説明

自動測定用カートリッジおよびそれを用いる測定装置

本発明は、自動測定装置に用いるための自動測定用カートリッジであって、試料の加熱処理を含めて自動的に測定を行うことが可能なカートリッジ、および、このカートリッジを用いる測定装置を提供することを課題とする。 本発明は、検体中に含まれる被測定成分を測定する際に使用されるカートリッジにおいて、当該カートリッジは、少なくとも検体の加熱処理を行う熱処理ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有するカートリッジである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中に含まれる成分を自動的に定量する自動測定装置に組み込んで用いる自動測定用カートリッジ、および、この自動測定用カートリッジを用いる自動測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの血液等を自動分析するための分析装置、及び、同装置に組み込んで用いられるカートリッジ方式の自動測定用カートリッジが提案されている(特開平11−316226号公報)。このカートリッジは、反応を行う反応槽と、反応に用いる試薬を充填するための複数の格納槽を有するものである。また、分析項目によって必要となる試料の希釈倍率の相違に対応するために、所定量の検体を所望の倍率に希釈する希釈ウエルを備えたカートリッジが提案されている(国際公開第01/84152号パンフレット)。
【0003】
上記のような自動測定装置を用いて分析を行なう際に、分析項目によって、検体の前処理が必要となる場合がある。例えば、血中のウイルス抗原を測定する場合には、通常、(1)ウイルス粒子の破壊、(2)ウイルス抗原の露出および抽出、(3)検体中に含まれる被験者由来の抗ウイルス抗原抗体の失活等が必要となり、これらの目的のために加熱処理が行なわれる。加熱処理は通常60℃以上の高温で行われるため、37℃前後の酵素反応等に適した温度調節部のみを有する従来の自動測定装置では、高温での前処理を行うことができなかった。
このような理由から、現状では、測定者が予め別の加熱装置(ヒートブロック等)で加熱処理を行った後に、自動測定装置に供する必要があり、非常に手間と時間がかかり、自動測定装置を用いても完全な自動化とは言えなかった。また、複数の異なる分析項目を同時に測定可能な自動測定装置を用いても、加熱処理が必要な分析項目のみを別に扱う必要が生じ、非常に不便であった。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、自動測定装置に用いるための自動測定用カートリッジであって、試料の加熱処理を自動的に行うことが可能なカートリッジ、および、このカートリッジを用いる測定装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明者らは、カートリッジに検体の加熱処理を行う熱処理ウエルを設け、同カートリッジが組み込まれた装置中で、前記熱処理ウエルを加熱することにより、検体の分析、測定を、加熱処理を含めて自動化することができることに想到し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明によれば、
(1)検体中に含まれる被測定成分を測定する際に使用されるカートリッジであって、当該カートリッジは、少なくとも検体の加熱処理を行う熱処理ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有してなることを特徴とするカートリッジが提供される。
また、本発明の別の態様によれば、
(2)被測定成分とこれと特異的に反応する物質との反応が、免疫学的反応である(1)に記載のカートリッジ、
(3)さらに、測定に必要な試薬が収納されている試薬収納ウエル、検体を分注する分注ウエル、検体の希釈を行う希釈ウエル、反応生成物の洗浄を行うための洗浄ウエル、および/または反応生成物の測定を行うための測定ウエルを有する(1)または(2)のカートリッジ、
(4)各々のウエルは直線上に配列され、かつ、前記熱処理ウエルはカートリッジのいずれかの端部に配置されたことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのカートリッジ、
(5)熱処理ウエルの隣に、加熱により影響を受ける溶液または物質を含まないウエルが配置されたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのカートリッジ、
(6)熱処理ウエルとその隣に位置するウエルとの間隔は、他のウエル同士の間隔よりも広く設定されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのカートリッジ、
(6)熱処理ウエルは、その隣に位置するウエルから隔てられていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのカートリッジ。
(7)液体状であって、ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液の深さが、希釈液または洗浄液の深さよりも浅いことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかのカートリッジ、
(8)前記ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液が、検体、標識化抗体及び磁性粒子からなる群から選ばれる物質を含む溶液である(7)のカートリッジ、
(9)検体に関する情報、分析項目に関する情報、試薬管理情報、及び測定に用いる検量線情報からなる群から選ばれる情報がカートリッジ上に記録されたことを特徴する請求項(1)〜(8)のいずれかのカートリッジ、
(10)前記情報がバーコードにより記録された(9)のカートリッジ、
(11)カートリッジを使用する際に前記情報の記録が破壊されるように構成されたことにより、カートリッジの使用又は未使用が判別され得ることを特徴とする(9)又は(10)のカートリッジ、
(12)分注ウエルに測定に必要な検体量を示す目盛りが付与されていることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかのカートリッジ、
(13)前記カートリッジは、カートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の各ウエルに試薬および/または検体を分注する分注部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部、ならびに、カートリッジの少なくとも熱処理ウエルと反応ウエルを所望の温度に調節することが可能な温度調節部を有する測定装置に組み込んで用いられるものである、(1)〜(12)のいずれかのカートリッジ、
(14)前記熱処理ウエルと反応ウエルは、前記測定装置に組み込まれたときに、それぞれ異なる所望の温度に調節されることを特徴とする(13)のカートリッジ、
(15)前記熱処理ウエルは、カートリッジが測定装置に組み込まれたときに測定装置の奥部側に位置する端部に配置されたことを特徴とする(13)又は(14)のカートリッジ、
が提供される。
さらに、本発明は、
(16)少なくとも、(1)〜(15)のいずれかのカートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の各ウエルに試薬および/または検体を分注する分注部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部、ならびに、カートリッジの少なくとも熱処理ウエルと反応ウエルをそれぞれ異なる所望の温度に調節することが可能な温度調節部を有する測定装置、
(17)前記温度調節部は、熱処理ウエルを50〜100℃、かつ、反応ウエルを25〜40℃に調節することができる(16)の測定装置、
(18)前記温度調節部は、別々に制御される2つのヒートブロックからなる(17)の測定装置、
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のカートリッジの一形態を示す図。Aは上面図、Bは断面図である。
【図2】本発明のカートリッジの他の一形態を示す図。Aは上面図、Bは断面図である。
【図3】本発明のカートリッジを用いた測定における溶液の移動の例を示す図。
【図4】本発明のカートリッジを用いた測定における溶液の移動の他の例を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書で使用する用語は、特に断らない限り以下の意味を有する。
本発明カートリッジは、検体中に含まれる被測定成分を測定する際に使用され、通常には、自動測定装置に組み込んで用いられる。
【0009】
上記測定は、通常には、被測定成分を含有する検体を分注する工程、検体中に含まれる被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる工程、および、反応生成物の量を測定する工程を含む、検体中の被測定成分の測定法(以下、「本発明測定法」ということがある)により行われる。本発明測定法は、典型的には、さらに検体の加熱処理を行う工程を含む。また、本発明測定法は、好ましくは、さらに、検体を希釈する工程を含む。
【0010】
被測定成分(以下、これを「分析項目」と称することがある)としては、特に限定されず、それと特異的に反応する物質が存在するものであればよい。例えば、被測定成分とこれと特異的に反応する物質との組み合わせとしては、抗原と抗体、抗体と抗原、酵素と基質、糖鎖とレクチン等が挙げられる。このように本発明において「特異的に反応する」とは、生化学的に特異的に結合することを意味し、被測定成分および特異的に反応する物質は、基質のようにその結合の前後で物質の化学的性質が変化するものであってもよい。中でも、検体の加熱処理が必要な被測定成分の測定には、本発明のカートリッジは特に好適である。このような被測定成分としては、例えば、ウイルス抗原等が挙げられ、その具体例として、HCVコア抗原、クラミジア抗原等が挙げられる。
【0011】
検体は、上記被測定成分を含むか又は含む可能性があるものであればよく、例えば、血液、血清、血漿、尿などが挙げられる。これらの検体は、選択された分析項目により、必要に応じて、熱処理ウエルにおいて加熱処理が行われる。加熱処理の有無、加熱温度、加熱時間等は、選択した分析項目に応じて適宜設定されればよい。例えば、前記HCVコア抗原の場合、加熱処理は65℃、30分程度で行われる。なお、加熱処理後の検体が高温であり、次に供されるウエルにおいて悪影響を及ぼすと考えられる場合には、さらに検体を適宜冷却(放置による冷却も含む)する工程を含んでもよい。ただし、後述する希釈ウエルによる希釈が行われる場合等、多量の溶液と混合されるために検体温度が問題とならない場合には、この工程は不要である。
【0012】
被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる工程、および、反応生成物の量を測定する工程の条件等は、被測定成分とそれと特異的に反応する物質の組み合わせに応じて適宜選択される。例えば、酵素と基質との反応および反応生成物の量の測定は、酵素を基質と混合して酵素を基質に作用させ、反応生成物(基質の分解物)の量を測定することによって行うことができる。また、抗体と抗原との反応および反応生成物の量の測定は、抗体または抗原を、それに対する抗体または抗原の結合した固相担体および標識体と混合して反応生成物(免疫複合体)を形成させ、洗浄によって免疫複合体から未反応の抗体または抗原および標識体を除去し(B/F分離)、免疫複合体の形成により固相に結合した標識体の量を測定することによって行うことができる。このように本発明において、「反応生成物の量を測定する」とは、反応生成物自体の量を直接測定するだけでなく、反応生成物の量に定量的に関連した物質の量を測定することも包含する。このようにして測定された反応生成物の量から検体中の被測定成分の量を算出することができる。
【0013】
本発明カートリッジは、少なくとも検体の加熱処理を行う熱処理ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有してなることを特徴とする。このような構成としたことにより、検体の加熱処理が必要な分析項目が選択された場合でも、加熱処理を含めた全ステップを自動測定することができる。
【0014】
本発明カートリッジの好ましい態様においては、各々のウエルは直線上に配列されるが、その場合、熱処理ウエルはカートリッジのいずれかの端部に配置されることが好ましい。また、熱処理ウエルの隣には、加熱により影響を受ける溶液または物質を含まないウエルが配置されることが好ましい。この加熱により影響を受ける溶液または物質を含まないウエルは、使用されないウエルであってもよい(本発明カートリッジは、多種類の分析項目に適用可能なものであるので、分析項目によっては使用されないウエルが存在し得る)。また、熱処理ウエルは、その隣に位置するウエルから隔てられていてもよい。
前記のようにカートリッジを構成することによって、熱処理ウエルが加熱されたときに、試薬や反応に与える熱の影響を低減又は防止することができる。
【0015】
本発明カートリッジは、通常は、カートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の各ウエルに試薬および/または検体を分注する分注部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部、ならびに、カートリッジの少なくとも熱処理ウエルと反応ウエルを所望の温度に調節することが可能な温度調節部を有する測定装置に組み込んで用いられる。本発明カートリッジは、好ましい態様においては、前記測定装置に組み込まれたときに、前記熱処理ウエルと反応ウエルは、それぞれ測定装置の温度調節部によって調節される。通常、熱処理ウエルと反応ウエルは異なる温度に調節されるが、反応温度が高い場合は、熱処理ウエルと反応ウエルは同じ温度に調節されてもよい。具体的には、例えば、熱処理ウエルは50〜100℃、好ましくは60〜70℃、反応ウエルは25〜40℃、好ましくは33〜38℃に調節される。これらの温度は目的の分析項目に応じて適宜設定される。熱処理ウエルの温度は、例えば、目的の分析項目の加熱処理の有無、加熱温度、加熱時間等により決定され得る。また、反応ウエルの温度は、例えば、前記反応工程や反応生成物の量を測定する工程の条件等により決定され得る。尚、反応ウエルは、熱処理ウエルを加熱したときに熱の影響を受けないように、熱処理ウエルから遠ざけて配置されることが好ましい。
【0016】
また、カートリッジが測定装置に組み込まれたときに、熱処理ウエルは、測定装置の奥部側に位置する端部に配置されることが好ましい。具体的には、この態様においては、本発明カートリッジは近位端と遠位端を有し、測定装置に組み込まれたときに遠位端は近位端よりも測定装置の奥部側に位置するように構成され、かつ、熱処理ウエルはカートリッジの遠位端に配置される。それによって、本発明カートリッジを使用する者が、加熱された加熱ウエルに触れ難くすることができる。
【0017】
本発明カートリッジは、さらに、所定量の検体を所望の倍率に希釈する希釈ウエルを有していてもよい。測定は、検体もしくは被測定成分の種類、濃度、又は測定原理等の条件に応じて、例えば酵素免疫法(EIA法)、ラテックス免疫測定法(LIA法)、免疫比濁法(TIA法)、蛍光免疫法(FIA法)、酵素化学発光免疫法(CLEIA法)等の分析方法が選択される。また、前記条件によっては、検体を原液のまま測定する場合もあれば、測定前に検体を希釈してから測定する必要のある場合もある。さらに、条件によって検体の希釈倍率が異なる場合がある。このような場合であっても、所定量の検体を所望の倍率に希釈する希釈ウエルが設けられていれば、測定操作において分析項目にかかわらず所定量の検体を分注すればよく、分注量の確認に要する測定者の労力が軽減され、また、分注量の誤りにより測定に失敗する可能性が大幅に減少する。また、本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置においては、検体の分注量を分析項目により変える機構が不要となるので、機構を簡素化できる。なお、本発明において、希釈ウエルに希釈液を充填しない場合には、希釈が必要な分析項目と同様に希釈工程を行ったときに、原液のまま(すなわち希釈倍率が1)となることが明らかである。従って、本明細書において「希釈」とは、原液のままにすることも包含する意味で用いる。また、高倍率の検体希釈を行う場合には、カートリッジに2箇所以上の希釈ウエルを設けて2段階以上の希釈を行うことが好ましい。検体の希釈倍率および希釈ウエルに充填される希釈液は、検体、被測定成分、被測定成分と特異的に反応する物質などの種類によって適宜選択される。希釈液は検体の前処理に必要な試薬を含んでいてもよく、この場合は、希釈ウエルにおいて、希釈および前処理が同時に行われる。前処理には、酸、アルカリ、有機溶媒、タンパク変性剤、酵素、タンパク質分解酵素の阻害剤、及び、界面活性剤処理等が含まれる。尚、前処理液を含むウエルを、希釈ウエルとは別に設けてもよい。
【0018】
本発明カートリッジは、また、検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬を収納するための試薬収納ウエルを有していてもよい。試薬収納ウエルは反応ウエルをかねていてもよい。すなわち、反応に関与する試薬の一部を反応ウエルに収納することができる。試薬収納ウエルまたは反応ウエルに収納する試薬は一種でもよいし、収納した試薬が反応しない限り複数種でもよい。収納される試薬は液状(例えば溶液または懸濁液)であってもよいし、ウエルに注入される液に溶解または懸濁可能であれば固体状であってもよい。
【0019】
また、本発明カートリッジは検体を分注する分注ウエル(以下、これを「サンプルウエル」と称することがある)をさらに有することが好ましい。これにより、検体を分注した分注ウエルから所定量を画一的な工程により希釈ウエルに加えることができる。また、検体を採取した容器から検体をカートリッジに分注する際に、厳密な量の調整が不要となり、測定者の操作が容易になる。さらに、本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置においては、カートリッジに所定量を分注するために、カートリッジ外の親検体容器から直接定量して分注する機構などの付加的機構を設ける必要がないので、機構を簡素化できる。また、分注ウエルに、測定に必要な検体量を示す目盛りを付与しておくと、簡便、かつ確実に、必要な量の検体をカートリッジに分注することができる。尚、分注ウエルは、熱処理ウエルを兼ねていてもよい。
分注ウエルは、また、そのウエルの周囲に壁を設けることができる。これにより、分注ウエルに分注された検体が漏れ出て測定者の手に触れたり、他のウエルに流入したり、ウエルを封入しているアルミシールやそれを穿孔するチップ等に付着してコンタミネーションを生じる等の問題を回避することができる。設ける壁はウエルの周囲に一周するように設けてもよいし、例えば分注ウエルがカートリッジ端部の持ち手部分に最も近い側(前記近位端)にある場合には、該持ち手部分と分注ウエルの間、および、分注ウエルと隣接する他のウエルとの間にそれぞれ直線上の壁を設けることもできる。壁は、それ自体独立して設けることもできるし、ウエルの内壁から連続してそれが突出した形とすることもできるが、分注された検体が漏れ出る可能性を低くすることができるので、ウエルの内壁から連続してそれが突出した形とすることが好ましい。壁は、例えば、0.5mm〜5mm程度とすることができる。このような分注ウエルを有するカートリッジの例を、図2に示す。このカートリッジは、サンプルウエル(1)、標識抗体収納ウエル(2)、洗浄ウエル5(3)、洗浄ウエル4(4)、洗浄ウエル3(5)、標識抗体反応ウエル(6)、磁性粒子収納ウエル(7)、洗浄ウエル1(8)、洗浄ウエル2(9)、測光ウエル(10)、希釈液収納ウエル1(11)、希釈液収納ウエル2(12)、発光基質収納ウエル(13)、希釈ウエル1(14)、希釈ウエル2(15)、及び、熱処理ウエル(16)が、この順に直線上に配置されている。また、サンプルウエル(1)には前記壁が設けられている。
【0020】
本発明カートリッジは、また、反応生成物の量を測定するための測定ウエルを有していてもよい。例えば、光学的に測定するための測光ウエルを設けることができる。ここで、例えば、測定が暗条件下で行われる必要があるなど、特殊な測定条件が求められる場合には、測定ウエルを別のカートリッジに設けたり、または、分離可能な形態で設けておいてもよい。例えば、測定ウエルのみを光を遮断できるような材料により構成し、これをカートリッジに組み合わせて用いることにより、暗室等の設備が不要になる。
【0021】
本発明カートリッジの形状、大きさは特に限定されないが、測定者が取り扱い易いように、例えば、試薬収納ウエル、分注ウエル、希釈ウエル、反応ウエルおよび/または測定ウエル等が直線上に配置された舟型のものが好ましい。また、それぞれのウエルは複数であってもよい。またさらに、複数種の分析項目の測定には、被測定成分の測定に必要なウエル群が2ライン以上並設されていてもよい。本発明のカートリッジの材料も特に限定されないが、試薬等を封入して保存する場合には、これらと反応しない安定性を有するものを選択すればよい。また、高温で熱処理を行う場合には、熱耐性、熱伝導性に優れたものを選択すればよい。
【0022】
本発明カートリッジにおいては、被測定成分とこれと特異的に反応する物質との反応が、免疫学的反応であることが好ましい。すなわち、被測定成分とこれと特異的に反応する物質が抗体又は抗原であることが好ましい。
【0023】
免疫学的反応としては、検体と、該検体中の被測定成分と免疫学的に特異的に反応する第1の物質と、該反応により生成する第1の免疫複合体に特異的に反応する第2の物質とを、一度に反応させる方法(以下、これを「1ステップ法」と称することがある)と、二段階で反応させる方法(以下、これを「2ステップ法」と称することがある)とが知られている。
【0024】
本発明においては、好ましくは、2ステップ法が用いられる。具体的には、たとえば、検体中の被測定成分と免疫学的に特異的に反応する物質とを反応させて第1の免疫複合体を形成させ、第1の免疫複合体をこれと免疫学的に特異的に反応する標識体とを反応させて第2の免疫複合体を形成させる。この場合には、本発明カートリッジは、第1の免疫複合体の形成のための反応ウエルと、第2の免疫複合体の形成のための反応ウエルとを有することが好ましい。さらに好ましくは、各反応ウエルに対応したB/F分離のための洗浄ウエルを有することが好ましい。洗浄ウエルには予め洗浄液が充填されていてもよいし、他のカートリッジやボトル等から分注することにより充填してもよい。
【0025】
このような免疫学的反応としては、磁力により集積可能な磁性粒子に固定化された前記第1の物質を用いて、B/F分離を装置の分注部に備えられた液体の吸引・吐出ラインにおいて磁力を利用して行う方法が好ましく用いられる。具体的には、たとえば、カートリッジのウエルから液体を吸引・吐出するフローラインとして用いられるチップ、フレキシブルチューブ、ステンレスパイプ等に、外部から磁力体を接触させ、その内壁面において磁性粒子を集積させることによりB/F分離を行う方法(たとえば、特許第3115501号公報)等が用いられる。
【0026】
本発明において用いられる検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液は、他のカートリッジに予め充填し、これを本発明のカートリッジと併用して測定を行うこともできる。例えば、検体の希釈液、検体中の被測定成分と特異的反応性を有する物質および標識体、免疫複合体を洗浄するための洗浄液等を、予め他のカートリッジに充填しておき、このカートリッジから画一的操作により本発明のカートリッジ上の各ウエルに試薬および/または溶液を分注する等の方法により測定を行うことができる。このような方法によれば、装置の機構を簡素化することが可能になり、本発明のカートリッジの構造を簡素化して小さくすることもできる。また、用いる試薬および/または溶液の保存安定性の問題等を解消することも容易になる。もちろん、本発明のカートリッジおよび他のカートリッジの両方に、測定に必要な試薬および/または溶液を任意に充填し、併用することも可能である。
【0027】
また、検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液は、その全てが本発明カートリッジに充填されていてもよい。例えば、検体の希釈液、検体中の被測定成分と特異的反応性を有する物質および標識体、免疫複合体を洗浄するための洗浄液等の必要な試薬全てを充填しておくことが好ましい。このようにすることで、一つの被測定成分に対して一つのカートリッジですべて対応することができ、試薬の無駄がなくなる。また、給水および廃水の必要もなくなり、測定装置のさらなる簡素化や、測定所要時間の短縮にもつなげることができる。
【0028】
本発明の他の好ましい態様においては、液体状であって、ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液の深さは、希釈液または洗浄液の深さよりも浅く設定される。ここで、「深さ」とは、ウエル内底面から該溶液の液面までの距離である。本発明のカートリッジが組み込まれる装置にはチップ等が装着可能な分注部が備えられており、該チップによって、カートリッジのウエルに液体が注入され、又はウエルから液体が吸引される。その際、ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液の深さが深いと、前記溶液が該チップの外側に付着し、他のウエルに持ち込まれることによって、正確な測定ができないことがあることに本発明者は着目した。そこで、前記溶液の深さを、希釈液または洗浄液の深さよりも浅く設定することにより、たとえ持ち込みが生じたとしても、該チップが希釈液又は洗浄液を含むウエルに挿入されたときに、希釈液又は洗浄液によってチップに付着した溶液が除去できることに想到した。また、ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液の深さだけでなく、そのような溶液を含むウエルの深さも、それに合わせて浅くすることが好ましい。このような形状をとることにより、微量の溶液がウエル壁に付着するロス等を軽減し、更に精度の高い測定が可能になる。前記ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液としては、検体、標識化抗体、もしくは磁性粒子等を含む溶液が挙げられる。
【0029】
本発明カートリッジは、希釈液、標識体、洗浄液等の試薬および/または溶液等を充填しておく場合には、異物の混入および試薬等の蒸発・劣化を避けるためにその上部をアルミニウム箔、プラスチックフィルム等でシールして封入することが好ましい。特にアルミニウム箔のシールは自動測定装置の穿孔機構又はチップ等の先端で自動的に簡便に開封できるので好ましい。また、試薬および/または溶液等を他のカートリッジに充填して、これを併用して測定を行う場合には、該カートリッジも封入することが好ましい。
【0030】
本発明カートリッジの他の態様においては、検体に関する情報、分析項目に関する情報、試薬管理情報、及び測定に用いる検量線情報等の情報が、カートリッジ上に記録される。前記情報の記録は、例えば、カートリッジにバーコードを印刷、貼付等により付することによって行われる。また、磁気的記録方法や、情報が入力されたICチップ等を貼付してもよい。カートリッジにこのようなバーコード等を付することにより、例えばカートリッジのバーコードを認識し分析項目が自動的に選択される自動測定装置を用いれば、測定者はカートリッジを選ぶだけで1台の自動測定装置を用いて任意の分析項目を簡便に効率よく測定することができる。また、従来の通常の自動測定装置で行われているような分析項目の誤設定の大きな原因となっているワークシート操作を行う必要がなく、失敗無く、簡便に複数種の分析項目の測定が可能になる。またさらに、試薬の保存管理等も簡便である。さらに、操作者が検量線情報を自動測定装置に入力しなくても、検量線情報を自動的に装置に入力することが可能となる。前記バーコード等の情報の記録は、カートリッジを使用する際に破壊されるように構成することによって、カートリッジの使用又は未使用を判別することができる。例えば、ウエルを封入するシール上に情報を記録しておくと、使用時に自動測定装置の穿孔機構又はチップ等の先端によりシールが破られ、記録が破壊される。それによって、カートリッジが使用されたものであるか、未使用のものであるかを、自動的に判別することができる。
【0031】
本発明測定法においては、検体が複数種の被測定成分を含む場合には、複数のカートリッジ、または、ウエル群が2ライン以上並設されてなるカートリッジを用いて複数種の異なる被測定成分を同時に測定することが好ましい。このような場合には、複数の分析項目の測定を並行して処理できる自動計測装置であって、本発明カートリッジを複数組み込むことのできる自動測定装置、または、複数の分析項目に対応したウエル群を有する本発明カートリッジ(2ライン以上並設したもの)を組み込むことのできる自動測定装置を用いることが好ましい。
【0032】
本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置における、一つのウエルから所定量の液体を吸引し別のウエルに吐出する手段、ウエルの内容物を攪拌する手段、B/F分離を行う手段、反応生成物や標識体の量を測定する手段、反応生成物や標識体の量の測定結果から被測定成分の量を算出する手段、カートリッジの温度を調節する手段、バーコードを認識する手段、複数のカートリッジの同時測定を行う手段などは、公知の手段を使用することができる。
【0033】
以下、好ましい態様の一例について、免疫測定法、さらに詳しくは、酵素化学発光法(CLEIA)を用いて測定を行う場合を例に挙げて説明する。
好ましい態様のカートリッジは、検体中に存在する被測定成分を自動的に定量する自動測定装置に組み込んで用いる自動測定用カートリッジであって、被測定成分とこれと免疫学的に特異的に反応する物質との反応を行う反応ウエルと、反応に用いる試薬を充填するための複数の試薬収納ウエル、検体を分注する分注ウエル、検体の希釈を行う希釈ウエル、検体を加熱処理するための熱処理ウエル、B/F分離を行うための洗浄ウエルおよび/または測光ウエルを有する。前記のとおり、試薬収納ウエルは反応ウエルをかねていてもよい。希釈ウエルには所定量の検体を所望の倍率に希釈する量の希釈液が充填してあり、複数の試薬収納ウエルには個別に、免疫学的に特異的な反応を行うための固相担体、標識された抗原または抗体、標識体量の測定を行うための試薬等が充填され、洗浄ウエルには、免疫複合体を洗浄するための洗浄液を充填して用いることが好ましい。また、カートリッジの試薬収納ウエルには、例えば、抗原または抗体の結合した固相担体(感作固相)を入れ、反応ウエルをかねることができる。固相担体としては、従来から免疫測定で用いられている、ポリスチレンビーズ、磁性粒子等を挙げることができる。さらには、固相担体をウエルに加えず、ウエル内壁に抗体または抗原を固相化して用いることもできる。
【0034】
本態様で用いられる免疫測定法としては感度の点で有利な酵素化学発光法(CLEIA)が好ましく、また固相担体としては、酵素化学発光法(CLEIA)で必須なB/F分離が磁石によって簡便に行うことができる磁性粒子が好ましい。このB/F分離は、カートリッジ外部より永久磁石、電磁石等で磁場をあたえることによって行うことができ、また、特開平11−262678号公報にあるように分注系のピペットチップ等の吸引・吐出系側に配列された磁石によっても行うことができる。
【0035】
また他の試薬収納ウエルには標識された抗原または抗体を加えて反応ウエルをかねることができる。標識体としては、例えば、酵素、放射性同位元素、発色物質、蛍光物質、発光物質、各種着色粒子を挙げることができるが、酵素化学発光法(CLEIA)においては酵素が好ましく用いられる。このような標識酵素の例としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコオキシダーゼ等が挙げられる。標識酵素の基質としては、各酵素に対応したものを用いればよく、例えば、アルカリホスファターゼに対してはアダマンチルメトキシフェニルホスホリルジオキシセタン(AMPPD)を用い、ペルオキシダーゼに対してはルミノール/過酸化物を用い、ガラクトシダーゼに対してはアダマンチルメトキシフェニルβ−D−ガラクトシルジオキシセタン(AMPGD)を用いることができる。
【0036】
希釈ウエルには分析項目毎に所定の分量の希釈液を予め充填して用いるのが好ましい。例えば、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体とHBs抗原(HBsAg)の異なる分析2項目を測定する場合は、検体量、固相担体の試薬液量、標識された抗原または抗体の試薬液量、洗浄液量および標識体の測定条件等は2項目とも同一に設定し、希釈ウエルに充填された希釈液量が2項目で異なっているカートリッジを、一連の免疫反応工程を行う機構を2個以上並設した自動測定装置において用いれば、同じ分析工程で2項目とも同時に処理することができる。
【0037】
高倍率の検体希釈を行う場合には、カートリッジに2箇所以上の希釈ウエルを設けて2段階以上の希釈を行うことが好ましい。このようなカートリッジの例を図1および図2に示す。
【0038】
また、前記のとおり、本発明のカートリッジと、測定に必要な試薬および/または溶液が充填された他のカートリッジを併用して測定を行うこともできる。例えば、分注ウエル、希釈ウエル、反応ウエル、洗浄ウエルおよび測光ウエルを有する本発明のカートリッジには、いずれの試薬および/または溶液も充填せずに用いる。これに対し、希釈液、固相担体、標識された抗原または抗体、標識体量の測定を行うための試薬等は他のカートリッジに充填し、該カートリッジから本発明のカートリッジへ分注操作を行うことにより同様に測定を行うことができる。
【0039】
希釈液には、酸、アルカリ、有機溶媒、タンパク変性剤、界面活性剤等を添加することにより、検体希釈工程で検体の前処理も行うこともできる。例えば、検体として血液(全血)を用いる場合には、血液には夾雑物が多量に含まれることなどから、任意の界面活性剤等を添加することにより前処理を行うことが好ましい。このようにして検体の希釈と前処理を同時に行うことによって、検体として血液等を用いる場合でも、簡便に精度の高い測定を行うことが可能になり、例えば、緊急検査や医師・看護婦が行うポイントオブケアーテスティング(POCT)等にも好適に用いられることができる。
【0040】
免疫複合体から未反応な検体や標識体を洗浄する(B/F分離)ための洗浄液は、従来の自動測定装置に見られるように自動測定装置内の一部の装置から供給すると、洗浄液調製や測定中における洗浄液補充や廃液処理などの手間がかかる。また、従来の自動測定装置で用いられている洗浄液は分析項目に関わらず洗浄液組成・液量が共通化されているので、分析項目毎に最適な洗浄液組成を採用することができない。よって以上の点から洗浄液もカートリッジに収納する方が好ましい。ただし、組成・液量が同一である場合などは、前記のように自動測定装置の一部の装置から画一的に供給してもよい。
【0041】
標識体の測定は、例えば、酵素化学発光法では、免疫複合体と標識酵素の基質を混合後、測光ウエルから直接、光電子倍増管等により行うことができる。例えば、光を遮断し得る材料により構成された測定ウエルをカートリッジに組み合わせて用いる場合には、該ウエルの上部に直接光電子増倍管の端子を接触させて測定を行うことにより、暗室等の設備がなくても、簡便かつ精度の良い測定を行うことができる。また、酵素免疫法の場合は、酵素基質液と混合した後、測光ウエルの底部または側部から測定波長の測定光を照射し、測光ウエルを通過した透過光を測定することにより行うことができる。
【0042】
本発明の自動測定装置は、少なくとも、本発明カートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の各ウエルに試薬および/または検体を分注する分注部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部、ならびに、カートリッジの少なくとも熱処理ウエルと反応ウエルをそれぞれ異なる所定の温度に調節する温度調節部を備える。
【0043】
カートリッジ収容部は、本発明のカートリッジを収容できるような構造とされる他は、通常のカートリッジ収容部と同様でよい。分注部は、試薬および/または検体の種類や性状に応じて、液体吸引・吐出機構等の通常の機構により構成される。ここで分注とは、カートリッジ上の一つのウエルから他のウエルに試薬および/または検体を移すこと、ならびに、カートリッジのウエルにカートリッジ外から試薬および/または検体を移すことの両方を包含する。測定部は、反応生成物の種類や性状に応じて、測光機構等の通常の機構により構成される。ウエル群を2ライン以上並設した本発明カートリッジ、または、複数の本発明カートリッジを用いて測定を行う場合には、一連の免疫反応を行う機構を複数個並設した装置で、検体の分注、検体の希釈、試薬の分注、B/F分離および測光等の工程を同時に並行駆動制御することができる装置であることが好ましい。このようにして、免疫測定法の場合においても、単一様式の分析工程のみを行う装置を用いて、分析項目が異なっても測定所要時間が大きく増加すること無く複数項目を同時に測定することができる。
【0044】
分注部は、試薬および/または検体と接触する部分(チップ等)が交換可能なものであることが好ましい。この部分を測定毎に交換することにより、次の測定に用いるカートリッジの汚染を防止することが容易になる。また、前述のとおり、前記チップ等の内部で磁力を利用したB/F分離が行えるものであることがさらに好ましい。
【0045】
温度調節部は、少なくとも熱処理ウエルと反応ウエルをそれぞれ異なる所定の温度に調節する。具体的には、例えば、温度調節部は、熱処理ウエルを50〜100℃、かつ、反応ウエルを25〜40℃に調節する。好ましい態様においては、温度調節部は、別々に制御される2つのヒートブロックからなる。
【0046】
また、前記のとおり、本発明のカートリッジにバーコード等を付し、該バーコードを認識する機構を備えた装置を用いて測定を行うことが好ましい。バーコードを認識して分析項目を自動的に選択することのできる装置を用いることによって、例えば、加熱処理の要否、反応温度や測光条件の個別設定が不要になる、測定結果の解析が容易に行える、検量線情報の人為的入力が不要となる等、自動測定をさらに簡便に効率よく行うことができる。すなわち、測定者は目的の分析項目に対応するカートリッジを選択するだけで、全ての測定工程を自動で行うことができ、人為的ミスを減らし、確実に測定を行うことができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を単に例示するものに過ぎず、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。本発明の精神から離れることなく、いかなる変更、改良または改変を加えることができることは当業者には自明である。
【0048】
<実施例1>2段階反応用カートリッジ
図1に、本発明カートリッジの一例を示す。このカートリッジは、サンプルウエル(1)、標識抗体収納ウエル(2)、洗浄ウエル5(3)、洗浄ウエル4(4)、洗浄ウエル3(5)、標識抗体反応ウエル(6)、磁性粒子収納ウエル(7)、洗浄ウエル1(8)、洗浄ウエル2(9)、測光ウエル(10)、希釈液収納ウエル1(11)、希釈液収納ウエル2(12)、発光基質収納ウエル(13)、希釈ウエル1(14)、希釈ウエル2(15)、及び、熱処理ウエル(16)が、この順に直線上に配置されている。このカートリッジは、上部がアルミニウム箔でシールされ、その上に分析項目がバーコードにより記録されている。
【0049】
6連の吸引・吐出機構と磁性粒子分離機構を備えた自動測定装置を用いて、前記カートリッジを用いて測定する場合の動作を示す(図3)。この例では、検体と、被測定成分と特異的に反応する抗体が結合した磁性粒子を反応させた後、反応物と標識抗体を反応させる(2ステップ法)。また、検体を加熱処理する工程を含む。図3において、矢印は溶液の移動を示し、矢印上の数字は溶液の移動の順序を示す。
【0050】
1.検体をサンプルウエル(1)に分注する。
2.検体を分注した試薬カートリッジを自動測定装置にセットする。試薬カートリッジは6個まで同時にセットすることができ、それらはそれぞれ異なる分析項目を測定するためのものでもよく、また、並べ方は任意で構わない。
3.自動測定装置をスタートさせる。
4.自動測定装置は試薬カートリッジに添付されたバーコードを読み、どの分析項目が選択されたかを認識する。
5.希釈液収納ウエル2(12)から希釈液を吸引し、希釈ウエル1(14)に全量吐出する。さらに希釈液収納ウエル1(11)から希釈液を吸引し、希釈ウエル2(15)に全量吐出する。
6.希釈液収納ウエル2(12)から希釈液を吸引し、続いてサンプルウエル(1)から検体を吸引する。希釈ウエル2(15)に全量吐出し混合することによって第一段目希釈工程が行われる。
7.希釈ウエル2(15)から一段希釈された検体を吸引し、希釈ウエル1(14)に全量吐出し混合することによって第二段目希釈工程が行われる。
8.希釈ウエル1(14)から二段希釈された検体を吸引して熱処理ウエル(16)に全吐出し、所望の温度で一定時間加熱処理を行う。
9.熱処理ウエル(16)から検体を吸引して、磁性粒子収納ウエル(7)に吐出し、磁性粒子と混合して、一定時間反応させる。
10.反応後、磁性粒子収納ウエル(7)から検体を吸引し、吸引したチップ内で永久磁石によって磁性粒子を分離し(磁性粒子をチップ内壁に吸着保持し、溶液は吐出される)、洗浄ウエル1(8)に移動する。磁性粒子を洗浄後、再び磁性粒子を永久磁石で分離し、洗浄ウエル2(9)に移動する。同様にもう一度洗浄を行い、永久磁石で磁性粒子を分離する。
11.磁性粒子をチップ内壁に吸着保持した状態で標識抗体収納ウエル(2)から標識抗体溶液を吸引し、標識抗体反応ウエル(6)に磁性粒子と共に吐出し、混合後一定時間反応させる。
12.反応後、標識抗体反応ウエル(6)から検体を吸引し、吸引したチップ内で永久磁石によって磁性粒子を分離し、洗浄ウエル3(5)に移動する。洗浄後、さらに磁性粒子を永久磁石で分離し、洗浄ウエル4(4)に移動する。さらに洗浄後、再び永久磁石で磁性粒子を分離して、洗浄ウエル5(3)に移動する。さらにもう一度洗浄を行い、永久磁石で磁性粒子を分離する。
13.磁性粒子をチップ内壁に吸着保持した状態で発光基質収納ウエル(13)から発光基質を吸引し、測光ウエル(10)に磁性粒子と共に吐出し、発光基質溶液と混合させる。一定時間反応させた後、測光ウエル(10)上部から光電子増倍管(PMT)で発光量を測定する。
【0051】
<実施例2>
実施例1に記載のカートリッジを用いて測定する他の例を示す(図4)。この例では、検体、磁性粒子及び標識抗体を同時に反応させる(1ステップ法)以外は、実施例1と同様の装置を用いて測定が行われる。図4において、矢印は溶液の移動を示し、矢印上の数字は溶液の移動の順序を示す。
【0052】
1.検体をサンプルウエル(1)に分注する。
2.検体を分注した試薬カートリッジを自動測定装置にセットする。試薬カートリッジは6個まで同時にセットすることができ、それらはそれぞれ異なる分析項目を測定するためのものでもよく、また、並べ方は任意で構わない。
3.自動測定装置をスタートさせる。
4.自動測定装置は試薬カートリッジに添付されたバーコードを読み、どの分析項目が選択されたかを認識する。
5.希釈液ウエル2(12)から希釈液を吸引し、希釈ウエル1(14)に全量吐出する。さらに希釈液収納ウエル1(11)から希釈液を吸引し、希釈ウエル2(15)に全量吐出する。
6.希釈液収納ウエル2(12)から希釈液を吸引し、続いてサンプルウエル(1)から検体を吸引する。希釈ウエル2(15)に全量吐出し混合することによって第一段目希釈工程が行われる。
7.希釈ウエル2(15)から検体を吸引し、希釈ウエル1(14)に全量吐出し混合することによって第二段目希釈工程が行われる。
8.希釈ウエル1(14)から検体を吸引して熱処理ウエル(16)に全吐出し、所望の温度で一定時間加熱処理を行う。
9.熱処理ウエル(16)から検体を吸引し、続いて標識抗体収納ウエル(2)から標識抗体溶液を吸引し、磁性粒子収納ウエル(7)に吐出して、磁性粒子と混合し、一定時間反応させる。
10.反応後、磁性粒子収納ウエル(7)から検体を吸引し、吸引したチップ内で永久磁石によって磁性粒子を分離し(磁性粒子をチップ内壁に吸着保持し、溶液は吐出される)、洗浄ウエル3(5)に移動する。磁性粒子を洗浄後、再び磁性粒子を永久磁石で分離し、洗浄ウエル4(4)に移動する。同様に洗浄を行い、永久磁石で磁性粒子を分離して、洗浄ウエル5(3)に移動する。さらにもう一度洗浄を行い、永久磁石で磁性粒子を分離する。
11.磁性粒子をチップ内壁に吸着保持した状態で発光基質収納ウエル(13)から発光基質を吸引し、測光ウエル(10)に磁性粒子と共に吐出し、発光基質溶液と混合させる。一定時間反応させた後、測光ウエル(10)上部から光電子増倍管(PMT)で発光量を測定する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、自動測定装置及びそれに用いる自動測定用カートリッジを用いて、測定を、試料の加熱処理を含めて自動的に行うことができる。また、本発明のカートリッジの好ましい態様においては、反応に影響を与えずに試料を加熱処理することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中に含まれる被測定成分を測定する際に使用されるカートリッジであって、当該カートリッジは、少なくとも検体の加熱処理を行う熱処理ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有してなることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
被測定成分とこれと特異的に反応する物質との反応が、免疫学的反応である請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
さらに、測定に必要な試薬が収納されている試薬収納ウエル、検体を分注する分注ウエル、検体の希釈を行う希釈ウエル、反応生成物の洗浄を行うための洗浄ウエル、および/または反応生成物の測定を行うための測定ウエルを有する請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
各々のウエルは直線上に配列され、かつ、前記熱処理ウエルはカートリッジのいずれかの端部に配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
熱処理ウエルの隣に、加熱により影響を受ける溶液または物質を含まないウエルが配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
熱処理ウエルは、その隣に位置するウエルから隔てられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
液体状であって、ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液の深さが、希釈液または洗浄液の深さよりも浅いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記ウエル内の収容量によって測定値に影響を与える溶液が、検体、標識化抗体、及び磁性粒子からなる群から選ばれる物質を含む溶液である請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項9】
検体に関する情報、分析項目に関する情報、試薬管理情報、及び測定に用いる検量線情報からなる群から選ばれる情報がカートリッジ上に記録されたことを特徴する請求項1〜8のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記情報がバーコードにより記録された請求項9に記載のカートリッジ。
【請求項11】
カートリッジを使用する際に前記情報の記録が破壊されるように構成されたことにより、カートリッジの使用又は未使用が判別され得ることを特徴とする請求項9又は10に記載のカートリッジ。
【請求項12】
分注ウエルに測定に必要な検体量を示す目盛りが付与されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記カートリッジは、カートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の各ウエルに試薬および/または検体を分注する分注部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部、ならびに、カートリッジの少なくとも熱処理ウエルと反応ウエルを所定の温度に調節することが可能な温度調節部を有する測定装置に組み込んで用いられるものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記熱処理ウエルと反応ウエルは、前記測定装置に組み込まれたときに、それぞれ異なる所望の温度に調節されることを特徴とする請求項13に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記熱処理ウエルは、カートリッジが測定装置に組み込まれたときに測定装置の奥部側に位置する端部に配置されたことを特徴とする請求項13又は14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
少なくとも、請求項1〜15のいずれか一項に記載のカートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の各ウエルに試薬および/または検体を分注する分注部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部、ならびに、カートリッジの少なくとも熱処理ウエルと反応ウエルをそれぞれ異なる所望の温度に調節することが可能な温度調節部を有する測定装置。
【請求項17】
前記温度調節部は、熱処理ウエルを50〜100℃、かつ、反応ウエルを25〜40℃に調節することができる請求項16に記載の測定装置。
【請求項18】
前記温度調節部は、別々に制御される2つのヒートブロックからなる請求項17に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/008255
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511879(P2005−511879)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010308
【国際出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000138277)株式会社三菱化学ヤトロン (30)
【Fターム(参考)】