説明

自動洗米炊飯器

【課題】少ない動力エネルギーと少ない水量で、砕米を減らしつつ十分に洗米できる自動洗米炊飯器を提供すること。
【解決手段】被調理物たる米と水を洗米・調理する炊飯鍋3と、水を貯留する貯留手段14と、炊飯鍋3を偏心回転させる回転駆動手段7と、貯留手段14と炊飯鍋3を循環連通する水循環経路17等と、ろ過手段16とを備え、洗米時に、回転駆動手段7が炊飯鍋3を偏心回転すると共に、貯留手段14から水循環経路17等及びろ過手段16を通じて水を炊飯鍋3へ給水し、炊飯鍋3から水循環経路17等を通じて貯留手段14へ回流し、再度炊飯鍋3へ給水するよう、水を循環させることにより、炊飯鍋3内の米と水が偏心回転による強制対流で攪拌されて米が砕けずに洗米でき、かつ少ない水量でも十分に米と水が攪拌され、洗米できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米の洗米から炊飯、保温までを一貫して自動で行う自動洗米炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動洗米炊飯器は、回転駆動手段によって回転される炊飯鍋の回転パターンを、洗米時には正転駆動、慣性駆動、逆転駆動によるブレーキ、停止の各動作の順次進行とし、この順次駆動を1サイクルとして繰り返して洗米を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、遠心翼を備えた回転体がモータの運転によって回転して米と水が入った容器内の水を吸い込み部から吸引し、吸引された水を遠心翼で回転体の外周方向へ飛散して容器内に上下方向の循環流を起こして洗米を効率よく行うものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−191923号公報
【特許文献2】特開昭63−102729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、炊飯鍋を正転、逆回転させて慣性力を利用して炊飯鍋内の水と米に異なる流れを発生させる方法で、炊飯鍋を正転から逆回転させる際に慣性力に反する大きな動力が必要となる。さらに、米中のゴミ、汚れを炊飯鍋回転時に水とともに炊飯鍋上方からオーバーフローさせるので、多量の水が必要になるという課題を有していた。
【0006】
また、特許文献2に記載の構成では、洗米をするための水流を起こすために米と水の入った炊飯鍋内に遠心翼を回転させるので、回転中に遠心翼に触れた米が割れて砕米になるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、少ない動力エネルギーと少ない水量で、砕米を減らしつつ十分に洗米できる自動洗米炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動洗米炊飯器は、洗米時に、前記回転駆動手段が前記炊飯鍋を偏心回転すると共に、前記貯留手段から前記水循環経路及び前記ろ過手段を通じて前記水を前記炊飯鍋へ給水し、前記炊飯鍋から前記水循環経路を通じて前記貯留手段へ回流し、再度前記炊飯鍋へ給水するよう、前記水を循環させる構成としたものである。
【0009】
これによって、洗米時に、炊飯鍋が偏心回転することにより、米同士、さらには米と炊飯鍋の相対位置を変える強制対流を炊飯鍋内に起こし、水の流速と米の移動速度が異なるように移動することで、炊飯鍋内の米と水が強制対流により攪拌されて米が砕けずに米表面に付着した汚れを取り去ることができて洗米することができる。また、偏心回転によってスロッシング現象が起こり、鍋内の水の揺れが拡大するので、少ない駆動エネルギーで
流体を大きく揺らすことができる。また、貯留手段と炊飯鍋を循環する水循環経路を備え、ろ過手段を通過した水を炊飯鍋へ給水するので、少ない水量で自動洗米することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、少ない動力エネルギーと少ない水量で、砕米を減らしつつ十分に洗米できるので、より質のいい洗米〜炊飯までを自動で行うことができ、使用者の便に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における自動洗米炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態2における自動洗米炊飯器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、被調理物たる米と水を洗米・調理する炊飯鍋と、前記炊飯鍋を加熱する加熱手段と、前記水を貯留する貯留手段と、前記炊飯鍋を偏心回転させる回転駆動手段と、前記貯留手段と前記炊飯鍋を循環連通する水循環経路と、ろ過手段とを備え、洗米時に、前記回転駆動手段が前記炊飯鍋を偏心回転すると共に、前記貯留手段から前記水循環経路及び前記ろ過手段を通じて前記水を前記炊飯鍋へ給水し、前記炊飯鍋から前記水循環経路を通じて前記貯留手段へ回流し、再度前記炊飯鍋へ給水するよう、前記水を循環させることにより、米同士、さらには米と炊飯鍋の相対位置を変える強制対流を炊飯鍋内に起こし、水の流速と米の移動速度が異なるように移動することで、炊飯鍋内の米と水が強制対流により攪拌されて米が砕けずに米表面に付着した汚れを取り去ることができて洗米することができる。また、偏心回転によってスロッシング現象が起こり、鍋内の水の揺れが拡大するので、少ない駆動エネルギーで流体を大きく揺らすことができる。また、貯留手段と炊飯鍋を循環する水循環経路を備え、ろ過手段を通過した水を炊飯鍋へ給水するので、少ない水量で自動洗米することが可能となる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の前記ろ過手段はヌカやゴミなどは通過させず、米のうまみと甘みの成分である水溶性デンプン、アミノ酸の分子量サイズは透過させることにより、汚れ成分を除去して旨みと甘み成分を含む水を炊飯時に供給するので、旨みと甘みのあるご飯に仕上げることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の前記炊飯鍋および前記炊飯鍋内の前記被調理物の重量を計測する重量計測手段を備え、洗米前の前記米の重量に応じて、予め設定された前記被調理物の総重量に到達するように、洗米後に前記炊飯鍋へ給水することにより、最適な水加減を自動で行うことができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における自動洗米炊飯器の断面図を示すものである。
【0017】
図1において、炊飯器本体1の炊飯室2に炊飯鍋3を着脱自在に収納し、炊飯室2の側壁面および底面には加熱コイルなどの加熱手段4が備えられ、炊飯鍋3が加熱される。炊飯鍋3の開口部を内蓋21で開閉自在に覆設する。
【0018】
炊飯鍋3の外底面中央には鍋装着部5が設けられており、炊飯鍋3を固定装着する。鍋
装着部5の下部に回転子6が設けられ、モータなどの回転駆動手段7とベルト8を介して連結している。炊飯室底面の中央部には回転子6が貫通できる開口があり、炊飯鍋3は炊飯室2の内底面および側壁面から離間した状態で鍋装着部5によって回転子6に固定されている。
【0019】
また、炊飯室2の内底面に設けた別の開口から接触式の温度センサ9が露出している。温度センサ9は、ソレノイドなどの駆動手段10によって上下に可動して炊飯時には炊飯鍋3の底部に接触して設けられ、炊飯鍋3の温度を検知する。一方、洗米時に炊飯鍋3が偏心回転する際には鍋底から離して設けられる。尚、温度センサ9が赤外線方式など非接触式の場合は、駆動手段10による上下動は不要となる。また、開口部は回転子6が貫通するものと共用しても構わない。
【0020】
炊飯鍋3の開口部には外側に向かって延設されたフランジ部11を有し、そのフランジ部11の外周端部を炊飯室2上部周縁に形成された排水溝12上に載置する。排水溝12は排水パイプ13を通じて、水を貯留する貯留手段であるタンク14と連通するので、炊飯鍋3内からフランジ部11を介して排水溝12に流れた水は排水溝12に連結している排水パイプ13を通ってタンク14へと流れる。
【0021】
タンク14は、炊飯器本体1内の炊飯室2とは別体として設置されており、水を貯留する貯留手段である。タンク14への水供給は、タンク14に注入口を設け、注水するようにしてもよいし、タンク14を着脱自在として、注水したタンク14を取着するようにしてもよい。
【0022】
タンク14の下部には給水ポンプ15が設けられ、タンク14の水が、ろ過手段であるフィルタ16を通過し給水パイプ17を経て水投入パイプ18に設けられた給水弁19を介して鍋内に供給される。フィルタ16は、タンク14内部に設けているが、タンク14外部に設けてもよい。タンク14内部に設け、タンク14を着脱自在の構成とした場合は、お手入れがし易いという利点がある。
【0023】
給水弁19は水投入パイプ18の下部に設けられており、ソレノイドなどの駆動手段20で開閉する。また、水投入パイプ18はシリコンゴムなどの可撓体を介して内蓋21の中央部に着脱自在に嵌合している。水投入パイプ18が駆動手段22によって上下動すると、内蓋21もそれに伴って上下動し、炊飯鍋3と内蓋21を密着させたり、離間したりする。
【0024】
以上のように構成された自動洗米炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
炊飯鍋3に米をいれて開口部を内蓋21で覆い、タンク14に必要量の水を注水する。自動洗米炊飯を開始すると、タンク14下部の給水ポンプ15が開き、給水パイプ17を経て内蓋21に設けられた水投入パイプ18へ水が循環する。水投入パイプ18に設けられた給水弁19が開き、炊飯鍋3内に一定量の水が供給される。水の供給が済むと、温度センサ9がソレノイドによって引き下げられ、炊飯鍋3の底面と非接触の状態となる。
【0026】
また、水投入パイプ18が駆動手段22によって上方に引き上げられ、内蓋21もそれに伴って上へ移動して、炊飯鍋3と内蓋21の間に隙間が設けられる。
【0027】
次いで、回転駆動手段7であるモータが回転して、ベルト8、回転子6を介して伝わり、炊飯鍋3が偏心回転し始める。炊飯鍋3内は水と米が共振することで大きな揺れが起こる。この大きな揺れの中で米同士が密着せずに米が水と接触するので米一粒一粒の表面の汚れを水流で落とすことが出来る。
【0028】
さらに、タンク14の水を給水ポンプ15から給水パイプ17を経て炊飯鍋3内に送水する。炊飯鍋3内は偏心回転で発生したスロッシングで波が高く生じており、水面に浮き上がった米から剥がれ落ちたゴミや汚れが炊飯鍋3よりオーバーフローして排水溝12に流れだし、水面上のゴミや汚れ成分が排水パイプ13を通じてタンク14へ排出される。
【0029】
ここで、スロッシングとは、タンクのような液体を入れた容器に周期的な振動を与えた場合に,タンク内の液面が大きくうねる現象を言い、著しく大きなスロッシングが発生した場合には,構造物の破壊等に繋がることがある。スロッシング現象が発生すると、液体の液面は通常の状態では想定できない高さに達し米が攪拌される。
【0030】
スロッシングにより炊飯鍋3内に起こる波は大きくなるので、オーバーフローさせるために追加給水する水は少量で済ませることができる。タンク14内に排出された汚れた水は、タンク14内に装着したフィルタ16でゴミやヌカをろ過され、ろ過後のきれいな水が給水ポンプ15で汲み上げられて炊飯鍋3内に循環供給される。
【0031】
炊飯鍋3を偏心回転させて一定間隔で排水と給水を繰り返すサイクルは2から3回で、所要時間としては2分から3分以内が望ましい。なお、タンク14内に装着したフィルタ16は着脱自在で洗浄して繰り返し使用可能である。
【0032】
以上のように、洗米時に、前記回転駆動手段が前記炊飯鍋を偏心回転すると共に、前記貯留手段から前記水循環経路及び前記ろ過手段を通じて前記水を前記炊飯鍋へ給水し、前記炊飯鍋から前記水循環経路を通じて前記貯留手段へ回流し、再度前記炊飯鍋へ給水するよう、前記水を循環させることによって、米同士、さらには米と炊飯鍋の相対位置を変える強制対流を炊飯鍋内に起こし、水の流速と米の移動速度が異なるように移動することで、炊飯鍋内の米と水が強制対流により攪拌されて米が砕けずに米表面に付着した汚れを取り去ることができて、少ない水量でも水流の中で米一粒一粒の表面の汚れを洗い落とすことができる。
【0033】
また、偏心回転によってスロッシング現象が起こり、鍋内の水の揺れが拡大するので、少ない駆動エネルギーで流体を大きく揺らすことができる。
【0034】
さらに、洗米を繰り返す際に排水した水をフィルタでろ過して再度給水するので少ない水量で自動洗米することが可能となる。
【0035】
(実施の形態2)
図2は、本発明の第2の実施の形態における自動洗米炊飯器の断面図を示すものである。
【0036】
本実施の形態では、炊飯鍋および炊飯鍋内の被調理物の重量を計測する重量計測手段を備え、洗米前の米の重量に応じて、予め設定された被調理物の総重量に到達するように、洗米後に炊飯鍋へ給水する点が実施の形態1の形態と異なっており、その他の構成については実施の形態1と同じであるので、相違点について説明する。
【0037】
図1と同じ図番を付したものは、同じであるので説明を省略し、実施の形態1との差異について説明する。
【0038】
炊飯室2の内底面に設けた別の開口から、重量計測手段である重量センサ23が露出している。重量センサ23は、ソレノイドなどの駆動手段10によって上下に可動する。
【0039】
重量センサ23は、洗米前は炊飯鍋3の底部に接触して設けられ、初期に炊飯鍋3に入った被調理物の重量をセンシングする。本実施の形態では、洗米前の炊飯鍋3には、米のみが収納されているので、重量センサ23は米の重量をセンシングする。重量データの信号は制御手段24に送られる。
【0040】
次に、炊飯鍋3内へタンク14からの給水が始まり、炊飯鍋3内の重量が事前に定められた重量よりも増加し始めると、重量センサ23はソレノイドなどの駆動手段10によって下方に可動し、炊飯鍋3の鍋底から離れる。
【0041】
水の供給が済むと、温度センサ9がソレノイドによって引き下げられ、炊飯鍋3の底面と非接触の状態となる。
【0042】
また、水投入パイプ18が駆動手段22によって上方に引き上げられ、内蓋21もそれに伴って上へ移動して、炊飯鍋3と内蓋21の間に隙間が設けられる。
【0043】
次いで、回転駆動手段7であるモータが回転して、ベルト8、回転子6を介して伝わり、炊飯鍋3が偏心回転し始める。炊飯鍋3内は水と米が共振することで大きな揺れが起こる。この大きな揺れの中で米同士が密着せずに米が水と接触するので米一粒一粒の表面の汚れを水流で落とすことが出来、洗米が進む。
【0044】
洗米が終了して炊飯鍋3の回転が停止すると、再度、炊飯鍋3の鍋底へ重量センサ23が接触して検知した重量データが制御手段24に送信される。制御手段24では初期の米重量に応じて炊飯時に最適な米と水の合計重量のデータが予め設定されており、初期の米重量値をもとに割り出した最適重量になるように水がタンク14から追加給水され、洗米後に最適な水加減が可能となる。
【0045】
なお、ヌカやゴミなどは通過せずに米のうまみと甘みの成分である分子量の小さな水溶性デンプン、アミノ酸は透過できるようなフィルタ16を使用することで、炊飯時にうまみ成分が溶け出た水を給水することができ、炊飯したご飯は旨みと甘みのあるものになる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる自動洗米炊飯器は、洗米に使用する水を最小限にして自動で洗米から炊飯まで行うので、家庭用および業務用の炊飯器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 炊飯器本体
2 炊飯室
3 炊飯鍋
4 加熱手段
5 鍋装着部
6 回転子
7 回転駆動手段
8 ベルト
9 温度センサ
10、20、22 駆動手段
11 フランジ部
12 排水溝
13 排水パイプ
14 タンク
15 給水ポンプ
16 フィルタ
17 給水パイプ
18 水投入パイプ
19 給水弁
21 内蓋
23 重量センサ
24 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物たる米と水を洗米・調理する炊飯鍋と、前記炊飯鍋を加熱する加熱手段と、前記水を貯留する貯留手段と、前記炊飯鍋を偏心回転させる回転駆動手段と、前記貯留手段と前記炊飯鍋を循環連通する水循環経路と、ろ過手段とを備え、洗米時に、前記回転駆動手段が前記炊飯鍋を偏心回転すると共に、前記貯留手段から前記水循環経路及び前記ろ過手段を通じて前記水を前記炊飯鍋へ給水し、前記炊飯鍋から前記水循環経路を通じて前記貯留手段へ回流し、再度前記炊飯鍋へ給水するよう、前記水を循環させることを特徴とした自動洗米炊飯器。
【請求項2】
前記ろ過手段はヌカやゴミなどは通過させず、米のうまみと甘みの成分である水溶性デンプン、アミノ酸の分子量サイズは透過させることを特徴とした請求項1に記載の自動洗米炊飯器。
【請求項3】
前記炊飯鍋および前記炊飯鍋内の前記被調理物の重量を計測する重量計測手段を備え、洗米前の前記米の重量に応じて、予め設定された前記被調理物の総重量に到達するように、洗米後に前記炊飯鍋へ給水することを特徴とした請求項1または2に記載の自動洗米炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−11018(P2012−11018A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150733(P2010−150733)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】