスイッチ51をOFFからONにしたとき、仮OK/NG判定許可条件判定で「判定結果:Yes」である場合には、図5のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS54へと進み、ステップS54では、水温センサ値と油温センサ値を比較することで、仮OK/NG判定が行われる。
【0060】
すなわち、図5に示すフローチャートのステップS51〜ステップS54は、エンジン1に連結された自動変速機2を制御するATコントロールユニット4において、エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待ってエンジン1を再始動したとき、水温センサ55からの水温センサ値を入力し、AT油温センサ64からの油温センサ値との上下乖離幅が所定閾値以下であるか否かを判定する仮判定手順に相当する。
【0061】
そして、ステップS54にて仮OK/NG判定が行われた後、次のステップS55へ進み、ステップS55では、エンジンコントロールモジュール3(ECM)からの許可信号が有るか否かが繰り返し判断される。
【0062】
そして、ステップS55にて判定許可信号がエンジンコントロールモジュール3から入力されると、図5のフローチャートにおいて、ステップS55から次のステップS56へと進み、ステップS56では、仮OK/NG判定による判定結果を確定させる本判定が行われる。
【0063】
すなわち、図5に示すフローチャートのステップS55〜ステップS56は、ATコントロールユニット4において、エンジンコントロールモジュール3からエンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)が正常に動作しているとの判定に基づき出力される許可信号を入力すると、仮判定手順による判定結果を確定させる本判定手順に相当する。
【0064】
[AT油温センサの異常検知課題]
図7は、実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法にて検知されるオフセット異常モードを示す。以下、図7に基づき、AT油温センサの異常検知課題を説明する。
【0065】
一般に、AT油温センサのラショナリティ診断は、実際のAT油温値に反して、ATコントロールユニットが認識する油温センサ値が一定の範囲内に一定時間以上留まるとAT油温センサが異常であると判定する。
【0066】
しかし、AT油温センサの異常モードには、図7に示すように、実際のAT油温値に対し油温センサ値がオフセット誤差を持ち、実際のAT油温値の変化に対し油温センサ値が追従して変化するものの、常にオフセット誤差による乖離を持つオフセット異常モードが存在する。
【0067】
これに対し、上記AT油温センサのラショナリティ診断では、図7に示すように、油温センサ値が一定の範囲内に一定時間以上留まることがなく、オフセット異常モードの場合には、AT油温センサが異常であると判定することができない。
【0068】
そして、実際のAT油温値に対し油温センサ値が乖離することにより、ATコントロールユニットにおいて油温センサ値による油温情報を用いて自動変速機の制御を行う場合、次のような不具合が発生する。
例えば、自動変速機のロックアップ制御を行う場合、ロックアップ開始が遅れしまい燃費が悪化する。また、自動変速機の変速制御を行う場合、必要以上にローギヤ側の変速段が選択されることで燃費が悪化する。さらに、自動変速機のライン圧制御を行う場合、必要圧以上のライン圧に制御されることで燃費が悪化する。このように、油温情報を用いる自動変速機の各種制御において、AT油温センサの異常により燃費が悪化することに伴い、排気ガス量が増加するというように、排気ガスの悪化が起こる。
【0069】
一方、自動車の排気ガス制御状況を車載コンピューターでモニターすることを義務付けたOBD法規(OBD:On-Board Diagnosticsの略)があり、排ガス関連部品に異常が発生した場合、異常表示ライトを点灯し、ドライバーに知らせることが必要である。
しかしながら、一般に行われるAT油温センサのラショナリティ診断は、排気ガスの悪化をもたらすオフセット異常モードを検知できないため、OBD法規を満たせないという課題がある。
【0070】
[相互診断によるオフセット異常モード検知作用]
上記のように、OBD法規を満たすためには、排気ガスの悪化をもたらすオフセット異常モードであるとき、AT油温センサが異常であることを検知することで、オフセット異常モードの検知要求に応える必要がある。以下、図8に基づき、これを反映する相互診断によるオフセット異常モード検知作用を説明する。
【0071】
AT油温センサが正常であるか異常であるかを検知するに際し、図8の時刻t1までの1トリップ目のエンジン稼働時、エンジンコントロールモジュール3において、エンジン暖機判定(a)が行われる。このエンジン暖機判定(a)は、イグニッションスイッチ51をOFFにする直前のエンジン暖機状態でのエンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)からの各センサ値が、図8の時刻t1直前のECM温度特性に示すように、エンジン暖機状態(水温>燃温>外気温)を示していることにより正常と判定される。
【0072】
そして、図8の時刻t1にてイグニッションスイッチ51をOFFにすると、時刻t1から時刻t2までのエンジン停止により、水温と吸気温と燃温が徐々に低下していき、外気温に近づく。次に、図8の時刻t2にてイグニッションスイッチ51をOFFからONにし、2トリップ目を開始すると、エンジンコントロールモジュール3において、ソーク判定(b)とリコンファーム判定(c)が行われる。このソーク判定(b)は、エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)からの各センサ値が、図8の時刻t2直後のECM温度特性に示すように、外気温相当(例えば、水温=燃温≧外気温)を示していることにより正常と判定される。リコンファーム判定(c)は、エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)からの各センサ値が、図8の時刻t2〜時刻t3のECM温度特性に示すように、ブロックヒーター等の外部要因により、外部要因に応じた温度変化があること(例えば、水温の上昇)を示していることにより正常と判定される。
【0073】
上記のように、エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)が正常に動作しているかどうかを判定するエンジンコントロールモジュール3側の診断は、エンジン1を再始動したとき、前回(1トリップ目)のエンジン暖機状態における各センサ値と、今回のエンジン再始動時における各センサ値と、を対比監視することにより行われる。この理由は、エンジン暖機状態とエンジン冷機状態では温度環境が異なり、エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)が正常に動作していれば大きな温度差が生じることによる。
【0074】
一方、AT油温センサ64の異常を判定するATコントロールユニット4側の診断は、先ず、図8の時刻t2にてイグニッションスイッチ51をOFFからONにし、2トリップ目を開始すると、ATコントロールユニット4において、仮判定(d)が行われる。この仮判定(d)では、仮OK/NG判定許可条件が成立しているとき、水温センサ55からの水温センサ値を入力し、AT油温センサ64からの油温センサ値との上下乖離幅が所定閾値以下であるとき「OK判定」とし、上下乖離幅が所定閾値を超えるとき「NG判定」とされる。この仮判定(d)を本判定(e)に先行して行う理由は、エンジン再始動直後であることで、図8の時刻t2直後のATCU温度特性に示すように、水温センサ55とAT油温センサ64が正常であるなら水温センサ値も油温センサ値も外気温相当の値になることによる。つまり、イグニッションスイッチ51のOFF→ONから遅れてOK/NG判定を行おうとしても、水温センサ値も油温センサ値も既に外気温相当の値から上昇していて、精度の良いOK/NG判定を行うことができない。
【0075】
そして、リコンファーム判定(c)が終了した時刻t3にて、エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)の各センサ値が正常に動作しているとの判定に基づき、エンジンコントロールモジュール3から出力される許可信号を、ATコントロールユニット4が入力すると、仮判定(d)の結果をそのまま確定させる本判定(e)がなされる。
【0076】
このように、AT油温センサ64からの油温センサ値が正常な値から乖離するオフセット異常モードの本判定(e)は、エンジンコントロールモジュール3側の診断とATコントロールユニット4側の診断を行う相互診断によりなされる。そして、本判定(e)が行われるタイミングは、今回(2トリップ目)のエンジン再始動時刻t2からエンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)の各センサ値の正常動作判定に必要な時間(t3−t2)を待ったエンジン再始動直後のタイミングになる。
具体的には、例えば、リコンファーム判定(c)に300秒程度必要である場合には、2トリップ目のエンジン再始動時刻t2から300秒程度経過した後に本判定(e)によるOK判定又はNG判定が確定する。また、例えば、リコンファーム判定(c)を行うことなく、ソーク判定(b)のみを行うようにした場合には、2トリップ目のエンジン再始動時刻t2とほぼ同期するタイミングにて本判定(e)によるOK判定又はNG判定が確定する。
【0077】
この結果、AT油温センサ64の油温センサ値が正常な値から乖離するオフセット異常モードであるか否かの判定結果(OK判定又はNG判定)を、車両走行を条件とすることなくエンジン1の再始動直後に取得することができる。また、AT油温センサ64のオフセット異常モードを検知したときには、エンジン再始動直後のタイミングで確定したNG判定に基づき、排気警告灯8を点灯し、ドライバーに知らせることで、OBD法規を満たすことができる。
【0078】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機用油温センサの異常診断方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0079】
(1) エンジン1を制御するエンジンコントロールモジュール3において、エンジン暖機状態でのエンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)からのセンサ値がエンジン暖機状態を示しているか否かを判定する暖機判定手順(図3)と、
前記エンジンコントロールモジュール3において、前記エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待って前記エンジン1を再始動すると、前記暖機判定手順(図3)による暖機判定結果を読み込み、暖機判定結果を含み前記エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)が正常に温度検知動作をしているか否かの判定を開始するセンサ正常動作判定手順(図4)と、
前記エンジン1に連結された自動変速機2を制御する自動変速機コントロールユニット(ATコントロールユニット4)において、前記エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待って前記エンジン1を再始動したとき、前記エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)からのセンサ値を入力し、自動変速機用油温センサ(AT油温センサ64)からの油温センサ値との上下乖離幅が所定閾値以下であるか否かを判定する仮判定手順(図5のステップS51〜ステップS54)と、
前記自動変速機コントロールユニット(ATコントロールユニット4)において、前記エンジンコントロールモジュール3から前記エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)が正常に動作しているとの判定に基づき出力される許可信号を入力すると、前記仮判定手順(図5のステップS51〜ステップS54)による判定結果を確定させる本判定手順(図5のステップS55〜ステップS56)と、
を備える。
このため、油温センサ値が正常な値から乖離するオフセット異常モードであるか否かの判定結果を、車両走行を条件とすることなくエンジン1の再始動直後に取得することができる。
【0080】
(2) 前記センサ正常動作判定手順(図4)は、前記暖機判定手順(図3)による暖機判定結果が正常であり、かつ、前記エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)のソーク判定結果が正常であり、かつ、前記エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)のリコンファーム判定結果が正常であるとき、前記エンジンコントロールモジュール3から前記自動変速機コントロールユニット(ATコントロールユニット4)に対し許可信号を出力する。
このため、(1)の効果に加え、エンジン側温度センサ(燃温センサ54、水温センサ55)が正常に動作しているか否かの判定を、再確認によるリコンファーム判定を含むことで精度良く行うことができる。
【0081】
(3) 前記エンジン側温度センサとして、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ55を有し、
前記仮判定手順(図5のステップS51〜ステップS54)は、前記水温センサ55からの水温センサ値を入力し、前記自動変速機用油温センサ(AT油温センサ64)からの油温センサ値が前記水温センサ値に対して所定閾値以下の上下乖離幅であるときOK判定とし、所定閾値を超える上下乖離幅であるときNG判定とする。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、エンジン暖機状態に対して高い追従性により同調しながら温度が変化する水温センサ値と油温センサ値を対比することで(図8参照)、自動変速機用油温センサ(AT油温センサ64)のオフセット異常モードを精度良く検知することができる。
【0082】
(4) 前記自動変速機用油温センサ(AT油温センサ64)は、前記エンジン1に連結された前記自動変速機2の制御を前記自動変速機コントロールユニット(ATコントロールユニット4)において行う際、油温センサ値を油温情報として制御に用いる排気ガス関連部品であり、
前記本判定手順(図5のステップS55〜ステップS56)によりNG判定が確定した場合、車室内に配置した排気警告灯8を点灯させる排気警告手順(図2)と、
を備える。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、自動変速機用油温センサ(AT油温センサ64)
のオフセット異常モードを検知したとき、エンジン再始動直後のタイミングで確定したNG判定に基づき、排気警告灯8を点灯し、ドライバーに知らせることで、OBD法規を満たすことができる。
【0083】
以上、本発明の自動変速機用油温センサの異常診断方法を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0084】
実施例1では、センサ正常動作判定手順として、暖機判定結果とソーク判定結果とリコンファーム判定結果が正常であるとき、エンジンコントロールモジュール3からATコントロールユニット4に対し許可信号を出力する例を示した。しかし、センサ正常動作判定手順としては、暖機判定結果とソーク判定結果が正常であるとき、エンジンコントロールモジュールからATコントロールユニットに対し許可信号を出力する例としても良い。
【0085】
実施例1では、仮判定手順として、水温センサ55からの水温センサ値を入力し、AT油温センサ64からの油温センサ値が水温センサ値に対して所定閾値以下の上下乖離幅であるときOK判定とし、所定閾値を超える上下乖離幅であるときNG判定とする例を示した。しかし、仮判定手順としては、エンジン側温度センサからセンサ値として、吸気温センサ53からの吸気温センサ値や燃温センサ54からの燃温センサ値を用いる例としても良い。さらに、エンジン側温度センサとして設けられている吸気温センサ53や燃温センサ54や水温センサ55の各センサ値に基づいて推定した外気温推定値を、油温センサ値と比較する基準値とする例であっても良い。
【0086】
実施例1では、本発明の自動変速機用油温センサの異常診断方法を、エンジン1と有段階変速段を有する自動変速機2が連結された駆動系を備えた車両へ適用する例を示した。しかし、本発明の自動変速機用油温センサの異常診断方法は、エンジンと無段階変速比を有する無段変速機が連結された駆動系を備えた車両に対しても適用することができる。さらに、エンジンと自動変速機を備えた車両であれば、エンジン車に限らず、ハイブリッド車両に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 エンジン
2 自動変速機
3 エンジンコントロールモジュール
31 暖機判定部
32 ソーク判定部
33 リコンファーム判定部
34 判定許可信号出力部
4 ATコントロールユニット(自動変速機コントロールユニット)
41 仮OK/NG判定許可条件判定部
42 仮OK/NG判定部
43 本OK/NG判定部
44 MIL点灯カウンター部
51 イグニッションスイッチ
52 エンジン回転数センサ
53 吸気温センサ
54 燃温センサ(エンジン側温度センサ)
55 水温センサ(エンジン側温度センサ)
61 車速センサ
62 アクセル開度センサ
63 インヒビタースイッチ
64 AT油温センサ(自動変速機用油温センサ)
7 双方向通信線
8 排気警告灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを制御するエンジンコントロールモジュールにおいて、エンジン暖機状態でのエンジン側温度センサからのセンサ値がエンジン暖機状態を示しているか否かを判定する暖機判定手順と、
前記エンジンコントロールモジュールにおいて、前記エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待って前記エンジンを再始動すると、前記暖機判定手順による暖機判定結果を読み込み、暖機判定結果を含み前記エンジン側温度センサが正常に温度検知動作をしているか否かの判定を開始するセンサ正常動作判定手順と、
前記エンジンに連結された自動変速機を制御する自動変速機コントロールユニットにおいて、前記エンジン暖機状態からエンジン停止によりエンジン冷機状態になるまで待って前記エンジンを再始動したとき、前記エンジン側温度センサからのセンサ値を入力し、自動変速機用油温センサからの油温センサ値との上下乖離幅が所定閾値以下であるか否かを判定する仮判定手順と、
前記自動変速機コントロールユニットにおいて、前記エンジンコントロールモジュールから前記エンジン側温度センサが正常に動作しているとの判定に基づき出力される許可信号を入力すると、前記仮判定手順による判定結果を確定させる本判定手順と、
を備えることを特徴とする自動変速機用油温センサの異常診断方法。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機用油温センサの異常診断方法において、
前記センサ正常動作判定手順は、前記暖機判定手順による暖機判定結果が正常であり、かつ、前記エンジン側温度センサのソーク判定結果が正常であり、かつ、前記エンジン側温度センサのリコンファーム判定結果が正常であるとき、前記エンジンコントロールモジュールから前記自動変速機コントロールユニットに対し許可信号を出力する
ことを特徴とする自動変速機用油温センサの異常診断方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された自動変速機用油温センサの異常診断方法において、
前記エンジン側温度センサとして、エンジン冷却水温度を検出する水温センサを有し、
前記仮判定手順は、前記水温センサからの水温センサ値を入力し、前記自動変速機用油温センサからの油温センサ値が前記水温センサ値に対して所定閾値以下の上下乖離幅であるときOK判定とし、所定閾値を超える上下乖離幅であるときNG判定とする
ことを特徴とする自動変速機用油温センサの異常診断方法。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか1項に記載された自動変速機用油温センサの異常診断方法において、
前記自動変速機用油温センサは、前記エンジンに連結された前記自動変速機の制御を前記自動変速機コントロールユニットにおいて行う際、油温センサ値を油温情報として制御に用いる排気ガス関連部品であり、
前記本判定手順によりNG判定が確定した場合、車室内に配置した排気警告灯を点灯させる排気警告手順と、
を備えることを特徴とする自動変速機用油温センサの異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96385(P2013−96385A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243015(P2011−243015)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】