説明

自動洗髪機

【課題】ストの供給に伴って生じる各種効果を維持しつつ、シンク内部への円滑なミストの供給を実現する。
【解決手段】自動洗髪機1は、被洗髪者の頭部を収めるシンク2と、このシンク2に収めた頭部に向けて洗浄水を噴射する上ノズルリンク11、下ノズルリンク12と、を備えると共に、ミスト発生装置90と、このミスト発生装置が発生したミストをシンク2に導入するミスト搬送管91と、を備え、シンク2内で、ミスト搬送管91の端部に形成されたミスト吐出口102を露出させた上で、ミスト搬送管91に排水トラップ92を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクに収めた頭部を自動で洗髪する自動洗髪機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被洗髪者の頭部を収めるシンクの内側に、頭部に向けて洗浄水を噴射するノズルリンクを備え、このノズルリンクによって被洗髪者の頭部や髪に洗浄水を噴射することにより自動で洗髪を行えるようにした自動洗髪機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の自動洗髪機では、シンク内にミストを供給可能に構成したものがある。そして、シンク内にミストを供給可能に構成された自動洗髪機では、シンク内で所定の薬用成分を含んだミストを頭部に接触させることによりトリートメント効果を与え、また、香りが良く暖かいミストを頭部に接触させることにより、リラクゼーション効果を与えることを目的として、ミストの供給が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−236511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようにシンク内にミストを供給可能とした自動洗髪機では、シンクに設けられたミスト吐出口から、洗髪に供した洗浄水が侵入してしまい、シンク内部への円滑なミストの供給が阻害されるおそれがある、という問題があった。この問題を解決するため、ミスト吐出口に、洗浄水が侵入することを防止するための傘部を設けることも考えられるが、この場合、傘部により、ミスト吐出口から頭部に向かってミストが直接噴射されることが妨げられ、これにより、上述したトリートメント効果や、リラクゼーション効果が低減するおそれがあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ミストの供給に伴って生じる各種効果を維持しつつ、シンク内部への円滑なミストの供給を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、被洗髪者の頭部を収めるシンクと、このシンクに収めた頭部に向けて洗浄水を噴射するノズルリンクと、を備える自動洗髪機において、ミストを発生するミスト発生装置と、このミスト発生装置が発生したミストを前記シンクに導入するミスト搬送管と、を備え、前記シンク内で、前記ミスト搬送管の端部に形成されたミスト吐出口を露出させた上で、前記ミスト搬送管に排水トラップを設けたことを特徴とする。
【0006】
ここで、上記発明の自動洗髪機において、前記シンクに収めた頭部に向かってミストを噴射可能なように、前記シンク内で前記ミスト吐出口を露出させてもよい。
【0007】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記シンクの後部側面に前記ミスト吐出口を設けてもよい。
【0008】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記ミスト吐出口の向きを変更可能に構成してもよい。
【0009】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記ミスト発生装置によるミストの発生に伴って生じるドレン水が前記排水トラップへ流入される構成としてもよい。
【0010】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記排水トラップの出口側を、前記シンクの排水管に接続してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ミストの供給に伴って生じる各種効果を維持しつつ、シンク内部への円滑なミストの供給を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る自動洗髪機の斜視図である。
【図2】自動洗髪機を上から見た図である。
【図3】シンクの側面図である。
【図4】自動洗髪機の内部構成を示す概略断面図である。
【図5】自動洗髪機に使用する水の流れを示す水路図である。
【図6】シンク接続部の斜視図である。
【図7】シンク接続部の分解斜視図である。
【図8】シンク接続部が備える各部材のそれぞれの斜視図である。
【図9】シンク接続部の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は自動洗髪機1の斜視図であり、図2は自動洗髪機1を上から見た図である。図3は、シンク保持台3の外枠を取り外した上で自動洗髪機1を横から見た図である。図4は自動洗髪機1の概略断面図である。図5は自動洗髪機1の水の流れを概略的に示す水路図である。
【0014】
図1〜図5に示すように、自動洗髪機1は、被洗髪者の頭部を収容するためのシンク2と、シンク2を保持するシンク保持台3と、シンク保持台3の前方に配置され、被洗髪者が座るための椅子4(図4)と、椅子4を保持する椅子保持台5(図4)とを備えている。
【0015】
シンク2は、図1〜図4に示すように、その上面に開口を有する碗状の部材である。シンク2の前側には、仰向け姿勢の被洗髪者の首元を、シンク2の内側に臨ませた状態にして、被洗髪者の後頭部を支える頭部支持ネット70が配置されている。また、シンク2の前側の壁部2Aには、椅子4に座った状態で被洗髪者が仰向けで、頭部支持ネット70に後頭部を載せた状態で、首を載せることができるネック台7が配置されている。シンク2の上面の開口は、カバー8により覆うことができる。カバー8は、その後端が連結部9(図4)を介してシンク2の後端に連結されていて、連結部9を中心にして鉛直面内で回動可能となっている。洗髪時などには、カバー8を開いた状態で、椅子4に座っている被洗髪者の首をネック台7に載せた後、カバー8を閉じることにより、被洗髪者に頭部をシンク2内に収容することができる。
【0016】
シンク2内には、被洗髪者の頭部および髪に向けて洗浄水(温水、シャンプー液が混入された温水、トリートメント液が混入された温水など)を噴射するための上ノズルリンク11(ノズルリンク)及び下ノズルリンク12(ノズルリンク)が配置されている。上ノズルリンク11は、被洗髪者の頭部に沿うように、図示位置で上に凸の略円弧状に湾曲し、所定間隔でノズルを有する管状の部材であって、その左端部が回動可能に片持ち支持されており、被洗髪者の頭部に向かって洗浄水を噴射する。
下ノズルリンク12は、被洗髪者の髪を囲うように、図示位置で左方に凸の略弓形状に湾曲し、所定間隔でノズルを有する管状の部材であって、その左端部が上ノズルリンク11よりも下方で回転可能に片持ち支持されている。この下ノズルリンク12は、後方に向かって洗浄水を噴射することにより、後方側に垂れ下がった被洗髪者の髪(想像線で示す。)を洗浄する。
また、シンク2内には、仰向け姿勢の被洗髪者の首元に向けて洗浄水を噴射する首元用ノズルリンク80が配置されている。
【0017】
上下ノズルリンク11、12、および首元用ノズルリンク80には、それぞれ複数のノズルが備えられていて、洗髪時には、上下ノズルリンク11,12、および首元用ノズルリンク80内に送られてきた洗浄水が各ノズルから噴射される。上下ノズルリンク11,12は回動し、首元用ノズルリンク80は固定である。各ノズルから洗浄水を噴射することで、被洗髪者の頭部および髪の全体を洗浄できる。シンク2内の後側上部には、ハンドシャワー13が配置されている。オペレーター(美容院の従業員など)は、ハンドシャワー13の右方に配置されたコック14を回すことにより、ハンドシャワー13から放水する水量を調節して、手動で洗髪できる。
【0018】
自動洗髪機1で使用する水は、図5に示すように、機外の水道設備および給湯設備(図示せず)からミキシングバルブ15および給水管16を介して機内に供給される。ミキシングバルブ15には、水道設備から水供給部17を介して水が与えられるとともに、給湯設備から湯供給部18を介して湯が与えられる。ミキシングバルブ15は、水供給部17および湯供給部18から与えられる水および湯を混合し、温水にして給水管16に送り出すためのものである。給水管16内の途中部には、ミキシングバルブ15から送り出される温水の温度を検知するためのサーミスター19が配置されている。サーミスター19の検知結果に基づいてモーター20が駆動されることにより、ミキシングバルブ15が開閉されて水と湯との混合割合が調整され、設定温度の温水が生成される。ミキシングバルブ15は、モーター20で調整される電動タイプである。モーター20は、DCモーターまたは直流電動機であり、ブラシなどを備えている。
【0019】
また、シンク2の側方には、操作パネル60(図4)が設けられており、設定温度は、オペレーター(ユーザー)が操作パネル60を操作することにより決定される。給水管16は、途中部(サーミスター19よりも下流側)からハンドシャワー用給水管21と貯湯用給水管22とに分岐している。ハンドシャワー用給水管21は、コック14によって開閉可能なハンドシャワー用バルブ23を介してハンドシャワー13に連通している。一方、貯湯用給水管22は、給湯バルブとしての貯湯バルブ24を介して貯湯タンク25内に温水を供給することができる。
【0020】
貯湯タンク25の内部には、当該貯湯タンク25に貯められている温水の水位を検知するための第1水位センサー26および第2水位センサー27が、上下方向に一定間隔を空けて配置されている。貯湯タンク25内の温水が使用されて、所定の最低水位に達したことが第2水位センサー27により検知された場合には、貯湯バルブ24が開かれて、貯湯タンク25内に温水が供給される。その後、貯湯タンク25内の温水が所定の最高水位に達したことが第1水位センサー26により検知されると、貯湯バルブ24が閉じられて、温水の供給が停止する。このようにして、貯湯タンク25内には、最低水位と最高水位との間で、常に温水が貯められた状態となっている。
【0021】
貯湯タンク25の上部(第1水位センサー26よりも上方)には、第1水位センサー26の故障などに起因して貯湯タンク25内に最高水位以上の温水が供給された場合に、その余分な温水を貯湯タンクの外部に溢れ出させるための溢水口28が形成されている。溢水口28から溢れ出した温水は、オーバーフロータンク29によって受けられ、このオーバーフロータンク29に連通する排水管30を通って機外に排出される。オーバーフロータンク29内にはオーバーフローセンサー31が配置され、たとえば排水管30が詰まってオーバーフロータンク29内の水位が最高水位に到達したことがオーバーフローセンサー31によって検知された場合には、自動洗髪機1の運転が停止される。
【0022】
貯湯タンク25の最下部には、一端がメインポンプ32に接続された吸込管33の他端が接続されている。メインポンプ32は、インバータ(図示せず)から交流電流が供給されることにより駆動され、吸込管33を介して貯湯タンク25内の温水を吸い込むものである。吸込管33の途中には、シャンプー液が収容されたシャンプー容器34に至るシャンプー供給管35と、トリートメント液が収容されたトリートメント容器36に至るトリートメント供給管37とが接続されている。シャンプー供給管35およびトリートメント供給管37の途中部には、それぞれシャンプー用ポンプ38およびトリートメント用ポンプ39が備えられていて、シャンプー用ポンプ38およびトリートメント用ポンプ39の働きにより、吸込管33内を通る温水に、シャンプー液およびトリートメント液の混入量を適度に調整することにより、メインポンプ32には、そのとき使用すべき洗浄水が汲み込まれることとなる。
【0023】
吸込管33からメインポンプ32内に吸い込まれた洗浄水は、4つの分路を有する送水管40に送り出される。送水管40内には、フィルター41が設けられていて、その下流側の4つの分路には、上ノズルバルブ42、下ノズルバルブ43、首元用ノズルバルブ74、及び、排水バルブ44の4つのバルブが設けられている。上ノズルバルブ42、下ノズルバルブ43、首元用ノズルバルブ74、及び、排水バルブ44が設けられた4つの分路には、それぞれ、分岐路46、47、75、48が延設されている。上ノズルバルブ42から延設された分岐路46の終端は上ノズルリンク11に接続され、下ノズルバルブ43から延設された分岐路47の終端は下ノズルリンク12に接続され、首元用ノズルバルブ74から延設された分岐路75の終端は首元用ノズルリンク80に接続されている。
【0024】
シンク2の底面には、当該シンク2内に水を排出するための排水口50が形成されていて、この排水口50は、逆流を防止するためのシンク側排水トラップ51を介して排水管30に連通している。これにより、シンク2の排水口50から排出された水は、排水管30を通って、機外に排水されるようになっている。排水バルブ44から延設された分岐路48の終端は、シンク側排水トラップ51に接続されている。
【0025】
図3、図4、及び、図5を参照し、本実施形態に係る自動洗髪機1は、ミスト発生装置90を備えている。
ミスト発生装置90は、ミストを発生し、シンク2内へ供給する装置であり、ミストの発生に供する温水を貯留するためのタンクや、タンクに貯留された温水を加熱するためのヒーター、タンクに貯留された温水の温度を検出するためのサーミスター、超音波によってタンクから供給された温水を振動させることにより、温水を霧状にしてミストを発生させる超音波発生装置、この超音波発生装置の働きにより発生したミストをミスト搬送管91へと送り出すためのファン等の、ミストを発生し、シンク2へ供給するための各種機構、装置を備えている。
【0026】
ミスト搬送管91は、一端が、ミスト発生装置90に接続されると共に、他端が、シンク接続部94を介してシンク2に接続されており、ミスト発生装置90において発生したミストは、このミスト搬送管91を通って、シンク2内へ供給される。
図3〜図5に示すように、ミスト搬送管91上には、排水トラップ92が設けられている。
以下、排水トラップ92の機能と共に、ミスト搬送管91におけるミストの流れ、及び、シンク2からミスト搬送管91に流入した逆流水(後述)の流れについて説明する。
【0027】
ミスト搬送管91は、ミスト発生装置90が発生したミストをシンク2内へ供給するための配管であるため、シンク2内で洗浄に供した洗浄水等が、ミスト搬送管91に流入する場合がある。なお、以下の説明では、シンク2からミスト搬送管91に流入した洗浄水等の液体を便宜的に「逆流水」という。本実施形態では、後述する理由により、逆流水がミスト搬送管91に少なからず流入することが想定されている。
そして、逆流水がミスト搬送管91を介してミスト発生装置90本体に流入した場合、ミスト発生装置90の故障の原因となると共に、シンク2への円滑なミストの供給が阻害される原因となる。
これを踏まえ、本実施形態では、ミスト搬送管91に、下方へ向かって延びる排水トラップ入口管93が接続されている。そして、ミスト搬送管91と排水トラップ入口管93との接続部95は、シンク接続部94よりも下方に設けられ、シンク2からミスト搬送管91に流入した逆流水は、ミスト搬送管91の傾斜に従って接続部95へ向かって流れ、この接続部95において排水トラップ入口管93に流入する構成となっており、これにより、逆流水がミスト発生装置90へ至らない構成となっている。
【0028】
このように、ミスト搬送管91上に、排水トラップ入口管93を設けることにより、ミスト発生装置90に流入した逆流水がミスト発生装置90へ流入しない構成としたため、ミスト発生装置90からシンク2へ供給されるミストが、排水トラップ入口管93へ流入してしまい、円滑なミストの供給が妨げられる可能性がある。
これを踏まえ、本実施形態では、排水トラップ入口管93の下部に、いわゆるS字トラップからなる排水トラップ92が設けられている。そして、排水トラップ92には、下方へ向かってU字状に屈曲して形成された液体貯留部96が形成されており、この液体貯留部96に、排水トラップ入口管93を介して逆流水が供給され、所定の水位で絶えず液体が貯留される仕組みとなっている。この排水トラップ92の液体貯留部96において貯留された液体が栓としての役割を果たし、ミスト発生装置90からシンク2へ供給されるミストが、排水トラップ入口管93に流入することが防止され、これにより、円滑なミストの供給が妨げられることが防止されている。
【0029】
なお、ミスト搬送管91は、シンク2に供給されるミストが通る配管であるため、ミストの流通に起因して、内部にドレン水が発生するが、このミスト搬送管91の内部に発生したドレン水も、ミスト搬送管91に流入した逆流水と同様、排水トラップ入口管93を介して、排水トラップ92に供給され、これにより、ドレン水がミスト発生装置90へ流入することが防止されている。
さらに、ミスト発生装置90によるミストの発生に伴って、ミスト発生装置90の内部で発生したドレン水は、ミスト発生装置90に接続されたドレン水排出管97からミスト発生装置90の外部へ排出される構成とされ、かつ、このドレン水排出管97の他端が、排水トラップ入口管93に接続された構成とされている。これにより、ミスト発生装置90から排出されたドレン水は、適宜、排水トラップ92へ供給され、より確実に排水トラップ92における液体の貯留が行われている。
このように、本実施形態では、ドレン水を排出する専用の経路や、この経路上に設けられた電磁弁、電磁弁の制御に供する機器等を設けることなく、ドレン水の処理が可能であるため、製造コストを低減でき、かつ製造容易性を向上できる。
【0030】
排水トラップ92の出口側には、排水トラップ出口管98が接続されている。
図3〜図5に示すように、排水トラップ出口管98の他端は、上述した排水管30に接続されており、排水トラップ92の液体貯留部96において、所定の水位を超え、排水トラップ出口管98へ流入した液体は、排水トラップ出口管98を介して、排水管30へ流出し、排水管30を介して機外に排出される。つまり、ミスト搬送管91に流入した逆流水や、ミスト発生装置90によるミストの発生に伴って生じたドレン水は、既存の排水管30を介して機外へ排出される。このように、シンク2の排水管30という既存の設備を利用して、逆流水やドレン水を機外へ排出する構成としたため、新たに機外へ液体を排出する機構を設けた場合と比較して、コストの削減、及び、製造容易性の向上を図ることができる。
【0031】
図6は、シンク接続部94をシンク2の内側から見たときの斜視図である。図7は、シンク接続部94の分解斜視図である。
図1、図2、及び、図6に示すように、シンク2の後部側面100に、筒状のミスト吐出管101が、シンク2の内側へ向かって突出した状態で設けられ、このミスト吐出管101の端部の開口には、ミスト吐出口102が形成されている。このミスト吐出管101は、上述したミスト搬送管91に接続されており、ミスト発生装置90から供給されたミストは、ミスト搬送管91、及び、このミスト吐出管101を介してミスト吐出口102からシンク2の内部へ供給される。
【0032】
ここで、図1、2、6に示すように、本実施形態では、ミスト吐出口102は、シンク2の内側に向かって露出した状態であり、ミスト吐出口102に逆流水が流入することを防止するべく傘部を設ける等していない。これは、以下の理由による。
すなわち、本実施形態において、ミストは、シンク2内で所定の薬用成分を含んだミストを被洗髪者の頭部に接触させることによりトリートメント効果を与え、また、香りが良く暖かいミストを頭部に接触させることにより、リラクゼーション効果を与えることを目的として、シンク2内に供給される。従って、ミストが、ある程度の暖かさを維持しつつ、ミスト吐出口102から被洗髪者の頭部に直接吹き付けられた場合に、上述した効果を最大限に奏することができると考えられる。
そして、ミスト吐出口102に対応する位置に、傘部を設けた場合、ミスト吐出口102に逆流水が流入することは防止できるものの、傘部により、ミスト吐出口102から被洗髪者の頭部に対し直接ミストが噴射されることが妨げられると共に、ミストが傘部を迂回した上で被洗髪者の頭部に吹き付けられることとなり、この迂回に起因して、ミストの温度が低下する可能性があった。
以上のことを考慮して、本実施形態では、ミスト吐出口102がシンク2内で露出した状態とされ、シンク2に収めた頭部に対してミスト吐出口102から直接ミストが噴射可能な構成となっており、これにより、トリートメント効果やリラクゼーション効果等を効果的に生じさせている。
なお、ミスト吐出口102に対応する位置に傘部を設けなかった場合、ミスト吐出口102に逆流水が多分に流入することとなるが、上述した、排水トラップ92等の機能により、ミスト発生装置90に逆流水が流入することが確実に防止されると共に、円滑なミストの供給が阻害されることが防止されている。
【0033】
さらに、本実施形態では、「筒状」のミスト吐出管101からミストが噴射される構成となっている。従って、ミストは、ある程度の指向性を持って、頭部に対して噴射されることとなり、上述したトリートメント効果や、リラクゼーション効果をさらに生じさせることができる。
特に、図1、図2に示すように、ミスト吐出口102は、シンク2の後部側面100の中央下部に設けられており、空気中で上昇する性質を有する霧状のミストを好適に仰向け姿勢の被洗髪者の頭部の全域に行き渡らせることができる。すなわち、シンク2の後部側面100の中央下部に設けられたミスト吐出口102から、仰向け姿勢の被洗髪者の後頭部付近にミストが噴射されると、ミストが上昇しつつ、頭部の形状に沿って頭部の全域に行き渡る。
また、本実施形態では、上述したように、自動洗髪中は、シンク2内において、頭部支持ネット70に被洗髪者の後頭部が支持された状態(図2、図4も併せて参照)となるが、この場合、頭部支持ネット70から髪が鉛直下方へ垂れ下がることとなる。これを踏まえ、シンク2の後部側面100の中央下部にミスト吐出口102が設けられているため、鉛直下方に垂れ下がる髪の側方からミストを噴射でき、垂れ下がる髪を含めた髪の全域へ好適にミストを行き渡らせることができる。
【0034】
図8は、シンク接続部94が備える各部材のそれぞれの斜視図であり、(A)はミスト吐出部110を示し、(B)は前側吐出部固定部材111を示し、(C)は後側吐出部固定部材112をそれぞれ示している。なお、図8(B)、図8(C)では、一部断面図となっている。図9は、シンク接続部94の一部断面図である。
【0035】
図7に示すように、シンク接続部94は、ミスト吐出部110と、前側吐出部固定部材111と、後側吐出部固定部材112と、を備えている。
前側吐出部固定部材111は、シンク2に対して固定される部材であり、図8(B)に示すように、円盤状の前側フランジ部114と、この前側フランジ部114の径よりも小さい径を有し、前側フランジ部114から前方へ向かって突出して設けられた円筒状の接触部113と、この接触部113よりも小さい径を有し、接触部113から前方へ向かって突出して設けられた円筒状の突出部115と、を備えている。
【0036】
ここで、シンク2の後部側面100において、シンク接続部94が設けられる位置には、後部側面100を貫通して貫通孔116(図7)が設けられている。この貫通孔116の径は、突出部115の径と略同一とされ、突出部115は貫通可能であり、かつ、接触部113は貫通不可能とされている。
そして、前側吐出部固定部材111は、貫通孔116に対して突出部115が嵌合(貫通)し、かつ、接触部113の前面が後部側面100の裏面に接触した状態で、シンク2に対して固定される。より詳細には、突出部115において、貫通孔116を貫通し、シンク2の内部に延出した部分の外周には、雄ネジ部が形成されおり、図7に示すように、この雄ネジ部に対して、ナット117が螺合され、このナット117と、接触部113の前面とによってシンク2の後部側面100が挟持されて、シンク2に対して前側吐出部固定部材111が固定される。
前側吐出部固定部材111の内部には、前側吐出部収納部119(図8(B)、図9)が形成されているが、これについては後述する。
【0037】
一方、後側吐出部固定部材112は、図7及び図8に示すように、前側吐出部固定部材111の前側フランジ部114と対応した形状を有する円盤状の後側フランジ部118と、この後側フランジ部118の径よりも小さい径を有し、後側フランジ部118から後方へ向かって突出して設けられた基礎部120と、この基礎部120の後方に設けられた筒状の配管接続部121と、を備えている。この配管接続部121に対して、上述したミスト搬送管91が、気密性を維持した状態で接続される。
上述した前側吐出部固定部材111の前側フランジ部114には、周方向に間隔を開けて複数の前側ネジ穴122が形成され、同様に、後側吐出部固定部材112の後側フランジ部118において、前側ネジ穴122のそれぞれと対応する位置には、後側ネジ穴123が形成されている。そして、前側フランジ部114と、後側フランジ部118とが重ね合わせられた状態で、前側ネジ穴122及び後側ネジ穴123のそれぞれに専用のボルト及びナットが取り付けられ、これにより、前側フランジ部114に対して後側フランジ部118が固定されると共に、前側吐出部固定部材111に対して後側吐出部固定部材112が固定される。
後側吐出部固定部材112の内部には、後側吐出部収納部124(図8(C)、図9)が形成されているが、これについては後述する。
【0038】
ミスト吐出部110は、上述したミスト吐出管101と、このミスト吐出管101の基端に接続され、ミスト吐出管101の軸方向と直交する方向が軸方向となっている薄い円柱状の位置決め部125と、を備えている。図9に示すように、位置決め部125の内部には、ミスト吐出管101の内周に連結され、前後方向に延びる内部空洞126が形成されており、また、位置決め部125の後面には、内部空洞126に連結した開口127が形成されている。
後述するように、内部にミスト吐出部110を組み込んだ状態で、前側吐出部固定部材111と、後側吐出部固定部材112とを連結した場合、図9に示すように、開口127と、後側吐出部固定部材112の配管接続部121の内部空洞とが連通する。これにより、配管接続部121に接続されたミスト搬送管91から導入されたミストは、配管接続部121を介して、ミスト吐出管101へ流入する。
位置決め部125の左右の側面の中央には、位置決め部125の軸方向に沿って外側へ向かって突出したボス130が設けられている。
【0039】
図9に示すように、前側吐出部固定部材111と、後側吐出部固定部材112とは、内部にミスト吐出部110を組み込んだ状態で連結される。
詳述すると、前側吐出部固定部材111の内部に形成された前側吐出部収納部119(8(B)、図9)と、後側吐出部固定部材112の内部に形成された後側吐出部収納部124(図8(C)、図9)とが連結することによって形成される位置決め部収納空間131に、ミスト吐出部110の位置決め部125が収納され、かつ、ミスト吐出部110のミスト吐出管101が、前側吐出部固定部材111の突出部115の内部に延在し、その先端が突出部115の先端から突出した状態となるように、ミスト吐出管101が組み込まれた上で、前側吐出部固定部材111と、後側吐出部固定部材112とが連結される。
その際、位置決め部収納空間131において、収納した位置決め部125の左右の側面の中央に形成されたボス130に対応する位置には、ボス130が嵌合するボス用溝133が形成され、このボス用溝133のそれぞれに対して、ボス130のそれぞれが嵌合した状態で、位置決め部収納空間131に位置決め部125が収納される。
【0040】
以上のような構成の下、本実施形態では、ミスト吐出管101が所定の範囲内で回動し、かつ、回動後は、回動後におけるミスト吐出管101の位置が維持される。
詳述すると、突出部115の内部から突出したミスト吐出管101を把持し、このミスト吐出管101を上下方向に対応する方向(図6及び図9の矢印Y1が示す方向)に回動すると、位置決め部収納空間131において、ボス130を中心として、ミスト吐出部110の位置決め部125が回動する。なお、ミスト吐出管101の外周が、突出部115の内周に接触し、それ以上の回動が規制されるまでの範囲内で、ミスト吐出管101の回動が可能である。
そして、本実施形態では、ミスト吐出管101の回動に伴い、位置決め部収納空間131において位置決め部125が回動した場合、位置決め部125が位置決め部収納空間131の内側に接触し、摺動しつつ回動するよう、位置決め部収納空間131の大きさ、形状、及び、位置決め部125の大きさ、形状がそれぞれ定められている。これにより、ミスト吐出管101を回動した場合、位置決め部125と位置決め部収納空間131との接触に伴う摩擦力により、回動後のミスト吐出管101の向きが維持された状態となる。
【0041】
このように、本実施形態では、ミスト吐出管101の向きを所定の範囲で変更可能であり、かつ、変更後は、ミスト吐出管101の変更後の向きが維持される構成となっている。これにより、以下の効果を奏する。
すなわち、頭部の大きさ、形状は、人によって異なる。従って、ミスト吐出管101に形成されたミスト吐出口102の最適な向きは、人によって異なる。そして、ミスト吐出管101の向きを所定の範囲で変更可能とすることにより、被洗髪者に応じてミスト吐出口102の向きを最適とすることができる。特に、本実施形態では、ミスト吐出管101を把持し、回動するという、非常に簡易な作業によって、ミスト吐出管101のミスト吐出口102の向きを変更できるため、作業性がよく、かつ、短時間の作業ですむため、被洗髪者及びユーザーの利便性を向上できる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る自動洗髪機1は、被洗髪者の頭部を収めるシンク2と、このシンク2に収めた頭部に向けて洗浄水を噴射する上ノズルリンク11、下ノズルリンク12と、を備えている。そして、自動洗髪機1は、ミストを発生するミスト発生装置90と、このミスト発生装置90が発生したミストをシンク2に導入するミスト搬送管91と、を備えており、シンク2内で、ミスト搬送管91の端部に形成されたミスト吐出口102を露出させた上で、ミスト搬送管91に排水トラップ92が設けられている。
これによれば、ミスト吐出口102がシンク2内で露出した状態となるため、シンク2に収めた頭部に対してミスト吐出口102から直接ミストが噴射可能であり、トリートメント効果やリラクゼーション効果等が軽減されることがない。そして、ミスト吐出口102が露出した状態となるため、ミスト吐出口102からミスト搬送管91に逆流水が流入することとなるが、排水トラップ92の機能により、ミスト搬送管91に流入した逆流水がミスト発生装置90に流入することを防止した上で、円滑なミストの供給を実現できる。
【0043】
また、本実施形態では、シンク2に収めた頭部に向かってミストを噴射可能なように、シンク2内でミスト吐出口102が露出した状態となっている。
より詳細には、図1、図2に示すように、ミスト吐出口102は、シンク2の後部側面100の中央下部において、その開口が露出した状態で設けられている。
これにより、空気中で上昇する性質を有する霧状のミストを好適に仰向け姿勢の被洗髪者の頭部の全域に行き渡らせることができる。すなわち、シンク2の後部側面100の中央下部に設けられたミスト吐出口102から、仰向け姿勢の被洗髪者の後頭部付近にミストが噴射されると、ミストが上昇しつつ、頭部の形状に沿って頭部の全域に行き渡る。
また、本実施形態では、上述したように、シンク2内において、頭部支持ネット70に被洗髪者の後頭部が支持された状態(図2、図4も併せて参照)となるが、この場合、頭部支持ネット70から髪が鉛直下方へ垂れ下がることとなる。そして、シンク2の後部側面100の中央下部に、ミスト吐出口102が設けられているため、鉛直下方に垂れ下がる髪の側方から垂れ下がる髪の全域にミストを噴射でき、垂れ下がる髪を含めた髪の全域へ好適にミストを行き渡らせることができる。
【0044】
また、本実施形態では、ミスト吐出口102の向きを変更可能である。
ここで、頭部の大きさ、形状は、人によって異なる。従って、ミスト吐出管101に形成されたミスト吐出口102の最適な向きは、人によって異なる。そして、ミスト吐出管101の向きを所定の範囲で変更可能とすることにより、被洗髪者に応じてミスト吐出口102の向きを最適とすることができる。特に、本実施形態では、ミスト吐出管101を把持し、回動するという、非常に簡易な作業によって、ミスト吐出管101のミスト吐出口102の向きを変更できるため、作業性がよく、かつ、短時間の作業ですむため、被洗髪者及びユーザーの利便性を向上できる。
【0045】
また、本実施形態では、ミスト発生装置90によるミストの発生に伴って、ミスト発生装置90の内部で発生したドレン水は、ミスト発生装置90に接続されたドレン水排出管97からミスト発生装置90の外部へ排出される構成とされ、かつ、このドレン水排出管97の他端が、排水トラップ入口管93に接続された構成とされている。これにより、ミスト発生装置90から排出されたドレン水は、適宜、排水トラップ92へ供給され、より確実に排水トラップ92における液体の貯留が行われる。
【0046】
また、本実施形態では、排水トラップ92の出口側を、シンク2の排水管30に接続している。
すなわち、図3〜図5に示すように、排水トラップ出口管98の他端は、排水管30に接続されており、排水トラップ92の液体貯留部96において、所定の水位を超え、排水トラップ出口管98へ流入した液体は、排水トラップ出口管98を介して、排水管30へ流出し、排水管30を介して機外に排出される。つまり、ミスト搬送管91に流入した逆流水や、ミスト発生装置90によるミストの発生に伴って生じたドレン水は、既存の排水管30を介して機外へ排出される。このように、シンク2の排水管30という既存の設備を利用して、逆流水やドレン水を機外へ排出する構成としたため、新たに機外へ液体を排出する機構を設けた場合と比較して、コストの削減、及び、製造容易性の向上を図ることができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、自動洗髪機1は、上ノズルリンク11と下ノズルリンク12を備え、これらが協働する構成であったが、ノズルリンクの数や、形状は実施形態の例に限定されない。すなわち、シンク2内にミストを供給する自動洗髪機1に広く本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 自動洗髪機
2 シンク
11 上ノズルリンク(ノズルリンク)
12 下ノズルリンク(ノズルリンク)
30 排水管
90 ミスト発生装置
91 ミスト搬送管
92 排水トラップ
100 後部側面
102 ミスト吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗髪者の頭部を収めるシンクと、このシンクに収めた頭部に向けて洗浄水を噴射するノズルリンクと、を備える自動洗髪機において、
ミストを発生するミスト発生装置と、このミスト発生装置が発生したミストを前記シンクに導入するミスト搬送管と、を備え、
前記シンク内で、前記ミスト搬送管の端部に形成されたミスト吐出口を露出させた上で、前記ミスト搬送管に排水トラップを設けたことを特徴とする自動洗髪機。
【請求項2】
前記シンクに収めた頭部に向かってミストを噴射可能なように、前記シンク内で前記ミスト吐出口を露出させたことを特徴とする請求項1に記載の自動洗髪機。
【請求項3】
前記シンクの後部側面に前記ミスト吐出口を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動洗髪機。
【請求項4】
前記ミスト吐出口の向きを変更可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の自動洗髪機。
【請求項5】
前記ミスト発生装置によるミストの発生に伴って生じるドレン水が前記排水トラップへ流入される構成としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動洗髪機。
【請求項6】
前記排水トラップの出口側を、前記シンクの排水管に接続したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の自動洗髪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−212250(P2011−212250A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83679(P2010−83679)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(308012668)三洋アクア株式会社 (37)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】