説明

自動注湯炉用ストッパー及び自動注湯炉用ノズル

【課題】耐用寿命の長期化を図り操業の安定を図ることができる自動注湯炉用ストッパー及び自動注湯炉用ノズルを提供する。
【解決手段】ストッパー1のストッパーヘッド3の耐火物層4は、黒鉛若しくはカーボン共存下においても、ロー石粒の消化分解はなく溶湯中への酸素供給源になることはない。また、溶湯と接触する稼動面においてガラス皮膜を形成して稼動面組織を平滑にするとともに、耐火物を通しての空気の巻き込みを抑制することができ、耐熱衝撃性、高耐蝕性及び耐酸化性に優れ、溶湯との濡れが小さい。このため、自動注湯炉21用として最適のストッパー1を提供することができる。また、ストッパー1により開閉されるノズル孔12の内周面14を形成する耐火物層15は、上記耐火物層4と同様の作用を示し、高強度及び高耐蝕性に優れ、溶湯との濡れが小さく自動注湯炉21用として最適のノズル11を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動注湯炉用ストッパー及び自動注湯炉用ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄及び銅合金等の自動注湯炉では、カーボン及びアルミナ・カーボン質のストッパーが使用されている。また、ノズルとしては、ジルコン質、ハイアルミナ質、アルミナ・カーボン質のものが使用されている。これらの材質のものでは、注湯終了後ストッパーはストッパーヘッド、ノズルはノズル内孔面にそれぞれスラグやメタル等が付着する。これらの付着物は、操業が繰り返されるに従い増大する。このため、ノズル孔を完全に閉塞することが不可能となり、操業停止に至るという問題点がある。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、スラグやメタルの付着を抑制し、耐用寿命の長期化を図り操業の安定を図ることができる自動注湯炉用ストッパー及び自動注湯炉用ノズルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための請求項1に記載の自動注湯炉用ストッパーは、自動注湯炉のノズル孔を開閉するノズルヘッドの外周面が、鉱物としてパイロフィライトを主成分とするロー石45〜85重量%、黒鉛10〜35重量%、炭化ケイ素1〜10重量%からなり、結合材を添加して混練成形し、非酸化雰囲気にて焼成したことを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載の自動注湯炉用ストッパーは、請求項1に記載の構成において、前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、800℃以上で仮焼して結晶水を蒸発させるとともに、アルカリ成分1〜5重量%を含むことを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の自動注湯炉用ストッパーは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、平均粒径250μm以下のものが、ロー石配合重量比60%以下であることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の自動注湯炉用ノズルは、ストッパーにより開閉されるノズル孔の内周面が、鉱物としてパイロフィライトを主成分とするロー石45〜85重量%、黒鉛10〜35重量%、炭化ケイ素1〜10重量%からなり、結合材を添加して混練成形し、非酸化雰囲気にて焼成したことを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の自動注湯炉用ノズルは、請求項4に記載の構成において、前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、800℃以上で仮焼して結晶水を蒸発させるとともに、アルカリ成分1〜5重量%を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の自動注湯炉用ノズルは、請求項4又は請求項5に記載の構成において、前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、平均粒径250μm以下のものが、ロー石配合重量比60%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した自動注湯炉用ストッパーによれば、ストッパーヘッドの外周面を形成する耐火物組織は、黒鉛若しくはカーボン共存下においてもロー石粒の消化分解はなく、二酸化ケイ素のように溶湯中への酸素供給源になることはない。また、ロー石の半溶融温度は1,500℃前後であり、溶湯と接触する稼動面においてガラス皮膜を形成して稼動面組織を平滑にするとともに、耐火物を通しての空気の巻き込みを抑制することができ、耐熱衝撃性、高耐蝕性及び耐酸化性に優れ、溶湯との濡れが小さい。このため、スラグやメタルの付着を抑制し、耐用寿命の長期化を図り操業の安定を図ることができる自動注湯炉用ストッパーを提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の自動注湯炉用ストッパーによれば、パイロフィライトを主成分とするロー石は、800℃以上で仮焼して結晶水を除去するとともに、アルカリ成分1〜5重量%を含むものであるから、結晶水が蒸発する際の熱膨張によりストッパーヘッドの外周面の耐火物組織に亀裂を生じることがない。
【0012】
請求項3に記載の自動注湯炉用ストッパーによれば、パイロフィライトを主成分とするロー石は、平均粒径250μm以下のものが、ロー石配合重量比60%以下であるから、ストッパーヘッドの外周面の耐火物組織の成形時のラミネション等の組織欠陥が生じ難い。また、実使用時におけるロー石粒子の軟化変形が生じ易い。
【0013】
請求項4に記載した自動注湯炉用ノズルによれば、ストッパーにより開閉されるノズル孔の内周面を形成する耐火物組織は、黒鉛若しくはカーボン共存下においてもロー石粒の消化分解はなく、二酸化ケイ素のように溶湯中への酸素供給源になることはない。また、ロー石の半溶融温度は1,500℃前後であり、溶湯と接触する稼動面においてガラス皮膜を形成して稼動面組織を平滑にするとともに、耐火物を通しての空気の巻き込みを抑制することができ、高強度及び高耐蝕性に優れ、溶湯との濡れが小さい。このため、スラグやメタルの付着を抑制し、耐用寿命の長期化を図り操業の安定を図ることができる自動注湯炉用ノズルを提供することができる。
【0014】
請求項5に記載の自動注湯炉用ノズルによれば、パイロフィライトを主成分とするロー石は、800℃以上で仮焼して結晶水を除去するとともに、アルカリ成分1〜5重量%を含むものであるから、結晶水を蒸発する際の熱膨張によりノズル孔の内周面の耐火物組織に亀裂を生じることがない。
【0015】
請求項6に記載の自動注湯炉用ノズルよれば、パイロフィライトを主成分とするロー石は、平均粒径250μm以下のものが、ロー石配合重量比60%以下であるから、ノズル孔の内周面の耐火物組織の成形時のラミネション等の組織欠陥が生じ難い。また、実使用時におけるロー石粒子の軟化変形が生じ易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
スラグやメタルの付着を抑制し、耐用寿命の長期化を図り操業の安定を図ることができる自動注湯炉用ストッパー及び自動注湯炉用ノズルを提供するという目的を、ストッパーヘッドの外周面及びノズル孔の内周面を、鉱物としてパイロフィライトを主成分とするロー石45〜85重量%、黒鉛10〜35重量%、炭化ケイ素1〜10重量%からなり、結合材を添加して混練成形し、非酸化雰囲気にて焼成したことにより実現した。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。図1は、自動注湯炉用ストッパー(以下、単にストッパーという。)1及び自動注湯炉用ノズル(以下、単にノズルという。)11を使用した鋳鉄及び銅合金等の自動注湯炉21の断面図である。自動注湯炉21は、溶湯貯留槽22の上部に加圧室23が形成されている。加圧室23の左右に受湯口24とノズル装着部25が形成されている。ノズル装着部25には、ノズル11が装着されている。そして、ノズル11に対向して、ストッパー1が図示しない上下動機構に吊持されてる。ストッパー1は上下動により、ノズル11のノズル孔12を開閉する。ノズル11の下方には鋳型26が配設されている。
【0018】
ストッパー1の本体2の先端部には、ノズル11のノズル孔12を開閉するストッパーヘッド3が形成されている。図2(a)に示すようにストッパーヘッド3の外周面には、鉱物組織からなる耐火物層4が形成されている。また、図2(b)に示すように、ノズル11のノズル孔12の流入口部13とノズル孔12の内周面14には、上記ストッパー1と同様の鉱物組織からなる耐火物層15が形成されている。
【0019】
上記耐火物層4及び15は、鉱物組成としてパイロフィライトを主成分とするロー石45〜85重量%、黒鉛10〜35重量%、炭化ケイ素1〜10重量%からなり、有機バインダーを添加して混練成形し、非酸化雰囲気にて焼成したものである。また、ロー石は鉱物組成としてパイロフィライト系の天然原料で800℃以上で仮焼し結晶水を蒸発させ、KO、NaO等のアルカリ成分1〜5重量%含むものを使用する。そして、ロー石は、平均粒径250μm以下のものが、ロー石配合重量比60%以下であるものを使用する。
【0020】
上記のようにロー石と炭化ケイ素を共用したことで、炭化ケイ素共存状態のロー石はブローティング現象が生じやすく、低温度においても耐火物組織を通しての空気の巻き込みを抑制することができる。これは、ロー石の半溶融温度が1550℃前後であり、溶湯と接触している稼動面において空気の巻き込みを抑制していることが、ロー石のみでは1,450℃×1hr熱処理後の通気率が5.3×10−4darcyであるのに対して、炭化ケイ素を添加することにより、通気率が1.0×10−4darcyと小さくなることから分かる。
【0021】
そして、ロー石の配合重量比率は、ストッパー1及びノズル11の実使用時において、稼動面にガラス皮膜を積極的に生成させるためには45重量%以上で85重量%以下であることが望ましい。85重量%以上では軟化変形が大きくなってしまう。また、炭化ケイ素の配合比率は、ロー石のブローティング現象を積極的に生成させるためには1重量%以上で10重量%以下が望ましい。10重量%以上では、溶融が著しく溶損が大きくなる。
【0022】
黒鉛の配合重量比率は、ロー石の軟化変形を抑制するとともに、耐熱衝撃性を保持するため、10重量%以上35重量%以下が望ましい。35重量%以上では、ロー石に対し黒鉛の体積比率が大きくなり、ラミネーション等の組織欠陥を生じ易い。さらに、800℃以上で仮焼し結晶水を蒸発させたロー石を使用する理由は、結晶水が蒸発する際の熱膨張率が大きく耐火物層に亀裂が入るのを防止するためである。そして、ロー石は平均粒径250μm以下ものが、ロー石配合重量比60%以以下であるのが望ましい。60%以上であると、成形時のラミネーション等の組織欠陥を生じ易い。実使用時ロー石粒子の軟化変形が生じ易い。
【0023】
ロー石の種類としては、パイロフィライト質ロー石、カオリン質ロー石、セリサイト質ロー石があり、何れも使用できる。実使用時に溶湯と接触する稼動面が半熔融化してガラス層を形成すること、及び溶湯に対する耐溶損性を考慮すると、耐火度SK29〜32のパイロフィライト質ロー石が最適である。カオリン質ロー石は耐火度がSK33〜36と高く、セリサイト質ロー石は耐火度がSK26〜29と低い。
【0024】
上記したように、ストッパー1のストッパーヘッド3の外周面を形成する耐火物層4は、黒鉛若しくはカーボン共存下においても、ロー石粒の消化分解はなく二酸化ケイ素のように溶湯中への酸素供給源になることはない。また、ロー石の半溶融温度は1,500℃前後であり、溶湯と接触する稼動面においてガラス皮膜を形成して稼動面組織を平滑にするとともに、耐火物を通しての空気の巻き込みを抑制することができ、耐熱衝撃性、高耐蝕性及び耐酸化性に優れ、溶湯との濡れが小さい。このため、スラグやメタルの付着を抑制し、耐用寿命の長期化を図り操業の安定を図ることができる自動注湯炉21用として最適のストッパー1を提供することができる。
【0025】
また、ストッパー1により開閉されるノズル孔12の内周面14を形成する耐火物層15は、上記耐火物層4と同様の作用を示し、高強度及び高耐蝕性に優れ、溶湯との濡れが小さい。このため、スラグやメタルの付着を抑制し、耐用寿命の長期化を図り操業の安定を図ることができる自動注湯炉21用として最適のノズル11を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例に係るストッパー及びノズルを使用した自動注湯炉の断面図である。
【図2】実施例に係るストッパー及びノズルの概略の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ストッパー
3 ストッパーヘッド
4,15 耐火物層
11 ノズル
12 ノズル孔
13 流入口部
14 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動注湯炉のノズル孔を開閉するノズルヘッドの外周面が、鉱物としてパイロフィライトを主成分とするロー石45〜85重量%、黒鉛10〜35重量%、炭化ケイ素1〜10重量%からなり、結合材を添加して混練成形し、非酸化雰囲気にて焼成したことを特徴とする自動注湯炉用ストッパー。
【請求項2】
前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、800℃以上で仮焼して結晶水を蒸発させるとともに、アルカリ成分1〜5重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動注湯炉用ストッパー。
【請求項3】
前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、平均粒径250μm以下のものが、ロー石配合重量比60%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動注湯炉用ストッパー。
【請求項4】
ストッパーにより開閉されるノズル孔の内周面が、鉱物としてパイロフィライトを主成分とするロー石45〜85重量%、黒鉛10〜35重量%、炭化ケイ素1〜10重量%からなり、結合材を添加して混練成形し、非酸化雰囲気にて焼成したことを特徴とする自動注湯炉用ノズル。
【請求項5】
前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、800℃以上で仮焼して結晶水を蒸発させるとともに、アルカリ成分1〜5重量%を含むことを特徴とする請求項4に記載の自動注湯炉用ノズル。
【請求項6】
前記パイロフィライトを主成分とするロー石は、平均粒径250μm以下のものが、ロー石配合重量比60%以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の自動注湯炉用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−205218(P2006−205218A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20997(P2005−20997)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000244176)明智セラミックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】