説明

自動染色装置

【課題】 多様な染色を迅速に効率良く行うことができる自動染色装置を提供する。
【解決手段】 被染物及び染液が収容された容器を個別に回転させて被染物を染色する複数の回転染色手段1と、搬入ステーションS1にある容器を把持していずれかの回転染色手段1に搬送すると共に、被染物の染色が終了した容器を把持して回転染色手段1から搬出ステーションS3に搬送する容器搬送手段50とを備える自動染色装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動染色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
染液を貯留したポット内に生地を収容して、このポットを回転させることにより生地を染色するポット式の染色機が従来から知られている。例えば、特許文献1には、図11に示すように、被染物及び染液を収容する染色容器200と、染色容器200を回転させる回転軸202とを備え、回転軸202に固定された駆動用プーリ204を介して回転軸202に回転力を伝達するように構成されたユニット210を複数配置してなる染色機が開示されている。各ユニット210において、染色容器200の開口は上蓋206により閉じられ、上蓋206は取付部材208を介して回転軸202に取り付けられており、回転軸202の回転により染色容器200が回転し、生地を染色することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−309476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の染色機は、染色容器200に生地及び染液を収容した後、取付部材208を介して回転軸202に取り付ける作業が必要になり、染色後は取付部材208から染色容器200を取り外し、上蓋206を開けて生地を取り出す作業が必要になるため、このような作業を複数のユニット210のそれぞれに対して行うことは煩雑で長時間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、多様な染色を迅速に効率良く行うことができる自動染色装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、被染物及び染液が収容された容器を個別に回転させて被染物を染色する複数の回転染色手段と、搬入ステーションにある前記容器を把持していずれかの前記回転染色手段に搬送すると共に、被染物の染色が終了した前記容器を把持して前記回転染色手段から搬出ステーションに搬送する容器搬送手段とを備える自動染色装置により達成される。
【0007】
この自動染色装置において、前記回転染色手段は、上部が開口する前記容器を回転可能に搭載する回転台と、前記容器に対して上方から蓋体を押圧することにより前記容器を回転可能に密閉する押圧手段と、密閉された前記容器を傾倒させる傾倒手段と、前記容器を傾倒状態で回転させる回転駆動手段とを備えることが好ましく、前記容器搬送手段は、前記回転台が水平な状態で前記回転台と蓋体との間に前記容器を水平方向に挿入するように構成することが好ましい。
【0008】
また、前記容器搬送手段は、前記容器を把持するチャック部材と、前記チャック部材を互いに直交する3軸方向に沿って駆動する3軸駆動手段と、前記チャック部材を開閉するチャック開閉手段とを備えることが好ましい。
【0009】
また、前記容器の重量を検出する重量検出手段を前記搬入ステーションに備えることが好ましい。
【0010】
また、被染物が染色途中の前記容器を前記容器搬送手段により搬送して一時的に仮置きする中間ステーションを備える構成にすることが可能であり、この構成においては、前記容器内に染色助剤を添加する添加手段を前記中間ステーションに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動染色装置によれば、多様な染色を迅速に効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動染色装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す自動染色装置の回転染色装置を矢示A方向に見た斜視図である。
【図3】図2に示す回転染色装置のB−B断面図である。
【図4】図2に示す回転染色装置のC−C断面図である。
【図5】図4に示す回転染色装置の容器傾倒前の状態を示す側面図である。
【図6】図4に示す回転染色装置の要部拡大図である。
【図7】図1に示す自動染色装置の容器搬送装置を矢示A方向に見た斜視図である。
【図8】図7に示す容器搬送装置のチャック部材を拡大して示す斜視図であり、(a)は閉じた状態、(b)は開いた状態をそれぞれ示している。
【図9】図8に示すチャック部材を下方から見た斜視図である。
【図10】図2に示す回転染色装置の他の実施形態を示す要部斜視図である。
【図11】従来の染色機の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動染色装置の全体構成を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、自動染色装置100は、被染物及び染液が収容された容器を個別に回転させて被染物を染色する複数の回転染色装置1と、各回転染色装置1に対して容器を搬送する容器搬送装置50とを備えている。各回転染色装置1は、本実施形態においては水平方向(X方向)に並列配置された3つを1つのユニットとして、各ユニットが上下方向(Z方向)に4段に設けられることで、マトリクス状に配置されている。
【0015】
図2は、図1に示す回転染色装置の1つのユニットを矢示A方向に見た斜視図であり、図3及び図4は、それぞれ図2のB−B断面図、及び、C−C断面図である。各回転染色装置1は、それぞれ上部に開口を有する容器2を搭載可能に構成されており、図2から図4に示すように、それぞれ回転台10、押圧装置20及び傾倒装置30を備えている。図2は、容器2を略水平(図1のY方向)に傾倒した後の状態を示している。
【0016】
回転台10は、円板状に形成されており、取付フレーム4に軸受装置6を介して回転自在に支持されている。
【0017】
押圧装置20は、取付フレーム4に取り付けられたエアシリンダなどの押圧用シリンダ21と、この押圧用シリンダ21のロッド21aの先端に連結板22を介して一端側が取り付けられた伝達シャフト23と、伝達シャフト23の他端側に取り付けられた板状の押圧体24とを備えている。押圧用シリンダ21及び伝達シャフト23は、回転台10の回転軸と略平行に配置されており、押圧体24は回転台10と対向するように配置されている。図4に示すように、押圧体24には、固定軸25が固定されている。
【0018】
固定軸25は、軸線に沿って中空部25aが形成されており、回転台10の回転軸と軸線が一致するように押圧体24を貫通して設けられている。中空部25aの回転台10に面した一端側には圧力開放管26が接続されており、中空部25aの他端側は連通口25bを介して外部と連通している。圧力開放管26は、図4に示す容器2の傾倒状態で上方に延びるように配置されている。また、中空部25aには、他端側から熱電対29が挿入されており、熱電対29は、測温部29aが中空部25aの一端側を経て下方に延びるように配置されている。なお、固定軸25に対する熱電対29の挿入部には、容器2内の染液が漏出しないように液密に封止されている。圧力開放管26及び熱電対29は、後述する蓋体27に設けられたプレート27aにより覆われており、染色中に被染物Cが圧力開放管26や熱電対29に引っ掛かることが防止される。
【0019】
また、押圧装置20は、容器2の開口を密閉する蓋体27を備えており、蓋体27の表面中央には軸受装置28が固定されている。押圧体24の回転軸25は、軸受装置28を介して蓋体27の中央に形成された開口に挿通されており、蓋体27を回転可能に支持している。軸受装置28は、環状のケース28a内に転がり軸受28bが収容されて構成されており、押圧体24が軸受装置28のケース28aに接して蓋体27を押圧することにより、蓋体27が容器2の周縁に密着する。図6に拡大図で示すように、押圧体24と軸受28bとの間にはワッシャ201が介在されており、押圧体24に矢示方向に作用する押圧力により、ワッシャ201、軸受28b及びケース28aを介して蓋体27が押圧される。固定軸25の一端側には環状のパッキン202が外嵌されており、このパッキン202により固定軸25と蓋体27との間が液密にシールされる。
【0020】
押圧装置20の構成は、容器2を蓋体27により密閉して容器2及び蓋体27を回転可能に挟持するものであればよく、例えば、コ字状フレームの対向面の一方に回転台10を回転可能に支持し、他方に駆動シリンダを介して押圧体24を進退可能に支持する構成であってもよい。容器2や蓋体27など染液と接触する部位は、ステンレス材など耐腐食性の材質からなることが好ましい。
【0021】
傾倒装置30は、支持フレーム31に取り付けられたエアシリンダなどの傾倒用シリンダ32を備えており、傾倒用シリンダ32のロッド32aの先端が取付フレーム4に固定されている。取付フレーム4は支持フレーム31に対して回転可能となるように回転軸33により支持されており、傾倒用シリンダ32のロッドを進退させることにより取付フレーム4が回動して、容器2の姿勢を図5に示す起立状態と図4に示す傾倒状態との間で変化させることができる。
【0022】
また、回転染色装置1は、回転台10に装着された容器2を回転させる回転駆動装置40を備えている。回転駆動装置40は、支持フレーム31に取り付けられた駆動プーリ41及び従動プーリ42と、これら駆動プーリ41及び従動プーリ42に巻き掛けられた無端状の駆動ベルト43とを備えている。駆動ベルト43には、支持フレーム31に取り付けられたテンションローラ44により張力が付与されている。駆動プーリ41は、駆動モータ45の回転軸に連結されており、駆動ベルト43を一方向に回転駆動する。従動プーリ42は、外周面に沿って溝部42aが形成されている。駆動ベルト43は、容器2をそれぞれ傾倒させることにより、従動プーリ42の溝部42aにおいて下面側が回転台10の外周縁と接するように配置されており、回転台10を摩擦によって回転駆動する。本実施形態においては、3つの回転染色装置1における容器2の回転駆動を1つの回転駆動装置40により行うことで、構成のコンパクト化を図っているが、回転染色装置1毎に回転駆動装置40を設けてもよい。
【0023】
また、回転染色装置1は、傾倒状態の容器2の軸線に沿って延びるように回転台10の左右両側に配置された遠赤外線ヒータ等の加熱ヒータ8をそれぞれ備えている。加熱ヒータ8は、容器2を効率良く加熱できるように反射板8aで覆われており、ステー(図示せず)を介して支持フレーム31に取り付けられている。
【0024】
更に、回転染色装置1は、図4においてのみ図示するように、傾倒状態の容器2の側面に冷却水を供給する冷却水ノズル9を備えている。冷却水ノズル9は、不図示の冷却水タンクからポンプ及び流路内に配設された電磁弁の作動により容器2の側面に冷却水を供給することができるように、傾倒する容器2と干渉しない近傍位置で支持フレーム31に固定されている。冷却水ノズル9の先端には、冷却水ノズル9の軸線を挟んで両側から斜め下方に向けて冷却水を噴射する2つの冷却水噴出孔9a,9aが形成されており、容器2の軸線に沿って広範囲に冷却水を供給することができる。
【0025】
また、容器搬送装置50は、図1及び図7に示すように、複数の垂直コラム61及び複数の水平ビーム62からなる支持フレーム60と、支持フレーム60に左右方向(X方向)に移動可能に支持された水平移動体70と、水平移動体70に上下方向(Z方向)に昇降可能に設けられた昇降体80と、昇降体80に前後方向(Y方向)に進退可能に設けられたチャック部材90とを備えている。支持フレーム60は、左右方向(X方向)に延びる一対のガイドレール63,63が、垂直コラム61の下端に連結された水平ビーム62上に設けられている。
【0026】
水平移動体70は、上側ブロック71及び下側ブロック72が上下方向(Z方向)に延びる一対のガイドロッド73,73により連結されて構成されており、下側ブロック72の両側下部が一対のガイドレール63,63に係合している。
【0027】
昇降体80は、図8(a)に拡大図で示すように、左右(X方向)両側に配置された一対のブラケット81,81が、上下(Z方向)に配置された一対のステー82a,82a、及び、前後(Y方向)に配置された一対の連結板82b,82bにより連結されて構成されており、一対のブラケット81,81の対向する内面側に、チャック部材90を案内するガイド部材83,83がそれぞれ設けられている。また、各ブラケット81,81の外面側には、ガイドロッド73,73が挿通される挿通ブロック84,84が固定されている。
【0028】
チャック部材90は、同じく図8(a)に示すように、上下に配置された板状の一対のベース部材91,91の両側部に、2つの回転軸92,92がそれぞれ回転可能に介在されている。各回転軸92,92には、把持爪93,93の端部が結合されており、回転軸92,92の回動と共に把持爪93,93が回動して、把持爪93,93の開閉が行われる。また各回転軸92,92には、板状のレバー部材94,94の一端側が連結されており、レバー部材94,94の他端側同士は、レバー部材94,94に回転可能に設けられた突部94a,94a(図8(b)参照)が、ブロック状の結合具95に形成された溝部95a,95aに係合している。溝部95a,95aは、レバー部材94,94の長手方向に沿って延びており、チャック部材90の開閉時に突部94a,94aが溝部95a,95aに沿って移動可能に形成されている。
【0029】
また、容器搬送装置50は、図7に示すように、水平移動体70、昇降体80及びチャック部材90を、それぞれX方向、Z方向及びY方向に駆動する水平駆動装置52、昇降駆動装置54及び進退駆動装置56を備えており、更に、チャック部材90を開閉するチャック開閉装置(図示せず)を備えている。
【0030】
水平駆動装置52は、同じ高さ位置に配置されるタイミングプーリ52a,52bを対として備えており、この一対のタイミングプーリ52a,52bは、支持フレーム60の上部及び下部の水平ビーム62にそれぞれ取り付けられている。一対のタイミングプーリ52a,52b間には、無端状のタイミングベルト52cが左右方向(X方向)に沿って懸架されており、上下のタイミングベルト52c,52cには、水平移動体70の上側ブロック71及び下側ブロック72がそれぞれ固定されている。また、上下にそれぞれ配置された一対のタイミングプーリの一方同士52a,52aは、連結軸52dによって一体的に回転するように連結されており、上側のタイミングプーリ52aは、サーボモータ52eの出力軸に設けられたタイミングプーリ52fとの間に、別のタイミングベルト52gが巻き掛けられている。水平駆動装置52は、このような構成を備えることにより、サーボモータ52eの作動によって上下のタイミングベルト52c,52cが同期して駆動され、水平移動体70が一対のガイドレール63,63に沿ってX方向に移動する。
【0031】
昇降駆動装置54は、水平移動体70の上側ブロック71及び下側ブロック72に、それぞれタイミングプーリ54a,54bを対として備えており、この一対のタイミングプーリ54a,54bは、水平移動体70の左右方向(X方向)に沿った両側にそれぞれ設けられている。一対のタイミングプーリ54a,54b間には、無端状のタイミングベルト54cが上下方向(Z方向)に沿って懸架されており、左右のタイミングベルト54c,54cには、昇降体80の両側のブラケット81,81がそれぞれ固定されている(図8参照)。また、一対のタイミングプーリの上側同士54a,54aは、連結軸54dによって一体的に回転するように連結されており、一方のタイミングプーリ54aは、サーボモータ54eの出力軸に設けられたタイミングプーリ54fとの間に、別のタイミングベルト54gが巻き掛けられている。昇降駆動装置54は、このような構成を備えることにより、サーボモータ54eの作動によって左右のタイミングベルト54c,54cが同期して駆動され、昇降体80が一対のガイドロッド73,73に沿ってZ方向に移動する。
【0032】
進退駆動装置56は、図9に斜め下方から見た図で示すように、一対のブラケット81,81間の前後に配置された一対の連結板82b,82bの間に固定された、ロッドレスシリンダから構成されている。進退駆動装置56の内部には、ピストン及びマグネット(図示せず)が収容されており、両端のエア導入部から圧縮空気を選択的に導入することにより、ピストン及びマグネットが前後(Y方向)に移動し、チャック部材90の後方側に備えるマグネットを吸着してチャック部材90を連動させることができる。進退駆動装置56は、このような構成により、チャック部材90を前後方向に駆動することができる。
【0033】
チャック開閉装置は、図8及び図9では図示を省略したエアシリンダにより構成されており、このエアシリンダのロッドを結合具95に結合させることにより、結合具95を前後(Y方向)に進退させることができる。チャック開閉装置は、チャック部材90を図8(a)に示す状態から、図8(b)に示すように前後方向(Y方向)に進出させた後、結合具95を更に前方に駆動することで、把持爪93,93を開放し、チャック部材90に把持されていた容器2を回転染色装置1に載置することができる。また、回転染色装置1における染色終了後は、これと逆の動作を行うことで、回転染色装置1上の容器2を再び把持することができる。
【0034】
このように、水平駆動装置52、昇降駆動装置54及び進退駆動装置56は、互いに直交する3軸(X軸、Z軸及びY軸)方向に沿ってチャック部材90を駆動する3軸駆動手段として機能する。これら水平駆動装置52、昇降駆動装置54及び進退駆動装置56は、チャック開閉装置や回転染色装置1と共に不図示の制御装置によって作動が制御される。
【0035】
また、自動染色装置100は、図1に示すように、容器搬送装置50による容器2の搬送が可能な領域内に、搬入ステーションS1、中間ステーションS2及び搬出ステーションS3をそれぞれ備えている。搬入ステーションS1及び中間ステーションS2には、上下方向に隣接して配置されており、搬送された容器2が載置される重量計51a,51bがそれぞれ設けられている。搬入ステーションS1には、不図示の搬入コンベアにより、カラーキッチン等の前処理装置(図示せず)から、被染物及び染液が収容された容器2が順次搬送される。重量計51a,51bは、被染物及び染液を含む容器2の全体重量を検出して、検出量に応じた信号を出力可能であればよく、例えば、圧電素子や、ひずみゲージ式、静電容量式の重量センサなどを使用することができる。
【0036】
また、自動染色装置100は、芒硝やソーダ灰などの染色助剤を添加する添加装置を更に備えており、添加装置の供給ノズル53が中間ステーションS2の上方に配置されて、容器2の上部開口から染色助剤を添加することができるように構成されている。
【0037】
搬出ステーションS3には、ベルトコンベア等の搬出コンベア51cが設けられており、載置された容器2は、搬出コンベア51cにより中和や洗浄を行う後処理装置(図示せず)に向けて搬送される。
【0038】
次に、上記構成を備える自動染色装置100の作動を説明する。各容器2には、綿や、ナイロン、ポリエステル(カチオン可染)、アクリル等の化学繊維からなる被染物が収容されると共に、当該被染物に適した染液や助剤が予め注入される。こうして、被染物及び染液を収容した容器2は、上部が開口した状態で搬入コンベア(図示せず)に載置される。この容器2は、搬入ステーションS1の近傍位置に順次搬送された後、プッシャ(図示せず)等により搬入ステーションS1の重量計51aに載置される。制御装置は、重量計51aの検出信号が入力されると、予め設定された重量値との比較により染液等が適量収容されているか否かを判定し、判定結果が不合格の場合には、アラーム音などを出力して動作を一時停止する。判定結果が合格の場合、制御装置は、水平駆動装置52及び昇降駆動装置54を作動させ、チャック部材90を搬入ステーションS1に移動する。そして、進退駆動装置56の作動によりチャック部材90で容器2を把持した後、停止状態にある回転染色装置1を検出していずれかを選択し、当該回転染色装置1に搬送する。
【0039】
水平駆動装置52及び昇降駆動装置54の作動による水平移動体70及び昇降体80の移動速度は、搬入ステーションS1のX−Z面における座標位置と、目的地となる回転染色装置1のX−Z面における座標位置とに基づいて、それぞれ個別に設定することができ、水平移動体70及び昇降体80を同時に作動させることで、チャック部材90を回転染色装置1まで直線的に移動させることができる。
【0040】
回転染色装置1は、非使用状態においては、押圧装置20及び傾倒装置30の作動により、回転台10が水平な状態で、回転台10と蓋体27との間隔が予め拡げられている。容器2を回転染色装置1まで搬送したチャック部材90は、進退駆動装置56の作動によって、容器2を回転台10と蓋体27との間に挿入した後、チャック開閉装置の作動により把持爪93,93の先端部を互いに拡げることで、容器2を回転台10に載置する。
【0041】
回転染色装置1は、回転台10に容器2が搭載されたことをセンサ等により検知すると、押圧装置20を作動させて、蓋体27を容器2に対して上方から押圧する。これにより容器2は蓋体27により密閉され、容器2及び蓋体27は、回転台10と押圧体24との間に回転可能に挟持される。この後、傾倒装置30を作動させて、図4に示すように容器2を傾倒させる。本実施形態においては、容器2を軸線が略水平となるように傾倒させているが、斜め上方または斜め下方に傾斜するように容器2を傾倒させてもよい。容器2の傾倒状態では、圧力開放管26が容器2内で上方に延びており、圧力開放管26の開口端が染液の液面よりも上方に露出して、容器2の内部空間が容器2の外部と連通されている。一方、熱電対29は容器2内で下方に延びており、染液の温度を測定する。
【0042】
容器2が傾倒状態になると、加熱ヒータ8により容器2内が加熱されると共に、回転台10の外周縁が駆動ベルト43に当接し、回転台10が回転を開始する。このように、駆動装置40は、駆動ベルト43により容器2の傾倒動作と連動して各容器2を自動的に回転駆動することができると共に、複数の回転台10を個別に回転駆動することができる。
【0043】
こうして、容器2が蓋体27と共に回転して、図4に破線で示すように、収容された被染物Cが染液Lにより染色される。染液Lの貯留量は、通常は傾倒状態の容器2の軸線よりも液面が若干下方に位置するように設定される。圧力開放管26は、容器2の回転中も常に上方を向いており、容器2の内部温度の上昇に伴う内圧上昇を開放する。
【0044】
染液の温度は、熱電対29の測定に基づき加熱装置の出力を制御することにより、予め設定された温度制御パターンに沿って制御することができる。本実施形態においては、加熱ヒータ8の他に、容器2の外表面に冷却水を散布する冷却装置を備えているため、染色中に染液の温度低下が必要な場合に設定温度に迅速に移行することができ、PID制御など公知の制御手法を用いて所望の温度制御パターンに沿った染色が可能である。例えば、緩やかな温度低下が必要な場合は加熱ヒータ8の出力制御で対応可能である一方、温度低下を急激に行う場合には、加熱ヒータ8の出力抑制と共に、冷却水ノズル9から冷却水を供給する。冷却水の流量は本実施形態では一定としているが、目標温度に応じて流量制御するようにしてもよい。
【0045】
こうして、所定時間の経過により被染物の染色が終了した後は、傾倒装置30を再び作動させて、容器2を図5に示す起立状態に戻した後、押圧装置20を作動させて蓋体27を上昇させ、容器2の密閉状態を開放する。制御装置は、このような作動に伴い、水平駆動装置52及び昇降駆動装置54の作動によりチャック部材90を回転染色装置1まで移動させ、進退駆動装置56及びチャック開閉装置の作動により容器2を再び把持した後、搬出ステーションS3まで移動させる。そして、搬出ステーションS3において搬出コンベア51c上に容器2を載置し、中和や洗浄などを行う後処理装置に向けて移送する。回転染色装置1は、容器2が取り出されたことをセンサ等により検出すると、非使用状態であることを示す信号を制御装置に出力し、新たな容器2を受け入れ可能な状態になる。
【0046】
本実施形態の自動染色装置100によれば、被染物を染色する複数の回転染色装置1に対して、容器搬送手段50が、回転台10と蓋体27との間に容器2を水平方向に挿入するように構成されているので、各回転染色装置1は、受け入れた容器2内の被染物の染色を迅速に開始することができ、順次搬送される容器2に対して染色を迅速に効率良く行うことができる。
【0047】
また、回転染色装置1毎に染色液の種類、染色温度、染色時間などの染色条件を任意に変えて染色することができるので、多品種少量(小ロット)型の染色にフレキシブルに対応することができる。更に、各回転染色装置1における染色時間が異なる場合であっても、回転染色装置1への容器2の投入順序とは無関係に、いずれかの回転染色装置1で染色が終了次第、容器2を新たな容器2と入れ替えて次の染色を開始することができるので、生産リードタイムの短縮を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態のように、チャック部材90を、水平駆動装置52、昇降駆動装置54及び進退駆動装置56により3軸駆動できるように構成することで、多数の回転染色装置1が配置される場合においても、各回転染色装置1に対する容器2の搬送を迅速・容易に行うことができる。
【0049】
上記実施形態の説明では、搬入ステーションS1に搬入された容器2を、容器搬送装置50により搬送していずれかの回転染色装置1に投入し、被染物の染色後に、再び容器搬送装置50により搬出ステーションS3まで搬送するようにしているが、例えば、綿やキュプラ等のセルロース繊維からなる被染物に濃色を染色する場合には、回転染色装置1における被染物の染色後に、容器搬送装置50により中間ステーションS2に搬送し、一時的に仮置きするようにしてもよい。中間ステーションS2においては、容器2の上方に配置された添加装置の供給ノズル53からソーダ灰などを添加することができ、所定量が添加されたことを重量計51bにより検出すると、制御装置は、停止状態にある回転染色装置1に容器2を再度搬送し、所定時間の染色処理を続行した後、容器搬送装置50により容器2を搬出ステーションS3まで搬送する。このように、本実施形態の自動染色装置100は、被染物の染色途中に染色助剤の添加が必要になる場合においても、迅速な対応が可能である。
【0050】
また、回転染色装置1の構成は、本実施形態のものに限定されず、開口が蓋体により予め密閉された容器内の被染物を染色するものであってもよい。例えば図10に示すように、回転染色装置110は、開口が蓋体2aにより閉じられた容器2を軸線が水平な状態で搭載する回転自在な複数の支持ローラ111と、容器2の上方において上下動自在に支持されモータ(図示せず)により回転駆動される駆動ローラ112と、容器2の天面及び底面にそれぞれ当接して容器2を回転可能に挟持する一対のストッパ113,114とを備え、容器2の天面に当接する一方のストッパ113が容器2の軸線に沿って進退可能な構成にすることができる。この回転染色装置110は、被染物C及び染液Lが収容された容器2を予め蓋体2aにより密閉して容器搬送装置(図示せず)により搬送し、支持ローラ111上に搭載すると、これをセンサ(図示せず)により検知して、一方のストッパ113を進出させて他方のストッパ114との間に容器2を挟持すると共に、駆動ローラ112を降下させて容器2の胴部に当接させ、回転駆動力を伝達する。こうして、容器2は蓋体2aが密閉された状態で回転し、被染物Cの染色が行われる。
【符号の説明】
【0051】
1 回転染色装置
2 容器
8 遠赤外線ヒータ
8a 反射板
9 冷却ノズル
10 回転台
20 押圧装置
24 押圧体
25 固定軸
25a 中空部
26 圧力開放管
27 蓋体
30 傾倒装置
40 駆動装置
43 駆動ベルト
50 容器搬送装置
51a,51b 重量計
52 水平駆動装置
53 供給ノズル
54 昇降駆動装置
56 進退駆動装置
60 支持フレーム
70 水平移動体
80 昇降体
90 チャック部材
100 自動染色装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被染物及び染液が収容された容器を個別に回転させて被染物を染色する複数の回転染色手段と、
搬入ステーションにある前記容器を把持していずれかの前記回転染色手段に搬送すると共に、被染物の染色が終了した前記容器を把持して前記回転染色手段から搬出ステーションに搬送する容器搬送手段とを備える自動染色装置。
【請求項2】
前記回転染色手段は、上部が開口する前記容器を回転可能に搭載する回転台と、前記容器に対して上方から蓋体を押圧することにより前記容器を回転可能に密閉する押圧手段と、密閉された前記容器を傾倒させる傾倒手段と、前記容器を傾倒状態で回転させる回転駆動手段とを備え、
前記容器搬送手段は、前記回転台が水平な状態で前記回転台と蓋体との間に前記容器を水平方向に挿入する請求項1に記載の自動染色装置。
【請求項3】
前記容器搬送手段は、前記容器を把持するチャック部材と、前記チャック部材を互いに直交する3軸方向に沿って駆動する3軸駆動手段と、前記チャック部材を開閉するチャック開閉手段とを備える請求項1または2に記載の自動染色装置。
【請求項4】
前記容器の重量を検出する重量検出手段を前記搬入ステーションに備える請求項1から3のいずれかに記載の自動染色装置。
【請求項5】
被染物が染色途中の前記容器を前記容器搬送手段により搬送して一時的に仮置きする中間ステーションを備え、
前記容器内に染色助剤を添加する添加手段を前記中間ステーションに備える請求項1から4のいずれかに記載の自動染色装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−63902(P2011−63902A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214427(P2009−214427)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】