説明

自動機用走行レールの接続機構

【課題】単純な接続機構でありながら剛性の高い接続が可能で、下側に支えが無くても使用可能な自動機用走行レールの接続機構を提供する。
【解決手段】単位レール10を自動機の走行に耐えうる十分な強度を有する厚みに形成し、単位レール10の接続面に突出して設けたレール接続用キー21を接続相手の接続面に設けたレール接続用キー溝31に挿入して係止すると共に、単位レール10の側面に設けたフック22を、接続相手となる単位レール10の側面に重ね合わせた状態で係止させ、その重ね合わせた部分をカムレバー33で締結することにより単位レール10同士を接続固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接機や切断機等の自動機の走行用レールの接続機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動溶接機台車用の走行レールとして、鋼板部材上に着脱自在に固定可能な自動溶接機用走行レールがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1の走行レールは、鋼板部材によって下側から支えられた状態で使用されるものであるが、下側に支えの無い状態を含む任意の場所で使用可能な走行レールもある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の技術では、円管の外周に十字型断面の突条を有する複数の管状レールのそれぞれの一端に小径突出部を設けると共に他端に大径孔部を設け、管状レールの小径突出部を他の管状レールの大径孔部に挿入することで管状レール同士を接続し、更に、各管状レールのそれぞれに設けた突条同士をレールクランパーによって挟み込むことにより、軸を中心とした同軸的相対回転を禁止した接続を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−24186号公報(図1)
【特許文献2】特開平9−234591号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、鋼板上に走行レールを設置することを前提としているため、走行レール同士の接続部の剛性は低く、走行レールの下側に支えがないと機能しない構造となっている。
【0006】
特許文献2の技術では、小径突出部と大径孔部との嵌め合いと、レールクランパーによる突条の挟み込みで管状レール同士を接続する構造であり、この構造で高い剛性を得ようとすると、嵌め合い精度を厳しく設計する必要がある。しかし、嵌め合い精度を厳しくすると、少しの傷が生じても抜き差しができなくなり、現場での使用に耐えられなくなる可能性があるという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、単純な接続機構でありながら剛性の高い接続が可能で、下側に支えが無くても使用可能な自動機用走行レールの接続機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自動機用走行レールの接続機構は、自動機が走行する自動機用走行レールを構成する単位レール同士を接続する接続機構であって、単位レールを自動機の走行に耐えうる十分な強度を有する厚みに形成し、単位レールの接続面に突出して設けたレール接続用キーを接続相手の接続面に設けたレール接続用キー溝に挿入して係止すると共に、単位レールの側面に設けたフック部を、接続相手の側面に重ね合わせた状態で係止させ、その重ね合わせた部分をカムレバーで締結することにより単位レール同士を接続固定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単位レールを自動機の走行に耐えうる十分な強度を有する厚みに形成し、また、単位レールに設けたレール接続用キーを接続相手の単位レールに設けたレール接続用キー溝に挿入して係止すると共に、単位レールの側面に設けたフック部を、接続相手の側面に重ね合わせた状態で係止させ、その重ね合わせた部分をカムレバーで締結することにより単位レール同士を接続固定するため、単位レール同士の密着性を確保できることができ、剛性の高い接続が可能となる。その結果、下側に支えがなくても使用可能な走行レールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動機用走行レールの接続機構の接続動作を示す図である。
【図2】図1の接続機構の接続部分の一方側の斜視図である。
【図3】図1の接続機構の接続部分の他方側の斜視図である。
【図4】図1の接続機構の接続部分を接続した状態の斜視図である。
【図5】図1の自動機用走行レールの使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動機用走行レールの接続機構の接続動作を示す図で、接続機構の平面図である。図1(1)の(a)は、図1(1)の(b)のフック部の側面図である。図2は、図1の接続機構の接続部分の一方側の斜視図である。図3は、図1の接続機構の接続部分の他方側の斜視図である。図4は、図1の接続機構の接続部分を接続した状態の斜視図である。
走行レール1は、複数の板状の単位レール10を接続することにより構成される。各単位レール10の両端部分の一方が差込部20、他方が受け部30となっている。単位レール10同士の接続は差込部20と受け部30との接続により行われる。走行レール1は、本例ではアルミ合金(A2024−T351)製であり、走行レール1上を走行する自動機、例えば自動溶接台車が走行するのに十分な強度を有する厚みに形成されている。
【0012】
単位レール10には、走行方向に伸びるレール溝11が走行方向に直交する直交方向に複数並設されている。差込部20及び受け部30は単位レール10の両端面(接続面)から一定の長さ距離内の部分を指しているが、レール溝11のうち差込部20及び受け部30のレール溝12の深さは、その他の部分よりも浅く形成され、走行レール1の接続部分として高い剛性を有するように構成されている。
【0013】
差込部20の接続面には、差込方向(単位レール10の長手方向)(図1矢印A方向)に突出するレール接続用キー21が設けられている。レール接続用キー21は略直方体状に形成され、後述のカムレバー33の締結方向(図1の下方向)の先端側の端面に、締結方向に突出する係止部21aを有している。レール接続用キー21はSUS製であり、その肉厚(図1の紙面に直交する方向の厚み)は接続部として十分な剛性を得られる厚みに設定される。
【0014】
また、受け部30の接続面には、差込部20のレール接続用キー21が挿入して係止するレール接続用キー溝31を有している。レール接続用キー溝31はレール接続用キー21の係止部21aに噛み合う凹部31aを有している。
【0015】
また、差込部20の側面には、接続相手の単位レール10の側面に係止するレール接続用フック22が設けられている。レール接続用フック22は、差込方向と直交する方向に突出する突出部23と突出部23の端部から接続相手側に延びるフック部24とを有している。フック部24は、接続状態において接続相手の側面の外側に重なるように形成されており、フック部24の差込方向の先端面には切欠き24aが形成されている。
【0016】
受け部30の側面には、前記差込方向と直交する方向に突出する突出部32が形成され、突出部32にカムレバー33が取り付けられている。なお、ここでは差込部20にレール接続用フック22を設け、受け部30にカムレバー33を設けた例を示したが、逆の構成、すなわち差込部20にカムレバー33を設け、受け部30にレール接続用フック22を設けた構成としてもよい。
【0017】
以上のように構成された各単位レール10同士を接続して走行レール1を構成する際には、図1(2)に示すように、差込部20に設けたレール接続用キー21を、受け部30のレール接続用キー溝31に挿入する。このとき、レール接続用フック22のフック部24が受け部30の突出部32の外側に重ね合わされた状態で突出部32に係止されると共に、カムレバー33の軸部がフック部24の切欠き24aの底部に位置した状態となる。
【0018】
そして、カムレバー33を矢印B方向に回動させることにより、図1(3)に示すように、レール接続用キー21がレール接続用キー溝31内でスライドして係止部21aがレール接続用キー溝31の凹部31aに噛み合って係止すると共に、受け部30の突出部32に重なり合ったレール接続用フック22がカムレバー33により締結され、差込部20と受け部30とが強固に接続固定される。
【0019】
以上のようにして強固に接続された走行レールの使用例を次の図5に示す。
図5は、図1の自動機用走行レールの使用状態の一例を示す図である。
走行レール1は、例えば船殻ブロックのロンジフェース40上に架設した状態で使用され、走行レール1の上面を、この例では溶接ロボット(例えば、約60kg)50が走行する。走行レール1は、上述したように走行レール1上を走行する自動機の走行に耐えうる十分な強度を有する厚みに形成されており、また、単位レール10の接続部は十分な剛性を有しているため、走行レール1が一部床面から浮いた状態で下側に支えのない状態であっても使用可能である。
【0020】
以上説明したように本実施の形態によれば、レール接続用キー21を接続相手の単位レール10に設けたレール接続用キー溝31に挿入して係止すると共に、レール接続用フック22を接続相手の単位レール10の側面に重ね合わせた状態で係止させ、その重ね合わせた部分をカムレバー33で締め付けるようにしたため、容易な作業性を考慮した上で接続部の剛性を確保することができる。また、単位レール10を自動機の走行に耐えうる十分な強度を有する厚みに形成し、接続面の面積を大きく確保しているため、接続面同士の密着性を確保することができ、接続部の剛性を高めることができる。その結果、下側に支えがなくても使用可能な走行レールを得ることができる。
【0021】
また、単位レール10を自動機の走行に耐えうる十分な強度を有する厚みに形成すると共に、レール接続用キー21の肉厚を、接続部として十分な剛性を得られる厚みとしたため、単位レール10上を走行する自動機から重力方向の荷重が作用しても座屈等の変形が生じない構成とすることができる。
【0022】
また、レール接続用キー21とレール接続用キー溝31との間には、カムレバー33を締め付けた際にレール接続用キー21がレール接続用キー溝31内をスライド可能な程度に寸法的な余裕があるため、接続/取り外しが容易である。
【0023】
以上に説明したように、本例の接続構造は、シンプルな構造で工具無しで容易に走行レール1の接続/取り外しが可能であり、また十分な剛性を有するため、走行時の安定性や精度を要求される溶接ロボットや、自動溶接台車の走行用レールの接続機構として適したものとすることができる。
【0024】
なお、本例では自動溶接台車の走行用レールとして説明したが、自動溶接台車に限られず、切断装置台車用の走行レールとしても適用可能である。
【0025】
また、接続機構の材質が、単位レール10はアルミ合金(A2024−T351)製、レール接続用キー21はSUS製として説明したが、用途に合わせ剛性が確保される材質であれば他の材質でもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 走行レール
10 単位レール
11 レール溝
12 レール溝
20 差込部
21 レール接続用キー
21a 係止部
22 レール接続用フック
23 突出部
24 フック部
24a 切欠き
30 受け部
31 レール接続用キー溝
31a 凹部
32 突出部
33 カムレバー
40 支柱
50 溶接ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動機が走行する自動機用走行レールを構成する単位レール同士を接続する接続機構であって、
前記単位レールを前記自動機の走行に耐えうる十分な強度を有する厚みに形成し、前記単位レールの接続面に突出して設けたレール接続用キーを接続相手の接続面に設けたレール接続用キー溝に挿入して係止すると共に、前記単位レールの側面に設けたフック部を、接続相手の側面に重ね合わせた状態で係止させ、その重ね合わせた部分をカムレバーで締結することにより前記単位レール同士を接続固定することを特徴とする自動機用走行レールの接続機構。
【請求項2】
前記単位レールには、走行方向に伸びるレール溝が形成されており、前記単位レール同士の接続面から一定の長さ距離内の前記レール溝は、その他の部分よりも浅く形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動機用走行レールの接続機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179636(P2012−179636A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44419(P2011−44419)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)