説明

自動水栓

【課題】投光部,受光部を構成する投光側の光ファイバと、受光側の光ファイバのそれぞれの先端部を簡単に固定及び分離し得て、光ファイバ先端部の組付時の作業性やメンテナンス時の作業性を良好とでき、また吐水管の先端部を小型に保持できる自動水栓を提供する。
【解決手段】吐水管の先端部の内側に筒状の吐水口部材52を設けるとともに、投光側の光ファイバ80と、受光側の光ファイバ82とを吐水管の先端部に到るまで吐水管の内部に通して各光ファイバ80,82の先端にて投光部62と受光部64とを構成する。そして光ファイバ80,82の先端部の外面に嵌合凸部86を、また吐水口部材52の外面に嵌合凹部96A,98Aをそれぞれ設けて、それらの凹凸嵌合に基づいて光ファイバ80,82の先端部を位置決め状態に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から自動的に吐水を行う自動水栓に関し、特に光ファイバの先端部の固定構造に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水管の先端部に設けた投光部から光を投射し、使用者の手等の検知対象からの反射光を吐水管に設けた受光部で受光して検知対象を検知する光センサ(以下単にセンサとする)を有し、センサによる検知に基づいて吐水を自動的に行う自動水栓が公共のトイレや洗面所等に広く用いられている。
通常、そのセンサは受光量が設定したしきい値よりも多いことをもって検知対象有りと判定する。
このような自動水栓では、従来、上記の投光部及び受光部が吐水管の先端部に設けられていることが多い。
【0003】
ところで、従来の自動水栓では光を発するLED等の発光素子を上記の投光部として、またフォトダイオード,フォトトランジスタ等の受光素子を上記の受光部として吐水管の先端部に配置するとともに、発光素子による発光を行わせるための発光駆動回路や、受光素子により受光した光を電気信号に変換し信号処理する光電変換回路を含むセンサ回路を、それら発光素子,受光素子に接続状態で吐水管の先端部に設けていた。
【0004】
例えば下記特許文献1,特許文献2に、これら発光素子や受光素子、センサ回路を含むセンサを吐水管の先端部に設けて成る自動水栓が開示されている。
しかしながらこれら特許文献1,特許文献2に開示のもののように、吐水管の先端部に発光素子,受光素子,センサ回路を含むセンサを設けた自動水栓の場合、吐水管の先端部の形状が必然的に大形状化してしまい、これに伴って吐水管全体が太く大型化し、デザイン性,意匠性を損なってしまうといった問題を生じる。
【0005】
従来、発光素子と受光素子及びセンサ回路を備えたセンサ本体を吐水管の外部に配置しておき、そしてセンサ本体の発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを吐水管の先端部に到るまで吐水管の内部に通して、投光側の光ファイバの先端にて投光部を、受光側の光ファイバの先端にて受光部をそれぞれ構成するようになした自動水栓も知られている。
【0006】
例えば下記特許文献3,特許文献4にこの種の光ファイバを用いた自動水栓が開示されている。
このようにセンサ本体を吐水管の外部に配置して、光ファイバを吐水管の先端部に到るまで吐水管内部に通し、光ファイバの先端にて投光部と受光部とを構成した場合、センサ本体を吐水管先端部に設けた場合に比べて吐水管を細く小型化することが可能である。
【0007】
ところで、吐水管内に通した光ファイバの先端にて上記のように投光部と受光部とを構成する場合、投光側の光ファイバ,受光側の光ファイバのそれぞれの先端部の固定構造が問題となる。
固定構造の如何によっては、光ファイバの先端部の吐水管への組付作業や光ファイバの先端部を吐水管から外してメンテナンス作業する際の作業が難しくなり、また場合によって吐水管の先端部が大型化してしまう。
しかしながら上記特許文献3,特許文献4には光ファイバの先端部の固定構造に関しては具体的に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−133103号公報
【特許文献2】特開2002−70096号公報
【特許文献3】実開平3−125862号公報
【特許文献4】特開平5−311709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、投光部,受光部を構成するための投光側の光ファイバと受光側の光ファイバの各先端部を簡単に固定及び分離し得て、光ファイバ先端部の組付時の作業性やメンテナンス時の作業性を良好とでき、また吐水管の先端部を小型に保持できる自動水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、吐水管の先端部の内側に、吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材を設けるとともに、発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを前記吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、前記投光側の光ファイバの先端にて投光部を、前記受光側の光ファイバの先端にて受光部をそれぞれ構成し、光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、前記投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとのそれぞれの先端部の外面と、前記吐水口部材の外面のファイバ保持部との一方に嵌合凸部を、他方に対応した嵌合凹部をそれぞれ設けて、それら嵌合凸部と嵌合凹部との凹凸嵌合に基づいて、前記光ファイバの先端部を位置決め状態に固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記吐水口部材の外面への前記光ファイバの先端部の固定部分を覆うカバーを更に設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、吐水管の先端部の内側に、吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材を設けるとともに、発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを前記吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、前記投光側の光ファイバの先端にて投光部を、前記受光側の光ファイバの先端にて受光部をそれぞれ構成し、光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、前記投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとのそれぞれの先端部の外面と、前記吐水口部材の外面を覆う状態に該吐水口部材に固定されるカバーのファイバ保持部との一方に嵌合凸部を、他方に対応した嵌合凹部をそれぞれ設けて、それら嵌合凸部と嵌合凹部との凹凸嵌合に基づいて前記光ファイバの先端部を位置決め状態に固定したことを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、吐水管の先端部の内側に、吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材を設けるとともに、発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを前記吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、前記投光側の光ファイバの先端にて投光部を、前記受光側の光ファイバの先端にて受光部をそれぞれ構成し、光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、前記吐水口部材の外面と、該外面を覆うカバーの内面との両方に前記光ファイバの先端部を保持するファイバ保持部としての溝を互いに向き合う状態で設けて、該溝の内部に前記光ファイバの先端部を嵌め入れるとともに、該光ファイバの先端部の外面と該溝の内面との一方に嵌合凸部を、他方に嵌合凹部を設けて、それら嵌合凸部と嵌合凹部との凹凸嵌合に基づいて該光ファイバの先端部を位置決め状態に固定したことを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記光ファイバの先端部を、前記吐水管の管軸と平行をなすように直線状に配置し固定してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0015】
以上のように請求項1のものは、投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとのそれぞれの先端部の外面と、吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材の外面のファイバ保持部との一方に嵌合凸部を、他方に対応した嵌合凹部を設けて、それらの凹凸嵌合に基づき各光ファイバの先端部を位置決め状態に固定するようになしたもので、本発明によれば、その凹凸嵌合により簡単に投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとの各先端部を吐水口部材を介して吐水管の先端部に固定でき、またその固定の解除も容易であって、光ファイバの先端部を吐水管に組み付ける際の作業を作業性良く行うことができ、またその固定解除も容易であって、光ファイバの先端部を吐水管から取り出してメンテナンスする際の作業も作業性良く行うことができる。
【0016】
本発明では投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとの各先端部を直接吐水口部材に固定でき、投光部を含む投光側の光ファイバの先端部と、受光部を含む受光側の光ファイバの先端部とを予め組んでユニットとなしておき、そのユニットの状態で吐水管の先端部に固定する場合に比べて吐水管の先端部を小型化することができる。
【0017】
本発明では、吐水口部材の外面への光ファイバの先端部の固定部分を覆うカバーを更に設けておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、光ファイバの先端部を吐水口部材とカバーとで挟み込んだ状態とすることができ、光ファイバの先端部をより良好に吐水口部材に固定状態とすることができる。
【0018】
本発明では、投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとのそれぞれの先端部の外面と、吐水口部材の外面を覆う状態に吐水口部材に固定されるカバーのファイバ保持部との一方に嵌合凸部を、他方に嵌合凹部をそれぞれ設けて、それらの凹凸嵌合に基づいて各光ファイバの先端部を位置決め状態に固定するようになすことができる(請求項3)。
この場合においても、光ファイバの各先端部の吐水管先端部への組付け及びメンテナンスの際の作業を作業性良く容易に行うことができるとともに吐水管の先端部を小型化することができる。
この場合において、ファイバ保持部はカバーの内面に設けておくことができる。
このようにすれば、カバーと吐水口部材とで光ファイバの先端部を挟んだ状態とすることができ、より良好に光ファイバの先端部を固定することができる。
【0019】
これらの場合において、ファイバ保持部を溝となし、その溝に各光ファイバの先端部を嵌め入れる状態に固定するようになしておくことができる。
このようにすれば、各光ファイバの先端部をより容易に吐水口部材に対し、従って吐水管先端部に対し固定作業することができる。
併せて各先端部に対する拘束力を高め、固定強度を高めることができる。
【0020】
また各光ファイバの先端部は溝の内部に嵌め入れられるため、溝の内部に投光部,受光部を保護した状態とすることができるとともに、各光ファイバの先端部を吐水口部材若しくはカバーの内部に納めた状態に固定できるため、吐水管の先端部をより効果的に小型化することが可能となる。
この場合において、上記の溝は吐水口部材又はカバーに対し、吐水管基端側の端から先端側の端に到るまで延びる形状で設けておくことができる。
【0021】
請求項4のものは、吐水口部材の外面とカバーの内面との両方にファイバ保持部としての溝を互いに向き合う状態で設けて、その溝の内部に光ファイバの先端部を嵌め入れるとともに、光ファイバの先端部の外面と溝の内面との一方に嵌合凸部を、他方に嵌合凹部を設けてそれらを凹凸嵌合させ、光ファイバの先端部を位置決め状態に固定するようになしたもので、この請求項5によれば、各光ファイバの先端部を効果的に溝の内部に拘束状態とすることができ、各光ファイバの先端部に対する位置決め機能、固定機能を一層高めることができる。
また投光部,受光部を含む各光ファイバの先端部を吐水口部材とカバーとで覆った状態とすることができ、各先端部に対する保護機能を高めることができる。
【0022】
上記各光ファイバの先端部は、吐水管の管軸と平行をなすように直線状に配置し固定しておくことができる(請求項5)。
このようにすれば、光ファイバの先端部を斜めに固定した場合に比べて吐水口部材やカバーの肉厚を薄くすることができ、吐水管の先端部を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態である自動水栓の全体図である。
【図2】同実施形態における吐水管の縦断面図である。
【図3】同実施形態における吐水管の先端部の要部断面図である。
【図4】同実施形態における吐水口ユニットの図である。
【図5】同実施形態における吐水口ユニットを吐水管への組付前の状態で示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の自動水栓で、12は自動水栓10における吐水管である。ここで吐水管12は金属製とされている。
吐水管12は、カウンタ(取付基体)14から起立する形態で設置され、上部が逆U字状のグースネック形状をなしていて、その先端面が使用者に向って前方斜め下向きをなしている。
吐水管12には、図1及び図2に示しているように、その先端に吐水管12の横断面形状に対応した略楕円形状の開口16が形成されている。
【0025】
図2に示しているように、吐水管12は基端側に着座部18と、この着座部18から下向きに延びる挿通管20とを一体に有している。
挿通管20は、カウンタ14の取付穴22を挿通してカウンタ14の下側まで突き出しており、その外周面に設けられた雄ねじ部24に固定ナット26がねじ込まれている。
吐水管12は、着座部18をカウンタ14の上面に着座させ、その着座部18と固定ナット26とでパッキン28,30を介し、カウンタ14を上下両側から挟み込む状態にカウンタ14に取り付けられている。
【0026】
図1において、32はカウンタ14の下方に配置された本体機能部で、34はその本体機能部32の機能部ボックスであり、その内部に電磁弁36が収容されている。
電磁弁36は、給水元管からの水を後述の吐水口58(図2)に供給する給水路を開閉する弁であって、この電磁弁36に対し、給水チューブ38の下端が継手40を介して接続されている。
【0027】
給水チューブ38は、給水路の一部を形成する部材であって、機能部ボックス34から上向きに延び出し、そして図2に示す吐水管12の基端(下端)の開口42から吐水管12内部に入り込んでいる。
給水チューブ38は、更にこの吐水管12の内部をその先端部に到るまで延びている。
尚この例において、給水チューブ38は可撓性のもので、ここではポリウレタン樹脂にて形成されている。
尚図1において44は止水栓を表している。
【0028】
機能部ボックス34の内部にはまた、マイコンを主要素として含む制御部46、及び光センサ(以下単にセンサとする)の主要素をなすセンサ本体48が収容されている。
制御部46は電磁弁36を作動制御し、センサによる検知対象の検知に基づいて電磁弁36を開弁させ、またセンサが検知対象を非検知となったところで電磁弁36を閉弁させる。
【0029】
センサ本体48は、光(ここでは赤外光)を発するLED等の発光素子と、フォトダイオード,フォトトランジスタ等の受光素子、及び発光素子による発光を行わせる発光駆動回路,受光素子により受光した光を電気信号に変換し信号処理する光電変換回路を含むセンサ回路を有している。
このセンサ本体48の発光素子からは投光側の光ファイバ80(図4参照)が延び出しており、また受光素子からは受光側の光ファイバ82が延び出している。
【0030】
これら投光側の光ファイバ80と受光側の光ファイバ82とは1本に束ねられている。図1中50はそれらを1本に束ねて成る光ファイバのコードを表している。
センサ本体48から延び出した投光側の光ファイバ80及び受光側の光ファイバ82は、吐水管12の基端の開口42から吐水管12内部に入り込んでいる。そして吐水管12内部を、その先端部に到るまで延びている。
【0031】
図3に示しているように、吐水管12の先端部の内部には吐水口部材52が納められている。
本例において、この吐水口部材52は樹脂製(ここではPOM樹脂(ポリアセタール樹脂))のもので、全体として吐水管12の先端部の形状に対応した略楕円形状の筒状をなしている。
【0032】
この吐水口部材52は、図中右端側に円筒形状の差込部54を一体に備えており、その差込部54が給水チューブ38に圧入された上、給水チューブ38を外周面から締め付けるバンド状の締付部材56によって給水チューブ38に接続され、固定されている。
【0033】
図4及び図5にも示しているように、吐水口部材52はの先端の開口は吐水管12内の水路の先端の吐水口58を成しており、その吐水口58に、水流を通過させて吐水口58からの吐水の吐出パターンを制御する吐出端部材60が配置されている。
具体的には、この吐出端部材60は横断面形状が偏平な楕円形状をなす筒状をなしていて、この吐出端部材60が筒状をなす吐水口部材52の内部に内嵌状態に挿入され、吐水口58よりも僅かに奥側の位置において吐水口部材52内に保持されている。
【0034】
この実施形態において吐出端部材60は、給水チューブ38を通じて送られて来た水の流れを整流して吐出する。即ち吐水の吐出パターンを1束の整流吐水とするものとなしてある。
但し給水チューブ38を通じて送られてきた水を気泡混じりの泡沫流として、又はシャワー流として吐出するように成しておくこともできる。或いはその他様々なパターンで吐水を吐出するものとなしておくことができる。
【0035】
本実施形態において、吐出端部材60と吐水口部材52とは、図3に示す固定部材67によって、吐水管12に対し固定孔68において共通に固定されている。
【0036】
この固定部材67は円形の押込ボタン式の部材で、円形の外周壁部70と、その中心部から立ち上る第1の嵌合凸部71と、この第1の嵌合凸部71の上端から更に上向きに突出する小径の第2の嵌合凸部72とを一体に有しており、その第2の嵌合凸部72を吐出端部材60の嵌合穴74に嵌入させ、また第1の嵌合凸部71を吐水口部材52の貫通の嵌合穴76に嵌合させ、また外周壁部70を吐水管12の円形の固定孔68に嵌合させる状態で吐水管12に取り付けられ、以て吐出端部材60及び吐水口部材52を吐水パイプ12に位置決め状態に固定している。
尚この固定部材67は、図3(B)に示すように正面視において左右に一対の爪78を有しており、これら爪78を固定孔68の縁部に係止させることで、吐水管12から抜止めされている。
【0037】
図4において、62は投光部、64は受光部であってこれら投光部62,受光部64はそれぞれ投光側の光ファイバ80,受光側の光ファイバ82の各先端にて構成されている。
尚、投光部62には投射される光に指向性を持たせるためのレンズ84が備えられている。
【0038】
この実施形態では、図1に示すセンサ本体48,これから延び出した光ファイバ80,82の先端部にて構成される投光部62,受光部64にてセンサが構成され、そしてそのセンサが検知対象、通常は使用者が差し出した手を検知すると、制御部46による制御の下に電磁弁36が開弁し、図3の吐水口58から自動的に吐水を行う。
また使用者が手を引き込めてセンサによる検知エリアから外れると、センサが手を非検知となり、ここにおいて制御部46の制御の下に電磁弁36が閉弁し、吐水口58からの吐水を停止する。
【0039】
図4に示しているように投光側の光ファイバ80,受光側の光ファイバ82のそれぞれの先端部には、各光ファイバ80,82の先端部を吐水口部材52に対して位置決め状態に固定するための環状の嵌合凸部86が一体的に設けられている。
一方吐水口部材52の外面、詳しくは図4中上面には、投光側の光ファイバ80のファイバ保持部としての深い保持溝92A及び受光側の光ファイバ82のファイバ保持部としての深い保持溝94Aが、吐水管12の管軸と平行をなすように各ファイバ80,82の軸線方向に延びる形状で設けられており、それら保持溝92A,94Aの内部に光ファイバ80,82のそれぞれの図中下側の大部分が嵌め入れられている。
【0040】
ここで各保持溝92A,94Aは、吐水口部材52の図中右端即ち吐水管12の基端側の端から、図中左端即ち吐水管12の先端側の端に到るまで直線状に延びている。
そして保持溝92Aの図中左側の前端がU字切欠状の投光窓100をなしており、また保持溝94Aの図中左側の前端がU字切欠状の受光窓102をなしている。
そしてそれら投光窓100,受光窓102に投光部62,受光部64が先端を揃えるようにして図中下向きに嵌め入れられている。
【0041】
これら保持溝92A,94Aには、光ファイバ80,82の嵌合凸部86に対応した嵌合凹部96A,98Aがそれぞれ設けられており、各保持溝96A,98Aに嵌め入れられた光ファイバ80,82の先端部が、それら保持溝96A,98A内において嵌合凸部86と嵌合凹部96A,98Aとの凹凸嵌合により軸線方向に位置決めされ、固定されている。
【0042】
即ち光ファイバ80と82との各先端部が、保持溝92A,94Aによる拘束及び嵌合凸部86と嵌合凹部96A,98Aとの凹凸嵌合により、各光ファイバ80,82の軸線と直角方向の図中左右方向と軸線方向とに位置決め状態に固定されている。
【0043】
図4において、90は吐水口部材52の外面、詳しくはその上面を覆うカバーであって、このカバー90もまた吐水口部材52と同じ樹脂材にて構成されている。
このカバー90には、一対の湾曲した弾性アーム104が一体に形成されており、カバー90はこれら一対の弾性アーム104の先端の爪106を、吐水口部材52の対応する係止突起108に弾性係止させることで、吐水口部材52に組み付けられている。
【0044】
本実施形態においては、このカバー92の内面にもまたファイバ保持部としての投光側の光ファイバ80用の浅い保持溝92Bと、受光側の光ファイバ82用の浅い保持溝94Bとが、吐水口部材52の対応する保持溝92A,94Aに上下に向き合う状態で設けられている。
これら保持溝92B,94Bにも、光ファイバ80の嵌合凸部86に対応した嵌合凹部96B,98Bがそれぞれ形成されている。
但しカバー90側の嵌合凹部96B,98Bは、吐水口部材52側の嵌合凹部96A,98Aに較べて深さの浅いものとされている。
【0045】
これら吐水口部材52側の保持溝92Aと、カバー90側の保持溝92Bとは、それらが合さることによって図3(B)に示しているように全体として光ファイバ80の横断面形状に対応した横断面円形の連続した溝空間を内側に形成する。
同様に吐水口部材52側の保持溝94Aと、カバー90側の保持溝94Bとは、それらが合さることによって全体として光ファイバ82の横断面形状に対応した横断面円形の溝空間を内側に形成する。
【0046】
即ちこの実施形態では、吐水口部材52の外面とカバー90の内面との両方とにファイバ保持部としての保持溝が形成され、それらが協働して光ファイバ80,82の先端部を位置決め状態に保持するものとなしてある。
そして吐水口部材52の深い保持溝92A,94Aに下側の大部分が嵌め入れられ、また残る上側の一部(小部分)がカバー90の保持溝92B,94Bに嵌め入れられた投光側の光ファイバ80,受光側の光ファイバ82の各先端部は、保持溝92A及び92Bと、94A及び94B内において吐水口部材52とカバー90とで挟まれて図3(B)中上下方向にも拘束され、各ファイバ80,82の各先端部は、何れの方向にも位置決め状態に固定された状態となる。
そしてこれにより投光部62,受光部64が、正しく設定位置に位置決めされて投光及び受光により検知対象を精度高く検知する。
但しそれらの保持溝を吐水口部材52の側だけに設けて、光ファイバ80,82の各先端部を吐水口部材52側だけで位置決め状態に保持するようになしても良い。
【0047】
尚、吐水口部材52側の上記保持溝92A,カバー90側の保持溝92Bのそれぞれには、投光部62のレンズ84を収容するための凹部110A,110Bがそれぞれ設けられている。
また吐水口部材52は、カバー90とともに図3(B)に示しているように吐水管12の先端部の内部に嵌合状態で組み入れられ、その嵌合状態で前述した固定部材67によって吐水管12の管軸方向と、管軸に対して直角な各方向に固定されている。
【0048】
尚、この実施形態のものは、符号52で示したものを吐水口部材の本体として、吐水口部材を本体とカバー90とに上下に分割し、それらの間に光ファイバ80,82の先端部を挟み込む状態にこれを吐水口部材の内部に埋設したものと考えることもできる。
【0049】
以上のような本実施形態によれば、投光側の光ファイバ80と受光側の光ファイバ82との各先端部を吐水口部材52を介して吐水管12の先端部に簡単に固定でき、またその固定の解除も容易であって、光ファイバ80,82の先端部を吐水管12に組み付ける際の作業を作業性良く行うことができ、またその固定解除も容易であって、光ファイバ80,82の先端部を吐水管12から取り出してメンテナンスする際の作業も作業性良く行うことができる。
【0050】
また本実施形態では、投光側の光ファイバ80と受光側の光ファイバ82との各先端部をそれぞれ単独で直接吐水口部材52に固定するようになしていることから、投光部62を含む投光側の光ファイバ80の先端部と、受光部64を含む受光側の光ファイバ82の先端部とを予め組んでユニットとなし、そのユニットの状態で吐水管12の先端部に固定する場合に比べて吐水管12の先端部を小型化することができる。
【0051】
また本実施形態では、光ファイバ80,82の先端部を吐水口部材52とカバー90とで挟み込むように固定することから、光ファイバ80,82の先端部を強固に固定状態とすることができる。
【0052】
また各光ファイバ80,82の先端部を保持溝92A,92B及び94A,94Bの内部に保護した状態とすることができるとともに、各光ファイバ80,82の先端部を吐水口部材52とカバー90との内部に納めた状態に固定できるため、吐水管12の先端部を効果的に小型化することができる。
【0053】
上記各光ファイバ80,82の先端部は、吐水管12の管軸と平行をなすように直線状に配置し固定してあり、このようにすることで、光ファイバ80,82の先端部を斜め向きで固定した場合に比べて、吐水口部材52やカバー90の肉厚を薄くすることができ、吐水管12の先端部を小型化することができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明においては、図6に示しているように吐水口部材52の側には保持溝を設けずに、吐水口部材52に固定されるカバー90の内面にのみ深い保持溝92B,94Bを設けて、そこに投光側の光ファイバ80,受光側の光ファイバ82の各先端部を嵌め入れて、これをカバー90の側だけで保持するようになすことも可能である。
またその保持溝をカバー90の外面に設けたり、ファイバ保持部を上記溝以外の形態で設けることも可能である。
【0055】
更に上記実施形態では光ファイバの先端部の側に嵌合凸部を、吐水口部材,カバーの側に嵌合凹部を設けてそれらを凹凸嵌合させるようになしているが、これとは逆に光ファイバの先端部の側に嵌合凹部を、吐水口部材,カバーの側に嵌合凸部を設けて、それらを凹凸嵌合させるようになすことも可能である。
その他本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 自動水栓
12 吐水管
52 吐水口部材
58 吐水口
62 投光部
64 受光部
80,82 光ファイバ
86 嵌合凸部
90 カバー
92A,92B,94A,94B 保持溝
96A,96B,98A,98B 嵌合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水管の先端部の内側に、吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材を設けるとともに、発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを前記吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、前記投光側の光ファイバの先端にて投光部を、前記受光側の光ファイバの先端にて受光部をそれぞれ構成し、光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、
前記投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとのそれぞれの先端部の外面と、前記吐水口部材の外面のファイバ保持部との一方に嵌合凸部を、他方に対応した嵌合凹部をそれぞれ設けて、それら嵌合凸部と嵌合凹部との凹凸嵌合に基づいて、前記光ファイバの先端部を位置決め状態に固定したことを特徴とする自動水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記吐水口部材の外面への前記光ファイバの先端部の固定部分を覆うカバーを更に設けたことを特徴とする自動水栓。
【請求項3】
吐水管の先端部の内側に、吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材を設けるとともに、発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを前記吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、前記投光側の光ファイバの先端にて投光部を、前記受光側の光ファイバの先端にて受光部をそれぞれ構成し、光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、
前記投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとのそれぞれの先端部の外面と、前記吐水口部材の外面を覆う状態に該吐水口部材に固定されるカバーのファイバ保持部との一方に嵌合凸部を、他方に対応した嵌合凹部をそれぞれ設けて、それら嵌合凸部と嵌合凹部との凹凸嵌合に基づいて前記光ファイバの先端部を位置決め状態に固定したことを特徴とする自動水栓。
【請求項4】
吐水管の先端部の内側に、吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材を設けるとともに、発光素子からの光を導く投光側の光ファイバと、検知対象からの反射光を受光素子に導く受光側の光ファイバとを前記吐水管の先端部に到るまで該吐水管の内部に通して、前記投光側の光ファイバの先端にて投光部を、前記受光側の光ファイバの先端にて受光部をそれぞれ構成し、光センサによる検知対象の検知に基づいて吐水口から吐水する自動水栓において、
前記吐水口部材の外面と、該外面を覆うカバーの内面との両方に前記光ファイバの先端部を保持するファイバ保持部としての溝を互いに向き合う状態で設けて、該溝の内部に前記光ファイバの先端部を嵌め入れるとともに、該光ファイバの先端部の外面と該溝の内面との一方に嵌合凸部を、他方に嵌合凹部を設けて、それら嵌合凸部と嵌合凹部との凹凸嵌合に基づいて該光ファイバの先端部を位置決め状態に固定したことを特徴とする自動水栓。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記光ファイバの先端部を、前記吐水管の管軸と平行をなすように直線状に配置し固定してあることを特徴とする自動水栓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−122358(P2011−122358A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281030(P2009−281030)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】