説明

自動測定用カートリッジ

【課題】自動測定装置に用いるための自動測定用カートリッジであって、できるだけ簡素化された機構のみを搭載した装置に於いて、検体中の希釈倍率が異なる複数種の分析項目の測定に用いることができ、しかもそれらの分析項目を同時に測定しても測定所要時間が大きく増加することの無いカートリッジを提供する。
【解決手段】画一的操作により前記希釈ウエルに所定量の検体を分注したときに、被測定成分により選択される所望の倍率に所定量の検体を希釈する量の希釈液が充填されている希釈ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有するカートリッジ。このカートリッジに、被測定成分を含有する検体を分注し、カートリッジ上で所望の倍率に検体を希釈し、希釈された検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させ、反応生成物の量を測定することにより、検体中に含まれる希釈倍率が異なる複数種の被測定成分を簡便に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中に含まれる成分を自動的に定量する自動測定装置に組み込んで用いる自動測定用カートリッジ、および、この自動測定用カートリッジを用いる自動測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに、ヒトの血液を自動分析する分析装置が種々開発されている。このような分析装置では、分析項目の分析濃度域が項目によって大きく異なっており(例えばmg/ml〜pg/ml)、また、分析項目毎に目的物質の濃度の関係で酵素免疫法(EIA法)、ラテックス免疫測定法(LIA法)、免疫比濁法(TIA法)、蛍光免疫法(FIA法)、酵素化学発光免疫法(CLEIA法)等の異なった分析方法(測定原理)が選択されている。またさらに、検体を原液のまま測定する分析項目もあれば、測定前に検体を希釈してから測定する必要のある分析項目も存在する。最近では一台の装置で、複数の分析項目かつ広範囲の濃度域をカバーできる装置が開発されるようになってきた。
【0003】
しかし、先述の一台で多項目処理を行う装置においては、検体分注装置、試薬分注装置、反応ウエル等は共通化されているが、測定原理に応じたモジュールが数種、一台の装置内に集積されたものであり、機構が非常に複雑で大がかりな装置になる。機構が複雑になると特に稼働部が多くなり、必然的に故障等のトラブルが多くなって、日常の装置の保守点検・精度管理が大きな負担となる。また、測定原理が異なることにより、当然ながら、検体量、試薬の種類、試薬量、撹拌条件、反応生成物と余剰試薬等との分離(B/F分離)条件、反応時間、測定方法等を制御する分析工程が分析項目毎に異なってくる。複数の異なる分析工程を一台の装置で同時に行わせることは、本質的に不可能であり、現状では、異なる分析工程が互いに干渉しないように個々の分析工程の進行を厳しく制御している。従って、分析項目が異なる検体を同時に測定する場合には必ずタイミング待ちの状態(待機状態)が生じ、処理能力低下が起こり、これが、測定所要時間が大きく増加する原因となっている。
【0004】
また、試薬が1分析項目ごとに2〜6種類もあり、測定前の準備においても測定者に大きな負担を与えている。
【0005】
以上をまとめると、従来の装置では、機構の複雑性からくるメンテナンスの負担の増加、装置のコストアップ、測定所要時間の増加と測定に必要な試薬を準備する手間が大きく、特に緊急検査や医師・看護婦が行うポイントオブケアーテスティング(POCT)等においては重大な問題となる。
【0006】
このような問題に対し、測定に必要な試薬を全て溶液状にして充填した一検体一カートリッジ方式の自動測定用カートリッジが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この中でも、分析項目によって必要となる希釈倍率の相違に対応する方法は提案されていない。
【特許文献1】特開平11−316226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、自動測定装置に用いるための自動測定用カートリッジであって、できるだけ簡素化された機構のみを搭載した装置に於いて、検体中の希釈倍率が異なる複数種の分析項目の測定に用いることができ、しかもそれらの分析項目を同時に測定して
も測定所要時間が大きく増加することの無いカートリッジ、および、このカートリッジを用いた測定法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、カートリッジに検体を希釈するための希釈ウエルを設け、この希釈ウエルにおいて所定量の検体を所望の倍率に希釈することにより、自動測定装置の機構を簡素化でき、また、複数種の分析項目の同時測定においても測定所要時間が大きく増大しないことを見い出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、検体中に含まれる被測定成分を測定する際に使用されるカートリッジであって、当該カートリッジは、少なくとも所定量の検体を所望の倍率に希釈する希釈ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有してなることを特徴とするカートリッジが提供される。
【0010】
好ましくは、希釈ウエルおよび反応ウエルを含むウエル群が2ライン以上並設されてなる。
【0011】
好ましくは、さらに、測定に必要な試薬が収納されている試薬収納ウエル、検体を分注する分注ウエル、反応生成物の洗浄を行うための洗浄ウエル、および/または反応生成物の測定を行うための測定ウエルを有する。
【0012】
好ましくは、検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液が充填された他のカートリッジを併用して測定を行う。
【0013】
好ましくは、検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液の全てが封入されている。
【0014】
好ましくは、被測定成分とこれと特異的に反応する物質との反応が、免疫学的反応である。
【0015】
好ましくは、免疫学的反応が、検体中の被測定成分とこれと免疫学的に特異的に反応する物質とを反応させて第1の免疫複合体を形成させ、第1の免疫複合体をこれと免疫学的に特異的に反応する標識体とを反応させて第2の免疫複合体を形成させる反応である。
【0016】
本発明の別の側面によれば、本発明のカートリッジに、被測定成分を含有する検体を分注し、当該カートリッジ上で所望の倍率に検体を希釈し、希釈された検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させ、反応生成物の量を測定することを特徴とする、検体中に含まれる被測定成分の測定法が提供される。
【0017】
好ましくは、希釈ウエルおよび反応ウエルを含むウエル群が2ライン以上並設されてなるカートリッジ、または、複数のカートリッジを用い、複数種の異なる被測定成分を同時に測定する。
【0018】
好ましくは、本発明のカートリッジと、検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液が充填された他のカートリッジを併用して測定を行う。
【0019】
好ましくは、被測定成分とこれと特異的に反応する物質との反応が、免疫学的反応である。
【0020】
好ましくは、免疫学的反応が、検体中の被測定成分とこれと免疫学的に特異的に反応す
る物質とを反応させて第1の免疫複合体を形成させ、第1の免疫複合体をこれと免疫学的に特異的に反応する標識体とを反応させて第2の免疫複合体を形成させる反応であって、反応により形成された第2の免疫複合体中の標識体量を測定する。
【0021】
本発明のさらに別の側面によれば、少なくとも、本発明のカートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジに試薬および/または検体を分注する分注部、ならびに、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部を有してなる測定装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本明細書で使用する用語は、特に断らない限り以下の意味を有する。
本発明カートリッジは、検体中に含まれる被測定成分を測定する際に使用され、通常には、自動測定装置に組み込んで用いられる。
【0023】
上記測定は、通常には、本発明測定法、すなわち、被測定成分を含有する検体を分注する工程、検体を希釈する工程、希釈された検体中に含まれる被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる工程、および、反応生成物の量を測定する工程を含む、検体中の被測定成分の測定法により行われる。
【0024】
被測定成分としては、特に限定されず、それと特異的に反応する物質が存在するものであればよい。例えば、被測定成分とこれと特異的に反応する物質との組み合わせとしては、抗原と抗体、抗体と抗原、酵素と基質、糖鎖とレクチン等が挙げられる。このように本発明において「特異的に反応する」とは、生化学的に特異的に結合することを意味し、被測定成分および特異的に反応する物質は、基質のようにその結合の前後で物質の化学的性質が変化するものであってもよい。
【0025】
検体は、被測定成分を含むか又は含む可能性のあるものであればよく、例えば、血液、血清、血漿、尿などが挙げられる。
【0026】
被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる工程、および、反応生成物の量を測定する工程の条件等は、被測定成分とそれと特異的に反応する物質の組み合わせに応じて適宜選択される。例えば、酵素と基質との反応および反応生成物の量の測定は、酵素を基質と混合して酵素を基質に作用させ、反応生成物(基質の分解物)の量を測定することによって行うことができる。また、抗体と抗原との反応および反応生成物の量の測定は、抗体または抗原を、それに対する抗体または抗原の結合した固相担体および標識体と混合して反応生成物(免疫複合体)を形成させ、洗浄によって免疫複合体から未反応の抗体または抗原および標識体を除去し(B/F分離)、免疫複合体の形成により固相に結合した標識体の量を測定することによって行うことができる。このように本発明において、「反応生成物の量を測定する」とは、反応生成物自体の量を直接測定するだけでなく、反応生成物の量に定量的に関連した物質の量を測定することも包含する。このようにして測定された反応生成物の量から検体中の被測定成分の量を算出することができる。
【0027】
本発明カートリッジは、少なくとも所定量の検体を所望の倍率に希釈する希釈ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有してなることを特徴とする。
【0028】
前記のように、被測定成分(分析項目)により検体の希釈倍率は異なるが、本発明カートリッジを用いれば、所定量の検体を所望の倍率に希釈する希釈ウエルが設けられているので、測定操作において分析項目にかかわらず所定量の検体を分注すればよく、分注量の確認に要する測定者の労力が軽減され、また、分注量の誤りにより測定に失敗する可能性
が大幅に減少する。また、本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置においては、検体の分注量を分析項目により変える機構が不要となるので、機構を簡素化できる。なお、本発明において、希釈ウエルに希釈液を充填しない場合には、希釈が必要な分析項目と同様に希釈工程を行ったときに、原液のまま(すなわち希釈倍率が1)となることが明らかである。従って、本明細書において「希釈」とは、原液のままにすることも包含する意味で用いる。また、高倍率の検体希釈を行う場合には、カートリッジに2箇所以上の希釈ウエルを設けて2段階以上の希釈を行うことが好ましい。
【0029】
このように、本発明カートリッジは、画一的な操作で異なる分析条件に対応することができるカートリッジであって、さらには、被測定成分の測定に必要なウエル群が2ライン以上並設されてなるカートリッジ、または、複数のカートリッジを用いれば、複数種の異なる被測定成分の測定を同時に行うことができる。従って、本発明カートリッジを用いれば、複数種の異なる被測定成分の測定においても測定所要時間が大きく増大することはなく、また、用いる自動測定装置の機構を変更する必要も生じない。
【0030】
検体の希釈倍率および希釈ウエルに充填される希釈液は、検体、被測定成分、被測定成分と特異的に反応する物質などの種類によって適宜選択される。希釈液は検体の前処理に必要な試薬を含んでいてもよく、この場合は、希釈ウエルにおいて、希釈および前処理が同時に行われる。
【0031】
本発明カートリッジは、検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬を収納するための試薬収納ウエルを有していてもよい。試薬収納ウエルは反応ウエルをかねていてもよい。すなわち、反応に関与する試薬の一部を反応ウエルに収納することができる。試薬収納ウエルまたは反応ウエルに収納する試薬は一種でもよいし、収納した試薬が反応しない限り複数種でもよい。収納される試薬は液状(例えば溶液または懸濁液)であってもよいし、ウエルに注入される液に溶解または懸濁可能であれば固体状であってもよい。
【0032】
また、本発明カートリッジは検体を分注する分注ウエルをさらに有することが好ましい。これにより、検体を分注した分注ウエルから所定量を画一的な工程により希釈ウエルに加えることができる。また、検体を採取した容器から検体をカートリッジに分注する際に、厳密な量の調整が不要となり、測定者の操作が容易になる。さらに、本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置においては、カートリッジに所定量を分注するために、カートリッジ外の親検体容器から直接定量して分注する機構などの付加的機構を設ける必要がないので、機構を簡素化できる。
【0033】
本発明カートリッジは、また、反応生成物の量を測定するための測定ウエルを有していてもよい。例えば、光学的に測定するための測光ウエルを設けることができる。ここで、例えば、測定が暗条件下で行われる必要があるなど、特殊な測定条件が求められる場合には、測定ウエルを別のカートリッジに設けたり、または、分離可能な形態で設けておいてもよい。
【0034】
本発明カートリッジの形状、大きさは特に限定されないが、測定者が取り扱い易いように、例えば、試薬収納ウエル、分注ウエル、希釈ウエル、反応ウエルおよび/または測定ウエル等が直線上に配置された舟型のものが好ましい。また、それぞれのウエルは複数であってもよい。またさらに、複数種の分析項目の測定には、前記したように必要なウエル群が2ライン以上並設されてなる本発明のカートリッジを用いてもよい。本発明のカートリッジの材料も特に限定されないが、光学的測定がカートリッジの壁を通して可能になるので、透明な材料が好ましい。
【0035】
本発明カートリッジにおいては、被測定成分とこれと特異的に反応する物質との反応が
、免疫学的反応であることが好ましい。すなわち、被測定成分とこれと特異的に反応する物質が抗体又は抗原であることが好ましい。
【0036】
免疫学的反応は、好ましくは、検体中の被測定成分と免疫学的に特異的に反応する物質とを反応させて第1の免疫複合体を形成させ、第1の免疫複合体をこれと免疫学的に特異的に反応する標識体とを反応させて第2の免疫複合体を形成させる反応である。この場合には、本発明カートリッジは、第1の免疫複合体の形成のための反応ウエルと、第2の免疫複合体の形成のための反応ウエルとを有することが好ましい。さらに好ましくは、各反応ウエルに対応したB/F分離のための洗浄ウエルを有することが好ましい。洗浄ウエルには予め洗浄液が充填されていてもよいし、他のカートリッジやボトル等から分注することにより充填してもよい。
【0037】
本発明において用いられる検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液は、他のカートリッジに予め充填し、これを本発明のカートリッジと併用して測定を行うこともできる。例えば、検体の希釈液、検体中の被測定成分と特異的反応性を有する物質および標識体、免疫複合体を洗浄するための洗浄液等を、予め他のカートリッジに充填しておき、このカートリッジから画一的操作により本発明のカートリッジに試薬および/または溶液を分注する等の方法により測定を行うことができる。このような方法によれば、装置の機構を簡素化することが可能になり、本発明のカートリッジの構造を簡素化して小さくすることもできる。また、用いる試薬および/または溶液の保存安定性の問題等を解消することも容易になる。もちろん、本発明のカートリッジおよび他のカートリッジの両方に、測定に必要な試薬および/または溶液を任意に充填し、併用することも可能である。
【0038】
また、検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液は、その全てが本発明カートリッジに充填されていてもよい。例えば、検体の希釈液、検体中の被測定成分と特異的反応性を有する物質および標識体、免疫複合体を洗浄するための洗浄液等の必要な試薬全てを充填しておくことが好ましい。このようにすることで、一つの被測定成分に対して一つのカートリッジですべて対応することができ、試薬の無駄がなくなる。また、給水および廃水の必要もなくなり、測定装置のさらなる簡素化や、測定所要時間の短縮にもつなげることができる。
【0039】
本発明カートリッジは、希釈液、標識体、洗浄液等の試薬および/または溶液等を充填しておく場合には、異物の混入および試薬等の蒸発・劣化を避けるためにその上部をアルミニウム箔、プラスチックフィルム等でシールして封入することが好ましい。特にアルミニウム箔のシールは自動測定装置の穿孔機構で自動的に簡便に開封できるので好ましい。また、試薬および/または溶液等を他のカートリッジに充填して、これを併用して測定を行う場合には、該カートリッジも封入することが好ましい。
【0040】
本発明カートリッジには、検体に関する情報、分析項目に関する情報、および、試薬管理情報等を記録したバーコードを印刷、貼付等により付してもよい。カートリッジにこのようなバーコードを付することにより、カートリッジのバーコードを認識し分析項目が自動的に選択される自動測定装置を用いれば、測定者はカートリッジを選ぶだけで1台の自動測定装置を用いて任意の分析項目を簡便に効率よく測定することができる。また、従来の通常の自動測定装置で行われているような分析項目の誤設定の大きな原因となっているワークシート操作を行う必要がなく、失敗無く、簡便に複数種の分析項目の測定が可能になる。またさらに、試薬の保存管理等も簡便である。
【0041】
本発明測定法においては、検体が複数種の被測定成分を含む場合には、複数のカートリッジ、または、ウエル群が2ライン以上並設されてなるカートリッジを用いて複数種の異
なる被測定成分を同時に測定することが好ましい。このような場合には、複数の分析項目の測定を並行して処理できる自動計測装置であって、本発明カートリッジを複数組み込むことのできる自動測定装置、または、複数の分析項目に対応したウエル群を有する本発明カートリッジ(2ライン以上並設したもの)を組み込むことのできる自動測定装置を用いることが好ましい。
【0042】
本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置における、一つのウエルから所定量の液体を吸引し別のウエルに吐出する手段、ウエルの内容物を攪拌する手段、B/F分離を行う手段、反応生成物や標識体の量を測定する手段、反応生成物や標識体の量の測定結果から被測定成分の量を算出する手段、カートリッジの温度を調節する手段、バーコードを認識する手段、複数のカートリッジの同時測定を行う手段などは、公知の手段を使用することができる。
【0043】
以下、好ましい態様の一例について、免疫測定法、さらに詳しくは、酵素化学発光法(CLEIA)を用いて測定を行う場合を例に挙げて説明する。
【0044】
好ましい態様のカートリッジは、検体中に存在する被測定成分を自動的に定量する自動測定装置に組み込んで用いる自動測定用カートリッジであって、被測定成分とこれと免疫学的に特異的に反応する物質との反応を行う反応ウエルと、反応に用いる試薬を充填するための複数の試薬収納ウエル、検体を分注する分注ウエル、検体の希釈を行う希釈ウエル、B/F分離を行うための洗浄ウエルおよび/または測光ウエルを有する。前記のとおり、試薬収納ウエルは反応ウエルをかねていてもよい。希釈ウエルには所定量の検体を所望の倍率に希釈する量の希釈液が充填してあり、複数の試薬収納ウエルには個別に、免疫学的に特異的な反応を行うための固相担体、標識された抗原または抗体、標識体量の測定を行うための試薬等が充填され、洗浄ウエルには、免疫複合体を洗浄するための洗浄液を充填して用いることが好ましい。
【0045】
カートリッジの試薬収納ウエルには、例えば、抗原または抗体の結合した固相担体(感作固相)を入れ、反応ウエルをかねることができる。固相担体としては、従来から免疫測定で用いられている、ポリスチレンビーズ、磁性粒子等を挙げることができる。さらには、固相担体をウエルに加えず、ウエル内壁に抗体または抗原を固相化して用いることもできる。
【0046】
本態様で用いられる免疫測定法としては感度の点で有利な酵素化学発光法(CLEIA)が好ましく、また固相担体としては、酵素化学発光法(CLEIA)で必須なB/F分離が磁石によって簡便に行うことができる磁性粒子が好ましい。このB/F分離は、カートリッジ外部より永久磁石、電磁石等で磁場をあたえることによって行うことができ、また、特開平11−262678号公報にあるように分注系のピペットチップ等の吸引・吐出系側に配列された磁石によっても行うことができる。
【0047】
また他の試薬収納ウエルには標識された抗原または抗体を加えて反応ウエルをかねることができる。標識体としては、例えば、酵素、放射性同位元素、発色物質、蛍光物質、発光物質、各種着色粒子を挙げることができるが、酵素化学発光法(CLEIA)においては酵素が好ましく用いられる。このような標識酵素の例としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコオキシダーゼ等が挙げられる。標識酵素の基質としては、各酵素に対応したものを用いればよく、例えば、アルカリホスファターゼに対してはアダマンチルメトキシフェニルホスホリルジオキシセタン(AMPPD)を用い、ペルオキシダーゼに対してはルミノール/過酸化物を用い、ガラクトシダーゼに対してはアダマンチルメトキシフェニルβ−D−ガラクトシルジオキシセタン(AMPGD)を用いることができる。
【0048】
希釈ウエルには分析項目毎に所定の分量の希釈液を予め充填して用いるのが好ましい。例えば、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体とHBs抗原(HBsAg)の異なる分析2項目を測定する場合は、検体量、固相担体の試薬液量、標識された抗原または抗体の試薬液量、洗浄液量および標識体の測定条件等は2項目とも同一に設定し、希釈ウエルに充填された希釈液量が2項目で異なっているカートリッジを、一連の免疫反応工程を行う機構を2個以上並設した自動測定装置において用いれば、同じ分析工程で2項目とも同時に処理することができる。
【0049】
高倍率の検体希釈を行う場合には、カートリッジに2箇所以上の希釈ウエルを設けて2段階以上の希釈を行うことが好ましい。このようなカートリッジの例を図1に示す。すなわち、HCV抗体では検体中に被測定成分が比較的大量に存在するため、検体を予め希釈して測定する必要があるので、希釈ウエル1(2)には500μl、希釈ウエル2(3)には335μlの希釈液が予め充填されたHCV抗体用カートリッジを用い、検体は自動測定装置の液体吸引・吐出機構によって分注ウエル(1)から70μl吸引され希釈ウエル1(2)に全量70μl吐出され希釈液500μlと混合することによりこの第1段目希釈で約8.1倍(570/70 = 8.14)希釈される。次に、希釈ウエル1(2)から第1段目に希釈された検体を65μl吸引し、希釈ウエル2(3)に全量吐出され希釈液335μlと混合されこの第2段目希釈で最終的に約50倍希釈(570/70 x 400/65 = 50.1)される。最後に希釈ウエル2(3)から第2段目に希釈された検体60μl吸引され、最終的には50倍希釈された検体が反応ウエル(4)に60μl分注される。一方、HBsAgは高感度が要求される分析項目であるので、検体を希釈せずにそのまま原液で用いる。希釈ウエル1(2)と希釈ウエル2(3)共に何も充填していないHBsAg用カートリッジを使用することにより、検体は上記のHCV抗体と同様かつ同時に分注ウエル(1)から70μl吸引され希釈ウエル1(2)に全量70μl吐出され、次に、希釈ウエル1(2)から65μl吸引され希釈ウエル2(3)に全量吐出される。最後に希釈ウエル2(3)から60μl吸引され反応ウエル(4)に全量60μl吐出されるが、希釈ウエルには希釈液が充填されていないので希釈ウエルでの検体の希釈が行われず、最終的には原液の検体が反応ウエル(4)に60μl分注される。このように、本発明では、単一様式の分析工程のみを行う装置でも異なる分析項目を同時に測定することが可能である。
【0050】
もちろん、検体の希釈倍率は上記の例のように50倍に限定されるものではなく、希釈ウエルに充填される希釈液量によって任意に1倍以上の倍率に変更できる。なお、ウエル壁への付着等を考慮して、希釈倍率が1倍の場合においても正確に所定の量が反応ウエルに導入されるように、希釈ウエルにおいては吐出量よりも吸引量が小さくなるように設定することが好ましい。
【0051】
また、前記のとおり、本発明のカートリッジと、測定に必要な試薬および/または溶液が充填された他のカートリッジを併用して測定を行うこともできる。例えば、分注ウエル、希釈ウエル、反応ウエル、洗浄ウエルおよび測光ウエルを有する本発明のカートリッジには、いずれの試薬および/または溶液も充填せずに用いる。これに対し、希釈液、固相担体、標識された抗原または抗体、標識体量の測定を行うための試薬等は他のカートリッジに充填し、該カートリッジから本発明のカートリッジへ分注操作を行うことにより同様に測定を行うことができる。このような態様のカートリッジの例を、図2に示す。
【0052】
希釈液には、酸、アルカリ、有機溶媒、タンパク変性剤、界面活性剤等を添加することにより、検体希釈工程で検体の前処理も行うこともできる。例えば、検体として血液(全血)を用いる場合には、血液には夾雑物が多量に含まれることなどから、任意の界面活性剤等を添加することにより前処理を行うことが好ましい。このようにして検体の希釈と前処理を同時に行うことによって、検体として血液等を用いる場合でも、簡便に精度の高い
測定を行うことが可能になり、例えば、緊急検査や医師・看護婦が行うポイントオブケアーテスティング(POCT)等にも好適に用いられることができる。
【0053】
免疫複合体から未反応な検体や標識体を洗浄する(B/F分離)ための洗浄液は、従来の自動測定装置に見られるように自動測定装置内の一部の装置から供給すると、洗浄液調製や測定中における洗浄液補充や廃液処理などの手間がかかる。また、従来の自動測定装置で用いられている洗浄液は分析項目に関わらず洗浄液組成・液量が共通化されているので、分析項目毎に最適な洗浄液組成を採用することができない。よって以上の点から洗浄液もカートリッジに収納する方が好ましい。ただし、組成・液量が同一である場合などは、前記のように自動測定装置の一部の装置から画一的に供給してもよい。
【0054】
本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置には、反応を促進するために、本発明カートリッジを必要な温度、例えば、酵素反応に好適な35〜45℃の範囲等に保つ機構を付加することが好ましい。
【0055】
標識体の測定は、例えば、酵素化学発光法では、免疫複合体と標識酵素の基質を混合後、測光ウエルから直接、光電子倍増管等により行うことができる。また、酵素免疫法の場合は、酵素基質液と混合した後、測光ウエルの底部または側部から測定波長の測定光を照射し、測光ウエルを通過した透過光を測定することにより行うことができる。
【0056】
本発明カートリッジを組み込んで用いる自動測定装置は、少なくとも、本発明カートリッジを収容するカートリッジ収容部、カートリッジ収容部に収容されるカートリッジに試薬および/または検体を分注する分注部およびカートリッジ収容部に収容されるカートリッジ上の反応生成物を測定する測定部を備える。カートリッジ収容部は、本発明のカートリッジを収容できるような構造とされる他は、通常のカートリッジ収容部と同様でよい。分注部は、試薬および/または検体の種類や性状に応じて、液体吸引・吐出機構等の通常の機構により構成される。ここで分注とは、カートリッジのウエルにカートリッジ外から試薬および/または検体を移すこと、ならびに、カートリッジ上の一つのウエルから他のウエルに試薬および/または検体を移すことの両方を包含する。測定部は、反応生成物の種類や性状に応じて、測光機構等の通常の機構により構成される。ウエル群を2ライン以上並設した本発明カートリッジ、または、複数の本発明カートリッジを用いて測定を行う場合には、一連の免疫反応を行う機構を複数個並設した装置で、検体の分注、検体の希釈、試薬の分注、B/F分離および測光等の工程を同時に並行駆動制御することができる装置であることが好ましい。このようにして、免疫測定法の場合においても、単一様式の分析工程のみを行う装置を用いて、分析項目が異なっても測定所要時間が大きく増加すること無く複数項目を同時に測定することができる。
【0057】
分注部は、試薬および/または検体と接触する部分(チップ等)が交換可能なものであることが好ましい。この部分を測定毎に交換することにより、次の測定に用いるカートリッジの汚染を防止することが容易になる。
【0058】
また、前記のとおり、本発明のカートリッジにバーコードを付し、該バーコードを認識する機構を備えた装置を用いて測定を行うことが好ましい。バーコードを認識して分析項目を自動的に選択することのできる装置を用いることによって、例えば、反応温度や測光条件の個別設定が不要になる、測定結果の解析が容易に行える等、複数項目の自動測定をさらに簡便に効率よく行うことができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を単に例示するものに過ぎず、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない
。本発明の精神から離れることなく、いかなる変更、改良または改変を加えることができることは当業者には自明である。
【0060】
調製例1 試薬および溶液の調製
HBs抗原(HBsAg)、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV−1)抗体および梅毒トレポネーマ(TP)抗体の測定に必要な各試薬および溶液の調製を行った。
【0061】
1.磁性粒子の調製
抗HBsAgポリクローナル抗体を磁性粒子(0.3μm)に50mMリン酸緩衝液(pH 4)中で物理吸着させた後、0.2%BSAを含むトリス緩衝液(0.1 M pH 8)で37℃において1日処理し、抗HBsAg抗体結合磁性粒子を作製した。
【0062】
同様にHCV抗原、HIV抗原、HTLV−1抗原およびTP抗原についても同じ処理を行い、それぞれHCV抗原結合磁性粒子、HIV抗原結合磁性粒子、HTLV−1抗原結合磁性粒子およびTP抗原結合磁性粒子を作製した。
【0063】
作製した磁性粒子は、0.1 Mトリス緩衝液(pH 8.0)に懸濁して用いた(濃度は、100〜200μg/mlの間で、各項目において個別に設定)。
【0064】
2.標識抗体の調製
抗HBsAgモノクローナル抗体をマレイミド法でウシアルカリホスファターゼ(ALP)と結合させ、ALP標識抗HBsAg抗体を作製した。同様に抗ヒトIgGモノクローナル抗体を用いてALP標識抗ヒトIgG抗体を作製した。作製した標識抗体は、0.1 Mトリス緩衝液(pH
8.0)に溶解して用いた(濃度は、0.2〜0.5μg/mlの間で、各項目において個別に設定)。
【0065】
3.洗浄液の調製
0.1% Tween20および0.15M NaClを含む0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)を調製した。
【0066】
4.希釈液の調製
1%BSAおよび0.15M NaClを含む0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)を調製した。
【0067】
5.発光基質
発光基質は25 mM AMPPD溶液(トロピックス社)を用いた。
【0068】
実施例1 HBsAg、HCV抗体、HIV抗体、HTLV−1抗体およびTP抗体の測定(A)
図1に示したポリスチレンで作製されたカートリッジを用いて測定を行った。該カートリッジの希釈ウエル1(2)、希釈ウエル2(3)、磁性粒子収納ウエル(4)、標識抗体収納ウエル(6)、洗浄ウエル1(5)、洗浄ウエル2(7)、測光ウエル(8)に、上記調製例1の1〜5で調製した各試薬および溶液を充填後、各試薬収納ウエル上部をアルミニウム箔でシールした。充填位置および充填分量は次の通りであった。
【0069】
【表1】

【0070】
5連の吸引・吐出機構と5連の磁性粒子分離機構を備えた自動測定装置で以下の工程に従い、作製した5種類の試薬カートリッジを同時に測定した。
【0071】
(1)検体(陰性コントロール血清、陽性コントロール血清)をHBsAg用カートリッジ、HCV抗体用カートリッジ、HIV抗体用カートリッジ、HTLV−1抗体用カートリッジおよびTP抗体用カートリッジの各々の分注ウエルに70μl以上分注する。
(2)検体を分注した試薬カートリッジを自動測定装置にセットする。試薬カートリッジの並べ方は任意で構わない。
(3)自動測定装置をスタートさせる。
(4)自動測定装置は試薬カートリッジに添付されたバーコードを読んで、どの分析項目が選択されたかを認識する。以後5ヶの試薬カートリッジに対して同一の工程が同時並行で行われる。
(5)試薬カートリッジ上部のアルミニウムシールを棒状の突起物で穿孔する。(6)分注ウエル(1)から検体70μlを吸引し、希釈ウエル1(2)に全量吐出する。さらに希釈ウエル1(2)で吸引・吐出操作を繰り返すことによって第一段目希釈工程が行われる。
(7)希釈ウエル1(2)から検体65μlを吸引し、希釈ウエル2(3)に全量吐出する。さらに希釈ウエル2(3)で吸引・吐出操作を繰り返すことによって第2段目希釈工程が行われる。
(8)希釈ウエル2(3)から検体60μlを吸引し、磁性粒子収納ウエル(4)で吐出し磁性粒子と混合し、42℃で10分間反応させる。
(9)磁性粒子収納ウエル(4)で磁石によって磁性粒子を分離し、さらに磁性粒子を洗浄ウエル1(5)で洗浄後、永久磁石で磁性粒子を分離する。
(10)磁性粒子を標識抗体収納ウエル(6)に分注し、さらに混合後42℃で10分間反応させる。
(11)標識抗体収納ウエル(6)で磁石によって磁性粒子を分離し、さらに磁性粒子を洗浄ウエル2(7)で洗浄後、永久磁石で磁性粒子を分離する。
(12)磁性粒子を測光ウエル(8)に分注し、AMPPD溶液と混合し、42℃で5分間酵素反応後、測光ウエル上部から光電子増倍管(PMT)で発光量を測定する。
【0072】
上記の測定を12日間に渡って繰り返し、日間再現性を検討したところ以下のように良好な結果を得た。
【0073】
【表2】

【0074】
実施例2 HBsAg、HCV抗体、HIV抗体、HTLV−1抗体およびTP抗体の測定(B)
図2に示したカートリッジを用いて測定を行った。すなわち、検体希釈液と反応に関与する試薬類(磁性粒子、標識抗体、AMPPD)が本発明のカートリッジ(以下、これを「反応カートリッジ」と称することがある)とは別のカートリッジ(以下、これを「試薬カートリッジ」と称することがある)に充填されて、かつそれらの試薬が物理的に結合しておらず、検体希釈が3段階でおこなわれるようにして行った。各試薬および溶液としては、上記調製例1で調製したものを用いた。
【0075】
(1)HBsAg用試薬カートリッジ、HCV抗体用カートリッジ、HIV抗体用試薬カートリッジ、HTLV−1抗体用試薬カートリッジおよびTP抗体用試薬カートリッジを自動測定装置にセットする。各試薬カートリッジの並べ方は任意で構わない。各試薬カートリッジには、予め表3のように試薬および溶液を充填し、アルミシールで封入した。
(2)反応カートリッジを装置にセットする。ここで、反応カートリッジは希釈液および試薬が充填されていない空のカートリッジ(アルミシール無し)なので、測定項目に関わらず共通である。
(3)検体(陰性コントロール血清、陽性コントロール血清)を各試薬カートリッジの直線上に対応させた各々の反応カートリッジの分注ウエル(SD)に115μl以上分注する。
(4)自動測定装置をスタートさせる。
(5)自動測定装置は試薬カートリッジに添付されたバーコードを読んで、どの分析工程が選択されたかを認識する。以後5ヶの試薬カートリッジおよびその試薬カートリッジに対応した反応カートリッジに対して同一の工程が同時並行で行なわれる。
(6)試薬カートリッジ上部のアルミシールを棒状の突起物で穿孔する。
(7)各試薬カートリッジから試薬類を反応カートリッジに充填する。分注の順序は分注チップのコンタミネーションを考慮して決定した。
(8)まず、洗浄液収納ウエル(WS)から洗浄液1000μlを吸引し、洗浄ウエル1(W1)および洗浄ウエル2(W2)に500μlずつ分注する。
(9)AMPPD収納ウエル(AMPPD)からAMPPD200μlを吸引し、測光ウエル(LM)に全量吐出する。
(10)希釈液収納ウエル1(DS1)から検体希釈液190μlを吸引し、希釈ウエル1(D1)に全量吐出する。希釈液収納ウエル1(DS1)が空の場合、この操作後も希釈ウエル1(D1)は空のままである。
(11)希釈液収納ウエル1(DS1)から検体希釈液290μlを吸引し、検体希釈ウエル2(D2)に全量吐出する。希釈液収納ウエル1(DS1)が空の場合、この操作後も希釈ウエル2(D2)は空のままである。
(12)希釈液収納ウエル1(DS1)から検体希釈液285μlを吸引し、検体希釈ウエル3(D3)に全量吐出する。希釈液収納ウエル1(DS1)が空の場合、この操作後も希釈ウエル3(D3)は空のままである。
(13)希釈液収納ウエル2(DS2)から検体希釈液115μlを吸引し、検体希釈ウエ
ル1(D1)に全量吐出する。希釈液収納ウエル2(DS2)が空の場合、この操作後も希釈ウエル1(D1)中の希釈液の量はそのままである。
(14)標識抗体収納ウエル(LA)から標識抗体250μlを吸引し、反応ウエル2(R2)に全量吐出する。
(15)磁性粒子収納ウエル(MP)から磁性粒子懸濁液250μlを吸引し、反応ウエル1(R1)に全量吐出する。
(16)以上の操作で、必要なすべての試薬類が試薬カートリッジから反応カートリッジに充填されたことになる。以降、反応カートリッジを用いた検体希釈、反応および測光工程に進む。
(17)分注ウエル(SD)から検体115μlを吸引し、希釈ウエル1(D1)に全量吐出する。さらに希釈ウエル1(D1)で吸引・吐出操作を繰り返すことによって第一段目希釈工程が行なわれる。
(18)希釈ウエル1(D1)から検体110μlを吸引し、希釈ウエル2(D2)に全量吐出する。さらに希釈ウエル2(D2)で吸引・吐出操作を繰り返すことによって第二段目希釈工程が行なわれる。
(19)希釈ウエル2(D2)から検体105μlを吸引し、希釈ウエル3(D3)に全量吐出する。さらに希釈ウエル3(D3)で吸引・吐出操作を繰り返すことによって第三段目希釈工程が行なわれる。以上の操作で最終的に表4に示した所望の希釈倍率が得られる。
(20)希釈ウエル3(D3)から検体100μlを吸引し、反応ウエル1(R1)に全量吐出し、磁性粒子と混合し、37℃で10分間反応させる。
(21)反応ウエル1(R1)で永久磁石によって磁性粒子を分離し、さらに磁性粒子を洗浄ウエル1(W1)で洗浄後、永久磁石で磁性粒子を分離する。
(22)磁性粒子を反応ウエル2(R2)に分注し、標識抗体と混合し、さらに混合後37℃で10分間反応させる。
(23)反応ウエル2(R2)で永久磁石によって磁性粒子を分離し、さらに磁性粒子を洗浄ウエル2(W2)で洗浄後、永久磁石で磁性粒子を分離する。
(24)磁性粒子を測光ウエル(LM)に分注し、AMPPD溶液と混合し、37℃で5分間酵素反応後、測光ウエル(LM)上部から光電子倍増管(PMT)で発光量を測定する。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
上記の測定を3回行ったところ、以下のように良好な結果を得た。
【0079】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、検体中の希釈倍率が異なる複数種の分析項目の測定を、画一的な分析処理工程で同時に行うことができる。これにより、自動測定装置の簡素化やコストダウン、測定所要時間の短縮につながり、簡便な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1のカートリッジの概要を示す図である。図中の符号は以下の通りである。1:は分注ウエル、2:希釈ウエル1、3:希釈ウエル2、4:磁性粒子収納ウエル(反応ウエル1)、5:洗浄ウエル1、6:標識抗体収納ウエル(反応ウエル2)、7:洗浄ウエル2、8:測光ウエル。
【図2】実施例2のカートリッジの概要および操作条件を示す図である。カートリッジの上に試薬の充填の操作、カートリッジの下に検体希釈および反応の操作を示す。図中の符号は以下の通りである。DS1:希釈液収納ウエル1、DS2:希釈液収納ウエル2、WS:洗浄液収納ウエル、MP:磁性粒子収納ウエル、LA:標識抗体収納ウエル、AMPPD:AMPPD収納ウエル、SD:分注ウエル、D1:希釈ウエル1、D2:希釈ウエル2、D3:希釈ウエル3、R1:反応ウエル1、W1:洗浄ウエル1、R2:反応ウエル2、W2:洗浄ウエル2、LM:測光ウエル、M.P.:磁性粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中に含まれる被測定成分を測定する際に使用されるカートリッジであって、当該カートリッジは、少なくとも所定量の検体を所望の倍率に希釈する希釈ウエル、および、検体中の被測定成分とこれと特異的に反応する物質とを反応させる反応ウエルを有してなり、画一的操作により前記希釈ウエルに所定量の検体を分注したときに、被測定成分により選択される所望の倍率に所定量の検体を希釈する量の希釈液が前記希釈ウエルに充填されていることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
希釈ウエルおよび反応ウエルを含むウエル群が2ライン以上並設されてなる請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
さらに、測定に必要な試薬が収納されている試薬収納ウエル、検体を分注する分注ウエル、反応生成物の洗浄を行うための洗浄ウエル、および/または反応生成物の測定を行うための測定ウエルを有する請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液が充填された他のカートリッジを併用して測定を行う請求項1〜3のいずれかに記載のカートリッジ。
【請求項5】
検体中に含まれる被測定成分の測定に必要な試薬および/または溶液の全てが封入されている請求項1〜3のいずれかに記載のカートリッジ。
【請求項6】
被測定成分とこれと特異的に反応する物質との反応が、免疫学的反応である請求項1〜5のいずれかに記載のカートリッジ。
【請求項7】
免疫学的反応が、検体中の被測定成分とこれと免疫学的に特異的に反応する物質とを反応させて第1の免疫複合体を形成させ、第1の免疫複合体をこれと免疫学的に特異的に反応する標識体とを反応させて第2の免疫複合体を形成させる反応である、請求項6に記載のカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−203279(P2008−203279A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144877(P2008−144877)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【分割の表示】特願2001−581124(P2001−581124)の分割
【原出願日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願人】(000138277)株式会社三菱化学ヤトロン (30)
【Fターム(参考)】