説明

自動改札装置

【課題】人間検知器が故障したときも通常稼働を行なうことができるようになり、駅係員にとって利便性のよい自動改札装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る自動改札装置は、利用者が提示する乗車券媒体からそれに記録されている乗車券情報を読取るとともに、利用者が通行する通路に沿って一定間隔あけて列状に設置され当該通路を通行する利用者を検知する複数の検知器の検知状態に基づき少なくとも当該利用者の位置および通行方向を追従して検知し、この検知結果および前記乗車券媒体から読取った乗車券情報に基づき当該利用者の通行可否を制御する自動改札装置において、前記複数の検知器の出力を監視し、少なくとも2つ以上の隣り合う検知器が検知状態にあることを検知した際、前記複数の検知器を非動作状態に切換えできないように制御し、それ以外の場合は前記複数の検知器を非動作状態に切換えできるように制御する制御手段を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動改札装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道などの交通機関の駅に設置される自動改札装置は、改札通路に進入する利用者が磁気式の乗車券媒体を投入口に投入するか、あるいは、無線式の乗車券媒体をアンテナ部分に翳すことで、当該乗車券媒体からそれに記録されている乗車券情報を読取り、この読取った乗車券情報に基づき当該乗車券媒体の正否を判定し、正しい乗車券媒体であれば当該利用者の通行を許可し、正しくない乗車券媒体であれば当該利用者の通行を拒否するように制御している。
【0003】
このような自動改札装置において、利用者が通行する通路に沿って複数の人間検知器を一定間隔あけて列状に設置し、この複数の人間検知器の検知状態に基づき当該利用者の位置や通行方向等を追従して検知することにより当該利用者の通行を制御するようにしたものがある。
【0004】
ところが、複数の人間検知器の中である人間検知器が検知状態にある場合は、その原因が人間、それ以外の物体、あるいは人間検知器の故障にかかわらず、複数の人間検知器を非動作状態に切換えできないように制御している。
【0005】
そのため、たとえば、1つの人間検知器が故障して常時検知状態となってしまった場合、複数の人間検知器を非動作状態に切換えできなくなってしまう。それによって、自動改札装置の通常稼働(複数の人間検知器を用いた利用者の位置および通行方向の追従検知を省略した動作)が行なえなくなってしまう。これでは、駅係員にとって利便性のよいものとはいえないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−31841号公報
【特許文献2】特開2010−86465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、人間検知器が故障したときも通常稼働を行なうことができるようになり、駅係員にとって利便性のよい自動改札装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、実施形態に係る自動改札装置は、利用者が提示する乗車券媒体からそれに記録されている乗車券情報を読取るとともに、利用者が通行する通路に沿って一定間隔あけて列状に設置され当該通路を通行する利用者を検知する複数の検知器の検知状態に基づき少なくとも当該利用者の位置および通行方向を追従して検知し、この検知結果および前記乗車券媒体から読取った乗車券情報に基づき当該利用者の通行可否を制御する自動改札装置において、前記複数の検知器の出力を監視し、少なくとも2つ以上の隣り合う検知器が検知状態にあることを検知した際、前記複数の検知器を非動作状態に切換えできないように制御し、それ以外の場合は前記複数の検知器を非動作状態に切換えできるように制御する制御手段を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る自動改札装置の構成を概略的に示す斜視図。
【図2】実施形態に係る利用者を検知する検知器の設置状態について説明するための模式図。
【図3】実施形態に係る自動改札装置の制御系統を概略的に示すブロック図。
【図4】実施形態に係る人間検知器の動作、非動作切換え制御を説明するフローチャート。
【図5】実施形態に係る人間検知器の動作、非動作切換え制御の具体例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る自動改札装置について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動改札装置の構成を概略的に示すものである。自動改札装置1は、通常、2台1組として駅の改札口などに設置され、両者の間に利用者(通行者)が通行する改札用の通路2が形成される。
【0011】
自動改札装置本体3の上面の一端部(入口側)には、たとえば、有効期間や利用可能区間などの改札情報が磁気エンコード記録された磁気式の乗車券(定期券、普通乗車券、回数券など)やSFカードなどの磁気式の乗車券媒体が投入される投入口4が設けられ、他端部(出口側)には、投入口4から受入れた乗車券媒体を排出する取出口5が設けられている。なお、投入口4には、そこを必要に応じて開閉するシャッタ(図示しない)が設けられている。
【0012】
自動改札装置本体3上の投入口4の前方(入口側)には、無線式のIC読取書込部6が設けられている。無線式のIC読取書込部6は、たとえば、有効期間や利用可能区間などの改札情報が電子データとして記録された無線式の乗車券媒体(たとえば、無線式ICカードからなる定期券や乗車券等)に対し情報の読取りおよび書込みを行なうもので、利用者によって翳される乗車券媒体との間で無線通信を行なうためのアンテナ部7を備えている。アンテナ部7は、通信可能の場合に点灯するランプ(図示しない)が内蔵されている。
【0013】
自動改札装置本体3上の取出口5の前方には、利用者に対して各種ガイダンス表示を行なう案内表示部8が設けられている。
【0014】
自動改札装置本体3の通路2側の側面両端部には、それぞれ利用者の通行を制御する開閉動作可能なドア9,9が設けられており、通行可否の判定結果等に基づき、このドア9,9が開閉制御されるようになっている。
【0015】
自動改札装置本体3の上部の通路2側とは反対側には、検知器取付体10が立設されている。検知器取付体10の通路2側上部には、高さ検知器11A,11B,11Cが設置されている。高さ検知器11Aは通路2の入口付近に対応して設置され、高さ検知器11Bは通路2の中央付近に対応して設置され、高さ検知器11Cは通路2の出口付近に対応して設置されている。
【0016】
高さ検知器11A,11B,11Cは、大人と子供とを判別するためのもので、たとえば、図2に示すように、2つの本体3の各検知器取付体10の通路2側にそれぞれ設置された一対の検知器S31,S32によって構成されていて、これら検知器S31,S32は、所定の角度傾斜させて設置することにより、所定の高さH(たとえば、125cm)以上の身長を有する利用者Pを検知するようになっている。
ここに、上記検知器S31,S32は、たとえば、反射型の赤外線センサなどの光学的なセンサが用いられる。
【0017】
検知器取付体10上には、本装置の動作状態(小児券の投入、無効券の投入や機器の異常など)を表示する状態表示部12が設けられている。
【0018】
自動改札装置本体3の通路2側の側面には、通行する利用者を検知する複数(この例では26個)の人間検知器S1〜S26が通路2に沿って一定間隔あけて列状に設置されている。
【0019】
人間検知器S1〜S26は、通路2を通行する利用者の位置および通行方向等を追従して検知するためのもので、たとえば、図2に示すように、2つの本体3の対向する側面にそれぞれ設置された投光素子S33と受光素子S34とからなる透過型の赤外線センサによって構成されている。
【0020】
人間検知器S1〜S26の各検知器間の間隔は、利用者の胴体の前後幅よりも小さな間隔、たとえば、80mm以内に設定されている。これにより、隣り合う2つ以上の人間検知器は、1人の利用者により遮光されて検知信号を出力するようになっている。
【0021】
なお、図示を省略されているが、自動改札装置本体3内には、投入口4から投入された乗車券媒体を取出口5まで搬送する搬送路が設けられているとともに、搬送路の中途部には、搬送される乗車券媒体に対し磁気情報の読取りおよび書込みを行なう磁気読取書込部が設けられている。
【0022】
図3は、上記のように構成された自動改札装置1の制御系統を概略的に示すものである。
【0023】
図3において、主制御部21には、ROM(リード・オンリ・メモリ)22、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)23、運賃メモリ24、搬送制御部25、検知器監視部27、ドア制御部28、表示制御部29、磁気読取書込制御部30、IC読取書込制御部32、監視盤インタフェース(I/F)33、および、検知器切換部35がそれぞれ接続されている。
【0024】
主制御部21は、本装置全体の制御を司るもので、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)などを主体に構成されている。ROM22は、主制御部21の制御プログラムなどを記憶している。RAM23は、主制御部21により本装置を制御する際に発生するデータなどを一時的に記憶する。運賃メモリ24は、料金計算などを行なうための運賃データを記憶している。
【0025】
搬送制御部25は、投入口4から投入された乗車券媒体を取出口5まで搬送する搬送路26を制御する。検知器監視部27は、前記複数の人間検知器S1〜S26および高さ検知器11A,11B,11Cからの各検知信号をチェックし、改札用の通路2を通行する利用者を監視する。ドア制御部28は、主制御部21からのドア制御信号に基づき前記ドア9の開閉駆動を制御する。表示制御部29は、前記案内表示部8および状態表示部12の表示を制御する。
【0026】
磁気読取書込制御部30は、搬送路26で搬送される乗車券媒体に対し磁気情報の読取りおよび書込みを行なう磁気読取書込部31を制御する。IC読取書込制御部32は、前記IC読取書込部6を制御する。監視盤インタフェース33は、外部に設置される監視盤34と主制御部21とのインタフェースとして機能する。
【0027】
検知器切換部35は、前記複数の人間検知器S1〜S26を必要に応じて非動作状態に切換えるスイッチであり、その非動作状態への切換えは、主制御部21の制御により許可あるいは禁止されるようになっている。なお、検知器切換部35は、自動改札装置1内に限らず監視盤34内に設けてもよい。
【0028】
主制御部21は、磁気読取書込部31あるいはIC読取書込部6により乗車券媒体から読取られた乗車券情報に基づき当該乗車券媒体の正否を判定する。
また、主制御部21は、複数の人間検知器S1〜S26の検知状態に基づき少なくとも通路2を通行する利用者の位置および通行方向を追従して検知するとともに、高さ検知器11A,11B,11Cの検知状態に基づき大人/子供の判別を行ない、これらの検知結果および判別結果および前記乗車券媒体の正否判定結果に基づき当該利用者の通行可否を制御するドア制御信号をドア制御部28へ送る。
【0029】
なお、複数の人間検知器S1〜S26の検知状態に基づき利用者の位置および通行方向を追従して検知する技術、および、高さ検知器11A,11B,11Cの検知状態に基づき大人/子供の判別を行なう技術は、既に公知の技術であり、その詳細については、たとえば、特開2005−31841号公報や特開2010−86465号公報等に記載されているので、それを参照されたい。
【0030】
次に、このような構成において、本実施形態に係る人間検知器の動作、非動作切換え制御について図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0031】
本自動改札装置1の電源がオンされると、主制御部21は、検知器切換部35による人間検知器S1〜S26の非動作状態への切換えを「許可」に設定し(ステップS1)、人間検知器S1〜S26の各出力を検知器監視部27を介して監視する(ステップS2)。すなわち、初期状態は、検知器切換部35による人間検知器S1〜S26の非動作状態への切換えを許可している。
【0032】
次に、主制御部21は、人間検知器S1〜S26から検知信号が出力されたか否かを判定し(ステップS3)、検知信号が出力されない場合、ステップS1に戻って上記同様な動作を繰り返す。
【0033】
ステップS3において、検知信号が出力された場合、主制御部21は、隣り合う2つ以上の人間検知器がそれぞれ検知信号を出力しているか否かを判定し(ステップS4)、隣り合う2つ以上の人間検知器が検知信号を出力していない場合、ステップS1に戻って上記同様な動作を繰り返す。
【0034】
ステップS4において、隣り合う2つ以上の人間検知器が検知信号を出力している場合、主制御部21は、検知器切換部35による人間検知器S1〜S26の非動作状態への切換えを「禁止」に設定し(ステップS5)、ステップS1に戻って上記同様な動作を繰り返す。
【0035】
すなわち、本実施形態では、前述したように隣り合う2つ以上の人間検知器が1人の利用者により遮光されて検知信号を出力するように各人間検知器の間隔を設定しているので、隣り合う2つ以上の人間検知器が検知信号を出力している場合、利用者が通路2内に存在するものと判断する。たとえば、図5(a)に示すように、3つの人間検知器S8,S9,S10が検知信号を出力した場合は、通路2内に利用者が進入したとみなし、検知器切換部35による人間検知器S1〜S26の非動作状態への切換えをできないように設定するものである。
【0036】
また、たとえば、図5(b)に示すように、離れた2つの人間検知器S8,S10が検知信号を出力した場合は、ノイズ等により誤動作したものとみなし、この場合は通路2内に利用者がいないと判断できるので、検知器切換部35による人間検知器S1〜S26の非動作状態への切換えを許可するものである。
【0037】
なお、検知器切換部35により複数の人間検知器S1〜S26が非動作状態に切換えられた場合は、複数の人間検知器S1〜S26を用いた利用者の位置および通行方向の追従検知は省略し、大人/子供の判別結果および乗車券媒体の正否判定結果に基づき当該利用者の通行可否を制御する通常稼動が行なわれる。
【0038】
以上述べた少なくとも1つの実施形態の自動改札装置1によれば、複数の人間検知器S1〜S26が人間として検知していない場合は、検知器切換部35による複数の人間検知器S1〜S26の非動作状態への切換えを可能とすることで、1つの人間検知器が故障したとしても、複数の人間検知器S1〜S26を切り離すことができ、これにより通常稼動を行なうことができるようになる。よって、自動改札装置自体を止めることなく稼動できるようになり、駅係員にとって利便性が向上する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
1…自動改札装置、2…通路、3…自動改札装置本体、4…媒体投入口、5…媒体取出口、6…IC読取書込部、9…ドア、11A,11B,11C…高さ検知器、S1〜S26…人間検知器、21…主制御部、25…搬送制御部、26…搬送路、27…検知器監視部、28…ドア制御部、30…磁気読取書込制御部、31…磁気読取書込部、32…IC読取書込制御部、35…検知器切換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が提示する乗車券媒体からそれに記録されている乗車券情報を読取るとともに、利用者が通行する通路に沿って一定間隔あけて列状に設置され当該通路を通行する利用者を検知する複数の検知器の検知状態に基づき少なくとも当該利用者の位置および通行方向を追従して検知し、この検知結果および前記乗車券媒体から読取った乗車券情報に基づき当該利用者の通行可否を制御する自動改札装置において、
前記複数の検知器の出力を監視し、少なくとも2つ以上の隣り合う検知器が検知状態にあることを検知した際、前記複数の検知器を非動作状態に切換えできないように制御し、それ以外の場合は前記複数の検知器を非動作状態に切換えできるように制御する制御手段を具備した自動改札装置。
【請求項2】
利用者が提示する乗車券媒体から乗車券情報を読取り、この読取った乗車券情報に基づき当該利用者の通行可否を制御する自動改札装置において、
利用者が提示する乗車券媒体からそれに記録されている乗車券情報を読取る読取手段と、
利用者が通行する通路に沿って一定間隔あけて列状に設置され、当該通路を通行する利用者を検知する複数の検知器と、
この複数の検知器を必要に応じて非動作状態に切換える切換手段と、
前記複数の検知器の検知状態に基づき少なくとも前記通路を通行する利用者の位置および通行方向を追従して検知し、この検知結果および前記読取手段により読取った乗車券情報に基づき当該利用者の通行可否を制御する第1の制御手段と、
前記複数の検知器の出力を監視し、少なくとも2つ以上の隣り合う検知器が検知状態にあることを検知した際、前記切換手段により前記複数の検知器を非動作状態に切換えできないように制御する第2の制御手段と、
を具備した自動改札装置。
【請求項3】
前記複数の検知器は、少なくとも2つ以上の隣り合う検知器が1人の利用者を検知するように設置間隔が設定されている請求項1または請求項2記載の自動改札装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69049(P2013−69049A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206107(P2011−206107)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】