説明

自動巻取式エアフィルタ

【課題】 従来の自動巻取式エアフィルタは、ろ材自身の引っ張り強度を高める必要があるため、格子状ネット材等を貼り付け或いはろ材内部に挿入取り付けしていたが必ずしも満足するものでなく、空調用フィルタ構造として、ろ材はコストアップになったり、生産性が劣ったり、圧損上昇に繋がったり、自動巻き取り式エアフィルタの様なろ材に張力をかけるような、要強度保持ろ材としては不向きであった。
【解決手段】 自動巻取式エアフィルタに引張、圧縮性の必要強度を有しつつ高捕集率化したろ材として、複合繊維から成る低密度層と高密度層の二層構造あるいは連続密度勾配を形成した単一層構造の不織布ろ材に補強材の機能を有する撚り糸単独あるいは撚り糸を介して薄い不織布製シートを貼り合わせた除じんロール用積層繊維ろ材を用いた自動巻取式エアフィルタを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場空調、ビル空調、下水処理場あるいはガスタービン吸気用などとして、汚染空気をろ過集塵する自動巻取式エアフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の自動巻取式エアフィルタは装置本体の前後方向に開口する通風部にその全面を遮るようにろ材をセットし、ろ材のろ過面部で前方から送通される汚染空気ろ過集塵を行っている。
【0003】
そして、自動巻取式エアフィルタで工場空調、ビル空調、下水処理場あるいはガスタービン用吸気などの汚染空気をろ過集塵するにつれて、ろ材に捕集されるダスト量が増え、ろ材のろ過面部が目詰まりを起こし、ろ過面部の圧損抵抗が徐々に上昇して、所望の通過風量が得られなくなることから、一定時間毎にあるいは一定差圧毎に検知して自動巻取式エアフィルタの駆動部を運転してろ材を駆動し、ろ材の新品部分を繰り出すことによりろ材のろ過面部の圧力損失が上昇するのを防いでいる。
【0004】
そこで、自動巻取式エアフィルタは、繰出側エンドパネルに装填した新ろ材ロールから巻取側エンドパネルの巻取りロールに順次ろ材を巻き取るように機械的に駆動させ、ろ材のろ過面部がたるむことなく一定の張力を掛けた状態で張り付けるため、ろ材自身の強度を高める必要があり、さらにはろ材を省スペースの為に圧縮して巻き取ってある状態から繰り出された際に性能上必要となるろ材厚みにまで回復させる必要があるためフィルタろ材に自由度が必要であった。この手段として、フィルタろ材二次側に格子状のネット等を樹脂で張り付けたり、ろ材層内部にネット材を挿入したりして対応していたが、ろ材製作性の低下、材料価格のアップ、圧力損失上昇等が発生し、格子状ネット材等の強度保持材の簡素化が要求されていた。
【0005】
また、ろ材の二層構造の張り合わせで層を厚くして強度を強くする方法も考えられるが、ろ材を圧縮して巻き取った状態から繰り出された際に性能上必要となるろ材厚みにまで回復出来なく、ろ材にダストを保持する空隙が形成できないため、短寿命になったりして、なかなか希望するようなろ材が得られなかった。
【発明の概要】

【発明が解決しょうとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解決しょうとしたもので、まず本発明の目的は、繰り出しろ材ロールから巻取りロールに順次ろ材を巻き取るようにした自動巻取式エアフィルタに於いて、高い捕集効率の機能を有しながら引張、圧縮性の強度を簡便な方法で、本来の機能を十分持たせたろ材を提供するようにしたものである。
【0007】
次に本発明の目的は、高い捕集効率の機能を持ちながら、ろ材のろ過面部がたるむことなく一定の張力を掛けた状態で、繰り出しろ材ロールから巻取りロールに順次ろ材を巻き取るように機械的に駆動させ、さらにはろ材を圧縮して巻き取ってある状態から繰り出された際に性能上必要となるろ材厚みにまで回復させるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段は、ろ材ロールから巻取りロールに順次ろ材を巻き取るようにした自動巻取式エアフィルタにおいて、ろ材ロールに細い繊維を有して高い捕集効率の機能を持ち、引張、圧縮性の必要強度を、強度保持用太い繊維を有した除じんロール用積層繊維ろ材を使用し、巻取りロールで順次ろ材を巻き取るようにしたことを特徴としたものである。
【0009】
本発明の第2の解決手段は、除じんロール用積層繊維ろ材は気流方向に対して上流側となる低密度層と下流側となる高密度層の二層構造、連続密度勾配層或いは単一繊維層構造で形成した不織布ろ材と補強機能を有する撚り糸等の補強糸を片面に取り付けて構成したことを特徴としたものである。
【0010】
本発明の第3の解決手段は、不織布ろ材に補強糸、および表面押さえシートを貼り付けて除じんロール用積層繊維ろ材を構成したことを特徴としたものである。
【0011】
本発明の第4の解決手段は、不織布ろ材、補強糸、と表面押さえシートの一方またはいずれにも熱接着成分を配合し、不織布ろ材と補強糸、と表面押さえシートを強固に貼り付けて除じんロール用積層繊維ろ材を構成したことを特徴としたものである。
【0012】
本発明の第5の解決手段は、不織布ろ材と補強糸、および表面押さえシートをバインダーなどで強固に貼り付けて除じんロール用積層繊維ろ材を構成したことを特徴としたものである。なお、不織布ろ材と補強糸のみでの使用も用途により可能である。
【0013】
ここで、除じんロール用積層繊維ろ材を構成する不織布ろ材ついて説明する。不織布ろ材は低密度層と高密度層の二層構造、連続密度勾配繊維層或いは単一繊維層構造を有する、空隙を持った1枚のろ材シートからなるもので、このろ材シートの低密度層と高密度層および単一層の材質、繊維径は特に制限はないが繊維状の材料を用いたものが好ましい。
【0014】
そして、好ましい上流側となる低密度層の材質はポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維などの材料が使用可能である。これらを単独で用いてもよいし2種類以上を併用してろ材不織布として使用してもよい。
【0015】
また、上流側の低密度層に用いる繊維は繊維径が20〜60μmの範囲内で単一或いは複数の径を選択し複合して製作する。
【0016】
次に、下流側となる高密度層の材質は、上流側の層に使用した繊維と同様の有機繊維が使用されるが、10〜50μmの範囲内で単一或いは複数の径を選択し複合して製作される。
【0017】
さらに、単一層の材質は、低密度層あるいは高密度層に使用される繊維と同様の有機繊維が使用される。さらに、10〜60μmの範囲内で複数の径が選択され単一層には連続密度勾配を形成する事も出来る。
【0018】
この不織布ろ材の形成方法としてはニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法などが用いられる。
【0019】
このようにして、製作された不織布ろ材は引張強度と圧縮性を持たせるため上流側の低密度層から下流側の高密度層に向かって、例えばアクリル樹脂バインダ等が含浸されている。用いる樹脂バインダは有機系バインダ、無機系バインダ又は低融点溶融繊維等を単独あるいは混合して加えて得られる混合バインダが使用される。
なお、バインダはVOCガスなどの発生の少ないポリエステル等の低融点溶融繊維が望ましい。
【0020】
次に除じんロール用積層繊維ろ材を構成する表面押さえシートについて説明する。表面押さえシートは不織布ろ材に配置された補強糸を固定させ、補強糸の剥離を防止する目的で使用される。通気性のあるシート材であれば良く、補強糸を挟む形で不織布ろ材のフィルタ下流側表面全面に表面押さえシートがバインダや熱融着によって接着され、補強糸の移動や剥離を防止する。補強糸がバインダや熱融着などによって強固に接着されている場合には表面押さえシートはなくても良い。
【0021】
さらに、除じんロール用積層繊維ろ材を構成する補強機能を有する補強糸について説明する。補強糸は自動巻き取りの際に必要な強力を有していればよく、材質や繊維径、不織布ろ材に配置される頻度等に規定はない。例えば110℃で溶融する低融点ポリエステル成分が混入している 8000dtのポリエステルマルチフィラメント撚り糸を熱接着によって不織布ろ材と接着する。さらに、表面押さえシートを使用すればより強固に不織布ろ材と一体化が可能である。また、撚り糸には限定せず、単一のワイヤー状糸で一定の強度、例えば25kg/本を有するものであれば限定されるものでない。なお、本仕様値は、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【0022】
次に、除じんロール用積層繊維ろ材の製造方法の一例について述べる。まず、繊維径が20〜60μmの範囲で複数種類複合したポリエステル繊維に熱融着ポリエステル繊維を30%混入し法サーマルボンド法で重量 250g/m厚み 20mmの不織布ろ材を製作する。別途熱融着繊維ポリエステル繊維を50%含有した 重量 30g/m 厚み 1mmの表面押さえシートを製作する。さらに、表面押さえシートの片面には8000dtのポリエステルマルチフィラメントを補強糸として熱融着によって10cm間隔で貼り付ける。
【0023】
さらに、不織布ろ材のフィルタ下流側である高密度層下流側に表面押さえシートを補強糸が当接するように不織布ろ材と表面押さえシートに含有している互いの熱融着繊維の接着力で貼り付け除じんロール用積層繊維ろ材を得る。
【0024】
その後、必要とされるろ材幅に切り取り、荷重をかけながらロール状に巻き締めてろ材ロールとする。そして、ろ材ロールを空調機に設置してある自動巻取しきエアフィルタの繰出側エンドパネルに装填し、ろ材を繰出して使用する。
【0025】
また、上記課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち除じんロール用積層繊維ろ材に補強材の機能を有する撚り糸を貼り付けているので、縦型或いは横型方向の自動巻取時のテンションに対しても、ろ材の伸びを制御し十分な強度を持たせることができ、繰り出しろ材ロールから巻取りロールへ繰り出した際にも巻き取り力でろ材を切断することなく、また破れ、ほつれ、たれなどが発生せず、自動巻取式エアフィルタとして要求されている使用期間を通じて高い性能を発揮し続けることができる。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明の自動巻取式エアフィルタは次のような効果が得られる。
(1)縦或いは横方向の自動巻取時のテンションに対してもろ材の伸びを制御し十分な強度を持たせたので、ろ材ロールから巻取りロールに順次ろ材を巻き取っても、ろ材がほつれたり、破れたり、たれたりせず、自動巻取式エアフィルタとして要求されている使用期間を通じて高い性能を発揮し続けることができる。
(2)不織布ろ材に補強材の機能を有する簡便な補強糸を介して不織布製シートを積層するだけといった方法で除じんロール用積層繊維ろ材を形成したので、従来の格子状ネット材をフィルタの二次側、または繊維層間挿入構造のものに比べ生産性がよく低コスト化が図れる。
(3)撚り糸ワイヤー構造の為に、処理する汚染空気の塵埃濃度が高い場合でも正規のろ材厚みまで回復、低圧損化の機能を満足できる。強度保持材がワイヤー状の為に、じん埃を捕集する繊維空間を十分に取ることができ、ろ材の更新時期を延ばしてランニングコストを低減できる。
(4)ろ材自身に塩素や硫黄、VOCガス成分を含まないため、アウトガスの発生がなく、半導体工場等での使用及び廃棄時にリサイクルが可能となるため環境負荷が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の全体を示す側面図である。
【図2】本発明の全体を示す正面図である。
【図3】本発明を構成するろ材繰出しスプールにロール用積層繊維ろ材を巻き取った状況を示す詳細図である。
【図4】本発明に使用するロール用積層繊維ろ材の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の自動巻取式エアフィルタについて図面を参照し詳細に説明する。
【実施例】
【0029】
まず1は自動巻取式エアフィルタの本体を示し、この場合の本体1は全体が縦型あるいは横型で前後幅の狭いUチャンネル枠状をなし、その中央部が前後方向に大きく開口する通風部となっている。2は繰出側エンドパネル、3は巻取側エンドパネルで、本体1に立設されている。4はメディアカバーで繰出側エンドパネル2に可動な状態で支承されている。5はろ材繰出しスプールで切欠き溝6に支承されている。
【0030】
7は巻取りスプールでローラーチェーン8を介してギヤードモーター9に連結されている。
【0031】
10はろ材繰出しリール、11は気流方向の上流側に設けたサポートロッド、12は上流側に設けたサポートチャンネルである。
【0032】
13はテンションパネルでろ材繰出しリール10と巻取りスプール7の間でろ材がたるむのを防止している。
【0033】
次にろ材ロールを本体へ取り付ける方法について説明する。
まず、不織布ろ材14の高密度層後面に補強糸15を介して表面押さえシート16を貼り付けた除じんロール用積層繊維ろ材17をろ材繰出しスプール5にロール状に圧縮して巻き締め、ろ材ロールを完成する。次にろ材繰出しスプール5に繰出側エンドパネル3内にあるメディアカバー4の切欠き溝6に装填する。
【0034】
次に除じんロール用積層繊維ろ材17を繰出し、ろ材繰出しリール10の上部を通しろ材をガイドレール(図示せず)に送りだす。さらにメディアカバー4の下側から手を入れて、ガイドレールに沿って新しいろ材を引き下ろす。
【0035】
次に、ガイドレールに沿って引き下ろされた除じんロール用積層繊維ろ材17を巻取りスプール7に巻き取り、巻取りロールを完成する。
【0036】
次に、電源を入れることにより自動巻取が開始され、ろ材のろ過面部が性能上必要となるろ材厚みにまで回復させられたまま、一定の張力が掛けられた状態で張り付けられる。
【0037】
そして、一定の張力が掛けられた状態でろ過通風運転が行われる。
【0038】
なお、上記実施例では1実施例を述べただけで、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、工場、ビル、下水処理あるいはガスタービンプラントなどの外気取り入れや空調などに使用される空気清浄用の自動巻取式エアフィルタの除じんロール用積層繊維ろ材の強度を高めたもので実用性甚だ大なるものである。
【符号の説明】
【0040】
1・・・自動巻取式エアフィルタの本体 2・・・繰出側エンドパネル
3・・・巻取側エンドパネル 4・・・メディアカバー
5・・・ろ材繰出しスプール 6・・・切欠き溝
7・・・巻取りスプール 8・・・ローラーチェーン
9・・・ギヤードモーター 10・・・ろ材繰出しリール
11・・・サポートロッド 12・・・サポートチャンネル
13・・・テンションパネル 14・・・不織布ろ材
15・・・補強糸 16・・・表面押さえシート
17・・・除じんロール用積層繊維ろ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出側エンドパネルに装填した新ろ材ロールから巻取側エンドパネルの巻取りロールに順次ろ材を巻き取るようにした自動巻取式エアフィルタにおいて、高い捕集効率の機能を有しながら引張、圧縮性の強度をもった除じんロール用積層繊維ろ材を巻き取るようにしたことを特徴とする自動巻取式エアフィルタ。
【請求項2】
除じんロール用積層繊維ろ材は気流方向に対して上流側となる低密度層と下流側となる高密度層の二層構造、連続密度勾配層或いは単一繊維層構造で形成した不織布ろ材と補強機能を有する撚り糸等の補強糸を片面に取り付けて構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動巻取式エアフィルタ。
【請求項3】
不織布ろ材に補強糸、および表面押さえシートを貼り付けて除じんロール用積層繊維ろ材を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動巻取式エアフィルタ。
【請求項4】
不織布ろ材、補強糸、と表面押さえシートの一方またはいずれにも熱接着成分を配合し、不織布ろ材と補強糸、と表面押さえシートを強固に貼り付けて除じんロール用積層繊維ろ材を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動巻取式エアフィルタ。
【請求項5】
不織布ろ材と補強糸、および表面押さえシートをバインダーなどで強固に貼り付けて除じんロール用積層繊維ろ材を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動巻取式エアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121015(P2012−121015A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285106(P2010−285106)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【出願人】(000201881)倉敷繊維加工株式会社 (41)
【Fターム(参考)】