説明

自動滴定装置及びそのpH校正方法

【課題】水洗浄の回数が少なくても、その後に行う試料液の滴定時に誤差が発生しにくい自動滴定装置、及びそのpH校正方法を提供する。
【解決手段】滴定容器に酸性標準液を導入して該酸性標準液のpHとpH電極の電位を記憶してから排液する記憶ステップB1と、記憶ステップB1後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第1洗浄ステップB2と、第1洗浄ステップB2後の滴定容器に洗浄水を導入し、該洗浄水を滴定液で中和した後排液する中和ステップB3と、中和ステップB3後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第2洗浄ステップB4を有する酸性側校正工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の酸度、塩分測定、メッキ液の濃度管理などに利用可能な自動滴定装置、及びそのpH校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料液に滴定液を少量ずつ滴加し、試料液中の測定対象物質と反応させる滴定は、化学成分の濃度を測定するために有効で、汎用性の高い分析方法であり、食品の酸度、塩分測定、メッキ液の濃度管理など様々の産業分野で利用されている(例えば特許文献1)。
特に、試料液に対して酸性又は塩基性の滴定液を滴加する中和滴定方式の自動滴定装置は、最も広汎に実用化されている。
中和滴定方式では、滴定中のpHをpH電極により検出し、これを滴定指標値として、終点を自動的に判別することが行われている。pH電極は、定期的な標準液校正が必要なため、自動滴定装置においても、pH標準液を用いた校正作業が行われている。校正作業では、滴定を行う滴定容器内にpH標準液を導入する必要がある。そのため、校正作業の最後には、pH標準液を滴定容器から排液し、内部を水洗浄することが行われている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平3−137562号公報
【特許文献2】特開平6−265510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、水洗浄を行っても、僅かでもpH標準液が滴定容器内に残存していると、その後に行う試料液の滴定時に誤差が発生してしまう。特に、pH標準液としては、通常緩衝作用を持つものが使用されるため、残存による影響が大きかった。
そのため、校正作業の最後には、水洗浄を何度も繰り返し実施する必要があり、洗浄に用いる水の消費量が多く、洗浄に要する時間も長くなっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水洗浄の回数が少なくても、その後に行う試料液の滴定時に誤差が発生しにくい自動滴定装置、及びそのpH校正方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。
[1]滴定容器内に挿入されたpH電極でpHを検知しながら、塩基性の滴定液で試料液を滴定する自動滴定装置のpH校正方法であって、酸性標準液により校正する酸性側校正工程を備え、酸性側校正工程は、滴定容器に酸性標準液を導入して該酸性標準液のpHとpH電極の電位を記憶してから排液する記憶ステップと、記憶ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第1洗浄ステップと、第1洗浄ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入し、該洗浄水を滴定液で中和した後排液する中和ステップと、中和ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第2洗浄ステップを有することを特徴とする自動滴定装置のpH校正方法。
[2]酸性側校正工程が、全pH校正工程における最終の工程である[1]に記載の自動滴定装置のpH校正方法。
【0005】
[3]滴定容器内に挿入されたpH電極でpHを検知しながら、酸性の滴定液で試料液を滴定する自動滴定装置のpH校正方法であって、塩基性標準液により校正する塩基性側校正工程を備え、塩基性側校正工程は、滴定容器に塩基性標準液を導入して該塩基性標準液のpHとpH電極の電位を記憶してから排液する記憶ステップと、記憶ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第1洗浄ステップと、第1洗浄ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入し、該洗浄水を滴定液で中和した後排液する中和ステップと、中和ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第2洗浄ステップを有することを特徴とする自動滴定装置のpH校正方法。
[4]塩基性側校正工程が、全pH校正工程における最終の工程である[3]に記載の自動滴定装置のpH校正方法。
【0006】
[5]塩基性の滴定液による試料液の滴定が行われる滴定容器と、滴定容器内に挿入されたpH電極と、pH電極が検出する電位とpHとの関係を記憶する記憶部と、滴定容器に酸性標準液を導入する酸性標準液導入機構と、滴定容器に塩基性の滴定液を供給するビュレットと、滴定容器に洗浄水を導入する洗浄水導入機構と、滴定容器から排液をする排液機構と、全体を制御する演算制御装置を備え、演算制御装置により、以下のステップ(1)〜(4)を順に有する酸性側校正工程を行うように制御されることを特徴とする自動滴定装置。
(1)酸性標準液導入機構により滴定容器に酸性標準液を導入し、該酸性標準液のpHとpH電極の電位を記憶部に記憶させてから排液機構により排液する記憶ステップ。
(2)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第1洗浄ステップ。
(3)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入し、ビュレットで塩基性の滴定液を添加することによって該洗浄水を中和した後に排液機構により排液する中和ステップ。
(4)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第2洗浄ステップ。
【0007】
[6]酸性の滴定液による試料液の滴定が行われる滴定容器と、滴定容器内に挿入されたpH電極と、pH電極が検出する電位とpHとの関係を記憶する記憶部と、滴定容器に塩基性標準液を導入する塩基性標準液導入機構と、滴定容器に酸性の滴定液を供給するビュレットと、滴定容器に洗浄水を導入する洗浄水導入機構と、滴定容器から排液をする排液機構と、全体を制御する演算制御装置を備え、演算制御装置により、以下のステップ(1)〜(4)を順に有する塩基性側校正工程を行うように制御されることを特徴とする自動滴定装置。
(1)塩基性標準液導入機構により滴定容器に塩基性標準液を導入し、該塩基性標準液のpHとpH電極の電位を記憶部に記憶させてから排液機構により排液する記憶ステップ。
(2)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第1洗浄ステップ。
(3)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入し、ビュレットで酸性の滴定液を添加することによって該洗浄水を中和した後に排液機構により排液する中和ステップ。
(4)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第2洗浄ステップ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、校正作業における水洗浄の回数が少なくても、その後に行う試料液の滴定時に誤差が発生しにくい。そのため、洗浄水の消費が少なくなると共に、水洗浄に要する時間を短縮しやすい。
また、本発明は、新たな設備や試薬等を用意する必要もないため、コスト上昇を招くことなく実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1実施形態>
[装置構成]
本発明の第1実施形態に係る自動滴定装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の自動滴定装置は、試料液Sを含む測定液Fが収容され、滴定液による滴定が行われる滴定容器1と、滴定容器1に試料液S中の測定対象物質と反応する滴定液Rを供給するビュレット2と、滴定液Rの供給量(以下「滴定量」という。)に対応して得られるpHを検出するpH電極3と、pH電極3から得られるpH値が入力される演算制御装置4と、記憶部5と、滴定容器1に試料液Sを導入するサンプリング機構と、滴定容器1にゼロ標準液BU1を導入するゼロ標準液導入機構と、滴定容器1にスパン標準液BU2を導入する酸性標準液導入機構と、滴定容器1に洗浄水Wを導入する洗浄水導入機構と、滴定容器から排液をする排液機構と、測定液F等を攪拌するための攪拌装置70から、基本的に構成されている。
【0010】
ビュレット2は、滴定容器1に挿入されたノズル2aと、滴定液Rを収容する滴定液タンクTRに挿入された配管2bとを備えている。ノズル2aは測定液Fの液面以下となるように滴定容器1に挿入されている。滴定液Rは塩基性であり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が使用できる。
pH電極3は、検知部が測定液F内に挿入されるように配置されている。
演算制御装置4は、自動滴定装置全体の動作を制御するようになっている。また、pH電極3から得られるpHに基づき終点を求め、該終点における滴定量から、試料液S中の測定対象物質の濃度を演算するようになっている。
記憶部5は、pH電極3が検出する電位とpHとの関係を記憶するようになっている。
【0011】
サンプリング機構は、試料液計量ユニット10と、試料液計量ユニット10から希釈水Dと共に試料液Sを滴定容器1に供給するための配管L1と、試料液計量ユニット10に試料液入口20から試料液Sを導く配管L2と、配管L2に設けられた試料液供給槽21と、試料液計量ユニット10に希釈水入口30から希釈水Dを導く配管L3と、配管L3に上流側から順次設けられた希釈水計量管31及び送液ポンプP1と、試料液計量ユニット10から余剰の試料水Sを排液口40に導く配管L4と、配管L4に設けられた送液ポンプP2とから構成されている。
試料液計量ユニット10は、三方弁11、三方弁12、及びこれらの弁の共通ポート(白と黒の三角で示したポート)間に設けられた試料液計量管13とで構成されている。
三方弁11の常閉ポート(黒の三角で示したポート)には配管L1が接続され、三方弁11の常開ポート(白の三角で示したポート)には配管L2が接続され、三方弁12の常閉ポート(黒の三角で示したポート)には配管L3が接続され、三方弁12の常開ポート(白の三角で示したポート)には配管L4が接続されている。
試料液Sは、塩基性の滴定液Rと反応する酸性成分を、含む又は含む可能性があるものである。
【0012】
ゼロ標準液導入機構は、ゼロ標準液BU1が収容される標準液タンクT1と、標準液タンクT1から滴定容器1に導かれる配管L5と、配管L5に設けられた送液ポンプP3とから構成されている。ゼロ標準液BU1としては、pH7付近のpHを示す緩衝液、例えばリン酸緩衝液が用いられる。
酸性標準液導入機構は、スパン標準液BU2が収容される標準液タンクT2と、標準液タンクT2から滴定容器1に導かれる配管L6と、配管L6に設けられた送液ポンプP4とから構成されている。スパン標準液BU2としては、酸性の緩衝液、例えばpH4付近のpHを示すフタル酸塩pH標準液が用いられる。
洗浄水導入機構は、洗浄水入口50から洗浄水Wを導く配管L7と、配管L7に設けられた二方弁51とから構成されている。洗浄水Wとしては、純水、水道水等が用いられる。
配管L1、L5、L6、L7は、何れも測定液Fに触れないよう、測定液Fの液面より上の空間に先端が配置されるように、滴定容器1に挿入されている。
【0013】
排液機構は、滴定容器1から排液口60に導かれる配管L8と、配管L8に上流側から順次設けられた排液トラップ61およびエアポンプP5とから構成されている。配管L8は、測定液Fの液面下、最も深い位置まで挿入されている。
攪拌装置70は、滴定容器1内に測定液F、標準液、洗浄液等が充填されている間、常時駆動するようになっている。
【0014】
[pH校正工程]
本実施形態の自動滴定装置は、記憶部5に記憶させた所定のタイミングで、又は演算制御装置4に、キー入力等により校正命令を入力したときに、pH校正工程を行う。
本実施形態の自動滴定装置によって行われるpH校正工程は、図2に示すように、ゼロ校正工程Aと、ゼロ校正工程Aに続いて行われる酸性側校正工程Bとを有する。
【0015】
ゼロ校正工程Aは、滴定容器1にゼロ標準液BU1を導入してゼロ標準液BU1のpHとpH電極3の電位を記憶部5に記憶させてから排液する記憶ステップA1と、記憶ステップA1後の滴定容器1に洗浄水Wを導入して排液する洗浄ステップA2とを有している。
記憶ステップA1では、滴定容器1に送液ポンプP3を動作させて配管L5よりゼロ標準液BU1を供給し、供給されたゼロ標準液BU1についてpH電極3から得られる検出電位を、ゼロ標準液BU1のpHと関連づけて記憶部5に記憶させる。そして、その後、エアポンプP5を動作させて配管L8よりゼロ標準液BU1を排液する。
洗浄ステップでは、二方弁51を開放して配管L7より洗浄水Wを供給する。そして、攪拌装置70により供給された洗浄水Wを攪拌して滴定容器1内を洗浄し、その後、エアポンプP5を動作させて配管L8より洗浄水Wを排液する。洗浄ステップは、必要に応じて複数回繰り返してもよい。
【0016】
酸性側校正工程Bは、滴定容器1にスパン標準液BU2を導入してスパン標準液BU2のpHとpH電極3の電位を記憶部5に記憶させてから排液する記憶ステップB1と、記憶ステップB1後の滴定容器1に洗浄水Wを導入して排液する第1洗浄ステップB2と、第1洗浄ステップB2後の滴定容器1に洗浄水Wを導入し、この洗浄水Wを滴定液Rで中和した後排液する中和ステップB3と、中和ステップB3後の滴定容器1に洗浄水Wを導入して排液する第2洗浄ステップB4を有している。
【0017】
記憶ステップB1では、滴定容器1に送液ポンプP4を動作させて配管L6よりスパン標準液BU2を供給し、供給されたスパン標準液BU2についてpH電極3から得られる検出電位を、スパン標準液BU2のpHと関連づけて記憶部5に記憶させる。そして、その後、エアポンプP5を動作させて配管L8よりスパン標準液BU2を排液する。
第1洗浄ステップB2では、二方弁51を開放して配管L7より洗浄水Wを供給する。そして、攪拌装置70により供給された洗浄水Wを攪拌して滴定容器1内を洗浄し、その後、エアポンプP5を動作させて配管L8より洗浄水Wを排液する。第1洗浄ステップB2は、必要に応じて複数回繰り返してもよい。
【0018】
中和ステップB3では、二方弁51を開放して配管L7より洗浄水Wを滴定容器1に供給する。そして、攪拌装置70で攪拌しながら、ビュレット2を動作させて滴定液Rを滴定容器1に供給し、洗浄水Wを中和する。
中和に要する滴定液Rの量はごく僅かなため、ビュレット2の動作は、間欠的に微少量ずつ注入するように制御する。中和は、pH電極3で検出した値がpH7付近になるまで行う。中和が終了したら、エアポンプP5を動作させて配管L8より中和済みの洗浄水Wを排液する。
【0019】
第2洗浄ステップB4では、二方弁51を開放して配管L7より洗浄水Wを供給する。そして、攪拌装置70により供給された洗浄水Wを攪拌して滴定容器1内を洗浄し、その後、エアポンプP5を動作させて配管L8より洗浄水Wを排液する。第1洗浄ステップB2は、必要に応じて複数回繰り返してもよい。
pH校正工程によって、演算制御装置4は、pH電極3から得られる検出電位をpHに換算して認識できるようになる。
【0020】
[試料液測定工程]
本実施形態の自動滴定装置は、記憶部5に記憶させた所定のタイミングで、又は演算制御装置4に、キー入力等により測定命令を入力したときに、試料液Sの測定を行う。試料液測定工程は、pH校正工程の後に続けて行うことができる。
本実施形態の自動滴定装置によって行われる試料液測定工程では、サンプリングステップC1、滴定ステップC2、濃度演算ステップC3、出力ステップC4、洗浄ステップC5が順次行われる。
【0021】
サンプリングステップC1では、まず試料液計量ユニット10における三方弁11の常開ポート及び三方弁12の常開ポートを開いた状態で送液ポンプP2を動作させ、試料液Sを配管L2から試料液計量管13を経由して配管L4へと流す。
次いで、三方弁11の常閉ポート及び三方弁12の常閉ポートを開いた状態に切り替えて送液ポンプP1を動作させ、予め希釈水計量管31で計量した希釈水Dを配管L3から試料液計量管13を経由して配管L1へと流す。これにより、試料液計量管13内に充填されていた一定量の試料液Sが、一定量の希釈水Dと共に滴定容器1に供給される。
【0022】
サンプリングステップC1の後滴定ステップC2を行う。滴定ステップC2では、ビュレット2を動作させて滴定液Rを滴定容器1に供給しつつ、滴定量に応じたpHをpH電極3により検出する。
ビュレット2の動作は、演算制御装置4により適宜制御する。例えば、滴定初期は連続して滴定液Rを注入し、終点近傍のpHに到達した後は、間欠的に微少量ずつ注入するように制御する。
そして、演算制御装置4により、検出したpHから終点を求める。終点の求め方に限定はなく、公知の方法が採用できる。例えばpHの微分値が極大値を得られたときを終点とする方法、pHが一定の値に達したときを終点とする方法が採用できる。
終点が求められたら滴定を終了する。なお、滴定量が通常想定される量を著しく超過しても終点が求められない場合にも滴定を終了する。
【0023】
滴定ステップC2の後、濃度演算ステップC3として濃度演算を行う。周知のように、試料液S中の測定対象成分の濃度は、滴定容器1に供給された試料液の体積、滴定液中の測定対象成分と反応する成分の濃度、及び終点における滴定量から計算できる。なお、試料液の体積(本実施形態では試料液計量ユニット10の試料液計量管13内に充填される量)は、予め濃度既知の標準資料を滴定することにより正確に求めることができる。
なお、滴定ステップC2において、終点が求められなかった場合、濃度演算ステップC3は省略する。
【0024】
濃度演算ステップC3の後出力ステップC4を行う。出力ステップC4では、濃度演算ステップC3で求めた試料液S中の測定対象成分の濃度、滴定ステップC2において、終点が求められなかった場合は、その旨を出力する。また、必要に応じてその他の情報、例えば、滴定量、温度、時間等を出力する。
なお、出力方式に限定はなく、例えば、コントロールセンターに配置したコンピュータ等への伝送主力、プリンタによる印字出力、表示器による表示出力等、が挙げられる。また、これらの出力方式を併用してもよい。
【0025】
出力ステップC4の後洗浄ステップC5を行う。洗浄ステップC5では、二方弁51を開放して配管L7より洗浄水Wを供給する。そして、攪拌装置70により供給された洗浄水Wを攪拌して滴定容器1内を洗浄し、その後、エアポンプP5を動作させて配管L8より洗浄水Wを排液する。洗浄ステップは、必要に応じて複数回繰り返してもよい。
【0026】
本実施形態では、中和ステップB3により、洗浄水W中に残存するスパン標準液BU2を中和するので、酸性側校正工程Bにおける第1洗浄ステップB2及び第2洗浄ステップB4を、少ない回数、例えば1回ずつとしても、標準液BU2を滴定容器1から的確に除去できる。そのため、pH校正工程における洗浄水Wの使用量を抑制できる。
また、中和ステップB3は、試料液測定工程で使用するのと同じビュレット2を動作させて試料液測定工程で使用するのと同じ滴定液Rを少量添加すれば良いので、新たな装置や試薬を用意する必要がない、そのため、本発明は低コストで実施できる。
また、中和ステップB3を有する酸性側校正工程BがpH校正工程の最終の工程であるため、pH校正工程の後、最初に行われる試料液測定工程において、酸性のスパン標準液BU2の影響で測定誤差が生じることを回避できる。
【0027】
<第2実施形態>
[装置構成]
本発明の第2実施形態に係る自動滴定装置について説明する。第2実施形態に係る自動滴定装置は、酸性標準液導入機構に代えて塩基性標準液導入機構を備える点、試料Sと滴定液Rの性状が異なる他は、第1実施形態に係る自動滴定装置と同様のため、図1を用いて説明する。また、第1実施形態に係る自動滴定装置と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
すなわち、第2実施形態に係る自動滴定装置は、図1に示すように、滴定容器1とビュレット2とpH電極3と演算制御装置4と記憶部5とサンプリング機構と、ゼロ標準液導入機構と、滴定容器1にスパン標準液BU2を導入する塩基性標準液導入機構と、滴定容器1に洗浄水Wを導入する洗浄水導入機構と、滴定容器から排液をする排液機構と、測定液F等を攪拌するための攪拌装置70から、基本的に構成されている。
【0028】
ビュレット2により滴定容器1に供給される滴定液Rは酸性であり、例えば、塩酸、硫酸等の水溶液が使用できる。
試料液Sは、酸性の滴定液Rと反応する塩基性成分を、含む又は含む可能性があるものである。
塩基性準液導入機構は、スパン標準液BU2が収容される標準液タンクT2と、標準液タンクT2から滴定容器1に導かれる配管L6と、配管L6に設けられた送液ポンプP4とから構成されている。スパン標準液BU2としては、塩基性の緩衝液、例えばpH9付近のpHを示すホウ酸塩pH標準液が用いられる。
【0029】
[pH校正工程]
本実施形態の自動滴定装置は、記憶部5に記憶させた所定のタイミングで、又は演算制御装置4に、キー入力等により校正命令を入力したときに、pH校正工程を行う。
本実施形態の自動滴定装置によって行われるpH校正工程は、図3に示すように、ゼロ校正工程Aと、ゼロ校正工程Aに続いて行われる塩基性側校正工程Dとを有する。
ゼロ校正工程Aは、第1実施形態のゼロ校正工程Aと同様である。
【0030】
塩基性側校正工程Dは、記憶ステップD1と、第1洗浄ステップD2と、中和ステップD3と、第2洗浄ステップD4を有している。
記憶ステップD1は、スパン標準液BU2として塩基性の緩衝液を用いる他は、第1実施形態の記憶ステップB1と同様である。第1洗浄ステップD2は、第1実施形態の第1洗浄ステップB2と同様である。
中和ステップD3は、滴定液Rとして酸性の滴定液を用いる他は第1実施形態の中和ステップB3と同様である。
第2洗浄ステップD4は、第1実施形態の第2洗浄ステップB4と同様である。
【0031】
[試料液測定工程]
本実施形態の自動滴定装置は、記憶部5に記憶させた所定のタイミングで、又は演算制御装置4に、キー入力等により測定命令を入力したときに、試料液Sの測定を行う。試料液測定工程は、pH校正工程の後に続けて行うことができる。試料液測定工程は、試料液Sの性状が異なる他は第1実施形態と同様である。
【0032】
本実施形態では、中和ステップD3により、洗浄水W中に残存するスパン標準液BU2を中和するので、塩基性側校正工程Dにおける第1洗浄ステップD2及び第2洗浄ステップD4を、少ない回数、例えば1回ずつとしても、標準液BU2を滴定容器1から的確に除去できる。そのため、pH校正工程における洗浄水Wの使用量を抑制できる。
また、中和ステップD3は、試料液測定工程で使用するのと同じビュレット2を動作させて試料液測定工程で使用するのと同じ滴定液Rを少量添加すれば良いので、新たな装置や試薬を用意する必要がない、そのため、本発明は低コストで実施できる。
また、中和ステップD3を有する塩基性側校正工程DがpH校正工程の最終の工程であるため、pH校正工程の後、最初に行われる試料液測定工程において、塩基性のスパン標準液BU2の影響で測定誤差が生じることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る自動滴定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る自動滴定装置の動作手順のフロー図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る自動滴定装置の動作手順のフロー図である。
【符号の説明】
【0034】
1…滴定容器、2…ビュレット、3…pH電極、4…演算制御装置、5…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滴定容器内に挿入されたpH電極でpHを検知しながら、塩基性の滴定液で試料液を滴定する自動滴定装置のpH校正方法であって、
酸性標準液により校正する酸性側校正工程を備え、
酸性側校正工程は、滴定容器に酸性標準液を導入して該酸性標準液のpHとpH電極の電位を記憶してから排液する記憶ステップと、記憶ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第1洗浄ステップと、第1洗浄ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入し、該洗浄水を滴定液で中和した後排液する中和ステップと、中和ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第2洗浄ステップを有することを特徴とする自動滴定装置のpH校正方法。
【請求項2】
酸性側校正工程が、全pH校正工程における最終の工程である請求項1に記載の自動滴定装置のpH校正方法。
【請求項3】
滴定容器内に挿入されたpH電極でpHを検知しながら、酸性の滴定液で試料液を滴定する自動滴定装置のpH校正方法であって、
塩基性標準液により校正する塩基性側校正工程を備え、
塩基性側校正工程は、滴定容器に塩基性標準液を導入して該塩基性標準液のpHとpH電極の電位を記憶してから排液する記憶ステップと、記憶ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第1洗浄ステップと、第1洗浄ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入し、該洗浄水を滴定液で中和した後排液する中和ステップと、中和ステップ後の滴定容器に洗浄水を導入して排液する1回以上の第2洗浄ステップを有することを特徴とする自動滴定装置のpH校正方法。
【請求項4】
塩基性側校正工程が、全pH校正工程における最終の工程である請求項3に記載の自動滴定装置のpH校正方法。
【請求項5】
塩基性の滴定液による試料液の滴定が行われる滴定容器と、
滴定容器内に挿入されたpH電極と、
pH電極が検出する電位とpHとの関係を記憶する記憶部と、
滴定容器に酸性標準液を導入する酸性標準液導入機構と、
滴定容器に塩基性の滴定液を供給するビュレットと、
滴定容器に洗浄水を導入する洗浄水導入機構と、
滴定容器から排液をする排液機構と、
全体を制御する演算制御装置を備え、
演算制御装置により、以下のステップ(1)〜(4)を順に有する酸性側校正工程を行うように制御されることを特徴とする自動滴定装置。
(1)酸性標準液導入機構により滴定容器に酸性標準液を導入し、該酸性標準液のpHとpH電極の電位を記憶部に記憶させてから排液機構により排液する記憶ステップ。
(2)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第1洗浄ステップ。
(3)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入し、ビュレットで塩基性の滴定液を添加することによって該洗浄水を中和した後に排液機構により排液する中和ステップ。
(4)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第2洗浄ステップ。
【請求項6】
酸性の滴定液による試料液の滴定が行われる滴定容器と、
滴定容器内に挿入されたpH電極と、
pH電極が検出する電位とpHとの関係を記憶する記憶部と、
滴定容器に塩基性標準液を導入する塩基性標準液導入機構と、
滴定容器に酸性の滴定液を供給するビュレットと、
滴定容器に洗浄水を導入する洗浄水導入機構と、
滴定容器から排液をする排液機構と、
全体を制御する演算制御装置を備え、
演算制御装置により、以下のステップ(1)〜(4)を順に有する塩基性側校正工程を行うように制御されることを特徴とする自動滴定装置。
(1)塩基性標準液導入機構により滴定容器に塩基性標準液を導入し、該塩基性標準液のpHとpH電極の電位を記憶部に記憶させてから排液機構により排液する記憶ステップ。
(2)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第1洗浄ステップ。
(3)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入し、ビュレットで酸性の滴定液を添加することによって該洗浄水を中和した後に排液機構により排液する中和ステップ。
(4)洗浄水導入機構により滴定容器に洗浄水を導入した後に排液機構により排液する1回以上の第2洗浄ステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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