自動滴定バイレベル圧力支援装置及びその使用法
吸気間及び呼気間に患者に供給される圧力を最適化して患者に快適に患者に供給される圧力を最小化しながら、呼吸不全を治療するバイレベル圧力支援装置(30)及び呼吸不全治療法。圧力発生装置(32)は、吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)の呼吸用気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)の呼吸用気体流を発生する。制御装置(50)は、(1)鼾、(2)無呼吸、(3)呼吸低下又は(4)圧力支援装置内の大量漏洩の状態の少なくとも1つを監視して、これらの状態の何れか1つの発生に基づき、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を独立して調整する。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、米国特許法第120条及び第365条の規定により、2005年9月1日に出願された米国特許出願第11/217,964号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、要約すると、圧力支援装置及び呼吸不全を治療する方法、特に、患者(「被験者」又は「使用者」ともいう)に供給される吸気圧力及び呼気圧力を最適化して、患者に快適に供給される圧力を最小化しながら、呼吸不全を治療するバイレベル(2段階)自動滴定(タイトレーション)圧力支援装置及び圧力支援装置を自動的に滴定する方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
睡眠中に呼吸不全に苦しむ多くの人が存在することは、周知である。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、世界中で数百万人が患う呼吸障害の共通例である。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、通常上気道又は咽頭等の気道閉塞により呼吸不能が発生して反復して睡眠が中断される状態である。気道の閉塞は、上気道体節を安定化させる筋肉の少なくとも一部が全部弛緩して、これにより組織が気道を虚脱させ崩壊させる現象であることが一般に認められている。
【0004】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群を患う患者は、生理的に過度の酸素ヘモグロビン不飽和化のため、完全な又はほぼ完全な空気呼吸換気停止及び睡眠分断を睡眠時に間欠的に体験する。これらの兆候は、臨床上、過度の昼間眠気、心臓不整脈、肺動脈高血圧症、うっ血性心不全及び/又は認識機能障害を誘発することがある。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の他の症例は、睡眠中のみならず覚醒状態中の右心室機能障害及び二酸化炭素蓄積症並びに連続的な減少動脈酸素分圧を含む。睡眠時無呼吸は、潜在的に危険な機器を駆動しかつ/又は動作する間に事故が発生する高い危険性が存在するのみならず、前記要因による過度の死亡率に至る危険がある。
【0005】
完全な気道閉塞を患わない患者でも、気道に部分的な閉塞のみが存在すれば、睡眠から覚醒する別の症状が発生する可能性がある。気道の部分閉塞は、典型的に呼吸低下に見られるような表在(浅い)呼吸の原因となる。呼吸不全の他の症例は、上気道抵抗症候群(UARS)及び通常鼾に見られる咽頭壁の振動等の気道振動を含む。また、上気道抵抗症候群、呼吸低下又は無呼吸を招来する気道閉鎖を伴う鼾もあることも公知である。このように、鼾は、患者が異常な呼吸を体験している信号となる。
【0006】
患者の気道に持続気道陽圧(CPAP)を適用して、前記呼吸障害を治療することは、公知である。有効に開放気道を補強する陽圧は、肺への呼吸通路を開放状態に保持する。患者の呼吸周期又は患者の呼吸動作に対応させて患者に供給する気体圧力を変化させて、患者の快適性を増進させて、陽圧治療を行うことも公知である。この圧力支援技術は、呼気気道陽圧(EPAP)より高い吸気気道陽圧(IPAP)を患者に供給するバイレベル圧力支援法と呼ばれる。
【0007】
患者に持続陽圧を供給し、鼾又は呼吸低下、無呼吸若しくは上気道抵抗症候群を体験する患者から検出する状態に基づき、この圧力レベルを自動的に調節する陽圧治療法も公知である。この圧力支援技術は、圧力支援装置の作動により呼吸不全の治療に必要な圧力レベルでのみ患者に呼吸気体圧力を供給するので、自動滴定型圧力支援法と呼ばれる。
【特許文献1】米国特許第5,245,995号公報
【特許文献2】米国特許第5,259,373号公報
【特許文献3】米国特許第5,549,106号公報
【特許文献4】米国特許第5,845,636号公報
【特許文献5】米国特許第5,458,137号公報
【特許文献6】米国特許第6,058,747号公報
【特許文献7】米国特許第5,704,345号公報
【特許文献8】米国特許第6,029,665号公報
【特許文献9】米国特許第6,138,675号公報
【特許文献10】米国特許第5,645,053号公報
【特許文献11】米国特許第5,335,654号公報
【特許文献12】米国特許第5,490,502号公報
【特許文献13】米国特許第5,535,739号公報
【特許文献14】米国特許第5,803,066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の自動滴定型圧力支援装置の例は、スリバンら名義の上記特許文献1、グルエンケら名義の上記特許文献2、特許文献3及び特許文献4、アクセら名義の上記特許文献5及び特許文献6、バーソン・ジョーンズ名義の上記特許文献7、特許文献8及び特許文献9、レマーズら名義の上記特許文献10、ラッポポートら名義の上記特許文献11、特許文献12、特許文献13及び特許文献14に記載されている。レマーズら名義の特許文献10の例外を除き、前記事前圧力支援装置の全て患者の監視状態に応答する。即ち、異常な呼吸を示す状態が発生すれば、装置は、圧力支援状態を変更して、異常状態を治療する。しかしながら、この治療技術が必ずしも全ての患者に適するとは限らず、一時的に圧力を緩和する例外状態に圧力支援装置を不必要に応答させることもある事実を本発明者らは、発見した。
【0009】
また、前記自動滴定圧力支援装置を作動させて、患者の吸気波形での気体流量が制限される鼾等の患者の状態の1つを治療する試みがなされている。1つ又は2つの状態に集中する前記極小目標治療又は研究法は、多様な変数による影響を受ける本質的に極めて複雑なシステムであるため、患者に適切な治療を行うことができない。
【0010】
また、前記従来の自動滴定装置により患者の状態を検出する複数の異なる研究が行われている。各研究により、呼吸障害を実際に示す患者の状態を検出する性能の改善が試みられている。しかしながら、各研究は、体力を要する方法で多くの患者を監視しかつ治療する能力には限界があると考えられる。
【0011】
最後に、従来の自動滴定圧力支援装置は、例えば、患者の吸気周期と呼気周期とに同一の一定圧力を供給する持続気道陽圧装置である。この方法は、多くの患者に受け入れられるが、最適の圧力支援治療を施し又は全患者を快適に治療できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
よって、本発明の目的は、従来の自動滴定装置の欠点を解決するバイレベル自動滴定圧力支援装置を提供することである。吸気時に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生しかつ呼気時に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する圧力発生装置を備えるバイレベル自動滴定圧力支援装置を提供する本発明の一実施の形態により、前記目的は、達成される。圧力発生装置と患者の気道との間は、患者回路により連結される。監視装置は、患者回路又は圧力発生装置に接続され、患者の気道の気体圧力、患者の気道の気体流量又は気体圧力と気体流量の両方を示す媒介変数(パラメータ)を測定又は監視し、圧力を示す圧力信号、気体流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を出力する。監視装置及び圧力発生装置に接続される制御装置(コントローラ)は、監視装置の出力に基づき、圧力発生装置を制御する。詳細には、制御装置は、プログラム制御されて、(1)鼾、(2)無呼吸、(3)呼吸低下又は(4)圧力支援装置からの大量漏洩の少なくとも1つを監視する。大量漏洩は、如何なる意図的な装置漏洩よりも十分に多量の装置漏洩である。制御装置は、前記状態(1)、(2)、(3)又は(4)の何れか1つの発生に基づき、吸気気道陽圧(IPAP)及び呼気気道陽圧(EPAP)を独立して調整する。
【0013】
本発明の更に別の目的は、前記機能を実行する圧力支援装置による圧力支援治療法を患者に提供することである。
【0014】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の動作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.装置
図1は、本発明の技術的思想によるバイレベル自動滴定技術を実施する圧力支援装置30の基本構成を示す略示図である。圧力支援装置30は、全体を32で示す圧力発生装置と、導管36及び患者界面装置38とを有する患者回路34とを備える。図示の実施の形態では、圧力発生装置32は、圧力発生器40と、圧力発生器40の出力側に接続される圧力制御弁42とを備える。
【0016】
図1の矢印Aで示すように、呼吸気体源から供給される呼吸気体を受ける圧力発生器40は、患者(図示せず)の気道に供給される呼吸気体を図1の矢印Bに示すように大気圧より高い圧力で患者回路34に出力する。本発明の好適な実施の形態では、圧力発生器40は、例えば、気体源からの大気を入口で受ける送風機(ブロワ)、送風器(ベローズ)又はピストン等の機械式圧力発生器である。圧力制御弁42は、患者への呼吸気体流を制限し、図1の矢印Cに示すように、患者回路34からの呼吸気体流を偏向し又は呼吸気体流の制限と偏向の組み合わせにより、患者回路を通じて患者に供給される呼吸気体流の圧力を制御する。
【0017】
本発明は、圧力発生器40の動作速度を単独で制御し又は圧力制御弁42と組み合わせて制御して、患者に供給される呼吸気体流の圧力を制御することを企図する。動作速度を単独で制御して、患者に供給する呼吸気体流の圧力を制御するとき、圧力制御弁42を勿論省略することができる。前記のように、圧力発生器40と圧力制御弁42を単独で又は組み合わせて患者に供給する呼吸気体流の圧力を制御する他の技術も圧力支援装置30に実施できることは、当業者に理解されよう。例えば、圧力発生器40への気体流(図1の矢印A)を制御する流量制御弁(図示せず)を圧力発生器40の上流に設けて、患者に供給される気体出力流の圧力を制御することもできる。
【0018】
呼吸気体源は、通常周辺大気であり、後に、圧力発生装置により呼吸気体が加圧されて患者に供給される。本発明は、酸素源からの酸素又は酸素混合気体等他の呼吸気体源の使用を企図することは、理解できよう。また、本発明は、空気圧力を増加する送風機、送風器又はピストン等の圧力発生器を使用せずに患者回路を経て加圧空気タンクから患者の気道に加圧空気を直接供給できることも企図する。勿論、患者に供給する気体圧力を制御する圧力制御弁42等の圧力調整器も必要となろう。本発明の重要な特徴は、加圧呼吸気体を発生する気体源又は方法を必ずしも必要とせずに、加圧された呼吸気体を患者回路から患者に供給する点である。
【0019】
図1には、図示しないが、本発明は、大気からの一次気体流(矢印A)単独で又はこれに組み合わせて、二次気体流を設けることも企図する。例えば、圧力発生器40の上流又は圧力発生器40の下流に設けられる患者界面装置又は患者回路に適当な気体源から酸素流を供給して、患者に供給される呼吸酸素の比率を制御することができる。
【0020】
図示の実施の形態では、患者回路34の導管36は、圧力発生器40の出力端に接続された一端と、患者界面装置38に接続された他端とを有する。導管36は、圧力発生器40からの気体流を患者の気道に搬送できる何らかの管である。圧力発生器40に対し導管36の遠位端は、患者が自由に運動できる可撓性を有する。種々の部品を患者回路34に設け又は接続できることを理解すべきである。例えば、細菌濾過器、圧力制御弁、流量制御弁、センサ、計量器、圧力濾過器、加湿器及び/又は加熱器を患者回路の内外に取り付けることができる。同様に、消音器及び濾過器等の他の装置を圧力発生器40の入口及び圧力制御弁42の出口に設けることができる。
【0021】
患者回路34内の患者界面装置38は、導管36の端部を患者の気道に連絡する装置である。適当な患者界面装置の例は、鼻マスク、口マスク若しくはマウスピース、鼻/口マスク、鼻カニューラ、気管内チューブ、挿入管、フード若しくは全面型面体(フルフェイスマスク)を含む。適当な患者界面装置の前記リストは、限定列挙でも完全列挙でもないことを理解すべきである。
【0022】
本発明の単一アーム型患者回路では、図1の矢印Dに示すように、患者から排出される気体は、通常排気孔43から患者回路の外部に排出される。図示の実施の形態では、排気孔43は、患者回路34の遠位端に設けられる。圧力制御弁42を圧力発生器に設けても、患者の一回呼吸量及び圧力支援装置30により供給される圧力に依存して、僅かな量の呼気気体が患者回路34から圧力支援装置30に逆流し、圧力発生器の気体入口及び/又は圧力制御弁42を通じて大気中に排出されることもある。
【0023】
排気孔43は、患者回路34の内部を大気に接続する導管内に設けられた開口であり、圧力支援装置からの気体流を積極的に制御する機能はない。しかしながら、広範囲に多様性のある排気装置及び排気孔形態を本発明の圧力発生装置に使用できることは、理解されよう。例えば、ズロコウスキーら名義の米国特許第5,685,296号は、排気装置を通じて呼気流量を患者回路内の圧力範囲にわたりほぼ一定にする呼気装置及び方法を開示する。この呼気装置は、プラトー(吸気の終了後直ちに呼気を開始せずに、そのまま高い気道内圧を維持すること)呼気弁又はPEVと通常指称するこの呼気装置は、本発明の圧力支援装置と共に使用するのに適する。
【0024】
図1に示すように、圧力支援装置30は、患者に供給する気体流量及び気体圧力を監視する全体を44で示す監視装置を含む。図示の実施の形態では、監視装置44は、患者回路34内を流れる呼吸気体の流量を測定する流量センサ46を有する。本発明は、従来の呼吸気流計等の適当なセンサを流量センサ46に使用することを企図する。また、流量センサ46を導管36に直接接続する必要がないことを理解すべきである。これに対し、本発明は、患者回路内の空気流を定量的に測定できる何らかのセンサ又は複数のセンサを使用することも企図する。例えば、圧力支援装置30内の気体流量を患者界面装置で測定することができ、圧力発生器40により呼吸気体の加圧に使用されるモータ若しくはピストンの速度又はトルクから気体流量を測定し又は推定することができる。約言すれば、本発明は、患者に供給する気体流を測定する如何なる従来技術も使用できる。
【0025】
監視装置44は、患者での気体圧力を検出する圧力センサ48も備える。図示の実施の形態では、圧力センサ48は、導管36を介して患者界面装置38に流体接続される。本実施の形態では、導管36内に発生する公知の圧力降下に基づき、患者での圧力が推定される。しかしながら、患者界面装置38で患者での圧力を直接測定できることも理解すべきである。
【0026】
圧力支援装置30は、通常流量センサ46と圧力センサ48で監視される変数を受信し、これらの信号に基づき圧力発生装置32を制御できる制御装置50を備え、制御装置50は、記憶アルゴリズムを実行するマイクロプロセッサが好ましい。制御装置50は、本発明の特徴を実施するのに必要な記憶装置と演算処理能力を勿論備える。本発明の好適な実施の形態では、制御装置50は、Cプログラム言語で書き込まれ記憶されたソフトウェアを実行するAMTEL AT91M55800マイクロコントローラである。
【0027】
情報、データ及び/又は指令信号及び他の如何なる通信可能な事項(包括的に「データ」という)を使用者と制御装置50との間で連絡し又は通信を行う入力/出力インターフェイス52を圧力支援装置30に設けることも、本発明は、企図する。この目的に適する共通の入力/出力インターフェイスの例は、キーボード及び表示装置を備える。本発明は、有線又は無線(ワイヤレス)等の他の接続技術も企図する。例えば、本発明は、ICカードから制御装置50にデータを転送し又は制御装置50からICカードにデータを転送できるICカード端子を設けることを企図する。圧力支援装置と共に使用する他の例、インターフェイス装置及び技術は、限定列挙ではなく、RS-232ポート、CDリーダ/ライタ、DVDリーダ/ライタ、無線周波数リンク及びモデム(電話、ケーブル又はその他)である。要約すれば、本発明は、制御装置50にデータを供給し、受信し、交換する従来の如何なる技術も入力/出力装置52として企図する。
【0028】
また、制御装置50は、従来の漏洩量推定技術と呼吸周期監視技術を実行する。本発明は、圧力支援装置からの気体漏洩量Qleakを計算する従来技術の使用を企図するが、気体漏洩量Qleakは、例えば、排気孔からの意図的漏洩量とマスクと患者との界面からの無作為漏洩量とを含む。本発明は、患者流量Qpatientを決定するときに、漏洩を考慮する従来技術を使用することも企図するが、患者流量Qpatientは、患者の気道での気体流量と、流量センサ46が通常測定する気体流量である全流量Qtotalである。例えば、サンダースら名義の米国特許第5,148,802号、ズロコウスキーら名義の第5,313,937号、サンダースら名義の米国特許第5,433,193号、ズロコウスキーら名義の米国特許第5,632,269号、第5,803,065号及び第6,029,664号、ツルーシェル名義の米国特許第6,360,741号、フランクら名義の米国特許出願第09/586,054号及びジャファリら名義の米国特許出願第09/970,383号は、全て、漏洩を検出しかつ推定し更に漏洩の存在の下で患者に供給する呼吸気体を管理する技術を開示するので、本発明への前記参考文献の各内容を本明細書の一部とする。
【0029】
本発明は、患者の呼吸周期の吸気段階と呼気段階とを検出する如何なる従来技術を使用することも企図する。例えば、サンダースら名義の米国特許第5,148,802号、ズロコウスキーら名義の第5,313,937号、サンダースら名義の米国特許第5,433,193号、ズロコウスキーら名義の米国特許第5,632,269号、第5,803,065号及び第6,029,664号、及びジャファリら名義の米国特許出願第09/970,383号は、全て呼吸周期の吸気段階と呼気段階とを区別する技術を開示する。
【0030】
本発明は、制御装置50により圧力発生装置32を制御して、患者にバイレベル形式の圧力支援を供給することを企図する。バイパップ(BiPAP)とも称するこの形式の圧力制御法では、吸気段階間に患者に吸気気道陽圧(IPAP)が送出され、呼気段階間に患者に低い呼気気道陽圧(EPAP)が送出される。米国特許第5,148,802号、第5,433,193号、第5,632,269号、第5,803,065号、第6,029,664号、第6,305,374号及び第6,539,940号は、バイレベル圧力支援技術を開示し、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0031】
バイレベル圧力支援法では、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との差を圧力支援(PS[Pressure Support])レベルと称する。即ち、圧力支援=吸気気道陽圧−呼気気道陽圧である。本発明は、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を調整して、支援圧力を一定のレベルに保持し、又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整して、治療過程間に圧力支援レベル、呼気気道陽圧及び吸気気道陽圧の両方を変化させる。
【0032】
本発明は、吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルを記憶し、制御し又は監視することを企図する。このように、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して又は同時に調整して、例えば、一定の圧力支援レベルを保持することができる。吸気気道陽圧レベル又は呼気気道陽圧レベルを記憶し、制御し又は監視すること及び圧力支援レベルに基づき、他のレベルを決定し又は制御することも本発明が企図することは、理解すべきである。即ち、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧が既知値であり又は主制御圧力として使用するとき、圧力支援レベルも既知値であれば、他の未知の吸気気道陽圧レベル又は呼気気道陽圧レベルを決定することができる。例えば、吸気気道陽圧レベルを制御して、圧力支援レベルに基づき呼気気道陽圧レベルを調整すれば、制御装置は、呼気気道陽圧レベルを制御する必要がない。本明細書で説明するように、ある状態では、圧力支援レベルを一定にでき、別の状態では、圧力支援レベルを変動可能であることを理解すべきである。逆に、制御装置は、主圧力として呼気気道陽圧レベルを制御し、圧力支援に基づき呼気気道陽圧レベルに従って吸気気道陽圧レベルを調整することができる。
【0033】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して変更できる状態、即ち圧力支援レベルを変更できる状態では、本発明は、圧力支援レベルに最大値(PSmax)と最小値(PSmin)の制約条件を加えることを企図する。本発明の例示的な実施の形態では、最小値PSminは、2cmH2O(水柱センチメートル)に固定され、常に一定値である。このように、圧力支援レベルは、常に2cmH2O又はそれ以上に保持される。圧力支援レベルが2cmH2O未満になるように吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を調整する如何なる試みも、無視され又は無効にされる。最小値PSminを調整でき、それにより使用者が所望レベルを選択でき又は他の基準に基づき調整して、ある状態でのみ最小値(PSmin)未満に圧力支援レベルを低下できることを本発明は、企図する。
【0034】
本発明の例示的な実施の形態では、圧力支援レベルの最大値PSmaxは、使用者が調整可能な設定値である。しかしながら、最大値PSmaxを設定すると、圧力支援装置の動作中、最大値PSmaxは、常に一定値に保持される。このように、圧力支援レベルは、最大値PSmaxを超えず、圧力支援レベルが最大値PSmaxを超えて吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を調整する如何なる試みも、無視され又は無効にされる。最大値PSmaxを一定値に固定して、即ち使用者が最大値PSmaxを調整できず又はある基準に基づいて調整すると、圧力支援レベルが最大値(PSmax)を超えられることも本発明は、企図する。
【0035】
B.優先順位化された制御装置
本発明の技術的思想に従い圧力支援装置30が実施する自動滴定技術は、制御装置50に基づき実施され、優先順位化された複数の制御装置100の組として有効に機能するように制御装置50は、プログラム制御され、各制御装置100又は制御装置階層内の制御層が競合して圧力支援装置の制御し、圧力発生装置により患者に供給する圧力が制御される。
【0036】
図2は、図の右側に数字(1)〜(8)で示す各制御層の優先順位で順位付けされる制御装置を示す。第(1)順位を有する図の最上部の制御層は、最高優先順位の制御装置であり、他の全ての制御装置より先行する。第(8)順位を有する図の最下部の制御層は、他の制御装置が動作していないときのみ作動される最低優先順位の制御装置である。
【0037】
また、制御装置50は、複数の検出器又は検出モジュール102の組及び複数のモニタ又は監視モジュール104の組を有効に形成するようにプログラム制御されるので、各検出モジュール及び必要に応じて各監視モジュールは、各制御層に作動連結される。検出モジュール102は、圧力センサ48、流量センサ46又はそれらの両方からの信号をそのまま未処理入力として受信する。また、検出モジュール102は、連動する監視モジュールに入力信号を付与するのに必要な信号処理を実行する。監視モジュール104は、関連する検出モジュールの出力を受信して、関連する制御モジュールの作動を要求する基準が満足されるか否かを決定する。基準を満足するとき、圧力支援装置の制御に対する要求が要求プロセッサ106に付与されるので、要求プロセッサ106は、この要求を実行する監視モジュールに関連する制御モジュールに制御を振り向けるべきかを決定する。制御装置50により実行されるアルゴリズムは、圧力支援装置の要求する制御である制御層の優先順位に基づく要求処理機能を実行する。
【0038】
制御層の1つの制御装置を作動すると、その制御装置は、圧力支援装置の作動を制御し、制御装置を作動する状態が解消され又はより高い優先順位の制御装置が動作を引き継ぐまで制御を維持する。制御中に、各制御装置は、例えば、圧力発生装置を通じて圧力支援装置から出力される圧力を調整するように、制御機能を実行することにより特定の事象/状態を処理する。各制御装置は、処理すべき事象/状態の形式に基づき、独自の方法で作動する。
【0039】
本発明は、圧力支援装置が超えられない複数の絶対圧力限界値である規定最小圧力Pmin及び規定最大圧力Pmaxを設定することを企図する。圧力の調整法に関する付加的な制約条件を有する制御装置も勿論ある。
【0040】
図2の点線108は、圧力支援装置の状態に基づく制御層と、患者の監視状態に基づく制御層との区別を表す。即ち、点線108より上の優先順位(1)〜(3)の制御層は、圧力支援装置の状態のみに基づき圧力支援装置30の作動を制御する機械ベースの制御層である。これに対し、点線108より下の優先順位(4)〜(8)の制御層は、患者の監視状態に基づき圧力支援装置を制御する患者ベースの制御層である。
【0041】
また、監視する圧力、流量又は圧力と流量の両方に基づき制御する制御層と、患者が圧力支援装置をオンしたか又は圧力傾斜モードを作動したか否か等の手動入力に基づき作動する制御層とに制御層を更に細別することができる。本発明の好適な実施の形態では、最初の2つの制御層、即ち、優先順位(1)及び(2)を有する制御層が患者又は使用者からの手動入力に基づく制御層である。
【0042】
C.第1優先順位制御層及び第2優先順位制御層
第1の優先順位にある制御層は、入力/出力装置52からの入力信号110を受信する。第1の優先順位にある制御層では、入力信号は、通常患者が圧力支援装置をオン又はオフするオン/オフスイッチ又はボタンからの表示信号である。患者が圧力支援装置をオフにすれば、他の全ての圧力制御に優先して当然にこれが行われ、本発明では、これが制御層の階層に最高優先順位を付与する所以である。オン/オフスイッチ又は下記の自動オン/オフ法等の他の類似の装置からの信号によって、オン・オフ検出層112は、患者が圧力支援装置を付勢、即ち作動したか、消勢、即ち停止したかを決定する。オン・オフ検出層112の決定は、オン/オフスイッチの作動時に圧力支援装置が既に作動しているか否かに勿論依存する。最高優先順位にある限り、オン/オフ表示信号は、要求プロセッサ106に付与され、他の全ての制御動作は、無視されるので、圧力支援装置の制御は、オン/オフ制御装置114に振り向けられる。
【0043】
オン/オフ制御装置114は、圧力支援装置の作動又は停止に好ましい又は必要な如何なる機能も実施する。例えば、圧力支援装置を停止するとき、圧力支援装置は、圧力発生装置32をオフに切り換える上に、現在の圧力設定値、準拠情報及び他の情報をメモリ又は他の記憶装置内に記憶する等の過程を実行することができる。使用者が圧力支援装置を作動するとき、圧力支援装置は、メモリ又はICカードから情報を読み出し、入力装置から入力設定値を読み出し、診断機能を実行し、低優先順位検出モジュール、監視モジュール及び制御モジュールをリセットし、圧力発生装置をオンする等の動作過程を実行する。
【0044】
また、第2の優先順位の制御層は、入力/出力装置52から入力信号を受信する。第2の制御層では、入力信号は、通常患者が圧力傾斜モードを作動したか否かの圧力傾斜動作ボタンからの表示信号である。オン/オフスイッチ又は他の類似の装置からの信号を受信する圧力傾斜検出層116は、患者が圧力傾斜動作ボタンを作動したか否かを決定する。患者が圧力傾斜作動ボタンをオンすれば、第2の最高優先順位にあると認められる限り、圧力傾斜作動要求信号が、要求プロセッサ106に付与され、オン/オフ制御以外の他の全ての制御動作が無視されて、圧力傾斜制御装置118に制御が移行する。
【0045】
圧力傾斜制御モジュール118は、圧力支援装置を通じて、予め決められた期間又は予め決められた回数の呼吸周期の間、圧力支援装置の最低値等の低設定値に吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧レベルを減少させる。本発明は、単に圧力を降下させずに、従来の圧力傾斜法を使用して、患者に傾斜圧力を供給することも企図する。
【0046】
要するに、圧力支援装置の制御を実行する圧力傾斜制御装置118は、患者に供給される現在の吸気気道陽圧レベル及び呼気気道陽圧レベルを無効にしかつ圧力発生装置32を制御して、比較的低い吸気気道陽圧レベル及び呼気気道陽圧レベルの呼吸気体流が患者に供給される。時間ベース又は事象ベース(所定回数の呼吸周期の経過に基づく)により決定できる傾斜圧力持続時間が終了した後に、圧力傾斜制御が解除され、他の制御層が圧力支援装置の制御を引き継ぐ。圧力傾斜特性が実際の傾斜圧力を含むとき、5〜45分程度の期間又は予め決められた回数の呼吸周期にわたり吸気気道陽圧レベル及び呼気気道陽圧レベルが増加される。例示的な実施の形態では、支援圧力(PS)を一定に維持して吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧が増加される。その後、圧力傾斜制御が解除され、他の制御層が圧力支援装置の制御を引き継ぐ。本発明による本実施の形態の目標は、圧力支援装置により付与される圧力を患者が手動で無効にして、圧力を比較的低いレベルに減少し、比較的低い圧力下で患者が睡眠を取り、その後、患者が治療に有効な圧力を受けられることにある。
【0047】
本発明の更なる実施の形態は、傾斜圧力動作間でも圧力支援装置を呼吸事象に応答させる傾斜圧力動作を実行することも企図する。例えば、この「好適な圧力傾斜」の例を、図31〜図33に示す。本実施の形態では、例えば、圧力傾斜過程間でも他の制御装置層により、吸気気道陽圧(図32)、呼気気道陽圧(図示せず)又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方(図33)を調整することができる。
【0048】
図31に示すように、時点700での圧力傾斜周期作動時に、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、比較的急速に低下される。例示的な実施の形態では、呼気気道陽圧がEPAPminレベルより低く設定されるEPAPRampレベルに達するまで、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、低下される。この圧力減少の間、圧力支援レベルは、一定に保持される。このように、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の圧力減少は、同一の圧力減少速度又は圧力傾斜を有する。
【0049】
別の実施の形態では、呼気気道陽圧値は、EPAPRampに達するまで低下し、吸気気道陽圧値は、EPAPRamp+PSminに相当する値に達するまで低下する。従って、圧力支援レベルは、一定に保持されず、吸気気道陽圧値及び呼気気道陽圧値は、同一の時点で各最小値に達する。このように、圧力傾斜周期の開始時に、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の減少は、同一ではない。
【0050】
時点702では、呼気気道陽圧は、EPAPRampに達して、圧力減少が終了する。時点702の吸気気道陽圧レベルは、EPAPRamp+PSである。別の実施の形態では、吸気気道陽圧レベルは、EPAPRamp+PSminである。図示の実施の形態では、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧は、時点704に達するまでの短期間、この比較的低いレベルに保持される。吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の上昇圧力傾斜は、時点704で開始する。患者に供給される呼気気道陽圧がEPAPminに達する時点706まで、圧力傾斜周期間の圧力増加は、継続される。EPAPminは、圧力支援装置が患者に供給する最小呼気気道陽圧レベルである。即ち、圧力傾斜周期間以外では、圧力支援装置は、呼気気道陽圧をEPAPmin未満に低下させない。
【0051】
図示の実施の形態では、圧力傾斜周期の圧力増加部は、時点704で開始して時点706で終了する直線形状(線形)を有する。しかしながら、他のグラフ形状又は特性で増加する吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両圧力を本発明が企図することも理解されよう。また、例えば、オグデン名義の米国特許第5,682,878号に記載されるように、何れかの圧力又は両方の圧力のグラフ形状を使用者が選択できてもよく、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。本発明は、図示の形状以外の全グラフ形状で全圧力傾斜周期が変化することも企図する。例えば、「U」形状、放物線形状、傾斜放物線形状等の波形で圧力が変化するように、圧力減少及び圧力増加を制御することができる。また、呼気気道陽圧がEPAPRampに達する時点702で圧力傾斜周期の圧力増加部を開始することにより、本発明は、時点702と時点704との間の圧力保持期間を有効に省略することを企図する。
【0052】
本発明の例示的な実施の形態では、圧力増加始期(時点704)と圧力増加終期(時点706)との間の圧力傾斜周期の圧力増加持続時間を圧力支援装置に予め設定し又は使用者が設定することができる。圧力増加持続時間を設定し又は決定すると、その持続時間の終期に、圧力がEPAPminに達しかつ呼気気道陽圧と吸気気道陽圧が適切な方法で増加するように、圧力支援装置は、適切な圧力増加角度、即ち圧力傾斜又は圧力増加速度を決定する。
【0053】
また、圧力傾斜持続時間を患者が選択でき、制御装置に事前にプログラム制御しかつ/又は圧力傾斜作動装置が既に作動したか否かに圧力傾斜持続時間を依存させることもできる。例えば、エステスら名義の米国特許第5,492,113号、第5,551,418号、第5,904,141号、第5,823,187号及び第5,901,704号は、最初に圧力傾斜モードを作動させて、圧力支援装置により第1の持続期間を有する傾斜圧力を供給し、次に、第1の持続期間より通常短い第2の持続期間を有する傾斜圧力を圧力支援装置により供給する圧力傾斜技術を示し、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。圧力傾斜制御装置118の作動に前記特徴を組み込んで、各傾斜圧力の圧力波形及び持続時間を決定することができる。
【0054】
本発明は、圧力持続時間ではなく、圧力勾配を設定し又は圧力増加の勾配を使用者が設定することも企図する。これは、圧力増加の形状又は変化特性を選択する装置を設け又は圧力増加の形状又は変化特性を使用者が選択するのと同様である。圧力勾配が既知であり又は決定されれば、呼気気道陽圧がEPAPminに達するまで、圧力支援装置は、その圧力勾配に沿って吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を増加させる。
【0055】
上記のように、本発明は、圧力傾斜周期間、特に、圧力傾斜周期の圧力増加期間中に、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方の変更を企図する。図32は、呼気気道陽圧を変更せずに、時点710で吸気気道陽圧を増加する状態を示す。例えば、鼾を検出して吸気気道陽圧を選択し若しくは制御圧力として吸気気道陽圧を使用するとき又は圧力増加間に患者が呼吸低下のみを体験していると認められるとき、この状態を発生することがある。呼気気道陽圧が変化しないので、この変更により圧力傾斜持続(圧力増加)期間は、変化しない。
【0056】
本発明は、圧力傾斜による圧力増加速度又は圧力増加勾配を増加前の数値に戻すことを企図する。時点710前の吸気気道陽圧の勾配714は、この圧力増加後の吸気気道陽圧の勾配716と同一である。要するに、圧力増加718は、単に圧力傾斜周期の圧力増加部間の吸気気道陽圧波形の短期勾配変化に過ぎない。図32の破線は、圧力増加718が発生しなかった吸気気道陽圧の波形を示す。本発明は、圧力増加718の形状と期間も選択でき、制御でき又は予め設定でき、図示の比較的直線的な圧力増加に加えて、如何なる要求される圧力増加特性も備えることを企図する。
【0057】
また、本発明は、治療圧力が増加しても、圧力傾斜持続時間を一定値に保持することも企図する。この場合、例えば、呼気気道陽圧が増加すると、呼気気道陽圧の傾斜圧力増加を同一の時点で終了するように、圧力傾斜の勾配が再計算される。吸気気道陽圧の増加を同様に再計算することができる。
【0058】
図33は、圧力傾斜周期の圧力増加間に時点712で吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧の両方を増加する状態を示す。圧力傾斜間に吸気気道陽圧波形と呼気気道陽圧波形に圧力増加720と722が各々生じる。例えば、吸気気道陽圧が増加すれば、呼気気道陽圧レベルも増加して適正な圧力支援レベルを保持しなければならず、逆に呼気気道陽圧が増加すれば、吸気気道陽圧レベルも増加して適正な圧力支援レベルを保持しなければならないので、圧力の同時増加が発生する。この種の圧力増加に至る状態の例を本明細書中に説明する。
【0059】
前記実施の形態のように、圧力増加720,722後の吸気気道陽圧波形及び呼気気道陽圧波形の速度又は勾配は、圧力増加前と同一である。圧力増加722により増加する呼気気道陽圧レベルは、圧力増加が生じない場合(時点726)よりも早く時点724でEPAPminに達する。このように、圧力増加722は、圧力傾斜周期の持続時間を効果的に短縮する。
【0060】
呼気気道陽圧に対して圧力傾斜周期を測定するとき、即ち呼気気道陽圧がEPAPRampに等しいとき(EPAP=EPAPRamp)、圧力増加を開始し、呼気気道陽圧がEPAPminに等しいとき(EPAP=EPAPmin)終了するが、呼気気道陽圧ではなく、吸気気道陽圧を制御圧力として使用できることも本発明が企図することは、理解されよう。圧力傾斜周期の傾斜増加間に吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はこれらの両圧力を低下できることも理解されよう。図33に示す実施の形態では、呼気気道陽圧レベルが低下するとき、圧力傾斜周期の持続時間を有効に延長できる。
【0061】
D.流量限定制御層
第3の優先順位が割り当てられた流量限定制御(FLC)層は、流量センサ46から流量信号を受信する流量限定制御(FLC)検出モジュール120を備える。流量限定制御検出モジュール120は、全流量Qtotal(Qtotal=Qpatient+Qleak)を経験値又は実験値から得られる圧力対流量曲線124と比較して、全装置漏洩又はマスク離脱状態等の患者との分離状態が発生しているか否かを決定する。図3は、この比較に使用する圧力対流量特性を示すグラフである。
【0062】
圧力支援装置は、患者に何の圧力を供給すべきかを認識しているので、図3に示すように、圧力支援装置の動作圧力(水平軸)は、圧力センサ48を介して測定され又は既知の値かの何れかである。圧力対流量曲線124は、適合値でも超過値でも患者分離状態を表わす各動作圧力レベルの種々の流量を示す。換言すれば、流量限定制御検出モジュール120は、全流量Qtotalを座標化し、全流量Qtotalは、図3に示すグラフ上の既知作動圧力に対する患者回路34内の流量として流量センサ46により直接測定される。座標点126と128で示すように、全流量が曲線124上又はそれ以上にあるとき、流量限定制御検出器は、患者切断状態にあると判断する。このように、流量限定制御検出器は、患者界面装置38が患者から分離し又は何らかの他の非接続状態が患者回路発生したものと判断する。しかしながら、座標点130に示すように、全流量Qtotalが曲線124の下方になれば、流量限定制御検出モジュール122は、患者に対する患者切断状態にないと判断する。
【0063】
本発明の例示的実施の形態では、患者が呼吸周期の吸気段階にあるか又は呼気段階にあるかに係わらず、現在の測定出口圧力と測定全流量とが流量限定制御層に使用される。他の実施の形態では、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は呼吸全体の平均圧力等の吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との組み合わせを流量限定制御層に使用することができる。
【0064】
圧力対流量グラフの圧力対流量曲線124は、圧力支援装置に使用されるハードウェアに特定のものであることが理解できよう。例えば、患者回路が長い程、呼吸気体流の圧力降下が大きくなるので、患者切断状態を示す圧力流量特性は、短い患者回路の圧力支援装置に発生する圧力流量特性とは相違する。前記のように、特定の圧力支援装置に対する圧力流量特性124を実験的に決定することが好ましい。装置部品の組み立て時に選択される特殊な相互関係について、多くの実験的特性を予め決定しておくことも勿論できる。
【0065】
再び、図2について説明すると、流量限定制御検出モジュール120が患者切断状態を決定するとき、患者流量が流量限定制御曲線124の上方にある持続時間を監視する流量限定制御検出モジュール120は、患者切断状態の表示を与える。例えば、7秒の予め決められた時間中に流量限定制御検出モジュール120の出力が示すように、流量限定制御曲線124上又はその上方に全流量が存在すれば、制御要求信号は、要求プロセッサ106に送出される。流量限定制御監視モジュール122からの要求信号には、第3の最高優先順位が付与され、オン/オフ制御装置114と圧力傾斜制御装置118以外の他の全ての制御動作が無効にされ、流量限定制御装置132に制御が振り向けられる。
【0066】
7秒遅延時間の目的は、流量限定制御曲線の外側に全流量が一時的に移動する患者の深い吸気作用を患者切断状態と誤認せず、漏洩を正確に判断するためである。一時的な患者誘発流量を切断状態と誤認しない限り、他の持続時間遅延装置を使用できることは、理解できよう。また、本発明は、例えば、90秒等の比較的長い時間、流量限定制御状態が存続するとき、患者は、患者界面装置を除去したものと判断される。何れの場合でも、圧力支援装置は、周知の自動オン/オフ技術を介して、圧力支援装置自身を自動的にオフに切り換える。患者が圧力支援装置を使用しているか否かに依存して又は自動的に圧力支援装置をオフに切り換える技術を示すエステスら名義の米国特許第5,551,418号を参照されたい。
【0067】
流量限定制御装置132を作動させれば、他の方法で圧力支援装置から供給する圧力/流量を制御しなくても、使用者は、患者に供給される吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を低レベルに低下させて、切断状態を修正できる。例示的な実施の形態では、支援圧力を一定に保持するように、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧が低下される。例えば、主圧力としての吸気気道陽圧を制御しかつ圧力支援レベルに基づき呼気気道陽圧レベルを設定することにより、これを達成できる。流量限定制御装置132により送出される前記低吸気気道陽圧と呼気気道陽圧レベルは、患者が不快感を感じずにマスクを再装着できるように十分低いが、圧力支援装置が患者によるマスク再装着時を検出するのに十分に高いレベルでなければならない。
【0068】
切断状態が修正されるまで、即ち、測定した全流量が流量限定制御曲線124の下方に該当して流量限定制御監視モジュール122による制御が要求されなくなるまで又は自動オフ機能を開始する時間が経過するまで、流量限定制御装置132は、圧力発生装置により呼吸気体流量を前記低圧力レベルで供給し続ける。本発明の好適な実施の形態では、患者切断状態が修正されるとき、流量限定制御装置132は、患者に供給する吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を傾斜させて、以前の圧力レベルに戻し正常な流量の呼吸用気体が供給される。
【0069】
E.鼾制御層
第4の優先順位が割り当てられる鼾制御層は、圧力センサ48及び/又は流量センサ46等の監視装置44からの入力信号を受信して、これらの情報から患者が鼾を体験しているか否かを決定する鼾検出モジュール140を備える。本発明は、例えば、全てアクセら名義の米国特許第5,203,343号、第5,458,137号及び第6,085,747号に見られるように、何らかの従来の鼾検出技術を使用して、患者が鼾を体験しているか否かを決定することを企図する。しかしながら、本発明の好適な実施の形態では、ツルーシェルら名義の米国特許出願第10/265,845号の開示により、患者が鼾を体験しているか否かを決定するが、この米国特許出願の内容を参照により本明細書の内容の一部とする。
【0070】
本発明は、呼吸周期の吸気段階又は呼気段階で鼾事象が発生するか否かに基づき、鼾事象を識別することを企図する。呼吸周期の何れかの段階中に、名目上鼾事象か否かを表す閾値をある付加的な単一又は複数の媒介変数に依存して、図1の圧力センサ48により測定することがある。より高い圧力に対して、鼾検出閾値を上昇できることもあるが、鼾事象を検出することが一層困難となる。各呼吸段階に対して鼾検出閾値を独立して設定することもできる。これは、圧力等の特殊な媒介変数に対し、吸気段階間の鼾事象を表示する閾値がより高いか、低いか又は呼気段階間の閾値設定値と同じであることを意味する。圧力に加えて、他の媒介変数又は組み合わせ媒介変数を使用して鼾事象を表示する閾値を設定することができる。
【0071】
鼾検出モジュール140は、鼾事象を表示する毎に、鼾監視モジュール142への出力を発生する。鼾監視モジュール142は、検出した鼾事象に基づき、要求プロセッサ106から圧力支援装置の制御要求を始動すべきか否か決定する。現在の好適な実施の形態では、鼾事象の数を計数するカウンタと、2つの鼾事象間の時間間隔を測定するタイマとが鼾監視モジュール142に設けられる。最後の鼾事象から30秒以内に鼾事象が起こらなければ、カウンタは、零にリセットされる。カウンタが3に達すると、制御要求信号が要求プロセッサ106に送出される。このように、3つの鼾事象が発生し、各鼾事象が最後の鼾事象から30秒より長くないとき、制御要求が開始される。この要求は、30秒経過後に終了し、鼾監視モジュール142内の鼾カウンタがリセットされる。
【0072】
鼾監視モジュール142からの要求には、第4の最高優先順位が割り当てられ、オン/オフ制御装置114、圧力傾斜制御装置118及び流量限定制御装置132以外の他の全ての制御動作が無効にされるので、制御は、鼾制御装置144に振り向けられる。要求過程により鼾制御装置144に制御が割り振られれば、鼾制御装置は、圧力発生装置32により患者に供給される呼気気道陽圧レベルを1.0cmH2O等の所定量だけ上昇させる。好適な実施の形態では、15秒毎に1cmH2Oの上昇速度で圧力が増加される。本例示的な実施の形態では、吸気気道陽圧は、変化しない。その結果、圧力支援レベルの最小値PSmin以上である限り、圧力支援レベルが低下する。吸気気道陽圧に向って呼気気道陽圧を増加する結果、圧力支援レベルが最小値PSminに達すると、圧力支援レベルが最小値PSminで一定に保持される。この場合、呼気気道陽圧が更に増加すると、圧力支援レベルを最小値PSmin以上に保持するため、吸気気道陽圧も増加する。
【0073】
鼾制御装置144は、制御を解除し、バックグラウンドタスクとして1分動作停止期間を設定する。圧力増加の終端での吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルは、それぞれ鼾治療吸気気道陽圧レベルと鼾治療呼気気道陽圧レベルとして記憶される。前記鼾治療吸気気道陽圧レベルと鼾治療呼気気道陽圧レベルは、患者に比較的良好な治療を施して患者が経験する多くの呼吸疾患を治療できる圧力レベルを示すと思われる。
【0074】
例えば、別の状況で鼾制御装置が圧力を増加させる付加的な鼾事象が発生するとき、動作停止期間は、他の呼気気道陽圧増加による圧力支援装置の患者への過治療も防止する。しかしながら、鼾監視モジュール142が要求する前記基準に適合する付加的な鼾事象が発生しかつ動作停止期間が経過したとき、鼾監視モジュールは、再び制御を要求し、要求が容認されるとき、鼾制御装置144は、再び吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を増加(最大圧力設定点まで)する。これらの新しい吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、鼾治療圧力として記憶される。
【0075】
前記本実施の形態では、呼気気道陽圧レベルは、制御された圧力である。しかしながら、本発明は、鼾制御装置により吸気気道陽圧を制御できることも企図する。即ち、鼾制御装置144に制御を与えれば、鼾制御装置は、圧力発生装置32により、例えば1.0cmH2Oの予め決められた量だけ患者に供給される吸気気道陽圧レベルを上昇させる。好適な実施の形態では、15秒毎に1cmH2Oの上昇速度で圧力が増加される。この例示的な実施の形態では、呼気気道陽圧は、変化しない。その結果、圧力支援レベルが圧力支援レベルの最大値PSmaxを超えない限り、圧力支援レベルは、増加する。呼気気道陽圧から離れて吸気気道陽圧が増加する結果、圧力支援レベルが最大値PSmaxに達すると、圧力支援レベルは、最大値PSmaxで一定値に保持される。この場合、吸気気道陽圧が更に増加すると、最大値PSmax又はそれ以上に圧力支援レベルを保持するため、呼気気道陽圧も増加する。
【0076】
圧力支援装置の制御を要求する時期を決定するのに鼾監視モジュール142に使用される鼾事象の数、鼾制御装置144が供給する吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の増加量及び増加速度並びに閉鎖持続時間の長さを変更することができる。
【0077】
F.大量漏洩制御層
第5の優先順位が割り当てられる大量漏洩制御層は、推定される患者回路漏洩量Qleakを分析して、それを実験的に習得した圧力対流量曲線と比較する点において流量限定制御層に幾分近似する。しかしながら、大量漏洩制御層は、患者が患者界面装置を除去したか否か又は患者回路の切断若しくは他の大量漏洩事象が発生したか否かを決定する動作を行わない。むしろ、大量漏洩制御層は、圧力支援装置からの推定漏洩量が信頼性のある動作範囲を超える時期を決定する動作を行う。
【0078】
大量漏洩制御層は、流量センサ46から流量信号を受信する大量漏洩検出モジュール150を備える。大量漏洩検出モジュール150は、何らかの従来の漏洩推定技術を使用して、流量信号から推定漏洩量Qleakを決定し、この情報を大量漏洩監視モジュール152に送出する。大量漏洩監視モジュール152は、推定漏洩量を実験的に習得した曲線と比較して、圧力支援装置からの漏洩が最悪症例漏洩量を超えるか否かを決定する。
【0079】
再び、図3について説明すると、圧力支援装置で作動する吸気気道陽圧(水平軸)は、公知である。曲線154は、超過しても、最悪症例装置漏洩量より大きい漏洩量を表す各動作吸気気道陽圧レベルの種々の流量を示す。換言すれば、大量漏洩監視モジュール152は、図3に示すグラフ上の既知動作吸気気道陽圧に対する推定漏洩量Qleakをグラフで表すものである。座標点126、128及び130で示すように、推定漏洩量が曲線154の上方にあれば、推定漏洩量は、圧力支援装置の信頼性のある動作範囲を構成する漏洩流量を超える。例えば、患者界面装置が患者から部分的に外れて、使用している患者回路の型式に予想される漏洩量より多量の気体が患者回路から漏洩しているとき、これが発生する。しかしながら、座標点156及び158で示すように、推定漏洩量Qleakが曲線154上又はそれより下方にあれば、大量漏洩監視モジュール152は、装置漏洩の許容可能なレベルであると判断する。
【0080】
本発明の更なる実施の形態は、漏洩流量が大きい漏洩か否かを決定するときに平均動作圧力を使用することを企図する。本発明は、大量漏洩が存在するか否かを決定する基準圧力として、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は他の何らかの吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との組み合わせを使用することも企図する。
【0081】
圧力流量グラフの曲線154の特殊な特性は、圧力支援装置に使用するハードウェアに特定のものである。例えば、異なる排気流量を生ずる異なるサイズの排気装置には、異なる圧力流量特性が必要である。特定の圧力支援装置に対する圧力対流量特性154を実験的に決定することが好ましい。装置部品の組立時に選択される特殊な特性に対し多くの経験的特性を予め決定することも勿論できる。
【0082】
図2に示すように、大量漏洩監視モジュール152により大量漏洩状態を検出するとき、制御要求は、要求プロセッサ106に送出される。前記のように、大量漏洩監視モジュール152からの要求には、第5の最高優先順位が割り当てられ、オン/オフ制御装置114、圧力傾斜制御装置118、流量限定制御装置132及び鼾制御装置144以外の他の全ての制御動作が無効にされ、制御が大量漏洩制御装置162に振り向けられる。
【0083】
大量漏洩制御装置162に制御が振り向けられると、大量漏洩制御装置162は、圧力発生装置32により、患者に供給される吸気気道陽圧を予め決められた期間の間予め決められた比率で予め決められた量だけ低下させる。例示的な実本施の形態では、呼気気道陽圧は、変更されない。その結果、圧力支援レベルが最小値PSmin又はそれ以上である限り、吸気気道陽圧の低下時に、圧力支援レベルが低下する。例えば、本発明の現在好適な実施の形態は、10秒間にわたり1cmH2Oだけ患者に供給される吸気気道陽圧を低下させて、2分間この新しい圧力に保持することを企図する。圧力支援レベルが最小値PSminに達すれば、圧力支援レベルは、最小値PSminで一定に保持される。その結果、圧力支援レベルを最小値PSmin又はそれ以上に保持するため、吸気気道陽圧の更なる減少と共に、呼気気道陽圧も低下される。
【0084】
大量漏洩監視モジュール152を満足させるのに必要な基準に適合する限り、大量漏洩検出モジュール152は、大量漏洩制御装置162が圧力支援装置の制御を実行することを要求し続ける。再び、要求が認められれば、圧力を保持する2分経過後に、大量漏洩制御装置162は、大量漏洩状態が解消され又は最小吸気気道陽圧若しくは最小呼気気道陽圧に到達するまで、吸気気道陽圧減少を反復し、その過程を保持する。また、この制御層による制御を解除する前に、例えば、90秒の予め決められた期間中に大量漏洩状態を解除しなければならない。
【0085】
大量漏洩制御層では、この吸気気道陽圧の降下により少なくとも僅かに患者を刺激する可能性がある。この刺激により患者が寝返りをうち、不注意でマスクを移動させ又は覚醒し、マスクを調節すれば大量漏洩状態が解消されると考えられる。また、吸気気道陽圧を低下することにより、患者界面装置を再配置すれば、大量漏洩状態を解消できると思われる。
【0086】
G.無呼吸/呼吸低下制御層
第6の最高優先順位を割り当てられる無呼吸/呼吸低下(A/H)制御層は、監視装置44、特に流量センサ48からの入力信号を受信して、この情報から患者が無呼吸又は呼吸低下を体験しているか否かを決定する無呼吸/呼吸低下検出モジュール164を有する。この決定は、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166に供給され、無無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、呼吸/呼吸低下制御モジュール168が圧力発生装置を制御することを要求すべきか否かを決定する。
【0087】
本発明は、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164が加重最高流量として吸気最高流量の変化を監視して、下記に詳述するように、加重最高流量(Qwpeak)から患者が無呼吸又は呼吸低下を体験しているか否かを決定することを企図する。このように、無呼吸/呼吸低下制御層の動作を理解するため、本発明では加重最高流量(Qwpeak)の決定法をまず理解する必要がある。
【0088】
G−1.加重最高流量
図5は、患者流量の例示的吸気波形170を示すグラフで、図4A〜図4Cは、実際の最高流量と本発明により使用する加重最高流量Qwpeakとの差を表すグラフである。それぞれ異なる例示的吸気波形172、174及び176を表す図4A〜図4Cでは、実際の最高流量Qpeakは、吸気波形の頂点にある。図4A〜図4Cから、最高流量は、短時間の臨床値を有することを理解できよう。例えば、図4Cでは、吸気開始の際に超過する流量のため、最高流量を誇張して示す。このため、本発明は、Qpeakを使用しない。その代わりに、本発明は、図4A〜図4Cに点線で示す近似位置の加重(補正)最高流量Qwpeakを使用する。
【0089】
図5に示すように、例えば、流量波形170の吸気波形に対するQwpeakを決定するため、本発明は、吸気波形の開始点180と終了点181とをまず決定する。従来技術を使用してこれを決定できる。次に、吸気流量の全容量を計算する。これもまた従来技術を使用して計算できる。続いて、圧力支援装置は、5%容量(点182)、20%容量(点184)、80%容量(点186)及び95%容量(点188)に相当する吸気波形上の点を決定する。次の過程では、平坦真円度基線(FRB)及び真円度基線(RB)の2つの基線レベルを決定することが必要である。
【0090】
5%容量点と95%容量点との間の波形上の点の全流量値を、5%容量点及び95%容量点での流量値と比較することにより、平坦真円度基線(FRB)が決定される。平坦真円度基線(FRB)の設定に使用される5%と95%との間の点の範囲から最低点を見つけるため、これが行われる。前記2点182,188間に最低点で引く線は、平坦真円度基線(FRB)を形成する。
【0091】
20%容量点と80%容量点との間の波形上の点の全流量値を20%容量点と80%容量点での流量値と比較することにより、真円度基線(RB)が決定される。真円度基線(RB)の設定に使用される20%と80%との間の点の範囲から最低点を見つけるため、これが行われる。前記2点184,186間に最低点で引く線は、真円度基線(RB)を形成する。
【0092】
この装置は、それぞれ平坦真円度基線(FRB)と真円度基線(RB)とに基づき、平坦度平坦基線(FFB)と平坦度基線(FB)との更に2つの基線も計算する。詳細には、平坦度平坦基線(FFB)は、平坦真円度基線(FRB)の上方で5%容量点と95%容量点との間の全流量測定点の平均値として決定される。多くの場合、これは、図5に示すように、5%容量点と95%容量点との間の流量測定点に対応する。しかしながら、平坦真円度基線(FRB)を図5に示す5%容量又は95%容量より下方にすることは、可能である。平坦真円度基線(FRB)の開始点から終了点までの流量測定点の平均値を見つけることは、図5の領域Aと領域Bとの大きさを決定し、この大きさを5%容量と95%容量との間の経過時間(T5%-95%)で除した値に等しい。
【0093】
平坦度基線(FB)は、20%容量点と80%容量点との間で真円度基線(RB)より上方の全流量測定点の平均値として決定される。多くの場合、これは、20%容量点と80%容量点との間の全測定点の平均値に相当する。しかしながら、真円度基線(RB)を図5に示す20%容量又は80%容量より下方にすることも可能である。真円度基線(RB)の開始点から終了点までの流量測定点の平均値を見つけることは、図5の領域Bの大きさを決定し、この大きさを20%容量と80%容量との間の経過時間(T20%-80%)で除した値に等しい。平坦度基線(FB)レベルは、加重最大流量Qwpeakである。
【0094】
G−2.無呼吸/呼吸低下検出基準モデル化
無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、全期間を通じて加重最大流量Qwpeak情報を収集し、モデル加重最大流量QWPMを決定するが、モデル加重最大流量QWPMは、下記に詳述する呼吸低下及び無呼吸決定過程を実行する際の比較に使用される。特に、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、4分の移動窓(時間枠)に亘り発生する吸気呼吸の加重最大流量を監視する。本発明は、この移動窓の時間が4分以外の1〜6分等の時間でもよいことを更に企図する。図6に示すように、移動窓間に蓄積される呼吸の加重最大流量の例示的ヒストグラム(柱状グラフ)である前記加重最大流量は、統計学的に記憶される。
【0095】
本発明の一実施の形態では、蓄積される加重最大流量の第85番目の百分位数に該当する加重最大流量としてモデル最大加重最大流量QWPMが決定される。しかしながら、本発明の好適な一実施の形態では、80番目と90番目の百分位数間に該当する加重最大流量を平均して、この平均値をモデル最大加重最大流量QWPMとして取り出してもよい。
【0096】
G−3.呼吸低下検出
図7A〜図7Eは、本発明の技術的思想に従い無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により実施する呼吸低下検出過程を示すフローチャートである。モデル加重最大流量QWPMが存在するか否かを決定するステップ190で呼吸低下決定過程を開始する。例えば、漏洩レベル内に高漏洩レベル又は急速な変化を検出するとき、モデル加重最大流量QWPMをリセットすることができる。この場合、患者が呼吸低下を体験しているか否かを決定するのに十分な情報は、存在しないであろう。従って、モデル加重最大流量QWPMを発生するのに十分なデータが存在しなければ、圧力支援装置は、データの収集を継続して、この情報を発生する。モデル加重最大流量QWPMが存在すれば、圧力支援装置は、ステップ192に移行する。
【0097】
ステップ192では、作動閾値が決定される。作動閾値の目的は、患者が呼吸低下に至る比較的大きな少なくとも1つの呼吸作用を有することを確実に決定することにある。この比較的大きな呼吸作用は、呼吸低下を検出する範囲外にある加重最大値(加重ピーク)を有するはずであり、この範囲内にあるより小さい呼吸作用を検出することができる。呼吸低下検出範囲外にある呼吸作用を最初に発見しなければ、例えば、患者が新しい呼吸低下作用を開始したか又は既存の呼吸低下作用を単に継続しているか否かを決定することは、困難である。本発明の例示的な実施の形態では、現在のモデル加重最大流量QWPMの72%に作動閾値を設定する。現在のQWPMの例えば55%〜75%の範囲にある他の作動閾値も企図する。
【0098】
ステップ194では、現在の加重最大流量Qwpeakを作動閾値と比較して、比較的大きな流入呼吸作用を検出する。このような呼吸作用を検出しなければ、即ち、現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より小さければ、圧力支援装置は、ステップ190に戻り、この動作を反復する。しかしながら、作動閾値外の加重最大流量を含む呼吸作用を検出するとき、圧力支援装置は、ステップ200に移行する。
【0099】
ステップ200では、モデル加重最大流量QWPMの66%として呼吸低下検出閾値を決定する。現在のQWPMの例えば45%〜70%の範囲にある他の呼吸低下検出閾値も企図する。ステップ202では、現在の吸気段階の加重最大流量Qwpeakは、ステップ200で計算した検出閾値と比較される。現在の加重最大流量Qwpeakがモデル加重最大流量QWPMの66%より大きく又は66%に等しいとき、圧力支援装置は、ステップ200に戻る。しかしながら、現在の加重最大流量がモデル加重最大流量の66%に満たないとき、圧力支援装置は、ステップ204に移行し、呼吸低下事象の発生に対する監視を開始する。
【0100】
ステップ204では、呼吸低下検出の開始時にモデル加重最大流量QWPMは、固定され又は記憶されて、他の閾値の決定に使用される。モデル加重最大流量QWPMの固定値QWPMclampedを使用して、ヒステリシスレベルが決定される。ヒステリシスレベルは、固定値QWPMclampedの72%に設定され、圧力支援装置は、ステップ206に進む。固定値QWPMclampedの例えば60%〜80%の範囲にある他のヒステリシスレベルも企図される。また、固定値QWPMclampedを使用して、加重最大流量Qwpeakである第1の終了閾値が設定され、加重最大流量Qwpeakは、監視する吸気波形に合致しなければ呼吸低下検出過程を終了できない。第1の呼吸低下終了閾値は、固定値QWPMclampedの78%に設定される。固定値QWPMclampedの例えば70%〜85%の範囲にある他の呼吸低下終了閾値が企図される。ステップ204では、新しい作動閾値が計算される。ステップ192で計算した作動閾値は、最早有効ではなく、特に、ステップ192で作動閾値を計算して以降、相当の時間が経過すれば、新しい作動閾値が計算される。作動閾値は、現在のモデル加重最大流量QWPMの72%に設定される。
【0101】
ステップ206では、呼吸低下監視過程を停止すべきか否かの決定が行われる。例えば、廃棄事象が発生し又は加重最大流量がヒステリシスレベルを超えるとき、これを行うことができる。例えば、検出モジュールに付与されるデータが異常データを含み又は不完全であるときに、廃棄事象が発生する。呼吸低下監視過程がステップ206で停止するとき、圧力支援装置は、ステップ204で計算した作動閾値に対して現在の加重最大流量Qwpeakをステップ207で照合する。現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より大きいとき、圧力支援装置は、ステップ200に戻る。現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より小さいかこれに等しいとき、圧力支援装置は、ステップ190に戻る。
【0102】
現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より大きいとき、ステップ190ではなく、ステップ200に戻る理由は、呼吸低下が発生していることを決定するのに十分に大きい呼吸作用を患者が既に行っているためである。このように、作動閾値を再度計算する必要がなく、その代わりに、圧力支援装置は、ステップ200に戻り呼吸低下の検出を開始する。
【0103】
ステップ206から呼吸低下監視過程を継続すれば、圧力支援装置は、呼吸低下検出閾値に満たない加重最大流量Qwpeakで十分な時間が経過したか否か及び十分な回数の呼吸周期を発生したか否かをステップ208で決定する。好適で例示的な本実施の形態では、患者が呼吸低下を体験していることを確認するため、加重最大流量は、少なくとも10秒間ヒステリシス閾値未満でなければならず、少なくとも1つの検出可能な呼吸周期が存在しなければならない。このように、ステップ208では、10秒が経過したか及び非零最大流量レベルを有する1つの呼吸周期が発生したかが決定される。否定の場合、圧力支援装置は、ステップ206に戻る。肯定の場合、圧力支援装置は、ステップ210にて第1の終了呼吸作用の監視を開始する。第1の終了呼吸作用は、呼吸低下事象を終了する呼吸である。
【0104】
呼吸低下事象間に、呼吸低下監視をステップ204にて開始するとき、最小加重最大流量が監視されていた。ステップ210では、これまで検出した最低最小加重最大流量が特定される。この値は、2倍にされ、第1の終了呼吸作用の検出時に第2の呼吸低下終了基準として使用される。第2の呼吸低下終了基準の目的は、呼吸低下間に発生する比較的低い最大レベルからの大きな偏差により、呼吸低下監視過程を終了することにある。固定値QWPMclampedの78%としてステップ204で第1の呼吸低下終了基準を決定したことを想起されたい。
【0105】
ステップ212では、呼吸低下検出過程を停止すべきか否かの決定が行われる。例えば、真性の呼吸低下事象を正常に伴う期間を超えて呼吸低下が持続するとき又は廃棄事象が発生するとき、これが行われる。本実施の形態では、この期間は、60秒である。このように、ステップ212では、圧力支援装置は、呼吸低下状態が60秒を超えて継続したか否かを決定する。60秒を超えて継続すれば、呼吸低下検出過程を停止し、全ての論理フラッグをリセットしかつ処理をステップ190に戻す。呼吸低下決定過程を継続するとき、ステップ214では、現在の呼吸の加重最大流量が第1の終了閾値又は第2の終了閾値に該当するか否かを決定する。
【0106】
現在の呼吸の加重最大流量が固定値QWPMclamped(第1の呼吸低下終了基準)の78%を超えるとき又は現在の呼吸の加重最大流量が、非零最低加重最大流量(第2の呼吸低下終了基準)の2倍より大きいとき、有効な第1の終了呼吸が表示され、圧力支援装置は、ステップ216に進む。有効な第1の終了呼吸がステップ214で検出されないとき、圧力支援装置は、ステップ210に戻り、第1の終了呼吸に対する監視を継続する。
【0107】
第1の終了呼吸をステップ214で検出すれば、次の後続呼吸は、ステップ216で決定される第3の呼吸低下終了閾値に合致しなければならない。ステップ214では、第3の呼吸低下終了閾値は、第1の終了基準閾値及び第2の終了基準閾値の最大値の80%に設定される。
【0108】
ステップ218では、第1の終了呼吸直後の次の呼吸の加重最大流量が第1の終了基準閾値と第2の終了基準閾値の最大値の80%であるか否かを決定する。80%のとき、呼吸低下監視過程が終了し、ステップ220で呼吸低下の検出が表示される。80%でないとき、呼吸低下検出過程が停止され、全論理フラッグがリセットされ、処理がステップ200に戻る。第1の終了呼吸直後の次の呼吸の加重最大流量に対する閾値は、80%以外の値でもよい。本発明は、例えば70%から100%までの閾値も企図する。
【0109】
要するに、呼吸低下を検出するには、下記基準に合致しなければならない。
a) 有効なモデル加重最大流量データQWPMが存在しなければならない(ステップ190)、
b) 呼吸低下検出範囲外に流入呼吸が存在しなければならない(ステップ192及びステップ194)、
c) 呼吸の加重最大流量は、呼吸低下決定閾値より低くなければならない(ステップ202)、
d) 後続呼吸の加重最大流量は、少なくとも10秒間のヒステリシス閾値より低いままで、少なくとも1回の呼吸を検出しなければならない(ステップ206及びステップ208)、
e) 呼吸の加重最大流量は、第1の終了閾値又は第2の終了閾値(ステップ214)のより小さい方より高く上昇し、次の呼吸は、第1の終了閾値及び第2の終了閾値に基づき設定される第3の終了閾値より高くなければならない、
f) 呼吸低下事象の持続時間は、60秒を超えてはならない(ステップ212)、並びに
g) 廃棄事象が発生してはならない(ステップ206及びステップ212)。
【0110】
G−4.無呼吸検出
呼吸低下の検出と同様に、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、各呼吸周期の加重最大流量Qwpeakをモデル加重最大流量QWPMと比較することにより、患者が無呼吸を体験しているか否かを決定する。詳細には、現在の加重最大流量Qwpeakがモデル加重最大流量QWPMの20%未満に該当するとき、無呼吸検出過程を開始する。これが発生すると、無呼吸監視過程の開始時に、モデル加重最大流量QWPMは、固定され又は記憶される。また、固定されたモデル加重最大流量QWPMclampedを使用して、無呼吸終了閾値を設定し、無呼吸終了閾値は、加重最大流量を表し、監視される吸気波形が加重最大流量に合致しなければ、無呼吸検出過程を終了できない。無呼吸終了閾値は、固定値QWPMclampedの30%として設定される。この場合、無呼吸は、優先性を有し、呼吸低下の検出を無効にし、リセットし又は一時的に無作動にする。
【0111】
無呼吸監視過程が開始すると、好適な実施の形態では10秒の予め決められた期間中に加重最大流量が終了閾値に満たないとき、無呼吸事象の開始が表示される。呼吸低下と無呼吸との検出を同時に行うことも注意すべきである。
【0112】
本発明者らは、無呼吸事象中に、患者が時々瞬間的な呼吸動作を行うことがあることを認識した。図8は、無呼吸224がほぼ時点226で発生し、時点228でほぼ終了する例示的患者流量波形222を示す。無呼吸224間に、非常に短期間ではあるが、患者は、比較的高い最大流量の突発呼吸230と認められる呼吸作用を行った。前記突発呼吸の前後での期間232での患者流量は、無呼吸に特有の比較的低いレベルであった。本発明は、無呼吸の発生を監視する一時的な突発呼吸230を事実上無視することを企図する。前記突発呼吸を無視しなければ、突発呼吸を誤って考慮する無呼吸検出器が、無呼吸であるこの呼吸状態を無視する可能性がある。
【0113】
G−5.無呼吸/呼吸低下監視
呼吸低下事象の発生及び無呼吸事象の開始信号は、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により検出され、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166に送出されるが、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、無呼吸/呼吸低下制御装置168が圧力発生装置の制御を要求すべきか否かを決定しなければならない。本発明の現在好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により前記方法で決定するように、予め決められた時間内に2つの無呼吸事象又は2つの呼吸低下事象が発生するとき、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、要求プロセッサ106に制御要求を発生する。現在の好適な実施の形態では、この時間は、3分移動窓である。しかしながら、当業者は、この移動窓時間を変更できることを理解できよう。
【0114】
また、無呼吸事象と呼吸低下事象とが混在するとき、本発明は、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166が要求プロセッサ106に制御要求を発生することを企図する。例えば、予め決められた時間内に2つの無呼吸と呼吸低下とが発生するとき、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、制御要求を発生する。
【0115】
G−6.無呼吸/呼吸低下圧力制御
無呼吸/呼吸低下制御装置168に制御が付与されると、患者が無呼吸、呼吸低下又は無呼吸及び呼吸低下の組み合わせを体験したか否かに基づき、患者に供給する吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧の制御方法が決定される。
【0116】
呼吸低下のみを患者が体験していると認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、まず徐々に吸気気道陽圧を1cmH2O上昇させ、このレベルで吸気気道陽圧を30秒間保持する。しかしながら、呼気気道陽圧レベルは、変化されない。この結果、圧力支援レベルが既に最大値PSmaxに達しない限り、圧力支援レベルが増加する。30秒の保持期間経過後に、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、制御を解除(通常後述の自動滴定制御装置を保持する状態)する。無呼吸/呼吸低下制御装置168への制御を付与する基準に再び合致しかつ患者が呼吸低下のみを体験していると再び認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、この過程を反復し、圧力支援レベルが既に最大値PSmaxに達しない限り、また呼気気道陽圧レベルを変化させずに、患者吸気気道陽圧を1cmH2O上昇させ、30秒間保持する。無呼吸/呼吸低下制御装置168は、例えば8〜12cmH2Oの予め決められた量に無制限に吸気気道陽圧を増加することができる。例えば、11cmH2Oの予め決められた量より高い圧力で無呼吸又は呼吸低下を検出するとき、後述のように、付加的な圧力制御が制限される。
【0117】
患者が無呼吸のみ又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせのみを体験していると認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、呼気気道陽圧を1cmH2O増加させ、このレベルに呼気気道陽圧を30秒間保持する。しかしながら、吸気気道陽圧レベルを変化させない。この結果、圧力支援レベルが既に最小値PSminに達しない限り、圧力支援レベルは、低下する。30秒の保持期間経過後に、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、制御を解除(通常後述の自動滴定制御装置を保持する状態)する。無呼吸/呼吸低下制御装置168に制御を付与する基準に再び合致しかつ患者が無呼吸又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせのみを体験しているとまた認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、この過程を反復し、圧力支援レベルが既に最小値PSminに達していない、また吸気気道陽圧レベルを変化させずに、患者呼気気道陽圧を1cmH2O上昇させて、30秒間保持する。無呼吸/呼吸低下制御装置168は、吸気気道陽圧が上記予め決められた量を超えるレベルまで無制限に呼気気道陽圧を増加することができる。予め決められた量より高い吸気気道陽圧で無呼吸又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせを検出するとき、後述のように、付加的な圧力制御が制限される。
【0118】
更に説明する本発明の実施の形態では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、閉塞性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象との相違を検出できないが、無呼吸/呼吸低下制御装置168を使用してこれを補償する。即ち、圧力が既に閾値を超えるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168の圧力上昇は、限定され又は制限される場合もある。圧力の上昇により閉塞性事象を解決できる。しかしながら、中枢性無呼吸は、圧力上昇に応答しないと一般的に考えられている。従って、無呼吸が発生する結果、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を上昇しても更に無呼吸が発生すれば、例えば、11cmH2Oの比較的高い圧力で発生する無呼吸は、中枢性であり、閉塞性無呼吸ではない。何れの場合でも、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の付加的増加は、望ましくない。
【0119】
この目標を達成するため、無呼吸/呼吸低下監視モジュール164が無呼吸又は呼吸低下の制御を要求するとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、目標無呼吸/呼吸低下治療限度を設定する。現在の好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下監視モジュール164が制御要求を始動したとき、患者に供給される吸気気道陽圧より3cmH2O高く目標無呼吸/呼吸低下治療限度が設定される。しかしながら、患者吸気気道陽圧が10cmH2O以下のとき、目標無呼吸/呼吸低下治療限度は、13cmH2Oに設定される。目標無呼吸/呼吸低下治療限度が設定されると、新規な無呼吸/呼吸低下事象がなければ、一定時間経過するまで、目標無呼吸/呼吸低下治療限度は、適当な値のままである。この経過時間を8分の時間間隔に設定し、新規の無呼吸/呼吸低下の如何なる制御の要求がなければ、目標無呼吸/呼吸低下治療限度を設定した後に8分経過すれば、目標無呼吸/呼吸低下治療限度を消去することを本発明は、現在企図する。
【0120】
患者が呼吸低下のみを体験しているとき、本発明は、10cmH2Oに代えて、例えば14cmH2Oのより高い数値に目標無呼吸/呼吸低下治療限度を設定する。無呼吸/呼吸低下検出器164は、呼吸低下のみを認識しているとき、患者が中枢性事象でなく、閉塞性事象を患っている可能性が高いので、高い数値に設定する。従って、より高い閾値により更に積極的に閉塞性事象を治療することができる。
【0121】
圧力支援装置が発生する患者圧力の例示的な吸気気道陽圧曲線236を示す図9から明らかな通り、患者が10cmH2Oの吸気気道陽圧を受けて時点238で無呼吸/呼吸低下の制御が要求されれば、目標無呼吸/呼吸低下治療限度240は、13cmH2Oに設定される。無呼吸/呼吸低下治療時間242の間、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧が1cmH2O増加されて、30秒間保持され、時点244で無呼吸/呼吸低下制御装置168は、制御を解除する。期間246の間、例えば、下記自動滴定モジュール等の他の制御モジュールは、圧力支援装置の制御を扱っている。この例の目的に対し、この期間中、患者吸気気道陽圧又は患者呼気気道陽圧は、1cmH2Oだけ増加された。吸気気道陽圧が12cmH2Oの時点248では、他の無呼吸/呼吸低下制御要求が付与され、他の無呼吸/呼吸低下治療期間242が発生する。この期間の終端(点250)では、患者吸気気道陽圧は、目標無呼吸/呼吸低下治療限度240の13cmH2Oである。
【0122】
時点250又は目標無呼吸/呼吸低下治療限界を超える如何なる吸気気道陽圧でも、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166が他の無呼吸/呼吸低下制御を要求するとき、要求プロセッサ106は、無呼吸/呼吸低下制御装置168に制御を更に移管するが、現在の患者吸気気道陽圧が目標無呼吸/呼吸低下治療限度又はそれ以上であるため、無呼吸/呼吸低下制御装置168による患者吸気気道陽圧の更なる増加が阻止される。その代わり、圧力支援レベルの最小値PSminに達するまで、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、呼気気道陽圧を増加する。最小値PSminに達すると、吸気気道陽圧は、目標無呼吸/呼吸低下治療限度であり、事象が継続し、無呼吸/呼吸低下制御装置は、圧力減少期間254の間、例えば2cmH2Oの予め決められた量だけ吸気気道陽圧を時点252までに低下する。吸気気道陽圧の低下により、支援圧力を最小値PSminに保持するため、呼気気道陽圧も低下させる。
【0123】
吸気気道陽圧は、期間254の終端で線256に示すように一定に保持され又は線258に示すように再度低下させて一定に保持される。現在の吸気気道陽圧、即ち点252での患者吸気気道陽圧と鼾治療吸気気道陽圧とを比較することにより、吸気気道陽圧を点252に保持すべきか又は点252から減少すべきか否かが決定される。鼾制御装置を作動しない場合で圧力支援装置に鼾治療吸気気道陽圧が記憶されなければ、吸気気道陽圧は、線256上に保持される。鼾治療吸気気道陽圧が存在しかつ例えば2cmH2Oのように予め決められた量を超えて鼾治療吸気気道陽圧より現在の吸気気道陽圧が高いとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、鼾治療吸気気道陽圧より予め決められた量高いレベルに吸気気道陽圧を減少し、線258で示すように、期間260間に吸気気道陽圧を低いレベルに保持する。本発明は、鼾治療吸気気道陽圧より1cmH2O高い圧力に吸気気道陽圧を減少させる。
【0124】
吸気気道陽圧の低下が開始する時点250以後、予め決められた時間が経過するまで、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、期間260の間、患者吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を一定に保持する。患者を安定させるため、別の作動への変更を阻止する状態保持期間(ホールドオフ期間)が設けられる。現在好適な実施の形態では、2cmH2Oの減少開始以後、15分経過するまで吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、一定に保持される。本発明は、患者が安定するのに十分な時間である限り、状態保持期間の持続時間を他の時間長さに設定することを企図する。より高順位レベルの制御装置によりこの保持過程を中断し、リセットすることができる。15分の状態保持期間の終端で、無呼吸/呼吸低下制御装置160により、目標無呼吸/呼吸低下治療限度が除去され、制御が解除される。
【0125】
H.可変呼吸制御層
次項で説明する自動滴定制御装置は、ある睡眠段階に付随する安定で周期的な呼吸パターンの傾向のある性能に依存する。患者が急速眼球運動(REM)睡眠で又は苦痛を感じて覚醒するとき、呼吸は更に不安定な傾向になり、自動滴定動向検出が不安定となる。従って、患者の呼吸パターンが変化し過ぎるとき、自動滴定制御装置を中断することが重要である。可変呼吸制御層は、本質的に自動滴定制御層の過度不安定状態を防止する。
【0126】
図2に示すように、第7の優先順位が割り当てられる可変呼吸制御層は、可変呼吸検出モジュール270、可変呼吸監視モジュール272及び可変呼吸制御装置274を有する。後述のように、可変呼吸制御層は、動向付けされる加重最大流量データの分散を統計的に分析して、不安定な呼吸パターン又は患者応答の急激な変化を検出する。可変呼吸制御モジュール274は、作動時に自動滴定制御装置に対して優先順位を有し、可変呼吸監視モジュール272は、有効な可変呼吸を表示し、圧力支援装置の制御は、可変呼吸制御装置に振り向けられる。要するに、呼吸が不安定化しかつ如何なる必要な圧力変化も適正に管理できれば、可変呼吸制御モジュール274は、自動滴定制御装置の動作を中断する作動を行う。
【0127】
H−1.可変呼吸検出及び監視
可変呼吸検出モジュール270は、好適な本実施の形態では4分窓である移動窓中の加重最大流量Qwpeakを監視する。可変呼吸検出モジュールは、加重最大流量情報が過度に不安定であるか否かを決定する加重最大流量情報の価値のある本質的に4分の傾向にある。図10A及び図10Bは、加重最大流量の分散例を示すグラフである。図10A及び図10Bでは、加重最大流量は、領域278内の動向線276の周囲に比較的接近する群を形成し、領域280内では動向線276から比較的分散する。動向線276は、現在の4分窓間に収集される加重最大流量データに基づき何らかの従来の統計分析技術を使用して決定される最良適合線である。図10Aと図10Bとの間の主要な相違は、図10Bの動向線を非零圧力傾斜で示す点である。動向線276が収集したデータ点に基づく最良適合線である事実を強調するために、非零圧力傾斜で表示される。
【0128】
点線282で示すように、可変呼吸検出モジュール270は、監視窓間に捕集される加重最大流量データの標準偏差を決定する。最良適合動向線276に基づき標準偏差を計算する点に注意すべきである。また、領域278内の標準偏差284は、領域280内の標準偏差286より小さく、領域280内では加重最大流量データの変動がより大きいことが明らかである。
【0129】
加重最大流量データの変化度の測定値として標準偏差だけを使用すると、一貫して正確な結果を生じないこともある事実が本発明者らに判明した。平均患者流量が比較的少ないときの加重最大流量データの標準偏差を、より高い平均患者流量での同一の標準偏差とは正確には比較できないので、正確な結果が得られないためである。従って、本発明では、平均患者流量に対する標準偏差の標準化を探索して、データ中の偏差分析時に平均流量を考慮する。
【0130】
図11は、平均患者流量と調整された平均患者流量との関連を表す標準化曲線290を示すグラフである。調節された平均患者流量(縦軸)と実際の平均患者流量(横軸)とが一対一で一致する直線領域292があることはこのグラフから理解できよう。4分窓の平均患者流量が領域292内にあれば、平均患者流量への調整は、不要である。また、調節した平均患者流量と実際の平均患者流量との間では、1/2乃至1の関係を持つ第1の領域294もある。このように、実際の平均流量が15乃至25リットル/分(lpm)間の領域294に該当するとき、調節した平均患者流量は、標準化曲線290に基づき計算される。また、実際の平均流量が減少するときでも、調節される平均患者流量を基線値に固定する平坦領域296も存在する。このように、実際の平均患者流量が15リットル/分に満たなければ、調整される平均患者流量は、20リットル/分に固定される。
【0131】
標準化曲線290の特殊な形状及び種々の領域間の線図を変更できることを理解すべきである。例えば、図示を省略するが、本発明は、平均患者流量が所定値、例えば、領域298内での値を超えるとき、平均患者流量値を固定することも企図する。
【0132】
調節された平均流量(adjusted mean flow)により標準偏差(standard deviation)を除する下式により、可変呼吸数(VB#)が計算される。
【0133】
【数1】
【0134】
可変呼吸検出モジュール270により実行される可変呼吸検出過程の最終結果は、この可変呼吸数である。可変呼吸数(VB#)が高いほど、加重最大流量データの変化量は、益々大きい。
【0135】
可変呼吸検出モジュール270は、可変呼吸監視モジュール272に可変呼吸数を付与し、可変呼吸監視モジュール272は、可変呼吸数と閾値とを比較して、可変呼吸制御装置274が自動滴定制御装置からの制御を受け継ぐことを要求する時期を決定する。図12は、患者が可変呼吸を体験していることを示しかつ圧力支援装置の制御を要求するヒステリシス閾値基準を示すグラフである。
【0136】
図12に示すように、上方閾値300及び下方閾値302は、予め設定される。経験値データから上方閾値300及び下方閾値302を決定することが好ましい。曲線304で表示する可変呼吸数(VB#)が上方閾値300を超えるとき、可変呼吸監視モジュール272は、可変呼吸であることを表示して、要求プロセッサ106に制御要求信号を発生する。制御要求信号は、図12の点306で発生する。可変呼吸監視モジュール272は、可変呼吸であると判断し続けて、可変呼吸数(VB#)が上方閾値300に満たない場合でも継続的に制御を要求する。要するに、時点306で可変呼吸の活性表示がオンされ、可変呼吸数(VB#)が時点310で下方閾値302より低くなるまで領域308上に該当する。可変呼吸の活性表示がオンの間に、可変呼吸制御装置274は、要求プロセッサ106から圧力支援の制御要求信号を発生する。
【0137】
同様に、可変呼吸制御装置274は、そこで可変呼吸がないと継続的に判断して、可変呼吸数(VB#)が下方閾値302より上昇しても制御を要求しない。即ち、可変呼吸の活性表示は、点310でオフとなり、可変呼吸数(VB#)が点314で発生する上方閾値300を超えるまで領域312内でオフに保持される。
【0138】
H−2.可変呼吸圧力制御
可変呼吸制御装置274に圧力支援装置の制御が付与されると、下記自動滴定制御装置が行っている動作に基づき何らかの初期動作を行う。この初期動作後に、可変呼吸制御装置274は、独立する圧力制御動作を実行する。図13は、本発明での可変呼吸制御モジュールの圧力制御動作を示すグラフである。例示的な実施の形態では、制御される主圧力として吸気気道陽圧レベルを使用し、可変呼吸圧力制御間に圧力支援レベルの最小値PSminと最大値PSmaxとの間で保持される圧力支援レベルに基づき、呼気気道陽圧レベルが設定される。必要に応じて、呼気気道陽圧レベルのみを変化させて、最小値PSminと最大値PSmaxとの間に圧力支援レベルが保持される。このように、可変呼吸圧力を制御するため、圧力制御の全基準が吸気気道陽圧レベルに適用される。
【0139】
図13に示すように、可変呼吸制御装置274が実行する吸気気道陽圧制御作用は、a)活性応答領域320と、b)圧力保持領域322と、c)緩慢圧力傾斜領域324の3領域に区分される。可変呼吸制御装置274が実行する各領域内での吸気気道陽圧の制御を次に説明する。図13の供給される圧力は不連続に見えるが、これは便宜的に各領域を図示する方法に過ぎない。実際には、活性応答領域320の終端での吸気気道陽圧は、圧力保持領域322で実施される圧力制御の始端圧力である。同様に、圧力保持領域322の終端での吸気気道陽圧は、緩慢圧力傾斜領域324内で実行される圧力制御への始端圧力である。
【0140】
活性応答領域320の欄Aは、可変呼吸制御装置274が圧力支援装置の動作を引き継ぐ前に、圧力支援装置が実施可能な吸気気道陽圧の制御動作を示す事前吸気気道陽圧曲線を示す。活性応答領域320の欄Bは、従来の曲線に基づき可変呼吸制御装置274が発生する対応吸気気道陽圧の制御曲線を示す。症例1では、事前吸気気道陽圧レベル326は、平坦である(増減なし)。この場合、可変呼吸制御装置274は、圧力曲線328で示すレベルのまま患者に吸気気道陽圧が供給される。
【0141】
症例2では、事前吸気気道陽圧レベル330は、増加する。この場合、可変呼吸制御装置274は、圧力曲線332に示すように、毎分0.5cmH2Oの減圧速度で患者に供給する吸気気道陽圧をまず減少する。減少量は、事前吸気気道陽圧レベル330で増加する量に依存する。吸気気道陽圧の減少する圧力曲線332は、多分可変呼吸作用を発生した増加する事前吸気気道陽圧レベル330を解消する特性を有する。しかしながら、例示的な実施の形態では、圧力降下332の全減少量は、2cmH2Oに制限される。圧力降下(圧力低下)の圧力曲線332の後に、可変呼吸作用制御装置274は、圧力曲線334で示すように、圧力を一定状態に保持する。
【0142】
症例3では、事前吸気気道陽圧レベル336は、減少する。この場合、可変呼吸制御装置は、圧力曲線338に示すように、0.5cmH2Oの増圧速度で患者に供給する吸気気道陽圧をまず増加する。吸気気道陽圧レベルの増加する圧力曲線338の量は、事前圧力336の減少量に依存する。吸気気道陽圧レベルの増加する圧力曲線338は、可変呼吸を発生する事前吸気気道陽圧減少336を解消する特性を有する。しかしながら、例示的な実施の形態では、吸気気道陽圧レベルの圧力曲線338の全増加は、2cmH2Oに制限される。吸気気道陽圧レベルの増加する圧力曲線338の後に、可変呼吸制御装置274は、圧力曲線340に示すように、吸気気道陽圧を安定状態に保持する。
【0143】
本発明の現在好適な実施の形態では、活性応答領域320の欄Bの前記症例により圧力を供給する持続時間は、5分に設定される。このように、吸気気道陽圧曲線328(症例1)、吸気気道陽圧曲線332〜334(症例2)又は吸気気道陽圧曲線338〜340(症例3)は、5分又は可変呼吸状態が解消されるまで実施される。その後、吸気気道陽圧レベルは、圧力保持領域322の圧力動作により制御される。しかしながら、許容される持続時間の範囲にわたり前記持続時間を変更することができる。
【0144】
圧力保持領域322では、吸気気道陽圧レベルは、圧力曲線342(症例4)に示すように、一定値に保持され又は圧力曲線344(症例5)に示すように、減少後に一定となるパターンを有する。活性応答領域320の終端での患者吸気気道陽圧を示す現在の吸気気道陽圧を鼾治療吸気気道陽圧と比較して、吸気気道陽圧を一定にする(症例4)か又は吸気気道陽圧を減少する(症例5)かが決定される。これは、図9について説明した無呼吸/呼吸低下制御装置168の圧力制御動作に類似する。
【0145】
鼾制御装置が作動されない場合で圧力支援装置内に鼾治療吸気気道陽圧の記憶がないとき、圧力曲線342で示すように、吸気気道陽圧は、一定に保持される。鼾治療吸気気道陽圧があり、例えば2cmH2Oの予め決められた量だけ現在の吸気気道陽圧が鼾治療吸気気道陽圧より高ければ、吸気気道陽圧曲線344に示すように、可変呼吸制御装置274は、吸気気道陽圧曲線344で示すように、予め決められた量だけ鼾治療吸気気道陽圧より高いレベルに吸気気道陽圧を減少し、線346で示すように、圧力保持領域322の持続時間にわたり吸気気道陽圧を低レベルに保持する。本発明は、吸気気道陽圧の低下する曲線344間に「鼾治療圧力+1cmH2O」に吸気気道陽圧を減少する。
【0146】
現在の好適な実施の形態では、圧力保持領域322の前記実例により付与される吸気気道陽圧の持続時間は、15分に設定される。このように、15分間又は可変呼吸状態が解消されるまで、吸気気道陽圧曲線342(症例4)又は吸気気道陽圧曲線344〜346(症例5)が与えられる。その後、緩慢圧力傾斜領域324の圧力動作により、吸気気道陽圧は、制御される。しかしながら、許容される持続時間の範囲にわたり15分の持続時間を変更できることを理解すべきである。
【0147】
緩慢圧力傾斜領域324では、吸気気道陽圧の単一制御動作のみが存在する。即ち、圧力曲線348で示すように、患者に付与される吸気気道陽圧レベルは、徐々に下方に傾斜する。最小装置圧力(吸気気道陽圧最小圧力IPAPmin又は呼気気道陽圧最小圧力EPAPmin)に達するまで又は可変呼吸状態が解消されるまで、下方傾斜圧力減少は、継続される。
【0148】
I.自動滴定制御層
全制御層の中で第8番目の最下優先順位が自動滴定制御層に割り振られる。その結果、自動滴定制御層が実行する圧力制御動作は、他の何れかの制御装置が作動されれば中断される。図2に示すように、自動滴定制御層は、自動滴定検出モジュール350、自動滴定監視モジュール352及び自動滴定制御モジュール354を備える。
【0149】
下記説明から十分に理解できるように、自動滴定制御層の種々の構成要素は、互いに非常に緊密に相互作用を行う。即ち、圧力支援装置が自動滴定制御層内で動作しながら、自動滴定監視モジュールの出力は、自動滴定制御装置が患者での圧力を調整する方法を指令するので、自動滴定検出モジュール及び自動滴定監視モジュールは、監視装置44からの出力を連続的に分析している。自動滴定制御層は、初期設定制御層であり、他の制御層が制御を行わないときでも自動的に動作しているので、他の制御層とは異なり、自動滴定監視モジュールが要求プロセッサ106からの制御を要求する必要はない。
【0150】
自動滴定制御層の一般的な目標は、例えば、1分間に±0.5cmH2Oの緩慢な傾斜圧力を誘導して、治療圧力と称する圧力状態保持期間を設けることにある。流量波形に関連するある媒介変数を監視することにより、圧力変化と治療圧力に対する患者の応答を評価して、患者流量波形が改善し、悪化し又は変化なしを表示しているか否かが決定される。各呼吸に対する加重最大流量Qwpeak、真円度、平坦度及び呼吸の非対称度を表す値が計算される。このデータを記憶し、連続的な患者の動作時間にわたり動向を分析して、圧力支援装置により患者に供給する圧力が最適化される。
【0151】
I−1.加重最大流量、真円度、平坦度及び非対称度
前記の通り、自動滴定制御装置により実行される自動滴定制御過程間に、加重最大流量Qwpeak、呼吸吸気波形の真円度、平坦度及び非対称度が決定される。吸気波形の前記各特性は、自動滴定検出器350により測定時間にわたり動向分析され、動向値が発生される。この動向値は、自動滴定監視モジュール352に供給され、そこで、後述の選択グラフに動向値を使用して、自動滴定制御装置が何の作用を行うかが決定される。従って、最初に本発明は、前記吸気波形特性をどのように計算するかを理解することが重要である。
【0152】
無呼吸/呼吸低下検出モジュール164について加重最大流量Qwpeakの計算を検討した。従って、吸気波形特性の別の説明を要しない。
【0153】
吸気波形の真円度特性を計算するため、本発明は、患者吸気波形を正弦波と比較する。図14A〜図14Cは、5%容量と95%容量とにそれぞれ相当する点362と点364を含む例示的患者吸気波形360を示す。可能な限り最良の比較を行うため、例示的な患者吸気波形360を正弦波と比較することは、患者吸気波形が正弦波に一致し又は逆に正弦波が患者吸気波形に一致すること要求される。このため、複数の過程を実行して、患者吸気波形上に正弦波を適合させなければならない。
【0154】
第1に、患者の吸気波形360上に正弦波の始点と終点とを記入するのに使用する正弦波基線値が計算される。正弦波基線値は、平坦度平坦基線(FFB)値の1/2として定義される。正弦波基線(1/2FFB)に相当する線370が吸気波形360と交差する点366と点368は、吸気波形上に重なる正弦波の始点と終点として選択される。従って、吸気波形360上に点366と点368とを記入する作業が行われる。
【0155】
本発明では、例えば、5%容量点362と95%容量点368の既知目標値から開始して吸気波形上の複数の点を探索して、前記始点366と終点368を記入する。図14Bに示すように、吸気波形の始端又は基端を探索するとき、5%容量(点362)に対する流量値が正弦波基線値370より小さければ、95%容量点が配置される吸気波形360の遠位の終点368に向かって上方に探索(検索)される。これに対し、5%容量(点362)の流量値が正弦波基線値370より大きいとき、吸気波形360の基端又は始点366に向かい下方に探索される。例示的な実施の形態では、点362での流量は、正弦波基線値370より大きいので、図14Bの矢印370は、波形の始点366に向かう5%容量点から下方への探索を示す。
【0156】
吸気波形の遠位の終点368で探索するとき、95%容量(点364)に対する流量値が正弦波基線値370より大きいとき、吸気波形360の遠位の終点368に向かって上方に探索される。他方、95%容量(点364)に対する流量値が正弦波基線値370より小さい場合、5%容量点が配置される吸気波形360の終点368に向かい下方に探索される。例示的な実施の形態では、点364での流量が正弦波基線値370より小さいので、図14Bの矢印372は、95%容量点から下方への探索を示す。
【0157】
正弦波基線値370に相当しかつ波形360上の点の位置を探索するとき、5%容量点等の目標点で開始する探索は、正弦波の開始に相当すべき吸気波形360上の正しい点を見つけることができない。例えば、図14Cに示すように、点362が正弦波基線値点より上方にあり、上方に向かって探索を行うとき、吸気波形の終点368付近を始点として誤って点368を探索することもある。例示する点376として示すように、95%点が正弦波基線値370に相当する点より大きいとき、矢印378に示すように、点376から下方に探索を行えば、同様の誤りが発生する。
【0158】
前記誤りを回避するため、本発明では、互いに交差する探索(矢印374及び376)を行ったか否かを監視する有効性検査が行われる。交差探索を行えば、各探索により検出される点を放棄し、その波形に対する真円度及び平坦度の計算を行わない。正弦波基線値370に相当する点を検出しなければ、同様の誤りと結果が発生する。例えば、これは、矢印380に示すように、点364から上方探索を開始するとき発生することがある。
【0159】
図15に示す正弦波テンプレート382に対する始点366と終点368とが判明すれば、正弦波の幅又は期間とその振幅との間の既知の関係を使用して、始点366と終点368とを有する正弦波テンプレート382の振幅(正弦波振幅)を計算できる。図15を参照されたい。例えば、患者流量(Qpatient)を始点(Start point)から終点(End point)まで積分した積分値を2πで除する正弦波振幅(Sine Amp)は、下式で計算される。
【0160】
【数2】
【0161】
本発明では、正弦波の既知の期間、即ち、始点と終点との間の時間及び計算した振幅から、期間(Period)と正弦波振幅(Sine Amp)との比(Ratio)が決定される。換言すれば、期間と正弦波振幅との比(Ratio)は、下式により計算される。
【0162】
【数3】
【0163】
期間と正弦波振幅との比を決定する目的は、正弦波テンプレートの振幅を調整することにより複数の正弦波テンプレートを互いに標準化する意図に出たものである。例えば、図16Aに示すように、非常に高い比を有する正弦波テンプレート384は、非常に高くかつ薄い。例えば、図16Bに示すように、非常に低い比を有する正弦波テンプレート386は、非常に低くかつ幅広い。前記2波形パターン間の整合性は、通常極めて悪く、意味のある結果を生じないので、高く薄いテンプレート384又は低く幅広いテンプレート386を実際の患者吸気波形と比較しないことが好ましい。
【0164】
前記状態を説明するため、本発明は、複数のサンプルフォームを示す正弦波テンプレートの比を調節する。図17は、複数の正弦波テンプレートの比の調節に使用する標準化曲線390を示す。標準化曲線390は、比を調節しない線形(一次)領域392を有する。極めて高い比を有する線形領域392の上方に連続する正弦波テンプレートの標準化曲線390は、比を下方修正する第1の領域394と、固定領域396とを有する。図示の例示的な実施の形態では、実際の比がいかに高くても、固定領域396は、36に固定される。極めて低い比を有する比線形領域392の下方に連続する正弦波テンプレートの標準化曲線390は、比を上方修正する第2の領域398と、固定領域400とを有する。図示の例示的な実施の形態では、実際の比がいかに低くても、固定領域400の調整比は、8に固定される。
【0165】
例えば、図17に示す特性から決定される調節比を使用して、一定に保持する期間と共に、正弦波テンプレートの振幅が設定される。例えば、図18Aは、極めて低い比と、極めて平坦な振幅とを有する正弦波テンプレート402を示す。どのように比を調節して正弦波テンプレートの振幅を有効に増加するかを示す補正後の正弦波テンプレート404も図示する。図18Bは、極めて高い比と、極めて高い振幅とを有する正弦波テンプレート406を示す。どのように比を調節して正弦波テンプレートの振幅を有効に減少するかを示す補正後の正弦波テンプレート408も図示する。
【0166】
患者吸気流量に相当する正弦波テンプレートを決定しかつ必要に応じて補正した後に、従来技術を使用して、補正した正弦波テンプレートの容量を計算する。アナログ演算では、補正した正弦波テンプレート全体を始点から終点まで積分して、容量が計算される。デジタル演算では、始点から終点までの流量を合計しかつこの演算での積算数(総和数)で合計値を除することにより容量が計算される。
【0167】
図19Aは、例示的患者吸気波形410と、前記のように決定した正弦波テンプレート412とを示す。患者吸気波形410と正弦波テンプレート412との間に存在する比較的大きな偏差(偏差度)をこの図から理解できよう。本発明では、矢印414に示すように、正弦波テンプレートを有効に移動させて、患者吸気波形を重ねることにより偏差が説明される。
【0168】
本発明の好適な実施の形態では、図19Bに示すように、患者吸気波形の中心Cを決定し、正弦波テンプレートの新しい中心として中心Cを使用することにより、患者吸気波形に重ねるテンプレートの移動が達成される。平坦度平坦基線(FFB)値に相当する吸気波形上の点416と418とを見出すことにより、患者吸気波形410の中心Cを決定することができる。正弦波基線値(1/2FFB)に相当する既知の目標点366と368から上方又は下方に探索すれば、平坦度平坦基線(FFB)に相当する吸気波形上の点416及び418を見出すことができる。矢印420及び422によりこの探索を図示する。吸気波形410上の複数の平坦度平坦基線(FFB)点を決めれば、平坦度平坦基線(FFB)点(416及び418)間距離の1/2として吸気波形の中心Cが得られる。吸気波形の中心Cを決定すれば、正弦波テンプレート412を形成する位置決め点を中心Cについて再計算することができる。
【0169】
図20に示すように、20%容量点と80%容量点との間の平坦度平坦基線(FFB)レベルの上方にある吸気波形410の容量を決定して、平坦度レベルが計算される。平坦度レベルの結果に一定加重値を適用して、吸気波形の僅かな形状変化による影響を低減することが好ましい。
【0170】
デジタルプロセッサでは、単位時間当りの流量(Qp(t))から平坦度平坦基線(Flatness Flat Baseline)を減じた絶対値を20%容積(20% Volume)から80%容積(80% Volume)まで積分し、得られる積分値に4と100とを乗じて、その乗数を20%から80%までの時間(T20%-80%)と平坦度基線(Flatness Baseline)との乗数で除して得られる平坦度(Flatness)を下式により決定することができる。
【0171】
【数4】
【0172】
この関係式では、一定値4は、吸気波形の形状変化に対する前記決定値の感度を減少する加重定数である。平坦値を百分率として表す一定値100が選択される。興味深いことに、吸気波形が正弦曲線のときに、平坦度値は大きく、吸気波形が完全に平坦であれば、零になることもある。
【0173】
図21に示すように、20%容積点と80%容積点との間で前記のように決定される正弦波テンプレート412と患者吸気波形410との差として真円度が計算される。斜線領域430として図21にこの差を示す。真円度の決定に加重定数を適用して、吸気波形の僅かな形状変化に対する感度を減少することが好ましい。
【0174】
デジタルプロセッサでは、単位時間当りの正弦波流量(Flow Sine(t))から単位時間当りの流量(Qp(t))を減じた絶対値を20%容積(20% Volume)から80%容積(80% Volume)まで積分し、その積分値に、2と100とを乗じて、その乗数を正弦波容積(Sine Volume)で除して得られる真円度(Roundness)を下式により決定することができる。
【0175】
【数5】
【0176】
興味深いことに、吸気波形が平坦のとき真円度値は大きく、吸気波形が完全な正弦曲線であれば、真円度値は、零になることがある。
【0177】
図22に示すように、領域434、436及び438に最初に吸気波形432を分割して、非対称度が計算される。各領域は、吸気波形の持続間の1/3に相当する。各領域の最高流量の予め決められた量が平均化される。例えば、本発明の好適な実施の形態では、各領域の頂部5%流量を平均化する。中央領域436の5%流量(Middle Region 5%)を左領域の5%流量(Left Region 5%)で除することにより、吸気波形の非対称度数(Skewness Number)が計算される。換言すれば、非対称度数は、下式により算出される。
【0178】
【数6】
【0179】
複数の領域に吸気波形を区分する具体的な方法と、各領域からの流量百分率を分析して、非対称度値を決定する方法を変更できることは理解されよう。
【0180】
I−2.自動滴定検出モジュール
自動滴定検出モジュール350は、通常2.5〜20分の時間中に収集される加重最大流量、平坦度、真円度及び非対称度データの各監視呼吸媒介変数に関する2つの型の動向分析を行う。動向分析の第1は、長期動向分析であり、第2は、短期動向分析である。しかしながら、各型の動向分析には、まず分析用のデータを収集しなければならない。動向分析に入力するデータ量が多いほど、患者の応答を表示する分析の精度が向上する。
【0181】
図23に示すように、患者の呼吸周期440の呼吸媒介変数データを複数のデータセットに区分し、各データセットは、多数の呼吸周期に関連するデータを含む。好適な本実施の形態では、各データセットは、4つの呼吸周期の呼吸媒介変数データを含む。
【0182】
前記のように、各呼吸に対する加重最大流量Qwpeak、真円度、平坦度及び非対称度である呼吸媒介変数が計算される。例えば、4呼吸の加重最大流量データを平均化しかつ使用して、動向分析に使用する単一の評価値が決定される。真円度、平坦度及び非対称度である他の呼吸媒介変数に対しても同様の処理が行われる。この結果は、動向分析の目的に使用されるグラフ442に示す蓄積データとなる。
【0183】
図24は、4呼吸周期にわたる平均化呼吸媒介変数データを表す各評価値の例示的動向分析グラフを示す。複数のデータ評価点に対する最適合線444に示すように、このデータの動向分析は、最小二乗法適合線を決定する過程を含む。最適合線444の圧力勾配は、データの動向が変化している程度を示すことを理解できよう。次に、対象となる時間間隔にわたりこの最適合線についてのデータ評価点の標準偏差446が決定される。
【0184】
このデータに基づき、種々の異なる形式の変更分析を行うことができる。例えば、本発明は、動向データの百分率変化及び差値を決定することを企図する。終点(end point)と始点(start point)との差を平均値(mean)で除する百分率変化(% change)は、下式により計算される。
【0185】
【数7】
【0186】
この式では、終点は、点448のように、収集されるデータの終端付近の最適合線444上の点であり、始点は、点450のように、収集されるデータの始端付近の最適合線444上の点であり、平均値(mean)は、始点(start point)と終点(end point)との間のデータ点の平均値(mean)である。百分率変化(% change)の等価計算式を下式で示すことができる。
【0187】
【数8】
【0188】
ここで、勾配(slop)は、最適合線444の傾斜であり、動向長さ(tend length)は、始点(start point)と終点(end point)との間の時間として示される動向長さである。
【0189】
終点(end point)と始点(start point)との間の差値(difference value)を下式により計算することができる。
【0190】
【数9】
【0191】
この式の等価代表式を下式として表示できる。
【0192】
【数10】
【0193】
本発明の好適な実施の形態では、加重最大流量データを分析するとき、百分率変化のみが使用される。本発明の好適な実施の形態では、前記未処理測定値が既に百分率として表されているので、真円度、平坦度及び非対称度データを分析するとき、動向データの差値のみが使用される。前記のように、百分率変化又は差により限定される誤差窓を予め決められた閾値と比較して、データ中の変化、即ち動向が許容可能なレベルを超えたか否か決定される。分析の型(百分率変化又は差)は、動向分析に使用する未処理データの型に依存されることに注目すべきである。
【0194】
前記のように、各データ評価点が4呼吸周期の媒介変数データの平均値を含むので、自動滴定検出モジュール350は、蓄積されたデータ評価点の短期動向及び長期動向を監視する。長期動向分析を行うとき、百分率変化又は差値(対象となる媒介変数に依存する)を対応時間にわたり評価して、前記動向分析基準が予め決められた閾値外に該当するか否かが決定される。短期動向分析を行うとき、新しく収集する各データ評価点が患者動作中に既に収集したデータ評価点と比較して、動向付けされたデータに対して監視される媒介変数内の偏差が検出される。
【0195】
I−2−a.長期動向
長期動向分析を実行するため、最適合線444の周りのデータ評価点に対する関連する標準偏差446を含む動向付けされたデータの最適合線444を使用して、動向誤差窓が決定される。動向誤差窓は、動向データに対する誤差範囲を表す。動向誤差窓は、最適合線に対する標準偏差、動向計算に使用するデータ評価点の数及び所望の信頼性レベルの関数であり、入力基準(標準偏差、サンプル番号[データ評価点]及び信頼性レベル)を確立したとき、参照用テーブル等の従来技術を使用して決定される。
【0196】
本発明では、動向誤差窓の選択に使用される信頼性レベルは、データの経験的評価に基づき決定される。本発明の目的に対して、80%信頼性レベルが動向誤差窓に適することが経験的分析から決定された。しかしながら、このレベルを変更してもなお重要な結果が得られることは、当業者に理解できよう。80%信頼性レベルを選択するとき、本発明は、本質的に、関連する分散データの最適合線が分析すべきデータの真実の動向を示する。
【0197】
動向誤差窓を決定すると、前記差値又は百分率変化に基づき、前記誤差範囲は、誤差窓に変換される。式(7b)と(7d)の計算式を動向誤差窓に適用して、誤差窓への変換を達成できる。このとき、最適合線444及びその関連動向誤差を考慮する傾斜の範囲は、最適合線の傾斜を表わす。差値又は百分率変化に変換された誤差窓は、自動滴定検出モジュール350から自動滴定監視モジュール352に供給され、自動滴定監視モジュール352は、後述のように、この動向ベース情報を使用して、送出圧力に対する患者の応答変化を判断する。
【0198】
I−2−b.短期動向
短期動向分析は、送出される圧力に対して比較的迅速な患者応答を区別し、検出することを試みる。従って、動向データの時間変化を監視せずに、自動滴定監視モジュール352と組み合わせた自動滴定検出モジュール350の短期動向分析機能は、2つの検出基準に対して発生する各データ評価点を分析する。自動滴定検出モジュールは、短期動向基準を確立し、自動滴定監視モジュール350は、前記基準に対する新規に発生するデータ評価点を分析する。
【0199】
自動滴定検出モジュールが決定する第1の短期動向基準は、予測間隔である。予測間隔の目標は、新規に発生するデータ評価点と比較する値範囲を付与することにある。動向分析計算の最適合線、サンプル数又はデータ点及び所望の信頼性レベルに関するデータ点の標準偏差に基づき標準統計分析法を使用して、予測間隔が決定される。本発明では、予測間隔の選択に使用される信頼性レベルをデータの経験的評価に基づき、予測間隔が決定される。短期動向分析の目的に対し、95%信頼性レベルが適当であることがこの経験的分析から決定された。しかしながら、信頼性レベルを変更しても、有意な結果が得られることは、当業者に理解できよう。前記動向分析基準に基づき、予測間隔は、次に発生するデータ点がこの範囲値に該当する95%信頼性の値範囲を表す。
【0200】
自動滴定検出モジュールが決定する第2の短期動向基準は、データ収集開始時の最適合線上のデータ点である「動向データ評価点の開始点」に過ぎない。動向データ評価点の開始は、図24のデータ点450と同様である。長期動向の前記説明と同様に、短期の百分率変化と差が計算される。前記式(7a)及び(7c)を使用して、これが達成される。短期動向の計算に対し、現在のデータ点の値として終点が定義され、図24のデータ点450と同様に、動向点の始点として始点が定義される。後述のように、自動滴定検出モジュールから自動滴定監視モジュール352に、予測間隔と短期百分率変化(又は長期動向に記載されるものに整合する各呼吸測定値に基づく差)が与えられる。
【0201】
I−3.自動滴定監視モジュール
自動滴定監視モジュール352は、選択過程で自動滴定検出モジュール350により供給される動向情報を使用して、気道に送出される圧力への患者応答を決定することができる。例えば、自動滴定監視モジュールは、患者流量の波形形状が改善又は悪化しているかを決定し、これにより気道流量制限を改善又は悪化しているかを表示する。
【0202】
I−3−a.長期動向選択
図25は、長期動向分析から得られる情報の選択を記入したグラフ459である。上部閾値460と下部閾値462との境界を形成した選択窓461がグラフ459の中心に設けられる。図25では、1=改善傾向、0=変化なし、−1=悪化傾向の3選択レベルがある。
【0203】
自動滴定検出モジュールにより実行される長期動向分析間に計算される誤差窓464に対応する関連する統計上の誤差と共に、動向付けされたデータを上部閾値460と下部閾値462と比較する。全誤差窓は、割り当てられた閾値レベルを超えなければ、1の選択を発生しない。この閾値レベルは、通常7%から8%の範囲で測定値から測定値まで変更する。図25では、8%範囲値が選択される。領域468に示すように、全誤差帯464が閾値レベル460を超えると、選択1が発生する。同様に、領域468に示すように、全誤差帯464が閾値レベル462より下方になると、選択−1が発生する。他面、領域470では、選択零(0)が発生する。
【0204】
I−3−b.短期動向選択
前記短期動向分析及び下記の短期選択計画を指定して、患者の流量波形形状に短期変化又は比較的急激な変化が検出される。単一呼吸群(即ち、4呼吸周期を含む1データ点)を前記第1の短期動向基準及び第2の短期動向基準と比較し、長期動向データに関連して単一呼吸群が統計的に重大な変化を示したか否かを決定することにより、短期変化を検出することができる。
【0205】
(1)新規に発生するデータ評価点が予測間隔に等しいか又は予測間隔外にあるとき及び(2)データ評価点が予め決められた閾値量だけ動向データ評価点の始点から異なるとき、データ評価点(即ち、呼吸群)は、長期動向の開始に有意な変化を示すものと認められる。従って、前記状態(1)及び(2)の両方が適合すれば、データ評価点が動向データ評価点の開始より上方にあるか又は下方にあるかによって、短期動向は、選択1又は−1を発生する。別の状況で、零(0)の選択が発生される。短期動向に使用される動向データ評価点の開始とデータ評価点との間の差又は百分率変化の閾値は、通常9%から14%までの範囲で測定から測定まで変化する。
【0206】
I−3−c.最終選択
各個々の呼吸測定値に対して長期選択及び短期選択が出されたとき、全測定からの選択は、蓄積されかつ単一の最終選択に纏められる。下表は、最終選択過程を要約したものである。
【0207】
【表1】
【0208】
長期選択が零でない限り、各呼吸媒介変数の「結果」欄に示す値は、長期選択値である。長期選択が零のとき、短期選択値は、その呼吸媒介変数の結果欄に記入される。これらの結果を総計して、最終選択が作成される。
【0209】
本発明により実施する唯一の他の補足説明は、最終選択を総計して、非零の平坦度結果が、吸気波形形状、即ち真円度及び非対称度の形状に関連する他の非零選択呼吸媒介変数に矛盾すれば、平坦度呼吸媒介変数を無視することにある。これは、前記表の「c」にアスタリスクを付して、平坦度値「c」を無視する場合があることを意味するためである。例えば、平坦度の結果が1で、真円度又は非対称度の何れかの媒介変数が、-1では、最終選択の合計では、平坦度の結果が無視される。同様に、平坦度の結果が-1で、真円度又は非対称度媒介変数のいずれかが1で、最終選択の合計では、平坦度の結果が無視される。
【0210】
前記表から−4〜4の範囲に収められる最終選択「x」を使用して、患者流量波形形状を3つの主要な状態に決定することができる。患者吸気流量の状態は、気道に供給される圧力に対する患者の応答も表示する。圧力への患者応答状態を纏めた主要3状態と各状態に関する最終選択値を以下に示す。
1) 統計的に重要な悪化 x≦-2
2) 統計的に変化なし -2<x<2
3) 統計的に重要な改善 x≧2
【0211】
自動滴定制御装置が、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を増加し、減少し又は一定に保持しているか否かに無関係に、前記3状態を全て決定することができる。下表は、各状態(1)、(2)又は(3)が各x値に該当する場合を要約する。
【0212】
【表2】
【0213】
下記に詳述するように、自動滴定制御装置354により実行されるある圧力制御動作間の状態(2)と(3)との間に介入する第4の状態が加えられる。状態(2)と(3)との間にある付加状態を状態(2.5)と称し、統計的に限界改善を示す患者状態、即ち、患者吸気波形に相当する。ある圧力制御動作間の最後の選択が+1、即ち、x=+1に等しいとき、この状態が発生すると認められる。圧力への患者応答を大別する4状態と、各状態に関する最終選択値xを下記に示す。
1) 統計的に重大な悪化 x≦-2
2) 統計的に変化なし -2<x<1
2.5) 統計的に限界 x=1
3) 統計的に重要な改善 x≧2
【0214】
下表は、この状態で各x値に該当する各状態(1)、(2)、(2.5)又は(3)を大別する。
【0215】
【表3】
【0216】
患者の状態変化に対し自動滴定制御層を微調整すべき方法に依存して、状態を更に増加し又は減少できることを理解すべきである。
【0217】
I−4.自動滴定制御モジュール
圧力支援装置から患者の気道に供給される圧力への患者応答表示である前記最終選択レベルを現在の動作モードと共に使用して、自動滴定制御装置が実行する何らかの機能を決定することができる。次に、一般的な3症例を挙げて、自動滴定制御装置の動作を説明する。
【0218】
I−4−a.症例1−始動
図26は、症例1間に圧力支援装置から発生する吸気気道陽圧曲線500を示す。即ち、この症例では、呼気気道陽圧を一定に保持しつつ、吸気気道陽圧が調整される。圧力支援レベルの最大値PSminレベル又は最小値PSmaxレベルを保持する必要があれば、呼気気道陽圧のみを変化させる。圧力支援装置を作動すると、状態保持期間502に入り、データが収集される。好適な実施の形態では、状態保持期間502は、5分間継続する。しかしながら、十分な量のデータを収集するのに十分な時間が経過する限り、状態保持期間502の持続時間を5分以外の値に設定することもできる。状態保持期間502の終端で、自動滴定制御装置354は、回復状態を開始するが、回復状態では、毎分約0.5cmH2Oの緩慢な圧力増加速度で患者吸気気道陽圧を2.0cmH2Oの目標圧力で増加させる。
【0219】
この圧力傾斜増加間に、4状態(1)、(2)、(2.5)及び(3)を使用して、自動滴定監視モジュール352により間断なく動向データを検査し、その後、圧力傾斜増加の間に、状態(1):患者流量波形が統計的に重大な悪化を経験したか、状態(2):統計的に変化ないか、状態(2.5):統計的に限界改善か、又は状態(3):統計的に重大な改善かが決定される。しかしながら、圧力増加の開始後2.5分以下の時間経過するまで、前記決定に関する動作を行わない。2.5分の動作停止窓504を設けると、動向決定の目的に十分なデータを圧力支援装置が収集することができる。例えば、動作停止間隔の持続時間を2〜4分間で変更できることは、理解できよう。しかしながら、動作停止窓を延長する程、考え得るどの呼吸障害を治療でも圧力支援装置の応答性が低下する。
【0220】
傾斜圧力506間に患者吸気流量波形が改善し又は悪化すれば、患者吸気流量波形の改善又は悪化が終了するまで、圧力傾斜及び動向決定を継続し、これにより、例えば、患者状態が(3)から(2.5)に変化し又は患者状態が(1)から(2)に変化する。患者状態が(3)から(2.5)まで変化する症例では、通常0.5cmH2Oの少量だけ、自動滴定制御装置354は、吸気気道陽圧を低下し、その後、圧力曲線508に示すように、5分の状態保持期間が開始される。圧力傾斜間に改善がなく、即ち、患者吸気流量波形が同一の状態(2)又は状態(2.5)のままのとき、圧力曲線510に示すように、自動滴定制御装置354は、吸気気道陽圧を2.0cmH2O減少し、その後、5分の状態保持期間512を開始する。この圧力制御手順を行って、流量波形内に流量限界が存在するか否かを決定し、流量限界が最早存在しない理想的な圧力を見付けることができる。何れかの状態保持期間中に流量限界が検出(患者が状態又は睡眠段階を変更したことを示す)されれば、緩慢な圧力増加を再び始動する。
【0221】
I−4−b.症例2−より高優先順位制御装置からの復帰
通常一晩中反復して圧力支援治療を実施する間に、より優先順位の高い複数のレベル制御装置、例えば鼾制御装置144又は無呼吸/呼吸低下制御装置168は、前記のように、一時的に制御を行いかつ圧力変動を実行する。高優先順位の制御装置の全活性動作が終了すれば、制御は、自動滴定制御装置354に戻される。優先順位のより高い制御装置から制御を引き継ぐとき、初期5分の状態保持期間を3分以下から3.5分期間に置換することを除き、自動滴定制御装置は、前記症例1と同一の動作を実行する。
【0222】
I−4−c.症例3−患者圧力減少
図27A及び図27Bに示す圧力曲線520に示すように、症例1又は症例2の何れかから最後の5分状態保持期間が完了するとき、次の探索手順が開始する。この探索手順では、曲線522に示すように、圧力支援装置から送出される圧力は、1分間に0.5cmH2Oの減圧速度で緩慢に低下される。また、この例示的な実施の形態では、圧力支援レベルの最小値PSmin及び最大値PSmaxを超えない限り、呼気気道陽圧は、一定に保持される。圧力減少を開始する前に、呼吸測定動向は、利用可能なデータの最新の3分まで初期化される。
【0223】
0.5cmH2Oだけ吸気気道陽圧が減少した後に、動向データを断続的に検査して、圧力傾斜期間(吸気気道陽圧減少期間)に患者吸気流量グラフが悪化したか否かが決定される。この動向分析では、3患者状態(1)、(2)及び(3)のみが考慮される。患者流量グラフに悪化を検出しなければ(状態(2))、図27Aに示すように、最小システム圧力Pmin(IPAPmin又はEPAPmin)に到達するまで、吸気気道陽圧傾斜と動向検出とが継続される。その後、自動滴定制御装置354は、前記症例1の吸気気道陽圧制御を開始し、5分の状態保持期間502を開始する。
【0224】
吸気気道陽圧減少間に、例えば、状態(2)から状態(1)に移行して患者吸気流量グラフが悪化したとき、曲線526に示すように、吸気気道陽圧を迅速に1.5cmH2Oだけ増加し、その後、曲線528に示すように、10分以下の時間で吸気気道陽圧を一定に保持する。図27Bを参照されたい。10分保持時間が終了すれば、自動滴定制御装置354は、症例1について説明した回復状態に直接入り、吸気気道陽圧の増加506を始動する。
【0225】
この全体的な手順により流量限定が発生する圧力を決定し、その後、理想的な設定値に圧力を上昇する。前記手順を一晩中反復して、患者の状態が変化するときに最適の吸気気道陽圧を検出しかつ実用上の低いレベルに圧力を保持して、快適性が改善される。何らかの状態保持期間(患者の状態が変化し又は睡眠に移行したことを示す)に流量限界が検出されれば、緩慢な吸気気道陽圧傾斜上昇(回復状態)を再び始動する。
【0226】
自動滴定制御装置が存在し得る流量限界点を探索している吸気気道陽圧減少間に、鼾発生の機会は、増加する。このため、本発明は、鼾制御装置による制御を鼾監視モジュール142が要求する鼾事象の要求数を3つから2つに減少することを企図する。これは、圧力減少時間中に鼾に対するシステムの感度を有効に増加するためである。
【0227】
状態保持期間502、508、512、520又は528等のどの状態保持期間の間でも、自動滴定制御装置354は、症例1で説明した回復状態に入り、最適の吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を患者に供給することを試みることができる。例えば、状態保持期間中に分析された動向データから、患者の吸気波形グラフが統計的に重大な悪化(状態(1))を経験していることを示したとき、これが発生することがある。
【0228】
本発明では、圧力支援レベルの最小値PSmin又は最大値PSmaxを保持する必要がなければ、呼気気道陽圧を放置して吸気気道陽圧のみを調整することを説明した。これは、本発明の例示的な実施の形態に過ぎないことは、理解されよう。本発明は、自動滴定過程間に吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を調整することも企図する。例えば、支援圧力を常時一定に保持しながら吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を調整できる。
【0229】
J.中枢性対閉塞性無呼吸/呼吸低下事象の検出
無呼吸/呼吸低下制御層の動作を検討した前記G項では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、閉塞性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象との差を検出できないことを指摘したが、患者に圧力を供給する方法により、この欠陥を補償することができる。しかしながら、本発明の別の実施の形態では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164を介して閉塞性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象との差を検出することを企図する。例えば、無呼吸/呼吸低下期間中、無呼吸/呼吸低下期間の終了直後又は下記のように前記両期間中に患者吸気波形を監視することにより、これを達成できる。
【0230】
閉塞性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験していることを検出すれば、G項で説明したように、患者に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とが供給される。しかしながら、中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験していれば、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を増加しないことが好ましい。患者に送出される吸気気道陽圧及び/又は呼気気道陽圧を増加しても、中枢性無呼吸/呼吸低下の症状を治療できないことが一般に認識されている。従って、本発明は、患者が中枢性無呼吸/呼吸低下を体験していると認められるとき、患者に送出する吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を現在のレベルに保持するか又は吸気気道陽圧若しくは呼気気道陽圧を減少することも企図する。
【0231】
中枢性無呼吸/呼吸低下事象を決定しても、無呼吸/呼吸低下検出モジュールが無呼吸/呼吸低下事象を無呼吸/呼吸低下としては拒絶することにより、本発明の一実施の形態では、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を現在のレベルに保持することができる。この場合に、あたかも無呼吸/呼吸低下事象を検出せずに、圧力支援装置が動作して、無呼吸/呼吸低下制御装置168が圧力支援装置の制御を要求しない。また、本発明は、患者が中枢性無呼吸を体験していることを決定すれば、患者に送出する吸気気道陽圧及び/又は呼気気道陽圧を減少することを企図する。
【0232】
閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象とを本発明が区別する方法を図28〜図30について説明するが、図28〜図30は、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象(図28及び図30)間と、中枢性無呼吸/呼吸低下事象(図29)間との例示的患者流量波形を示す。閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているかを無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により決定することが好ましく、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166にその決定信号を付与して無呼吸/呼吸低下制御装置168を作動させ、前記のように、適切な圧力に制御することができる。
【0233】
現在の好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下期間中の患者吸気波形を監視して、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を体験しているか否かが決定される。図28及び図29にそれぞれ示す不確定な患者流量波形600と602とでは、G−1項及びG−4項で説明したように決定する無呼吸/呼吸低下事象は、点604で始まり、点606で終了する。本発明の例示的な実施の形態に使用される技術を示す波形600及び602を使用して、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているか否かが決定される。これらの波形は、必ずしも正しい縮尺でなく、実際の患者流量を正確に表示していない。図28及び図29の点線は、無呼吸/呼吸低下事象が発生する患者流量の谷部を示す。本発明では、患者流量の形状を検査して、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を体験しているか否かを決定するのがこの谷部、即ち無呼吸/呼吸低下期間である。
【0234】
詳細には、患者の吸気波形は、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間に制限された空気流について同一の形状特性を示す傾向があることを本発明者らは、理解した。即ち、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間に、平坦度の増加(より平坦性)、真円度の減少(丸みのより減少性)、非対称度の増加(非対称度のより増加性)(図22に示すように)又はこれらの特性の何れかの組み合わせを示す波形が存在する。
【0235】
例えば、図28では、2点604と606間の無呼吸/呼吸低下期間に発生する吸気波形610は、平坦度が増加し、真円度が欠如し、非対称度が増加し又はこれらの特性の組み合わせが強調される傾向があり、波形600は、中枢性無呼吸/呼吸低下よりむしろ閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下を示す。他方、図29では、2点604と点606間の無呼吸/呼吸低下期間中に発生する吸気波形612は、平坦度の非増加、比較的正常な真円度及び非対称度の非増加が強調される傾向があり、波形602は、中枢性無呼吸/呼吸低下よりむしろ中枢性無呼吸/呼吸低下を示す。このように、本発明は、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164を介して無呼吸/呼吸低下期間間に発生する波形の平坦度、真円度及び非対称度を検出して、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているか否かを決定することを企図する。現在の好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下期間中にこれらの形状基準の全てが監視される。本発明は、例えば、平坦度等のわずか単一基準を監視して、この決定を行うことを企図する。
【0236】
本発明の第2の実施の形態では、無呼吸/呼吸低下の終了直後の期間の患者吸気流波形を監視して、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を体験しているか否かを決定する。詳細には、本発明者らは、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下又は中枢性無呼吸/呼吸低下を患者が患ったか否かに依存して、患者の吸気流量が無呼吸/呼吸低下事象の末期に異なることを理解した。詳細には、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間の患者吸気流量波形620を示す図30から明らかなように、閉塞性無呼吸/呼吸低下事象の終了時に、図30の呼吸波形622に全体的に示すように、患者が比較的大きな喘ぎ呼吸又は一連の喘ぎ呼吸を行う傾向があることを決定した。他方、中枢性無呼吸/呼吸低下事象の末期に、患者は、大きな呼吸を行う傾向がない。図29を参照されたい。
【0237】
このように、本発明は、患者が無呼吸/呼吸低下の末期に大きな喘ぎ呼吸を行ったか否かを決定することにより、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を経験したかを決定することを企図する。例えば、無呼吸/呼吸低下期間の末期直後の周期的呼吸容積及びこの容積を予め決められた閾値容積と比較することにより、これが達成される。呼吸が閾値レベルを超える周期的容積を有するとき、患者は、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下を経験したものと判断される。このとき、G項で前記したように、患者に圧力が送出される。
【0238】
本発明は、周期的な容量以外の呼吸特性を監視して、患者が無呼吸/呼吸低下期間の末期に大きな喘ぎ呼吸を行っているか否かを決定することを企図する。例えば、閾値に対する最大流量も測定して、患者が比較的大きな呼吸を行っているか否かを評価することができる。
【0239】
閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているか否かを決定する2つの技術を前記のように説明した。前記技術を単独で又は組み合わせて使用して、この決定を行うことができる。また、本発明は、心原性呼吸事象の監視又は無呼吸/呼吸低下期間の間に行う気道開通試験等の2つの前記技術と組み合わせて又は単独で中枢性無呼吸を検出する何らかの従来技術を使用することを企図する。
【0240】
現在の好適な実施の形態では、患者に供給される吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧がある閾値以上でなければ、無呼吸/呼吸低下制御層は、閉塞性/拘束性と中枢性無呼吸/呼吸低下事象とを区別しない。無呼吸/呼吸低下が中枢性か又は閉塞性であったかに係わらず、比較的低い吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧で患者を治療しているとき、この閾値により圧力治療を確実に行うことができる。吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧がこの閾値に満たないとき、圧力支援装置は、G項に記載した圧力治療を行う。しかしながら、比較的高い吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧、即ち圧力閾値より高い吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧で患者を治療しているとき、前記のように、中枢性無呼吸に対する圧力増加には治療効果がないので、無呼吸/呼吸低下が中枢性か閉塞性か否かを決定することが好ましい。
【0241】
好適な実施の形態では、多くの患者に適度な圧力支援を行う圧力レベルと臨床データの分析から決定した8cmH2Oに圧力閾値を設定するが、患者が中枢性無呼吸/呼吸低下を体験しているとき過度に高い圧力を供給しても、高すぎることはない。この閾値は、他の値でもよく、患者の特性又は患者の病歴の特性に依存して、調節することができる。
【0242】
K.結論
本発明は、図2に示す制御装置に付加的な制御層を設けることも企図することを理解できよう。図2に示す制御層の1つ又はそれ以上を圧力支援装置の所望動作性能に基づき省略することができる。また、本発明は、図2に示す優先順位に限定すべき意図はない。例えば、無呼吸/呼吸低下制御層(優先順位第6)を大きな漏洩制御層(優先順位第5)と交換することにより、より高い優先順位を無呼吸/呼吸低下制御層(優先順位第6)に付与することもできる。
【0243】
図2に示す要求プロセッサ106は、一般的に複数の制御モジュール間の変化に基づき、検出モジュール102、監視モジュール104及び制御モジュール100をリセットする。点線108より上の機械ベースの制御層により、検出モジュール102のみが一般的にリセットされる。制御層がその圧力治療を完了した後に、監視モジュール104は、一般的にリセットされ、圧力支援装置の制御は、下位の制御層に戻される。これが行われるので、複数の監視モジュールは、最後の圧力治療以降患者の推移を追うことができる。また、例えば、鼾を伴う呼吸低下のように2つの重複する患者事象が発生する状況で患者の過治療を回避するために、これが重要である。鼾制御装置が鼾状態を治療しながら、同時に発生している呼吸低下を間接的に治療しているとき、呼吸低下監視モジュールは、リセットされ、呼吸低下監視モジュールからの付加的継続要求を停止することができる。現在の制御層の優先順位に基づき、制御モジュール100は、リセットされる。現在の制御装置が圧力支援装置の制御を下位の制御層に戻すとき、全ての下位制御層を通常リセットして、最後の制御層の停止後に、制御層の処理が開始する。
【0244】
L.他の適用
上記実施の形態では、呼気間に供給する圧力よりも高い圧力を吸気間に通常供給するバイレベル圧力支援装置に本発明での自動滴定機能が適用される。圧力支援の他のモードと組み合わせて、上記バイレベル自動滴定技術を使用することを本発明が企図することは、理解されよう。本発明での自動滴定技術の用途に適するモードの1つにバイフレックス(Bi-Flex[登録商標])治療が含まれるが、それに限定されない。換言すれば、基準又は目標となる吸気気道陽圧レベル又は呼気気道陽圧レベルの制御に本発明での自動滴定技術を適用でき、前記目標に組み合わせて他の圧力制御法を利用することができる。
【0245】
米国特許第5,535,738号、第5,794,615号、第6,105,575号、第6,609,517号及び第6,932,084号は、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧等の基本圧力を変更して患者に圧力支援治療を与える比例気道陽圧(PPAP[proportional positive airway pressure])と指称される圧力支援技術を開示し、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。即ち、本発明は、前記自動滴定技術を使用して、比例気道陽圧に関する前記米国特許に示される基本圧力を制御することを企図する。
【0246】
バイフレックス圧力支援と称する比例気道陽圧圧力支援技術の一実施の形態では、第1の基本圧力は、呼吸周期の吸気段階間に患者に適用される吸気気道陽圧であり、第2の基本圧力は、呼気段階間に患者に適用される呼気気道陽圧である。一実施の形態では、呼気段階の少なくとも一部の期間にある量だけ全体的に又は部分的に呼気気道陽圧を低下し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間中にある程度の圧力を軽減することができる。単独で又は呼気圧力軽減の実施の形態と組み合わせて使用できる他の実施の形態では、全体的若しくは部分的にある量だけ吸気気道陽圧を低下し又は変更して、修正吸気圧力曲線を与え又は吸気圧力を軽減することができる。
【0247】
本発明の更なる実施の形態は、探索に基づく追加の制御なし又は事象に応答する追加の制御なしで、本明細書で説明する自動滴定技術の事象監視のみ及び検出能力のみを使用することを企図する。本質的には、この実施の形態は、制御モジュール100及び要求プロセッサ106を非作動状態にしながら、検出モジュール102と監視モジュール104とを作動状態にすることに相当する。本発明の実施の形態の前記変更は、患者を監視する機能、圧力支援装置の動作又はそれらの両方を提供する。
【0248】
呼気間に供給される呼気気道陽圧から吸気間に供給される吸気気道陽圧へのシステムの移行時に発生する圧力の上昇時間、圧力上昇形状、圧力勾配又は他の圧力増加特徴を使用者が設定できることを、本発明は、企図する。同様に、吸気間に供給される吸気気道陽圧から呼気間に供給される呼気気道陽圧へのシステム移行時に生じる圧力減少時間、圧力減少形状、圧力勾配又は他の圧力減少特徴を使用者が設定できることも本発明は、企図する。
【0249】
例えば、鼾治療のとき、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を調整して患者を治療できることは、理解できよう。どの圧力制御を選択するかは、医療団体で議論され、又は患者に特定のものであり、呼気気道陽圧の変更により最良に治療される患者もいれば、他の患者は、吸気気道陽圧の変更により最良に治療される。前記の理由により、本発明は、特定の基準に基づきかつ/又は使用者の選択により、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を調整すべきか否かを決定することを企図する。例えば、制御装置は、患者の状態、患者に付与される治療法又はそれらの両方を監視して、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の何れを制御するかを選択することができる。例示的な実施の形態では、圧力支援装置は、現在の治療圧力の圧力支援レベルを監視し、制御装置は、監視状態に基づき、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧の何れを調整するかを選択する。
【0250】
監視事象に基づき、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を調整して使用者又は介護者が設定できるように圧力支援装置を設定することもできる。例えば、ある医者は、呼気気道陽圧を調整して鼾を治療することを選択し、他の医者は、吸気気道陽圧を調整して鼾を治療することを選択し、更に別の医者は、吸気気道陽圧の調整と呼気気道陽圧の調整とを部分的に組み合わせて鼾を治療することを選択してもよい。圧力支援装置に情報を入力することにより、鼾が検出されるとき、医者又は他の介護者が調整すべき圧力を選択することができる。本発明は、吸気気道陽圧を制御することにより患者を治療するプログラムで制御装置を制御し、鼾がまだ発生すれば、吸気気道陽圧から呼気気道陽圧に制御を切り替え又は逆に呼気気道陽圧から吸気気道陽圧に制御を切り替えることも企図する。患者の状態、圧力支援装置の状態(処方されている治療法)圧力支援装置に付与される入力又はそれらの何れかの組み合わせを監視する方法及び監視される基準に基づき吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を制御すべきか否かを選択する方法には、広範囲に種々の方法が存在することは、理解されよう。
【0251】
本発明は、上昇時間、減少時間又はそれらの両方を自動制御して、例えば、患者快適性を最適化することを企図する。圧力上昇時間、圧力減少時間又はそれらの両方を自動的に調整する装置は、米国特許第6,532,960号及び第6,640,806号に開示され、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0252】
どのような自動滴定圧力制御装置も備えない事象監視及び事象検出は、これらに限定されないが、持続気道陽圧(CPAP)、バイパップ(BiPAP)、シーフレックス(C-Flex)及びバイフレックス(Bi-Flex)治療を含む圧力支援治療の全ての実在モードに実施することができる。検出される事象の情報は、装置内部に記録され、取り外し可能な記憶媒体に記録され、圧力支援装置から有線接続若しくは無線接続等により外部に伝達され、又はこれらの何れかの組み合わせにより記録される。例えば、検出される事象に基づいて患者が十分な治療を受けたか否かを決定するときに、この情報は、有効である。
【0253】
親出願に開示される自動持続気道陽圧(CPAP)技術に類似する装置と方法を示す本発明は、自動バイレベルモードとも称する気道陽圧治療のバイレベルモードを使用することにより、持続気道陽圧に耐えられない患者の適応性の増加を助長することができることは、理解できよう。本明細書に記載する自動バイレベル法は、気道閉塞と鼾とを防止するのに設定される基準呼気気道陽圧レベルと呼吸低下と流量制限とを防止するのに設定される吸気気道陽圧レベルとにより気道を安定化することができる。自動持続気道陽圧について説明した利点に加え、吸気と呼気とに異なる圧力レベルを与える自動バイレベル法は、持続気道陽圧に耐えられない患者に快適性を与えるものと期待される。
【0254】
現在最も実用的かつ好適と思われる実施の形態を図示して詳記したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明の自動滴定技術により動作される圧力支援装置の略示図
【図2】本発明の自動滴定技術を実施する制御装置の略示図
【図3】本発明の自動滴定技術の種々の制御特性を始動すべきか否かを決定する基準を示す圧力対流量線図
【図4】本発明により使用する実際の最大流量と加重最大流量Qwpeakとの差を示す別の例示波形図(図4A〜図4C)
【図5】本発明が自動滴定機能の実行時に使用する様々な媒介変数を算出する方法を説明する例示的吸気波形を示すグラフ
【図6】移動窓(時間枠)期間中に蓄積される呼吸の加重最大流量の例示ヒストグラム
【図7】本発明の技術的思想による呼吸低下検出過程を示すフローチャート(図7A〜図7E)
【図8】本発明の無呼吸検出技術に使用する間隙充填過程の説明に使用する患者流量波形の例示グラフ
【図9】圧力支援装置の無呼吸/呼吸低下治療手順の動作の例示患者圧力グラフ
【図10】加重最大流量の分散例を示すグラフ(図10A及び図10B)
【図11】本発明の可変呼吸検出過程により平均流量を図表化し又は正常化する過程を示すグラフ
【図12】患者が可変呼吸を体験していることを表すヒステリシス閾値基準を示すグラフ
【図13】本発明の可変呼吸制御モジュールの圧力制御動作を示すグラフ
【図14】本発明の実施の形態での真円度及び平坦度の算出の説明に使用する例示的患者吸気波形を示すグラフ(図14A〜図14C)
【図15】真円度及び平坦度の算出の説明に使用する例示的患者吸気波形及び正弦波テンプレートを示すグラフ
【図16】異なる正弦波テンプレートの極端な例を示すグラフ(図16A及び図16B)
【図17】複数の正弦波テンプレートの比を調整するのに使用する規格化曲線を示すグラフ
【図18】本発明の真円度及び平坦度の算出過程によりテンプレートの増幅度の修正法を示す正弦波テンプレートを表すグラフ(図18A及び図18B)
【図19】真円度と平坦度の算出の説明に使用する例示的患者吸気波形及び対応する正弦波テンプレートを示すグラフ(図19A及び図19B)
【図20】本発明の技術的思想による平坦度の計算法を示す患者吸気波形を表すグラフ
【図21】本発明の技術的思想による真円度の計算法を示す患者吸気波形を表すグラフ
【図22】本発明の技術的思想による非対称度の計算法を示す患者吸気波形を表すグラフ
【図23】本発明の技術的思想による動向分析目的に対する吸気媒介変数データの蓄積法を示すグラフ
【図24】本発明の動向分析技術を示すグラフ
【図25】本発明による長期間動向分析中に実施される選択過程を示すグラフ
【図26】圧力増加動作中に圧力支援装置から出力される例示的圧力曲線を示すグラフ
【図27】本発明の圧力支援装置から出力される他の例示的圧力曲線を示すグラフ(図27A及び図27B)
【図28】閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下発生中の例示的患者流量波形を示すグラフ
【図29】中枢性無呼吸/呼吸低下発生中の患者流量波形を示すグラフ
【図30】閉塞性無呼吸/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間の他の例示的患者流量波形を示すグラフ
【図31】本発明の技術的思想による圧力傾斜周期間の吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルの制御法を例示する波形を示すグラフ
【図32】本発明の技術的思想による圧力傾斜周期間の吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルの制御法を例示する波形を示すグラフ
【図33】本発明の技術的思想による圧力傾斜周期間の吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルの制御法を例示する波形を示すグラフ
【符号の説明】
【0256】
(32)・・圧力発生装置、 (36)・・患者回路、 (44)・・監視装置、 (50)・・制御装置、
【優先権主張】
【0001】
本願は、米国特許法第120条及び第365条の規定により、2005年9月1日に出願された米国特許出願第11/217,964号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、要約すると、圧力支援装置及び呼吸不全を治療する方法、特に、患者(「被験者」又は「使用者」ともいう)に供給される吸気圧力及び呼気圧力を最適化して、患者に快適に供給される圧力を最小化しながら、呼吸不全を治療するバイレベル(2段階)自動滴定(タイトレーション)圧力支援装置及び圧力支援装置を自動的に滴定する方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
睡眠中に呼吸不全に苦しむ多くの人が存在することは、周知である。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、世界中で数百万人が患う呼吸障害の共通例である。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、通常上気道又は咽頭等の気道閉塞により呼吸不能が発生して反復して睡眠が中断される状態である。気道の閉塞は、上気道体節を安定化させる筋肉の少なくとも一部が全部弛緩して、これにより組織が気道を虚脱させ崩壊させる現象であることが一般に認められている。
【0004】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群を患う患者は、生理的に過度の酸素ヘモグロビン不飽和化のため、完全な又はほぼ完全な空気呼吸換気停止及び睡眠分断を睡眠時に間欠的に体験する。これらの兆候は、臨床上、過度の昼間眠気、心臓不整脈、肺動脈高血圧症、うっ血性心不全及び/又は認識機能障害を誘発することがある。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の他の症例は、睡眠中のみならず覚醒状態中の右心室機能障害及び二酸化炭素蓄積症並びに連続的な減少動脈酸素分圧を含む。睡眠時無呼吸は、潜在的に危険な機器を駆動しかつ/又は動作する間に事故が発生する高い危険性が存在するのみならず、前記要因による過度の死亡率に至る危険がある。
【0005】
完全な気道閉塞を患わない患者でも、気道に部分的な閉塞のみが存在すれば、睡眠から覚醒する別の症状が発生する可能性がある。気道の部分閉塞は、典型的に呼吸低下に見られるような表在(浅い)呼吸の原因となる。呼吸不全の他の症例は、上気道抵抗症候群(UARS)及び通常鼾に見られる咽頭壁の振動等の気道振動を含む。また、上気道抵抗症候群、呼吸低下又は無呼吸を招来する気道閉鎖を伴う鼾もあることも公知である。このように、鼾は、患者が異常な呼吸を体験している信号となる。
【0006】
患者の気道に持続気道陽圧(CPAP)を適用して、前記呼吸障害を治療することは、公知である。有効に開放気道を補強する陽圧は、肺への呼吸通路を開放状態に保持する。患者の呼吸周期又は患者の呼吸動作に対応させて患者に供給する気体圧力を変化させて、患者の快適性を増進させて、陽圧治療を行うことも公知である。この圧力支援技術は、呼気気道陽圧(EPAP)より高い吸気気道陽圧(IPAP)を患者に供給するバイレベル圧力支援法と呼ばれる。
【0007】
患者に持続陽圧を供給し、鼾又は呼吸低下、無呼吸若しくは上気道抵抗症候群を体験する患者から検出する状態に基づき、この圧力レベルを自動的に調節する陽圧治療法も公知である。この圧力支援技術は、圧力支援装置の作動により呼吸不全の治療に必要な圧力レベルでのみ患者に呼吸気体圧力を供給するので、自動滴定型圧力支援法と呼ばれる。
【特許文献1】米国特許第5,245,995号公報
【特許文献2】米国特許第5,259,373号公報
【特許文献3】米国特許第5,549,106号公報
【特許文献4】米国特許第5,845,636号公報
【特許文献5】米国特許第5,458,137号公報
【特許文献6】米国特許第6,058,747号公報
【特許文献7】米国特許第5,704,345号公報
【特許文献8】米国特許第6,029,665号公報
【特許文献9】米国特許第6,138,675号公報
【特許文献10】米国特許第5,645,053号公報
【特許文献11】米国特許第5,335,654号公報
【特許文献12】米国特許第5,490,502号公報
【特許文献13】米国特許第5,535,739号公報
【特許文献14】米国特許第5,803,066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の自動滴定型圧力支援装置の例は、スリバンら名義の上記特許文献1、グルエンケら名義の上記特許文献2、特許文献3及び特許文献4、アクセら名義の上記特許文献5及び特許文献6、バーソン・ジョーンズ名義の上記特許文献7、特許文献8及び特許文献9、レマーズら名義の上記特許文献10、ラッポポートら名義の上記特許文献11、特許文献12、特許文献13及び特許文献14に記載されている。レマーズら名義の特許文献10の例外を除き、前記事前圧力支援装置の全て患者の監視状態に応答する。即ち、異常な呼吸を示す状態が発生すれば、装置は、圧力支援状態を変更して、異常状態を治療する。しかしながら、この治療技術が必ずしも全ての患者に適するとは限らず、一時的に圧力を緩和する例外状態に圧力支援装置を不必要に応答させることもある事実を本発明者らは、発見した。
【0009】
また、前記自動滴定圧力支援装置を作動させて、患者の吸気波形での気体流量が制限される鼾等の患者の状態の1つを治療する試みがなされている。1つ又は2つの状態に集中する前記極小目標治療又は研究法は、多様な変数による影響を受ける本質的に極めて複雑なシステムであるため、患者に適切な治療を行うことができない。
【0010】
また、前記従来の自動滴定装置により患者の状態を検出する複数の異なる研究が行われている。各研究により、呼吸障害を実際に示す患者の状態を検出する性能の改善が試みられている。しかしながら、各研究は、体力を要する方法で多くの患者を監視しかつ治療する能力には限界があると考えられる。
【0011】
最後に、従来の自動滴定圧力支援装置は、例えば、患者の吸気周期と呼気周期とに同一の一定圧力を供給する持続気道陽圧装置である。この方法は、多くの患者に受け入れられるが、最適の圧力支援治療を施し又は全患者を快適に治療できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
よって、本発明の目的は、従来の自動滴定装置の欠点を解決するバイレベル自動滴定圧力支援装置を提供することである。吸気時に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生しかつ呼気時に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する圧力発生装置を備えるバイレベル自動滴定圧力支援装置を提供する本発明の一実施の形態により、前記目的は、達成される。圧力発生装置と患者の気道との間は、患者回路により連結される。監視装置は、患者回路又は圧力発生装置に接続され、患者の気道の気体圧力、患者の気道の気体流量又は気体圧力と気体流量の両方を示す媒介変数(パラメータ)を測定又は監視し、圧力を示す圧力信号、気体流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を出力する。監視装置及び圧力発生装置に接続される制御装置(コントローラ)は、監視装置の出力に基づき、圧力発生装置を制御する。詳細には、制御装置は、プログラム制御されて、(1)鼾、(2)無呼吸、(3)呼吸低下又は(4)圧力支援装置からの大量漏洩の少なくとも1つを監視する。大量漏洩は、如何なる意図的な装置漏洩よりも十分に多量の装置漏洩である。制御装置は、前記状態(1)、(2)、(3)又は(4)の何れか1つの発生に基づき、吸気気道陽圧(IPAP)及び呼気気道陽圧(EPAP)を独立して調整する。
【0013】
本発明の更に別の目的は、前記機能を実行する圧力支援装置による圧力支援治療法を患者に提供することである。
【0014】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の動作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.装置
図1は、本発明の技術的思想によるバイレベル自動滴定技術を実施する圧力支援装置30の基本構成を示す略示図である。圧力支援装置30は、全体を32で示す圧力発生装置と、導管36及び患者界面装置38とを有する患者回路34とを備える。図示の実施の形態では、圧力発生装置32は、圧力発生器40と、圧力発生器40の出力側に接続される圧力制御弁42とを備える。
【0016】
図1の矢印Aで示すように、呼吸気体源から供給される呼吸気体を受ける圧力発生器40は、患者(図示せず)の気道に供給される呼吸気体を図1の矢印Bに示すように大気圧より高い圧力で患者回路34に出力する。本発明の好適な実施の形態では、圧力発生器40は、例えば、気体源からの大気を入口で受ける送風機(ブロワ)、送風器(ベローズ)又はピストン等の機械式圧力発生器である。圧力制御弁42は、患者への呼吸気体流を制限し、図1の矢印Cに示すように、患者回路34からの呼吸気体流を偏向し又は呼吸気体流の制限と偏向の組み合わせにより、患者回路を通じて患者に供給される呼吸気体流の圧力を制御する。
【0017】
本発明は、圧力発生器40の動作速度を単独で制御し又は圧力制御弁42と組み合わせて制御して、患者に供給される呼吸気体流の圧力を制御することを企図する。動作速度を単独で制御して、患者に供給する呼吸気体流の圧力を制御するとき、圧力制御弁42を勿論省略することができる。前記のように、圧力発生器40と圧力制御弁42を単独で又は組み合わせて患者に供給する呼吸気体流の圧力を制御する他の技術も圧力支援装置30に実施できることは、当業者に理解されよう。例えば、圧力発生器40への気体流(図1の矢印A)を制御する流量制御弁(図示せず)を圧力発生器40の上流に設けて、患者に供給される気体出力流の圧力を制御することもできる。
【0018】
呼吸気体源は、通常周辺大気であり、後に、圧力発生装置により呼吸気体が加圧されて患者に供給される。本発明は、酸素源からの酸素又は酸素混合気体等他の呼吸気体源の使用を企図することは、理解できよう。また、本発明は、空気圧力を増加する送風機、送風器又はピストン等の圧力発生器を使用せずに患者回路を経て加圧空気タンクから患者の気道に加圧空気を直接供給できることも企図する。勿論、患者に供給する気体圧力を制御する圧力制御弁42等の圧力調整器も必要となろう。本発明の重要な特徴は、加圧呼吸気体を発生する気体源又は方法を必ずしも必要とせずに、加圧された呼吸気体を患者回路から患者に供給する点である。
【0019】
図1には、図示しないが、本発明は、大気からの一次気体流(矢印A)単独で又はこれに組み合わせて、二次気体流を設けることも企図する。例えば、圧力発生器40の上流又は圧力発生器40の下流に設けられる患者界面装置又は患者回路に適当な気体源から酸素流を供給して、患者に供給される呼吸酸素の比率を制御することができる。
【0020】
図示の実施の形態では、患者回路34の導管36は、圧力発生器40の出力端に接続された一端と、患者界面装置38に接続された他端とを有する。導管36は、圧力発生器40からの気体流を患者の気道に搬送できる何らかの管である。圧力発生器40に対し導管36の遠位端は、患者が自由に運動できる可撓性を有する。種々の部品を患者回路34に設け又は接続できることを理解すべきである。例えば、細菌濾過器、圧力制御弁、流量制御弁、センサ、計量器、圧力濾過器、加湿器及び/又は加熱器を患者回路の内外に取り付けることができる。同様に、消音器及び濾過器等の他の装置を圧力発生器40の入口及び圧力制御弁42の出口に設けることができる。
【0021】
患者回路34内の患者界面装置38は、導管36の端部を患者の気道に連絡する装置である。適当な患者界面装置の例は、鼻マスク、口マスク若しくはマウスピース、鼻/口マスク、鼻カニューラ、気管内チューブ、挿入管、フード若しくは全面型面体(フルフェイスマスク)を含む。適当な患者界面装置の前記リストは、限定列挙でも完全列挙でもないことを理解すべきである。
【0022】
本発明の単一アーム型患者回路では、図1の矢印Dに示すように、患者から排出される気体は、通常排気孔43から患者回路の外部に排出される。図示の実施の形態では、排気孔43は、患者回路34の遠位端に設けられる。圧力制御弁42を圧力発生器に設けても、患者の一回呼吸量及び圧力支援装置30により供給される圧力に依存して、僅かな量の呼気気体が患者回路34から圧力支援装置30に逆流し、圧力発生器の気体入口及び/又は圧力制御弁42を通じて大気中に排出されることもある。
【0023】
排気孔43は、患者回路34の内部を大気に接続する導管内に設けられた開口であり、圧力支援装置からの気体流を積極的に制御する機能はない。しかしながら、広範囲に多様性のある排気装置及び排気孔形態を本発明の圧力発生装置に使用できることは、理解されよう。例えば、ズロコウスキーら名義の米国特許第5,685,296号は、排気装置を通じて呼気流量を患者回路内の圧力範囲にわたりほぼ一定にする呼気装置及び方法を開示する。この呼気装置は、プラトー(吸気の終了後直ちに呼気を開始せずに、そのまま高い気道内圧を維持すること)呼気弁又はPEVと通常指称するこの呼気装置は、本発明の圧力支援装置と共に使用するのに適する。
【0024】
図1に示すように、圧力支援装置30は、患者に供給する気体流量及び気体圧力を監視する全体を44で示す監視装置を含む。図示の実施の形態では、監視装置44は、患者回路34内を流れる呼吸気体の流量を測定する流量センサ46を有する。本発明は、従来の呼吸気流計等の適当なセンサを流量センサ46に使用することを企図する。また、流量センサ46を導管36に直接接続する必要がないことを理解すべきである。これに対し、本発明は、患者回路内の空気流を定量的に測定できる何らかのセンサ又は複数のセンサを使用することも企図する。例えば、圧力支援装置30内の気体流量を患者界面装置で測定することができ、圧力発生器40により呼吸気体の加圧に使用されるモータ若しくはピストンの速度又はトルクから気体流量を測定し又は推定することができる。約言すれば、本発明は、患者に供給する気体流を測定する如何なる従来技術も使用できる。
【0025】
監視装置44は、患者での気体圧力を検出する圧力センサ48も備える。図示の実施の形態では、圧力センサ48は、導管36を介して患者界面装置38に流体接続される。本実施の形態では、導管36内に発生する公知の圧力降下に基づき、患者での圧力が推定される。しかしながら、患者界面装置38で患者での圧力を直接測定できることも理解すべきである。
【0026】
圧力支援装置30は、通常流量センサ46と圧力センサ48で監視される変数を受信し、これらの信号に基づき圧力発生装置32を制御できる制御装置50を備え、制御装置50は、記憶アルゴリズムを実行するマイクロプロセッサが好ましい。制御装置50は、本発明の特徴を実施するのに必要な記憶装置と演算処理能力を勿論備える。本発明の好適な実施の形態では、制御装置50は、Cプログラム言語で書き込まれ記憶されたソフトウェアを実行するAMTEL AT91M55800マイクロコントローラである。
【0027】
情報、データ及び/又は指令信号及び他の如何なる通信可能な事項(包括的に「データ」という)を使用者と制御装置50との間で連絡し又は通信を行う入力/出力インターフェイス52を圧力支援装置30に設けることも、本発明は、企図する。この目的に適する共通の入力/出力インターフェイスの例は、キーボード及び表示装置を備える。本発明は、有線又は無線(ワイヤレス)等の他の接続技術も企図する。例えば、本発明は、ICカードから制御装置50にデータを転送し又は制御装置50からICカードにデータを転送できるICカード端子を設けることを企図する。圧力支援装置と共に使用する他の例、インターフェイス装置及び技術は、限定列挙ではなく、RS-232ポート、CDリーダ/ライタ、DVDリーダ/ライタ、無線周波数リンク及びモデム(電話、ケーブル又はその他)である。要約すれば、本発明は、制御装置50にデータを供給し、受信し、交換する従来の如何なる技術も入力/出力装置52として企図する。
【0028】
また、制御装置50は、従来の漏洩量推定技術と呼吸周期監視技術を実行する。本発明は、圧力支援装置からの気体漏洩量Qleakを計算する従来技術の使用を企図するが、気体漏洩量Qleakは、例えば、排気孔からの意図的漏洩量とマスクと患者との界面からの無作為漏洩量とを含む。本発明は、患者流量Qpatientを決定するときに、漏洩を考慮する従来技術を使用することも企図するが、患者流量Qpatientは、患者の気道での気体流量と、流量センサ46が通常測定する気体流量である全流量Qtotalである。例えば、サンダースら名義の米国特許第5,148,802号、ズロコウスキーら名義の第5,313,937号、サンダースら名義の米国特許第5,433,193号、ズロコウスキーら名義の米国特許第5,632,269号、第5,803,065号及び第6,029,664号、ツルーシェル名義の米国特許第6,360,741号、フランクら名義の米国特許出願第09/586,054号及びジャファリら名義の米国特許出願第09/970,383号は、全て、漏洩を検出しかつ推定し更に漏洩の存在の下で患者に供給する呼吸気体を管理する技術を開示するので、本発明への前記参考文献の各内容を本明細書の一部とする。
【0029】
本発明は、患者の呼吸周期の吸気段階と呼気段階とを検出する如何なる従来技術を使用することも企図する。例えば、サンダースら名義の米国特許第5,148,802号、ズロコウスキーら名義の第5,313,937号、サンダースら名義の米国特許第5,433,193号、ズロコウスキーら名義の米国特許第5,632,269号、第5,803,065号及び第6,029,664号、及びジャファリら名義の米国特許出願第09/970,383号は、全て呼吸周期の吸気段階と呼気段階とを区別する技術を開示する。
【0030】
本発明は、制御装置50により圧力発生装置32を制御して、患者にバイレベル形式の圧力支援を供給することを企図する。バイパップ(BiPAP)とも称するこの形式の圧力制御法では、吸気段階間に患者に吸気気道陽圧(IPAP)が送出され、呼気段階間に患者に低い呼気気道陽圧(EPAP)が送出される。米国特許第5,148,802号、第5,433,193号、第5,632,269号、第5,803,065号、第6,029,664号、第6,305,374号及び第6,539,940号は、バイレベル圧力支援技術を開示し、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0031】
バイレベル圧力支援法では、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との差を圧力支援(PS[Pressure Support])レベルと称する。即ち、圧力支援=吸気気道陽圧−呼気気道陽圧である。本発明は、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を調整して、支援圧力を一定のレベルに保持し、又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整して、治療過程間に圧力支援レベル、呼気気道陽圧及び吸気気道陽圧の両方を変化させる。
【0032】
本発明は、吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルを記憶し、制御し又は監視することを企図する。このように、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して又は同時に調整して、例えば、一定の圧力支援レベルを保持することができる。吸気気道陽圧レベル又は呼気気道陽圧レベルを記憶し、制御し又は監視すること及び圧力支援レベルに基づき、他のレベルを決定し又は制御することも本発明が企図することは、理解すべきである。即ち、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧が既知値であり又は主制御圧力として使用するとき、圧力支援レベルも既知値であれば、他の未知の吸気気道陽圧レベル又は呼気気道陽圧レベルを決定することができる。例えば、吸気気道陽圧レベルを制御して、圧力支援レベルに基づき呼気気道陽圧レベルを調整すれば、制御装置は、呼気気道陽圧レベルを制御する必要がない。本明細書で説明するように、ある状態では、圧力支援レベルを一定にでき、別の状態では、圧力支援レベルを変動可能であることを理解すべきである。逆に、制御装置は、主圧力として呼気気道陽圧レベルを制御し、圧力支援に基づき呼気気道陽圧レベルに従って吸気気道陽圧レベルを調整することができる。
【0033】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して変更できる状態、即ち圧力支援レベルを変更できる状態では、本発明は、圧力支援レベルに最大値(PSmax)と最小値(PSmin)の制約条件を加えることを企図する。本発明の例示的な実施の形態では、最小値PSminは、2cmH2O(水柱センチメートル)に固定され、常に一定値である。このように、圧力支援レベルは、常に2cmH2O又はそれ以上に保持される。圧力支援レベルが2cmH2O未満になるように吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を調整する如何なる試みも、無視され又は無効にされる。最小値PSminを調整でき、それにより使用者が所望レベルを選択でき又は他の基準に基づき調整して、ある状態でのみ最小値(PSmin)未満に圧力支援レベルを低下できることを本発明は、企図する。
【0034】
本発明の例示的な実施の形態では、圧力支援レベルの最大値PSmaxは、使用者が調整可能な設定値である。しかしながら、最大値PSmaxを設定すると、圧力支援装置の動作中、最大値PSmaxは、常に一定値に保持される。このように、圧力支援レベルは、最大値PSmaxを超えず、圧力支援レベルが最大値PSmaxを超えて吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を調整する如何なる試みも、無視され又は無効にされる。最大値PSmaxを一定値に固定して、即ち使用者が最大値PSmaxを調整できず又はある基準に基づいて調整すると、圧力支援レベルが最大値(PSmax)を超えられることも本発明は、企図する。
【0035】
B.優先順位化された制御装置
本発明の技術的思想に従い圧力支援装置30が実施する自動滴定技術は、制御装置50に基づき実施され、優先順位化された複数の制御装置100の組として有効に機能するように制御装置50は、プログラム制御され、各制御装置100又は制御装置階層内の制御層が競合して圧力支援装置の制御し、圧力発生装置により患者に供給する圧力が制御される。
【0036】
図2は、図の右側に数字(1)〜(8)で示す各制御層の優先順位で順位付けされる制御装置を示す。第(1)順位を有する図の最上部の制御層は、最高優先順位の制御装置であり、他の全ての制御装置より先行する。第(8)順位を有する図の最下部の制御層は、他の制御装置が動作していないときのみ作動される最低優先順位の制御装置である。
【0037】
また、制御装置50は、複数の検出器又は検出モジュール102の組及び複数のモニタ又は監視モジュール104の組を有効に形成するようにプログラム制御されるので、各検出モジュール及び必要に応じて各監視モジュールは、各制御層に作動連結される。検出モジュール102は、圧力センサ48、流量センサ46又はそれらの両方からの信号をそのまま未処理入力として受信する。また、検出モジュール102は、連動する監視モジュールに入力信号を付与するのに必要な信号処理を実行する。監視モジュール104は、関連する検出モジュールの出力を受信して、関連する制御モジュールの作動を要求する基準が満足されるか否かを決定する。基準を満足するとき、圧力支援装置の制御に対する要求が要求プロセッサ106に付与されるので、要求プロセッサ106は、この要求を実行する監視モジュールに関連する制御モジュールに制御を振り向けるべきかを決定する。制御装置50により実行されるアルゴリズムは、圧力支援装置の要求する制御である制御層の優先順位に基づく要求処理機能を実行する。
【0038】
制御層の1つの制御装置を作動すると、その制御装置は、圧力支援装置の作動を制御し、制御装置を作動する状態が解消され又はより高い優先順位の制御装置が動作を引き継ぐまで制御を維持する。制御中に、各制御装置は、例えば、圧力発生装置を通じて圧力支援装置から出力される圧力を調整するように、制御機能を実行することにより特定の事象/状態を処理する。各制御装置は、処理すべき事象/状態の形式に基づき、独自の方法で作動する。
【0039】
本発明は、圧力支援装置が超えられない複数の絶対圧力限界値である規定最小圧力Pmin及び規定最大圧力Pmaxを設定することを企図する。圧力の調整法に関する付加的な制約条件を有する制御装置も勿論ある。
【0040】
図2の点線108は、圧力支援装置の状態に基づく制御層と、患者の監視状態に基づく制御層との区別を表す。即ち、点線108より上の優先順位(1)〜(3)の制御層は、圧力支援装置の状態のみに基づき圧力支援装置30の作動を制御する機械ベースの制御層である。これに対し、点線108より下の優先順位(4)〜(8)の制御層は、患者の監視状態に基づき圧力支援装置を制御する患者ベースの制御層である。
【0041】
また、監視する圧力、流量又は圧力と流量の両方に基づき制御する制御層と、患者が圧力支援装置をオンしたか又は圧力傾斜モードを作動したか否か等の手動入力に基づき作動する制御層とに制御層を更に細別することができる。本発明の好適な実施の形態では、最初の2つの制御層、即ち、優先順位(1)及び(2)を有する制御層が患者又は使用者からの手動入力に基づく制御層である。
【0042】
C.第1優先順位制御層及び第2優先順位制御層
第1の優先順位にある制御層は、入力/出力装置52からの入力信号110を受信する。第1の優先順位にある制御層では、入力信号は、通常患者が圧力支援装置をオン又はオフするオン/オフスイッチ又はボタンからの表示信号である。患者が圧力支援装置をオフにすれば、他の全ての圧力制御に優先して当然にこれが行われ、本発明では、これが制御層の階層に最高優先順位を付与する所以である。オン/オフスイッチ又は下記の自動オン/オフ法等の他の類似の装置からの信号によって、オン・オフ検出層112は、患者が圧力支援装置を付勢、即ち作動したか、消勢、即ち停止したかを決定する。オン・オフ検出層112の決定は、オン/オフスイッチの作動時に圧力支援装置が既に作動しているか否かに勿論依存する。最高優先順位にある限り、オン/オフ表示信号は、要求プロセッサ106に付与され、他の全ての制御動作は、無視されるので、圧力支援装置の制御は、オン/オフ制御装置114に振り向けられる。
【0043】
オン/オフ制御装置114は、圧力支援装置の作動又は停止に好ましい又は必要な如何なる機能も実施する。例えば、圧力支援装置を停止するとき、圧力支援装置は、圧力発生装置32をオフに切り換える上に、現在の圧力設定値、準拠情報及び他の情報をメモリ又は他の記憶装置内に記憶する等の過程を実行することができる。使用者が圧力支援装置を作動するとき、圧力支援装置は、メモリ又はICカードから情報を読み出し、入力装置から入力設定値を読み出し、診断機能を実行し、低優先順位検出モジュール、監視モジュール及び制御モジュールをリセットし、圧力発生装置をオンする等の動作過程を実行する。
【0044】
また、第2の優先順位の制御層は、入力/出力装置52から入力信号を受信する。第2の制御層では、入力信号は、通常患者が圧力傾斜モードを作動したか否かの圧力傾斜動作ボタンからの表示信号である。オン/オフスイッチ又は他の類似の装置からの信号を受信する圧力傾斜検出層116は、患者が圧力傾斜動作ボタンを作動したか否かを決定する。患者が圧力傾斜作動ボタンをオンすれば、第2の最高優先順位にあると認められる限り、圧力傾斜作動要求信号が、要求プロセッサ106に付与され、オン/オフ制御以外の他の全ての制御動作が無視されて、圧力傾斜制御装置118に制御が移行する。
【0045】
圧力傾斜制御モジュール118は、圧力支援装置を通じて、予め決められた期間又は予め決められた回数の呼吸周期の間、圧力支援装置の最低値等の低設定値に吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧レベルを減少させる。本発明は、単に圧力を降下させずに、従来の圧力傾斜法を使用して、患者に傾斜圧力を供給することも企図する。
【0046】
要するに、圧力支援装置の制御を実行する圧力傾斜制御装置118は、患者に供給される現在の吸気気道陽圧レベル及び呼気気道陽圧レベルを無効にしかつ圧力発生装置32を制御して、比較的低い吸気気道陽圧レベル及び呼気気道陽圧レベルの呼吸気体流が患者に供給される。時間ベース又は事象ベース(所定回数の呼吸周期の経過に基づく)により決定できる傾斜圧力持続時間が終了した後に、圧力傾斜制御が解除され、他の制御層が圧力支援装置の制御を引き継ぐ。圧力傾斜特性が実際の傾斜圧力を含むとき、5〜45分程度の期間又は予め決められた回数の呼吸周期にわたり吸気気道陽圧レベル及び呼気気道陽圧レベルが増加される。例示的な実施の形態では、支援圧力(PS)を一定に維持して吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧が増加される。その後、圧力傾斜制御が解除され、他の制御層が圧力支援装置の制御を引き継ぐ。本発明による本実施の形態の目標は、圧力支援装置により付与される圧力を患者が手動で無効にして、圧力を比較的低いレベルに減少し、比較的低い圧力下で患者が睡眠を取り、その後、患者が治療に有効な圧力を受けられることにある。
【0047】
本発明の更なる実施の形態は、傾斜圧力動作間でも圧力支援装置を呼吸事象に応答させる傾斜圧力動作を実行することも企図する。例えば、この「好適な圧力傾斜」の例を、図31〜図33に示す。本実施の形態では、例えば、圧力傾斜過程間でも他の制御装置層により、吸気気道陽圧(図32)、呼気気道陽圧(図示せず)又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方(図33)を調整することができる。
【0048】
図31に示すように、時点700での圧力傾斜周期作動時に、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、比較的急速に低下される。例示的な実施の形態では、呼気気道陽圧がEPAPminレベルより低く設定されるEPAPRampレベルに達するまで、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、低下される。この圧力減少の間、圧力支援レベルは、一定に保持される。このように、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の圧力減少は、同一の圧力減少速度又は圧力傾斜を有する。
【0049】
別の実施の形態では、呼気気道陽圧値は、EPAPRampに達するまで低下し、吸気気道陽圧値は、EPAPRamp+PSminに相当する値に達するまで低下する。従って、圧力支援レベルは、一定に保持されず、吸気気道陽圧値及び呼気気道陽圧値は、同一の時点で各最小値に達する。このように、圧力傾斜周期の開始時に、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の減少は、同一ではない。
【0050】
時点702では、呼気気道陽圧は、EPAPRampに達して、圧力減少が終了する。時点702の吸気気道陽圧レベルは、EPAPRamp+PSである。別の実施の形態では、吸気気道陽圧レベルは、EPAPRamp+PSminである。図示の実施の形態では、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧は、時点704に達するまでの短期間、この比較的低いレベルに保持される。吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の上昇圧力傾斜は、時点704で開始する。患者に供給される呼気気道陽圧がEPAPminに達する時点706まで、圧力傾斜周期間の圧力増加は、継続される。EPAPminは、圧力支援装置が患者に供給する最小呼気気道陽圧レベルである。即ち、圧力傾斜周期間以外では、圧力支援装置は、呼気気道陽圧をEPAPmin未満に低下させない。
【0051】
図示の実施の形態では、圧力傾斜周期の圧力増加部は、時点704で開始して時点706で終了する直線形状(線形)を有する。しかしながら、他のグラフ形状又は特性で増加する吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両圧力を本発明が企図することも理解されよう。また、例えば、オグデン名義の米国特許第5,682,878号に記載されるように、何れかの圧力又は両方の圧力のグラフ形状を使用者が選択できてもよく、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。本発明は、図示の形状以外の全グラフ形状で全圧力傾斜周期が変化することも企図する。例えば、「U」形状、放物線形状、傾斜放物線形状等の波形で圧力が変化するように、圧力減少及び圧力増加を制御することができる。また、呼気気道陽圧がEPAPRampに達する時点702で圧力傾斜周期の圧力増加部を開始することにより、本発明は、時点702と時点704との間の圧力保持期間を有効に省略することを企図する。
【0052】
本発明の例示的な実施の形態では、圧力増加始期(時点704)と圧力増加終期(時点706)との間の圧力傾斜周期の圧力増加持続時間を圧力支援装置に予め設定し又は使用者が設定することができる。圧力増加持続時間を設定し又は決定すると、その持続時間の終期に、圧力がEPAPminに達しかつ呼気気道陽圧と吸気気道陽圧が適切な方法で増加するように、圧力支援装置は、適切な圧力増加角度、即ち圧力傾斜又は圧力増加速度を決定する。
【0053】
また、圧力傾斜持続時間を患者が選択でき、制御装置に事前にプログラム制御しかつ/又は圧力傾斜作動装置が既に作動したか否かに圧力傾斜持続時間を依存させることもできる。例えば、エステスら名義の米国特許第5,492,113号、第5,551,418号、第5,904,141号、第5,823,187号及び第5,901,704号は、最初に圧力傾斜モードを作動させて、圧力支援装置により第1の持続期間を有する傾斜圧力を供給し、次に、第1の持続期間より通常短い第2の持続期間を有する傾斜圧力を圧力支援装置により供給する圧力傾斜技術を示し、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。圧力傾斜制御装置118の作動に前記特徴を組み込んで、各傾斜圧力の圧力波形及び持続時間を決定することができる。
【0054】
本発明は、圧力持続時間ではなく、圧力勾配を設定し又は圧力増加の勾配を使用者が設定することも企図する。これは、圧力増加の形状又は変化特性を選択する装置を設け又は圧力増加の形状又は変化特性を使用者が選択するのと同様である。圧力勾配が既知であり又は決定されれば、呼気気道陽圧がEPAPminに達するまで、圧力支援装置は、その圧力勾配に沿って吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を増加させる。
【0055】
上記のように、本発明は、圧力傾斜周期間、特に、圧力傾斜周期の圧力増加期間中に、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方の変更を企図する。図32は、呼気気道陽圧を変更せずに、時点710で吸気気道陽圧を増加する状態を示す。例えば、鼾を検出して吸気気道陽圧を選択し若しくは制御圧力として吸気気道陽圧を使用するとき又は圧力増加間に患者が呼吸低下のみを体験していると認められるとき、この状態を発生することがある。呼気気道陽圧が変化しないので、この変更により圧力傾斜持続(圧力増加)期間は、変化しない。
【0056】
本発明は、圧力傾斜による圧力増加速度又は圧力増加勾配を増加前の数値に戻すことを企図する。時点710前の吸気気道陽圧の勾配714は、この圧力増加後の吸気気道陽圧の勾配716と同一である。要するに、圧力増加718は、単に圧力傾斜周期の圧力増加部間の吸気気道陽圧波形の短期勾配変化に過ぎない。図32の破線は、圧力増加718が発生しなかった吸気気道陽圧の波形を示す。本発明は、圧力増加718の形状と期間も選択でき、制御でき又は予め設定でき、図示の比較的直線的な圧力増加に加えて、如何なる要求される圧力増加特性も備えることを企図する。
【0057】
また、本発明は、治療圧力が増加しても、圧力傾斜持続時間を一定値に保持することも企図する。この場合、例えば、呼気気道陽圧が増加すると、呼気気道陽圧の傾斜圧力増加を同一の時点で終了するように、圧力傾斜の勾配が再計算される。吸気気道陽圧の増加を同様に再計算することができる。
【0058】
図33は、圧力傾斜周期の圧力増加間に時点712で吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧の両方を増加する状態を示す。圧力傾斜間に吸気気道陽圧波形と呼気気道陽圧波形に圧力増加720と722が各々生じる。例えば、吸気気道陽圧が増加すれば、呼気気道陽圧レベルも増加して適正な圧力支援レベルを保持しなければならず、逆に呼気気道陽圧が増加すれば、吸気気道陽圧レベルも増加して適正な圧力支援レベルを保持しなければならないので、圧力の同時増加が発生する。この種の圧力増加に至る状態の例を本明細書中に説明する。
【0059】
前記実施の形態のように、圧力増加720,722後の吸気気道陽圧波形及び呼気気道陽圧波形の速度又は勾配は、圧力増加前と同一である。圧力増加722により増加する呼気気道陽圧レベルは、圧力増加が生じない場合(時点726)よりも早く時点724でEPAPminに達する。このように、圧力増加722は、圧力傾斜周期の持続時間を効果的に短縮する。
【0060】
呼気気道陽圧に対して圧力傾斜周期を測定するとき、即ち呼気気道陽圧がEPAPRampに等しいとき(EPAP=EPAPRamp)、圧力増加を開始し、呼気気道陽圧がEPAPminに等しいとき(EPAP=EPAPmin)終了するが、呼気気道陽圧ではなく、吸気気道陽圧を制御圧力として使用できることも本発明が企図することは、理解されよう。圧力傾斜周期の傾斜増加間に吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はこれらの両圧力を低下できることも理解されよう。図33に示す実施の形態では、呼気気道陽圧レベルが低下するとき、圧力傾斜周期の持続時間を有効に延長できる。
【0061】
D.流量限定制御層
第3の優先順位が割り当てられた流量限定制御(FLC)層は、流量センサ46から流量信号を受信する流量限定制御(FLC)検出モジュール120を備える。流量限定制御検出モジュール120は、全流量Qtotal(Qtotal=Qpatient+Qleak)を経験値又は実験値から得られる圧力対流量曲線124と比較して、全装置漏洩又はマスク離脱状態等の患者との分離状態が発生しているか否かを決定する。図3は、この比較に使用する圧力対流量特性を示すグラフである。
【0062】
圧力支援装置は、患者に何の圧力を供給すべきかを認識しているので、図3に示すように、圧力支援装置の動作圧力(水平軸)は、圧力センサ48を介して測定され又は既知の値かの何れかである。圧力対流量曲線124は、適合値でも超過値でも患者分離状態を表わす各動作圧力レベルの種々の流量を示す。換言すれば、流量限定制御検出モジュール120は、全流量Qtotalを座標化し、全流量Qtotalは、図3に示すグラフ上の既知作動圧力に対する患者回路34内の流量として流量センサ46により直接測定される。座標点126と128で示すように、全流量が曲線124上又はそれ以上にあるとき、流量限定制御検出器は、患者切断状態にあると判断する。このように、流量限定制御検出器は、患者界面装置38が患者から分離し又は何らかの他の非接続状態が患者回路発生したものと判断する。しかしながら、座標点130に示すように、全流量Qtotalが曲線124の下方になれば、流量限定制御検出モジュール122は、患者に対する患者切断状態にないと判断する。
【0063】
本発明の例示的実施の形態では、患者が呼吸周期の吸気段階にあるか又は呼気段階にあるかに係わらず、現在の測定出口圧力と測定全流量とが流量限定制御層に使用される。他の実施の形態では、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は呼吸全体の平均圧力等の吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との組み合わせを流量限定制御層に使用することができる。
【0064】
圧力対流量グラフの圧力対流量曲線124は、圧力支援装置に使用されるハードウェアに特定のものであることが理解できよう。例えば、患者回路が長い程、呼吸気体流の圧力降下が大きくなるので、患者切断状態を示す圧力流量特性は、短い患者回路の圧力支援装置に発生する圧力流量特性とは相違する。前記のように、特定の圧力支援装置に対する圧力流量特性124を実験的に決定することが好ましい。装置部品の組み立て時に選択される特殊な相互関係について、多くの実験的特性を予め決定しておくことも勿論できる。
【0065】
再び、図2について説明すると、流量限定制御検出モジュール120が患者切断状態を決定するとき、患者流量が流量限定制御曲線124の上方にある持続時間を監視する流量限定制御検出モジュール120は、患者切断状態の表示を与える。例えば、7秒の予め決められた時間中に流量限定制御検出モジュール120の出力が示すように、流量限定制御曲線124上又はその上方に全流量が存在すれば、制御要求信号は、要求プロセッサ106に送出される。流量限定制御監視モジュール122からの要求信号には、第3の最高優先順位が付与され、オン/オフ制御装置114と圧力傾斜制御装置118以外の他の全ての制御動作が無効にされ、流量限定制御装置132に制御が振り向けられる。
【0066】
7秒遅延時間の目的は、流量限定制御曲線の外側に全流量が一時的に移動する患者の深い吸気作用を患者切断状態と誤認せず、漏洩を正確に判断するためである。一時的な患者誘発流量を切断状態と誤認しない限り、他の持続時間遅延装置を使用できることは、理解できよう。また、本発明は、例えば、90秒等の比較的長い時間、流量限定制御状態が存続するとき、患者は、患者界面装置を除去したものと判断される。何れの場合でも、圧力支援装置は、周知の自動オン/オフ技術を介して、圧力支援装置自身を自動的にオフに切り換える。患者が圧力支援装置を使用しているか否かに依存して又は自動的に圧力支援装置をオフに切り換える技術を示すエステスら名義の米国特許第5,551,418号を参照されたい。
【0067】
流量限定制御装置132を作動させれば、他の方法で圧力支援装置から供給する圧力/流量を制御しなくても、使用者は、患者に供給される吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を低レベルに低下させて、切断状態を修正できる。例示的な実施の形態では、支援圧力を一定に保持するように、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧が低下される。例えば、主圧力としての吸気気道陽圧を制御しかつ圧力支援レベルに基づき呼気気道陽圧レベルを設定することにより、これを達成できる。流量限定制御装置132により送出される前記低吸気気道陽圧と呼気気道陽圧レベルは、患者が不快感を感じずにマスクを再装着できるように十分低いが、圧力支援装置が患者によるマスク再装着時を検出するのに十分に高いレベルでなければならない。
【0068】
切断状態が修正されるまで、即ち、測定した全流量が流量限定制御曲線124の下方に該当して流量限定制御監視モジュール122による制御が要求されなくなるまで又は自動オフ機能を開始する時間が経過するまで、流量限定制御装置132は、圧力発生装置により呼吸気体流量を前記低圧力レベルで供給し続ける。本発明の好適な実施の形態では、患者切断状態が修正されるとき、流量限定制御装置132は、患者に供給する吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を傾斜させて、以前の圧力レベルに戻し正常な流量の呼吸用気体が供給される。
【0069】
E.鼾制御層
第4の優先順位が割り当てられる鼾制御層は、圧力センサ48及び/又は流量センサ46等の監視装置44からの入力信号を受信して、これらの情報から患者が鼾を体験しているか否かを決定する鼾検出モジュール140を備える。本発明は、例えば、全てアクセら名義の米国特許第5,203,343号、第5,458,137号及び第6,085,747号に見られるように、何らかの従来の鼾検出技術を使用して、患者が鼾を体験しているか否かを決定することを企図する。しかしながら、本発明の好適な実施の形態では、ツルーシェルら名義の米国特許出願第10/265,845号の開示により、患者が鼾を体験しているか否かを決定するが、この米国特許出願の内容を参照により本明細書の内容の一部とする。
【0070】
本発明は、呼吸周期の吸気段階又は呼気段階で鼾事象が発生するか否かに基づき、鼾事象を識別することを企図する。呼吸周期の何れかの段階中に、名目上鼾事象か否かを表す閾値をある付加的な単一又は複数の媒介変数に依存して、図1の圧力センサ48により測定することがある。より高い圧力に対して、鼾検出閾値を上昇できることもあるが、鼾事象を検出することが一層困難となる。各呼吸段階に対して鼾検出閾値を独立して設定することもできる。これは、圧力等の特殊な媒介変数に対し、吸気段階間の鼾事象を表示する閾値がより高いか、低いか又は呼気段階間の閾値設定値と同じであることを意味する。圧力に加えて、他の媒介変数又は組み合わせ媒介変数を使用して鼾事象を表示する閾値を設定することができる。
【0071】
鼾検出モジュール140は、鼾事象を表示する毎に、鼾監視モジュール142への出力を発生する。鼾監視モジュール142は、検出した鼾事象に基づき、要求プロセッサ106から圧力支援装置の制御要求を始動すべきか否か決定する。現在の好適な実施の形態では、鼾事象の数を計数するカウンタと、2つの鼾事象間の時間間隔を測定するタイマとが鼾監視モジュール142に設けられる。最後の鼾事象から30秒以内に鼾事象が起こらなければ、カウンタは、零にリセットされる。カウンタが3に達すると、制御要求信号が要求プロセッサ106に送出される。このように、3つの鼾事象が発生し、各鼾事象が最後の鼾事象から30秒より長くないとき、制御要求が開始される。この要求は、30秒経過後に終了し、鼾監視モジュール142内の鼾カウンタがリセットされる。
【0072】
鼾監視モジュール142からの要求には、第4の最高優先順位が割り当てられ、オン/オフ制御装置114、圧力傾斜制御装置118及び流量限定制御装置132以外の他の全ての制御動作が無効にされるので、制御は、鼾制御装置144に振り向けられる。要求過程により鼾制御装置144に制御が割り振られれば、鼾制御装置は、圧力発生装置32により患者に供給される呼気気道陽圧レベルを1.0cmH2O等の所定量だけ上昇させる。好適な実施の形態では、15秒毎に1cmH2Oの上昇速度で圧力が増加される。本例示的な実施の形態では、吸気気道陽圧は、変化しない。その結果、圧力支援レベルの最小値PSmin以上である限り、圧力支援レベルが低下する。吸気気道陽圧に向って呼気気道陽圧を増加する結果、圧力支援レベルが最小値PSminに達すると、圧力支援レベルが最小値PSminで一定に保持される。この場合、呼気気道陽圧が更に増加すると、圧力支援レベルを最小値PSmin以上に保持するため、吸気気道陽圧も増加する。
【0073】
鼾制御装置144は、制御を解除し、バックグラウンドタスクとして1分動作停止期間を設定する。圧力増加の終端での吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルは、それぞれ鼾治療吸気気道陽圧レベルと鼾治療呼気気道陽圧レベルとして記憶される。前記鼾治療吸気気道陽圧レベルと鼾治療呼気気道陽圧レベルは、患者に比較的良好な治療を施して患者が経験する多くの呼吸疾患を治療できる圧力レベルを示すと思われる。
【0074】
例えば、別の状況で鼾制御装置が圧力を増加させる付加的な鼾事象が発生するとき、動作停止期間は、他の呼気気道陽圧増加による圧力支援装置の患者への過治療も防止する。しかしながら、鼾監視モジュール142が要求する前記基準に適合する付加的な鼾事象が発生しかつ動作停止期間が経過したとき、鼾監視モジュールは、再び制御を要求し、要求が容認されるとき、鼾制御装置144は、再び吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を増加(最大圧力設定点まで)する。これらの新しい吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、鼾治療圧力として記憶される。
【0075】
前記本実施の形態では、呼気気道陽圧レベルは、制御された圧力である。しかしながら、本発明は、鼾制御装置により吸気気道陽圧を制御できることも企図する。即ち、鼾制御装置144に制御を与えれば、鼾制御装置は、圧力発生装置32により、例えば1.0cmH2Oの予め決められた量だけ患者に供給される吸気気道陽圧レベルを上昇させる。好適な実施の形態では、15秒毎に1cmH2Oの上昇速度で圧力が増加される。この例示的な実施の形態では、呼気気道陽圧は、変化しない。その結果、圧力支援レベルが圧力支援レベルの最大値PSmaxを超えない限り、圧力支援レベルは、増加する。呼気気道陽圧から離れて吸気気道陽圧が増加する結果、圧力支援レベルが最大値PSmaxに達すると、圧力支援レベルは、最大値PSmaxで一定値に保持される。この場合、吸気気道陽圧が更に増加すると、最大値PSmax又はそれ以上に圧力支援レベルを保持するため、呼気気道陽圧も増加する。
【0076】
圧力支援装置の制御を要求する時期を決定するのに鼾監視モジュール142に使用される鼾事象の数、鼾制御装置144が供給する吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の増加量及び増加速度並びに閉鎖持続時間の長さを変更することができる。
【0077】
F.大量漏洩制御層
第5の優先順位が割り当てられる大量漏洩制御層は、推定される患者回路漏洩量Qleakを分析して、それを実験的に習得した圧力対流量曲線と比較する点において流量限定制御層に幾分近似する。しかしながら、大量漏洩制御層は、患者が患者界面装置を除去したか否か又は患者回路の切断若しくは他の大量漏洩事象が発生したか否かを決定する動作を行わない。むしろ、大量漏洩制御層は、圧力支援装置からの推定漏洩量が信頼性のある動作範囲を超える時期を決定する動作を行う。
【0078】
大量漏洩制御層は、流量センサ46から流量信号を受信する大量漏洩検出モジュール150を備える。大量漏洩検出モジュール150は、何らかの従来の漏洩推定技術を使用して、流量信号から推定漏洩量Qleakを決定し、この情報を大量漏洩監視モジュール152に送出する。大量漏洩監視モジュール152は、推定漏洩量を実験的に習得した曲線と比較して、圧力支援装置からの漏洩が最悪症例漏洩量を超えるか否かを決定する。
【0079】
再び、図3について説明すると、圧力支援装置で作動する吸気気道陽圧(水平軸)は、公知である。曲線154は、超過しても、最悪症例装置漏洩量より大きい漏洩量を表す各動作吸気気道陽圧レベルの種々の流量を示す。換言すれば、大量漏洩監視モジュール152は、図3に示すグラフ上の既知動作吸気気道陽圧に対する推定漏洩量Qleakをグラフで表すものである。座標点126、128及び130で示すように、推定漏洩量が曲線154の上方にあれば、推定漏洩量は、圧力支援装置の信頼性のある動作範囲を構成する漏洩流量を超える。例えば、患者界面装置が患者から部分的に外れて、使用している患者回路の型式に予想される漏洩量より多量の気体が患者回路から漏洩しているとき、これが発生する。しかしながら、座標点156及び158で示すように、推定漏洩量Qleakが曲線154上又はそれより下方にあれば、大量漏洩監視モジュール152は、装置漏洩の許容可能なレベルであると判断する。
【0080】
本発明の更なる実施の形態は、漏洩流量が大きい漏洩か否かを決定するときに平均動作圧力を使用することを企図する。本発明は、大量漏洩が存在するか否かを決定する基準圧力として、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は他の何らかの吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との組み合わせを使用することも企図する。
【0081】
圧力流量グラフの曲線154の特殊な特性は、圧力支援装置に使用するハードウェアに特定のものである。例えば、異なる排気流量を生ずる異なるサイズの排気装置には、異なる圧力流量特性が必要である。特定の圧力支援装置に対する圧力対流量特性154を実験的に決定することが好ましい。装置部品の組立時に選択される特殊な特性に対し多くの経験的特性を予め決定することも勿論できる。
【0082】
図2に示すように、大量漏洩監視モジュール152により大量漏洩状態を検出するとき、制御要求は、要求プロセッサ106に送出される。前記のように、大量漏洩監視モジュール152からの要求には、第5の最高優先順位が割り当てられ、オン/オフ制御装置114、圧力傾斜制御装置118、流量限定制御装置132及び鼾制御装置144以外の他の全ての制御動作が無効にされ、制御が大量漏洩制御装置162に振り向けられる。
【0083】
大量漏洩制御装置162に制御が振り向けられると、大量漏洩制御装置162は、圧力発生装置32により、患者に供給される吸気気道陽圧を予め決められた期間の間予め決められた比率で予め決められた量だけ低下させる。例示的な実本施の形態では、呼気気道陽圧は、変更されない。その結果、圧力支援レベルが最小値PSmin又はそれ以上である限り、吸気気道陽圧の低下時に、圧力支援レベルが低下する。例えば、本発明の現在好適な実施の形態は、10秒間にわたり1cmH2Oだけ患者に供給される吸気気道陽圧を低下させて、2分間この新しい圧力に保持することを企図する。圧力支援レベルが最小値PSminに達すれば、圧力支援レベルは、最小値PSminで一定に保持される。その結果、圧力支援レベルを最小値PSmin又はそれ以上に保持するため、吸気気道陽圧の更なる減少と共に、呼気気道陽圧も低下される。
【0084】
大量漏洩監視モジュール152を満足させるのに必要な基準に適合する限り、大量漏洩検出モジュール152は、大量漏洩制御装置162が圧力支援装置の制御を実行することを要求し続ける。再び、要求が認められれば、圧力を保持する2分経過後に、大量漏洩制御装置162は、大量漏洩状態が解消され又は最小吸気気道陽圧若しくは最小呼気気道陽圧に到達するまで、吸気気道陽圧減少を反復し、その過程を保持する。また、この制御層による制御を解除する前に、例えば、90秒の予め決められた期間中に大量漏洩状態を解除しなければならない。
【0085】
大量漏洩制御層では、この吸気気道陽圧の降下により少なくとも僅かに患者を刺激する可能性がある。この刺激により患者が寝返りをうち、不注意でマスクを移動させ又は覚醒し、マスクを調節すれば大量漏洩状態が解消されると考えられる。また、吸気気道陽圧を低下することにより、患者界面装置を再配置すれば、大量漏洩状態を解消できると思われる。
【0086】
G.無呼吸/呼吸低下制御層
第6の最高優先順位を割り当てられる無呼吸/呼吸低下(A/H)制御層は、監視装置44、特に流量センサ48からの入力信号を受信して、この情報から患者が無呼吸又は呼吸低下を体験しているか否かを決定する無呼吸/呼吸低下検出モジュール164を有する。この決定は、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166に供給され、無無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、呼吸/呼吸低下制御モジュール168が圧力発生装置を制御することを要求すべきか否かを決定する。
【0087】
本発明は、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164が加重最高流量として吸気最高流量の変化を監視して、下記に詳述するように、加重最高流量(Qwpeak)から患者が無呼吸又は呼吸低下を体験しているか否かを決定することを企図する。このように、無呼吸/呼吸低下制御層の動作を理解するため、本発明では加重最高流量(Qwpeak)の決定法をまず理解する必要がある。
【0088】
G−1.加重最高流量
図5は、患者流量の例示的吸気波形170を示すグラフで、図4A〜図4Cは、実際の最高流量と本発明により使用する加重最高流量Qwpeakとの差を表すグラフである。それぞれ異なる例示的吸気波形172、174及び176を表す図4A〜図4Cでは、実際の最高流量Qpeakは、吸気波形の頂点にある。図4A〜図4Cから、最高流量は、短時間の臨床値を有することを理解できよう。例えば、図4Cでは、吸気開始の際に超過する流量のため、最高流量を誇張して示す。このため、本発明は、Qpeakを使用しない。その代わりに、本発明は、図4A〜図4Cに点線で示す近似位置の加重(補正)最高流量Qwpeakを使用する。
【0089】
図5に示すように、例えば、流量波形170の吸気波形に対するQwpeakを決定するため、本発明は、吸気波形の開始点180と終了点181とをまず決定する。従来技術を使用してこれを決定できる。次に、吸気流量の全容量を計算する。これもまた従来技術を使用して計算できる。続いて、圧力支援装置は、5%容量(点182)、20%容量(点184)、80%容量(点186)及び95%容量(点188)に相当する吸気波形上の点を決定する。次の過程では、平坦真円度基線(FRB)及び真円度基線(RB)の2つの基線レベルを決定することが必要である。
【0090】
5%容量点と95%容量点との間の波形上の点の全流量値を、5%容量点及び95%容量点での流量値と比較することにより、平坦真円度基線(FRB)が決定される。平坦真円度基線(FRB)の設定に使用される5%と95%との間の点の範囲から最低点を見つけるため、これが行われる。前記2点182,188間に最低点で引く線は、平坦真円度基線(FRB)を形成する。
【0091】
20%容量点と80%容量点との間の波形上の点の全流量値を20%容量点と80%容量点での流量値と比較することにより、真円度基線(RB)が決定される。真円度基線(RB)の設定に使用される20%と80%との間の点の範囲から最低点を見つけるため、これが行われる。前記2点184,186間に最低点で引く線は、真円度基線(RB)を形成する。
【0092】
この装置は、それぞれ平坦真円度基線(FRB)と真円度基線(RB)とに基づき、平坦度平坦基線(FFB)と平坦度基線(FB)との更に2つの基線も計算する。詳細には、平坦度平坦基線(FFB)は、平坦真円度基線(FRB)の上方で5%容量点と95%容量点との間の全流量測定点の平均値として決定される。多くの場合、これは、図5に示すように、5%容量点と95%容量点との間の流量測定点に対応する。しかしながら、平坦真円度基線(FRB)を図5に示す5%容量又は95%容量より下方にすることは、可能である。平坦真円度基線(FRB)の開始点から終了点までの流量測定点の平均値を見つけることは、図5の領域Aと領域Bとの大きさを決定し、この大きさを5%容量と95%容量との間の経過時間(T5%-95%)で除した値に等しい。
【0093】
平坦度基線(FB)は、20%容量点と80%容量点との間で真円度基線(RB)より上方の全流量測定点の平均値として決定される。多くの場合、これは、20%容量点と80%容量点との間の全測定点の平均値に相当する。しかしながら、真円度基線(RB)を図5に示す20%容量又は80%容量より下方にすることも可能である。真円度基線(RB)の開始点から終了点までの流量測定点の平均値を見つけることは、図5の領域Bの大きさを決定し、この大きさを20%容量と80%容量との間の経過時間(T20%-80%)で除した値に等しい。平坦度基線(FB)レベルは、加重最大流量Qwpeakである。
【0094】
G−2.無呼吸/呼吸低下検出基準モデル化
無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、全期間を通じて加重最大流量Qwpeak情報を収集し、モデル加重最大流量QWPMを決定するが、モデル加重最大流量QWPMは、下記に詳述する呼吸低下及び無呼吸決定過程を実行する際の比較に使用される。特に、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、4分の移動窓(時間枠)に亘り発生する吸気呼吸の加重最大流量を監視する。本発明は、この移動窓の時間が4分以外の1〜6分等の時間でもよいことを更に企図する。図6に示すように、移動窓間に蓄積される呼吸の加重最大流量の例示的ヒストグラム(柱状グラフ)である前記加重最大流量は、統計学的に記憶される。
【0095】
本発明の一実施の形態では、蓄積される加重最大流量の第85番目の百分位数に該当する加重最大流量としてモデル最大加重最大流量QWPMが決定される。しかしながら、本発明の好適な一実施の形態では、80番目と90番目の百分位数間に該当する加重最大流量を平均して、この平均値をモデル最大加重最大流量QWPMとして取り出してもよい。
【0096】
G−3.呼吸低下検出
図7A〜図7Eは、本発明の技術的思想に従い無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により実施する呼吸低下検出過程を示すフローチャートである。モデル加重最大流量QWPMが存在するか否かを決定するステップ190で呼吸低下決定過程を開始する。例えば、漏洩レベル内に高漏洩レベル又は急速な変化を検出するとき、モデル加重最大流量QWPMをリセットすることができる。この場合、患者が呼吸低下を体験しているか否かを決定するのに十分な情報は、存在しないであろう。従って、モデル加重最大流量QWPMを発生するのに十分なデータが存在しなければ、圧力支援装置は、データの収集を継続して、この情報を発生する。モデル加重最大流量QWPMが存在すれば、圧力支援装置は、ステップ192に移行する。
【0097】
ステップ192では、作動閾値が決定される。作動閾値の目的は、患者が呼吸低下に至る比較的大きな少なくとも1つの呼吸作用を有することを確実に決定することにある。この比較的大きな呼吸作用は、呼吸低下を検出する範囲外にある加重最大値(加重ピーク)を有するはずであり、この範囲内にあるより小さい呼吸作用を検出することができる。呼吸低下検出範囲外にある呼吸作用を最初に発見しなければ、例えば、患者が新しい呼吸低下作用を開始したか又は既存の呼吸低下作用を単に継続しているか否かを決定することは、困難である。本発明の例示的な実施の形態では、現在のモデル加重最大流量QWPMの72%に作動閾値を設定する。現在のQWPMの例えば55%〜75%の範囲にある他の作動閾値も企図する。
【0098】
ステップ194では、現在の加重最大流量Qwpeakを作動閾値と比較して、比較的大きな流入呼吸作用を検出する。このような呼吸作用を検出しなければ、即ち、現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より小さければ、圧力支援装置は、ステップ190に戻り、この動作を反復する。しかしながら、作動閾値外の加重最大流量を含む呼吸作用を検出するとき、圧力支援装置は、ステップ200に移行する。
【0099】
ステップ200では、モデル加重最大流量QWPMの66%として呼吸低下検出閾値を決定する。現在のQWPMの例えば45%〜70%の範囲にある他の呼吸低下検出閾値も企図する。ステップ202では、現在の吸気段階の加重最大流量Qwpeakは、ステップ200で計算した検出閾値と比較される。現在の加重最大流量Qwpeakがモデル加重最大流量QWPMの66%より大きく又は66%に等しいとき、圧力支援装置は、ステップ200に戻る。しかしながら、現在の加重最大流量がモデル加重最大流量の66%に満たないとき、圧力支援装置は、ステップ204に移行し、呼吸低下事象の発生に対する監視を開始する。
【0100】
ステップ204では、呼吸低下検出の開始時にモデル加重最大流量QWPMは、固定され又は記憶されて、他の閾値の決定に使用される。モデル加重最大流量QWPMの固定値QWPMclampedを使用して、ヒステリシスレベルが決定される。ヒステリシスレベルは、固定値QWPMclampedの72%に設定され、圧力支援装置は、ステップ206に進む。固定値QWPMclampedの例えば60%〜80%の範囲にある他のヒステリシスレベルも企図される。また、固定値QWPMclampedを使用して、加重最大流量Qwpeakである第1の終了閾値が設定され、加重最大流量Qwpeakは、監視する吸気波形に合致しなければ呼吸低下検出過程を終了できない。第1の呼吸低下終了閾値は、固定値QWPMclampedの78%に設定される。固定値QWPMclampedの例えば70%〜85%の範囲にある他の呼吸低下終了閾値が企図される。ステップ204では、新しい作動閾値が計算される。ステップ192で計算した作動閾値は、最早有効ではなく、特に、ステップ192で作動閾値を計算して以降、相当の時間が経過すれば、新しい作動閾値が計算される。作動閾値は、現在のモデル加重最大流量QWPMの72%に設定される。
【0101】
ステップ206では、呼吸低下監視過程を停止すべきか否かの決定が行われる。例えば、廃棄事象が発生し又は加重最大流量がヒステリシスレベルを超えるとき、これを行うことができる。例えば、検出モジュールに付与されるデータが異常データを含み又は不完全であるときに、廃棄事象が発生する。呼吸低下監視過程がステップ206で停止するとき、圧力支援装置は、ステップ204で計算した作動閾値に対して現在の加重最大流量Qwpeakをステップ207で照合する。現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より大きいとき、圧力支援装置は、ステップ200に戻る。現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より小さいかこれに等しいとき、圧力支援装置は、ステップ190に戻る。
【0102】
現在の加重最大流量Qwpeakが作動閾値より大きいとき、ステップ190ではなく、ステップ200に戻る理由は、呼吸低下が発生していることを決定するのに十分に大きい呼吸作用を患者が既に行っているためである。このように、作動閾値を再度計算する必要がなく、その代わりに、圧力支援装置は、ステップ200に戻り呼吸低下の検出を開始する。
【0103】
ステップ206から呼吸低下監視過程を継続すれば、圧力支援装置は、呼吸低下検出閾値に満たない加重最大流量Qwpeakで十分な時間が経過したか否か及び十分な回数の呼吸周期を発生したか否かをステップ208で決定する。好適で例示的な本実施の形態では、患者が呼吸低下を体験していることを確認するため、加重最大流量は、少なくとも10秒間ヒステリシス閾値未満でなければならず、少なくとも1つの検出可能な呼吸周期が存在しなければならない。このように、ステップ208では、10秒が経過したか及び非零最大流量レベルを有する1つの呼吸周期が発生したかが決定される。否定の場合、圧力支援装置は、ステップ206に戻る。肯定の場合、圧力支援装置は、ステップ210にて第1の終了呼吸作用の監視を開始する。第1の終了呼吸作用は、呼吸低下事象を終了する呼吸である。
【0104】
呼吸低下事象間に、呼吸低下監視をステップ204にて開始するとき、最小加重最大流量が監視されていた。ステップ210では、これまで検出した最低最小加重最大流量が特定される。この値は、2倍にされ、第1の終了呼吸作用の検出時に第2の呼吸低下終了基準として使用される。第2の呼吸低下終了基準の目的は、呼吸低下間に発生する比較的低い最大レベルからの大きな偏差により、呼吸低下監視過程を終了することにある。固定値QWPMclampedの78%としてステップ204で第1の呼吸低下終了基準を決定したことを想起されたい。
【0105】
ステップ212では、呼吸低下検出過程を停止すべきか否かの決定が行われる。例えば、真性の呼吸低下事象を正常に伴う期間を超えて呼吸低下が持続するとき又は廃棄事象が発生するとき、これが行われる。本実施の形態では、この期間は、60秒である。このように、ステップ212では、圧力支援装置は、呼吸低下状態が60秒を超えて継続したか否かを決定する。60秒を超えて継続すれば、呼吸低下検出過程を停止し、全ての論理フラッグをリセットしかつ処理をステップ190に戻す。呼吸低下決定過程を継続するとき、ステップ214では、現在の呼吸の加重最大流量が第1の終了閾値又は第2の終了閾値に該当するか否かを決定する。
【0106】
現在の呼吸の加重最大流量が固定値QWPMclamped(第1の呼吸低下終了基準)の78%を超えるとき又は現在の呼吸の加重最大流量が、非零最低加重最大流量(第2の呼吸低下終了基準)の2倍より大きいとき、有効な第1の終了呼吸が表示され、圧力支援装置は、ステップ216に進む。有効な第1の終了呼吸がステップ214で検出されないとき、圧力支援装置は、ステップ210に戻り、第1の終了呼吸に対する監視を継続する。
【0107】
第1の終了呼吸をステップ214で検出すれば、次の後続呼吸は、ステップ216で決定される第3の呼吸低下終了閾値に合致しなければならない。ステップ214では、第3の呼吸低下終了閾値は、第1の終了基準閾値及び第2の終了基準閾値の最大値の80%に設定される。
【0108】
ステップ218では、第1の終了呼吸直後の次の呼吸の加重最大流量が第1の終了基準閾値と第2の終了基準閾値の最大値の80%であるか否かを決定する。80%のとき、呼吸低下監視過程が終了し、ステップ220で呼吸低下の検出が表示される。80%でないとき、呼吸低下検出過程が停止され、全論理フラッグがリセットされ、処理がステップ200に戻る。第1の終了呼吸直後の次の呼吸の加重最大流量に対する閾値は、80%以外の値でもよい。本発明は、例えば70%から100%までの閾値も企図する。
【0109】
要するに、呼吸低下を検出するには、下記基準に合致しなければならない。
a) 有効なモデル加重最大流量データQWPMが存在しなければならない(ステップ190)、
b) 呼吸低下検出範囲外に流入呼吸が存在しなければならない(ステップ192及びステップ194)、
c) 呼吸の加重最大流量は、呼吸低下決定閾値より低くなければならない(ステップ202)、
d) 後続呼吸の加重最大流量は、少なくとも10秒間のヒステリシス閾値より低いままで、少なくとも1回の呼吸を検出しなければならない(ステップ206及びステップ208)、
e) 呼吸の加重最大流量は、第1の終了閾値又は第2の終了閾値(ステップ214)のより小さい方より高く上昇し、次の呼吸は、第1の終了閾値及び第2の終了閾値に基づき設定される第3の終了閾値より高くなければならない、
f) 呼吸低下事象の持続時間は、60秒を超えてはならない(ステップ212)、並びに
g) 廃棄事象が発生してはならない(ステップ206及びステップ212)。
【0110】
G−4.無呼吸検出
呼吸低下の検出と同様に、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、各呼吸周期の加重最大流量Qwpeakをモデル加重最大流量QWPMと比較することにより、患者が無呼吸を体験しているか否かを決定する。詳細には、現在の加重最大流量Qwpeakがモデル加重最大流量QWPMの20%未満に該当するとき、無呼吸検出過程を開始する。これが発生すると、無呼吸監視過程の開始時に、モデル加重最大流量QWPMは、固定され又は記憶される。また、固定されたモデル加重最大流量QWPMclampedを使用して、無呼吸終了閾値を設定し、無呼吸終了閾値は、加重最大流量を表し、監視される吸気波形が加重最大流量に合致しなければ、無呼吸検出過程を終了できない。無呼吸終了閾値は、固定値QWPMclampedの30%として設定される。この場合、無呼吸は、優先性を有し、呼吸低下の検出を無効にし、リセットし又は一時的に無作動にする。
【0111】
無呼吸監視過程が開始すると、好適な実施の形態では10秒の予め決められた期間中に加重最大流量が終了閾値に満たないとき、無呼吸事象の開始が表示される。呼吸低下と無呼吸との検出を同時に行うことも注意すべきである。
【0112】
本発明者らは、無呼吸事象中に、患者が時々瞬間的な呼吸動作を行うことがあることを認識した。図8は、無呼吸224がほぼ時点226で発生し、時点228でほぼ終了する例示的患者流量波形222を示す。無呼吸224間に、非常に短期間ではあるが、患者は、比較的高い最大流量の突発呼吸230と認められる呼吸作用を行った。前記突発呼吸の前後での期間232での患者流量は、無呼吸に特有の比較的低いレベルであった。本発明は、無呼吸の発生を監視する一時的な突発呼吸230を事実上無視することを企図する。前記突発呼吸を無視しなければ、突発呼吸を誤って考慮する無呼吸検出器が、無呼吸であるこの呼吸状態を無視する可能性がある。
【0113】
G−5.無呼吸/呼吸低下監視
呼吸低下事象の発生及び無呼吸事象の開始信号は、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により検出され、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166に送出されるが、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、無呼吸/呼吸低下制御装置168が圧力発生装置の制御を要求すべきか否かを決定しなければならない。本発明の現在好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により前記方法で決定するように、予め決められた時間内に2つの無呼吸事象又は2つの呼吸低下事象が発生するとき、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、要求プロセッサ106に制御要求を発生する。現在の好適な実施の形態では、この時間は、3分移動窓である。しかしながら、当業者は、この移動窓時間を変更できることを理解できよう。
【0114】
また、無呼吸事象と呼吸低下事象とが混在するとき、本発明は、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166が要求プロセッサ106に制御要求を発生することを企図する。例えば、予め決められた時間内に2つの無呼吸と呼吸低下とが発生するとき、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166は、制御要求を発生する。
【0115】
G−6.無呼吸/呼吸低下圧力制御
無呼吸/呼吸低下制御装置168に制御が付与されると、患者が無呼吸、呼吸低下又は無呼吸及び呼吸低下の組み合わせを体験したか否かに基づき、患者に供給する吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧の制御方法が決定される。
【0116】
呼吸低下のみを患者が体験していると認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、まず徐々に吸気気道陽圧を1cmH2O上昇させ、このレベルで吸気気道陽圧を30秒間保持する。しかしながら、呼気気道陽圧レベルは、変化されない。この結果、圧力支援レベルが既に最大値PSmaxに達しない限り、圧力支援レベルが増加する。30秒の保持期間経過後に、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、制御を解除(通常後述の自動滴定制御装置を保持する状態)する。無呼吸/呼吸低下制御装置168への制御を付与する基準に再び合致しかつ患者が呼吸低下のみを体験していると再び認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、この過程を反復し、圧力支援レベルが既に最大値PSmaxに達しない限り、また呼気気道陽圧レベルを変化させずに、患者吸気気道陽圧を1cmH2O上昇させ、30秒間保持する。無呼吸/呼吸低下制御装置168は、例えば8〜12cmH2Oの予め決められた量に無制限に吸気気道陽圧を増加することができる。例えば、11cmH2Oの予め決められた量より高い圧力で無呼吸又は呼吸低下を検出するとき、後述のように、付加的な圧力制御が制限される。
【0117】
患者が無呼吸のみ又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせのみを体験していると認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、呼気気道陽圧を1cmH2O増加させ、このレベルに呼気気道陽圧を30秒間保持する。しかしながら、吸気気道陽圧レベルを変化させない。この結果、圧力支援レベルが既に最小値PSminに達しない限り、圧力支援レベルは、低下する。30秒の保持期間経過後に、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、制御を解除(通常後述の自動滴定制御装置を保持する状態)する。無呼吸/呼吸低下制御装置168に制御を付与する基準に再び合致しかつ患者が無呼吸又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせのみを体験しているとまた認められるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、この過程を反復し、圧力支援レベルが既に最小値PSminに達していない、また吸気気道陽圧レベルを変化させずに、患者呼気気道陽圧を1cmH2O上昇させて、30秒間保持する。無呼吸/呼吸低下制御装置168は、吸気気道陽圧が上記予め決められた量を超えるレベルまで無制限に呼気気道陽圧を増加することができる。予め決められた量より高い吸気気道陽圧で無呼吸又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせを検出するとき、後述のように、付加的な圧力制御が制限される。
【0118】
更に説明する本発明の実施の形態では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、閉塞性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象との相違を検出できないが、無呼吸/呼吸低下制御装置168を使用してこれを補償する。即ち、圧力が既に閾値を超えるとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168の圧力上昇は、限定され又は制限される場合もある。圧力の上昇により閉塞性事象を解決できる。しかしながら、中枢性無呼吸は、圧力上昇に応答しないと一般的に考えられている。従って、無呼吸が発生する結果、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を上昇しても更に無呼吸が発生すれば、例えば、11cmH2Oの比較的高い圧力で発生する無呼吸は、中枢性であり、閉塞性無呼吸ではない。何れの場合でも、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の付加的増加は、望ましくない。
【0119】
この目標を達成するため、無呼吸/呼吸低下監視モジュール164が無呼吸又は呼吸低下の制御を要求するとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、目標無呼吸/呼吸低下治療限度を設定する。現在の好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下監視モジュール164が制御要求を始動したとき、患者に供給される吸気気道陽圧より3cmH2O高く目標無呼吸/呼吸低下治療限度が設定される。しかしながら、患者吸気気道陽圧が10cmH2O以下のとき、目標無呼吸/呼吸低下治療限度は、13cmH2Oに設定される。目標無呼吸/呼吸低下治療限度が設定されると、新規な無呼吸/呼吸低下事象がなければ、一定時間経過するまで、目標無呼吸/呼吸低下治療限度は、適当な値のままである。この経過時間を8分の時間間隔に設定し、新規の無呼吸/呼吸低下の如何なる制御の要求がなければ、目標無呼吸/呼吸低下治療限度を設定した後に8分経過すれば、目標無呼吸/呼吸低下治療限度を消去することを本発明は、現在企図する。
【0120】
患者が呼吸低下のみを体験しているとき、本発明は、10cmH2Oに代えて、例えば14cmH2Oのより高い数値に目標無呼吸/呼吸低下治療限度を設定する。無呼吸/呼吸低下検出器164は、呼吸低下のみを認識しているとき、患者が中枢性事象でなく、閉塞性事象を患っている可能性が高いので、高い数値に設定する。従って、より高い閾値により更に積極的に閉塞性事象を治療することができる。
【0121】
圧力支援装置が発生する患者圧力の例示的な吸気気道陽圧曲線236を示す図9から明らかな通り、患者が10cmH2Oの吸気気道陽圧を受けて時点238で無呼吸/呼吸低下の制御が要求されれば、目標無呼吸/呼吸低下治療限度240は、13cmH2Oに設定される。無呼吸/呼吸低下治療時間242の間、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧が1cmH2O増加されて、30秒間保持され、時点244で無呼吸/呼吸低下制御装置168は、制御を解除する。期間246の間、例えば、下記自動滴定モジュール等の他の制御モジュールは、圧力支援装置の制御を扱っている。この例の目的に対し、この期間中、患者吸気気道陽圧又は患者呼気気道陽圧は、1cmH2Oだけ増加された。吸気気道陽圧が12cmH2Oの時点248では、他の無呼吸/呼吸低下制御要求が付与され、他の無呼吸/呼吸低下治療期間242が発生する。この期間の終端(点250)では、患者吸気気道陽圧は、目標無呼吸/呼吸低下治療限度240の13cmH2Oである。
【0122】
時点250又は目標無呼吸/呼吸低下治療限界を超える如何なる吸気気道陽圧でも、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166が他の無呼吸/呼吸低下制御を要求するとき、要求プロセッサ106は、無呼吸/呼吸低下制御装置168に制御を更に移管するが、現在の患者吸気気道陽圧が目標無呼吸/呼吸低下治療限度又はそれ以上であるため、無呼吸/呼吸低下制御装置168による患者吸気気道陽圧の更なる増加が阻止される。その代わり、圧力支援レベルの最小値PSminに達するまで、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、呼気気道陽圧を増加する。最小値PSminに達すると、吸気気道陽圧は、目標無呼吸/呼吸低下治療限度であり、事象が継続し、無呼吸/呼吸低下制御装置は、圧力減少期間254の間、例えば2cmH2Oの予め決められた量だけ吸気気道陽圧を時点252までに低下する。吸気気道陽圧の低下により、支援圧力を最小値PSminに保持するため、呼気気道陽圧も低下させる。
【0123】
吸気気道陽圧は、期間254の終端で線256に示すように一定に保持され又は線258に示すように再度低下させて一定に保持される。現在の吸気気道陽圧、即ち点252での患者吸気気道陽圧と鼾治療吸気気道陽圧とを比較することにより、吸気気道陽圧を点252に保持すべきか又は点252から減少すべきか否かが決定される。鼾制御装置を作動しない場合で圧力支援装置に鼾治療吸気気道陽圧が記憶されなければ、吸気気道陽圧は、線256上に保持される。鼾治療吸気気道陽圧が存在しかつ例えば2cmH2Oのように予め決められた量を超えて鼾治療吸気気道陽圧より現在の吸気気道陽圧が高いとき、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、鼾治療吸気気道陽圧より予め決められた量高いレベルに吸気気道陽圧を減少し、線258で示すように、期間260間に吸気気道陽圧を低いレベルに保持する。本発明は、鼾治療吸気気道陽圧より1cmH2O高い圧力に吸気気道陽圧を減少させる。
【0124】
吸気気道陽圧の低下が開始する時点250以後、予め決められた時間が経過するまで、無呼吸/呼吸低下制御装置168は、期間260の間、患者吸気気道陽圧と呼気気道陽圧を一定に保持する。患者を安定させるため、別の作動への変更を阻止する状態保持期間(ホールドオフ期間)が設けられる。現在好適な実施の形態では、2cmH2Oの減少開始以後、15分経過するまで吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧は、一定に保持される。本発明は、患者が安定するのに十分な時間である限り、状態保持期間の持続時間を他の時間長さに設定することを企図する。より高順位レベルの制御装置によりこの保持過程を中断し、リセットすることができる。15分の状態保持期間の終端で、無呼吸/呼吸低下制御装置160により、目標無呼吸/呼吸低下治療限度が除去され、制御が解除される。
【0125】
H.可変呼吸制御層
次項で説明する自動滴定制御装置は、ある睡眠段階に付随する安定で周期的な呼吸パターンの傾向のある性能に依存する。患者が急速眼球運動(REM)睡眠で又は苦痛を感じて覚醒するとき、呼吸は更に不安定な傾向になり、自動滴定動向検出が不安定となる。従って、患者の呼吸パターンが変化し過ぎるとき、自動滴定制御装置を中断することが重要である。可変呼吸制御層は、本質的に自動滴定制御層の過度不安定状態を防止する。
【0126】
図2に示すように、第7の優先順位が割り当てられる可変呼吸制御層は、可変呼吸検出モジュール270、可変呼吸監視モジュール272及び可変呼吸制御装置274を有する。後述のように、可変呼吸制御層は、動向付けされる加重最大流量データの分散を統計的に分析して、不安定な呼吸パターン又は患者応答の急激な変化を検出する。可変呼吸制御モジュール274は、作動時に自動滴定制御装置に対して優先順位を有し、可変呼吸監視モジュール272は、有効な可変呼吸を表示し、圧力支援装置の制御は、可変呼吸制御装置に振り向けられる。要するに、呼吸が不安定化しかつ如何なる必要な圧力変化も適正に管理できれば、可変呼吸制御モジュール274は、自動滴定制御装置の動作を中断する作動を行う。
【0127】
H−1.可変呼吸検出及び監視
可変呼吸検出モジュール270は、好適な本実施の形態では4分窓である移動窓中の加重最大流量Qwpeakを監視する。可変呼吸検出モジュールは、加重最大流量情報が過度に不安定であるか否かを決定する加重最大流量情報の価値のある本質的に4分の傾向にある。図10A及び図10Bは、加重最大流量の分散例を示すグラフである。図10A及び図10Bでは、加重最大流量は、領域278内の動向線276の周囲に比較的接近する群を形成し、領域280内では動向線276から比較的分散する。動向線276は、現在の4分窓間に収集される加重最大流量データに基づき何らかの従来の統計分析技術を使用して決定される最良適合線である。図10Aと図10Bとの間の主要な相違は、図10Bの動向線を非零圧力傾斜で示す点である。動向線276が収集したデータ点に基づく最良適合線である事実を強調するために、非零圧力傾斜で表示される。
【0128】
点線282で示すように、可変呼吸検出モジュール270は、監視窓間に捕集される加重最大流量データの標準偏差を決定する。最良適合動向線276に基づき標準偏差を計算する点に注意すべきである。また、領域278内の標準偏差284は、領域280内の標準偏差286より小さく、領域280内では加重最大流量データの変動がより大きいことが明らかである。
【0129】
加重最大流量データの変化度の測定値として標準偏差だけを使用すると、一貫して正確な結果を生じないこともある事実が本発明者らに判明した。平均患者流量が比較的少ないときの加重最大流量データの標準偏差を、より高い平均患者流量での同一の標準偏差とは正確には比較できないので、正確な結果が得られないためである。従って、本発明では、平均患者流量に対する標準偏差の標準化を探索して、データ中の偏差分析時に平均流量を考慮する。
【0130】
図11は、平均患者流量と調整された平均患者流量との関連を表す標準化曲線290を示すグラフである。調節された平均患者流量(縦軸)と実際の平均患者流量(横軸)とが一対一で一致する直線領域292があることはこのグラフから理解できよう。4分窓の平均患者流量が領域292内にあれば、平均患者流量への調整は、不要である。また、調節した平均患者流量と実際の平均患者流量との間では、1/2乃至1の関係を持つ第1の領域294もある。このように、実際の平均流量が15乃至25リットル/分(lpm)間の領域294に該当するとき、調節した平均患者流量は、標準化曲線290に基づき計算される。また、実際の平均流量が減少するときでも、調節される平均患者流量を基線値に固定する平坦領域296も存在する。このように、実際の平均患者流量が15リットル/分に満たなければ、調整される平均患者流量は、20リットル/分に固定される。
【0131】
標準化曲線290の特殊な形状及び種々の領域間の線図を変更できることを理解すべきである。例えば、図示を省略するが、本発明は、平均患者流量が所定値、例えば、領域298内での値を超えるとき、平均患者流量値を固定することも企図する。
【0132】
調節された平均流量(adjusted mean flow)により標準偏差(standard deviation)を除する下式により、可変呼吸数(VB#)が計算される。
【0133】
【数1】
【0134】
可変呼吸検出モジュール270により実行される可変呼吸検出過程の最終結果は、この可変呼吸数である。可変呼吸数(VB#)が高いほど、加重最大流量データの変化量は、益々大きい。
【0135】
可変呼吸検出モジュール270は、可変呼吸監視モジュール272に可変呼吸数を付与し、可変呼吸監視モジュール272は、可変呼吸数と閾値とを比較して、可変呼吸制御装置274が自動滴定制御装置からの制御を受け継ぐことを要求する時期を決定する。図12は、患者が可変呼吸を体験していることを示しかつ圧力支援装置の制御を要求するヒステリシス閾値基準を示すグラフである。
【0136】
図12に示すように、上方閾値300及び下方閾値302は、予め設定される。経験値データから上方閾値300及び下方閾値302を決定することが好ましい。曲線304で表示する可変呼吸数(VB#)が上方閾値300を超えるとき、可変呼吸監視モジュール272は、可変呼吸であることを表示して、要求プロセッサ106に制御要求信号を発生する。制御要求信号は、図12の点306で発生する。可変呼吸監視モジュール272は、可変呼吸であると判断し続けて、可変呼吸数(VB#)が上方閾値300に満たない場合でも継続的に制御を要求する。要するに、時点306で可変呼吸の活性表示がオンされ、可変呼吸数(VB#)が時点310で下方閾値302より低くなるまで領域308上に該当する。可変呼吸の活性表示がオンの間に、可変呼吸制御装置274は、要求プロセッサ106から圧力支援の制御要求信号を発生する。
【0137】
同様に、可変呼吸制御装置274は、そこで可変呼吸がないと継続的に判断して、可変呼吸数(VB#)が下方閾値302より上昇しても制御を要求しない。即ち、可変呼吸の活性表示は、点310でオフとなり、可変呼吸数(VB#)が点314で発生する上方閾値300を超えるまで領域312内でオフに保持される。
【0138】
H−2.可変呼吸圧力制御
可変呼吸制御装置274に圧力支援装置の制御が付与されると、下記自動滴定制御装置が行っている動作に基づき何らかの初期動作を行う。この初期動作後に、可変呼吸制御装置274は、独立する圧力制御動作を実行する。図13は、本発明での可変呼吸制御モジュールの圧力制御動作を示すグラフである。例示的な実施の形態では、制御される主圧力として吸気気道陽圧レベルを使用し、可変呼吸圧力制御間に圧力支援レベルの最小値PSminと最大値PSmaxとの間で保持される圧力支援レベルに基づき、呼気気道陽圧レベルが設定される。必要に応じて、呼気気道陽圧レベルのみを変化させて、最小値PSminと最大値PSmaxとの間に圧力支援レベルが保持される。このように、可変呼吸圧力を制御するため、圧力制御の全基準が吸気気道陽圧レベルに適用される。
【0139】
図13に示すように、可変呼吸制御装置274が実行する吸気気道陽圧制御作用は、a)活性応答領域320と、b)圧力保持領域322と、c)緩慢圧力傾斜領域324の3領域に区分される。可変呼吸制御装置274が実行する各領域内での吸気気道陽圧の制御を次に説明する。図13の供給される圧力は不連続に見えるが、これは便宜的に各領域を図示する方法に過ぎない。実際には、活性応答領域320の終端での吸気気道陽圧は、圧力保持領域322で実施される圧力制御の始端圧力である。同様に、圧力保持領域322の終端での吸気気道陽圧は、緩慢圧力傾斜領域324内で実行される圧力制御への始端圧力である。
【0140】
活性応答領域320の欄Aは、可変呼吸制御装置274が圧力支援装置の動作を引き継ぐ前に、圧力支援装置が実施可能な吸気気道陽圧の制御動作を示す事前吸気気道陽圧曲線を示す。活性応答領域320の欄Bは、従来の曲線に基づき可変呼吸制御装置274が発生する対応吸気気道陽圧の制御曲線を示す。症例1では、事前吸気気道陽圧レベル326は、平坦である(増減なし)。この場合、可変呼吸制御装置274は、圧力曲線328で示すレベルのまま患者に吸気気道陽圧が供給される。
【0141】
症例2では、事前吸気気道陽圧レベル330は、増加する。この場合、可変呼吸制御装置274は、圧力曲線332に示すように、毎分0.5cmH2Oの減圧速度で患者に供給する吸気気道陽圧をまず減少する。減少量は、事前吸気気道陽圧レベル330で増加する量に依存する。吸気気道陽圧の減少する圧力曲線332は、多分可変呼吸作用を発生した増加する事前吸気気道陽圧レベル330を解消する特性を有する。しかしながら、例示的な実施の形態では、圧力降下332の全減少量は、2cmH2Oに制限される。圧力降下(圧力低下)の圧力曲線332の後に、可変呼吸作用制御装置274は、圧力曲線334で示すように、圧力を一定状態に保持する。
【0142】
症例3では、事前吸気気道陽圧レベル336は、減少する。この場合、可変呼吸制御装置は、圧力曲線338に示すように、0.5cmH2Oの増圧速度で患者に供給する吸気気道陽圧をまず増加する。吸気気道陽圧レベルの増加する圧力曲線338の量は、事前圧力336の減少量に依存する。吸気気道陽圧レベルの増加する圧力曲線338は、可変呼吸を発生する事前吸気気道陽圧減少336を解消する特性を有する。しかしながら、例示的な実施の形態では、吸気気道陽圧レベルの圧力曲線338の全増加は、2cmH2Oに制限される。吸気気道陽圧レベルの増加する圧力曲線338の後に、可変呼吸制御装置274は、圧力曲線340に示すように、吸気気道陽圧を安定状態に保持する。
【0143】
本発明の現在好適な実施の形態では、活性応答領域320の欄Bの前記症例により圧力を供給する持続時間は、5分に設定される。このように、吸気気道陽圧曲線328(症例1)、吸気気道陽圧曲線332〜334(症例2)又は吸気気道陽圧曲線338〜340(症例3)は、5分又は可変呼吸状態が解消されるまで実施される。その後、吸気気道陽圧レベルは、圧力保持領域322の圧力動作により制御される。しかしながら、許容される持続時間の範囲にわたり前記持続時間を変更することができる。
【0144】
圧力保持領域322では、吸気気道陽圧レベルは、圧力曲線342(症例4)に示すように、一定値に保持され又は圧力曲線344(症例5)に示すように、減少後に一定となるパターンを有する。活性応答領域320の終端での患者吸気気道陽圧を示す現在の吸気気道陽圧を鼾治療吸気気道陽圧と比較して、吸気気道陽圧を一定にする(症例4)か又は吸気気道陽圧を減少する(症例5)かが決定される。これは、図9について説明した無呼吸/呼吸低下制御装置168の圧力制御動作に類似する。
【0145】
鼾制御装置が作動されない場合で圧力支援装置内に鼾治療吸気気道陽圧の記憶がないとき、圧力曲線342で示すように、吸気気道陽圧は、一定に保持される。鼾治療吸気気道陽圧があり、例えば2cmH2Oの予め決められた量だけ現在の吸気気道陽圧が鼾治療吸気気道陽圧より高ければ、吸気気道陽圧曲線344に示すように、可変呼吸制御装置274は、吸気気道陽圧曲線344で示すように、予め決められた量だけ鼾治療吸気気道陽圧より高いレベルに吸気気道陽圧を減少し、線346で示すように、圧力保持領域322の持続時間にわたり吸気気道陽圧を低レベルに保持する。本発明は、吸気気道陽圧の低下する曲線344間に「鼾治療圧力+1cmH2O」に吸気気道陽圧を減少する。
【0146】
現在の好適な実施の形態では、圧力保持領域322の前記実例により付与される吸気気道陽圧の持続時間は、15分に設定される。このように、15分間又は可変呼吸状態が解消されるまで、吸気気道陽圧曲線342(症例4)又は吸気気道陽圧曲線344〜346(症例5)が与えられる。その後、緩慢圧力傾斜領域324の圧力動作により、吸気気道陽圧は、制御される。しかしながら、許容される持続時間の範囲にわたり15分の持続時間を変更できることを理解すべきである。
【0147】
緩慢圧力傾斜領域324では、吸気気道陽圧の単一制御動作のみが存在する。即ち、圧力曲線348で示すように、患者に付与される吸気気道陽圧レベルは、徐々に下方に傾斜する。最小装置圧力(吸気気道陽圧最小圧力IPAPmin又は呼気気道陽圧最小圧力EPAPmin)に達するまで又は可変呼吸状態が解消されるまで、下方傾斜圧力減少は、継続される。
【0148】
I.自動滴定制御層
全制御層の中で第8番目の最下優先順位が自動滴定制御層に割り振られる。その結果、自動滴定制御層が実行する圧力制御動作は、他の何れかの制御装置が作動されれば中断される。図2に示すように、自動滴定制御層は、自動滴定検出モジュール350、自動滴定監視モジュール352及び自動滴定制御モジュール354を備える。
【0149】
下記説明から十分に理解できるように、自動滴定制御層の種々の構成要素は、互いに非常に緊密に相互作用を行う。即ち、圧力支援装置が自動滴定制御層内で動作しながら、自動滴定監視モジュールの出力は、自動滴定制御装置が患者での圧力を調整する方法を指令するので、自動滴定検出モジュール及び自動滴定監視モジュールは、監視装置44からの出力を連続的に分析している。自動滴定制御層は、初期設定制御層であり、他の制御層が制御を行わないときでも自動的に動作しているので、他の制御層とは異なり、自動滴定監視モジュールが要求プロセッサ106からの制御を要求する必要はない。
【0150】
自動滴定制御層の一般的な目標は、例えば、1分間に±0.5cmH2Oの緩慢な傾斜圧力を誘導して、治療圧力と称する圧力状態保持期間を設けることにある。流量波形に関連するある媒介変数を監視することにより、圧力変化と治療圧力に対する患者の応答を評価して、患者流量波形が改善し、悪化し又は変化なしを表示しているか否かが決定される。各呼吸に対する加重最大流量Qwpeak、真円度、平坦度及び呼吸の非対称度を表す値が計算される。このデータを記憶し、連続的な患者の動作時間にわたり動向を分析して、圧力支援装置により患者に供給する圧力が最適化される。
【0151】
I−1.加重最大流量、真円度、平坦度及び非対称度
前記の通り、自動滴定制御装置により実行される自動滴定制御過程間に、加重最大流量Qwpeak、呼吸吸気波形の真円度、平坦度及び非対称度が決定される。吸気波形の前記各特性は、自動滴定検出器350により測定時間にわたり動向分析され、動向値が発生される。この動向値は、自動滴定監視モジュール352に供給され、そこで、後述の選択グラフに動向値を使用して、自動滴定制御装置が何の作用を行うかが決定される。従って、最初に本発明は、前記吸気波形特性をどのように計算するかを理解することが重要である。
【0152】
無呼吸/呼吸低下検出モジュール164について加重最大流量Qwpeakの計算を検討した。従って、吸気波形特性の別の説明を要しない。
【0153】
吸気波形の真円度特性を計算するため、本発明は、患者吸気波形を正弦波と比較する。図14A〜図14Cは、5%容量と95%容量とにそれぞれ相当する点362と点364を含む例示的患者吸気波形360を示す。可能な限り最良の比較を行うため、例示的な患者吸気波形360を正弦波と比較することは、患者吸気波形が正弦波に一致し又は逆に正弦波が患者吸気波形に一致すること要求される。このため、複数の過程を実行して、患者吸気波形上に正弦波を適合させなければならない。
【0154】
第1に、患者の吸気波形360上に正弦波の始点と終点とを記入するのに使用する正弦波基線値が計算される。正弦波基線値は、平坦度平坦基線(FFB)値の1/2として定義される。正弦波基線(1/2FFB)に相当する線370が吸気波形360と交差する点366と点368は、吸気波形上に重なる正弦波の始点と終点として選択される。従って、吸気波形360上に点366と点368とを記入する作業が行われる。
【0155】
本発明では、例えば、5%容量点362と95%容量点368の既知目標値から開始して吸気波形上の複数の点を探索して、前記始点366と終点368を記入する。図14Bに示すように、吸気波形の始端又は基端を探索するとき、5%容量(点362)に対する流量値が正弦波基線値370より小さければ、95%容量点が配置される吸気波形360の遠位の終点368に向かって上方に探索(検索)される。これに対し、5%容量(点362)の流量値が正弦波基線値370より大きいとき、吸気波形360の基端又は始点366に向かい下方に探索される。例示的な実施の形態では、点362での流量は、正弦波基線値370より大きいので、図14Bの矢印370は、波形の始点366に向かう5%容量点から下方への探索を示す。
【0156】
吸気波形の遠位の終点368で探索するとき、95%容量(点364)に対する流量値が正弦波基線値370より大きいとき、吸気波形360の遠位の終点368に向かって上方に探索される。他方、95%容量(点364)に対する流量値が正弦波基線値370より小さい場合、5%容量点が配置される吸気波形360の終点368に向かい下方に探索される。例示的な実施の形態では、点364での流量が正弦波基線値370より小さいので、図14Bの矢印372は、95%容量点から下方への探索を示す。
【0157】
正弦波基線値370に相当しかつ波形360上の点の位置を探索するとき、5%容量点等の目標点で開始する探索は、正弦波の開始に相当すべき吸気波形360上の正しい点を見つけることができない。例えば、図14Cに示すように、点362が正弦波基線値点より上方にあり、上方に向かって探索を行うとき、吸気波形の終点368付近を始点として誤って点368を探索することもある。例示する点376として示すように、95%点が正弦波基線値370に相当する点より大きいとき、矢印378に示すように、点376から下方に探索を行えば、同様の誤りが発生する。
【0158】
前記誤りを回避するため、本発明では、互いに交差する探索(矢印374及び376)を行ったか否かを監視する有効性検査が行われる。交差探索を行えば、各探索により検出される点を放棄し、その波形に対する真円度及び平坦度の計算を行わない。正弦波基線値370に相当する点を検出しなければ、同様の誤りと結果が発生する。例えば、これは、矢印380に示すように、点364から上方探索を開始するとき発生することがある。
【0159】
図15に示す正弦波テンプレート382に対する始点366と終点368とが判明すれば、正弦波の幅又は期間とその振幅との間の既知の関係を使用して、始点366と終点368とを有する正弦波テンプレート382の振幅(正弦波振幅)を計算できる。図15を参照されたい。例えば、患者流量(Qpatient)を始点(Start point)から終点(End point)まで積分した積分値を2πで除する正弦波振幅(Sine Amp)は、下式で計算される。
【0160】
【数2】
【0161】
本発明では、正弦波の既知の期間、即ち、始点と終点との間の時間及び計算した振幅から、期間(Period)と正弦波振幅(Sine Amp)との比(Ratio)が決定される。換言すれば、期間と正弦波振幅との比(Ratio)は、下式により計算される。
【0162】
【数3】
【0163】
期間と正弦波振幅との比を決定する目的は、正弦波テンプレートの振幅を調整することにより複数の正弦波テンプレートを互いに標準化する意図に出たものである。例えば、図16Aに示すように、非常に高い比を有する正弦波テンプレート384は、非常に高くかつ薄い。例えば、図16Bに示すように、非常に低い比を有する正弦波テンプレート386は、非常に低くかつ幅広い。前記2波形パターン間の整合性は、通常極めて悪く、意味のある結果を生じないので、高く薄いテンプレート384又は低く幅広いテンプレート386を実際の患者吸気波形と比較しないことが好ましい。
【0164】
前記状態を説明するため、本発明は、複数のサンプルフォームを示す正弦波テンプレートの比を調節する。図17は、複数の正弦波テンプレートの比の調節に使用する標準化曲線390を示す。標準化曲線390は、比を調節しない線形(一次)領域392を有する。極めて高い比を有する線形領域392の上方に連続する正弦波テンプレートの標準化曲線390は、比を下方修正する第1の領域394と、固定領域396とを有する。図示の例示的な実施の形態では、実際の比がいかに高くても、固定領域396は、36に固定される。極めて低い比を有する比線形領域392の下方に連続する正弦波テンプレートの標準化曲線390は、比を上方修正する第2の領域398と、固定領域400とを有する。図示の例示的な実施の形態では、実際の比がいかに低くても、固定領域400の調整比は、8に固定される。
【0165】
例えば、図17に示す特性から決定される調節比を使用して、一定に保持する期間と共に、正弦波テンプレートの振幅が設定される。例えば、図18Aは、極めて低い比と、極めて平坦な振幅とを有する正弦波テンプレート402を示す。どのように比を調節して正弦波テンプレートの振幅を有効に増加するかを示す補正後の正弦波テンプレート404も図示する。図18Bは、極めて高い比と、極めて高い振幅とを有する正弦波テンプレート406を示す。どのように比を調節して正弦波テンプレートの振幅を有効に減少するかを示す補正後の正弦波テンプレート408も図示する。
【0166】
患者吸気流量に相当する正弦波テンプレートを決定しかつ必要に応じて補正した後に、従来技術を使用して、補正した正弦波テンプレートの容量を計算する。アナログ演算では、補正した正弦波テンプレート全体を始点から終点まで積分して、容量が計算される。デジタル演算では、始点から終点までの流量を合計しかつこの演算での積算数(総和数)で合計値を除することにより容量が計算される。
【0167】
図19Aは、例示的患者吸気波形410と、前記のように決定した正弦波テンプレート412とを示す。患者吸気波形410と正弦波テンプレート412との間に存在する比較的大きな偏差(偏差度)をこの図から理解できよう。本発明では、矢印414に示すように、正弦波テンプレートを有効に移動させて、患者吸気波形を重ねることにより偏差が説明される。
【0168】
本発明の好適な実施の形態では、図19Bに示すように、患者吸気波形の中心Cを決定し、正弦波テンプレートの新しい中心として中心Cを使用することにより、患者吸気波形に重ねるテンプレートの移動が達成される。平坦度平坦基線(FFB)値に相当する吸気波形上の点416と418とを見出すことにより、患者吸気波形410の中心Cを決定することができる。正弦波基線値(1/2FFB)に相当する既知の目標点366と368から上方又は下方に探索すれば、平坦度平坦基線(FFB)に相当する吸気波形上の点416及び418を見出すことができる。矢印420及び422によりこの探索を図示する。吸気波形410上の複数の平坦度平坦基線(FFB)点を決めれば、平坦度平坦基線(FFB)点(416及び418)間距離の1/2として吸気波形の中心Cが得られる。吸気波形の中心Cを決定すれば、正弦波テンプレート412を形成する位置決め点を中心Cについて再計算することができる。
【0169】
図20に示すように、20%容量点と80%容量点との間の平坦度平坦基線(FFB)レベルの上方にある吸気波形410の容量を決定して、平坦度レベルが計算される。平坦度レベルの結果に一定加重値を適用して、吸気波形の僅かな形状変化による影響を低減することが好ましい。
【0170】
デジタルプロセッサでは、単位時間当りの流量(Qp(t))から平坦度平坦基線(Flatness Flat Baseline)を減じた絶対値を20%容積(20% Volume)から80%容積(80% Volume)まで積分し、得られる積分値に4と100とを乗じて、その乗数を20%から80%までの時間(T20%-80%)と平坦度基線(Flatness Baseline)との乗数で除して得られる平坦度(Flatness)を下式により決定することができる。
【0171】
【数4】
【0172】
この関係式では、一定値4は、吸気波形の形状変化に対する前記決定値の感度を減少する加重定数である。平坦値を百分率として表す一定値100が選択される。興味深いことに、吸気波形が正弦曲線のときに、平坦度値は大きく、吸気波形が完全に平坦であれば、零になることもある。
【0173】
図21に示すように、20%容積点と80%容積点との間で前記のように決定される正弦波テンプレート412と患者吸気波形410との差として真円度が計算される。斜線領域430として図21にこの差を示す。真円度の決定に加重定数を適用して、吸気波形の僅かな形状変化に対する感度を減少することが好ましい。
【0174】
デジタルプロセッサでは、単位時間当りの正弦波流量(Flow Sine(t))から単位時間当りの流量(Qp(t))を減じた絶対値を20%容積(20% Volume)から80%容積(80% Volume)まで積分し、その積分値に、2と100とを乗じて、その乗数を正弦波容積(Sine Volume)で除して得られる真円度(Roundness)を下式により決定することができる。
【0175】
【数5】
【0176】
興味深いことに、吸気波形が平坦のとき真円度値は大きく、吸気波形が完全な正弦曲線であれば、真円度値は、零になることがある。
【0177】
図22に示すように、領域434、436及び438に最初に吸気波形432を分割して、非対称度が計算される。各領域は、吸気波形の持続間の1/3に相当する。各領域の最高流量の予め決められた量が平均化される。例えば、本発明の好適な実施の形態では、各領域の頂部5%流量を平均化する。中央領域436の5%流量(Middle Region 5%)を左領域の5%流量(Left Region 5%)で除することにより、吸気波形の非対称度数(Skewness Number)が計算される。換言すれば、非対称度数は、下式により算出される。
【0178】
【数6】
【0179】
複数の領域に吸気波形を区分する具体的な方法と、各領域からの流量百分率を分析して、非対称度値を決定する方法を変更できることは理解されよう。
【0180】
I−2.自動滴定検出モジュール
自動滴定検出モジュール350は、通常2.5〜20分の時間中に収集される加重最大流量、平坦度、真円度及び非対称度データの各監視呼吸媒介変数に関する2つの型の動向分析を行う。動向分析の第1は、長期動向分析であり、第2は、短期動向分析である。しかしながら、各型の動向分析には、まず分析用のデータを収集しなければならない。動向分析に入力するデータ量が多いほど、患者の応答を表示する分析の精度が向上する。
【0181】
図23に示すように、患者の呼吸周期440の呼吸媒介変数データを複数のデータセットに区分し、各データセットは、多数の呼吸周期に関連するデータを含む。好適な本実施の形態では、各データセットは、4つの呼吸周期の呼吸媒介変数データを含む。
【0182】
前記のように、各呼吸に対する加重最大流量Qwpeak、真円度、平坦度及び非対称度である呼吸媒介変数が計算される。例えば、4呼吸の加重最大流量データを平均化しかつ使用して、動向分析に使用する単一の評価値が決定される。真円度、平坦度及び非対称度である他の呼吸媒介変数に対しても同様の処理が行われる。この結果は、動向分析の目的に使用されるグラフ442に示す蓄積データとなる。
【0183】
図24は、4呼吸周期にわたる平均化呼吸媒介変数データを表す各評価値の例示的動向分析グラフを示す。複数のデータ評価点に対する最適合線444に示すように、このデータの動向分析は、最小二乗法適合線を決定する過程を含む。最適合線444の圧力勾配は、データの動向が変化している程度を示すことを理解できよう。次に、対象となる時間間隔にわたりこの最適合線についてのデータ評価点の標準偏差446が決定される。
【0184】
このデータに基づき、種々の異なる形式の変更分析を行うことができる。例えば、本発明は、動向データの百分率変化及び差値を決定することを企図する。終点(end point)と始点(start point)との差を平均値(mean)で除する百分率変化(% change)は、下式により計算される。
【0185】
【数7】
【0186】
この式では、終点は、点448のように、収集されるデータの終端付近の最適合線444上の点であり、始点は、点450のように、収集されるデータの始端付近の最適合線444上の点であり、平均値(mean)は、始点(start point)と終点(end point)との間のデータ点の平均値(mean)である。百分率変化(% change)の等価計算式を下式で示すことができる。
【0187】
【数8】
【0188】
ここで、勾配(slop)は、最適合線444の傾斜であり、動向長さ(tend length)は、始点(start point)と終点(end point)との間の時間として示される動向長さである。
【0189】
終点(end point)と始点(start point)との間の差値(difference value)を下式により計算することができる。
【0190】
【数9】
【0191】
この式の等価代表式を下式として表示できる。
【0192】
【数10】
【0193】
本発明の好適な実施の形態では、加重最大流量データを分析するとき、百分率変化のみが使用される。本発明の好適な実施の形態では、前記未処理測定値が既に百分率として表されているので、真円度、平坦度及び非対称度データを分析するとき、動向データの差値のみが使用される。前記のように、百分率変化又は差により限定される誤差窓を予め決められた閾値と比較して、データ中の変化、即ち動向が許容可能なレベルを超えたか否か決定される。分析の型(百分率変化又は差)は、動向分析に使用する未処理データの型に依存されることに注目すべきである。
【0194】
前記のように、各データ評価点が4呼吸周期の媒介変数データの平均値を含むので、自動滴定検出モジュール350は、蓄積されたデータ評価点の短期動向及び長期動向を監視する。長期動向分析を行うとき、百分率変化又は差値(対象となる媒介変数に依存する)を対応時間にわたり評価して、前記動向分析基準が予め決められた閾値外に該当するか否かが決定される。短期動向分析を行うとき、新しく収集する各データ評価点が患者動作中に既に収集したデータ評価点と比較して、動向付けされたデータに対して監視される媒介変数内の偏差が検出される。
【0195】
I−2−a.長期動向
長期動向分析を実行するため、最適合線444の周りのデータ評価点に対する関連する標準偏差446を含む動向付けされたデータの最適合線444を使用して、動向誤差窓が決定される。動向誤差窓は、動向データに対する誤差範囲を表す。動向誤差窓は、最適合線に対する標準偏差、動向計算に使用するデータ評価点の数及び所望の信頼性レベルの関数であり、入力基準(標準偏差、サンプル番号[データ評価点]及び信頼性レベル)を確立したとき、参照用テーブル等の従来技術を使用して決定される。
【0196】
本発明では、動向誤差窓の選択に使用される信頼性レベルは、データの経験的評価に基づき決定される。本発明の目的に対して、80%信頼性レベルが動向誤差窓に適することが経験的分析から決定された。しかしながら、このレベルを変更してもなお重要な結果が得られることは、当業者に理解できよう。80%信頼性レベルを選択するとき、本発明は、本質的に、関連する分散データの最適合線が分析すべきデータの真実の動向を示する。
【0197】
動向誤差窓を決定すると、前記差値又は百分率変化に基づき、前記誤差範囲は、誤差窓に変換される。式(7b)と(7d)の計算式を動向誤差窓に適用して、誤差窓への変換を達成できる。このとき、最適合線444及びその関連動向誤差を考慮する傾斜の範囲は、最適合線の傾斜を表わす。差値又は百分率変化に変換された誤差窓は、自動滴定検出モジュール350から自動滴定監視モジュール352に供給され、自動滴定監視モジュール352は、後述のように、この動向ベース情報を使用して、送出圧力に対する患者の応答変化を判断する。
【0198】
I−2−b.短期動向
短期動向分析は、送出される圧力に対して比較的迅速な患者応答を区別し、検出することを試みる。従って、動向データの時間変化を監視せずに、自動滴定監視モジュール352と組み合わせた自動滴定検出モジュール350の短期動向分析機能は、2つの検出基準に対して発生する各データ評価点を分析する。自動滴定検出モジュールは、短期動向基準を確立し、自動滴定監視モジュール350は、前記基準に対する新規に発生するデータ評価点を分析する。
【0199】
自動滴定検出モジュールが決定する第1の短期動向基準は、予測間隔である。予測間隔の目標は、新規に発生するデータ評価点と比較する値範囲を付与することにある。動向分析計算の最適合線、サンプル数又はデータ点及び所望の信頼性レベルに関するデータ点の標準偏差に基づき標準統計分析法を使用して、予測間隔が決定される。本発明では、予測間隔の選択に使用される信頼性レベルをデータの経験的評価に基づき、予測間隔が決定される。短期動向分析の目的に対し、95%信頼性レベルが適当であることがこの経験的分析から決定された。しかしながら、信頼性レベルを変更しても、有意な結果が得られることは、当業者に理解できよう。前記動向分析基準に基づき、予測間隔は、次に発生するデータ点がこの範囲値に該当する95%信頼性の値範囲を表す。
【0200】
自動滴定検出モジュールが決定する第2の短期動向基準は、データ収集開始時の最適合線上のデータ点である「動向データ評価点の開始点」に過ぎない。動向データ評価点の開始は、図24のデータ点450と同様である。長期動向の前記説明と同様に、短期の百分率変化と差が計算される。前記式(7a)及び(7c)を使用して、これが達成される。短期動向の計算に対し、現在のデータ点の値として終点が定義され、図24のデータ点450と同様に、動向点の始点として始点が定義される。後述のように、自動滴定検出モジュールから自動滴定監視モジュール352に、予測間隔と短期百分率変化(又は長期動向に記載されるものに整合する各呼吸測定値に基づく差)が与えられる。
【0201】
I−3.自動滴定監視モジュール
自動滴定監視モジュール352は、選択過程で自動滴定検出モジュール350により供給される動向情報を使用して、気道に送出される圧力への患者応答を決定することができる。例えば、自動滴定監視モジュールは、患者流量の波形形状が改善又は悪化しているかを決定し、これにより気道流量制限を改善又は悪化しているかを表示する。
【0202】
I−3−a.長期動向選択
図25は、長期動向分析から得られる情報の選択を記入したグラフ459である。上部閾値460と下部閾値462との境界を形成した選択窓461がグラフ459の中心に設けられる。図25では、1=改善傾向、0=変化なし、−1=悪化傾向の3選択レベルがある。
【0203】
自動滴定検出モジュールにより実行される長期動向分析間に計算される誤差窓464に対応する関連する統計上の誤差と共に、動向付けされたデータを上部閾値460と下部閾値462と比較する。全誤差窓は、割り当てられた閾値レベルを超えなければ、1の選択を発生しない。この閾値レベルは、通常7%から8%の範囲で測定値から測定値まで変更する。図25では、8%範囲値が選択される。領域468に示すように、全誤差帯464が閾値レベル460を超えると、選択1が発生する。同様に、領域468に示すように、全誤差帯464が閾値レベル462より下方になると、選択−1が発生する。他面、領域470では、選択零(0)が発生する。
【0204】
I−3−b.短期動向選択
前記短期動向分析及び下記の短期選択計画を指定して、患者の流量波形形状に短期変化又は比較的急激な変化が検出される。単一呼吸群(即ち、4呼吸周期を含む1データ点)を前記第1の短期動向基準及び第2の短期動向基準と比較し、長期動向データに関連して単一呼吸群が統計的に重大な変化を示したか否かを決定することにより、短期変化を検出することができる。
【0205】
(1)新規に発生するデータ評価点が予測間隔に等しいか又は予測間隔外にあるとき及び(2)データ評価点が予め決められた閾値量だけ動向データ評価点の始点から異なるとき、データ評価点(即ち、呼吸群)は、長期動向の開始に有意な変化を示すものと認められる。従って、前記状態(1)及び(2)の両方が適合すれば、データ評価点が動向データ評価点の開始より上方にあるか又は下方にあるかによって、短期動向は、選択1又は−1を発生する。別の状況で、零(0)の選択が発生される。短期動向に使用される動向データ評価点の開始とデータ評価点との間の差又は百分率変化の閾値は、通常9%から14%までの範囲で測定から測定まで変化する。
【0206】
I−3−c.最終選択
各個々の呼吸測定値に対して長期選択及び短期選択が出されたとき、全測定からの選択は、蓄積されかつ単一の最終選択に纏められる。下表は、最終選択過程を要約したものである。
【0207】
【表1】
【0208】
長期選択が零でない限り、各呼吸媒介変数の「結果」欄に示す値は、長期選択値である。長期選択が零のとき、短期選択値は、その呼吸媒介変数の結果欄に記入される。これらの結果を総計して、最終選択が作成される。
【0209】
本発明により実施する唯一の他の補足説明は、最終選択を総計して、非零の平坦度結果が、吸気波形形状、即ち真円度及び非対称度の形状に関連する他の非零選択呼吸媒介変数に矛盾すれば、平坦度呼吸媒介変数を無視することにある。これは、前記表の「c」にアスタリスクを付して、平坦度値「c」を無視する場合があることを意味するためである。例えば、平坦度の結果が1で、真円度又は非対称度の何れかの媒介変数が、-1では、最終選択の合計では、平坦度の結果が無視される。同様に、平坦度の結果が-1で、真円度又は非対称度媒介変数のいずれかが1で、最終選択の合計では、平坦度の結果が無視される。
【0210】
前記表から−4〜4の範囲に収められる最終選択「x」を使用して、患者流量波形形状を3つの主要な状態に決定することができる。患者吸気流量の状態は、気道に供給される圧力に対する患者の応答も表示する。圧力への患者応答状態を纏めた主要3状態と各状態に関する最終選択値を以下に示す。
1) 統計的に重要な悪化 x≦-2
2) 統計的に変化なし -2<x<2
3) 統計的に重要な改善 x≧2
【0211】
自動滴定制御装置が、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を増加し、減少し又は一定に保持しているか否かに無関係に、前記3状態を全て決定することができる。下表は、各状態(1)、(2)又は(3)が各x値に該当する場合を要約する。
【0212】
【表2】
【0213】
下記に詳述するように、自動滴定制御装置354により実行されるある圧力制御動作間の状態(2)と(3)との間に介入する第4の状態が加えられる。状態(2)と(3)との間にある付加状態を状態(2.5)と称し、統計的に限界改善を示す患者状態、即ち、患者吸気波形に相当する。ある圧力制御動作間の最後の選択が+1、即ち、x=+1に等しいとき、この状態が発生すると認められる。圧力への患者応答を大別する4状態と、各状態に関する最終選択値xを下記に示す。
1) 統計的に重大な悪化 x≦-2
2) 統計的に変化なし -2<x<1
2.5) 統計的に限界 x=1
3) 統計的に重要な改善 x≧2
【0214】
下表は、この状態で各x値に該当する各状態(1)、(2)、(2.5)又は(3)を大別する。
【0215】
【表3】
【0216】
患者の状態変化に対し自動滴定制御層を微調整すべき方法に依存して、状態を更に増加し又は減少できることを理解すべきである。
【0217】
I−4.自動滴定制御モジュール
圧力支援装置から患者の気道に供給される圧力への患者応答表示である前記最終選択レベルを現在の動作モードと共に使用して、自動滴定制御装置が実行する何らかの機能を決定することができる。次に、一般的な3症例を挙げて、自動滴定制御装置の動作を説明する。
【0218】
I−4−a.症例1−始動
図26は、症例1間に圧力支援装置から発生する吸気気道陽圧曲線500を示す。即ち、この症例では、呼気気道陽圧を一定に保持しつつ、吸気気道陽圧が調整される。圧力支援レベルの最大値PSminレベル又は最小値PSmaxレベルを保持する必要があれば、呼気気道陽圧のみを変化させる。圧力支援装置を作動すると、状態保持期間502に入り、データが収集される。好適な実施の形態では、状態保持期間502は、5分間継続する。しかしながら、十分な量のデータを収集するのに十分な時間が経過する限り、状態保持期間502の持続時間を5分以外の値に設定することもできる。状態保持期間502の終端で、自動滴定制御装置354は、回復状態を開始するが、回復状態では、毎分約0.5cmH2Oの緩慢な圧力増加速度で患者吸気気道陽圧を2.0cmH2Oの目標圧力で増加させる。
【0219】
この圧力傾斜増加間に、4状態(1)、(2)、(2.5)及び(3)を使用して、自動滴定監視モジュール352により間断なく動向データを検査し、その後、圧力傾斜増加の間に、状態(1):患者流量波形が統計的に重大な悪化を経験したか、状態(2):統計的に変化ないか、状態(2.5):統計的に限界改善か、又は状態(3):統計的に重大な改善かが決定される。しかしながら、圧力増加の開始後2.5分以下の時間経過するまで、前記決定に関する動作を行わない。2.5分の動作停止窓504を設けると、動向決定の目的に十分なデータを圧力支援装置が収集することができる。例えば、動作停止間隔の持続時間を2〜4分間で変更できることは、理解できよう。しかしながら、動作停止窓を延長する程、考え得るどの呼吸障害を治療でも圧力支援装置の応答性が低下する。
【0220】
傾斜圧力506間に患者吸気流量波形が改善し又は悪化すれば、患者吸気流量波形の改善又は悪化が終了するまで、圧力傾斜及び動向決定を継続し、これにより、例えば、患者状態が(3)から(2.5)に変化し又は患者状態が(1)から(2)に変化する。患者状態が(3)から(2.5)まで変化する症例では、通常0.5cmH2Oの少量だけ、自動滴定制御装置354は、吸気気道陽圧を低下し、その後、圧力曲線508に示すように、5分の状態保持期間が開始される。圧力傾斜間に改善がなく、即ち、患者吸気流量波形が同一の状態(2)又は状態(2.5)のままのとき、圧力曲線510に示すように、自動滴定制御装置354は、吸気気道陽圧を2.0cmH2O減少し、その後、5分の状態保持期間512を開始する。この圧力制御手順を行って、流量波形内に流量限界が存在するか否かを決定し、流量限界が最早存在しない理想的な圧力を見付けることができる。何れかの状態保持期間中に流量限界が検出(患者が状態又は睡眠段階を変更したことを示す)されれば、緩慢な圧力増加を再び始動する。
【0221】
I−4−b.症例2−より高優先順位制御装置からの復帰
通常一晩中反復して圧力支援治療を実施する間に、より優先順位の高い複数のレベル制御装置、例えば鼾制御装置144又は無呼吸/呼吸低下制御装置168は、前記のように、一時的に制御を行いかつ圧力変動を実行する。高優先順位の制御装置の全活性動作が終了すれば、制御は、自動滴定制御装置354に戻される。優先順位のより高い制御装置から制御を引き継ぐとき、初期5分の状態保持期間を3分以下から3.5分期間に置換することを除き、自動滴定制御装置は、前記症例1と同一の動作を実行する。
【0222】
I−4−c.症例3−患者圧力減少
図27A及び図27Bに示す圧力曲線520に示すように、症例1又は症例2の何れかから最後の5分状態保持期間が完了するとき、次の探索手順が開始する。この探索手順では、曲線522に示すように、圧力支援装置から送出される圧力は、1分間に0.5cmH2Oの減圧速度で緩慢に低下される。また、この例示的な実施の形態では、圧力支援レベルの最小値PSmin及び最大値PSmaxを超えない限り、呼気気道陽圧は、一定に保持される。圧力減少を開始する前に、呼吸測定動向は、利用可能なデータの最新の3分まで初期化される。
【0223】
0.5cmH2Oだけ吸気気道陽圧が減少した後に、動向データを断続的に検査して、圧力傾斜期間(吸気気道陽圧減少期間)に患者吸気流量グラフが悪化したか否かが決定される。この動向分析では、3患者状態(1)、(2)及び(3)のみが考慮される。患者流量グラフに悪化を検出しなければ(状態(2))、図27Aに示すように、最小システム圧力Pmin(IPAPmin又はEPAPmin)に到達するまで、吸気気道陽圧傾斜と動向検出とが継続される。その後、自動滴定制御装置354は、前記症例1の吸気気道陽圧制御を開始し、5分の状態保持期間502を開始する。
【0224】
吸気気道陽圧減少間に、例えば、状態(2)から状態(1)に移行して患者吸気流量グラフが悪化したとき、曲線526に示すように、吸気気道陽圧を迅速に1.5cmH2Oだけ増加し、その後、曲線528に示すように、10分以下の時間で吸気気道陽圧を一定に保持する。図27Bを参照されたい。10分保持時間が終了すれば、自動滴定制御装置354は、症例1について説明した回復状態に直接入り、吸気気道陽圧の増加506を始動する。
【0225】
この全体的な手順により流量限定が発生する圧力を決定し、その後、理想的な設定値に圧力を上昇する。前記手順を一晩中反復して、患者の状態が変化するときに最適の吸気気道陽圧を検出しかつ実用上の低いレベルに圧力を保持して、快適性が改善される。何らかの状態保持期間(患者の状態が変化し又は睡眠に移行したことを示す)に流量限界が検出されれば、緩慢な吸気気道陽圧傾斜上昇(回復状態)を再び始動する。
【0226】
自動滴定制御装置が存在し得る流量限界点を探索している吸気気道陽圧減少間に、鼾発生の機会は、増加する。このため、本発明は、鼾制御装置による制御を鼾監視モジュール142が要求する鼾事象の要求数を3つから2つに減少することを企図する。これは、圧力減少時間中に鼾に対するシステムの感度を有効に増加するためである。
【0227】
状態保持期間502、508、512、520又は528等のどの状態保持期間の間でも、自動滴定制御装置354は、症例1で説明した回復状態に入り、最適の吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を患者に供給することを試みることができる。例えば、状態保持期間中に分析された動向データから、患者の吸気波形グラフが統計的に重大な悪化(状態(1))を経験していることを示したとき、これが発生することがある。
【0228】
本発明では、圧力支援レベルの最小値PSmin又は最大値PSmaxを保持する必要がなければ、呼気気道陽圧を放置して吸気気道陽圧のみを調整することを説明した。これは、本発明の例示的な実施の形態に過ぎないことは、理解されよう。本発明は、自動滴定過程間に吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を調整することも企図する。例えば、支援圧力を常時一定に保持しながら吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を調整できる。
【0229】
J.中枢性対閉塞性無呼吸/呼吸低下事象の検出
無呼吸/呼吸低下制御層の動作を検討した前記G項では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、閉塞性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象との差を検出できないことを指摘したが、患者に圧力を供給する方法により、この欠陥を補償することができる。しかしながら、本発明の別の実施の形態では、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164を介して閉塞性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象との差を検出することを企図する。例えば、無呼吸/呼吸低下期間中、無呼吸/呼吸低下期間の終了直後又は下記のように前記両期間中に患者吸気波形を監視することにより、これを達成できる。
【0230】
閉塞性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験していることを検出すれば、G項で説明したように、患者に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とが供給される。しかしながら、中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験していれば、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を増加しないことが好ましい。患者に送出される吸気気道陽圧及び/又は呼気気道陽圧を増加しても、中枢性無呼吸/呼吸低下の症状を治療できないことが一般に認識されている。従って、本発明は、患者が中枢性無呼吸/呼吸低下を体験していると認められるとき、患者に送出する吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を現在のレベルに保持するか又は吸気気道陽圧若しくは呼気気道陽圧を減少することも企図する。
【0231】
中枢性無呼吸/呼吸低下事象を決定しても、無呼吸/呼吸低下検出モジュールが無呼吸/呼吸低下事象を無呼吸/呼吸低下としては拒絶することにより、本発明の一実施の形態では、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を現在のレベルに保持することができる。この場合に、あたかも無呼吸/呼吸低下事象を検出せずに、圧力支援装置が動作して、無呼吸/呼吸低下制御装置168が圧力支援装置の制御を要求しない。また、本発明は、患者が中枢性無呼吸を体験していることを決定すれば、患者に送出する吸気気道陽圧及び/又は呼気気道陽圧を減少することを企図する。
【0232】
閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象と中枢性無呼吸/呼吸低下事象とを本発明が区別する方法を図28〜図30について説明するが、図28〜図30は、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象(図28及び図30)間と、中枢性無呼吸/呼吸低下事象(図29)間との例示的患者流量波形を示す。閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているかを無呼吸/呼吸低下検出モジュール164により決定することが好ましく、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164は、無呼吸/呼吸低下監視モジュール166にその決定信号を付与して無呼吸/呼吸低下制御装置168を作動させ、前記のように、適切な圧力に制御することができる。
【0233】
現在の好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下期間中の患者吸気波形を監視して、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を体験しているか否かが決定される。図28及び図29にそれぞれ示す不確定な患者流量波形600と602とでは、G−1項及びG−4項で説明したように決定する無呼吸/呼吸低下事象は、点604で始まり、点606で終了する。本発明の例示的な実施の形態に使用される技術を示す波形600及び602を使用して、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているか否かが決定される。これらの波形は、必ずしも正しい縮尺でなく、実際の患者流量を正確に表示していない。図28及び図29の点線は、無呼吸/呼吸低下事象が発生する患者流量の谷部を示す。本発明では、患者流量の形状を検査して、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を体験しているか否かを決定するのがこの谷部、即ち無呼吸/呼吸低下期間である。
【0234】
詳細には、患者の吸気波形は、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間に制限された空気流について同一の形状特性を示す傾向があることを本発明者らは、理解した。即ち、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間に、平坦度の増加(より平坦性)、真円度の減少(丸みのより減少性)、非対称度の増加(非対称度のより増加性)(図22に示すように)又はこれらの特性の何れかの組み合わせを示す波形が存在する。
【0235】
例えば、図28では、2点604と606間の無呼吸/呼吸低下期間に発生する吸気波形610は、平坦度が増加し、真円度が欠如し、非対称度が増加し又はこれらの特性の組み合わせが強調される傾向があり、波形600は、中枢性無呼吸/呼吸低下よりむしろ閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下を示す。他方、図29では、2点604と点606間の無呼吸/呼吸低下期間中に発生する吸気波形612は、平坦度の非増加、比較的正常な真円度及び非対称度の非増加が強調される傾向があり、波形602は、中枢性無呼吸/呼吸低下よりむしろ中枢性無呼吸/呼吸低下を示す。このように、本発明は、無呼吸/呼吸低下検出モジュール164を介して無呼吸/呼吸低下期間間に発生する波形の平坦度、真円度及び非対称度を検出して、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているか否かを決定することを企図する。現在の好適な実施の形態では、無呼吸/呼吸低下期間中にこれらの形状基準の全てが監視される。本発明は、例えば、平坦度等のわずか単一基準を監視して、この決定を行うことを企図する。
【0236】
本発明の第2の実施の形態では、無呼吸/呼吸低下の終了直後の期間の患者吸気流波形を監視して、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を体験しているか否かを決定する。詳細には、本発明者らは、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下又は中枢性無呼吸/呼吸低下を患者が患ったか否かに依存して、患者の吸気流量が無呼吸/呼吸低下事象の末期に異なることを理解した。詳細には、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間の患者吸気流量波形620を示す図30から明らかなように、閉塞性無呼吸/呼吸低下事象の終了時に、図30の呼吸波形622に全体的に示すように、患者が比較的大きな喘ぎ呼吸又は一連の喘ぎ呼吸を行う傾向があることを決定した。他方、中枢性無呼吸/呼吸低下事象の末期に、患者は、大きな呼吸を行う傾向がない。図29を参照されたい。
【0237】
このように、本発明は、患者が無呼吸/呼吸低下の末期に大きな喘ぎ呼吸を行ったか否かを決定することにより、患者が閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を経験したかを決定することを企図する。例えば、無呼吸/呼吸低下期間の末期直後の周期的呼吸容積及びこの容積を予め決められた閾値容積と比較することにより、これが達成される。呼吸が閾値レベルを超える周期的容積を有するとき、患者は、閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下を経験したものと判断される。このとき、G項で前記したように、患者に圧力が送出される。
【0238】
本発明は、周期的な容量以外の呼吸特性を監視して、患者が無呼吸/呼吸低下期間の末期に大きな喘ぎ呼吸を行っているか否かを決定することを企図する。例えば、閾値に対する最大流量も測定して、患者が比較的大きな呼吸を行っているか否かを評価することができる。
【0239】
閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下事象又は中枢性無呼吸/呼吸低下事象を患者が体験しているか否かを決定する2つの技術を前記のように説明した。前記技術を単独で又は組み合わせて使用して、この決定を行うことができる。また、本発明は、心原性呼吸事象の監視又は無呼吸/呼吸低下期間の間に行う気道開通試験等の2つの前記技術と組み合わせて又は単独で中枢性無呼吸を検出する何らかの従来技術を使用することを企図する。
【0240】
現在の好適な実施の形態では、患者に供給される吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧がある閾値以上でなければ、無呼吸/呼吸低下制御層は、閉塞性/拘束性と中枢性無呼吸/呼吸低下事象とを区別しない。無呼吸/呼吸低下が中枢性か又は閉塞性であったかに係わらず、比較的低い吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧で患者を治療しているとき、この閾値により圧力治療を確実に行うことができる。吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧がこの閾値に満たないとき、圧力支援装置は、G項に記載した圧力治療を行う。しかしながら、比較的高い吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧、即ち圧力閾値より高い吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧で患者を治療しているとき、前記のように、中枢性無呼吸に対する圧力増加には治療効果がないので、無呼吸/呼吸低下が中枢性か閉塞性か否かを決定することが好ましい。
【0241】
好適な実施の形態では、多くの患者に適度な圧力支援を行う圧力レベルと臨床データの分析から決定した8cmH2Oに圧力閾値を設定するが、患者が中枢性無呼吸/呼吸低下を体験しているとき過度に高い圧力を供給しても、高すぎることはない。この閾値は、他の値でもよく、患者の特性又は患者の病歴の特性に依存して、調節することができる。
【0242】
K.結論
本発明は、図2に示す制御装置に付加的な制御層を設けることも企図することを理解できよう。図2に示す制御層の1つ又はそれ以上を圧力支援装置の所望動作性能に基づき省略することができる。また、本発明は、図2に示す優先順位に限定すべき意図はない。例えば、無呼吸/呼吸低下制御層(優先順位第6)を大きな漏洩制御層(優先順位第5)と交換することにより、より高い優先順位を無呼吸/呼吸低下制御層(優先順位第6)に付与することもできる。
【0243】
図2に示す要求プロセッサ106は、一般的に複数の制御モジュール間の変化に基づき、検出モジュール102、監視モジュール104及び制御モジュール100をリセットする。点線108より上の機械ベースの制御層により、検出モジュール102のみが一般的にリセットされる。制御層がその圧力治療を完了した後に、監視モジュール104は、一般的にリセットされ、圧力支援装置の制御は、下位の制御層に戻される。これが行われるので、複数の監視モジュールは、最後の圧力治療以降患者の推移を追うことができる。また、例えば、鼾を伴う呼吸低下のように2つの重複する患者事象が発生する状況で患者の過治療を回避するために、これが重要である。鼾制御装置が鼾状態を治療しながら、同時に発生している呼吸低下を間接的に治療しているとき、呼吸低下監視モジュールは、リセットされ、呼吸低下監視モジュールからの付加的継続要求を停止することができる。現在の制御層の優先順位に基づき、制御モジュール100は、リセットされる。現在の制御装置が圧力支援装置の制御を下位の制御層に戻すとき、全ての下位制御層を通常リセットして、最後の制御層の停止後に、制御層の処理が開始する。
【0244】
L.他の適用
上記実施の形態では、呼気間に供給する圧力よりも高い圧力を吸気間に通常供給するバイレベル圧力支援装置に本発明での自動滴定機能が適用される。圧力支援の他のモードと組み合わせて、上記バイレベル自動滴定技術を使用することを本発明が企図することは、理解されよう。本発明での自動滴定技術の用途に適するモードの1つにバイフレックス(Bi-Flex[登録商標])治療が含まれるが、それに限定されない。換言すれば、基準又は目標となる吸気気道陽圧レベル又は呼気気道陽圧レベルの制御に本発明での自動滴定技術を適用でき、前記目標に組み合わせて他の圧力制御法を利用することができる。
【0245】
米国特許第5,535,738号、第5,794,615号、第6,105,575号、第6,609,517号及び第6,932,084号は、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧等の基本圧力を変更して患者に圧力支援治療を与える比例気道陽圧(PPAP[proportional positive airway pressure])と指称される圧力支援技術を開示し、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。即ち、本発明は、前記自動滴定技術を使用して、比例気道陽圧に関する前記米国特許に示される基本圧力を制御することを企図する。
【0246】
バイフレックス圧力支援と称する比例気道陽圧圧力支援技術の一実施の形態では、第1の基本圧力は、呼吸周期の吸気段階間に患者に適用される吸気気道陽圧であり、第2の基本圧力は、呼気段階間に患者に適用される呼気気道陽圧である。一実施の形態では、呼気段階の少なくとも一部の期間にある量だけ全体的に又は部分的に呼気気道陽圧を低下し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間中にある程度の圧力を軽減することができる。単独で又は呼気圧力軽減の実施の形態と組み合わせて使用できる他の実施の形態では、全体的若しくは部分的にある量だけ吸気気道陽圧を低下し又は変更して、修正吸気圧力曲線を与え又は吸気圧力を軽減することができる。
【0247】
本発明の更なる実施の形態は、探索に基づく追加の制御なし又は事象に応答する追加の制御なしで、本明細書で説明する自動滴定技術の事象監視のみ及び検出能力のみを使用することを企図する。本質的には、この実施の形態は、制御モジュール100及び要求プロセッサ106を非作動状態にしながら、検出モジュール102と監視モジュール104とを作動状態にすることに相当する。本発明の実施の形態の前記変更は、患者を監視する機能、圧力支援装置の動作又はそれらの両方を提供する。
【0248】
呼気間に供給される呼気気道陽圧から吸気間に供給される吸気気道陽圧へのシステムの移行時に発生する圧力の上昇時間、圧力上昇形状、圧力勾配又は他の圧力増加特徴を使用者が設定できることを、本発明は、企図する。同様に、吸気間に供給される吸気気道陽圧から呼気間に供給される呼気気道陽圧へのシステム移行時に生じる圧力減少時間、圧力減少形状、圧力勾配又は他の圧力減少特徴を使用者が設定できることも本発明は、企図する。
【0249】
例えば、鼾治療のとき、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を調整して患者を治療できることは、理解できよう。どの圧力制御を選択するかは、医療団体で議論され、又は患者に特定のものであり、呼気気道陽圧の変更により最良に治療される患者もいれば、他の患者は、吸気気道陽圧の変更により最良に治療される。前記の理由により、本発明は、特定の基準に基づきかつ/又は使用者の選択により、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を調整すべきか否かを決定することを企図する。例えば、制御装置は、患者の状態、患者に付与される治療法又はそれらの両方を監視して、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の何れを制御するかを選択することができる。例示的な実施の形態では、圧力支援装置は、現在の治療圧力の圧力支援レベルを監視し、制御装置は、監視状態に基づき、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧の何れを調整するかを選択する。
【0250】
監視事象に基づき、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を調整して使用者又は介護者が設定できるように圧力支援装置を設定することもできる。例えば、ある医者は、呼気気道陽圧を調整して鼾を治療することを選択し、他の医者は、吸気気道陽圧を調整して鼾を治療することを選択し、更に別の医者は、吸気気道陽圧の調整と呼気気道陽圧の調整とを部分的に組み合わせて鼾を治療することを選択してもよい。圧力支援装置に情報を入力することにより、鼾が検出されるとき、医者又は他の介護者が調整すべき圧力を選択することができる。本発明は、吸気気道陽圧を制御することにより患者を治療するプログラムで制御装置を制御し、鼾がまだ発生すれば、吸気気道陽圧から呼気気道陽圧に制御を切り替え又は逆に呼気気道陽圧から吸気気道陽圧に制御を切り替えることも企図する。患者の状態、圧力支援装置の状態(処方されている治療法)圧力支援装置に付与される入力又はそれらの何れかの組み合わせを監視する方法及び監視される基準に基づき吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧を制御すべきか否かを選択する方法には、広範囲に種々の方法が存在することは、理解されよう。
【0251】
本発明は、上昇時間、減少時間又はそれらの両方を自動制御して、例えば、患者快適性を最適化することを企図する。圧力上昇時間、圧力減少時間又はそれらの両方を自動的に調整する装置は、米国特許第6,532,960号及び第6,640,806号に開示され、参照することにより前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0252】
どのような自動滴定圧力制御装置も備えない事象監視及び事象検出は、これらに限定されないが、持続気道陽圧(CPAP)、バイパップ(BiPAP)、シーフレックス(C-Flex)及びバイフレックス(Bi-Flex)治療を含む圧力支援治療の全ての実在モードに実施することができる。検出される事象の情報は、装置内部に記録され、取り外し可能な記憶媒体に記録され、圧力支援装置から有線接続若しくは無線接続等により外部に伝達され、又はこれらの何れかの組み合わせにより記録される。例えば、検出される事象に基づいて患者が十分な治療を受けたか否かを決定するときに、この情報は、有効である。
【0253】
親出願に開示される自動持続気道陽圧(CPAP)技術に類似する装置と方法を示す本発明は、自動バイレベルモードとも称する気道陽圧治療のバイレベルモードを使用することにより、持続気道陽圧に耐えられない患者の適応性の増加を助長することができることは、理解できよう。本明細書に記載する自動バイレベル法は、気道閉塞と鼾とを防止するのに設定される基準呼気気道陽圧レベルと呼吸低下と流量制限とを防止するのに設定される吸気気道陽圧レベルとにより気道を安定化することができる。自動持続気道陽圧について説明した利点に加え、吸気と呼気とに異なる圧力レベルを与える自動バイレベル法は、持続気道陽圧に耐えられない患者に快適性を与えるものと期待される。
【0254】
現在最も実用的かつ好適と思われる実施の形態を図示して詳記したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明の自動滴定技術により動作される圧力支援装置の略示図
【図2】本発明の自動滴定技術を実施する制御装置の略示図
【図3】本発明の自動滴定技術の種々の制御特性を始動すべきか否かを決定する基準を示す圧力対流量線図
【図4】本発明により使用する実際の最大流量と加重最大流量Qwpeakとの差を示す別の例示波形図(図4A〜図4C)
【図5】本発明が自動滴定機能の実行時に使用する様々な媒介変数を算出する方法を説明する例示的吸気波形を示すグラフ
【図6】移動窓(時間枠)期間中に蓄積される呼吸の加重最大流量の例示ヒストグラム
【図7】本発明の技術的思想による呼吸低下検出過程を示すフローチャート(図7A〜図7E)
【図8】本発明の無呼吸検出技術に使用する間隙充填過程の説明に使用する患者流量波形の例示グラフ
【図9】圧力支援装置の無呼吸/呼吸低下治療手順の動作の例示患者圧力グラフ
【図10】加重最大流量の分散例を示すグラフ(図10A及び図10B)
【図11】本発明の可変呼吸検出過程により平均流量を図表化し又は正常化する過程を示すグラフ
【図12】患者が可変呼吸を体験していることを表すヒステリシス閾値基準を示すグラフ
【図13】本発明の可変呼吸制御モジュールの圧力制御動作を示すグラフ
【図14】本発明の実施の形態での真円度及び平坦度の算出の説明に使用する例示的患者吸気波形を示すグラフ(図14A〜図14C)
【図15】真円度及び平坦度の算出の説明に使用する例示的患者吸気波形及び正弦波テンプレートを示すグラフ
【図16】異なる正弦波テンプレートの極端な例を示すグラフ(図16A及び図16B)
【図17】複数の正弦波テンプレートの比を調整するのに使用する規格化曲線を示すグラフ
【図18】本発明の真円度及び平坦度の算出過程によりテンプレートの増幅度の修正法を示す正弦波テンプレートを表すグラフ(図18A及び図18B)
【図19】真円度と平坦度の算出の説明に使用する例示的患者吸気波形及び対応する正弦波テンプレートを示すグラフ(図19A及び図19B)
【図20】本発明の技術的思想による平坦度の計算法を示す患者吸気波形を表すグラフ
【図21】本発明の技術的思想による真円度の計算法を示す患者吸気波形を表すグラフ
【図22】本発明の技術的思想による非対称度の計算法を示す患者吸気波形を表すグラフ
【図23】本発明の技術的思想による動向分析目的に対する吸気媒介変数データの蓄積法を示すグラフ
【図24】本発明の動向分析技術を示すグラフ
【図25】本発明による長期間動向分析中に実施される選択過程を示すグラフ
【図26】圧力増加動作中に圧力支援装置から出力される例示的圧力曲線を示すグラフ
【図27】本発明の圧力支援装置から出力される他の例示的圧力曲線を示すグラフ(図27A及び図27B)
【図28】閉塞性/拘束性無呼吸/呼吸低下発生中の例示的患者流量波形を示すグラフ
【図29】中枢性無呼吸/呼吸低下発生中の患者流量波形を示すグラフ
【図30】閉塞性無呼吸/拘束性無呼吸/呼吸低下事象間の他の例示的患者流量波形を示すグラフ
【図31】本発明の技術的思想による圧力傾斜周期間の吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルの制御法を例示する波形を示すグラフ
【図32】本発明の技術的思想による圧力傾斜周期間の吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルの制御法を例示する波形を示すグラフ
【図33】本発明の技術的思想による圧力傾斜周期間の吸気気道陽圧レベルと呼気気道陽圧レベルの制御法を例示する波形を示すグラフ
【符号の説明】
【0256】
(32)・・圧力発生装置、 (36)・・患者回路、 (44)・・監視装置、 (50)・・制御装置、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する圧力発生装置(32)と、
(b) 圧力発生装置に連結される第1の端部と患者の気道に連結される第2の端部とを有する患者回路(36)と、
(c) 患者回路又は圧力発生装置に接続され、患者の気道の圧力、前記患者の気道内の気体流量又はそれらの両方を示す媒介変数を測定して、圧力を示す圧力信号、気体流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を各々出力する監視装置(44)と、
(d) 監視装置と圧力発生装置とに接続され、監視装置の出力に基づき、圧力発生装置を制御する制御装置(50)とを備え、
制御装置は、プログラミング制御され、少なくとも1つの下記の状態:
(1)鼾、(2)無呼吸、(3)呼吸低下及び(4)圧力支援装置内の大量漏洩
を監視し、大量漏洩は、如何なる意図的な装置漏洩よりも十分多い装置漏洩であり、
制御装置は、前記状態(1)、(2)、(3)又は(4)の何れか1つの発生に基づき、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整することを特徴とするバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項2】
制御装置は、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整して、患者への最適な吸気気道陽圧を決定する自動滴定を行う請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項3】
制御装置は、患者が鼾を発生している、無呼吸のみを体験している又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせを体験している決定に応答して、吸気気道陽圧を変更せずに圧力発生装置により呼気気道陽圧を増加させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項4】
制御装置は、大量漏洩の検出に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに圧力発生装置により吸気気道陽圧を低下させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項5】
制御装置は、患者が鼾を発生している又は呼吸低下のみを体験している決定に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに圧力発生装置により吸気気道陽圧を増加させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項6】
制御装置は、
(a) 吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の一方を主圧力制御変数として制御し、
(b) 圧力支援レベルの最大値(PSmax)、圧力支援レベルの最小値(PSmin)又は最大値及び最小値それらの両方と現在の圧力支援レベル(PS)を比較し、
(c) 現在の圧力支援レベルを最大値(PSmax)を超えず又は最小値(PSmin)未満に低下させずに圧力発生装置により吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の他方を調整する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項7】
制御装置は、患者の呼吸周期の吸気段階間と呼気段階間に、実質的に一定レベルの吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を圧力発生装置により各々供給させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項8】
制御装置は、
(a) 圧力発生装置により、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減し、
(b) 圧力発生装置により、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を低下し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減し、又は
(c) 圧力発生装置により、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減すると共に、圧力発生装置により、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を低下し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項9】
制御装置は、患者の監視状態、圧力支援装置の監視状態、圧力支援装置への入力情報又はこれらの何れかの組み合わせに基づき、呼気気道陽圧の調整、吸気気道陽圧の調整又は吸気気道陽圧の調整と呼気気道陽圧の調整との組み合わせの何れかを選択する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項10】
圧力傾斜周期の作動を選択する入力装置(52)を更に備え、
制御装置は、(a)圧力傾斜の作動に応答して吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを低下し、(b)その後、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを上昇させ、
制御装置は、圧力傾斜周期の圧力増加部の間に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項11】
(a) 吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)の気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)の気体流を発生する過程と、
(b) 患者回路の第1の端部を圧力発生装置に連結し、患者回路の第2の端部を患者の気道に連結する過程と、
(c) 気体流の流量又は圧力に基づき、(1)鼾、(2)無呼吸、(3)呼吸低下及び(4)如何なる意図的な装置漏洩よりも実質的に多い漏洩である圧力支援装置内の大量漏洩の少なくとも1つの状態を監視する過程と、
(d) 前記(1)、(2)、(3)又は(4)の何れか1つの状態の発生に基づき、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を独立して調整する過程とを含むことを特徴とする患者へのバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項12】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整して、患者への最適な吸気気道陽圧を決定する自動滴定過程を更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項13】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する過程は、患者が鼾を発生している、無呼吸のみを体験している又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせを体験している決定に応答して、吸気気道陽圧を変更せずに呼気気道陽圧を増加する過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項14】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する過程は、大量漏洩の検出に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに吸気気道陽圧を低下させる過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項15】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する過程は、患者が鼾を発生している又は呼吸低下のみを体験している決定に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに吸気気道陽圧を増加する過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項16】
(a) 吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の一方を主圧力制御変数として制御する過程と、
(b) 圧力支援レベルの最大値(PSmax)、圧力支援レベルの最小値(PSmin)又は最大値及び最小値の両方と現在の圧力支援レベル(PS)を比較する過程と、
(c) 現在の圧力支援レベルを最大値(PSmax)を超えず又は最小値(PSmin)未満に低下させずに圧力発生装置により吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の他方を調整する過程とを更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項17】
患者の呼吸周期の吸気段階間と呼気段階間に、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を各々実質的に一定レベルに保持する請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項18】
(a) 呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する過程と、
(b) 吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を減少し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する過程と、
(c) 呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減すると共に、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を減少し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する過程とを更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項19】
患者の監視状態、患者に気体流を供給する圧力支援装置の監視状態、圧力支援装置への入力情報又はこれらの何れかの組み合わせに基づき、呼気気道陽圧、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧と吸気気道陽圧との組み合わせの調整を選択する過程を更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項20】
(a) 圧力傾斜周期の作動に応答して、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを減少する過程と、
(b) その後、傾斜圧力周期の圧力増加間に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整可能に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを増加する過程とを含む圧力傾斜周期を実行する過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項21】
吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する圧力発生装置(32)と、
圧力発生装置に接続される第1の端部及び患者の気道に接続される第2の端部を有する患者回路(36)と、
患者回路又は圧力発生装置に接続され、患者の気道の気体圧力、患者の気道内の気体流量又は気体圧力と気体流量の両方を示す媒介変数を測定して、気体圧力を示す圧力信号、気体流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を各々出力する監視装置(44)と、
監視装置と圧力発生装置とに連結され、監視装置の出力に基づき、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して制御する制御装置(50)とを備え、
優先順位化された複数の制御層の組の単一の制御層により動作するように制御装置をプログラム制御し、
優先順位化された複数の制御層の組内の各制御層は、他の制御層と競合して圧力発生装置を制御し、
各制御層は、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を制御する特有の圧力制御過程を実行することを特徴とするバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項22】
優先順位化された制御層の組内に設けられる各制御層は、
圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を受信する検出モジュール(102)と、
検出モジュールの出力を監視して、制御層が圧力発生装置を制御を行うことを要求すべきか否かを決定する監視モジュール(104)と、
制御を授与された制御層に応答して、圧力発生装置の動作を制御する制御モジュール(100)とを備える請求項21に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項23】
優先順位化された制御層の組は、
(a) 流量信号を監視して、患者回路が患者の気道に接続されていないことを表す大量漏洩を圧力発生装置が示すか否かを決定し、更に、大量漏洩の検出に応答して、圧力発生装置により吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を減少させて、圧力発生装置を低圧力に保持する流量限定制御層と、
(b) 鼾に対する流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号の両方を監視し、鼾の検出に応答して、圧力発生装置により吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を増加させる鼾制御層と、
(c) 流量信号を監視して、大量漏洩より小さいが圧力支援装置の信頼不能な動作となるのに十分大きい漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に予め決められた時間中の大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させる大量漏洩制御層と、
(d) 流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方を患者が体験しているか否かを決定し、更に無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる無呼吸/呼吸低下制御層と、
(e) 流量信号を監視して、不安定な呼吸を患者が体験しているか否かを決定し、更に不安定な呼吸の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる可変呼吸制御層と、
(f) 患者に供給される圧力を最適化する先行圧力探索に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を制御して呼吸障害を治療する自動滴定制御層とを備える請求項21に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項24】
(1) 流量限定制御層は、鼾制御層、大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有し、
(2) 鼾制御層は、大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層より低い優先順位を有し、
(3) 大量漏洩制御層は、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層及び鼾制御層より低い優先順位を有し、
(4) 無呼吸/呼吸低下制御層は、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層、鼾制御層及び大量漏洩制御層より低い優先順位を有し、
(5) 可変呼吸制御層は、自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層、鼾制御層、大量漏洩制御層及び無呼吸/呼吸低下制御層より低い優先順位を有する請求項23に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項25】
圧力支援装置の動作を制御する手動入力装置を備え、
優先順位化された複数の制御層の組は、手動入力装置に基づき始動される少なくとも1つの第1の制御層と、圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方に基づき始動される少なくとも1つの第2の制御層とを備え、
少なくとも1つの第1の制御層は、少なくとも1つの第2の制御層より高い優先順位を有する請求項21に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項26】
第1の制御層は、手動入力としての圧力傾斜始動信号の受信に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により、比較的低いレベルから目標レベルに徐々に増加させる圧力傾斜制御層である請求項25に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項27】
第2の制御層は、下記複数の制御層:
(a) 流量信号を監視して、患者回路が患者の気道に接続されていないことを表示する大量漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させて、圧力発生装置をより低い圧力に保持する流量制限制御層、
(b) 鼾に対する流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、鼾の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により増加させる鼾制御層、
(c) 流量信号を監視して、大量漏洩より小さいが圧力支援装置の信頼不能な動作となるのに十分大きい漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に予め決められた時間中の大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させる大量漏洩制御層、
(d) 流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方を患者が体験しているか否かを決定し、更に無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる無呼吸/呼吸低下制御層、
(e) 流量信号を監視して、不安定な呼吸を患者が体験しているか否かを決定し、更に不安定な呼吸の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる可変呼吸制御層、及び
(f) 患者に供給される圧力を最適化する先行圧力探索に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を制御して呼吸障害を治療する自動滴定制御層の少なくとも1つを備える請求項26に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項28】
吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する過程と、
呼吸用気体流の圧力、流量又は圧力と流量の両方を監視して、圧力を示す圧力信号、流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を各々出力する過程と、
圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方に基づき、優先順位化された複数の制御層の組から1つの制御層を選択する過程と、
選択された圧力制御層に特有の圧力制御技術により吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を制御する過程とを含むことを特徴とする患者への圧力支援方法。
【請求項29】
優先順位化された制御層の組は、
(a) 流量信号を監視して、患者回路が患者の気道に接続されていないことを表示する大量漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させて、圧力発生装置をより低い圧力に保持する流量制限制御層と、
(b) 鼾に関する流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号の両方を監視して、鼾の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により増加させる鼾制御層と、
(c) 流量信号を監視して、大量漏洩より小さいが圧力支援装置の信頼不能な動作となるのに十分大きい漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に予め決められた時間中の大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させる大量漏洩制御層と、
(d) 流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方を患者が体験しているか否かを決定し、更に無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる無呼吸/呼吸低下制御層と、
(e) 流量信号を監視して、不安定な呼吸を患者が体験しているか否かを決定し、更に不安定な呼吸の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる可変呼吸制御層と、
(f) 患者に供給される圧力を最適化する先行圧力探索に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を制御して呼吸障害を治療する自動滴定制御層とを備える請求項28に記載の患者への圧力支援法。
【請求項30】
1つの制御層を選択する過程は、
(1) 鼾制御層、大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先して、流量限定制御層を選択する過程と、
(2) 大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層より優先せずに、鼾制御層を選択する過程と、
(3) 無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層及び鼾制御層より優先せずに、大量漏洩制御層を選択する過程と、
(4) 可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層、鼾制御層及び大量漏洩制御層より優先せずに、無呼吸/呼吸低下制御層を選択する過程と、
(5) 自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層、鼾制御層、大量漏洩制御層及び無呼吸/呼吸低下制御層より優先せずに可変呼吸制御層を選択する過程とを含む請求項29に記載の患者への圧力支援法。
【請求項31】
手動入力情報を受信して圧力支援を実行する圧力支援装置の動作を制御する過程を更に含み、
優先順位化された複数の制御層の組は、手動入力装置に基づき始動される少なくとも1つの第1の制御層と、圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方に基づき始動される少なくとも1つの第2の制御層とを備え、
選択する過程は、少なくとも1つの第2の制御層より優先して少なくとも1つの第1の制御層を選択する過程を含む請求項30に記載の患者への圧力支援法。
【請求項1】
(a) 吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する圧力発生装置(32)と、
(b) 圧力発生装置に連結される第1の端部と患者の気道に連結される第2の端部とを有する患者回路(36)と、
(c) 患者回路又は圧力発生装置に接続され、患者の気道の圧力、前記患者の気道内の気体流量又はそれらの両方を示す媒介変数を測定して、圧力を示す圧力信号、気体流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を各々出力する監視装置(44)と、
(d) 監視装置と圧力発生装置とに接続され、監視装置の出力に基づき、圧力発生装置を制御する制御装置(50)とを備え、
制御装置は、プログラミング制御され、少なくとも1つの下記の状態:
(1)鼾、(2)無呼吸、(3)呼吸低下及び(4)圧力支援装置内の大量漏洩
を監視し、大量漏洩は、如何なる意図的な装置漏洩よりも十分多い装置漏洩であり、
制御装置は、前記状態(1)、(2)、(3)又は(4)の何れか1つの発生に基づき、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整することを特徴とするバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項2】
制御装置は、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整して、患者への最適な吸気気道陽圧を決定する自動滴定を行う請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項3】
制御装置は、患者が鼾を発生している、無呼吸のみを体験している又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせを体験している決定に応答して、吸気気道陽圧を変更せずに圧力発生装置により呼気気道陽圧を増加させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項4】
制御装置は、大量漏洩の検出に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに圧力発生装置により吸気気道陽圧を低下させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項5】
制御装置は、患者が鼾を発生している又は呼吸低下のみを体験している決定に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに圧力発生装置により吸気気道陽圧を増加させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項6】
制御装置は、
(a) 吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の一方を主圧力制御変数として制御し、
(b) 圧力支援レベルの最大値(PSmax)、圧力支援レベルの最小値(PSmin)又は最大値及び最小値それらの両方と現在の圧力支援レベル(PS)を比較し、
(c) 現在の圧力支援レベルを最大値(PSmax)を超えず又は最小値(PSmin)未満に低下させずに圧力発生装置により吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の他方を調整する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項7】
制御装置は、患者の呼吸周期の吸気段階間と呼気段階間に、実質的に一定レベルの吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を圧力発生装置により各々供給させる請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項8】
制御装置は、
(a) 圧力発生装置により、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減し、
(b) 圧力発生装置により、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を低下し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減し、又は
(c) 圧力発生装置により、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減すると共に、圧力発生装置により、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を低下し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項9】
制御装置は、患者の監視状態、圧力支援装置の監視状態、圧力支援装置への入力情報又はこれらの何れかの組み合わせに基づき、呼気気道陽圧の調整、吸気気道陽圧の調整又は吸気気道陽圧の調整と呼気気道陽圧の調整との組み合わせの何れかを選択する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項10】
圧力傾斜周期の作動を選択する入力装置(52)を更に備え、
制御装置は、(a)圧力傾斜の作動に応答して吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを低下し、(b)その後、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを上昇させ、
制御装置は、圧力傾斜周期の圧力増加部の間に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する請求項1に記載のバイレベル自動滴定圧力支援装置。
【請求項11】
(a) 吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)の気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)の気体流を発生する過程と、
(b) 患者回路の第1の端部を圧力発生装置に連結し、患者回路の第2の端部を患者の気道に連結する過程と、
(c) 気体流の流量又は圧力に基づき、(1)鼾、(2)無呼吸、(3)呼吸低下及び(4)如何なる意図的な装置漏洩よりも実質的に多い漏洩である圧力支援装置内の大量漏洩の少なくとも1つの状態を監視する過程と、
(d) 前記(1)、(2)、(3)又は(4)の何れか1つの状態の発生に基づき、吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を独立して調整する過程とを含むことを特徴とする患者へのバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項12】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整して、患者への最適な吸気気道陽圧を決定する自動滴定過程を更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項13】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する過程は、患者が鼾を発生している、無呼吸のみを体験している又は無呼吸と呼吸低下との組み合わせを体験している決定に応答して、吸気気道陽圧を変更せずに呼気気道陽圧を増加する過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項14】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する過程は、大量漏洩の検出に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに吸気気道陽圧を低下させる過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項15】
吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整する過程は、患者が鼾を発生している又は呼吸低下のみを体験している決定に応答して、呼気気道陽圧を変更せずに吸気気道陽圧を増加する過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項16】
(a) 吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の一方を主圧力制御変数として制御する過程と、
(b) 圧力支援レベルの最大値(PSmax)、圧力支援レベルの最小値(PSmin)又は最大値及び最小値の両方と現在の圧力支援レベル(PS)を比較する過程と、
(c) 現在の圧力支援レベルを最大値(PSmax)を超えず又は最小値(PSmin)未満に低下させずに圧力発生装置により吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧の他方を調整する過程とを更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項17】
患者の呼吸周期の吸気段階間と呼気段階間に、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を各々実質的に一定レベルに保持する請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項18】
(a) 呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する過程と、
(b) 吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を減少し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する過程と、
(c) 呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ呼気気道陽圧を減少し又は変更して、呼気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減すると共に、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の量だけ吸気気道陽圧を減少し又は変更して、吸気段階の少なくとも一部の期間に少なくとも一部の圧力を軽減する過程とを更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項19】
患者の監視状態、患者に気体流を供給する圧力支援装置の監視状態、圧力支援装置への入力情報又はこれらの何れかの組み合わせに基づき、呼気気道陽圧、吸気気道陽圧又は呼気気道陽圧と吸気気道陽圧との組み合わせの調整を選択する過程を更に含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項20】
(a) 圧力傾斜周期の作動に応答して、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを減少する過程と、
(b) その後、傾斜圧力周期の圧力増加間に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して調整可能に吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを増加する過程とを含む圧力傾斜周期を実行する過程を含む請求項11に記載のバイレベル自動滴定圧力支援治療法。
【請求項21】
吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する圧力発生装置(32)と、
圧力発生装置に接続される第1の端部及び患者の気道に接続される第2の端部を有する患者回路(36)と、
患者回路又は圧力発生装置に接続され、患者の気道の気体圧力、患者の気道内の気体流量又は気体圧力と気体流量の両方を示す媒介変数を測定して、気体圧力を示す圧力信号、気体流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を各々出力する監視装置(44)と、
監視装置と圧力発生装置とに連結され、監視装置の出力に基づき、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧とを独立して制御する制御装置(50)とを備え、
優先順位化された複数の制御層の組の単一の制御層により動作するように制御装置をプログラム制御し、
優先順位化された複数の制御層の組内の各制御層は、他の制御層と競合して圧力発生装置を制御し、
各制御層は、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を制御する特有の圧力制御過程を実行することを特徴とするバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項22】
優先順位化された制御層の組内に設けられる各制御層は、
圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を受信する検出モジュール(102)と、
検出モジュールの出力を監視して、制御層が圧力発生装置を制御を行うことを要求すべきか否かを決定する監視モジュール(104)と、
制御を授与された制御層に応答して、圧力発生装置の動作を制御する制御モジュール(100)とを備える請求項21に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項23】
優先順位化された制御層の組は、
(a) 流量信号を監視して、患者回路が患者の気道に接続されていないことを表す大量漏洩を圧力発生装置が示すか否かを決定し、更に、大量漏洩の検出に応答して、圧力発生装置により吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を減少させて、圧力発生装置を低圧力に保持する流量限定制御層と、
(b) 鼾に対する流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号の両方を監視し、鼾の検出に応答して、圧力発生装置により吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を増加させる鼾制御層と、
(c) 流量信号を監視して、大量漏洩より小さいが圧力支援装置の信頼不能な動作となるのに十分大きい漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に予め決められた時間中の大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させる大量漏洩制御層と、
(d) 流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方を患者が体験しているか否かを決定し、更に無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる無呼吸/呼吸低下制御層と、
(e) 流量信号を監視して、不安定な呼吸を患者が体験しているか否かを決定し、更に不安定な呼吸の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる可変呼吸制御層と、
(f) 患者に供給される圧力を最適化する先行圧力探索に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を制御して呼吸障害を治療する自動滴定制御層とを備える請求項21に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項24】
(1) 流量限定制御層は、鼾制御層、大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有し、
(2) 鼾制御層は、大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層より低い優先順位を有し、
(3) 大量漏洩制御層は、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層及び鼾制御層より低い優先順位を有し、
(4) 無呼吸/呼吸低下制御層は、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層、鼾制御層及び大量漏洩制御層より低い優先順位を有し、
(5) 可変呼吸制御層は、自動滴定制御層より高い優先順位を有しかつ流量限定制御層、鼾制御層、大量漏洩制御層及び無呼吸/呼吸低下制御層より低い優先順位を有する請求項23に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項25】
圧力支援装置の動作を制御する手動入力装置を備え、
優先順位化された複数の制御層の組は、手動入力装置に基づき始動される少なくとも1つの第1の制御層と、圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方に基づき始動される少なくとも1つの第2の制御層とを備え、
少なくとも1つの第1の制御層は、少なくとも1つの第2の制御層より高い優先順位を有する請求項21に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項26】
第1の制御層は、手動入力としての圧力傾斜始動信号の受信に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により、比較的低いレベルから目標レベルに徐々に増加させる圧力傾斜制御層である請求項25に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項27】
第2の制御層は、下記複数の制御層:
(a) 流量信号を監視して、患者回路が患者の気道に接続されていないことを表示する大量漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させて、圧力発生装置をより低い圧力に保持する流量制限制御層、
(b) 鼾に対する流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、鼾の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により増加させる鼾制御層、
(c) 流量信号を監視して、大量漏洩より小さいが圧力支援装置の信頼不能な動作となるのに十分大きい漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に予め決められた時間中の大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させる大量漏洩制御層、
(d) 流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方を患者が体験しているか否かを決定し、更に無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる無呼吸/呼吸低下制御層、
(e) 流量信号を監視して、不安定な呼吸を患者が体験しているか否かを決定し、更に不安定な呼吸の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる可変呼吸制御層、及び
(f) 患者に供給される圧力を最適化する先行圧力探索に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を制御して呼吸障害を治療する自動滴定制御層の少なくとも1つを備える請求項26に記載のバイレベル自動滴定圧力支援システム。
【請求項28】
吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)で呼吸用気体流を発生し、呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)で呼吸用気体流を発生する過程と、
呼吸用気体流の圧力、流量又は圧力と流量の両方を監視して、圧力を示す圧力信号、流量を示す流量信号又は圧力信号と流量信号の両方を各々出力する過程と、
圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方に基づき、優先順位化された複数の制御層の組から1つの制御層を選択する過程と、
選択された圧力制御層に特有の圧力制御技術により吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を制御する過程とを含むことを特徴とする患者への圧力支援方法。
【請求項29】
優先順位化された制御層の組は、
(a) 流量信号を監視して、患者回路が患者の気道に接続されていないことを表示する大量漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させて、圧力発生装置をより低い圧力に保持する流量制限制御層と、
(b) 鼾に関する流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号の両方を監視して、鼾の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により増加させる鼾制御層と、
(c) 流量信号を監視して、大量漏洩より小さいが圧力支援装置の信頼不能な動作となるのに十分大きい漏洩を圧力発生装置が示しているか否かを決定し、更に予め決められた時間中の大量漏洩の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により減少させる大量漏洩制御層と、
(d) 流量信号、圧力信号又は流量信号と圧力信号との両方を監視して、無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方を患者が体験しているか否かを決定し、更に無呼吸、呼吸低下又は無呼吸と呼吸低下の両方の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる無呼吸/呼吸低下制御層と、
(e) 流量信号を監視して、不安定な呼吸を患者が体験しているか否かを決定し、更に不安定な呼吸の検出に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は吸気気道陽圧と呼気気道陽圧の両方を圧力発生装置により調節させる可変呼吸制御層と、
(f) 患者に供給される圧力を最適化する先行圧力探索に応答して、吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又はそれらの両方を制御して呼吸障害を治療する自動滴定制御層とを備える請求項28に記載の患者への圧力支援法。
【請求項30】
1つの制御層を選択する過程は、
(1) 鼾制御層、大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先して、流量限定制御層を選択する過程と、
(2) 大量漏洩制御層、無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層より優先せずに、鼾制御層を選択する過程と、
(3) 無呼吸/呼吸低下制御層、可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層及び鼾制御層より優先せずに、大量漏洩制御層を選択する過程と、
(4) 可変呼吸制御層及び自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層、鼾制御層及び大量漏洩制御層より優先せずに、無呼吸/呼吸低下制御層を選択する過程と、
(5) 自動滴定制御層より優先してかつ流量限定制御層、鼾制御層、大量漏洩制御層及び無呼吸/呼吸低下制御層より優先せずに可変呼吸制御層を選択する過程とを含む請求項29に記載の患者への圧力支援法。
【請求項31】
手動入力情報を受信して圧力支援を実行する圧力支援装置の動作を制御する過程を更に含み、
優先順位化された複数の制御層の組は、手動入力装置に基づき始動される少なくとも1つの第1の制御層と、圧力信号、流量信号又は圧力信号と流量信号の両方に基づき始動される少なくとも1つの第2の制御層とを備え、
選択する過程は、少なくとも1つの第2の制御層より優先して少なくとも1つの第1の制御層を選択する過程を含む請求項30に記載の患者への圧力支援法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2009−506833(P2009−506833A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529275(P2008−529275)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/034026
【国際公開番号】WO2007/027888
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/034026
【国際公開番号】WO2007/027888
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)
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