説明

自動水栓装置

【課題】電波の導波経路からの電波の漏れを無くして、誤検知を発生しない自動水栓装置を提供する。
【解決手段】吐水口、及び取付面に設置するための取付部、を有するスパウト本体と、スパウト本体内に隣接して配置された通水路及び導波路と、導波路を通して電波を送受信する電波センサであって、取付部に対して吐水口とは反対側にスパウト本体から露出した状態で導波路の端部に取り付けられており、導波路の端部に取り付けられた状態で取付面のスパウト取付孔を通過可能に構成された電波センサと、が一体的に組合わされたスパウトユニットと、電波センサの検知信号に基づいて、通水路に接続された電磁弁を駆動して吐水口からの洗浄水の吐水及び止水を実行する制御部と、を有する自動水栓装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動水栓装置に関し、特に電波センサを用いて吐水・止水を自動的に行う自動水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手の存在を検知して吐水・止水を自動的に行う自動水栓装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された自動水栓装置は、スパウトと、電磁弁に連結された通水管と、電波センサに連結された導波管と、電波センサの検知に基づいて電磁弁を制御する制御部を備えている。導波管は通水管と共にスパウト内に配置されている。電波センサは、導波管を介して電波を吐水口から外部へ放射し、使用者の手等からの反射波を導波管を介して受け取るようになっている。そして、制御部は、電波センサによって使用者の手等が検知されたときに、電磁弁を制御して通水管からの吐水及び止水を実行するようになっている。
【0003】
自動水栓装置は、2つの構成要素(すなわちスパウト部分と制御部)から構成されており、通常、これら構成要素は、それぞれ施工者によって支持台の所定箇所に取り付けられ、その後互いに接続されるようになっている。上記自動水栓装置においては、電波センサが支持台(受水部)内に収納されており、導波管を含むスパウトとは別体となっている。したがって、この自動水栓装置では、スパウトを支持台に固定した後、電波センサを導波管に接続し、更に電波センサと制御部とを電気的に接続するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−236268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通水管は、例えば、電磁弁の開閉に伴うウォータハンマによって振動する。また、スパウトも外部からの衝撃によって振動する。このため、上記自動水栓装置では、導波経路(導波管及び電波センサ)から検知電波が漏れた場合、電波センサが、漏れた電波によって通水管やスパウトの振動を使用者の手等と誤検知してしまうおそれがある。
また、上記自動水栓装置のように、通水管やスパウトに隣接して導波経路が配置されると、漏れた電波量がわずかであっても、通水管及びスパウトと、導波経路とが接近しているため、誤検知の可能性が高くなる。
【0006】
上述のように、上記自動水栓装置では、電波センサと導波管との接続が、製造者ではなく施工者によって施工時に行われる。電波センサと導波路(例えば、導波管)との接続部分において規定の接続方法(固定トルク等)で接続が実施されないと、施工者によって接続の品質のバラつきが生じる。接続の品質にバラつきがあると、充分な検知性能を確保することができない。
【0007】
具体的には、電波センサと導波管との接続部分において、充分な品質で接続が行われないと、接続部分から電波が漏れたり、使用を続けているうちに接続部分の接続が緩んで電波が漏れるようになったりする。
接続部分から電波が漏れると、上述のように通水管やスパウトの振動に起因して、誤検知が発生するという問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、電波センサを用いた自動水栓装置であって、電波の導波経路からの電波の漏れを無くして、誤検知を発生しない自動水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の自動水栓装置は、吐水口、及び取付面に設置するための取付部、を有するスパウト本体と、スパウト本体内に隣接して配置された通水路及び導波路と、導波路を通して電波を送受信する電波センサであって、取付部に対して吐水口とは反対側にスパウト本体から露出した状態で導波路の端部に取り付けられており、導波路の端部に取り付けられた状態で取付面のスパウト取付孔を通過可能に構成された電波センサと、が一体化したスパウトユニットと、電波センサの検知信号に基づいて、通水路に接続された電磁弁を駆動して吐水口からの洗浄水の吐水及び止水を実行する制御部と、を有する。
【0010】
このように構成された本発明の自動水栓装置は、一体化したスパウトユニットと制御部の2つのユニットにより構成されているので、洗面台への設置時又は施工時に、これら分離されたユニットが接続される。一体化したスパウトユニットを洗面台へ取り付ける際に、導波路の端部に取り付けられた電波センサを、洗面台に形成されたスパウト取付孔を通して取付面側から制御部側へ通過させ、その後、一体化したスパウトユニットと制御部とを接続することにより(例えば、電波センサと制御部とを電気配線で接続する)、取付けを完成させることができる。
【0011】
本発明では、このように構成することにより、施工時において、施工者に電波センサと導波路との接続部分を触れさせること(例えば、電波センサと導波路とを接続すること)を無くすことができる。電波センサと導波路は、製造工場等において品質保証された規定の接続方法で予め接続しておくことができる。したがって、施工者がスパウトユニットと制御部を受け取った時点において、一体化したスパウトユニットが含む電波センサと導波路は充分な品質で接続された接続部分を有している。よって、取付けが完成した自動水栓装置は、十分な品質の接続部分を有する。
【0012】
このように本発明では、施工者によらず常に充分な品質の接続部分を有するので、電波センサと導波路との接続部分から電波が漏れることを抑制することができ、通水管やスパウトの振動に起因した誤検知を防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、通水管の振動が導波路及び電波センサに伝達されないように、導波路及び電波センサが、通水管から離間して配置されている。
このように構成された本発明においては、通水管が、導波路及び電波センサから離間して配置されているので、通水管がウォータハンマによって大きく振動しても、その振動は導波路及び電波センサに伝わり難く、導波路や電波センサ自体の振動を抑制することができる。これにより、通水管の振動に起因した電波センサの検知性能の低下や、電波センサと導波路との接続が緩んで電波が接続部分から漏れることを防止することができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、電波センサの動きが通水管の動きと同期するように、通水管から一定の距離に電波センサを保持する第1の位置規制部材を備えている。
このように構成された本発明においては、第1の位置規制部材によって、電波センサの動きと通水管の動きを同期させることにより、両者の間の相対的な動きを極めて小さくすることができる。これにより、接続部分で電波が漏れたとしても、電波センサが通水管の振動を検知しにくくなり、誤検知を防止することができる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、導波路の動きが通水管の動きと同期するように、通水管から一定の距離に導波路を保持する第2の位置規制部材を備えている。
このように構成された本発明においては、第1の位置規制部材に加えて、第2の位置規制部材によって、導波路の動きと通水管の動きを同期させることにより、通水管,導波路,電波センサの間の相対的な動きを極めて小さくすることができる。これにより、接続部分で電波が漏れたとしても、電波センサが通水管及び導波路の振動を検知しにくくなり、誤検知を防止することができると共に、電波センサと導波路との接続が緩んで電波が接続部分から漏れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電波センサを用いた自動水栓装置において、電波の導波経路からの電波の漏れを無くして、誤検知の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における自動水栓装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるスパウトユニットの断面図である。
【図3】本発明の実施形態における電波センサ説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるスパウトユニットとスパウト取付孔との関係を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態における自動水栓装置の電波センサの取り付け状態を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態における自動水栓装置の電波センサの取り付け状態を示す説明図である。
【図7】本発明の更に別の実施形態における自動水栓装置のスパウトユニットの取付状態の説明図である。
【図8】本発明の更に別の実施形態における自動水栓装置のスパウトユニットの取付状態の説明図である。
【図9】本発明の更に別の実施形態における自動水栓装置のスパウトユニットの取付状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図1乃至図4を参照して、本発明の実施形態による自動水栓装置を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の自動水栓装置1は、スパウトユニット1Aと制御部1Bとが接続されて構成されている。
【0019】
スパウトユニット1Aは、少なくとも一部が板状の支持台である洗面台2に基端部が固定され使用者側に向けて延びるスパウト本体10と、スパウト本体10内に隣接して配置された通水管20及び同軸ケーブル50と、使用者の存在又は使用の有無を含む使用者の動作状態を検出するための電波センサ40とを備え、それらを一体化している。
【0020】
制御部1Bは、マイコン等により構成された電子制御装置である。制御部1Bは、電波センサ40から電気配線32を通じて送られてくる検知信号を受け取り、この検知信号に基づいて、内部に配置された電磁弁30の開閉動作を制御するように構成されている。電磁弁30が開くことによって、外部から延びる給水配管から定流量に制御された洗浄水が電磁弁30を通って通水管20へ圧送され、スパウト本体10の吐水口11aから洗浄水が吐水される。
【0021】
スパウト本体10は、鋼材等の金属材料で形成された中空の断面円形の管部材11と、管部材11を洗面台2の取付面2aへ固定するための取付部13とを備えている。
管部材11は、洗面台2から鉛直方向に延びた後、使用者側へ向けて屈曲して延び、先端開口の吐水口11aが洗面台2のシンク3の底部を向くように形成されている。
【0022】
取付部13は、管部材11の基端部に固定された円形の固定部材14と、固定部材14の下側面から下方へ延びる固定軸15と、固定軸15に係止される係止部16と、係止部16によって固定部材14との間で洗面台2を挟み込む固定板17とを備えている(図2参照)。
固定部材14は、洗面台2の取付面2aに形成されたスパウト取付孔2bを上側から塞ぐように取り付けられる。固定軸15は、所定長さを有し、外面にネジ山が形成された棒状の部材である。固定部材14がスパウト取付孔2bに配置されると、固定軸15は、スパウト取付孔2bを通って洗面台2の下側へ突出する。
【0023】
固定板17は、スパウト取付孔2bよりも大きな寸法を有する板状部材であり、固定軸15を通す貫通孔と、通水管20及び同軸ケーブル50を通過させる切欠きが形成されている。係止部16は、内面にねじ山が形成された筒状の部材である。固定板17の貫通孔に固定軸15を挿入させた状態で、係止部16を固定軸15に螺合させ締め上げる。これにより、図2に示すように、固定部材14と固定板17との間に洗面台2を挟んだ状態で、スパウト本体10を洗面台2に固定することができる。
【0024】
通水管20は、吐水口11aへ洗浄水を供給するための全体として可撓性を有する管状部材である。通水管20は、基端部(上流端)が電磁弁30に連結され、スパウト本体10内を通って吐水口11aまで延びた状態でスパウト本体10に一体に取り付けられている。通水管20を構成する管状部材は、弾性部材で形成されており、例えばゴムホースである。
【0025】
同軸ケーブル50は、内部導体51a,外部導体,これら導体の間に設けられた誘電体,外部導体を被覆する保護被覆51bから構成された可撓性の線状部材51と、線状部材51の基端部に設けられたコネクタ53とを有している(図3参照)。同軸ケーブル50は、その少なくとも一部がスパウト本体10内で通水管20と離間して並設され、先端部がスパウト本体10の吐水口11a近傍に位置し、コネクタ53がスパウト本体10の基端部よりも下方に位置しており、この状態でスパウト本体10に一体に取り付けられている。同軸ケーブル50の基端部では、内部導体51aの端部は下方に延びる金属導体であるピン51cに接続されているが、内部導体51aの端部にピン51cを接続しなくてもよい。
なお、本実施形態では、線状部材51の先端部において、内部導体51aを露出させ(図示せず)、露出した内部導体51aをアンテナとして機能させているが、これに限らず、線状部材51の先端部に専用のアンテナを取り付けても良い。
【0026】
電波センサ40は、取付部13に対して吐水口11aとは反対側に位置する同軸ケーブル50の端部に取り付けられ、スパウト本体10から露出した状態で洗面台2の下側に配置されている。電波センサ40は取付部13の固定軸15に固定してもよい。電波センサ40は、マイクロ波ドップラーセンサである。使用周波数は、例えば約10GHz又は約24GHzである。図3(A)に示すように、電波センサ40は、金属箔の回路配線パターンやFET等の電子部品を含む積層基板41と、積層基板41を覆う金属製の収納ケース43とを有している。また、電波センサ40は、電気配線32を介して制御部1Bへ検知信号を出力する。また、電波センサ40は、内部に電源を有していても良いし、電気配線32を介して外部から電源供給されるように構成してもよい。
【0027】
積層基板41は、発振検知回路基板41aとアンテナ基板41bとを樹脂層で貼り合わせて構成されている。
発振検知回路基板41aは、発振検知回路面とグランド面を有しており、発振検知回路面に局部発信器,混合器(検波器)等からなる発振検知回路が形成され、グランド面に金属層(グランド)が形成されている。また、アンテナ基板41bは、アンテナ回路面とグランド面を有しており、アンテナ回路面に送受信アンテナ(パッチアンテナ)42が形成され(図3(B)参照)、グランド面に金属層(グランド)が形成されている。発振検知回路基板41aとアンテナ基板41bとは、両方のグランド面が上記樹脂層によって貼り合わされている。また、送受信アンテナ42と発振検知回路とは、基板を貫通する導体によって接続されている。
なお、本実施例では発信検知回路面に局部発信器及び混合器(検波器)が配設されているが、局部発信器及び混合器(検波器)の一方を発信検知回路面に配設し、他方をアンテナ回路面に配設してもよい。例えば、発信検知回路面に局部発信器を配設し、アンテナ回路面に混合器(検波器)を配設してもよい。
【0028】
収納ケース43は、積層基板41を内部に収納するケース本体43aと、ケース本体43aの開口を塞ぐ蓋体43bを備えている。積層基板41は、内部ケース43cによって発振検知回路面が覆われた状態で、内部ケース43cとケース本体43aの底面との間に挟まれるように、6本のネジ43dによってケース本体43aに固定されている。
【0029】
収納ケース43は、同軸導波管変換器45をさらに有している。変換器45は、ケース本体43aから側方へ突出した中空の直方体状の導波管部45aと、導波管部45aに取り付けられたコネクタ45bとを備えている。コネクタ45bには、同軸ケーブル50のコネクタ53が接続される。
【0030】
導波管部45aは、導波管として機能するものであり、アンテナ基板41bの送受信アンテナ42の上面を覆っており、アンテナ42が送受信する電波を伝播するための内部空間を形成する。導波管部45aの側面には、同軸ケーブル50の内部導体51a又は内部導体51aに接続されたピン51cを、導波管部45aの内部空間(導波管)へ挿入するための貫通孔が形成されている。内部導体51a又はピン51cは、導波管部45aの内部空間内に延びている。コネクタ45bは、この貫通孔を覆うように取り付けられている。
【0031】
電波センサ40は、発振検知回路内の局部発振器で生成したマイクロ波(送信信号)を、送受信アンテナ42から送信波として変換器45の導波管部45a内に放射する。この電波はピン51c及びピン51cに接続された内部導体51aを介して同軸ケーブル50へ伝送され、同軸ケーブル50を介して吐水口11aへ向けて伝達される。この送信信号は、同軸ケーブル50の先端部分(アンテナ)から電波として放射され、さらに吐水口11aから所定の指向性で外部へ放射される。
【0032】
また、外部へ放射された電波は、対象物(例えば、人の手)で反射し、反射波(受信信号)が吐水口11aからスパウト本体10内へ入り、同軸ケーブル50のアンテナで受信される。このアンテナで受信された受信波は、同軸ケーブル50内を伝播し、ピン51c及びピン51cに接続された内部導体51aを介して導波管部45aへ伝播され、さらに導波管部45aを介して電波センサ40へ伝播され、電波センサ40の送受信アンテナ42によって受信される。
【0033】
電波センサ40の発振検知回路は、混合器(検波器)が、受信信号と送信信号とを混合し、ドップラー信号を検出する。
対象物が静止している場合は、送信波(送信信号)と反射波(受信信号)の周波数が同一であるので、電波センサ40は対象物の有無を検出しにくい。しかしながら、対象物が動いている場合は、反射波の周波数が変化するため、混合器の出力に差分信号があらわれる。この差分信号により、電波センサ40は、対象物の有無及び移動方向(接近又は離反)を検出し、検出信号を制御部1Bへ出力する。検出信号は、対象物の移動速度に応じた周波数成分を有する信号であり、移動している対象物が存在することをあらわすものである。
【0034】
制御部1Bは、マイコン等で構成されており、電波センサ40から受け取った検出信号に基づいて、使用者等の対象物の存在又は動きの有無を判定する。制御部1Bは、対象物を検知している間、電磁弁30を開状態にする駆動信号を出力し、対象物を検知しなくなると、電磁弁30を閉状態にする駆動信号を出力するようにプログラムされている。これにより、対象物が検出されているときには、電磁弁30が開状態に保持され吐水状態となる。一方、対象物が検出されていないときは、電磁弁30が閉状態に保持され止水状態となる。
【0035】
本実施形態では、スパウト本体10の基端部と先端部(吐水口11a)との間で同軸ケーブル50を介して電波を通すように構成されているので、スパウト本体10が屈曲していて、同軸ケーブル50が非直線状に配置されても安定的に電波を送受信することができる。また、同軸ケーブル50をスパウト本体10に組み付ける際には、スパウト本体10の一方の端部から所定の長さの同軸ケーブル50を挿入すればよく、組み付け性を良好とすることができる。さらに、このとき同軸ケーブル50が捩れたとしても、同軸ケーブル50の場合は電波通路長さは変わらないので、電波通過特性を良好に維持することができる。
【0036】
この構造により、本実施形態では、通水管20が挿入された剛体であるスパウト本体10内に、導波管を組み込む必要がなくなり組立性が良好となる。また、本実施形態では、導波管が不要であるので、小型化及びデザイン性の向上を図ることができると共に、製造コストを低減することが可能となる。
【0037】
次に、本実施形態の自動水栓装置1の作用について説明する。
本実施形態の自動水栓装置1は、スパウトユニット1Aと制御部1Bを接続して形成される。この自動水栓装置1を取り付ける工程を説明する。
先ず、施工者は、スパウトユニット1Aを洗面台2の上面から取り付ける。このときスパウトユニット1Aは、スパウト本体10と、通水管20と、同軸ケーブル50と、電波センサ40が一体化された状態となっている。すなわち、同軸ケーブル50のコネクタ53は、製造工場内で電波センサ40のコネクタ45bに適正な接続方法にて接続されており、施工時点においてすでに同軸ケーブル50と電波センサ40は一体化されている。したがって、施工者は、同軸ケーブル50と電波センサ40との接続部分を施工時に触れる必要はない。
【0038】
施工者は、スパウト本体10の取付部13によって、スパウトユニット1Aの基端部を洗面台2のスパウト取付孔2bに取り付ける。このとき、係止部16と固定板17は取付部13から取り外されており、通水管20,電波センサ40,同軸ケーブル50,取付部13の固定軸15をスパウト取付孔2b内に挿入する。
【0039】
本実施形態では、図4に示すように、通水管20,電波センサ40,同軸ケーブル50,及び固定軸15の断面の合計の大きさは、スパウト取付孔2bの大きさに対して充分小さいので、通水管20,電波センサ40,同軸ケーブル50,及び固定軸15をスパウト取付孔2b内に挿入して、これらを洗面台2の下側まで通過させることができる。
すなわち、本実施形態では、施工時に電波センサ40がスパウト取付孔2bを通過することができるように、電波センサ40とスパウト取付孔2b並びに通水管20,同軸ケーブル50及び固定軸15の全体的な寸法設計がされている。
【0040】
そして、施工者は、固定軸15に固定板17を装着し、係止部16と固定軸15を螺合させる。これにより、係止部16を螺合していくと固定板17が洗面台2の下面に押し付けられ、固定部材14と固定板17との間に洗面台2を挟み込むことができる。このようにして、係止部16を所定のトルクで締め上げることにより、スパウトユニット1Aを洗面台2に固定することができる。
【0041】
次に、施工者は、制御部1Bを洗面台2の下部の所定位置に取り付ける。このとき、電磁弁30に給水配管が取り付けられる。
最後に、施工者は、スパウトユニット1Aと制御部1Bとを接続する。具体的には、電波センサ40と制御部1Bとが電気配線32によって電気的に接続される。また、通水管20が電磁弁30に連結される。
【0042】
従来のように、施工時に施工者が電波センサを導波路(導波管)に接続する場合、施工者によって接続の品質にバラつきが生じ(例えば、コネクタの締め付けトルクの過不足)、接続部分において充分な品質を補償することができない。したがって、施工者が、規定の接続方法で電波センサと導波路を接続しなかった場合、電波センサと導波路の接続部分から電波が漏れたり、施工時には接続部分から電波が漏れていなくても、使用を続けているうちに接続部分の接続が緩んで電波が漏れたりする。
【0043】
しかしながら、本実施形態の自動水栓装置1は、スパウトユニット1Aと制御部1Bの2つのユニットに分離された状態で製造工場から出荷され、これらユニットを施工者が接続することにより、水栓装置として完成される。
そして、本実施形態の自動水栓装置1では、施工時に施工者が電波センサ40を同軸ケーブル50に接続することを回避するために、スパウトユニット1Aを構成する電波センサ40を、施工時に洗面台2の上方からスパウト取付孔2bを通して洗面台2の下方へ配置することができる。これにより、電波センサ40は、工場での製造時に規定の接続方法で同軸ケーブル50に接続された状態を保持することができるので、電波の漏れを確実に防止して、誤検知による誤吐水及び誤止水を防止することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、同軸ケーブル50及び電波センサ40が、通水管20から離間して配置されている。したがって、ウォータハンマ等によって通水管20が振動しても、その振動は同軸ケーブル50及び電波センサ40に伝達されない。
電波センサ40と同軸ケーブル50の接続部分に振動が加わると、変換器45と送受信アンテナ42とが相対的に振動し、電波センサ40が、この振動を対象物の動きであると誤検知するおそれがある。
【0045】
しかしながら、上述のように、本実施形態では、通水管20の振動が接続部分に伝達されないように構成されているので、通水管20の振動に起因する誤検知を防止することができる。
また、本実施形態では、接続部分への振動の伝達が抑制されるので、振動による接続部分の緩みが防止され、使用開始後の電波漏れを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、弾性部材からなる保護被覆51bで覆われた同軸ケーブル50を導波路として用いている。したがって、スパウト本体10や通水管20が振動し、その振動が同軸ケーブル50に伝達されたとしても、弾性部材によって振動が緩衝され、振動を効果的に減衰させることができる。これにより、同軸ケーブル50を通って接続部分へ伝達される振動を極めて低減することができるので、接続部分の緩みが抑制され、使用開始後の電波漏れ及び検知性能の低下を防止することができる。
なお、本実施形態では、同軸ケーブル50の保護被覆51bによって振動を減衰させるように構成されているが、これに限らず、同軸ケーブル50,通水管20,スパウト本体10の間に振動を吸収する弾性部材からなる緩衝材を配置してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、同軸ケーブル50の長さ方向全体にわたって弾性部材からなる保護被覆51bが設けられているので、同軸ケーブル50の両端部間で外部からの振動を充分に減衰させることができる。したがって、スパウト本体10内の任意の位置で通水管20やスパウト本体10から同軸ケーブル50に振動又は衝撃が加わっても、効果的に振動及び衝撃を吸収・減衰することができる。
【0048】
また、本実施形態では、接続部分において、同軸ケーブル50の内部導体51aが、直接的に、又はピン51cを介して間接的に変換器45の内部に挿入された状態で、同軸ケーブル50が電波センサ40に接続されている。これにより、電波と電気信号との変換が導波管部45a内で行われ、変換器45は、構造上、電波を導波管部45aの外に出さない構成であるので、接続部分からの電波の漏れを抑制することができる。
【0049】
本実施形態では、図4に示すように、通水管20,電波センサ40,同軸ケーブル50,及び固定軸15の断面の合計の大きさが、スパウト取付孔2bの大きさに対して充分小さい実施例について説明をしてきた。しかしながら、施工時に電波センサ40がスパウト取付孔2bを通過することができるように、電波センサ40,通水管20,同軸ケーブル50及び固定軸15とスパウト取付孔2bの全体的な寸法設計がされていればよい。よって、施工時に電波センサ40,通水管20,同軸ケーブル50及び固定軸15のすべてがスパウト取付孔2bを同時に通過することが難しい寸法設計の場合には、例えば電波センサ40のみを先に通過させた後、通水管20,固定軸15を通過させてもよい。また、通水管20,固定軸15を先に通過させた後に、電波センサ40を通過させてもよい。このように各部材を別々に通過させる構成であっても、同軸ケーブル50は弾性変形可能であるので、接続部分に負荷をかけることなく電波センサ40をスパウト取付孔2bに挿入することが可能であり、接続状態の悪化を防止することができる。
【0050】
次に、図5及び図6により、本発明の他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、主に上記実施形態との相違点を説明する。
図5及び図6に示す実施形態は、電波センサ40から電波が漏れた場合に、通水管20等の振動に起因した誤検知を抑制するように構成されている。
【0051】
図5に示す実施形態では、電波センサ40及び同軸ケーブル50が、弾性を有する樹脂材料からなる結束部材25a,25bによって通水管20に固定されている。この実施形態では、電波センサ40の変換器45の側面のうち、積層基板41とは反対側の側面と通水管20とが当接した状態で通水管20と電波センサ40とが結束部材25aによって固定され、通水管20と同軸ケーブル50とが結束部材25bによって固定されている。
【0052】
すなわち、図5の実施形態では、第1の位置規制部材としての結束部材25aが、電波センサ40と通水管20の距離を一定に保持し、電波センサ40の動きと通水管20の動きを同期させている。
この構成により、通水管20が振動しても、電波センサ40が通水管20と同期して動くので、電波センサ40に対する通水管20の相対的な動きが低減される。これにより、電波センサ40は、通水管20の振動を検知しにくくなり、通水管20の振動に起因する誤検知を抑制することができる。
【0053】
また、図5の実施形態では、さらに第2の位置規制部材としての結束部材25bが、同軸ケーブル50と通水管20の距離を一定に保持し、同軸ケーブル50の動きと通水管20の動きを同期させている。
この構成により、通水管20が振動しても、電波センサ40に加えて同軸ケーブル50も通水管20と同期して動くので、電波センサ40に対する通水管20及び同軸ケーブル50の相対的な動きが低減される。これにより、電波センサ40は、通水管20及び同軸ケーブル50の振動を検知しにくくなり、通水管20の振動に起因する誤検知を抑制することができる。また、上記構成により、電波センサ40と同軸ケーブル50が同期して動くので、接続部分の緩みを確実に防止することができる。
【0054】
また、図6に示す実施形態では、同様に、結束部材25a,25bによって、電波センサ40及び同軸ケーブル50が通水管20に固定されている。ただし、この実施形態では、通水管20が、電波センサ40の変換器45の側面のうち、ケース本体43aの底面から略垂直に立ち上がる側面と通水管20とが当接した状態で通水管20と電波センサ40とが結束部材25aによって固定され、通水管20と同軸ケーブル50とが結束部材25bによって固定されている。
【0055】
したがって、ケース本体43a,変換器45,通水管20が直列に配列され一体化された図5の実施形態よりも、これらが直列に配列されずに一体化された図6の実施形態の方が、スパウト取付孔2bの内寸法に対して、結束部材による一体化構造体の断面寸法に余裕がある。このため、図6に実施形態の方が取り付けが容易となる。
【0056】
次に、図7から図9により、本発明の更なる実施形態を説明する。
図7は、洗面台2に取り付けられたスパウトユニット1Aを洗面台2の下側から見た状態を示している。なお、この実施形態の電波センサ40では、変換器45が収納ケース43の側面から側方へ突出しておらず、収納ケース43内に変換器45が設けられている。
【0057】
本実施形態では、取付部13が、更にL字板状の離間部材18を備えている。この離間部材18は、電波センサ40と通水管20とを分離している。
離間部材18は、垂直方向に延びる板状の遮蔽部18aと、遮蔽部18aの上端で折れ曲がり水平方向に延びる支持部18bとを有する。支持部18bには、固定軸15を挿通させるための貫通孔18cと、同軸ケーブル50を通すための切欠き18dが形成されている。遮蔽部18aは、電波センサ40の側面を覆うように電波センサ40よりも下方に延びている。離間部材18は、電波を遮蔽する金属材料で形成されることが好ましい。
【0058】
離間部材18の支持部18bは、洗面台2の下側面と固定板17との間に挟まれた状態で固定される。このとき、固定軸15が支持部18bの貫通孔18cと固定板17の貫通孔17aとに挿通される。また、支持部18bの切欠き18dと固定板17の切欠き17bとが位置合わせされる。
なお、支持部18bと固定板17との上下関係が逆であってもよい。
【0059】
本実施形態では、通水管20は、離間部材18から空間的に離間するように配置されている。したがって、通水管20の振動は、離間部材18及び電波センサ40には直接伝達されないようになっている。
また、電波センサ40は、離間部材18の遮蔽部18a及び固定軸15に固定されている。したがって、電波センサ40は、離間部材18及び固定軸15を介して、重量の大きな洗面台2に固定されている。
【0060】
したがって、仮に通水管20が離間部材18に当接して、通水管20から離間部材18へ振動が伝達された場合であっても、離間部材18が洗面台2に固定されているので、振動は離間部材18から洗面台2へ伝わって減衰する。これにより、電波センサ40が大きく振動することが防止される。
【符号の説明】
【0061】
1 自動水栓装置
1A スパウトユニット
1B 制御部
2 洗面台
10 スパウト本体
11a 吐水口
13 取付部
20 通水管
30 電磁弁
40 電波センサ
42 送受信アンテナ
43 収納ケース
45 同軸導波管変換器
45a 導波管部
45b コネクタ
50 同軸ケーブル
51a 内部導体
51b 保護被覆
53 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口、及び取付面に設置するための取付部、を有するスパウト本体と、前記スパウト本体内に隣接して配置された通水路及び導波路と、前記導波路を通して電波を送受信する電波センサであって、前記取付部に対して前記吐水口とは反対側に前記スパウト本体から露出した状態で前記導波路の端部に取り付けられており、前記導波路の端部に取り付けられた状態で取付面のスパウト取付孔を通過可能に構成された前記電波センサと、が一体化したスパウトユニットと、
前記電波センサの検知信号に基づいて、前記通水路に接続された電磁弁を駆動して前記吐水口からの洗浄水の吐水及び止水を実行する制御部と、
を有する自動水栓装置。
【請求項2】
前記通水管の振動が前記導波路及び前記電波センサに伝達されないように、前記導波路及び前記電波センサが、前記通水管から離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載に自動水栓装置。
【請求項3】
前記電波センサの動きが前記通水管の動きと同期するように、前記通水管から一定の距離に前記電波センサを保持する第1の位置規制部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載に自動水栓装置。
【請求項4】
前記導波路の動きが前記通水管の動きと同期するように、前記通水管から一定の距離に前記導波路を保持する第2の位置規制部材を備えたことを特徴とする請求項3に記載に自動水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207464(P2012−207464A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74291(P2011−74291)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】