説明

自動湯張り装置

【目的】 水位センサの水位―出力特性に変動があっても、設定水位の湯張りができる利便性の高い自動湯張り装置を提供する。
【構成】 湯張り管6に設けられた湯張り弁7および流量センサ17と、往き管9に設けたフローセンサ15および循環ポンプ11と、戻り管10に設けた水位センサ16と、湯張り制御手段30を備えた制御手段20とからなる自動湯張り装置1。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は設定した浴槽水位まで自動的に湯張りを行う自動湯張り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の自動湯張り装置は、特開平1―98853号公報に開示されているように、浴槽の循環回路に水位検出手段(水位センサ)を設け、この水位検出手段が水没した水位センサ値を基準にして設定水位まで自動的に湯張りするよう構成されたものは知られている。
【0003】このような従来の自動湯張り装置は、装置へ電源を投入した後の初回の湯張り時に、水位センサが水没するセンサ出力を記憶して設定水位まで湯張りを行い、2回目以降の湯張りは初回に記憶したセンサ出力に基づいて設定水位まで湯張りが実行される。
【0004】水位センサの水没検出は、少量の湯張りを何回も繰り返し、1回の湯張り毎に循環回路に設けた浴槽水循環用ポンプを所定時間駆動した後に停止し、水流がある場合に、水位センサの出力から検出するよう構成される。
【0005】また、基準水位から設定水位までの湯張りは、水位1CM上昇に対応する水位センサ出力の増加分を既知とし、設定水位と基準水位の偏差により設定水位までのセンサ出力が決定され、このセンサ出力まで湯張りを行うことにより、設定水位の湯張りが自動的に実行されるとしている。また、一度所望の水位に設定しておけば、次回から水位センサが所望設定水位になるまで自動的に湯張りがなされるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の自動湯張り装置は、水位センサが水没する水位のセンサ出力を基準とし、水位センサの水位―出力特性の代表的な値(ノミナル値)、または初期特性値に基づいて設定水位と基準水位の偏差に対応したセンサ出力値まで自動的に湯張りするよう構成されるため、水位センサの水位―出力特性の経時変化、劣化等に起因する特性変化が生じる場合には所望の設定水位に湯張りできない課題がある。
【0007】このような水位―出力特性の変動による影響をなくすためには、2回目以降の湯張り時にも、1回目の湯張り時と同様に水位センサ水没時のセンサ出力を記憶するようにすればよいが、水位センサの水没検出は、前述したように時間がかかるものであるから、湯張りの度にこれを行うことは、湯張り時間の短縮を望むユーザにとっては不満が残るものであった。
【0008】この発明はこのような課題を解決するためなされたもので、その目的は水位センサの水位―出力特性に変動があっても、設定水位の湯張りができる信頼性の高さと、湯張り時間の短縮というユーザの要望に対応できる利便性の高さとを兼ね備えた自動湯張り装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するためこの発明に係る自動湯張り装置は、記憶動作時には、浴槽水位が水位に達するまでに要した流量を基準流量として記憶し、記憶動作後の湯張り時には、基準流量の湯張りを行うとともに、その際の水位センサ出力に基づき、基準値を記憶更新する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】また、この発明に係る自動湯張り装置の制御手段は、基準流量の湯張りを行った際の水位センサ出力と基準値の偏差が所定値以下の場合、その時の水位センサ出力を基準値として記憶更新することを特徴とする。
【0011】さらに、この発明に係る自動湯張り装置の制御手段は、基準流量の湯張りを行った際の水位センサ出力と基準値の偏差が所定値を超える場合、次回の湯張り時に記憶動作を再実行することを特徴とする。
【0012】また、この発明に係る自動湯張り装置の制御手段は、基準流量の湯張りに先立って浴槽水位が基準水位に達しているか否かを判定し、浴槽水位が基準水位に達していると判定した場合には、基準流量の湯張りを行わないことを特徴とする。
【0013】さらに、この発明に係る自動湯張り装置の制御手段は、記憶動作に先立って浴槽水位が基準水位に達しているか否かを判定し、浴槽水位が基準水位に達していると判定した場合には、記憶動作を実行しないことを特徴とする。
【0014】
【作用】この発明に係る自動湯張り装置は、湯張りの度毎に基準値を記憶更新する機会が与えられるものであるから、水位センサの水位―出力特性変動に充分対応できる一方、基準流量の湯張りを行い、その際の水位センサ出力に基づいて基準値の記憶更新を行うものであるから、湯張りの度毎に少量の湯張りを繰返し行い、基準値の記憶更新を行う方式に比して湯張り時間を短縮することができる。
【0015】
【実施例】以下、この発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係る自動湯張り装置の全体構成図である。図1において、自動湯張り装置1は、給水管3と、給水管3より流入する水を加熱する給湯用熱交換器2と、加熱された湯を吐出する給湯管4と、給湯管4の先端に配置される給湯栓5と、給湯管4より分岐して浴槽12に湯を送る湯張り管6と、湯張り管6に設けられた湯張り弁7と、浴槽水を追焚用熱交換器8へ送出する往き管9と、浴槽水を追焚用熱交換器8から浴槽12へ吐出する戻り管10と、浴槽水を加熱する追焚用熱交換器8と、往き管9、追焚用熱交換器8および戻り管10で構成する循環経路に浴槽水を循環させる循環ポンプ11と、ガスバーナ14に供給するガス量を調節する比例弁13と、制御手段20と、操作パネル23とから構成する。
【0016】また、給水管3には給水温度センサTC、給湯管4には給湯温度センサTMをそれぞれ設けて加熱量の管理を行い、湯張り管6には流量センサ17、往き管9にはフロースイッチ15、戻り管10には水位センサ16をそれぞれ設けて湯張りの管理を行い、図示しない風呂温度センサで浴槽12の温度TFの管理を行うよう構成する。
【0017】制御手段20はマイクロプロセッサを基本に構成し、図1にはこの発明に関する自動湯張り装置1に必要な湯張り制御手段30および加熱制御手段50の構成のみを示す。湯張り制御手段30は、操作パネル23の電源スイッチPW、湯張りスイッチYH、水位設定スイッチSIからのスイッチ情報Sa、Sb、HSに基づいて湯張り弁情報XOを湯張り弁7に送って開閉を制御したり、水位センサ16、フロースイッチ15および流量センサ17からのフロー情報Fo、水位センサ情報Va、流量情報Qaに基づいて基準水位センサ値VO、基準水位HOの設定、水位センサ16の水位―水位センサ値(H―V特性)の保存と更新、設定水位HSおよび基準水位HOの偏差演算と対応する水位センサ値への変換、設定水位HSまでの湯張り管理等を実行する。
【0018】加熱制御部50は、浴槽12に設定水位HSの湯張りが完了した後、浴槽12の湯を操作パネル23の設定温度スイッチ(図示せず)で設定した温度TFに追焚きするよう浴槽水温度、浴槽水量から必要熱量を算出し、必要熱量に基づいて比例弁13の弁開度を調節し、ガスバーナ14で焚き用熱交換器8を加熱することにより設定温度の追焚きを行うよう制御する。
【0019】次に、図1に基づいて自動湯張り装置1の動作を説明する。操作パネル23の電源スイッチPWを投入すると、自動湯張り装置1全体に電源が印加されるとともに、電源情報Saが制御手段20に提供されて制御手段20の後述する機能ブロック全体をリセット状態にする。
【0020】この状態から、水位設定スイッチSIで湯張りする浴槽12の設定水位HSを設定し、湯張りスイッチYHを操作すると、スイッチ情報HSおよびSbが制御手段20に供給され、制御手段20が湯張りを制御して浴槽12へ設定水位HSの自動湯張りを実行する。
【0021】湯張制御手段30から湯張り弁情報XOを湯張り弁7に送って湯張り弁7を開放し、給湯用熱交換器2で加熱された給湯温度Tmの湯を給湯管4から湯張り管6を介し、一方は戻り管10、もう一方は追焚用熱交換器8と接続された往き管9から浴槽12に湯張りを行う。
【0022】まず、電源スイッチPW投入後の初回の湯張り方法について説明する。初回の湯張りスイッチYHが操作されると、スイッチ情報Sbにより湯張制御手段30は初回の湯張りであることを認識し、湯張り弁情報XOを湯張り弁7に送って湯張り弁7を開放し、予め設定した所定少量の湯張りを流量センサ17で監視しながら行う。所定量の湯張りが完了した後、湯張制御手段30はポンプ駆動信号POを送り、循環ポンプ11を所定時間駆動して往き管9、追焚用熱交換器8および戻り管10から構成する循環経路を循環する湯の流れをフロースイッチ15で監視する。
【0023】湯張りされた湯量が少なく、フロースイッチ15が湯の流れを検出できない場合、湯張制御手段30は再度、湯張り弁情報XOを湯張り弁7に送って湯張り弁7を開放して予め設定した所定少量の湯張りを行い、循環ポンプ11の駆動、フロースイッチ15による湯の流れを監視する。この一連の動作はフロースイッチ15が湯の流れを検出するまで繰り返し実行し、湯張制御手段30は、フロースイッチ15からのフロー情報FOを検出すると、水位センサ16が水没して浴槽12の水位が基準水位HOに達したと判定し、この時の水位センサ値(基準水位センサ値)Va(=VO)および流量センサ17が検出した最低(基準)湯張り量QOを記憶する。
【0024】続いて、湯張制御手段30は、操作パネル23の水位設定スイッチSIで設定された設定水位HSを予め記憶している水位(H)―水位センサ値(V)変換テーブルを用いて設定水位センサ値VSに変換し、湯張り弁情報XOを湯張り弁7に送って湯張り弁7を開放して湯張りを行い、水位センサ16からの水位センサ値Vaが設定水位センサ値VSと等しくなった(Va=VS)時点で湯張り弁7を閉結制御し、設定水位HSの自動湯張りを終了するよう制御する。また、設定水位HSの検出は、基準水位センサ値VOを水位(H)―水位センサ値(V)変換テーブルを用いて基準水位HOに変換し、設定水位HSと基準水位HOの偏差ΔH(=HS−HO)を演算し、さらに偏差ΔHを予め設定している流量ΔQに変換して湯張りを行い、流量センサ17が検出する流量Qaと湯張り時間TQの積(Qa*TQ)がΔQとなる場合に自動湯張りを終了するよう制御してもよい。
【0025】電源スイッチPW投入後、2回目以降の湯張り方法については、初回の湯張りで記憶した基準湯張り量QOを湯張りして、循環ポンプ11の駆動/停止後、フロースイッチ15による循環経路を循環する湯の流れを検出した後、この時の水位センサ値VO1を検出し、この水位センサ値VO1と前回(初回)の基準水位センサ値VOの偏差ΔV(=VO1−VO)を演算し、偏差ΔVが予め設定した所定範囲VKを超える(|VO1−VO|>VK)場合、次回の湯張り時には、基準水位センサ値VOの更新動作が必要であることを記憶し、偏差ΔVが所定範囲以内の場合、その時の水位センサ値を基準水位センサ値VOとして記憶更新する。
【0026】基準水位センサ値VO1検出後の設定水位HSまでの湯張りは、基準水位センサ値の偏差ΔV(=VO1−VO)が所定範囲VK以内または超える場合のいずれであっても、初回の湯張りと同様に、設定水位HSを予め記憶している水位(H)―水位センサ値(V)変換テーブルを用いて設定水位センサ値VSに変換し、湯張り弁情報XOを湯張り弁7に送り、湯張り弁7を開放して湯張りを行い、水位センサ16からの水位センサ値Vaが設定水位センサ値VSと等しくなった(Va=VS)時点で湯張り弁7を閉結制御し、設定水位HSの自動湯張りを終了するよう制御する。
【0027】なお、基準水位センサ値VOがVO1に更新して記憶された場合、次回(3回目)の自動湯張りは基準水位センサ値VO1に基づき、初回の湯張りと同様な一連の自動湯張り動作が実行されるよう構成する。
【0028】図2はこの発明に係る自動湯張り装置の制御手段の要部ブロック構成図である。図2において、制御手段20はマイクロプロセッサを基本に構成し、湯張り制御手段30、パワーオンリセット手段47、計数手段48、シーケンス手段49、加熱制御手段50を備える。
【0029】湯張り制御手段30は、湯張弁制御部31、初期湯張量記憶部32、A/D変換器33および38、湯張量比較部34、湯張り停止手段35、基準湯量記憶部36、循環検出部37、水位センサ基準値記憶部39、設定値演算手段40、設定水位判定手段41、センサ値変換手段42、H―Vテーブル43、基準値比較手段44、テーブル値変更手段45、循環ポンプ制御手段46を備える。
【0030】湯張り弁制御部31は、湯張りスイッチYHの操作に伴って出力されるスイッチ情報Sbに基づいて湯張り弁情報XOを湯張り弁7に送り、湯張り弁7を開放して湯張りを制御し、湯張り停止手段35から供給される停止信号STにより湯張り弁情報XOを禁止して湯張り弁7を閉結するよう制御する。
【0031】初期湯張量記憶部32はROM等のメモリで構成し、予め設定した所定少量のの湯張り量情報Qfをシーケンス手段49のシーケンス情報SKに基づいてフロースイッチ15が循環経路の湯の流れを検出してフロー情報FOを出力するまで所定回数繰返し出力するよう構成し、所定流量情報Qfを湯張量比較部34に供給する。
【0032】A/D変換器33および38は、それぞれ流量センサ17および水位センサ16が検出したアナログの電気的な流量情報Qaおよび水位センサ情報Vaをディジタルの流量情報Qdおよび水位センサ情報Vdに変換し、それぞれ基準湯量記憶部36、水位センサ基準値記憶部39に提供する。
【0033】湯張量比較部34はコンパレータ等の比較回路で構成し、初期湯張量記憶部32からの湯張り量情報QfおよびA/D変換器33からの流量情報Qdを比較して流量情報Qdが湯張り量情報Qfに等しく(Qd=Qf)なった場合には、湯張り制御情報DQを湯張り停止手段35に出力し、湯張り停止手段35から湯張り弁制御部31に停止信号STを供給して湯張り弁7を閉結するよう制御する。また、湯張量比較部34は、流量情報Qdと基準湯量記憶部36からの基準湯張り量QOを比較し、流量情報Qdが基準湯張り量QOに等しく(Qd=QO)なった場合には、湯張制御情報DQを湯張停止手段35に出力する。
【0034】湯張り停止手段35はヒステリシス特性を有するシュミットトリガタイプのゲート等で構成し、湯張り量比較部34の湯張り制御情報DQ、または設定水位判定手段41の設定水位制御情報DVに基づいて停止信号STを湯張り弁制御部31に供給し、湯張り弁7を閉じるよう湯張り弁情報XOの出力停止を制御する。
【0035】循環検出部37は、フロースイッチ15が検出するフロー情報FOを取込み、例えばHレベルの循環検出情報FHを基準湯量記憶部36および水位センサ基準値記憶部39に提供し、循環経路の水流を検出した場合に、それぞれ基準湯張り量QOおよび基準水位センサ値VOを記憶するよう制御する。基準湯量記憶部36および水位センサ基準値記憶部39は、それぞれ書換え可能なRAM等のメモリで構成し、循環経路に浴槽水が充満して水位センサ16が水没する基準湯張り量QOおよび基準水位センサ値VOを循環検出情報FHの制御に基づき記憶する。
【0036】設定値演算手段40は減算器等の演算回路で構成し、水位センサ基準値記憶部39からの基準水位センサ値VOとセンサ値変換手段42からの設定センサ値情報VSの偏差(=VS−VO)を演算し、偏差信号VEを設定水位判定手段41に出力する。設定水位判定手段41は加算回路および減算回路等の演算回路で構成し、設定値演算手段40からの偏差信号VE(=VS−VO)とA/D変換器38からの水位センサ情報Vdとから偏差(=VS−Vd)を演算し、偏差(=VS−Vd)が0の場合に設定水位制御情報DVを湯張停止手段35に供給し、停止信号STを湯張り弁制御部31に供給して湯張り弁7を閉結し、設定水位HSの湯張りを終了するよう制御する。
【0037】センサ値変換手段42は、水位設定スイッチSIからの設定水位情報HSを取込み、RAM等の書換え可能なメモリで構成したH―Vテーブル43に予め設定した水位(H)と水位センサ値(V)の変換テーブルに基づいて設定水位情報HSを水位センサ値VSに変換し、設定センサ値情報VSを設定値演算手段40に出力する。
【0038】基準値比較手段44はヒステリシス特性を有するコンパレータ等の比較回路で構成し、例えば、初回の湯張りで記憶した水位センサ基準値記憶部39の水位センサ基準値VOと2回目の湯張りの水位センサ基準値Vd(=VO1)を比較し、偏差の絶対値|VO−VO1|が所定値VKを超える場合、次回以降の湯張り時に変更信号DCを水位センサ基準値記憶部39、テーブルチ変更手段45および計数手段48に出力して水位センサ基準値VOの書換え(VO=VO1)、H―Vテーブル43のテーブル値の変更および計数手段48の湯張りスイッチYHからのスイッチ情報Sbの回数(湯張り回数n)のクリアを制御する。なお、偏差の絶対値|VO−VO1|が所定値VKの範囲内の場合には、次回以降の湯張り時ではなく、即座に上記制御を行う。
【0039】テーブル値変更手段45は、水位センサ16の水位Hに対する水位センサ値Vの特性がシフトした場合にH―Vテーブル43の値を変更し、特性シフトに対応した湯張り量を補償するための演算式を記憶し、数1に示す演算式で水位Hに対応した水位センサ値Vを演算し、水位Hと水位センサ値Vの演算情報TaをH―Vテーブル43に提供する。
【0040】
【数1】


ただし、VOnはn回目の湯張りで書換えが必要な水位センサ基準値
【0041】図3に水位センサの水位(H)―水位センサ値(V)特性図を示す。図3において、水位センサの初期(ノミナル)特性をグラフGoに示す。グラフGoでは、水位センサ値Vと水位Hの関係は、傾斜が(VO/HO)の数2の関係式で表わされる。
【0042】
【数2】


【0043】したがって、設定水位HSの水位センサ値VSは数2から数3で表わされる。
【0044】
【数3】


【0045】何等かの原因により水位センサの特性がグラフGoからグラフG1にシフトした場合、グラフG1の傾斜(VO/HO)は変化しないとみなして、グラフG1はグラフGoを(V01−V0)だけプラス方向にシフトした関係となる。したがって、グラフG1の設定水位HSの水位センサ値VS1は数4の関係式で表わされる。
【0046】
【数4】


【0047】一方、水位センサの特性がグラフGoからグラフG2にシフトした場合、グラフG2の傾斜(VO/HO)は変化しないとみなして、グラフGoを(V02−V0)だけマイナス方向にシフトした関係となる。したがって、グラフG2の設定水位HSの水位センサ値VS1は数5の関係式で表わされる。
【0048】
【数5】


【0049】このように、テーブル値変更手段45は、数1に示す演算式により水位センサの特性変化(シフト)を補償し、シフト量に対応したテーブル値をH―Vテーブル43に提供するので、設定水位HSの湯張りを実行することができる。
【0050】循環ポンプ制御手段46は、シーケンス手段49のシーケンス信号SKにより制御され、初期湯張量記憶部32からの湯張り量情報Qfに対応した湯張りがなされる毎に所定時間だけポンプ駆動信号POを出力して循環ポンプ11を駆動した後、停止するよう制御する。
【0051】パワーオンリセット手段47は、電源スイッチPWが投入されて制御手段20の全機能ブロックに電源が印加された後、パワーオンリセット信号RONを全機能ブロックに出力し、全機能ブロックをリセットする。
【0052】計数手段48はカウンタ等の計数回路で構成し、湯張りスイッチYHの操作回数nを計数して記憶し、計数信号NKを湯張り制御手段30やシーケンス手段49に提供して湯張りの状態を制御し、基準値比較手段44の変更信号DCやパワーオンリセット信号RONによりリセット制御される。
【0053】シーケンス手段49は順序回路やタイマ回路で構成し、シーケンス信号SKを湯張り制御手段30に供給して湯張り制御手段30を構成する全機能ブロックの動作順序や動作タイミングを制御し、基準値比較手段44の変更信号DCやパワーオンリセット信号RONによりリセット制御される。
【0054】加熱制御手段50は図示しない必要熱量演算部を備え、設定水位HSの湯張りが完了した時点で図1R>1の操作パネルに設けた図示しない設定温度スイッチで設定した浴槽水温度Thが得られるよう比例弁駆動信号Xhを比例弁13に出力し、図1の追焚用熱交換器8を加熱制御する。
【0055】次に、制御手段20の湯張り制御動作について説明する。電源スイッチPWが投入、水位設定スイッチSIから湯張りの設定水位情報HSが出力された後に湯張りスイッチYHが操作されると、パワーオンリセット手段47からパワーオンリセット信号RONが出力されて計数手段48、シーケンス手段49および湯張り制御手段30の全機能ブロックがリセットされ、計数手段48が初回の湯張りをカウントし、シーケンス手段49が動作を開始する。
【0056】初回湯張りを表わす計数手段48の計数信号NK、およびシーケンス手段49のシーケンス信号SKに基づいて初期湯張量記憶部32から所定少量の湯張り量情報Qfが出力され、湯張り量記憶部34で流量センサ17が検出する流量情報Qaに対応した流量情報Qdが湯張り量情報Qfと等しくなった場合、湯張りスイッチYHからのスイッチ情報Sbに基づいて湯張り弁制御部31が湯張り弁7を開放制御していた湯張り弁情報XOを禁止して湯張りを停止するため、浴槽12には少量(湯張り量Qf)の湯張りがなされる。
【0057】続いて、シーケンス信号SKにより、循環ポンプ制御手段46からポンプ駆動信号POを循環ポンプ11に出力し、循環ポンプ11を所定時間駆動して循環経路の湯を循環させた後、循環ポンプ11を停止する。循環経路の湯を循環させている状態で、循環検出部37がフロースイッチ15からのフロー情報FOを検出しない場合には、再び初期湯張量記憶部32から所定少量の湯張り量情報Qfを湯張りした後、循環ポンプ11の駆動および停止を行うとともに、フロー情報FOの検出を行い、この一連の動作はフロー情報FOが検出されるまで繰り返し行う。
【0058】フロー情報FOが検出されると、循環検出部37から循環検出情報FHを出力し、水位センサ16が水没したと判定されるので、基準湯量記憶部36および水位センサ基準値記憶部39に、この状態の基準湯張り量QOおよび基準水位センサ値VOを記憶する。
【0059】次に、水位設定スイッチSIで設定した設定水位情報HSがセンサ値変換手段42で数2に示すH―Vテーブル43を参照にして設定センサ値情報VSに変換され、設定値演算手段40および設定水位判定手段41で設定水位を目標に実行されている湯張りに伴う水位センサ16の水位センサ値Vaに対応したVdが増加して設定センサ値情報VSと等しくなった場合に、浴槽12の湯張り量は設定水位HSとなるので、設定水位判定手段41から設定水位制御情報DVを湯張り停止手段35に供給し、湯張り弁制御部31を介して湯張り弁7を閉じて湯張りを停止し、初回の湯張りを完了する。
【0060】2回目以降の湯張りは、初期湯張量記憶部32の湯張り量情報Qfの代りに基準湯量記憶部36に記憶した基準湯量QO、またはQOに近い値まで湯張りをし、循環ポンプ11を所定時間駆動した後、停止してフロースイッチ15からのフロー情報FOの検出を行う。フロー情報FOは検出されると、新たな水位センサ基準値V01が水位センサ値Vdとして取込まれ、基準値比較手段44で水位センサ基準値V01と初回の水位センサ基準値VOが比較され、初回の水位センサ基準値VOと水位センサ基準値V01の偏差の絶対値が所定値VKの範囲外ならば、水位センサのH―V特性がシフトしたと判定し、初回と同様に設定水位HSまで湯張りを実行した後、次回以降の湯張り時に水位センサ基準値記憶部39の水位センサ基準値をV01、H―Vテーブル43を数1に示す関係式にそれぞれ置き換えるとともに、計数手段48およびシーケンス手段49をリセット状態にする。一方、偏差が所定値VKの範囲内ならば、上記の置き換えをその時の水位センサ値Vdについて行う。なお、この場合、H―Vテーブル43を数1に示す関係式に置き換え、水位センサ基準値V01をクリアするよう構成してもよい。
【0061】このように、制御手段20に、基準値比較手段44およびテーブル値変換手段45を備えた湯張り制御手段30を設け、湯張り毎に水位センサ基準値を検出して初回の湯張りの水位センサ基準値と比較し、偏差に応じて水位―水位センサ値特性を補正するので、水位センサの特性シフトを補償して常に設定水位の湯張りができる。
【0062】図4はこの発明に係る自動湯張り装置の主要な動作フロー図である。以下、動作フロー図に基づいて自動湯張り装置1の動作を説明する。ステップS0で、電源スイッチPWを投入し、水位設定スイッチHSを所望の水位に設定した状態で湯張りスイッチYHを操作し、電源投入後の初回の自動湯張りを開始する。
【0063】ステップS1において、水位センサ基準値VOが記憶されているか否かの判定を行い、初回湯張りのように水位センサ基準値VOが記憶されていない場合にはステップS3に移行する。初回湯張りの場合、ステップS3で少量の所定湯張り量Qd1(例えば、15リットル)を湯張りした後、ステップS4に移行する。なお、このステップS3におけるQd1の湯張りは、循環ポンプ11内の空気を排除するエアパージのために行われるものである。
【0064】ステップS4で循環ポンプ11を所定時間駆動し、ステップS5でフロースイッチ15により循環する水流が有るか否かを判定する。水流があると判定すると、ステップS30に移行して循環ポンプ11を停止した後にステップS31で基準値更新モードか否かを判定し、初回湯張りのように基準値更新モードでない場合は、ステップS32に移行して設定水位不能を報知する。水流がないと判定すると、ステップS6に移行して循環ポンプ11を停止した後にステップS7に移行し、再度少量の湯張り量Qd2(例えば、40リットル)を湯張りした後、ステップS8に移行する。
【0065】このステップS5における水流判定は、水位センサ16が水没したか否か(浴槽水位が基準水位に達しているか否か)を確認するために設けられている。すなわち、水位センサ16が既に水没している場合には、もともと水位センサ基準値VOを記憶することができず、ステップ6以降の記憶動作を実行しても意味がないからであり、さらに、水位センサ基準値VOを記憶できない以上、設定水位HSまでの湯張り自体もできないわけであるから、そのことをユーザに報知するようステップS32が設けられている。
【0066】ステップS8に移行すると、循環ポンプ11を所定時間駆動した後、ステップS9でフロースイッチ15により循環する水流が有るか否かを判定する。水流有りを判定した場合にはステップS10に移行し、循環ポンプ11を停止する。一方、水流なしと判定した場合にはステップS18からステップS20のルートを移行し、まず、ステップS18で循環ポンプ11を停止し、ステップS19で湯張り量Qd3(例えば、20リットル)を湯張りし、ステップS20でステップS19の湯張り回数を計数して記憶した後、ステップS8、ステップS9を移行してステップS9で水流有りと判定されるまで、ステップS18―ステップS19―ステップS20―ステップS8―ステップS9を繰返し、n*Qd3の湯張りを行った後に最終的にステップS10で循環ポンプ11を停止する。
【0067】ステップS9で水流ありと判定し、水位センサ16が水没したことが確認されると、ステップS11で水位センサ16が検出した水位センサ値Vdを水位センサ基準値VOとして水位センサ基準値記憶部39に記憶し、ステップS12に移行する。ステップS12では、水位センサ基準値VOの更新モードならば、モードを解除してステップS13に移行し、この時点までに湯張した湯張り量QO(Qd1+Qd2+n*Qd3)を基準流量として基準湯量記憶部34に記憶してステップS14に移行する。
【0068】このステップS6からステップS13までの一連の処理は、第1の目的として水位センサ16水没時(浴槽水が基準水位に達した時)の水位センサ出力を水位センサ基準値VOとして記憶するために設けられており、ステップS7におけるQd2、およびステップS19におけるQd3を少量にすればするほど、水位センサ基準値VOを精度よく記憶することができる。また、上記処理は、第2の目的として基準流量QOを記憶するため設けられているものであり、この基準流量QOは次回以降の湯張り時に用いられる。
【0069】ステップS14では、水位センサ基準値VOおよび設定水位HSに基づいて設定水位HSにするために必要な水位センサのセンサ値に対応した設定出力値VSをH―Vテーブル43(数3の演算式)に基づいて算出し、水位センサ16からのセンサ値Va(ディジタル変換値Vd)を監視しながら湯張りを行う。続いて、ステップS15で、センサ値Vdが設定出力値Vs以上になったか否かを判定し、設定出力値Vs以上の場合にはステップS17に移行して自動湯張りを終了する。一方、設定出力値Vs未満の場合にはステップS16の湯張りを繰返して行い、設定出力値Vs以上になった時点でステップS17に移行して自動湯張りを終了する。なお、このステップS16の湯張り実行内容については、浴槽12の容積計算等の周知の制御手段ならびに方法を用いることができる。以上説明したステップを実行し、電源投入後の初回の自動湯張りを行う。
【0070】次に、電源投入後の2回目以降の自動湯張り動作について説明する。ステップS1で水位センサ基準値VOが記憶されている場合、ステップS2に移行して水位センサ基準値VOの更新モードか否かを判定し、更新モードでない場合にはステップS21に移行し、前述の説明と同様にエアパージのために少量の湯張り量Qd4(例えば、20リットル)で湯張りした後、ステップS22に移行して循環ポンプ11を駆動し、続いてステップS23で水流の有無を判定する。なお、ステップS2で更新モードと判定された場合については後述する。
【0071】ステップS23で水流有りと判定した場合には、ステップS29のポンプ停止を経由してステップS14に移行した後、ステップS15〜ステップS17を実行して水位センサ基準値VOを更新せずに自動湯張りを終了する。これは、ステップS5と同様に、水位センサ16が既に水没している場合には、水位センサ基準値VOの更新、および水位センサ16の水位―出力特性の変動の判定をすることができず、ステップS24以降の処理を行っても意味がないからである。一方、ステップS23で水流無しと判定した場合には、ステップS24に移行して循環ポンプ11を停止した後、ステップS25に移行し、基準流量QOとステップS21の湯張り量Qd4との差の湯張り量(QO−Qd4)を湯張りしてステップS26に移行する。
【0072】ステップS26では、ステップS25までに湯張した(湯張り量QO)結果の水位センサ値Vdと基準水位センサ値VOの偏差の絶対値が所定値VKを超えるか否かを判定し、所定値VKを超える場合には水位センサ基準値の記憶動作を次回の湯張り時に実行させるべく、ステップS27の基準値VO更新モードに設定してステップS14に移行し、所定値VKを超えない場合にはステップS28で、その時の水位センサ値Vdを基準水位センサ値VOとして記憶した後、ステップS14に移行する。ここで、ステップS26の判定結果に応じて基準水位センサ値VOの更新方法を変えているのは以下の理由による。すなわち、偏差が所定値VKより小さい場合は、その原因が水位センサ16の水位―出力特性の変動である可能性が高いため即座に基準水位センサ値VOを更新するものである。偏差が所定値VKを超える場合は、湯張り開始時に浴槽12に残水があることが原因である可能性もあるため、即座に基準水位センサ値VOを更新するのではなく、原因が水位センサ16の水位―出力特性の変動に因るものか、あるいは残水に因るものかを次回の湯張り時に確認できるよう、基準値VO更新モードを決定するものである。なお、ステップS14からステップS17の処理は、初回湯張り時と同様に実行される。
【0073】続いて、電源投入後の2回目以降の湯張りで、基準値VO更新モードが設定されている場合の動作を説明する。ステップS2で基準値VO更新モードと判定された後、ステップS5で水流なしと判定された場合のステップS6以降の処理については、電源投入後初回の湯張り時と同様であるが、ステップS5で水流有りと判定された場合は、ステップS28を介してステップS31で基準値VO更新モードと再び判定され、ステップS14以降の処理に移行する。これは、電源投入後初回の湯張り時について説明したのと同様に、実行しても意味がないステップS6以降の処理を省略するためのものであり、ステップS14においては前回以前の湯張り時に記憶された基準値が用いられることになる。なお、基準値VO更新モードは、このようにステップ6以降の処理をできない場合も引続き保持され、次回の以降の湯張り時に、ステップS6以降の処理が実行され、ステップS12に至らない限り解除されない。
【0074】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、水位センサの水位―出力特性に変動があっても、設定水位の湯張りができる信頼性の高さと、湯張り時間の短縮というユーザの要望に対応できる利便性の高さとを兼ね備える自動湯張り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る自動湯張り装置の全体構成図
【図2】この発明に係る自動湯張り装置の制御手段の要部ブロック構成図
【図3】水位センサの水位(H)―水位センサ値(V)特性図
【図4】この発明に係る自動湯張り装置の主要な動作フロー図
【符号の説明】
1…自動湯張り装置、2…給湯用熱交換器、3…給水管、4…給湯管、5…給湯栓、6…湯張り管、7…湯張り弁、8…追焚用熱交換器、9…往き管、10…戻り管、11…循環ポンプ、12…浴槽、13…比例弁、14…ガスバーナ、15…フロースイッチ、16…水位センサ、17…流量センサ、20…制御手段、23…操作パネル、24…表示器、30…湯張り制御手段、31…湯張り弁制御部、32…初期湯張量記憶部、33,38…A/D変換器、34…湯張り量比較部、35…湯張り停止手段、36…基準湯量記憶部、37…循環検出部、39…水位センサ基準値記憶部、40…設定値演算手段、41…設定水位判定手段、42…センサ値変換手段、43…H―Vテーブル、44…基準値比較手段、45…テーブル値変更手段、46…循環ポンプ制御手段、47…パワーオンリセット手段、48…計数手段、49…シーケンス手段、50…加熱制御手段、FO…フロー情報、HO…基準水位、PO…ポンプ駆動信号、Qa,Qd…流量情報、QO…基準湯張り量、Sa,Sb,HS…スイッチ情報、Va,Vd…水位センサ情報、VO…基準水位センサ値、VS…設定水位センサ値、XO…湯張り弁情報、Xh…比例弁駆動信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 浴槽水位が基準水位に達するまで少量の湯張りを繰返し行い、前記浴槽水位が前記基準水位に達した時の水位センサ出力を基準値として記憶する記憶動作を実行し、この基準値に基づいて浴槽設定水位までの湯張りを行う自動湯張り装置において、前記記憶動作時には、前記浴槽水位が前記水位に達するまでに要した流量を基準流量として記憶し、前記記憶動作後の湯張り時には、前記基準流量の湯張りを行うとともに、その際の前記水位センサ出力に基づき、前記基準値を記憶更新する制御手段を備えたことを特徴とする自動湯張り装置。
【請求項2】前記制御手段は、前記基準流量の湯張りを行った際の前記水位センサ出力と前記基準値の偏差が所定値以下の場合、その時の前記水位センサ出力を基準値として記憶更新することを特徴とする請求項1記載の自動湯張り装置。
【請求項3】 前記制御手段は、前記基準流量の湯張りを行った際の前記水位センサ出力と前記基準値の偏差が前記所定値を超える場合、次回の湯張り時に記憶動作を再実行することを特徴とする請求項1記載の自動湯張り装置。
【請求項4】 前記制御手段は、前記基準流量の湯張りに先立って前記浴槽水位が前記基準水位に達しているか否かを判定し、前記浴槽水位が前記基準水位に達していると判定した場合には、前記基準流量の湯張りを行わないことを特徴とする請求項1〜請求項3記載の自動湯張り装置。
【請求項5】 前記制御手段は、前記記憶動作に先立って前記浴槽水位が前記基準水位に達しているか否かを判定し、前記浴槽水位が前記基準水位に達していると判定した場合には、記憶動作を実行しないことを特徴とする請求項1〜請求項3記載の自動湯張り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−269939
【公開日】平成7年(1995)10月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−64107
【出願日】平成6年(1994)3月31日
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【出願人】(000230375)日本ユプロ株式会社 (2)