説明

自動摩耗クラッチを操作するための方法

本発明は、自動摩擦クラッチを操作するための方法に関する。当該方法によれば、エネルギー入力に相当するクラッチ負荷が測定され、当該測定されたクラッチ負荷に基づいてクラッチの操作モードが制御される。本発明によれば、不十分なエネルギー入力によってクラッチライニングが研磨されないように、クラッチのスリップ作動時間に関連させてクラッチ負荷が特に増加され、早期に摩耗されないように、クラッチ負荷が特に減少される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念による自動摩耗クラッチを操作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動摩耗クラッチは、操作部によってすぐには操作されないクラッチに基づく摩耗のもと、特にモータ乗物内で長い時間使用される。本発明は、モータ乗物のクラッチの例として以下に記載される。しかしながら、モータ乗物のクラッチに限定されることはなく、原則的には全てのクラッチによって使用されることができ、異なるクラッチ行程の各々によって、様々なクラッチ負荷を支配することができる。
【0003】
特に、自動切換変速機を有するモータ乗物によって、自動摩耗クラッチは、ギヤ変化およびスタート行程によって、常に活性化している。さらに、これらは、マニュアルで切換可能な変速機を有する乗物内で使用されることが多くなっている。このため、ギヤの希望は、少なくとも電気信号の形態で、運転者によって直接検知可能となり、制御装置によって対応が選択され、最終的には、実際のクラッチ行程と切換行程を制御するアクチュエータの制御部を作動することである。
【0004】
このような場合でも、運転者によって操作されるためのクラッチペダルが設けられ、クラッチ位置の制御が、アクチュエータにより、運転者によって加えられる力、ペダルの行程、クラッチの調整の正確性、および、特に乗物、変速機またはクラッチ自身の個別の状態、に関連した様々な利点を提供する。通常、制御部は、乗物の好ましい乗物特性を発生させることができる摩耗クラッチを提供するよう、自動摩耗クラッチを提供する。また、例えば、スタート行程の際に比較的寛容な摩耗クラッチのスリップ範囲が提供され、運転者に乗物の速度増加の正確な量または快適なスイッチ操作が提供されることができ、二次的に、比較的きつい傾斜でもこの状態になり、アクセルペダルの操作によって、ブレーキの操作なく短い時間で停止状態がもたらされる。
【0005】
このため、自動摩耗クラッチのための制御部の設計は、一般に、予想されるスタート駆動状態ないしクラッチ行程の平均に対して最適化されるように行われる。
【0006】
しかしながら、特に平均的な商用車および重い商用車によれば、クラッチが、設計範囲より低くまたは高く、従って設定されたクラッチ負荷より低くまたは高く操作されるよう、スタート状態は、例えば実際の負荷と道路の傾斜に基づいて広い範囲で変化することができる。
【0007】
クラッチが長い時間に亘ってクラッチ負荷より低く操作されると、いわゆるクラッチライニングの“研磨”が導かれる。さらに、この研磨は、摩擦係数を小さくする行程を続かせ、このクラッチの摩擦係数が、速度の増加をもたらす。摩擦係数を小さくする行程は、駆動系内の振動によって明らかになるいわゆるクラッチ引っ張りの原因となる。特に乗り心地の理由から、クラッチ引っ張りは避けられるべきである。
【0008】
クラッチが、長時間に亘って設計範囲または設けられたクラッチ負荷を超えて操作されると、早いクラッチ摩耗を導き、理解できるように同様に避けられるべきである。
【0009】
クラッチ負荷は、既知のように、クラッチ行程のスリップ段階の間、クラッチ内でもたらされるエネルギーの関数となり、製品、駆動モータ、スリップ回転数およびスリップ作動時間から測定されることができる。スリップ回転数は、クラッチ入力回転数とクラッチ出力回転数との差に対応する。もたらされるエネルギーは、以下の式、
E=M*(nein - naus)*t
で算定される。
この式において、
Eは、摩擦力としてクラッチをつかむエネルギーを意味し、
Mは、入力トルクを意味し、
neinは、入力回転数を意味し、
nausは、出力回転数を意味し、
tは、スリップ作動時間を意味する。
【0010】
このため、クラッチ内にもたらされるエネルギーは、入力トルク、入力回転数と出力回転数との差およびスリップ作動時間によって、影響されうることがわかる。この背景の前に、クラッチ負荷またはクラッチ内のエネルギー入力を監視することと、測定されたクラッチ負荷に基づいてクラッチ操作を制御することは、原則的に既に知られている。
【0011】
独国特許出願公開公報DE 33 34 725 A1は、過熱に対してクラッチを守るための装置を示しており、当該装置によれば、クラッチによって伝達され、または、クラッチ内の駆動モータによって導入されるトルク、乃至、クラッチ入力回転数とクラッチ出力回転数との間の差、が測定される。このことによって製品が形成され、テーブルの助けを有する製品に警告遅滞時間が提供される。実際のスリップ作動時間の各々は警告遅滞時間と比較され、警告遅滞時間を超過することによって、警告信号が出される。この場合、クラッチの過熱を避けることができる。
【0012】
独国特許出願公開公報DE 103 12 088 A1よって、モータ乗物の駆動系を操作するための方法が知られており、当該独国特許出願公開公報DE 103 12 088 A1よって、エネルギー入力またはクラッチの温度が監視され、限界値を超えると、クラッチの入力トルクが減らされる。この方法もまた、摩耗クラッチでの損失と温度上昇を避けることを示している。
【0013】
二つの述べられた圧力タイプでは、実際のクラッチ行程の間にクラッチの損失を避けるために、各々、実際のクラッチ行程が監視される。クラッチに生じた摩耗または過度の摩耗として測定される例えば長い作動時間のもとで生じる平均のクラッチ負荷を収集することは、述べられた圧力タイプで記載される装置と方法では行われておらず、不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような従来技術のもと、本発明は、例えば長い作動時間のもとで生じるクラッチライニングの摩耗、クラッチライニングの研磨による過度の摩耗、または、過度の摩耗が除去されることができる自動摩耗クラッチの操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題の解決は、主請求項の特徴から生じ、他方、本発明の好ましい実施の形態と発展としては、従属請求項を取り上げることができる。“平均のクラッチ負荷”という文言は、例えば一つ以上の一連のクラッチ行程、または、場合によっては全てのクラッチ行程によって、クラッチの試運転で、全てのスリップ作動時間に関するエネルギー入力に相当する全てのクラッチ負荷が測定されることで、把握される。そして、クラッチ負荷は、予め定められた平均クラッチ負荷と比較され、予め定められたクラッチ負荷に対する測定されたクラッチ負荷の相違によって、本発明による態様において、後続するクラッチ行程で反映される。
【0016】
本発明は、平均より低いまたは平均を超えたエネルギー入力によって可能な態様で生成される損失が、クラッチ内でのエネルギー入力の目標の増加または減少によって、クラッチで減少または除去されるという目的を解決することにある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、エネルギー入力に相当するクラッチ負荷が測定され、当該測定されたクラッチ負荷に基づいてクラッチの操作が制御される自動摩擦クラッチを操作するための方法である。
【0018】
そして、上述の課題を解決するために、クラッチのスリップ作動時間に関連させて、平均のクラッチ負荷が測定され、予め定められた限界値範囲より低いクラッチ負荷の際には、再び限界値範囲に達するまで、より高いクラッチ負荷で操作が制御され、予め定められた限界値範囲を超えたクラッチ負荷の際には、再び限界値範囲に達するまで、より低いクラッチ負荷で操作が制御されることが提供される。
【0019】
平均のクラッチ負荷より低い工程または平均のクラッチ負荷より高い工程が、本発明によれば、クラッチ負荷が予め定められた限界値範囲内に保持されるよう、目標のエネルギー入力によって修正される。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態によれば、平均のクラッチ負荷が、クラッチ内の平均のエネルギー入力によって測定されることが提供される。また、エネルギー入力が、各クラッチ行程によって上述した態様で算定および測定され、長い作動時間で生じたエネルギー入力が、従うスリップ作動時間に関して測定される。生じた値は、平均のクラッチ負荷を測定するために存在する。それが、予め定められた限界値範囲より低くなったり限界値範囲を超えたりして外れた場合には、エネルギー入力を決定するパラメータの適切な影響によって、エネルギー入力が増加または減少され、限界値範囲内に再び入る。
【0021】
クラッチ負荷を測定するための別の方法は、クラッチの操作特性を観察し、クラッチ状態を操作特性から判断するものである。特に、限界値範囲より低い平均のクラッチ負荷は、クラッチの振動特性(Rupf-Verhalten)によって測定されることができる。さらに既に述べられているように、長い作動時間のもとで平均より低いエネルギー入力によってクラッチライニングの“研磨”がもたらされ、摩擦係数を小さくする行程を生じさせ、再びクラッチ引っ張りの原因となる。クラッチの振動特性において、例えば駆動系振動の測定によって推定される。
【0022】
本発明の別の実施の形態によれば、限界値範囲を超えた平均のクラッチ負荷は、クラッチ摩耗によって測定され、これは、既知の方法では、例えば完全に閉じられたクラッチの端部位置によって確認可能である。
【0023】
さらに、既に示されているように、エネルギー入力は、原則的に、エネルギー入力を決定するパラメータ、すなわち、入力トルク、クラッチの入力回転数と出力回転数との差、または、スリップ作動時間によって影響されうる。
【0024】
さらに、既に述べられたように、自働摩耗クラッチは、自動または自動化された切換変速機に様々に連結され、クラッチと変速機は、上位の制御部によって制御される。特に、12または18ギヤまで有する重い商用車の場合には、一般に、複数のギヤがスタートギヤとして連結される。スターギヤの選択は、実際の走行状態、例えば乗物の負荷状態や駐車場の傾斜などに基づいて行われる。上位の制御部は、走行状態を特徴づける要求を測定し、通常操作において、これらの要求に対する最適なスタートギヤを決定する。
【0025】
このような乗物の場合には、本発明の好ましい実施の形態によれば、より高いクラッチ負荷での操作が、実際の走行状態に対して最適なスタートギヤより高いスタートギヤを選択することによって実施され、より低いクラッチ負荷での操作が、実際の走行状態に対して最適なスタートギヤより低いスタートギヤを選択することによって実施されることが提供される。平均より低いクラッチ負荷はクラッチライニングを研磨することを生じさせるので、高い、最適スタートギヤより高いスタートギヤを選択することによって、クラッチ内のエネルギー入力が増加される。このため、研磨シフトを除去し、研磨状態を取り除くことができる。
【0026】
これに対して平均を超えたクラッチ負荷が測定された場合には、対応する態様で、クラッチ内のエネルギー入力が、最適なスタートギヤより低いスタートギヤを選択することによって減少され、予め定められた限界値範囲内に再び到達される。
【0027】
予め定められた限界値範囲内に再び到達するために、一般に、比較的短い時間でのエネルギー入力の増加または減少(少ないスタート行程)で十分であることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動摩擦クラッチを操作するための方法において、
エネルギー入力に相当するクラッチ負荷が測定され、
当該測定されたクラッチ負荷に基づいてクラッチの操作が制御され、
クラッチのスリップ作動時間に関連させて、平均のクラッチ負荷が測定され、
予め定められた限界値範囲より低いクラッチ負荷を確認した際には、再び限界値範囲に達するまで、より高いクラッチ負荷で操作が制御され、予め定められた限界値範囲を超えたクラッチ負荷を確認した際には、再び限界値範囲に達するまで、より低いクラッチ負荷で操作が制御される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
平均のクラッチ負荷が、クラッチ内の平均のエネルギー入力によって測定される、ことを特徴とする請求項1による方法。
【請求項3】
平均のクラッチ負荷が、クラッチの操作特性によって測定される、ことを特徴とする請求項1または2による方法。
【請求項4】
限界値範囲より低い平均のクラッチ負荷は、クラッチの振動特性(Rupf-Verhalten)によって測定される、ことを特徴とする請求項3による方法。
【請求項5】
限界値範囲を超えた平均のクラッチ負荷は、クラッチ摩耗によって測定される、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項による方法。
【請求項6】
実際の走行状態に基づいて自動的に選択可能な複数のスタートギヤを有する自動の切換変速機または自動化された切換変速機と協働する摩耗クラッチのための方法であって、
より高いクラッチ負荷での操作が、実際の走行状態に対して最適なスタートギヤより高いスタートギヤを選択することによって実施され、
より低いクラッチ負荷での操作が、実際の走行状態に対して最適なスタートギヤより低いスタートギヤを選択することによって実施される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項による方法。

【公表番号】特表2009−537769(P2009−537769A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511441(P2009−511441)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054025
【国際公開番号】WO2007/134940
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】