説明

自動染色システムの追跡可能性

【課題】標本搭載スライドに試薬を送達させるため開発された公知のシステムの欠点を解決した自動染色システムを提供する。
【解決手段】スライドに接続した第1識別子および試薬カートリッジに接続した第2識別子から得られる情報を自動的に表示する工程を含む方法;第1識別子および第2識別子から得られる情報に基づいて染色記録を作成する工程をさらに含む方法。さらなる方法は、試料処理システム内のスライドの位置および第1表にあるスライドと接続した第1識別子から得られる情報を表示する工程、および試料処理システム内の試薬カートリッジの位置ならびに第2表にある試薬カートリッジと接続した第2識別子から得られる情報を表示する工程を含む。その後、第1表は第2表と共に配列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動染色システム、特に生物標本を処理するための自動染色システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な状況では、診断を目的として生物標本の処理および試験が必要である。一般的に言えば、病理学者および他の診断医は患者から試料を採取し、研究し、顕微鏡検査および他の装置を利用して試料を細胞レベルで評価する。典型的に、多数の工程は病理学および他の診断過程に関与しており、血液や組織などの生物試料の採取、試料の処理、顕微鏡スライドの調製、染色、検査、再試験または再染色、別の試料の採取、試料の再検査、最終的に、診断所見の提出を含む。
【0003】
組織プロセッサは、組織学的または病理学的用途のヒトまたは動物組織標本を処理するための多様なレベルの自動化により操作可能である。多様なタイプの化学試薬は組織処理の多様な段階で使用可能であり、標本搭載スライドに試薬を送達させるために多様なシステムが開発されている。公知の試薬送達システムの例としては、試薬バットに手動で注入するか、あるいは配管を介してプロセッサと接続したバルク容器を介する少量放出分注器が挙げられる。
【0004】
公知のシステムには様々な欠点がある。例えば、試薬バットに手動で注入、あるいは排出することは時間がかかり、注入の精度も必要となり、したがって組織処理システムの全体的な効率が低下する。その他の欠点としては、試薬に手動で注入および排出することは正確さに欠け、こぼれた分の清掃が必要となり、必然的に装置の稼動停止時間が発生する可能性がある。さらなる欠点としては、適切な試薬を手動で選択することは操作者の注意と正確さが必要となり、試薬を適用する際にエラーが起こる可能性が高まり、結果として試験精度および操作効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8142739号明細書
【特許文献2】米国特許第8071026号明細書
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の実施態様は例示により説明するものであり、同様の引例が類似の構成要素を示す添付図面の図で制限することにより説明されるものではない。注目すべきことは、本開示における「1つの("an"または"one")」実施態様についての複数の引例は必ずしも同
一の実施態様を意味するわけではなく、このような複数の引例は少なくとも1つを意味するということである。
【0007】
【図1】試料処理システムの実施態様の斜視図
【図2】反応ステーションを有する試料処理システムの実施態様の斜視図
【図3】(A)反応チャンバの実施態様の斜視図、(B)図3(A)の反応チャンバ の側面図
【図4】(A)試料処理システムの反応チャンバおよび試薬カートリッジの実施態様 の斜視図、(B)試料処理システムの反応チャンバおよび試薬カートリッジの実施態 様の斜視図
【図5】(A)反応チャンバの実施態様の斜視図、(B)反応チャンバの実施態様の 側面斜視図
【図6】(A)反応チャンバの実施態様の斜視図、(B)反応チャンバの実施態様の 斜視図
【図7】試薬カートリッジの実施態様の上面斜視図
【図8】図7の試薬カートリッジの底面斜視図
【図9】(A)試薬分注カプセルおよびブラケットの実施態様の斜視図、(B)図9 (A)の試薬分注カプセルおよびブラケットの斜視図
【図10】(A)操作中のカプセル押圧機構の実施態様の側断面図、(B)操作中の カプセル押圧機構の実施態様の側断面図、(C)操作中のカプセル押圧機構の実施態 様の側断面図、(D)操作中のカプセル押圧機構の実施態様の側断面図
【図11】試料処理システムの反応ステーションの実施態様の斜視図
【図12】温度修正アセンブリの実施態様の斜視図
【図13】反応ステーション全体の実施態様の斜視図
【図14】連結アセンブリの実施態様の正面斜視図
【図15】オーバーヘッド液体分注システムおよびカプセル押圧機構の実施態様の斜 視図
【図16】(A)オーバーヘッド液体分注システムの実施態様の斜視図、(B)オー バーヘッド液体分注システムの実施態様の斜視図
【図17】バルク液分注アセンブリの実施態様の平面図
【図18】液体分注システムの実施態様の平面図
【図19】バルク試薬感知アセンブリを含む試料処理システムの実施態様の回路図
【図20】自動試料処理システムの実施態様の図説
【図21】試料処理手順の実施態様のフローチャート
【図22】試料処理手順の実施態様のフローチャート
【図23】試料処理手順に関連するディスプレイの実施態様
【図24】試料処理手順に関連するディスプレイの実施態様
【図25】(A)試料処理システムの廃液排出システムの1つの実施態様の斜視図、 (B)図25(A)の廃液排出システムの側面図、(C)図25(A)の廃液排出シ ステムの後側面図
【詳細な説明】
【0008】
以下の段落において、添付図面を参照して例示により本発明を詳細に説明することとする。本明細書全体にわたって、示された好ましい実施態様および実施例は本発明に対する限定というよりむしろ例証と考えることが好ましい。さらに、本明細書で開示した実施態様の様々な態様の引例は、請求した実施態様または方法すべてが参照した態様を必ず含むことを意味するものではない。
【0009】
図1は試料処理システムの実施態様の斜視図を示す。試料処理システム100は、処理システム100の様々な部品を封入および保管するための収容部102を含む。収容部102は反応区画104および保管区画106を含む。反応区画104は、試料処理が行われる区画を明示している。カバー部材108およびドア部材110は反応区画104内の部品に接触するために使用してもよい。
【0010】
反応区画104は複数の反応ステーション112を収容できるように寸法を合わせる。反応ステーション112は、そこに搭載された反応チャンバ114への接触が容易になるように反応区画104の中におよび反応区画104から外にスライドし得る。いくつかの実施態様では、30個の反応ステーション112が反応区画104内に直線的に配置されている。他の実施態様では、反応ステーション112は反応区画104内に並列されている。例えば、反応ステーション112が30個ある場合、各列は15個の反応ステーション112から成る場合もある。30個の反応ステーション112と記述しているが、望ましいと思われる反応区画104内に配置する反応ステーション112の数は任意でよいと考えられている。
【0011】
反応ステーション112の各々では、そこに1つの反応チャンバ114が搭載されている。反応チャンバ114は、後の処理工程のためのスライドを支持するように寸法を合わせる。生物試料は処理用スライドに搭載し得る。処理中、染料または他の処理液を試料に添加する。いくつかの実施態様では、各反応ステーション112に直接取り付けた試薬カートリッジにより処理液を試料に添加してもよい。他の実施態様では、試料処理システム100は反応ステーション112の上方に液体分注カートリッジ(図示せず)を搭載するための可動搭載アセンブリ116を備え得る。液体分注カートリッジは試料に添加する試薬などの液体を含み得る。また、バルク容器118は反応ステーション112の下部に搭載し得る。バルク容器118は試薬容器、廃液容器、または望ましいと思われる他のバルク容器となり得る。バルク容器118からの試薬はさらに、処理中、試料に分注する場合もある。
【0012】
システム100はさらに、反応区画104内の温度を制御しやすくするための空気入口アセンブリ120および空気出口アセンブリ122を備え得る。反応区画104内で試料を処理すると、熱が発生する。反応区画104内での温度の上昇に伴って、反応ステーションで用いられる任意の処理液の蒸発率も同様に上昇する。また、温度上昇は試薬の安定性に悪影響を与える可能性がある。反応区画104内を望ましい温度(すなわち蒸発を速めない温度)に維持しやすくするため、空気入口アセンブリ120および空気出口アセンブリ122を使用し、反応区画104を介して空気を循環させる。この態様では、空気入口アセンブリ120は収容部102の壁の片側に沿って搭載された通気口124、および収容部102の壁の反対側に搭載された1つ以上の送風機(図示せず)を含み、外気を反応区画104に取り込むのに役立つ。空気出口アセンブリ122を収容部102の反対側の壁に搭載し、その壁を貫通して形成された空気出口送風機と結合した1つ以上の送風機126を含み、反応区画104から空気を取り込むのに役立つ。汚染物質が反応区画104に進入することを防止するために、空気入口アセンブリ120および/または空気出口アセンブリ122内にフィルタを組み込める可能性もさらに考えられる。記述したように反応区画104の中で外気を循環させることは、反応区画104内で望ましい処理温度を維持することに役立つ。
【0013】
図2は反応ステーションを有する試料処理システムの実施態様の斜視図を示す。処理システム200は反応ステーション202を含む。処理システム200内に配置した反応ステーション202の数は任意でよい。例えば1つの実施態様では、処理システム200内に30個の反応ステーション202を設置してもよい。各反応ステーション202は互いに独立していてよい。この態様では、使用者が反応ステーション202のうち所望の1つに容易に接触できるように、各反応ステーション202は個別に処理システム200の中におよび処理システム200から外にスライドし得る(例えば、図1の処理システム100の外側に部分的にスライドした1つの反応ステーション112を参照)。
【0014】
試料処理システム200の各反応ステーション202は支持部材204を含んでもよい。支持部材204は反応ステーション202の上面に搭載し得る。支持部材204は反応チャンバ206および試薬カートリッジ208を支持するように寸法を合わせ得る。上述したように、反応チャンバ206は、生物試料が搭載されたスライドを支持するように寸法を合わせる。毛細管現象(すなわち毛管作用)(スライドが反応チャンバ206に隣接している区域に液体が流入する場合など)、反応チャンバ206の入口または出口、真空パルスおよび該ポートの一方を介して取り付けられたような定量ポンプによってかけられた圧力差、ならびに重力(反応チャンバ206の上方に配置された試薬カートリッジ208から液体が流れる場合など)のうちの、1つあるいは組み合わせにより液体は反応チャンバ206に流入し得る。
【0015】
試薬カートリッジ208は、試料を載せたスライドに添加する一次試薬を含み得る。典型的に、試薬カートリッジ208は、免疫組織化学手技、染色手技、インサイツハイブリダイゼーション手技、他の組織化学手技等の潜在的には無限の多様性を有する手技に適した試薬を含み得る。試薬カートリッジ208に含有され得る一次試薬(プローブ、マーカーまたはコントロールともいう)の例としては、任意のタイプの抗体、プローブ、核酸(RNA、DNAまたはオリゴヌクレオチド)、リガンド、リガンド受容体、酵素もしくは酵素基質、または目的の用途に適した任意の他の分子が挙げられるが、これらに限定するものではない。試薬は加工しない形態で、精製、濃縮、希釈、あるいはその他の方法で調整することが可能である。1つの実施態様では、蛍光着色料、酵素、複合体(例えばビオチン、アビジン、ストレプトアビジン)、金属(銀または金粒子など)、着色料、染料、放射能でタグを付けられた分子などのシグナル分子、またはシグナル伝達分子もしくはリポータ分子などの任意の他の物質の添加。
【0016】
1種以上の二次試薬をスライドに添加しやすくするために試薬カートリッジ208をさらに使用してもよい。1つの実施態様では、より詳細に下記で述べるように、例えば液体分注カートリッジにより、二次試薬を上方から試薬カートリッジ208の滴下面および流動面へと分注する。単独で、あるいは他の二次試薬と組み合わせて、または、1種以上の一次試薬もしくはバルク試薬と組み合わせてスライド上に分注可能な二次試薬の例としては、任意のタイプの抗体、プローブ、核酸(RNA、DNAまたはオリゴヌクレオチド)、リガンド、リガンド受容体、酵素もしくは酵素基質、または目的の用途に適した任意の他の分子が挙げられるが、これらに限定するものではない。試薬は加工しない形態で、精製、濃縮、希釈、あるいはその他の方法で調整することが可能である。また、蛍光着色料、酵素、複合体(例えばビオチン、アビジン、ストレプトアビジン)、金属(銀または金粒子など)、着色料、染料、放射能でタグを付けられた分子などのシグナル分子、またはシグナル伝達分子もしくはリポータ分子などの任意の他の物質も分注してよい。
【0017】
さらなる別の実施態様では、1種以上のバルク型の試薬は反応チャンバ206に配置されたスライドに添加可能である。いくつかの実施態様では、バルク試薬は容器に保存し、液体を反応チャンバ206の注入ポート内へ導く多岐管システムを介して反応チャンバ206に分注する。また、バルク試薬はオーバーヘッドバルク試薬分注器から反応チャンバ206へ、そこに取り付けられた試薬カートリッジ208を経由して分注可能である。別のさらなる実施態様では、バルク試薬は、反応ステーション202に組み込まれたポンプを含む配管を経由して、試薬貯槽210から反応チャンバ206へ分注可能である。単独で、あるいは他のバルク試薬と組み合わせて、または、1種以上の一次試薬もしくは二次試薬と組み合わせて分注可能なバルク試薬の例としては以下のものが挙げられるがこれらに限定するものではない:トリス緩衝生理食塩水(TBS)、蒸留水または脱蝋液。
【0018】
図3(A)は反応チャンバの1つの実施態様の斜視図を示す。反応チャンバ300は試料および/またはスライドを保持するように寸法合わせをしたトレイであり得る。本明細書で使用しているように、用語、反応チャンバ、試料保持トレイおよびスライド保持トレイは反応チャンバ300として同じ意味で使っている。説明した実施態様では、反応チャンバ300は、顕微鏡スライド保持トレイになるように構築しているが、当然のことながら、反応チャンバ300はそれほど限定的でもなく、任意の試料または試料容器を保持するように構築し得る。実施態様の側面にしたがって、反応チャンバ300は、組織試料などの基質を処理する際に使用し得るスライド配置および保持システムとして機能する。
【0019】
1つの実施態様では、反応チャンバ300は何度でも使用可能である。他の実施態様では、反応チャンバ300はディスポーザブルでもよい。反応チャンバ300は、スライドを支持するために十分な構造強度およびプロセスニュートラル特性を有する材料から形成され、試薬および使用中の温度を維持し、それらに適合することが可能である。典型的に、1つの実施態様では、反応チャンバ300は、下記で詳細に述べる毛管作用を促進する親水性材料から成り、そこに位置するガラススライドによるかき傷に耐えるのに十分な硬度を有する。1つの実施態様では、反応チャンバ300は金属材料製であってよい。例えば、反応チャンバ300は銀、スチールまたはアルミニウム製であってよい。反応チャンバ300に抗菌特性を与えるために銀製材料を使用してもよい。アルミニウム製反応チャンバ300の場合、親水性表面を作り出すためにアルミニウムの表面を陽極酸化してもよい。親水性表面はスライドと反応チャンバ300間の液体の毛管作用を容易にする。いくつかの実施態様では、陽極酸化した表面は厚く、厚さは例えば10μm以上、さらに約1
0μm〜約35μm、例えば約30μmであり得る。表面を親水性にする以外に、陽極酸化
した表面は反応チャンバ300の耐腐食性および耐摩耗性を促進する可能性があると認められる。
【0020】
反応チャンバ300の他の例示的な材料としては、プラスチックまたはセルロース系(すなわちセルロースベースか、あるいはそれを含む)材料などの熱転写可能ポリマー材料、セラミック、Teflon(登録商標)、ガラス等が挙げられる。典型的に、反応チャンバ300はDELRIN(デラウエア州、ウィルミントン、E.I.Dupont de Nemours and Co.の登録
商標)などのポリオキシメチレン熱可塑性樹脂製であってもよい。反応チャンバ300は、反応チャンバ300の望ましい特徴を得るために適した射出成形、機械加工または任意の他の製造プロセスなど、当技術分野で公知の任意のプロセスで形成することが可能である。また、当然のことながら、反応チャンバ300は上述の1種以上から構成可能である。
【0021】
反応チャンバ300は人間または機械が読み取れる識別子を任意に含むことが可能である。代表的な識別子は視覚的に読み取り可能な識別子、磁気的に読み取り可能な識別子、触覚的に読み取り可能な識別子等が挙げられるが、これらに限定するものではない。いくつかの実施態様では、識別子は、反応チャンバ300に配置されたスライドと接触して使用する試薬、例えば一次試薬を識別する。別のさらなる実施態様では、識別子は反応チャンバ300内の試料、または該試料に対して行う処理プロトコルを識別する。
【0022】
反応チャンバ300の具体的な特徴には圧盤302が挙げられる。圧盤302は、そこにスライド322を支持するように寸法合わせをした実質的に平らな面となり得る。スライド322の長さ寸法は75ミリメートル(mm)、幅寸法は25mm、厚さは1mmであり得る。スライド322での試料の処理はスライド322と圧盤302間で行う場合もある。この態様では、標本を載せたスライド322の表面が圧盤302に対向するように、スライド322は圧盤302に配置してもよい。圧盤302は、スライドの処理領域(艶消しになっていないスライド領域)全体が圧盤302に配置されるように寸法を合わせ得る。試料がスライドの処理領域全体を占めるこの態様では、試料全体が処理され得る。上方から圧盤302へ添加された試薬を受け取らせるために、圧盤302は一端に滴下面330を備え得る。圧盤302に配置されたスライド322の把持を容易にするために圧盤302の反対側の端部はカットアウト部332を備え得る。
【0023】
液体入口316は、液体を下方から(例えばバルク試薬貯槽から)圧盤302へ添加するために、長さ寸法(長尺)に沿って圧盤302を貫通して形成し得る。液体の圧盤302からの除去を容易にするため、圧盤302を貫通させて液体出口312、314をさらに形成し得る。通路を含む多岐管および配管、反応チャンバ300の下に配置されたポンプおよびバルブを経由して、液体入口316または液体出口312、314を使用して、液体を圧盤302に供給し、あるいはそこから除去することも可能である。
【0024】
圧盤302に添加された処理液を保持しやすくするために、圧盤302の一部の周囲に壁304を形成してもよい。図3(A)に示すとおり、壁304は、圧盤302の両端および圧盤302の長さ寸法(長尺)を形成する片側の周囲に形成される。しかし壁304は、処理液の保持を容易にするために必要な圧盤302の一部であればどこでも、周囲に形成し得ると考えられる。壁304は圧盤302や隣接する壁304の隅の内側に貯留する液体を保持するのに十分な高さを有し得る。典型的に、壁304は、反応チャンバ300内に約25マイクロリットル(μl)〜約200μl、典型的には約25μl〜約35μlを保持するのに十分な高さを持たなければならない。この態様では、壁304は約4mm〜約7mm、例えば4.8mm〜6.5mmの高さを有し得る。
【0025】
壁304は、試薬滴下面330を有する圧盤302の一端に沿って湾曲部328を形成する場合もある。湾曲部328では、圧盤302の端部に沿って、スライド322と圧盤302間で試薬滴下面330に液体を分注しやすくするために圧盤302の端部に沿って角度334を規定している。湾曲部328の角度334は液体をスライド322に向けることに役立つだけでなく、さらに、液体がスライド322の頂部を超えて流れ出ないように圧盤302の試薬滴下面330に分注された液体の流動を遅くするために役立つ。典型的に、角度334は約15度〜約35度、好ましくは約20度〜約30度であり得る。反応チャンバ300がスライド(例えば顕微鏡スライド)を含むように構成される1つの実施態様では、滴下面330の長さ(l1)は10.5mm程度、幅(w1)は13mm、および幅(w2)は7.8mmである。
【0026】
壁304は、スライド322が壁304と離れるように突起部320も含んでよい。スライド322が壁304と離して間隔をあけることは、スライド322と圧盤302間への液体の導入、およびそこからの排出に役立つ。特に、液体導入位置(例えば試薬滴下面330)の近傍でスライド322の縁部が壁304の一部と同一平面になると、液体はスライド322の縁部に沿って自由に流動できなくなり、スライド322の縁部の下方で液体が毛管作用により吸い込まれなくなる。この態様では、突起部320は、スライド322が壁304と約1mm〜約2mm、例えば1.5mm離れるように間隔をあけるように寸法を合わせ得る。
【0027】
スライド322と圧盤302間で液体が移動しやすいように、反応チャンバ300はスペーサ粒306、308ならびにスペーサバー310をさらに含んでもよい。スペーサ粒306、308ならびにスペーサバー310は圧盤302の表面から伸長し、圧盤302とスライド322間に間隙を作る。間隙により、液体(例えば圧盤302に分注された試薬)が毛管作用によりスライド322と圧盤302間に吸い込まれる。当然のことながら、間隙が小さいほど毛管作用が大きい。実施態様によっては、スペーサ粒306、308の高さがスペーサバー310の高さと異なる。高さが異なれば、スライド322は、圧盤302と角度を持って支持されるようになる。したがって、圧盤302に最も近いスライド322の端部近傍の毛管作用が他の場所より強い。
【0028】
典型的に、液体が反応チャンバ300の上方から添加されるスライド322の端部近傍の間隙が大きくなるように、スペーサ粒306、308の高さはスペーサバー310の高さより高くしてもよい。この態様では、滴下面330で大量の液体が圧盤302に添加され、初めに毛管作用によりスライドと圧盤302間に吸い込まれ得る。スライド322の他端方向(滴下面330と反対側)に対する間隙の高さが低くなると、液体がスライド322の全面に行きわたるように吸い込まれやすくなる。この間隙はさらに、圧盤302の液体入口316を経由して導入された液体が、スライド322の全面に行きわたるように吸い込まれやすくする。他の実施態様では、スペーサ粒306、308およびスペーサバー310の高さは同一であってもよい。高さが望ましい毛管作用によって調製し得ることを留意されたい。例えば、毛細管力を大きくしたい場合、毛細管力を強化するためにスペーサ粒306、308および/またはスペーサバー310の高さを低くしてもよい。
【0029】
液体入口316はスライド322と圧盤302間に直接、液体を導入するために使用し得る。液体出口312、314はスライド322と圧盤302間の液体を排出するために使用し得る。いくつかの実施態様では、液体出口312、314および液体入口316は圧盤302の長さ寸法(長尺)の片側に沿って配置してある。液体入口316は液体出口312、314間にあってもよい。液体出口312、314および液体入口316の配置は、スライド322と圧盤302間への液体の分注を制御するために重要である。典型的に、スライド322の縁部から空気が吸引されないように、出口312、314は圧盤302の個々の縁部から十分に離れていることが好ましい。また、適量の液体が吸引されるように、出口312、314の少なくとも1つが高表面張力領域内(例えばスペーサバー310近傍)にあることが好ましい。また、実質的に同じ速度で液体が圧盤302の長さ寸法(長尺)にわたり吸い込まれるように出口312、314を圧盤302の反対側の端部に配置することが好ましい。これは、例えば圧盤302の中間に配置された単一の出口を経由して液体が除去される場合に生じる漏斗効果との比較である。スライドおよび圧盤302の大部分の水分が抜けきってしまうことから、単一出口に向けて液体を一箇所に集めることは望ましくない。1つの液体入口316および2つの液体出口312、314を図3(A)に示しているが、圧盤302を貫通して形成される出口および入口の数は、例えば所望の液体分散度および/または圧盤302の寸法に応じて任意でよいと考えられる。スライド322および圧盤302間の液体分散度に関しては、図6(A)および図6(B)を参照して、より詳細に述べることとする。
【0030】
いくつかの実施態様では、反応チャンバ300はケーシング318内に配置し得る。ケーシング318は圧盤302および/または壁304の底部に取り付けられるように寸法を合わせ得る。基礎となる支持部材(例えば図4(A)に示す支持部材404)への反応チャンバ300の封着を促進し、試薬が反応チャンバ300の下にもれることを防止するために、ケーシング318を使用してもよい。ケーシング318は反応チャンバ300と同様の、または異なる材料から製造されていてもよい。典型的に、いくつかの実施態様では、ケーシング318は反応チャンバ300と支持部材(例えば図4(A)に示す支持部材404)間を封着するのに適したシリコン材料または任意の他の類似した材料から製造されていてもよい。
【0031】
図3(B)は図3(A)の反応チャンバの側面図を示す。図3(B)から分かるように、スペーサ粒308の高さh1はスペーサバー310の高さh2より高くてもよい。この態様では、スライド322は圧盤302と角度を持って配置される。したがってスライド322と圧盤302間の間隙324の一端は他方の端部より大きい。いくつかの実施態様では、間隙324は、液体326が導入されるスライド322端部と圧盤302間(例えば試薬滴下面330近傍)でやや大きくなる。典型的に、1つの実施態様では、スペーサ粒308の高さh1は約0.23ミリメートル(mm)、スペーサバー310の高さh2は約0.18mmであり得る。さらに別の実施態様では、高さh1は約0.15mm〜約0.3mmであり、高さh2は約0.1mm〜約0.25mmであり得る。
【0032】
スペーサ粒308はスライド322と圧盤302間に間隙を作るのに十分な任意の形状および寸法を有し得る。典型的に、スペーサ粒308の形状は実質的に正方形となり得る。スペーサ粒306は実質的に類似の形状を有し得る。
【0033】
スペーサバー310は、スライド322と圧盤302間に間隙を作り、さらに液体がスペーサバー310を通過して流出することを防止するのに十分な任意の形状および寸法を有し得る。1つの実施態様では、スペーサバー310は幅wの細長い長方形であり得る。スライド322と圧盤302間の液体がスペーサバー310を通過して流出することを防止するのに十分な長さおよび幅wを、スペーサバー310が有していることは重要である。この態様では、スペーサバー310は圧盤302の幅と等しい長さを有する。スペーサバー310の幅wは約1mm〜約3mm、好ましくは約2mmであり得る。液体の流出を防止する以外に、スペーサバー310は、スライド322の縁部に気泡を導くことにより、圧盤302とスライド322間の気泡を取り除くことに役立つ。図5(A)および図5(B)を参照して、より詳細に下記で述べるように、圧盤302が垂直および水平斜面になるような角度で圧盤302を配置し得る。この態様では、スペーサバー310の一端にある圧盤302の片側はスペーサバー310の反対側の端部にある圧盤302の側より高くしてもよい。圧盤302とスライド322間に捕捉された気泡は圧盤302の高い側に向かって上昇することが好ましい。スペーサバー310はあらゆる気泡を高い側へ導き、スライド322と圧盤302との間から送り出すことに役立ち得る。
【0034】
図4(A)および図4(B)は試料処理システムの反応チャンバおよび試薬カートリッジの斜視図を示す。試料処理システム400は反応チャンバ406および試薬カートリッジ408を支持するための支持部材404を含む。支持部材404はシステム400の反応ステーションに固定して取り付けられ、下部410および上部412を含む。下部410は、下記で、より詳細に述べるように水平および垂直角度で反応チャンバ406を支持するように寸法を合わせる。反応チャンバ406は下部410に固定で搭載してもよい。上部412は、反応チャンバ406の試薬滴下面の上方で試薬カートリッジ408を支持するように寸法を合わせる。使用者の要求に応じて試薬カートリッジ408を除去および/または置き換えられるように、試薬カートリッジ408は上部412に着脱可能に取り付けてもよい。試薬カートリッジ408内に含まれるか、あるいは試薬カートリッジ408に添加されている試薬は、試薬カートリッジ408を経由して反応チャンバ406上に流す場合もある。
【0035】
いくつかの実施態様では、下部410および上部412は、実質的にZ型の輪郭をとる一体化して形成された部品となり得る。支持部材404は、反応チャンバ406および試薬カートリッジ408を支持するのに十分な強度を有し、反応チャンバ406内で処理する任意の材料から形成してもよい。典型的に、支持部材404は金属またはプラスチック材料製であり得る。支持部材404は、支持部材404の望ましい特徴を得るために適した射出成形、機械加工または任意の他の製造プロセスなど、当技術分野で公知の任意のプロセスで形成することが可能である。
【0036】
反応チャンバ406は、図3(A)を参照して述べた反応チャンバ300と実質的に同一であると言える。スライド422は図4(A)に示した反応チャンバ406に配置し得る。操作中、試薬は試薬カートリッジ408から反応チャンバ406の試薬滴下面(図3(A)に示す試薬滴下面330を参照)に分注する。毛管作用により試薬がスライド422と圧盤402間で流れる。
【0037】
図4(B)は、図4(A)を参照して事前に述べた試薬カートリッジ408のさらなる詳細を示す。試薬カートリッジ408はスライド422に添加する試薬または他の処理液を含むカートリッジであり得る。この態様では、試薬カートリッジ408は試薬収納部414を含んでもよい。試薬収納部414は、そこに入る試薬(単数または複数)を反応チャンバ406内に導くように、必要に応じて任意の形状、深さまたは配向のものでもよい。1つの実施態様では、試薬は、試薬収納部414内に挿入されたカプセル416内に含まれる。カプセル416が円筒形状である場合、試薬収納部414はさらに円筒形状でもよい。試薬収納部414は、試薬カートリッジ408の底から伸張している出口流路418と液体連通するように開口底部を含む。試薬収納部414内のカプセル416が穿孔されると、カプセル416内の試薬(例えば液体試薬)が試薬収納部414内に放出され、出口流路418を通って、反応チャンバ406の滴下面へと下がり、そこで圧盤402へと流れる。
【0038】
試薬カートリッジ408はさらに、オーバーヘッド液体分注カートリッジから分注された液体を試薬チャンバ406の滴下面に導くのに役立ち得る。この態様では、試薬カートリッジ408は出口流路418と液体連通している流路420を備え得る。流路420は試薬カートリッジ408の頂面から、試薬カートリッジ408を経由して、出口流路418へ伸長する。オーバーヘッド液体分注器から流路420内に分注された液体(例えば試薬)は試薬カートリッジ408を経由し、出口流路418を出て、反応チャンバ406上へ移動する。流路420も試薬収納部414も出口流路418と液体連通していることから、その各々から分注された液体は、反応チャンバ406への分注に先立って出口流路418内で混合する。この態様では、出口流路418は、試薬カートリッジ408から分注された2種以上の液体を混合するための混合チャンバとして機能する。
【0039】
いくつかの実施態様では、2種以上の液体がオーバーヘッド液体分注器から流路420内に分注し得る。この態様では、流路420は2種以上の液体を受け入れるのに十分な幅(wl)を有し得る。典型的に、流路420は約10mm〜約15mm、好ましくは約12.5mmの幅を有し得る。また、流路420の底部の形状は、流路420に分注された液体の飛びはねを最小限にする無反射曲線を有し得る。
【0040】
カプセル416はブラケット424により試薬カートリッジ408に取り付けてもよい。ブラケット424はカプセル416に取り付けられるストラップなどの延長コネクタ426を備え得る。1つの実施態様では、カプセル416はブラケット424のコネクタ426に着脱可能に取り付けられている。他の実施態様では、カプセル416はコネクタ426に固定して取り付けられている。試薬カートリッジ408はブラケット424を受け入れるように寸法合わせをした凹部430を備え得る。また、溝432は凹部430と試薬収納部414間で試薬カートリッジ408内に形成してもよい。カプセル416がコネクタ426の反作用により試薬収納部414内に固定で配列されるようにブラケット424を試薬カートリッジ408に取り付けるときは、コネクタ426は溝432内に挿入してもよい。
【0041】
識別子428は図4(B)に示すブラケット424に設置し得る。識別子428は図9(A)を参照して、より詳細に下記で述べることとする。試薬カートリッジ408およびカプセル416は図7〜9を参照して、より詳細に下記で述べることとする。
【0042】
試薬カートリッジ408は反応チャンバ406と同様の材料、あるいは異なる材料から製造されていてもよい。典型的に、試薬カートリッジ408は、望ましい特徴を得るために適した射出成形、機械加工または任意の他の製造プロセスなど、当技術分野で公知の任意のプロセスで形成することが可能である。
【0043】
図5(A)および図5(B)は反応チャンバの1つの実施態様の水平および垂直角度から図示した斜視図である。スライド522と圧盤502間での液体(例えば試薬)の移動を容易にするために、反応チャンバ506は水平角度534および垂直角度536に配置する。図5(A)および図5(B)は、支持部材504の下部510に配置した反応チャンバ506を示す。下部510は、水平角度534および垂直角度536で反応チャンバ506を受け入れ、位置づけるように寸法を合わせる。水平角度534は、反応チャンバ506の長さを規定する反応チャンバ506の縁部の、水平面に対する角度を意味する。垂直角度536は、圧盤502を規定する反応チャンバ506表面の、水平面に対する角度を意味する。水平角度534は図5(A)に、垂直角度536は図5(B)に示す。水平角度534は約5度〜約15度、例えば6度〜8度、他の例では、約7度であり得る。垂直角度536は約15度〜約45度、例えば20度〜30度、別の例では約29度であり得る。
【0044】
前述したとおり、反応チャンバ506の水平角度534および垂直角度536は圧盤502とスライド522間での液体分散度または移動を管理しやすくする。特に、垂直角度536により、長さを形成する圧盤502の縁部538および隣接の試薬滴下面530が圧盤502の反対側の縁部540より高い所に配置される。水平角度534により、試薬滴下面530に隣接した圧盤の端部542が圧盤502の反対側の端部544より低い所に配置される。圧盤502のコーナー546が、対角線上で反対側にあるコーナー548より高いことから、スライド522と圧盤502間で捕捉された泡はスライド522の高い方の縁部/端部に向かって上昇させ、逃がすことが可能である。また、液体(例えば試薬)が試薬滴下面530に分注されると、液体は圧盤502のコーナー548に向かって下方に重力に引かれる。液体がコーナー548に向かって流れると、圧盤の端部542および隣接のスライド522端部に沿って流れ、毛管作用によりスライド522と圧盤502との間に吸い込まれる。液体がスライド522と圧盤502との間に入ると、圧盤502の最も上方のコーナー546の方向に、スライド522の長さ寸法(長尺)に沿って毛管作用が重力に逆らって液体をさらに吸い込む。
【0045】
圧盤502の水平角度534はまた、液体がスライド522の底縁部に沿って貯留することを防止することにより、反応チャンバ506の排出を容易にする。あるいは、液体が出口を通って除去されるように、液体出口が配置される圧盤502の底部コーナー548へと液体が吸い込まれる。また、液体がいくらかでもあふれると底部コーナー548に沿って溜まり、液体がスライド522頂部から流出することが防止される。
【0046】
図6(A)および図6(B)は反応チャンバの1つの実施態様の斜視図を示す。反応チャンバ600は図3(A)を参照して説明した反応チャンバ300と実質的に同一であると言える。反応チャンバ600は、そこに搭載されたスライド622を支持するように寸法合わせをした圧盤602を備え得る。圧盤602は上方から圧盤602に添加された試薬を受け取るための一端に試薬滴下面630を備え得る。圧盤602の反対側の端部は圧盤602に配置されたスライド622の把持を容易にするカットアウト部632を備え得る。
【0047】
圧盤602に設置された試薬を保持するために、圧盤602の一部の周囲に壁604を形成してもよい。壁604は圧盤602および壁604に形成されたコーナー内に貯留する可能性がある液体を保持するのに十分な高さを有し得る。壁604は、圧盤602の端部に沿って角度634を有する湾曲部628を形成する場合もある。壁604からスライド622を離しやすくするために、壁604は突起部620も含んでよい。
【0048】
スペーサ粒606および608ならびにスペーサバー610が圧盤602の表面から伸長し、圧盤602とスライド622間に間隙を作ることも可能である。液体出口612、614および液体入口616は圧盤602を貫通して形成し得る。
【0049】
図6(A)は、反応チャンバ600の上方に配置された液体分注カートリッジから液体が導入されたときの、スライド622と圧盤602間での液体の流路を示す。特に、液体(例えば試薬)は試薬滴下面630に分注し得る。反応チャンバ300の水平および垂直角度、ならびに前述した壁604の湾曲部628により、液体は壁604の湾曲部628およびスライド622の縁部に沿った流路640を通過する。壁604の湾曲部628は、試薬滴下面630からスライド622へと流れる液体の流動を減速させるスロープ(角度634)を備えている。特に、湾曲部628が存在しない場合、液体は直接、試薬滴下面630からスライド622の縁部へと下に流れてしまう。液体の一部が圧盤602の反対側のスライド622の片側から流出する速度で、このような大量の液体が流れるのである。壁604の湾曲部628の角度634ならびに反応チャンバ600の水平および垂直角度により、液体の下降を減速し、スライド622の縁部に沿って広げ、このようなオーバーフローが防止する。
【0050】
液体の一部は壁604に沿ってスライド622の底部コーナーに向かって進み続けるが、一部の液体は毛管作用によりスライド622と圧盤602間で速やかに吸引される。壁604とスライド622の底部コーナーとの間で貯留する液体も毛管作用によりスライド622と圧盤602間で吸引される。スライド622と圧盤602間で速やかに吸引される液体は流路640aに沿って流れ、一方、初めにスライド622のコーナーに貯留する液体は流路640bを通過する。流路640aおよび640bは最終的に合流し、スライド622の反対側の端部に向かってスライド622の長さ寸法(長尺)にわたる単一の波面642を形成する。2か所の異なる位置にあるスライド622と圧盤602間に液体を導くと、スライド622の全長を横断して液体がスライド622の実質幅に行きわたることになる。この態様では、液体の波面642が実質的にスライド622の全長を横断すらしているので、最大限に液体が行きわたる。
【0051】
図6(B)は、液体入口616を経由して液体が導入された際の、スライド622と圧盤602間での液体の流路を示す。スペーサバー610と反応チャンバ600の反対側の端部との間の距離に応じて液体入口616を中心から外れて配置する。このように液体入口616を配置すると、液体入口616を経由して導入された液体がスライド622を横断する速度、液体の到達範囲、ならびにスライド622と圧盤602間に捕捉された気泡の量の相互間で均衡が望ましいものとなる。特に、分かっていることは、スペーサバー610からさらに離して(例えば20mm)配置した入口を経由して液体が導入されると、液体は低速でスライド622を横断し、多くの気泡がスライド622と圧盤602間で捕捉されたまま残り、その後そこに、スペーサバー610のやや近くに(例えば5mm)配置した入口を経由して液体が導入される。液体が低速で導入されると(例えばここでは、入口616はスペーサバー610からさらに離している)、スライドを横断する波面がより均等になり、よってスライド到達範囲が向上する。入口がスペーサバー610のさらに近傍に配置されると、液体は高速で流れ、気泡は減少するが、液体はスペーサバー610から満ちていき、望ましくない角度でスライド622を横断して移動し続ける。
【0052】
図6(B)に示したように、中心から外れて(例えばスペーサバー610から15mm〜約20mm外れて)配置した入口616を経由して液体が導入されると、液体はスライド622の幅と交差する垂直方向で流路644を通過する。流路644は最適なスライド到達範囲を可能にする実質的に均等な波面642を有する。
【0053】
図7は試薬カートリッジの実施態様の上面斜視図を示す。試薬カートリッジ700は図4(B)を参照して述べた試薬カートリッジ408と実質的に同一であるが、例外的に、この実施態様では、試薬収納部714の特徴がさらに明確に理解できるように試薬カプセルを除外している。この態様では、試薬カートリッジ700は、図4(A)を参照して述べたものなど、支持部材に取り付けている収容部702を含む。収容部702は試薬収納部714、流路720および凹部730を含む。試薬収納部714および流路720は合流して出口流路718を形成する。
【0054】
上述したように、凹部730は、試薬カプセルに接続したブラケット(図4(B)のブラケット424参照)を受け入れるように寸法を合わせる。図7は、ブラケットの下側から伸長しているブラケットアーム(図9(A)のアーム922、924参照)を受け入れるように寸法合わせをした溝穴734、736を有する凹部730を示す。ブラケットを凹部730上に配置および保持し、同様に試薬カプセルを試薬収納部714内に配置および保持するために、ブラケットアームは溝穴734、736内に挿入する。試薬収納部714は試薬収納部714内に形成された凸部738を含み、そこに配置された試薬カプセルを支持する。図7から分かるように、カプセルから分注された試薬が試薬収納部714を経由して出口流路718へ移動することができるように、凸部738は試薬収納部714の壁から伸長するが、収納部714の開口には接近しない。
【0055】
収容部702はさらに、凹部730と試薬収容部714間に伸長する溝732を画定する。溝732は、ブラケットを前述した試薬カプセルに接続するコネクタを受け取るように寸法を合わせる。ブラケットを凹部730内に、コネクタを溝732内に配置すると、試薬カプセルが収納部714内に容易に配列できるようになる。
【0056】
図8は図7の試薬カートリッジの底面斜視図を示す。この図から、つまみ840、842が収容部702からそれぞれ溝穴734、736の下方へ伸長していることが分かる。つまみ840、842は支持部材の上部(図4(A)の支持部材404上部412参照)に試薬カートリッジ700を配置し、保持するように寸法を合わせる。この態様では、支持部材は、つまみ840、842を着脱可能に挿入できる溝穴を備え得る。試薬カートリッジを支持部材から遠ざかる方向に引くことにより、つまみ840、842、および同様に試薬カートリッジ700が上部から離れる。
【0057】
溝穴734、736は図9(B)に示したブラケットの底部側から伸長するアームを受け取るように寸法を合わせ得る。この態様では、溝穴734、736はブラケットを試薬カートリッジ700に固定することに役立つ。ブラケットを収容部702から遠ざかる方向に引くことにより、ブラケットのアームは溝穴734、736から離れ得る。あるいは、ブラケットを溝穴734、736から開放できるように、ブラケットを溝穴734、736内にスナップ固定してもよい。
【0058】
試薬収納部714は試薬収納部流路846を介して出口流路718に接続する。試薬収納部流路846は傾斜面を備え、これに沿って試薬が、例えば試薬収納部714内に配置されたカプセルから出口流路718に向かう方向に移動可能となる。試薬収納部流路846は流路720と合流する。
【0059】
流路720は第1傾斜部848および第2傾斜部850を含む。第1傾斜部848は水平に対して約30度傾斜している。第2傾斜部850は、直角の第1傾斜部から試薬収納部流路846に向かって伸長し、さらに約30度傾斜している。複数の流路に沿って移動する液体が互いに合流し、下方にある反応チャンバへの分注に先立って混合されるように、流路720および試薬収納部流路846の寸法を選択する。この態様では、複数の液体をまとめて混合し、出口流路718の出口844から分注し得る。また、好ましくは、試薬カートリッジ700の多様な流路(例えば収容部流路846、流路720および出口流路718)は、流路を移動する液体の捕捉を阻害し、液体を流路内に分注するときの飛び跳ねを最小限にする、管状かつ円形寸法を有する。
【0060】
図9(A)は試薬分注カプセルおよびブラケットの実施態様の斜視図を示す。カプセル900は、中に試薬を保持するように寸法合わせをした容器902を含む。シール930は試薬を保持する容器902の開口全体にわたって配置し得る。カプセル900の内部にはプランジャ904がある。プランジャ904は、容器902の閉鎖端に取り付けられた一端と、容器902の開口に向かって伸長する反対側の端部とを有する細長い構造であり得る。容器902の開口に配置されたプランジャ904の端部は容器902の開口全体にわたって形成されたシール930を穿孔するために適合してもよい。典型的に、プランジャ904の端部は、該端部から伸長する1つ以上のスパイクを有し得る。操作中、容器902の閉鎖端に力が加えられると、容器902をつぶし、シール930の方向にプランジャ904を押すことになる。プランジャ904はシール930に接触し、穿孔することで、容器902の端部が開き、そこに入っていた試薬の放出が可能となる。
【0061】
前述したとおり、試薬カプセル900はコネクタ906によりブラケット910に取り付け得る。この態様では、コネクタ906はブラケット910に形成された受容溝穴916内に密着するアタッチメント端部908を有し得る。ブラケット910は互いに直角を形成する頂部側912および背面側914を有し得る。この態様では、ブラケット910が試薬カートリッジ(例えば図7の試薬カートリッジ700)に取り付けられると、頂部側912は試薬カートリッジの頂部側に沿って形成された凹部(例えば図7の凹部730)内に配置される。ブラケット910の背面側914は試薬カートリッジの背面側に重なる。
【0062】
識別子918、920はブラケット910上に配置し得る。識別子918、920は無線識別(RFID)タグ、形状識別子、色識別子、数量または単語、他の光符号、バーコード等に提供されるような機械認識可能なコードを含み得る。識別子918、920は例えば、カプセル902および/または処理プロトコルを識別するために使用してもよい。またさらに、1つ以上の識別子918、920は患者情報および既往歴、スライド上の生物試料(単数または複数)に関する情報、生物試料の到着時間および発送時間、試料に施行した試験、確定された診断等を含み得る。識別子918、920は同一または異なる情報を含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施態様では、識別子をシステムの別の製品に取り付けられるように、1つ以上の識別子918、920は着脱可能となり得る。例えば、識別子918には、カプセル902内の試薬および/または処理プロトコルを識別する情報が含まれてもよい。識別子920は同様の情報を含んでいてもよい。カプセル902の内容物(例えば試薬)を使用するスライドの処理に先立って、識別子918はブラケット910から取り外し、スライド上に配置してもよい。あるいは、識別子918は処理後にスライド上に配置可能である。その後、試薬および/またはスライド上で実行したプロセスはスライド上の識別子918から容易に決定できる。このように識別子を移し得る性能は、処理および識別の際のエラー防止に役立つ。
【0064】
図9(B)は図9(A)の試薬分注カプセルおよびブラケットの斜視図を示す。この図から、ブラケット910の底面から伸長するブラケットアーム922、924が分かる。ブラケット910を試薬カートリッジ(例えば図7の試薬カートリッジ700)の凹部(例えば図7の凹部730)内に配置すると、ブラケットアーム922、924が試薬カートリッジの凹部に形成された溝穴(例えば図7の溝穴734、736)内に密着し、ブラケット910、および同様にカプセル900を定位置に保持する。ブラケットアーム922、924はそれぞれ溝穴734、736(図8参照)を形成する試薬カートリッジの壁を捉え、ブラケット910を定位置に係止する。この態様では、ブラケットアーム922、924は試薬カートリッジ700の溝穴734、736に相補的な任意の寸法または範囲を有し得る。
【0065】
図10(A)〜図10(D)は操作中のカプセル押圧機構の側断面図を示す。図10(A)は、下方にある試薬カプセル1024と接触しないように上昇位置にあるカプセル押圧機構1000を示す。カプセル押圧機構1000は押圧機構1000の部品を支持するための収容部1002を含む。押圧機構1000の部品は、一端に配置されたヘッド部材1006を有するピストン1004を含み得る。バネ部材1008はさらにピストン1004の反対側の端部の周囲に配置し、上昇位置のピストン1004を付勢し得る。
【0066】
クランクシャフト1010はピストン1004の垂直移動を操作するためにピストン1004に取り付け得る。クランクシャフト1010は一端でピストン1004に、反対側の端部でギア1012に回動可能に取り付け得る。ギア1012はスライドアーム1014の水平移動によって回転し得る。スライドアーム1014は片側に並んでいる歯を含み、それらはギア1012の歯と相補的である。スライドアーム1014が水平移動すると、スライドアーム1014の歯はギア1012の歯と係合し、時計回り、あるいは反時計回りにギア1012を回転させる。次いでギア1012の回転により、ピストン1004に取り付けられたクランクシャフト1010の端部が垂直に移動する。クランクシャフト1010の端部が上方へ移動すると、ピストン1004は上昇し、クランクシャフト1010が下方へ移動すると、ピストン1004は下降する。スライドアーム1014の水平移動はアクチュエータ1016によって操作してもよい。アクチュエータ1016はスライドアーム1014の水平移動を操作できる作動機序であればどのようなタイプでもよい。典型的に、アクチュエータ1016はモータと、スライドアーム1014の反対側に位置したギアと係合し得るギアとを含むユニットであってもよい。
【0067】
試薬カートリッジ1018はカプセル押圧機構1000の下方に配置し得る。試薬カートリッジ1018は図4(B)を参照して述べた試薬カートリッジ408と実質的に同一であると言える。この態様では、試薬カートリッジ1018は試薬カプセル1024を保持するための試薬収納部1022を含む。試薬カートリッジ1018はさらに、流路1020を含む。試薬カプセル1024は、一端がシール1026で封止された容器1030を含む。シール1026は試薬カプセル1024内に内容物を放出するプランジャ1028によって穿孔することが可能なシールであればどのようなタイプでもよい。典型的に、シール1026は金属箔またはプラスチック材料製の熱性シールであり得る。
【0068】
いくつかの実施態様では、シール1026の遮断および試薬カプセル1024からの試薬の放出は図10(B)、図10(C)および図10(D)に示した2段階プロセスにより達成する。特に操作中、押圧機構1000は試薬カプセル1024に向かう方向で垂直にピストン1004を操作する。ピストン1004のヘッド1006は試薬カプセル1024を押圧し、カプセル1024をつぶし、図10(B)に示したシール1026を介してプランジャ1028を操作する。シール1026が破られ、ピストン1004の垂直移動が逆行し、図10(C)に示すようにピストン1004が上昇するように、ピストン1004の1往復長を調節する。最初の下方へのピストンストロークでは、試薬はカプセル1024から少量のみ放出される。ピストン1004が上昇すると、少量の空気がカプセル1024に入る。その後、ピストン1004の下方への垂直移動が再開し、ピストン1004のヘッド1006により完全にカプセル1024がつぶされ、図10(D)に示すようにカプセル1024内に保持された内容物すべてが放出される。
【0069】
シールが破られ、ピストン1004の1ストロークによりカプセル1024の内容物すべてが放出されると、カプセル1024内に保持された試薬の一部がカプセル1024から飛びはね、試薬の一部が損失してしまうことは分かっていた。シール1026を穿孔し、いくらかの空気をカプセル1024に入れる最初のピストンストロークを利用してこのような飛びはねを低減または解消し、次に2回目のピストンストロークがカプセル1024の残りの内容物を放出させる。試薬すべてがカプセル1024から放出すると、図10(A)に示すようにピストン1004は初期位置へと上昇して戻る。
【0070】
図11は試料処理システムの反応ステーションの斜視図である。反応ステーション1100は、反応チャンバ1104を有する支持部材1102と、そこに配置された試薬カートリッジ1106を含む。支持部材1102、反応チャンバ1104および試薬カートリッジ1106は、図4(A)を参照して説明した支持部材404、反応チャンバ406および試薬カートリッジ408と実質的に同一であると言える。
【0071】
この図から分かるように、反応ステーション1100は貯槽1108をさらに含む。貯槽1108は、処理中、反応チャンバ1104に供給されるバルク試薬を保持するために使用してもよい。この態様では、貯槽1108は支持部材1102に取り付け、反応チャンバ1104と液体連通している。試料処理システムにおいて典型的に、処理中の異なる時間で反応チャンバに添加しなければならない試薬が数種ある。このような試薬は通常、バルク容器に入っており、独立している供給ラインは容器から各反応チャンバへと通じている必要がある。しかし貯槽1108により複数の供給ラインの必要性がなくなる。その代わりに、図16(A)、図16(B)および図17を参照してさらに詳細に下記で説明するが、各バルク容器からの供給ラインは単一のバルク分注器に通じている。バルク分注器はその後、貯槽1108上に配置し、望ましいバルク試薬を貯槽1108に分注し得る。その後、貯槽1108内に含まれる一定分量の液体を取り出し、処理プロトコルにしたがって反応チャンバ1104に添加し得る。このような形態は、複数の反応チャンバがシステム内にある場合に特に有利であり、何故ならそれにより任意の時間に望ましい液体を各反応チャンバに添加できるようになるからである。このことは、別の反応チャンバへの液体の添加が完了するまで、バルク容器から1つの反応チャンバへの液体の添加を遅らせる場合がある標準的な処理システムと対照的である。
【0072】
貯槽1108は反応チャンバ1104内で処理を完了するために必要な液体量を保持するのに適した寸法を有し得る。例えば、貯槽1108の容積は例えば10ml以下、いくつかの実施態様では約6mlであり得る。処理中の望ましい時間に、例えば500マイクロリットル(μl)の一定分量を貯槽1108から反応チャンバ1104に移す場合もある。
供給ライン(図示せず)は支持部材1102に沿って貯槽1108から反応チャンバ1104に通じ、液体を貯槽1108から反応チャンバ1104に移し得る。
【0073】
廃液ライン1110は貯槽1108に接続し得る。廃液ライン1110により、貯槽1108からの余剰液を除去し、および/または貯槽1108内に保持した液体を交換することが容易になる。
【0074】
反応ステーション1100はさらに、反応チャンバ1104を加熱および冷却する温度修正アセンブリ1112を含み得る。必要に応じて、反応チャンバ1104の圧盤が加熱および冷却できることは、反応チャンバ1104内で試料を処理している際に重要である。急冷は、例えば、特に反応チャンバ1104の加熱を含む工程後の抗原回復中に重要である。この態様では、温度修正アセンブリ1112を反応チャンバ1104の下方に配置する。温度修正アセンブリ1112は熱電冷却器(TEC)(図12を参照して述べたTEC1206、1204参照)、放熱板1114および送風機1116を含んでもよく、これらは図12を参照して、より詳細に下記で述べることとする。
【0075】
図12は温度修正アセンブリの1つの実施態様の斜視図を示す。温度修正アセンブリ1200は反応チャンバ1202、TEC1204および1206、放熱板1208および送風機1214を含んでもよい。TEC1204および1206は反応チャンバ1202の下側に沿って、一列に並ぶ形態で配置し得る。TEC1204および1206は反応チャンバ1202を加熱あるいは冷却どちらかに使用しても構わない。反応チャンバ1202を冷却するため、反応チャンバ1202に接触しているTEC1204および1206の側からの熱はTEC1204および1206の反対側へと伝導させる。反応チャンバ1202を加熱するため、反応チャンバ1202の反対側にあるTEC1204および1206の側から反応チャンバ1202に接触している側へと伝導させるように熱の伝導を逆行させる。TEC1204および1206はFerrotec Corporationから市販されている型番9501/071/040BS/L300などの任意のTEC装置であってよい。
【0076】
放熱板1208および送風機1214はTEC1204および1206内の熱伝導を容易にし得る。特に、放熱板1208はTEC1204および1206の表面に取り付けた基部1210ならびにフィン部1212を含んでもよい。基部1210は熱伝導性材料、例えばアルミニウム製の固体ブロックであり得る。この態様では、基部1210は放熱板1208の熱容量を増加させるために使用し得る。フィン部1212は基部1210から伸長する。TEC1204および1206からの熱は基部1210に吸収され、フィン部1212を経て空気中に放散する。TEC1204および1206ならびに放熱板1208により反応チャンバ1202を直接に冷却および/または加熱することが可能となる。
【0077】
加熱放散を容易にするため、フィン部1212へ空気を吹き込むように送風機1214を配置する。送風機1214の速度は使用者に固定または調節され、所望の熱放散レベルにしたがって修正し得る。典型的に、TEC1204および1206、その後、反応チャンバ1202を急速に冷却することが必要な場合、フィン1212全体にわたって空気の循環を高めるために、送風機1214の速度を高めてもよい。この態様では、温度修正アセンブリ1200は、5分以内、例えば3分未満で摂氏98度から摂氏10度へ反応チャンバ1202を急速に冷却できる可能性がある。
【0078】
いくつかの実施態様では、温度修正アセンブリ1200はさらに1つ以上のサーミスタを含んでもよい。典型的に、サーミスタ1216および1218は反応チャンバ1202と、それぞれTEC1204および1206とに挟まれている。サーミスタ1216および1218は温度修正アセンブリ1200の温度を監視および/または制御するために使用してもよい。特に、サーミスタ1216および1218は反応チャンバ1202の温度を測定し得る。この温度はTEC1204および1206の温度を維持すべきか、あるいは修正すべきか判断するために使用し得る。
【0079】
図13は反応ステーション全体の実施態様の斜視図を示す。反応ステーション1300は、図11を参照して前述した反応ステーション1100に類似した反応ステーションを含み、図12を参照して前述した温度修正アセンブリ1200に類似の温度修正アセンブリ1302を含む。反応ステーション1300は反応チャンバ1306を有する支持部材1304、およびそこに配置された試薬カートリッジ1308を含む。反応ステーション1300はさらに、貯槽1310を含む。図12を参照して前述したようなTEC装置(図示せず)、放熱板1314および送風機1312は反応チャンバ1306の下方に配置する。
【0080】
反応ステーション1300はさらに、識別プラットホーム1316およびハンドル部1320を含む。識別プラットホーム1316は使用者が視認可能な反応ステーション1300の端部に配置する。識別プラットホーム1316は反応ステーション1300を識別する識別子1318を含んでもよい。前述したように、複数の試料を同時に処理できるように、試料処理システムは1つ以上の反応ステーション1300を含んでもよい。したがって、使用者および/またはシステムが特定の試料および/または試料の位置を処理する反応ステーションを識別できるように、識別子1318により各反応ステーション1300を識別することが望ましい。識別子1318は例えば無線識別(RFID)タグ、形状識別子、色識別子、数量または単語、他の光符号、バーコード等の識別子の前述したタイプのいずれかであり得る。
【0081】
図1を参照して前述したように、反応ステーション1300は、そこに搭載された反応チャンバ1306へのアクセスを容易にするために、収容部(図1に示した収容部102参照)により形成された反応区画(図1に示す反応区画104参照)の内外にスライドし得る。レール部材1322は収容部に接続し、反応ステーション1300が沿ってスライドできる表面を備える。典型的に、レール部材1322は反応区画の内外に反応ステーション1300を導く経路を含み得る。反応ステーション1300を反応区画の内外にスライドさせるために、反応ステーション1300の端部から伸長しているハンドル1320を使用してもよい。
【0082】
連結アセンブリ1324はハンドル1320の反対側にある反応ステーション1300の端部に接続し得る。図13は連結アセンブリ1324の後側面図を示す。連結アセンブリ1324は、反応区画内に反応ステーション1300を係止し、それが外れることを防止できる連結システムであればどのようなタイプでもよい。いくつかの実施態様では、連結アセンブリ1324は電気機械的係止システムを含み得る。典型的に、連結アセンブリ1324は双安定ソレノイドを含み得る。停電の場合に、反応ステーション1300が誤って外れることを防止するために、連結アセンブリ1324は係止したままであることが望ましい。典型的に、停電の場合、使用者が意図的に連結アセンブリ1324を解除するまで連結アセンブリ1324は係止位置に留まる。連結アセンブリ1324は各個別の反応ステーション1300の二次係止システムとして働き、一方、一次係止システムはシステム収容部(例えば図1を参照して述べた反応区画104のカバー部材108およびドア部材110)を係止するために備え得る。一次係止システムは、停電の場合に使用者が各反応ステーション1300に接触できるようにシステム解除し得るが、反応ステーション1300が外れることは連結アセンブリ1324によって防止し得る。
【0083】
図14は、図13を参照して述べた連結アセンブリの正面斜視図を示す。連結アセンブリ1324は電気機械的係止システム1412を含んでもよい。いくつかの実施態様では、電気機械的係止システム1412はTakano Co.,LTDから市販されている製品番号TBS-0805-SS1などの双安定ソレノイドでもよい。双安定ソレノイド1412を支持するフレーム部材1326は反応区画のレール部材1322に取り付け得る。双安定ソレノイド1412は一般的に、フレーム部材1326に取り付けたソレノイド収容部1414を含み得る。押しピン1416は収容部1414の上端から伸長し、プランジャ1418は収容部1414の下端から伸長し得る。押しピン1416とプランジャ1418は接続し、同時に垂直方向に移動する。押しピン1416は反応ステーション1300を係止または解除するために使用し、プランジャ1418は反応ステーション1300の係止または解除を検出するために使用する。
【0084】
反応ステーション1300の係止アーム1328は押しピン1416を受け取るように寸法合わせをした孔口1420を含み得る。反応ステーションセンサー1330が係止アーム1328の存在を検出すると孔口1420が押しピン1416に合わせて配列されるように、孔口1420は係止アーム1328内に配置する。その後、押しピン1416は係止アーム1328に向かって進み、孔口1420を貫通し、定位置に反応ステーション1300を係止する。双安定ソレノイド1412により、押しピン1416は動力が停止した後でさえ係止位置に保持される。動力が消失して連結アセンブリ1324の解除が必要になると、ツールを使用して押しピン1416を孔口1420内から取り除く。
【0085】
反応ステーションセンサー1330は反応区画内で反応ステーション1330の有無を検出するために使用し得る。検出アーム1402および1404を含む反応ステーションセンサー1330はフレーム部材1326に取り付ける。係止アーム1328を受け取るための反応ステーションセンサー1330の検出アーム1402と1404との間に間隙を設けてもよい。検出アーム1402および1404は、係止アーム1328の有無を検出するためにセンサー素子を含み得る。典型的に、アーム1402はアーム1404上のビーム検出器に対してレーザービームを放出し得る。係止アーム1328によりレーザービームが遮断されると、アーム1404上の検出器はその時点でアーム1402からのビームを検出しなくなる。その後、反応ステーション1300が適所に位置し、定位置に係止できることがシステムに通報される。同様に、レーザービームがアーム1404上のレーザービーム検出器に検出されると(すなわち係止アーム1328はアーム1402と1404との間に存在しない)、係止アセンブリ1324は非係止位置に残る。反応ステーションセンサーは光学センサーや読み取りスイッチなどの多様なタイプのセンサーおよび/またはスイッチを含み得るが、これらに限定するものではない。
【0086】
連結アセンブリ1324の位置(係止状態または非係止状態)を検出する連結センサー1406をさらにフレーム部材1326に取り付けてもよい。反応ステーションセンサー1330と同様に、連結センサー1406は検出アーム1408および1410を含んでもよい。検出アーム1408は、アーム1410上のレーザービーム検出器に向けられたレーザービームを含んでもよい。この態様では、検出アーム1408および1410は連結アセンブリ1324の位置(係止状態または非係止状態)を検出することが可能である。
【0087】
反応ステーションセンサー1330および/または連結センサー1406から得た反応ステーション位置情報を使用し、処理中、システムへの新規なスライドの導入が検出し得る。例えば、システム内に30個の反応ステーション1300がある実施態様では、使用者は最初にスライドを20個の反応ステーション1300に配置してもよい。残りの10個の反応ステーションには何も入っていなくともよい。各反応ステーション1300を最初に走査し、スライドおよび対応する試薬カートリッジがそこに配置されているか判断する。次に、スライドおよびその中にある試薬カートリッジを有する単一のステーションで適切な処理プロトコルを行うこととなる。処理中に使用者が、空の反応ステーションの1つにスライドを設置しようとするならば、使用者は反応チャンバを開き、空の反応ステーションを外側にスライドさせ、ステーションにスライドおよび試薬カートリッジを配置し、その後それをスライドさせて内側に戻す。センサーは、反応ステーション1300の1つが外され、係止位置にスライドさせて内側に戻されたことを検出する。この情報に基づいて、その後システムはステーションを走査し新たなスライドを処理することを認識する。
【0088】
図15はオーバーヘッド液体分注システムおよびカプセル押圧機構の1つの実施態様の斜視図を示す。液体分注システム1500は通常、下部の反応ステーションの反応チャンバに液体を分注するために使用する液体分注アセンブリ1502を含む。液体分注アセンブリ1502は搭載アセンブリ1506に取り付ける。試薬カプセルから反応ステーションの試薬カートリッジ内に試薬を放出することを容易にするためのカプセル押圧機構1504をさらに、搭載アセンブリ1506に取り付けてもよい。液体分注アセンブリ1502およびカプセル押圧機構1504は搭載アセンブリ1506の搭載ステーション(図16(A)の搭載ステーション1618参照)内に配置し得る。1つの液体分注アセンブリ1502およびカプセル押圧機構1504が図15に示されているが、搭載アセンブリ1506に搭載される液体分注アセンブリ1502およびカプセル押圧機構1504の数は任意でよいと考えられる。典型的に、1つの実施態様では、搭載アセンブリ1506は、少なくとも19個の液体分注アセンブリ1502を有する少なくとも20個の搭載ステーション、およびそこに搭載される少なくとも1つのカプセル押圧機構1504を含み得る。2つのカプセル押圧機構を有するいくつかの実施態様では、カプセル押圧機構1504は、第2カプセル押圧機構の反対側の搭載アセンブリ1506の片側に搭載し得る。
【0089】
搭載アセンブリ1506は図1を参照して開示された搭載アセンブリ116と実質的に同一であると言える。1つの実施態様では、搭載アセンブリ1506は、液体分注アセンブリ1502、および/または試薬カートリッジもしくは試薬カプセルを有し、搭載アセンブリ1506の下方に配置されたカプセル押圧機構1504を配列するために中心軸に対して回転可能な円形コンベアとなり得る。液体分注アセンブリ1502およびカプセル押圧機構1504が1つの反応ステーションから次のステーションへと移動できるように、搭載アセンブリ1506は直線的に平行移動可能(translatable)であってもよい。
【0090】
液体分注アセンブリ1502は、液体を下方にある試薬カートリッジに分注するのに適した任意の液体分注アセンブリ1502であってよい。典型的に、1つの実施態様では、液体分注アセンブリ1502は、カートリッジポンプアセンブリ1510に接続した液体分注カートリッジ1508を含み得る。液体(例えば試薬)を保持し、下方にある試薬カートリッジに液体を分注するためのチューブ部材に接続した容器を液体分注カートリッジ1508は含み得る。カートリッジポンプアセンブリ1510は、液体分注カートリッジ1508から液体をポンプ移送するように寸法合わせをしたポンプ機構であり得る。
【0091】
カプセル押圧機構1504も搭載アセンブリ1506に搭載し得る。カプセル押圧機構1504は図10(A)〜図10(D)を参照して述べたカプセル押圧機構1000と実質的に同一であると言える。この態様では、カプセル押圧機構1504は収容部1516およびピストン1512を含み得る。さらに、ピストン1512を上昇位置に付勢するため、バネ部材1514をピストン1512の周囲に配置してもよい。図10(A)〜図10(D)を参照して前述したアクチュエータ(図示せず)はカプセル押圧機構1504から内部へと同心状に配置し、ピストン1512の移動を操作し得る。
【0092】
操作中、搭載アセンブリ1506は1つの反応ステーションから次のステーションへと移動し、さらに、液体分注アセンブリ1502およびカプセル押圧機構1504を望ましいステーションと共に配列させるために回転し得る。いくつかの実施態様では、内部に液体分注カートリッジを有する搭載アセンブリ1506は3分毎にサイクルを完了させることが可能である(例えば各反応ステーションでの通過の完了)。この態様では、30個の反応ステーションがある場合、搭載アセンブリ1506は6秒毎に各反応ステーションを通過し、このとき試薬の分注には反応ステーション毎に約2〜3秒かかる。
【0093】
図16(A)および図16(B)はオーバーヘッド液体分注システムの1つの実施態様の斜視図を示す。図16(A)を参照すると、液体分注システム1600は通常、液体分注アセンブリ1602およびバルク試薬分注器1604を含む。液体分注アセンブリ1602は図15を参照して述べた液体分注アセンブリ1502と実質的に類似したものである。この態様では、液体分注アセンブリ1602は、下方にある反応ステーション1606を横断して直線的に平行移動可能である回転可能な搭載アセンブリを含む。搭載ステーション1618は、試薬分注カートリッジおよび/またはカプセル押圧機構を搭載するための搭載アセンブリに設ける。
【0094】
液体分注システム1600はさらに、バルク液分注アセンブリ1604を含む。バルク液分注アセンブリ1604は、図11を参照して述べた反応ステーション1606のバルク液貯槽1614にバルク液を分注するために使用する。この態様では、バルク液分注アセンブリ1604はノズル1610を支持するためのノズルブラケット1608を含む。ノズル1610は供給ライン1612に接続する。各供給ライン1612は個々のバルク容器に接続する。図11を参照して前述したように、バルク液貯槽1614を満たすために、望ましいバルク容器から出た単一供給ライン1612を使用してもよい。この態様では、各供給ライン1612は異なるバルク容器と液体連通し得る。ノズル1610および接続している供給ライン1612の数量は、必要な異なるバルク液の数量により変わる場合がある。典型的に、1つの実施態様では、6個の異なるバルク容器から伸長している6個のノズル1610および6個の供給ライン1612をノズルブラケット1608に接続し得る。
【0095】
ノズルブラケット1608は下方にある反応ステーション1606を横断して直線的に平行移動可能にし得る。この態様では、ノズルブラケット1608は支持アーム1620によってブラケットレール1616に可動に接続し得る。ブラケットレール1616は反応ステーション1606の後部端に沿って伸長し得る。ノズルブラケット1608はブラケットレール1616から、反応ステーション1606上で伸長する。ノズルブラケット1608ならびに接続している供給ライン1612およびノズル1610は、別のX軸によりブラケットレール1616に沿って移動し、望ましいバルク液貯槽1614上に配置し得る。ノズルブラケット1608を望ましいバルク液貯槽1614上に配置すると、望ましいバルク液と接続したノズル1610の1つが作動し、所望のバルク液をバルク液貯槽1614に分注する。バルク液分注アセンブリ1604は液体分注アセンブリ1602から独立して移動する。この態様では、操作中は、バルク液分注アセンブリ1604は液体分注アセンブリ1602の手前にある1つ以上のステーショであると考えられる。
【0096】
液体分注システム1600はさらにノズルブラケット1608に取り付けられた試薬カートリッジスキャナ1622を含んでもよい。試薬カートリッジスキャナ1622は、反応ステーション1606に配置した試薬カートリッジに付けた無線識別(RFID)タグ、形状識別子、色識別子、数量または単語、他の光符号、バーコード等の読み取り識別子(例えば図9(A)に示す識別子920)に適したスキャナであればどのようなタイプのものでもよい。この態様では、試薬カートリッジスキャナ1622は端部1624にある読み取り窓を含む。試薬カートリッジ1634を搭載台1632の1つに配置する場合、試薬カートリッジ1634の端部に沿って配置した識別子を端部1624の読み取り窓と共に配列する。識別子は読み取り窓を経て試薬カートリッジスキャナ1622に読み取らせてもよい。試薬カートリッジスキャナ1622は、各反応ステーション1606に搭載された試薬カートリッジに付けた識別子を読み取りながら、ブラケットレール1616に沿って1つの反応ステーション1606から次へと水平に移動する。試薬カートリッジスキャナ1622がノズルブラケット1608に搭載されていることを示したが、試薬カートリッジスキャナ1622およびノズルブラケット1608が個別に可動になるように異なるブラケットアセンブリに搭載できる可能性もさらに考えられる。
【0097】
試薬カートリッジスキャナ1622に加えて、液体分注システム1600はスライドスキャナ1628を含み得る。図16(A)にはスライドスキャナ1628が1つしか図示されていないが、液体分注システム1600には、スライドスキャナ1628と実質的に同一である図18の第2スライドスキャナが含まれることは理解されているものとする。スライドスキャナ1628は、反応ステーション1606に配置したスライド1638に付ける無線識別(RFID)タグ、形状識別子、色識別子、数量または単語、他の光符号、バーコード等の読み取り識別子に適したスキャナであればどのようなタイプのものでもよい。スライドスキャナ1628を、スキャナブラケット1630により反応ステーリョン1606の上方に配置した液体分注アセンブリ1602に取り付けてもよい。スキャナブラケット1630は、液分注アセンブリ1602に沿って直線的に移動するが回転しないように、液体分注アセンブリ1602の非回転支持部材に取り付けてもよい。この態様では、スライドスキャナ1628は液体分注アセンブリ1602と共に1つの反応ステーション1606から次へと移動することが可能である。あるいは、スライドスキャナ1628は液体分注アセンブリ1602に沿って直線的かつ回転可能に平行移動させることが可能である。別のさらなる実施態様では、スライドスキャナ1628のスキャナブラケット1630は、液体分注アセンブリ1602から独立して移動できるようにレール1616に直接取り付け得る。
【0098】
反応ステーション1606内に配置してあるスライド1638(図16(B)参照)に付けた識別子1640の読み取りを容易にするため、ミラー1626を各反応ステーション1606内に配置してもよい。図16(B)に示すように、識別子1640は、スライド1638の端部に、好ましくはスライド1638の艶消し部分に設置する。スライド1638に載せた試料および識別子1640が下向きになるようにスライド1638を反応ステーション1606の反応チャンバ1646内に配置する。識別子1640の像1642がミラー1626で反射するように、ミラー1626は識別子1640を含むスライド1638の端部の下方に配置する。矢印1644で示すスライドスキャナ1628の方向に像1642が反射するように、ミラー1626を配置する。スライドスキャナ1628はミラー1626から識別子1640の像1642を走査することにより識別子1640を読み取る。いくつかの実施態様では、ミラー1626は使用者が取り外したり、新たなミラーと交換できるディスポーザブルミラーでもよい。このように、ミラー1626に傷が付くか、またはその他、使用上の不都合が生じれば、使用者は修理サービスを頼む必要もなくすぐにそれを交換できる。あるいは、ミラー1626は反応ステーション1606内に固定で搭載してもよい。図22〜24を参照して、より詳細に下記で述べるように、スライド1638に載せた試料上で行う処理プロトコルを検証するために、試薬カートリッジ上の識別子から試薬カートリッジスキャナ1622により得た情報、およびスライド1638上の識別子1640からスライドスキャナ1628により得た情報を使用してもよい。
【0099】
図17はバルク液分注アセンブリの実施態様の平面図を示す。バルク液分注アセンブリ1604は図16(A)を参照して述べたバルク液分注アセンブリと実質的に同一である。この図から、反応ステーション1606のバルク液貯槽1614上のノズル1610の配置が分かる。ノズル1610とバルク液貯槽1614との間の関連性がより明確に分かるように、試薬カートリッジスキャナ1622および試薬カートリッジ搭載部材1632を省略していることを特記しておく。図に示すように配置されると、バルク試薬容器からの所望の液体が供給ライン1612を経由して、ノズル1610から出て所望の貯槽1614へポンプ移送される。望ましい量の液体が貯槽1614内にポンプ移送されると、バルク液分注アセンブリ1604が矢印1620の方向に、同じまたは異なる試薬を貯槽に分注するための次の反応ステーションへと移動し得る。
【0100】
図18は液体分注システムの実施態様の平面図を示す。液体分注システム1800の形状およびメカニズムは、システム1800と併用するために選択された液体分注アセンブリの操作によって可変である。システム1800は、液体分注カートリッジ1806が搭載された複数の搭載ステーション1804を有する搭載アセンブリ1802を含む。搭載アセンブリ1802は図15を参照して述べた搭載アセンブリ1506と実質的に同一であると言える。液体分注カートリッジ1806は、例えば図15を参照して述べた液体分注カートリッジ1502と実質的に同一であると言える。
【0101】
搭載ステーション1804は複数の液体分注カートリッジ1806を選択的に配置するための搭載孔1808を含むことが好ましい。1つの実施態様では、1つ以上の搭載ステーション1804はカプセル押圧機構1836の配置のために寸法合わせをした搭載孔1834を含んでもよい。図15を参照して前述したカートリッジポンプアセンブリ1510などのカートリッジポンプアセンブリは液体分注カートリッジ1806を保持する各ステーション1804に搭載する。アクチュエータアセンブリ1820のアクチュエータ1814および1816はカートリッジ1806のポンプアセンブリと配列し、必要に応じてポンプアセンブリを起動する。また、アクチュエータ1814または1816のうち1つはカプセル押圧機構1836と配列してもよい。2つのアクチュエータ1814と1816があるので、試薬は2つの異なる液体分注カートリッジ1806から同時に異なる場所に分注可能である。あるいは、アクチュエータ1814および1816のうち1つは液体分注カートリッジ1806と配列し、他方はカプセル押圧機構1836と配列し、両カートリッジ1806からの試薬および反応ステーション1812のうち1つに搭載されたカプセルの送達を容易にし得る。別のさらなる実施態様では、2つのカプセル押圧機構1836は、各カプセル押圧機構1836と配列した搭載アセンブリ1802ならびにアクチュエータ1814および1816に搭載し得る。
【0102】
システム1800はバルク液分注アセンブリ1824をさらに含む。バルク液分注アセンブリ1824は図16(A)を参照して述べたバルク液分注アセンブリ1604と実質的に同一であると言える。この態様では、バルク液分注アセンブリ1824は、ノズル1830を有するノズルブラケット1826およびそこに配置した試薬カートリッジスキャナ1832を含む。ノズルブラケット1826は図16(A)を参照して前述したブラケットレール1828に沿ってスライドする。
【0103】
液体分注システム1800はまた、複数の反応ステーション1812を有する受容アセンブリ1810も含む。反応ステーション1812は前述した反応ステーションに類似しているものでよい。概して、受容アセンブリ1810は搭載アセンブリ1802および重力を有効利用するバルク液分注器1824の下方に配置し、液体分注カートリッジ1806およびバルク液分注器1824から分注された液体を送達させる。好ましくは、搭載アセンブリ1802、バルク液分注器1824および受容アセンブリ1810は互いに対して可動であり、それにより複数のカートリッジ1806およびバルク液分注器1824が所望の反応ステーション1812のいずれかに液体を分注できるように配置可能となる。搭載アセンブリ1802、バルク液分注器1824および反応ステーション1812の可動性を任意に組み合わせて選択してもよい。例えば、反応ステーション1812を固定しているとき、各搭載アセンブリ1802およびバルク液分注器1824は可動にしてもよい。あるいは、反応ステーション1812を可動にし、搭載アセンブリ1802とバルク液分注器1824は固定してもよい。また、前述したように、カートリッジ1806を望ましい反応ステーション1812と共に配列させるために、搭載アセンブリ1802を中心軸に対して回転可能な円形コンベアとしてもよい。搭載アセンブリ1802はまた、1つの反応ステーション1812から次のステーションへ移動できるように直線的に平行移動し得る。さらにバルク液分注器1824は、1つの反応ステーション1812から次のステーションへと搭載アセンブリ1802の前後で移動できるように、直線的に平行移動し得る。反応ステーション1812は、スライドなどすべて同じタイプの構成物でもよく、あるいはスライドと容器といった異なるタイプの構成物を含んでいてもよい。
【0104】
分注システム1800の操作の1つの例では、個々のカートリッジ1806またはカプセル押圧機構1836がアクチュエータアセンブリ1820の1つまたは両方の近傍に選択的に配置できるように、搭載アセンブリ1802を回転させる。いくつかの実施態様では、各カートリッジ1806およびカプセル押圧機構1836とアクチュエータアセンブリ1820とを配列するために搭載アセンブリ1802を回転させる必要がなくなるように、システム1800は各カートリッジ1806の近傍に配置された複数のアクチュエータアセンブリ1820およびカプセル押圧機構1836を含み得る。
【0105】
アクチュエータアセンブリ1820は、制御した量の液体を放出するためにカートリッジ1806を始動する任意の起動装置とすることが可能である。典型的に、アクチュエータアセンブリ1820は、例えばカートリッジポンプアセンブリまたはカプセル押圧機構のアクチュエータと共に配列するピストン機構を含み得る。
【0106】
個々のカートリッジ1806が任意の反応ステーション1812の上方に選択的に配置可能となるように、搭載アセンブリ1802は受容アセンブリ1810に対して平行移動および回転の両方が可能である。カートリッジ1806が1つの受容部材1812上に配置されると、アクチュエータアセンブリ1820は、制御した量の液体を反応ステーション1812へ放出させるようにカートリッジ1806を始動する。
【0107】
図18で分かるように、1つの実施態様では、カートリッジ1806およびカプセル押圧機構1836がアクチュエータアセンブリ1820に対して回転可能になるように、搭載アセンブリ1802は支持部材1822に回転可能に取り付け、一方、アクチュエータアセンブリ1820は支持部材1822に固定で取り付ける。アクチュエータアセンブリ1820は、支持部材1822に、場合により搭載アセンブリ1802の下方に固定で取り付ける。カートリッジ1806およびカプセル押圧機構1836が受容部材1812に対して回転および平行移動の両方が可能となるように、支持部材1822は水平に平行移動できることが好ましい。このように、選択したカートリッジ1806を任意の反応ステーション1812の上方に選択的に配置することが可能である。同様に、選択されたカプセル押圧機構1836は望ましい反応ステーション1812の上方に配置することが可能である。
【0108】
スライドスキャナ1838、1840はまた、搭載アセンブリ1802と共に1つの反応ステーション1812から次のステーションへと移動できるように支持部材1822に取り付けてもよい。1つの実施態様では、スライドスキャナ1838、1840は搭載アセンブリ1802の反対側に沿って配置し得る。別のさらなる実施態様では、スライドスキャナ1838は、分注システム1800内に配置されたスライド上の識別子を読み取るのに適した任意の方法で、分注システム1800内に配置し得る。
【0109】
反応ステーション1812が受容アセンブリ1810内に直線的に配置していることを図示しているが、反応ステーション1812を2列以上に分けることもさらに考えられる。この態様では、アクチュエータアセンブリ1820は、2つ以上のアクチュエータ、例えば液体を2列の受容部材に分注するために使用する2つのアクチュエータ1814、1816を任意に含み得る。操作の際、アクチュエータ1814は液体を一方の列の反応ステーション1812に分注するのに適しており、アクチュエータ1816は液体を別の列の反応ステーション1812に分注するのに適している。アクチュエータおよび/または受容部材は任意の数量で使用できることもさらに考えられる。
【0110】
図19はバルク試薬感知アセンブリを含む試料処理システムの回路図を示す。試料の処理中、数種の試薬が大量に必要になる場合もある。例えば、処理には、蒸留水および緩衝液などの抗体または検出試薬を洗い流すための試薬が必要になる場合もある。このような試薬はシステム内のバルク容器に保存される。また、試薬廃液はバルク容器内に処分する。各バルク容器内に残る試薬の量や、バルク廃液容器の充填具合を判断することは使用者にとって困難であることも多い。これにより使用者がバルク容器の交換(または再充填)をし損なう可能性もある。所望の試薬が入手不可能か、あるいは廃液コンテナが満杯でこれ以上の廃液を許容できないことで、システム操作が順次遅れる場合もある。
【0111】
この態様では、試料処理システム1900はバルク試薬感知アセンブリ1902を含んでもよい。バルク試薬感知アセンブリ1902は、それぞれバルク容器1912、1914、1916および1918内の液体(例えば試薬)量を検出するためのセンサー1904、1906、1908および1910を含んでもよい。いくつかの実施態様では、センサー1904、1906、1908および1910は、そこに配置されたバルク容器1912、1914、1916および1918の重さを計量可能なセンサーであってよい。典型的に、1つ以上のセンサー1904、1906、1908および1910はMinebea Co., Ltd(日本国長野県北佐久郡御代田町)から市販されたものなどの、容器の重量によりセンサーに加えられた力を電気信号に変換する負荷セル重量センサーであってもよい。
【0112】
バルク容器1912、1914、1916および1918の各々の重量および容積は既知数でよい。また、バルク容器1912、1914、1916および1918内の液体のタイプならびに液体の密度も既知のものでよい。例えばバルク容器1912内の液体の体積を測定するために、センサー1904に測定された重量(バルク容器と液体の質量)からバルク容器1912の重量を差し引く場合もある(液体が入っていない状態)。その後、容器1912内の液体の重量および液体密度を用いて容器1912内の液体の体積を算出し得る。既知の容器容積から容器1912内の液体体積を差し引くことで、その後、容器の充填具合を判定する。バルク容器1912内の液体の測定を本明細書に記述しているが、バルク容器1914、1916および1918内の液体の体積を測定するために、バルク容器1914、1916および1918と、それぞれ、センサー1906、1908および1910を利用して同様の計算をすることも可能である。また、4つの重量センサー1904、1906、1908および1910を図19に図示しているが、センサーの数量はシステム内の所望のバルク容器の数量によって変更し得る可能性も考えられる。
【0113】
別のさらなる実施態様では、システム1900は光源1920、1922、1924および1926を含み、それぞれ容器1912、1914、1916および1918内の液体レベルの目視検査を容易にする。光源1920、1922、1924および1926のうちの1つ以上は各容器に隣接させた発光ダイオード(LED)であってよい。あるいは、内部の液体レベルが視認可能になるように、光源1920、1922、1924および1926のうち1つ以上は、容器1912、1914、1916および1918を照明することが可能な光源であればどのようなものでもよい。容器1912、1914、1916および1918の材料は容器内の液体の目視検査を容易にするように選択することもさらに考えられる。典型的に、容器1912、1914、1916および1918は半透明または透明材料製であってよい。
【0114】
処理システム1900およびバルク試薬感知アセンブリ1902の操作を以下に説明することとする。1つの実施態様によると、バルク容器1912は廃液容器で、バルク容器1914、1916および1918の各々は試薬を保持し得る。バルク容器1914、1916および1918の1つ以上から出る試薬は、バルク試薬分注器1930により望ましい反応ステーションの貯槽1928内に分注し得る。ポンプ1932、1934、1936は、バルク試薬分注器1930の各供給ライン1938、1940、1942と接続し、各バルク容器からの試薬をポンプ移送し得る。所望の試薬が貯槽1928内に入ると、ポンプ1946を利用して試薬は反応チャンバ1944にポンプ移送され得る。反応チャンバ1944内で試薬での処理を完了した後に、ソレノイド弁1950を経由するポンプ1948を使用し、試薬は反応チャンバ1944から廃液バルク容器1912へとポンプ移送し得る。また、貯槽1928内の試薬が必要なくなれば、ソレノイド弁1950のラインを切り替えることにより、ポンプ1948を利用し、バルク容器1912に排出してもよい。
【0115】
センサー1904はバルク容器1912内の廃液の体積を継続的に、または周期的に計算し得る。バルク容器1912内の液体体積が所定の量以上であれば(例えば容器が充填されている場合)、システムは使用者に通報する。同様に、センサー1906、1908、1910は、それぞれバルク容器1914、1916、1918内の液体量を継続的に、または周期的に計算し得る。液体の体積が所定のレベル未満であれば(例えば容器が空になっている場合)、システムは使用者に通報する。通報を受けると、使用者はバルク容器を再充填するか、交換するか、あるいは中を空にすることができる。また、システムは空の試薬容器から、十分量の所望の液体が入っている容器へと自動的に切り替えることも可能である。システムはまた、充填された廃液バルク容器から空の容器へと自動的に切り替えることも可能である。この態様では、使用者がすぐにバルク容器に注意を向けられない場合でも処理は途切れずに続行する。
【0116】
図20は自動試料処理システムの1つの実施態様の図説である。自動試料処理システム2000は複数の着色装置2004と連通している制御コンピュータ2002を含み、複数の着色装置2004を制御するための集中型ユーザーインターフェースを備えていてもよい。染色装置2004は前述した生物標本を処理するために使用してもよい。制御コンピュータ2002は当技術分野で公知の任意の様式で染色装置2004と通信させ、例えば制御コンピュータ2002は高速ハブ2006を介して染色装置2004と通信させてもよい。高速ハブ2006により、システム2000が複数の染色装置2004と制御コンピュータ2002などの他のコンピュータとの間の情報を速く伝えることが可能になる。例えば染色装置2004は、データライン2008および高速ハブ2006により形成されたネットワーク上で、染色装置2004の反応ステーションに設置されたスライドに適用する染色プロトコルをダウンロードし得る。制御コンピュータ2002および染色装置2004は有線または無線で通信するように構成してもよく、例えば、該システムは、上述のように通常のコンダクタまたは光ファイバーとなり得るデータライン2008を利用し得る。また、複数の構成部品はBLUETOOTH(Bellevue, Wash.にあるBluetooth SIG, Inc.の登録商標)などの無線周波通信、あるいは任意の他の無線技術を使用して無線で通
信し得る。
【0117】
データがローカルデータベース2010へ、またはそこから転送されるように、制御コンピュータ2002はまた、1つ以上のローカルデータベース2010と通信し得る。例えば、ローカルデータベース2010は、染色装置2004上の反応ステーションにより実行されるように設計された複数の染色プロトコルを保存し得る。染色プロトコルは、反応ステーション内に配置したスライド上で実行する一連の染色操作を含み得る。染色装置2004上で反応ステーションにより実行された染色プロトコルは、システム部品(例えば顕微鏡スライド、試薬カートリッジ、液体分注カートリッジ、試薬容器等)に付けた識別子(例えばバーコード、無線識別装置(RFID)等)から得た情報に基づいて選択し得る。制御コンピュータ2002は染色装置2004上の反応ステーションから受け取った識別データを処理し、ローカルデータベース2010から染色プロトコルを回収し、該染色プロトコルを染色装置2004上の反応ステーションへ送信する。さらに、制御コンピュータ2002はレポートおよび/またはステータス情報など、染色装置2004上の反応ステーションから受け取った情報を保存するためのローカルデータベース2010を使用してもよい。
【0118】
制御コンピュータ2002はまた、1つ以上の遠隔のデータベース2012および/またはサーバ2014と通信し得る。制御コンピュータ2002は直接、またはサーバ2014を経由して遠隔データベース2012と通信するが、これは検査室情報システム(LIS)としてもよい。制御コンピュータ2002はネットワーク2016を介してサーバ2014と通信し得る。上述したように、サーバ2014は遠隔データベース2012と通信し得る。サーバ2014および遠隔データベース2012を使用して、ローカルデータベース2010と類似した方式で染色装置2004上の反応ステーションにより使用する染色プロトコルを提供し、あるいはローカルデータベース2010が提供したプロトコルを補足し得る。
【0119】
自動試料処理システム2000は場合により、1つ以上のプリンタ2018を含んでもよい。プリンタ2018は、図示しているように制御コンピュータ2002と直接に、あるいは染色装置2004と直接に通信し得る。さらに、染色装置2004は各々が、染色装置に組み入れるか、または独立していてもよい専用のプリンタ2018を有し、そうでなければ複数の染色装置2004が1つ以上のプリンタを共有してもよい。
【0120】
自動試料分注システム2000はまた、システム部品(例えば顕微鏡スライド、試薬カートリッジ、液体分注カートリッジ、試薬容器、等)全体にわたって含まれ得る識別子を読み取るための携帯型またはデスクトップ型スキャナ2020を含んでもよい。スキャナ2020は識別子が読み取り可能であればどんなタイプのものを利用してもよい。例えば、スキャナ2020はRFIDスキャナ、1Dもしくは2Dバーコードスキャナ、または当技術分野で公知の他のタイプの任意のスキャナであってよい。スキャナ2020は制御コンピュータ2002または染色装置2004と直接に通信し、各部品は専用のスキャナを有し得る。
【0121】
システムはまた、無停電電源装置2022に電力供給され得る。中断された検査を無効にする総停電に対するシステムの妨害感受性を最小限にするために、無停電電源装置2022を使用してもよい。電力のこのような中断によっても、組織試料は使用不能になり、追加の標本を集めなければならなくなる。自動処理システム2000の部品の中のいずれか、または全てに電力を供給するために電源装置2022を使用し得る。
【0122】
図20で、制御コンピュータ2002が複数の染色装置2004とネットワークで結ばれていることを図示しているが、当然のことながら、染色装置2004が、自動試薬分注システム内の上述した任意の他の部品以外に、単一ユニット内で、基板上制御コンピュータと結合できる。このような組み合わせにより、低量の生物標本を処理するために使用し得る小型の自立型ユニットがもたらされる可能性がある。
【0123】
前述したように、1つ以上の処理プロトコルは染色装置2004にダウンロードしてもよい。その後、染色装置2004上の反応ステーションは、制御コンピュータ2002から独立している染色装置2004上の反応ステーションに設置したスライド上で処理プロトコルを実行し得る。この態様では、制御コンピュータ2002が停止すると(例えばクラッシュまたは凍結)、染色装置2004上の反応ステーションにおいてスライド上で実行する処理プロトコルは途切れずに続行し得る。
【0124】
また、ステーション2004上の反応ステーションで実行する処理プロトコルは制御コンピュータ2002により監視し得る。例えば処理プロトコルに指定された染色操作が1つ以上の染色装置2004上の反応ステーションで完了すると、染色状態のレポートが制御コンピュータ2002に送信され、染色操作が完了したことを制御コンピュータ2002に知らせる。いくつかの実施態様では、一定の間隔(例えば2〜3秒毎)でレポートを制御コンピュータ2002に送信する。間隔の合間に完了する染色操作すべては制御コンピュータ2002に報告され得る。この態様では、操作の進行中に送信される(すなわち5秒の操作中に2〜3秒のレポート送信が入り込む)レポートのうち、3秒以上、例えば5秒かかる染色操作は制御コンピュータ2002に報告されない。代わりに、染色操作を完了した後に、染色操作の実行は、発行済の次のレポートと共に制御コンピュータ2002に報告される。あるいは、染色操作は完了前に任意の時間に報告してもよい。また、染色装置2004が一定の間隔で染色状態のレポートを送信することが不能になれば(例えば制御コンピュータ2002の電力喪失)、未送信のレポートは染色装置2004で蓄積し、レポート送信が再開したときに(例えば電力の復旧)、制御コンピュータ2002へまとめて送信する。
【0125】
染色装置2004上で行った各操作の染色記録は、状態のレポートに基づいて制御コンピュータ2002が作成し、制御コンピュータ2002上に表示し得る。この態様では、必要に応じて制御コンピュータ2002は使用者に対して、必要な染色記録すべてを表示することが可能である。いくつかの実施態様では、染色装置2004上で完了した染色操作以外に、染色記録は、例えばシステム部品(例えば顕微鏡スライド、試薬カートリッジ、液体分注カートリッジ、バルク試薬容器等)に関する識別情報を含み得る。典型的に染色記録は、染色装置2004の操作中に使用することもあるシステム内の試薬のリスト化など、液体分注カートリッジまたはバルク試薬容器に関する情報を含み得る。試薬カートリッジに関する情報は、例えば反応チャンバに取り付けた試薬カートリッジ内にある抗体(例えば一次抗体)の識別を含み得る。スライドに関する情報は例えば、患者の識別数またはスライドに載せる抗体などの作用物質に関する情報を含み得る。
【0126】
図21は試料処理手順の1つの実施態様のフローチャートを示す。開始条件が検出されると、試料処理が開始する。試料処理手順2100は、開始条件が検出される(ブロック2102)と実行する開始手順を含み得る。開始条件は例えば、自動試薬分注システムに含まれた染色装置の収容部上にあるカバーの閉鎖、制御コンピュータからの開始信号の受信、または任意の他の条件であってよい。開始条件が検出されなければ、自動試薬分注システムは、開始条件が検出されるまで開始条件の検出の有無を継続的に確認し得る。
【0127】
開始手順は、開始条件が検出された後に実行され、またそれはシステム部品、例えば反応ステーション、反応チャンバ、試薬カートリッジ、液体分注カートリッジおよび/またはバルク試薬容器の備品確認(ブロック2104)を含み得る。液体分注カートリッジ、試薬カートリッジおよびバルク容器の備品確認は、システム内の反応ステーション、カートリッジおよび容器に設置した識別子を走査することで実行し得る。典型的に、図16(A)に示した直線的に平行移動可能な搭載アセンブリに設置した試薬カートリッジスキャナ1608および/またはスライドスキャナ1628によって走査が実行され得る。スライドスキャナ1628の場合、スライドスキャナ1628は、搭載アセンブリを反応ステーションに沿って移動させ、それと接続したスライドに設置した識別子を走査し得る。これにより、システムは反応ステーション内の標本の有無を判定し、さらにシステムはスライドに添加する適切な作用物質(例えば一次抗体)を識別することが可能になる。識別子を走査した後、搭載アセンブリはホームポジションに戻る。また、例えば試薬カートリッジスキャナ1608を使用して試薬カートリッジを走査することによって、システムは各試薬カートリッジ内の試薬のタイプおよび量を識別し得る。この情報を使用して、スライドに適用する適切な処理プロトコルが決定し得る。
【0128】
また、例えばセンサーから得たバルク容器内の液体体積レベルを評価することは備品確認手順の一部であると言える。さらに、バルク容器から分注された液体量の履歴を維持することは、容器内の液体体積レベルを決定することに役立つ可能性がある。液体体積レベルを測定した後、信号を出力し、容器内に保存された液体の量やタイプに関する指標を使用者に提供し得る。容器が空であるか、または所定の染色プロセスを実行するために十分な液体量が含まれているかをシステムが判定する場合、システムは、1つ以上の容器における十分量の液体の有無、および交換または再充填の必要性を示す置き換え信号を発し得る。処理が途切れずに続行できるように、可能な場合、システムはさらに、十分な量の所望の液体を含有する別の容器を自動的に選択できるようにしてもよい。
【0129】
備品確認手順が完了すると、反応ステーションが命令シーケンスを受信し(ブロック2106)、各反応ステーションにダウンロードされた染色プロトコルが実行される(ブロック2108)。染色プロトコルは、反応ステーションと接続した試薬カートリッジから一次試薬を分注する工程、オーバーヘッド搭載アセンブリに搭載した液体分注カートリッジから二次試薬を分注する工程、反応ステーションの上方に配置したバルク液分注アセンブリからさらに試薬を分注する工程、および/または反応ステーション内の入口を経由して反応ステーションに試薬を分注する工程など、任意の順序、多様な時間帯で行う一連の処理操作を含み得る。
【0130】
図22は試料処理手順の実施態様のフローチャートを示す。典型的に、検査技師などの操作者は、試料が載っているスライドを正しい反応ステーション内に設置し、そのステーションに割り当てられた処理プロトコルにしたがって処理することを確実にする責を負っている。しかし、操作者が誤って違うステーションにスライドを載せれば、スライド上の試料で間違った処理プロトコルが実行される可能性がある。このような誤りは、スライドをステーションから外し、数日後、場合により数週間後に例えば病理学者により分析されるまで発見されない可能性がある。その時点ですでにスライドがステーションにないことから、スライド上で実行した処理プロトコル、同様に、スライドを再度処理すべきか、または新たな試料を載せた新たなスライド上で処理を実行すべきかを判断することは困難である場合もある。したがってこのようなエラーにより、結果の分析および報告が大幅に遅れる可能性がある。またさらに、該試料の検査で病理学者によっても処理上のエラーが検出されない場合、誤りが気づかれないままになり、忠告または診断が不正確なものになってしまう可能性がある。
【0131】
図22に示す試料処理手順はスライドに載せた試料上で実行した処理プロトコルを検証するために使用し得る。この態様では、手順2200にはスライドの表側(すなわち試料を載せた側)に第1の識別子を設置する工程が含まれる(ブロック2202)。第1の識別子は例えば、図16(B)を参照して説明した識別子1640などの識別子でもよい。識別子は、患者情報および/またはスライドに添加した作用物質、例えば抗体の名称などの情報を含み得る。その後スライドは、処理用反応ステーションに搭載した反応チャンバ内で裏返して(すなわち試料の反対側)置く(ブロック2204)。スライドを定位置に置いたら、試薬カートリッジを反応チャンバに搭載する(ブロック2206)。試薬カートリッジは図4(A)を参照して説明した試薬カートリッジ408などの試薬カートリッジでもよい。試薬カートリッジは、そこに配置した図9(A)を参照して説明した識別子920などの第2識別子を有し得る。第2識別子は、例えば試薬カートリッジに付けた抗体を識別し得る。抗体は、試薬カートリッジに取り付けたカプセル(図9(A)の試薬カプセル900参照)内で見られる場合もある。
【0132】
スライドに設置した第1識別子を走査し(ブロック2208)、試薬カートリッジに設置した第2識別子を走査する(ブロック2210)。スライド上の試料に適用する処理プロトコルを第2識別子から得た情報に基づいて決定する(ブロック2212)。典型的に、第2識別子は試薬カートリッジ内の試薬を識別し得る。あるいは、スライド上の試料に適用する処理プロトコルは第1識別子からの情報に基づいて決定し得る。次いで、制御コンピュータは、識別された試薬を使用して実行し得る処理プロトコルを選択するためにこの情報を使用し得る。識別した試薬に基づいて操作者がプロトコルを選択することもさらに考えられる。選択された処理プロトコルは、スライドに見られる試料上で実行し得る(ブロック2214)。スライド上に設置した第1識別子から得た情報は、試薬カートリッジに設置した第2識別子から得た情報に関連し、スライド上の試料に実行した処理プロトコルを確認できる場合もある(ブロック2216)。第1識別子と第2識別子からの情報が結びつくのは、処理プロトコルにしたがった試料処理中の場合でも、あるいは処理の完了時点の場合でもよい。結びついた情報は、正しい処理プロトコルが正しいスライドに割り当てられたか否かを操作者が判断できるように、制御コンピュータに表示してもよい。
【0133】
図23は試料処理手順に関連するディスプレイの実施態様を示す。ディスプレイ2300は第1識別子から得た情報および第2識別子から得た情報を示す。この態様では、ディスプレイ2300は試薬カートリッジ識別表2302およびスライド識別表2304を含む。試薬カートリッジ識別表2302はステーション識別欄2306および試薬識別欄2308を含む。ステーション識別欄2306は、試薬カートリッジが設置されている反応ステーションを識別する。試薬識別欄2308は試薬カートリッジに設置された試薬を識別する。典型的に、図23に示した試薬識別表2302の確認中に操作者は、抗体LCAを有する試薬カートリッジがステーション2、16および17に設置されていること、抗体CD30を保持する試薬カートリッジがステーション3および5に設置されていること、抗体Desminを保持する試薬カートリッジがステーション9に設置されていること、抗体Cytokeratin7を保持する試薬カートリッジがステーション10に設置されていること、ならびに抗体Vimentinを保持する試薬カートリッジがステーション12に設置されていることを理解する。
【0134】
同様に、スライド識別表2304はスライド識別欄2312および試薬識別欄2310を含む。図23に示すスライド識別表2304を確認すると操作者は、抗体LCAをステーション2、16および17に設置されたスライドに添加すること、抗体CD30をステーション3および5に設置されたスライドに添加すること、抗体Desminをステーション9に設置されたスライドに添加し、抗体Cytokeratin7をステーション10に設置されたスライドに添加すること、ならびに抗体Vimentinをステーション12に設置されたスライドに添加することを把握する。
【0135】
複数の列が同数のステーションを有して配列されるように、試薬識別表2302とスライド識別表2304とを並置する。結果として、操作者が試薬識別表2302およびスライド識別表2304を容易に確認し、適当な抗体が適当なスライドに添加されたか否かを判断することが可能となる。例えば、スライド識別表2304により、ステーション2に設置したスライドは抗体LCAを受け取れるようになる。試薬識別表2306は、ステーション2に設置した抗体がLCAであることを示す。この情報に基づいて操作者は、LCAを使用した処理プロトコルがステーション2のスライドに適切に割り当てられたことを確認できる。
【0136】
試薬識別表2302およびスライド識別表2304は保存され、他の実行情報と結びつき、追跡可能性情報を提供し得る。言い換えれば、試薬識別表2302により特定のステーションに関連しているのはどの試薬であるかが示され、また、スライド識別表2304によりスライドに分注される必要があるのはどの試薬であるかが示される。この情報(例えば処理に先立って作成した表のデータ)を保存することは、スライド上で実行した処理の指標になる。図20を参照して上記で開示したような染色記録は追跡可能な情報を含み得る。
【0137】
ディスプレイ2300に提供された情報に基づいて、操作者はステーションを再ロードし、開始実行ボタン2314をクリックすることで別の実行を開始することが選択可能となる。あるいは、操作者は、再スキャンボタン2316をクリックすることで既存の試料を再度走査することが選択できる。最終的に、操作者はキャンセルボタン2318をクリックすることで実行または表示をキャンセルすることを選択し得る。
【0138】
図24は試料処理手順に関連するディスプレイの実施態様を示す。ディスプレイ2400は試薬情報の不整合がある実施態様を表示する。ディスプレイ2400は、ステーション識別欄2406および試薬識別欄2408を有する試薬識別表2402を含む点で、ディスプレイ2300に実質的に類似している。また、ディスプレイ2400は、スライド識別欄2412および試薬識別欄2410を有するスライド識別表2404を含む。ディスプレイ2400はさらに、開始実行ボタン、再スキャンボタン2416およびキャンセルボタン2418を含む。
【0139】
スライド識別表2404から分かるように、ステーション2に設置したスライドは抗体CD30を必要とし、ステーション3に設置したスライドは抗体LCAを必要とする。しかし、試薬識別表2402では、ステーション2に設置した抗体がLCAであり、ステーション3に設置した抗体がCD30であったことが示されている。したがって間違った抗体、同様に間違った処理プロトコルが、ステーション2のスライドおよびステーション3のスライドに割り当てられたということである。この情報に基づいて、操作者は、ステーション2のスライドとLCAを必要とするスライドとを交換すること、ならびにステーション3のスライドとCD30を必要とするスライドとを交換し、スライドを再走査することが可能になる。あるいは操作者は試薬カートリッジと、適切な抗体を有する試薬カートリッジを交換することも可能である。またさらに操作者は、スライド上の識別子と、スライド試料に添加した試料を適切に識別する識別子とを交換してもよい。例えばスライドをステーション1などの試薬カートリッジを持たないステーションに設置してしまうことなど、他の不一致の多様な例をディスプレイ2400に表示する可能性もさらに考えられる。
【0140】
いくつかの実施態様では、制御コンピュータ2002により自動的に不一致を使用者に通報することもさらに考えられる。典型的に、制御コンピュータ2002は試薬識別表2402とスライド識別表2404との間の不一致を検出するようにプログラミングし得る。不一致が検出されると、スライド上の識別子によって識別された試薬がスライドに添加されていないことを使用者に通報するために警報を鳴らすようにしてもよい。
【0141】
本明細書の操作を実行するための制御コンピュータ2002などの装置は、必要とされる目的のために特別に構築されたものでも、あるいはコンピュータに保存されたコンピュータプログラムにより選択的に起動または再構築された汎用コンピュータを含むものでもよい。このようなコンピュータプログラムは、限定するものではないがフロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD‐ROMおよび磁気光ディスクを含む任意のタイプのディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気もしくは光カード、ユニバーサルシリアルバス(USB)保存装置(例えばUSBキー装置)を含むフラッシュメモリ装置、または電子的命令の保存に適した任意のタイプの媒体など、コンピュータ可読型保存媒体に保存可能であり、これらの各々はコンピュータシステムバスに接続してもよい。
【0142】
図25(A)、図25(B)および図25(C)は試料処理システム内の廃液排出システムの実施態様の斜視図を示す。廃液排出システム2500は廃液容器2502、2504を含み得る。廃液容器2502、2504は図1を参照して説明したバルク容器118に類似したものであると言える。2つの廃液容器2502、2504を図示しているが、以下の説明は試料処理システム内に配置された廃液容器のうち、あらゆる個数に当てはまる。また、容器を廃液容器として記述しているが、当該容器は任意のタイプの液体(例えば試薬または洗浄液)を保持するために使用する任意のタイプのバルク容器であってよいと考えられる。
【0143】
廃液容器2502、2504は、図1を参照して説明した反応ステーションを保持する反応区画の下方にある試料処理システム内に配置し得る。廃液容器2502、2504は感知プレート2514上に置いてもよい。感知プレート2514は図19を参照して説明したセンサー1904に類似したものであると言える。この態様では、感知プレート2514は廃液容器2502、2504内の液体レベルを検出するために使用してもよい。排出チューブ2506、2508はそれぞれ廃液容器2502、2504と配列し、廃液を反応ステーションから廃液容器2502、2504へと導くことに有用である。操作中は、廃液容器2502、2504の充填または排出の必要性によって排出チューブ2506、2508を上下させることが望ましい場合もある。例えば、処理操作中、廃液が廃液容器2502、2504内に直接溜まるように、排出チューブ2506、2508を廃液容器2502、2504内では下げることが望ましい。その後、廃液容器2502、2504の変更、交換または排出を容易にするために排出チューブ2506、2508を上げる。この態様では、排出チューブ2506、2508を上下させるために、レバー2510、2512をそれぞれ排出チューブ2506、2508に取り付ける。図25(A)では、レバー2510が下がり、排出チューブ2506が廃液容器2502の中まで下がり、一方、レバー2512が上がり、排出チューブ2508が廃液容器2504の上方へ上がっている実施態様が示されている。
【0144】
図25(B)に示すとおり、排出チューブ2506、2508はそれぞれ接続チューブ2516、2518に流体的に接続されている。接続チューブ2516、2518は、反応ステーションから排出チューブ2506、2508に移動させる廃液用液体導管を備える。排出チューブ2506、2508が廃液容器2502、2504内に下がるときは下降傾斜導管を提供し、排出チューブ2506、2508が廃液容器2502、2504の上方へ上がるときは上昇傾斜導管を提供するように、接続チューブ2516、2518は変更可能な構造を有し得る。接続チューブ2516、2518の各々は互いに独立しており、したがって個別に変更可能である。この態様では、接続チューブ2518は排出チューブ2508の近位にある第1ジョイント2528および排出チューブ2508の遠位にある第2ジョイント2530を有する接続されたチューブであってよい。接続チューブ2518はジョイント2528、2530と接続した金属もしくは剛性プラスチック材料などの剛性材料、または可塑性プラスチックなどのさらに可塑性の材料の領域から成っていてもよい。あるいは、接続チューブ2518は、ジョイントが無くとも変更可能な可塑性プラスチック材料から成る一体化形成されたチューブであり、したがってジョイント2528および2530は省略してもよい。例えば廃液コンテナ2504を外すために排出チューブ2508を上げる場合、第1ジョイント2528と排出チューブ2508との間にある接続チューブ2518の部分は、第2ジョイント2530と垂直接続部材2526との間にある接続チューブ2518の部分の上方へ上がり、一方、第1ジョイント2528と第2ジョイント2530との間にある接続チューブ2518の部分は上昇傾斜する配向をとっている。さらに接続チューブ2516は接続チューブ2518と同様に接続し得る。排出チューブ2508が上げられ、よって接続チューブ2518が前述の上がった状態の上昇傾斜部分を含み、一方、接続チューブ2516が下降傾斜配向をとるように排出チューブ2506が下げられる実施態様は図25(A)、図25(B)および図25(C)に示されている。可塑性プラスチックチューブの場合、接続チューブ2516、2518の類似の部位が上述のように上昇および傾斜配向をとり得る。
【0145】
廃液排出システム2500を通る液体の流れは実質的に、主に重力により起こる受動的プロセスである。このように、接続チューブ2516、1518の配向を変える能力により、排出チューブ2506、2508を通る液体、ならびに接続の反応ステーション内へ逆流する液体の流れを制御することが促進される。特に、排出チューブ2506が下がり、よって接続チューブ2516が下降傾斜形態をとるとき、重力が廃液の流れを反応ステーションの廃液ドレーン2520から、垂直接続部材2524を経て、接続部材2516へと運ぶ。接続部材2516が下降傾斜していることから、反応ステーションから排出された液体は排出チューブ2506に容易に流れ、廃液容器2502内に貯留する。接続部材2518が上昇傾斜形態をとるとき(すなわち排出チューブ2508が上がっているとき)、液体は流動を停止し、場合により、廃液チューブ2508から、接続の反応ステーションの廃液ドレーン2522に逆行して流れ始める。液体の流動の停止または逆流は、廃液が感知プレート2514および/または操作者にこぼれることを防止するので、例えば廃液容器2504を外すときに、あるいは別の容器と交換するときに望ましい。しかし、接続部材2518内の液体の液面レベルが接続部材2518の最上部(たとえばジョイント2528)より上にある垂直接続部材2526内のレベルに達したとき、液体は、接続した反応ステーション内に逆流しないように排出パイプ2508の方向に流れ始める。このような特徴は、例えば、操作者が処理操作を開始する前に排出チューブ2508を排出容器2504内に下げることを忘れた場合に望ましい。垂直接続部材2526内に十分なレベルの液体が蓄積し始めると(すなわち液体の液面レベルが接続部材2518の最上部より上)、液体は接続部材2518を経由して、排出チューブ2508を介して廃液容器2504へと流れ始め、それにより廃液が反応ステーション内で逆流して上昇することが防止される。
【0146】
本明細書で示したアルゴリズムおよび表示は本質的に特定のコンピュータまたはその他の装置とは何ら関係がない。多様な汎用システムは、本明細書における教示と一致するプログラムで使用し得ること、あるいは説明した方法を実行するためのさらに特化した装置の構成に有用であることを証明できる可能性がある。また、本発明は、何ら特定のプログラミング言語を参照して説明しているわけでもない。本明細書で説明した発明の教示を実行するために、多様なプログラミング言語を使用する可能性が考えられる。
【0147】
コンピュータ可読型媒体は、コンピュータにより読み取り可能な形態で情報を保存するための任意の機構を含む。例えばコンピュータ可読型媒体としては、読み取り専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスク記憶媒体、光学式記憶媒体、フラッシュメモリ装置、または他のタイプの機械アクセス可能な保存媒体が挙げられる。
【0148】
「1つの実施態様」または「1つ以上の実施態様」に対する本明細書全体にわたる引例が例えば、特定の性質が本発明の実行に含まれ得ることを意味していることもまた高く評価すべきである。同様に、開示を合理化し、多様な独創的態様の理解を支援する目的で、明細書中、多様な特性が単一の実施態様、図面またはそれらの説明の中にまとまって群を形成している場合があることは高く評価すべきである。しかし開示のこの方法は、本発明が各請求項で明確に引用したものよりさらに多くの態様を必要とする意図を反映していると解釈すべきではない。むしろ、以下の請求項が反映しているように、独創的態様は開示された単一の実施態様の特徴すべてに掛かっている訳では決してない。したがって「詳細な説明」に続く請求項は本明細書によりこの「詳細な説明」に明確に組み込まれており、各請求項は本発明の別個の実施態様としてそれ自身に基づいている。
【0149】
前述の明細書では、本発明はその特定の実施態様を参照して記述されている。しかし、添付の請求項に記載の本発明の思想および広いスコープの範囲内で多様な改善および改変が本発明になされ得ることが明らかになるであろう。例えば、本明細書で開示した試薬カートリッジ(例えば試薬カートリッジ408)は、試薬の代わりに溶媒または水を含み、例えば下方にあるスライド上の試料を染色する以外の目的にも使用し得る。したがって明細書および図面は限定的な意味というよりむしろ説明的な意味でとらえられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドに接続した第1識別子および試薬カートリッジに接続した第2識別子から得られる情報を自動的に表示する工程;ならびに
該第1識別子および該第2識別子から得られる該情報に基づいて染色記録を作成する工程:
を含む方法。
【請求項2】
前記第1識別子から得られる前記情報が、患者または前記スライドに添加する試薬に関する情報を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2識別子から得られる前記情報が、前記試薬カートリッジに添加した試薬に関する情報を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スライドおよび試薬カートリッジが搭載された反応ステーションと接続した第3識別子から得られる情報を表示する工程をさらに含み、該第3識別子から得られる該情報は該反応ステーションの配置に関する情報を含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記情報を表示する工程が、第1識別子から得られる該情報を第1表に表示する工程、および第2識別子から得られる該情報を第2表に表示する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1表は前記スライドの位置を識別する情報を含み、前記第2表は前記試薬カートリッジの位置を識別する情報を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1識別子から得られる前記情報が前記第2識別子から得られる前記情報と同一であるか否かを判断する工程;および
該情報が同一でない場合、不一致を使用者に通報する工程:
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
試料処理システム内のスライドの位置および第1表にある該スライドと接続した第1識別子から得られる情報を表示する工程;
試料処理システム内の試薬カートリッジの位置および第2表にある該試薬カートリッジと接続した第2識別子から得られる情報を表示する工程;ならびに
該第1表と該第2表とを共に配列する工程:
を含む方法。
【請求項9】
前記第1識別子から得られる前記情報が、患者または前記スライドに添加する試薬に関する情報を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2識別子から得られる前記情報が、前記試薬カートリッジに取り付けた試薬に関する情報を含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記スライドおよび前記試薬カートリッジの位置を識別する工程が、該スライドおよび該試薬カートリッジが配置されている反応ステーションと接続した第3識別子から情報を得る工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1識別子から得られる情報と前記第2識別子から得られる情報との間の不一致を使用者に通報する工程をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記スライドおよび前記試薬カートリッジの前記位置に基づいて前記第1識別子から得られる情報および前記第2識別子から得られる情報が配列されるように、配列する工程が前記第1表と前記第2表とを並置する工程を含む請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−68613(P2013−68613A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200405(P2012−200405)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(504462571)サクラ ファインテック ユー.エス.エー., インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】