自動画像処理プロファイル選択を備えた生物成長プレートスキャナ
【課題】自動画像処理プロファイル選択を備えた生物成長プレートスキャナを提供する。
【解決手段】生物スキャナは異なるタイプの生物成長プレートを走査するために画像処理プロファイルの自動選択を提供する。スキャナはスキャナにより走査するプレートのタイプを自動的に識別した後、識別したプレートタイプに適合する画像処理プロファイルのうちの1つを選択する。例えば画像処理プロファイルは、異なるタイプの細菌コロニーを計数する際に異なる色、形状、サイズおよび近接基準を適用し得る。スキャナはプレートに担持された光学または磁気的読取可能マークなどの様々な機械可読標識を参照することによりプレートタイプを識別し得る。従ってプレートタイプ識別を可能にする特定の標識を担持する生物成長プレートも考えられる。プレートを走査して生物成長プレート上の異なるタイプの細菌コロニー、または特定の生物剤の量を読み取るまたは計数する。
【解決手段】生物スキャナは異なるタイプの生物成長プレートを走査するために画像処理プロファイルの自動選択を提供する。スキャナはスキャナにより走査するプレートのタイプを自動的に識別した後、識別したプレートタイプに適合する画像処理プロファイルのうちの1つを選択する。例えば画像処理プロファイルは、異なるタイプの細菌コロニーを計数する際に異なる色、形状、サイズおよび近接基準を適用し得る。スキャナはプレートに担持された光学または磁気的読取可能マークなどの様々な機械可読標識を参照することによりプレートタイプを識別し得る。従ってプレートタイプ識別を可能にする特定の標識を担持する生物成長プレートも考えられる。プレートを走査して生物成長プレート上の異なるタイプの細菌コロニー、または特定の生物剤の量を読み取るまたは計数する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品試料、実験用試料等内の細菌または他の生物剤を分析する生物成長培地の分析のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的安全性は近代社会における重大な関心事である。食品または他の材料内の生物汚染の試験は、食品の開発者および販売者にとって重要且つ時には義務要件になってきている。また生物試験を利用して医療患者から採取した血液試料などの実験用試料、実験目的に開発された実験用試料、および他のタイプの生物試料内の細菌または他の物質を識別する。様々な技術および装置を利用して生物試験を改善するとともに、生物試験プロセスを簡素化および標準化することができる。
【0003】
具体的には多様な生物成長培地が開発されてきた。一例として成長プレートの形状の生物成長培地がミネソタ州セントポール(St.Paul,Minnesota)のスリーエム・カンパニー(3M Company)(以下「3M」)により開発された。生物成長プレートは商品名ペトリフィルム(PETRIFILM)プレートで3Mにより販売されている。生物成長プレートを利用することにより、例えば好気性細菌、大腸菌(E.coli)、大腸菌型、腸内細菌科、酵母菌、糸状菌、黄色ブドウ球菌、リステリア、およびカンピロバクター等を始めとする、通常食品汚染に関連する細菌または他の生物剤(biological agent)の迅速な成長および検出または測定を容易にすることができる。ペトリフィルム(PETRIFILM)プレートまたは他の成長培地を利用することにより、食品試料の細菌試験を単純化することができる。
【0004】
生物成長培地を用いて細菌の存在を識別することができるため、補正措置を行う(食品試験の場合)かまたは適正な診断を行う(医療用途の場合)ことができる。他の用途においては生物成長培地を用いて例えば実験目的用の実験用試料内の細菌または生物剤を迅速に成長し得る。
【0005】
生物スキャナとは生物成長培地上の細菌コロニーまたは特定の生物剤の量を読み取るまたは計数するために用いる装置を指す。例えば食品試料または実験用試料を生物成長培地上に置いて、その後その培地を培養室内に挿入することができる。培養後、生物成長培地を生物スキャナ内に配置して細菌成長を自動検出および測定することができる。換言すれば生物スキャナは生物成長培地上の細菌または他の生物剤の検出および測定を自動化することにより、人為ミスを低減することによって生物試験プロセスを改善する。
【発明の概要】
【0006】
一般に本発明は、異なるタイプの生物成長プレートを走査および分析するために画像処理プロファイルの選択を自動化する生物スキャナに関する。このスキャナは被走査プレートのタイプを自動的に識別した後、識別されたプレートタイプに適合する画像処理プロファイルのうちの1つを選択する。
【0007】
スキャナはプレートに担持された光学的または磁気的に読取可能なマークなどの様々な機械可読標識を参照することによりプレートタイプを識別し得る。従って本発明は画像処理プロファイルの選択のためのプレートタイプ識別を可能にする特定の標識を担持する生物成長プレートにも関する。
【0008】
プレートを走査して生物成長プレート上の異なるタイプの細菌コロニー、または特定の生物剤の量を読み取るまたは計数し得る。動作中、例えば生物成長プレートをスキャナに提示するとスキャナはプレートタイプを識別する。その後スキャナは識別されたプレートタイプに関連する画像処理プロファイルに従って画像を処理する。
【0009】
画像処理プロファイルは、特定のプレートタイプの画像を取り込むための照明強度、継続時間および色などの特定の画像取込条件を指定し得る。また画像取込条件はカメラ利得、解像度、アパーチャ、および露光時間を含み得る。さらに画像処理プロファイルは、取込画像内の異なるタイプの細菌コロニーを検出または測定するために色、形状、サイズおよび近接基準などの特定の画像分析基準を指定し得る。このようにスキャナは生物成長プレートの画像を処理する際に異なる画像取込条件、異なる画像分析基準、またはその両方を適用し得る。
【0010】
動作中、生物スキャナはプレートタイプを識別すると、対応する画像処理プロファイルを選択し得る。生物スキャナは画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件を用いて生物成長プレートを照明するとともに、プレートの1つ以上の画像を取り込み得る。生物スキャナはその後、画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準を用いて取込画像の分析を行い得る。このように生物スキャナは異なるタイプの生物成長プレートの走査および分析を自動化する。
【0011】
一実施形態において本発明は、一組の画像処理プロファイルを記憶するメモリと、生物成長プレートに関連するプレートタイプに基づいて画像処理プロファイルのうちの1つを選択する画像処理装置と、を含む装置を提供する。
【0012】
他の実施形態において本発明は、生物成長プレートに関連するプレートタイプを検出するステップと、検出したプレートタイプに基づいて複数の画像処理プロファイルのうちの1つを選択するステップと、選択した画像処理プロファイルに従って生物成長プレートの画像を処理するステップと、を含む方法を提供する。
【0013】
更なる実施形態において本発明は、プロセッサに、生物成長プレートに対して検出されたプレートタイプに基づいて複数の画像処理プロファイルのうちの1つを選択させるとともに、画像処理装置を制御して選択された画像処理プロファイルに従って生物成長プレートの画像を処理させる命令を含むコンピュータ読取可能媒体を提供する。
【0014】
更なる実施形態において本発明は、生物剤の成長を支援するプレート表面と、生物成長プレートのタイプを識別する機械可読プレートタイプ標識と、を含む生物成長プレートを提供する。
【0015】
他の実施形態において本発明は、生物成長プレートのプレートタイプを識別する機械可読プレートタイプ標識を含む生物成長プレートと、生物成長プレートの画像を取り込むとともに、プレートタイプ標識に基づいて選択された複数の画像処理プロファイルのうちの1つに従って画像を処理する撮像装置と、を含むシステムを提供する。
【0016】
本発明は多数の利点を提供することができる。例えば自動画像処理プロファイル選択は、適当な画像処理プロファイルを選択するための便利で精度の高い技術を提供することができる。自動画像処理プロファイル選択は、細菌コロニー計数および他の分析手順の精度を向上させることにより品質保証を強化することができる。具体的には各プレートタイプに対して適当な画像取込条件および画像分析基準を自動的に選択して適用することができる。自動画像処理プロファイル選択により技術者がプレートタイプを目視で識別して手動で入力する必要性をなくすことができることによって、人間の介入に関連する場合もあるプレート識別エラーをなくすことができる。分析精度は特に食品試料を試験する際に重大な健康上の問題になり得る。さらに自動画像処理プロファイル選択は効率と利便性とを向上させるとともに、実験技術者の作業フローを改善させることができる。生物スキャナによる自動プレートタイプ識別を可能にする機械可読プレートタイプ標識を担持する生物成長プレートは以上の利点に貢献することができる。
【0017】
これらのおよび他の実施形態の更なる詳細は添付の図面と以下の説明とに記載されている。他の特徴と目的と利点とは明細書および図面からならびに請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】例示的生物スキャナの斜視図である。
【図2】例示的生物スキャナの他の斜視図である。
【図3】画像処理プロファイル選択のための標識パターンを担持する例示的成長プレートの平面図である。
【図4】画像処理プロファイル選択のための標識パターンを担持する例示的成長プレートの平面図である。
【図5A】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図5B】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図5C】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図5D】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図6】自動画像処理プロファイル選択用に構成された生物スキャナを図示するブロック図である。
【図7】自動画像処理プロファイル選択用に構成された他の生物スキャナを図示するブロック図である。
【図8】図6の生物スキャナをより詳細に図示するとともにプレート照明ハードウェアを示すブロック図である
【図9】プレートタイプ検出時に生物スキャナによりディスプレイ上に生成されるサンプル表示内容を図示する。
【図10】ユーザによる自動プレートタイプ検出の拒絶時に生物スキャナ10によりディスプレイ上に生成されるサンプル表示内容を図示する。
【図11】コロニー数の判定時に生物スキャナによりディスプレイ上に生成されるサンプル表示内容を図示する。
【図12】コロニー数の判定時に生物スキャナによりディスプレイ上に生成される、走査プレートの画像を含むサンプル表示内容を図示する。
【図13】生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。
【図14】プレートタイプ標識の検出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。
【図15】走査されたプレート画像からのプレートタイプ標識の抽出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。
【図16】ユーザが生物スキャナによる自動プレートタイプ識別を無効にできるようにするプロセスを図示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は生物成長プレート用生物スキャナに関する。生物成長プレートを生物スキャナに提示すると、生物スキャナはプレートの画像を生成するとともに画像の分析を行って生物成長を検出することができる。例えばスキャナは細菌コロニーの数など、画像に現れる生物剤の量を計数あるいは定量し得る。このように生物スキャナは生物成長プレートの分析を自動化することにより、このような分析を改善するとともに人為ミスの可能性を低減する。
【0020】
また本発明による生物スキャナは、異なるタイプの生物成長プレートを走査するとともにプレート画像を分析するために画像処理プロファイルの選択を自動化する。スキャナはスキャナにより走査されるプレートのタイプを自動的に識別した後、識別したプレートタイプに適した画像処理プロファイルの1つを選択する。画像処理プロファイルは異なるタイプの生物成長プレートに対する画像取込条件、画像分析基準またはその両方の組み合わせを指定し得る。例えば画像処理プロファイルは、画像取込用の特定のプレートタイプの照明強度、継続時間および照明用色を指定し得る。また画像取込条件はカメラ利得、解像度、アパーチャ、および露光時間を含み得る。画像分析基準の点では画像処理プロファイルは、取込画像内の異なるタイプの細菌コロニーを計数する際に異なる色、形状、サイズおよび近接基準を指定することにより、分析結果の精度、例えば計数を向上し得る。そのため画像処理プロファイルは画像取込および分析の両方に関連し得る。精度は食品および実験用試料試験環境の両方において重要である。食品安全性の場合は特に、正確な結果によってライン生産、設備および環境試験を始めとする食品処理動作を通して重要管理点での衛生確認が可能になる。
【0021】
スキャナは、プレートに担持されている光学的または磁気的読取可能マークなどの様々な機械可読プレートタイプ標識を参照することによりプレートタイプを識別し得る。従って本発明は生物成長プレートがプレートタイプの識別を可能にする特定の標識を担持することも考慮している。さらに本発明はプレートタイプ識別を行う際の人間の判断への依存を排除または減少させることにより、コロニー計数または他の分析の人為ミスおよびその結果生じる不正確さの可能性を低減し得る。
【0022】
本発明は様々な生物成長プレートに有用であり得る。例えば本発明は薄膜培養プレート装置、ペトリ皿培養プレート装置等など生物剤を成長させる異なるプレート状装置に有用であり、生物剤の検出または測定を可能にし得る。そのため用語「生物成長プレート」を本明細書では広義に用いて、スキャナによる生物剤の検出および測定を可能にする生物剤の成長に適した培地を示す。いくつかの実施形態において、例えばグレースル(Graessle)らに与えられた米国特許第5,573,950号明細書に記載されているように、生物成長プレートを複数のプレートを支持する容器に収容することができる。
【0023】
図1は例示的生物スキャナ10の斜視図である。図1に示すように、生物スキャナ10は生物成長プレート(図1には図示せず)を受け取る引出し14を有するスキャナユニット12を含んでいる。引出し14は生物成長プレートを走査および分析用生物スキャナ10内に移動させる。スキャナ10は本発明による自動プレートタイプ識別、およびプレートタイプに基づいた画像処理プロファイルの自動選択を可能にする特徴を組み込み得る。
【0024】
また生物スキャナ10は表示画面16を含み、生物成長プレートの分析の進行または結果をユーザに表示し得る。代替的または追加的に、表示画面は生物スキャナ10により走査された成長プレートの画像をユーザに提示し得る。表示された画像は光学的に拡大またはデジタルに拡大し得る。載置台18は生物スキャナ10による画像取込に続いて成長プレートを排出することができる排出スロット20を規定している。従って生物スキャナ10はスキャナユニット12が載置台18に載置されている2部構成を有し得る。2部構成は例示目的で図1に図示されているが、本明細書に記載された発明に必要としたりまたは発明の限定を意図するものではない。
【0025】
スキャナユニット12は生物成長プレートを走査して画像を生成するための撮像装置を収容している。撮像装置はラインスキャナまたはエリアスキャナの形状を取り、通常生物成長プレートの前面および/または背面照明を提供する照明システムと組み合わせて設けられる。さらにスキャナユニット12は例えば成長プレート内の生物剤の数または量を判定するために、走査画像の分析を行う処理ハードウェアを収容し得る。例えば引出し14を介して生物成長プレートが提示されると、プレートは走査用光学プラテンに隣接して配置され得る。
【0026】
その後引出しが開放されると、成長プレートは載置台18内に下降して排出スロット20を介して排出し得る。そのため載置台18は成長プレートを排出スロット20を介して生物スキャナ10から排出するコンベヤーを収容し得る。生物成長プレートが引出し14内に挿入され、スキャナユニット12内に移動され、走査された後、生物成長プレートは載置台18内に降下し、そこで移動ベルトなどの水平コンベヤーがスロット20を介して培地を排出する。
【0027】
図2は生物スキャナ10の他の斜視図である。図2に示すように引出し14は生物スキャナ10から外側に延出して生物成長プレート22を受け取る。図示のように生物成長プレート22を引出し14内に設けられた台24上に配置し得る。いくつかの実施形態において、台24はカムレバーなどの位置決め作動装置を含み、台を上昇させて生物スキャナ10内に成長プレート22を正確に位置決めし得る。生物成長プレート22を台24上に配置すると、引出し14はスキャナユニット12内に後退して生物成長プレートを走査位置、すなわち生物成長培地が光学的に走査される位置に配置する。
【0028】
図3および4は例示的生物成長プレート22の平面図である。例として適当な成長プレート22は、商品名ペトリフィルム(PETRIFILM)プレートで3Mにより販売されている生物成長プレートを含み得る。代替的には生物成長プレート22は、特定の細菌または他の生物剤を成長させる他の生物成長培地を含み得る。本発明によれば生物成長プレート22は、成長プレートに関連する生物培地のタイプの自動識別を容易にするプレートタイプ標識28を担持している。
【0029】
プレートタイプ標識28は機械可読である符号化パターンを提示する。図3および4の例において、プレートタイプ標識28は光学的読取可能パターンの形状を取る。具体的には図3および4は、生物成長プレート22の角部余白に形成された明暗四分の一区分の4つの四角形パターンを示す。換言すればプレートタイプ標識28は、符号化パターンを形成する白黒間で変化させたセルの二次元格子を規定する。文字、バーコード、二次元バーコード、光学格子、ホログラム、蛍光インク(phosphorous ink)等などの多様な光学パターンが考えられる。
【0030】
さらにいくつかの実施形態において、プレートタイプ標識28は磁気的または無線技術により読取可能なパターンの形状を取り得る。代替的にはプレートタイプ標識28は、光学的または機械的技術により読取可能なアパーチャ、スロット、表面輪郭等の形状を取り得る。いずれの場合もプレートタイプ標識28は生物スキャナ10による生物成長プレート22のタイプの自動識別を可能にする十分な情報を担持している。プレートタイプ標識28を以下により詳細に説明する。
【0031】
生物成長プレートは例えば好気性細菌、大腸菌、大腸菌型、腸内細菌科、酵母菌、糸状菌、黄色ブドウ球菌、リステリア、およびカンピロバクター等を始めとする細菌または他の生物剤の迅速な成長および検出ならびに測定を容易にし得る。ペトリフィルムプレートまたは他の成長培地を利用することにより食品試料の細菌試験を単純化することができる。また本明細書において概説するように、生物スキャナ10は自動プレートタイプ検出および検出されたプレートタイプに基づいた画像処理プロファイルの自動選択を提供し、生物成長プレート22を照明および/または例えばプレートの画像上の細菌コロニーを計数して分析することによりこのような試験をさらに単純化することができる。
【0032】
図3に示すように生物成長プレート22は成長エリア26を規定している。細菌コロニー数に関して、プレート22内で試験されている所与の試料が許容可能か否かの判定は単位面積当たりの細菌コロニーの数による。従ってスキャナ10はプレート22上の単位面積あたりの細菌コロニーの量を定量し得るとともに、その量すなわち「数」を閾値と比較し得る。生物成長プレート22の表面は、1つ以上のタイプの細菌または他の生物剤の迅速な成長を容易にするように構成された1つ以上の成長促進剤を含み得る。
【0033】
成長エリア26内の生物成長プレート22の表面上に、概して液状の被験材料の試料を配置した後、プレート22を培養室(図示せず)に挿入することができる。培養室において、図4の生物成長プレート22に示すように成長プレート22により成長する細菌コロニーまたは他の生物剤が出現する。図4の生物成長プレート22上の様々なドット30で表されるコロニーはプレート22上に異なる色で出現し、スキャナ10による細菌コロニーの自動検出および測定を容易にする。
【0034】
図5A〜5Dは、画像処理プロファイル選択用に生物成長プレート22により担持される例示的なプレートタイプ標識28を図示する図である。またプレートタイプ標識28は光学的または機械的読取可能性を可能にするパターン、マーク、アパーチャ、表面輪郭等の形状を取り得る。例えば光復号器、バーコードスキャナ、光学式文字識別(OCR)プロセッサ等により異なる光学パターンを読み取ることができる。アパーチャまたは輪郭の場合、機械的な針がアパーチャまたは輪郭と相互作用して異なるパターンを検出して電気信号を生成し得る。代替的にはプレートタイプ標識28は磁気的な符号化ストライプまたはマーカーであり、もしくは無線識別表示を担持して磁気的または無線読取可能性を可能にする。
【0035】
生物成長プレート22の表面上、例えば成長エリア26の外側にインクを印刷または付着させることにより光学的に読取可能なパターンを形成し得る。アパーチャまたは表面輪郭パターンは穿孔、刻印、エンボス、打ち抜き等により、生物成長プレート22内に形成することができる。磁気ストライプまたは無線識別表示を、例えば接着剤または積層技術により生物成長プレート22の表面に貼り付け得る。さらに生物成長プレート22の表面に磁気または無線標識を担持する必要はなく、成長プレートが多層構造を有する場合には成長プレートの層間に介在させ得る。いずれの場合も生物成長プレート22のタイプを識別するために、工場において様々なプレートタイプ標識28を形成し得る。
【0036】
さらに必要な場合には、プレートタイプ標識28は、具体的なメーカー、ロット番号、耐用年数、安全認証等を識別する情報をさらに含み得る。このような追加情報項目は、生物スキャナ10で用いる生物成長プレート22の品質および適性を確認する上で重要であり得る。例えば生物スキャナ10で用いる生物成長プレート22を提供するために、例えばプレート製造品質およびプレート性能基準に基づいて、1つ以上のメーカーを特定し得る。この場合プレートタイプ標識28により、認定されたメーカーと関連しない生物成長プレート22を拒絶するように生物スキャナ10を構成し得る。
【0037】
さらにプレートタイプ標識28は、生物成長プレート22を確認するとともに未許可成長プレートの不正導入を防止する、例えば食品検査または実験分析プロセスを阻止する役目をするシリアル番号コード等などの安全情報を担持し得る。このような情報は生物成長プレート22内で一体化および符号化されるが、代替的には成長プレートにより担持される別の標識パターン内で符号化され得る。従って生物成長プレート22はプレートタイプ標識28に加えて、異なる安全性および品質保証の目的を果たす1つ以上の標識パターンを担持し得る。
【0038】
安全性を高めるために、プレートタイプ標識28、さらに生物成長プレート22により担持し得る任意の他の標識は様々な安全機構の恩恵を蒙ることができる。例えばいくつかの実施形態において印刷されたプレートタイプ標識28が特定の蛍光インクで印刷されているため、走査する際に標識が発する光の波長によりはっきりと識別することができる。さらにプレートタイプ標識28は動作用の生物スキャナ10を解除するための暗号化キーを担持する、より複雑なパターンの形状を取り得る。この場合生物スキャナ10内のプロセッサ34(図6)はパターンの暗合解読を行って画像処理を進行し得る。
【0039】
図5A〜5Dの例において、プレートタイプ標識28は明暗いずれかである4つの四分の一区分29、31、33、35を有する4つの四角形パターンの形状を取り、容易な光学処理を可能にする。図5Aにおいてプレートタイプ標識28は4つの明るい四分の一区分を有し、第1のタイプの生物成長プレート22を識別し得る。図5B、5Cおよび5Dにおいて、プレートタイプ標識28はそれぞれ、1つの黒い四分の一区分、2つの黒い四分の一区分、および4つの黒い四分の一区分を含んでいる。黒い四分の一区分の数および位置の選択は16(24)までの異なる暗号化パターンを形成し、従って16までの異なるプレートタイプを機械可読プレートタイプ標識28によって識別可能にする。例として異なる暗号化パターンは好気性数、大腸菌型、大腸菌、腸内細菌科、酵母菌、糸状菌および他のプレートタイプ名称を表わすこともできる。
【0040】
プレートタイプ標識28の形状は多様であり得るが、図5A〜5Dに示した4つの四角形パターンは比較的単純且つ光学パターン認証技術、すなわちマシンビジョンを利用して識別容易な1つのタイプのパターンを提供する。説明するように、バーコード読取装置またはカスタム読取装置などの専用の光学コード読取装置によりプレートタイプ標識28を走査し得る。この場合プレートタイプ標識28の走査は、成長プレート画像の処理前以外に生物成長プレート22の走査に先立ってまたは平行して行うことができる。代替的にはプレートタイプ標識28を生物成長プレート22の走査画像に取り込み、その後画像処理のために抽出してプレートタイプを識別し得る。この場合走査した成長プレート画像をさらに画像処理する前にプレートタイプを識別することができる。
【0041】
図6は生物スキャナ10の内部動作を図示するブロック図である。図6に図示するように、生物成長プレート22は台(図6では図示せず)上の生物スキャナ10の内部に配置されている。台は生物成長プレート22を撮像装置32の所望の焦点面に配置する。撮像装置32は成長プレート22の上面および背面照明用の照明ハードウェア、および成長プレート22の表面の画像を取り込むラインまたはエリアスキャナを含み得る。撮像装置32が標準画像取込条件を適用するか、またはユーザが画像取込条件を指定し得る。代替的には以下に説明するようにスキャナ10は、プレートタイプに対応する画像処理プロファイルに基づいて自動的に画像取込条件を制御し得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、例えば撮像装置32は二次元カメラの形状を取り得るが、ラインスキャナはカメラまたは生物成長プレート22のいずれかが他に対して並進される構成で使用できる。一般に撮像装置32は生物成長プレート22または少なくとも生物成長プレート内の成長領域の画像を取り込む。プロセッサ34は撮像装置32の動作を制御する。動作中、プロセッサ34は撮像装置32を制御して生物成長プレート22の画像を取り込む。プロセッサ34は撮像装置32から走査画像を表わす画像データを受け取るとともに、画像の一部分を抽出または分離してプレートタイプ標識28を隔離する。
【0043】
プロセッサ34はマシンビジョン技術を利用してプレートタイプ標識28を分析し、生物成長プレート22に関連するプレートタイプを識別する。そしてプロセッサ34は画像処理プロファイルメモリ36から画像処理プロファイルを検索する。画像処理プロファイルは検出されたプレートタイプに対応している。プロセッサ34はマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、アプリケーション特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)または本明細書に記載されているような機能性を提供するようにプログラムまたは構成された他の集積または個別論理回路の形状を取り得る。
【0044】
プロセッサ34は画像処理プロファイルを利用して適正な画像分析パラメータを読み込むとともに生物成長プレート22の走査画像を処理するように進行する。このようにプロセッサ34は生物成長プレート22から得られた画像データを処理するという意味で画像処理装置をなす。画像分析パラメータは画像処理プロファイルおよび検出されたプレートタイプとともに変化して、走査画像の分析に対してコロニーの色、サイズ、形状および近接基準などの特定のパラメータを指定し得る。
【0045】
いくつかのプレートタイプの場合、例えば周囲の栄養培地の色は高コロニー数の標識であり得る。また特定の炭水化物およびpH指示薬を含むプレートの場合、色は有機体のタイプの標識になり得る。気泡などの隣接物体も有機体のタイプの標識になり得る。従って様々な画像処理基準および関連するパラメータを様々なプレートタイプに対して指定し得る。基準は被分析プレート22のタイプにより異なるとともに、生物スキャナ10により生成されるコロニー数または他の分析結果に大きく影響し得る。
【0046】
適切な画像処理パラメータを選択すると、プロセッサ34は走査画像を処理するとともに、ディスプレイ16を介してユーザに提示されるコロニー数などの分析結果を生成する。またプロセッサ34は後にスキャナ10から検策するために、分析結果をカウントデータメモリ38などのメモリに記憶する。カウントデータメモリ38に記憶されたデータは例えば通信ポート40、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ポートを介して生物スキャナ10と通信しているホストコンピュータによって検索し得る。ホストコンピュータは、分析のために生物スキャナ10に提示される一連の生物成長プレート22に対する分析結果をコンパイルし得る。
【0047】
生物スキャナ10内の画像処理プロファイルの自動選択は、適当な画像処理プロファイルを選択するための便利で精度の高い技術を提供することができる。画像処理プロファイルの自動選択は細菌コロニー計数および他の分析手順の精度を向上させることができる。特に自動画像処理プロファイル選択により技術者がプレートタイプを目視で識別して手動で入力する必要性をなくすことができる。このようにして人間の介入に関連する場合もあるプレート識別エラーをなくすことができる。その結果、スキャナ10とプレートタイプ標識28を担持する生物成長プレート22とを組み合わせると、効率および実験技術者の作業フローを向上させることができる一方、分析精度、そして最終的には食品安全性および人間の健康を高めることができる。
【0048】
図7は自動画像処理プロファイル選択のために構成された他の生物スキャナ10’を図示するブロック図である。生物スキャナ10’は図6の生物スキャナ10と実質的に一致するが、コード読取装置42をさらに含んでいる。生物成長プレート22の走査画像からプレートタイプ標識28を抽出する代わりに、コード読取装置42はプレートタイプ情報を得る専用の読取装置として機能する。例えばプレートタイプ標識28の形状によって、コード読取装置42は専用の光学読取装置、バーコード読取装置、磁気読取装置、無線または機械的読取装置の形状を取り得る。
【0049】
いずれの場合もコード読取装置42はプレートタイプ標識28からプレートタイプを識別するとともにプレートタイプをプロセッサ34に伝達する働きをする。そしてプロセッサ34は識別したプレートタイプに基づいてメモリ36から画像処理プロファイルを選択する。撮像装置32は生物成長プレート22を走査して画像データをプロセッサ34に提供する。そしてプロセッサ34は検索した画像処理プロファイルにより指定された画像処理パラメータを適用して画像を処理するとともにコロニー数などの分析結果を生成する。このようにプロセッサ34は自動識別プレートタイプの点で自動的に適正な画像処理プロファイルを適用することにより、ユーザに対して向上した精度、効率および便利さを提供する。具体的にはこのような実施形態において本発明はユーザがプレートタイプ識別を手で入力する必要性をなくすとともに、人間の間違った入力による分析エラーの可能性を低減する。
【0050】
図8は図6の生物スキャナ10をより詳細に図示するとともにプレート照明ハードウェアを示すブロック図である。図8に示すように生物スキャナ10は前面照明システム44と、背面照明システム46と、を含み得る。前面照明システム44は生物成長プレート22の前面側を照明し、背面照明システム46は生物成長プレートの背面側を照明する。前面および下面照明システム44および46は選択的に異なる照明強度、色および継続時間を生じ得る。具体的にはプロセッサ34は前面および下面照明システム44、46を制御して生物成長プレート22を異なる照明色に露光する。前面および背面照明システム44、46は照明源としてLEDを内蔵し得る。LEDはプロセッサ34および適当な駆動回路により容易に制御されて所望の照明強度と継続時間とを達成できる。
【0051】
さらにプロセッサ34はカメラ43を制御して異なる色での照明中に生物成長プレート22の画像を取り込み得る。例えばプロセッサ34は照明システム44、46およびカメラ43を協調制御して生物成長プレート22の1つ以上の画像を取り込む。カメラ43は前面照明システム44、背面照明システム46または両方による照明中に生物成長プレート22の1つ以上の画像を取り込むとともに、その画像を画像メモリ47に記憶し得る。場合によってプロセッサ34は画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件に応じてカメラ利得、解像度、アパーチャ、露光時間等を制御し得る。
【0052】
プロセッサ34は記憶された画像を用いて画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準に従って画像分析を行う。具体的にはプロセッサ34はその後個々の画像を分析するか、多数の画像を組み合わせて複合画像を形成する。いくつかの実施形態において例えばプロセッサ34は照明システム44、46を制御して、生物成長プレート22の赤色、緑色、および青色の画像を取り込むとともに、画像を個別にまたは複合多色画像として分析する。
【0053】
生物成長プレート22のタイプによっては特定の色、強度および継続時間の照明を必要とする場合がある。さらに生物成長プレート22によっては両方ではなく前面または背面照明しか必要としない場合がある。例えば好気性細菌数プレートは前面照明のみ且つ赤色などの単一色のみによる照明を必要とする。また大腸菌/大腸菌型プレートは背面照明のみ且つ赤色と青色照明の組み合わせを必要とする。同様に異なるカメラ利得、解像度、アパーチャ、および露光時間はもとより、特定の強度レベルおよび継続時間が適正であり得る。これらの理由でプロセッサ34は画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件に応じて照明およびカメラ条件を制御し得る。換言すればプレートタイプに基づく画像分析基準だけでなく画像を取り込むために適用される画像取込条件を選択するようにスキャナ10を構成することができる。
【0054】
照明の前にプレートタイプの識別を可能にするため、スキャナ10は図6および7に関して説明したものと同様な技術を適用し得る。図7に関して説明したように、例えば専用コード読取装置を設けて画像取込のための照明の前にプレートタイプを識別する。専用読取装置を用いてプレートタイプを識別すると、プロセッサ34は画像処理プロファイルメモリ36から対応する画像処理プロファイルを選択して、画像処理プロファイルにおいて指定された画像取込条件に従って照明を制御する。
【0055】
代替的には図6に関して説明したようにマシンビジョン技術を適用して取込画像からプレートタイプを識別するようにスキャナ10を構成し得る。この場合プレートタイプ標識28を分析してプレートタイプ識別するため、スキャナ10は一組のデフォルト照明条件を適用して生物成長プレート22またはその一部の初期画像を取り込む。その後プロセッサ34は対応する画像処理プロファイルを選択するとともに、指定された画像取込条件を適用して生物成長の分析用画像を取り込む。
【0056】
画像処理プロファイルを照明条件、画像分析基準またはその両方を指定するものとして本明細書に概説する。しかし個々のプロファイルを画像取込および画像分析に用いることもできる。例えばプレートタイプ識別に続いて、プロセッサ34は照明色、強度および継続時間などの画像取込条件を指定する画像取込プロファイルにアクセスし得る。その後取込画像の分析のため、プロセッサ34は色、形状、サイズおよび近接などの画像分析基準を指定する個々の画像分析プロファイルにアクセスし得る。
【0057】
図6〜8の例はプレートタイプに基づく画像処理プロファイルの自動選択を示しているが、この選択はいくつかの実施形態において半自動になり得る。具体的にはプレートタイプ標識28によりプレートタイプを検出すると、プロセッサ34はディスプレイ16を介して事前プレートタイプ識別をユーザに提示し得る。さらにプロセッサ34は、対応画像処理プロファイルを用いて画像取込または分析が進行する前に自動的に識別されたプレートタイプをユーザが確認または拒絶することを可能にし得る。ユーザは例えばポインティングデバイスを作動させるかまたはタッチスクリーンの領域を押圧することにより事前プレートタイプ識別を確認または拒絶し得る。ユーザが自動検出プレートタイプ識別がエラーであると思う場合には、プロセッサ34はユーザがプレートタイプ識別を変更することを可能にし得る。
【0058】
図9はプレートタイプ検出時に生物スキャナ10によりディスプレイ16上に生成されるサンプル表示内容である。図9に示すように、ディスプレイ16は事前プレートタイプ識別、すなわちプロセッサ34により自動的に作成されたプレートタイプ識別を提示する。図9の例において、ディスプレイ16は「プレートタイプ=リステリア」を示している。さらにディスプレイ16は、それぞれユーザ入力を受け付けて事前プレートタイプ識別がユーザにより確認されたか拒絶されたかを示す2つのタッチスクリーン領域52、54を提示する。
【0059】
図10はユーザによる自動プレートタイプ検出の拒絶時に生物スキャナ10のディスプレイ16により生成されるサンプル表示内容である。例えば図9に示すようにユーザが事前プレートタイプ識別を拒絶した場合、プロセッサ34はディスプレイ16を駆動して「プレートタイプを入力する」のダイアログを提示し、それによりユーザは図10に示すように正しいプレートタイプ識別を選択し得る。ディスプレイ16は、ユーザが代替プレートタイプ識別を例えば適当なタッチスクリーン領域を押下することにより選択できるようにする垂直スクロールバーメニュー56を提示し得る。代替プレートタイプ識別を選択すると、プロセッサ34は例えば画像取込条件、画像分析基準または両方を含む代替画像処理プロファイルを選択し得る。
【0060】
図11はコロニー数の判定時に生物スキャナ10のディスプレイ16により生成されるサンプル内容である。図11に示すように、プロセッサ34はディスプレイ16を駆動して「プレート走査完了」メッセージを提示するとともにプレートタイプを識別し得る(「プレートタイプ=リステリア」)。さらに生物成長プレート22の分析が完了すると、プロセッサ34はディスプレイ16を駆動して計数58(「計数=XX」)を提示する。ディスプレイ16は他のタイプの分析結果も提示し得る。
【0061】
図12はコロニー数の判定時に生物スキャナ10のディスプレイ16により生成されるサンプル内容であり走査されたプレートの画像を含む。図12の例においてディスプレイ16は図11に示したものと同様の情報を提示するが、生物成長プレート22の表面から生物スキャナ10によって走査された実際の画像の表示60をさらに含む。このようにユーザは計数58などの分析結果と走査画像の表示60との両方を見ることができる。いくつかの実施形態において画像表示60は十分な量の詳細を提示するためユーザは自動判定計数を確かめることができる。他の実施形態において画像表示60は低解像表示であり得る。
【0062】
図13は生物スキャナ10における画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。図13に示すように、このプロセスはスキャナ10に提示される生物成長プレート22に対してプレートタイプを識別するステップ(62)を含み得る。このプロセスはプレート画像を走査する(66)前または後いずれかに、プレートタイプに基づく画像処理プロファイルの選択(64)をさらに含み得る。画像処理プロファイルが画像取込条件を指定する場合には、照明条件、カメラ性能またはその両方を制御できるように画像処理プロファイルをプレート画像の走査前に選択しなければならない。プロセスは選択した画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準を用いて、プレート画像を処理して分析結果を生成するステップ(68)をさらに含む。具体的にはプロセスは細菌コロニー数を生成(70)し得る。図13の例において、プレートタイプはプレート画像を走査する前に識別される。
【0063】
図14はプレートタイプ標識の検出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。図14に示すようにこのプロセスは生物成長プレートにより担持されているプレートタイプ標識を、たとえば光学読取装置、バーコード読取装置、磁気読取装置、無線読取装置、機械的読取装置等などの専用のプレートタイプ標識読取装置で読み取るステップ(72)を含む。プレートタイプ標識に基づいてプレートタイプを判定すると(74)、プロセスは検出されたプレートタイプに基づいて画像処理プロファイルを選択するステップ(76)を含む。さらにプロセスは生物成長プレートの画像を走査するステップ(78)と、選択した画像処理プロファイルによって指定されたパラメータに従ってプレート画像を処理するステップ(80)と、を含む。プロセスはその後コロニー数などの分析結果を生成する(81)。
【0064】
図15は走査されたプレート画像からのプレートタイプ標識の抽出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。図15に示すように、プロセスは生物成長プレートの画像を走査するステップ(82)と、走査画像からプレートタイプ標識エリアを抽出するステップ(84)と、を含む。プロセスは抽出したプレートタイプ標識エリアを処理して(86)、プレートタイプを判定するステップ(88)をさらに含む。プレートタイプ標識に基づいてプレートタイプを判定する(88)と、プロセスは検出されたプレートタイプに基づいて画像処理プロファイルを選択するステップ(90)を含む。その後プロセスはプレートを例えば選択した画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件を用いて再度走査するステップ(91)と、選択した画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準に従ってプレート画像を処理するステップ(92)と、を含む。その後プロセスはコロニー数などの分析結果を生成する(94)。
【0065】
図16はユーザが生物スキャナによる自動プレートタイプ識別を無効にできるようにするプロセスを図示するフロー図である。図16に示すように、プロセスは生物成長プレート22に関連するプレートタイプを自動的に判定するステップ(96)と、判定したプレートタイプをディスプレイ16を介してユーザに提示するステップ(98)と、を含む。プロセスは自動的に判定したプレートタイプを受容または拒絶するユーザ入力を、例えばタッチスクリーン入力を介して受け付けるステップ(100)をさらに含む。プレートタイプがユーザに受容されない場合には、プロセスはユーザ入力を受け付けユーザからプレートタイプを受け取るステップ(102)を含む。ユーザがプレートタイプを入力する(102)かまたは自動判定プレートタイプを受容する(100)と、プロセスはプレートタイプに基づく画像処理プロファイルの選択(104)を含む。選択した画像処理プロファイルを用いて、プロセスはプレート画像を走査し(105)、プレート画像を処理し(106)、さらにコロニー数または他の所望分析結果を生成する(108)。
【0066】
動作中、プロセッサ34はコンピュータ読取可能媒体に記憶され得る命令を実行して、本明細書に記載されたプロセスを行う。コンピュータ読取可能媒体は、同時性ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ(FLASH)メモリ、磁気または光学データ記憶媒体等を含み得る。
【0067】
本発明の精神と範囲とから逸脱することなく様々な変更を行うことができる。これらおよび他の実施形態は以下の請求の範囲の範囲内にあるものである
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品試料、実験用試料等内の細菌または他の生物剤を分析する生物成長培地の分析のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的安全性は近代社会における重大な関心事である。食品または他の材料内の生物汚染の試験は、食品の開発者および販売者にとって重要且つ時には義務要件になってきている。また生物試験を利用して医療患者から採取した血液試料などの実験用試料、実験目的に開発された実験用試料、および他のタイプの生物試料内の細菌または他の物質を識別する。様々な技術および装置を利用して生物試験を改善するとともに、生物試験プロセスを簡素化および標準化することができる。
【0003】
具体的には多様な生物成長培地が開発されてきた。一例として成長プレートの形状の生物成長培地がミネソタ州セントポール(St.Paul,Minnesota)のスリーエム・カンパニー(3M Company)(以下「3M」)により開発された。生物成長プレートは商品名ペトリフィルム(PETRIFILM)プレートで3Mにより販売されている。生物成長プレートを利用することにより、例えば好気性細菌、大腸菌(E.coli)、大腸菌型、腸内細菌科、酵母菌、糸状菌、黄色ブドウ球菌、リステリア、およびカンピロバクター等を始めとする、通常食品汚染に関連する細菌または他の生物剤(biological agent)の迅速な成長および検出または測定を容易にすることができる。ペトリフィルム(PETRIFILM)プレートまたは他の成長培地を利用することにより、食品試料の細菌試験を単純化することができる。
【0004】
生物成長培地を用いて細菌の存在を識別することができるため、補正措置を行う(食品試験の場合)かまたは適正な診断を行う(医療用途の場合)ことができる。他の用途においては生物成長培地を用いて例えば実験目的用の実験用試料内の細菌または生物剤を迅速に成長し得る。
【0005】
生物スキャナとは生物成長培地上の細菌コロニーまたは特定の生物剤の量を読み取るまたは計数するために用いる装置を指す。例えば食品試料または実験用試料を生物成長培地上に置いて、その後その培地を培養室内に挿入することができる。培養後、生物成長培地を生物スキャナ内に配置して細菌成長を自動検出および測定することができる。換言すれば生物スキャナは生物成長培地上の細菌または他の生物剤の検出および測定を自動化することにより、人為ミスを低減することによって生物試験プロセスを改善する。
【発明の概要】
【0006】
一般に本発明は、異なるタイプの生物成長プレートを走査および分析するために画像処理プロファイルの選択を自動化する生物スキャナに関する。このスキャナは被走査プレートのタイプを自動的に識別した後、識別されたプレートタイプに適合する画像処理プロファイルのうちの1つを選択する。
【0007】
スキャナはプレートに担持された光学的または磁気的に読取可能なマークなどの様々な機械可読標識を参照することによりプレートタイプを識別し得る。従って本発明は画像処理プロファイルの選択のためのプレートタイプ識別を可能にする特定の標識を担持する生物成長プレートにも関する。
【0008】
プレートを走査して生物成長プレート上の異なるタイプの細菌コロニー、または特定の生物剤の量を読み取るまたは計数し得る。動作中、例えば生物成長プレートをスキャナに提示するとスキャナはプレートタイプを識別する。その後スキャナは識別されたプレートタイプに関連する画像処理プロファイルに従って画像を処理する。
【0009】
画像処理プロファイルは、特定のプレートタイプの画像を取り込むための照明強度、継続時間および色などの特定の画像取込条件を指定し得る。また画像取込条件はカメラ利得、解像度、アパーチャ、および露光時間を含み得る。さらに画像処理プロファイルは、取込画像内の異なるタイプの細菌コロニーを検出または測定するために色、形状、サイズおよび近接基準などの特定の画像分析基準を指定し得る。このようにスキャナは生物成長プレートの画像を処理する際に異なる画像取込条件、異なる画像分析基準、またはその両方を適用し得る。
【0010】
動作中、生物スキャナはプレートタイプを識別すると、対応する画像処理プロファイルを選択し得る。生物スキャナは画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件を用いて生物成長プレートを照明するとともに、プレートの1つ以上の画像を取り込み得る。生物スキャナはその後、画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準を用いて取込画像の分析を行い得る。このように生物スキャナは異なるタイプの生物成長プレートの走査および分析を自動化する。
【0011】
一実施形態において本発明は、一組の画像処理プロファイルを記憶するメモリと、生物成長プレートに関連するプレートタイプに基づいて画像処理プロファイルのうちの1つを選択する画像処理装置と、を含む装置を提供する。
【0012】
他の実施形態において本発明は、生物成長プレートに関連するプレートタイプを検出するステップと、検出したプレートタイプに基づいて複数の画像処理プロファイルのうちの1つを選択するステップと、選択した画像処理プロファイルに従って生物成長プレートの画像を処理するステップと、を含む方法を提供する。
【0013】
更なる実施形態において本発明は、プロセッサに、生物成長プレートに対して検出されたプレートタイプに基づいて複数の画像処理プロファイルのうちの1つを選択させるとともに、画像処理装置を制御して選択された画像処理プロファイルに従って生物成長プレートの画像を処理させる命令を含むコンピュータ読取可能媒体を提供する。
【0014】
更なる実施形態において本発明は、生物剤の成長を支援するプレート表面と、生物成長プレートのタイプを識別する機械可読プレートタイプ標識と、を含む生物成長プレートを提供する。
【0015】
他の実施形態において本発明は、生物成長プレートのプレートタイプを識別する機械可読プレートタイプ標識を含む生物成長プレートと、生物成長プレートの画像を取り込むとともに、プレートタイプ標識に基づいて選択された複数の画像処理プロファイルのうちの1つに従って画像を処理する撮像装置と、を含むシステムを提供する。
【0016】
本発明は多数の利点を提供することができる。例えば自動画像処理プロファイル選択は、適当な画像処理プロファイルを選択するための便利で精度の高い技術を提供することができる。自動画像処理プロファイル選択は、細菌コロニー計数および他の分析手順の精度を向上させることにより品質保証を強化することができる。具体的には各プレートタイプに対して適当な画像取込条件および画像分析基準を自動的に選択して適用することができる。自動画像処理プロファイル選択により技術者がプレートタイプを目視で識別して手動で入力する必要性をなくすことができることによって、人間の介入に関連する場合もあるプレート識別エラーをなくすことができる。分析精度は特に食品試料を試験する際に重大な健康上の問題になり得る。さらに自動画像処理プロファイル選択は効率と利便性とを向上させるとともに、実験技術者の作業フローを改善させることができる。生物スキャナによる自動プレートタイプ識別を可能にする機械可読プレートタイプ標識を担持する生物成長プレートは以上の利点に貢献することができる。
【0017】
これらのおよび他の実施形態の更なる詳細は添付の図面と以下の説明とに記載されている。他の特徴と目的と利点とは明細書および図面からならびに請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】例示的生物スキャナの斜視図である。
【図2】例示的生物スキャナの他の斜視図である。
【図3】画像処理プロファイル選択のための標識パターンを担持する例示的成長プレートの平面図である。
【図4】画像処理プロファイル選択のための標識パターンを担持する例示的成長プレートの平面図である。
【図5A】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図5B】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図5C】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図5D】画像処理プロファイル選択のための生物成長プレートにより担持される例示的なプレートタイプ標識パターンを図示する図である。
【図6】自動画像処理プロファイル選択用に構成された生物スキャナを図示するブロック図である。
【図7】自動画像処理プロファイル選択用に構成された他の生物スキャナを図示するブロック図である。
【図8】図6の生物スキャナをより詳細に図示するとともにプレート照明ハードウェアを示すブロック図である
【図9】プレートタイプ検出時に生物スキャナによりディスプレイ上に生成されるサンプル表示内容を図示する。
【図10】ユーザによる自動プレートタイプ検出の拒絶時に生物スキャナ10によりディスプレイ上に生成されるサンプル表示内容を図示する。
【図11】コロニー数の判定時に生物スキャナによりディスプレイ上に生成されるサンプル表示内容を図示する。
【図12】コロニー数の判定時に生物スキャナによりディスプレイ上に生成される、走査プレートの画像を含むサンプル表示内容を図示する。
【図13】生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。
【図14】プレートタイプ標識の検出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。
【図15】走査されたプレート画像からのプレートタイプ標識の抽出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。
【図16】ユーザが生物スキャナによる自動プレートタイプ識別を無効にできるようにするプロセスを図示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は生物成長プレート用生物スキャナに関する。生物成長プレートを生物スキャナに提示すると、生物スキャナはプレートの画像を生成するとともに画像の分析を行って生物成長を検出することができる。例えばスキャナは細菌コロニーの数など、画像に現れる生物剤の量を計数あるいは定量し得る。このように生物スキャナは生物成長プレートの分析を自動化することにより、このような分析を改善するとともに人為ミスの可能性を低減する。
【0020】
また本発明による生物スキャナは、異なるタイプの生物成長プレートを走査するとともにプレート画像を分析するために画像処理プロファイルの選択を自動化する。スキャナはスキャナにより走査されるプレートのタイプを自動的に識別した後、識別したプレートタイプに適した画像処理プロファイルの1つを選択する。画像処理プロファイルは異なるタイプの生物成長プレートに対する画像取込条件、画像分析基準またはその両方の組み合わせを指定し得る。例えば画像処理プロファイルは、画像取込用の特定のプレートタイプの照明強度、継続時間および照明用色を指定し得る。また画像取込条件はカメラ利得、解像度、アパーチャ、および露光時間を含み得る。画像分析基準の点では画像処理プロファイルは、取込画像内の異なるタイプの細菌コロニーを計数する際に異なる色、形状、サイズおよび近接基準を指定することにより、分析結果の精度、例えば計数を向上し得る。そのため画像処理プロファイルは画像取込および分析の両方に関連し得る。精度は食品および実験用試料試験環境の両方において重要である。食品安全性の場合は特に、正確な結果によってライン生産、設備および環境試験を始めとする食品処理動作を通して重要管理点での衛生確認が可能になる。
【0021】
スキャナは、プレートに担持されている光学的または磁気的読取可能マークなどの様々な機械可読プレートタイプ標識を参照することによりプレートタイプを識別し得る。従って本発明は生物成長プレートがプレートタイプの識別を可能にする特定の標識を担持することも考慮している。さらに本発明はプレートタイプ識別を行う際の人間の判断への依存を排除または減少させることにより、コロニー計数または他の分析の人為ミスおよびその結果生じる不正確さの可能性を低減し得る。
【0022】
本発明は様々な生物成長プレートに有用であり得る。例えば本発明は薄膜培養プレート装置、ペトリ皿培養プレート装置等など生物剤を成長させる異なるプレート状装置に有用であり、生物剤の検出または測定を可能にし得る。そのため用語「生物成長プレート」を本明細書では広義に用いて、スキャナによる生物剤の検出および測定を可能にする生物剤の成長に適した培地を示す。いくつかの実施形態において、例えばグレースル(Graessle)らに与えられた米国特許第5,573,950号明細書に記載されているように、生物成長プレートを複数のプレートを支持する容器に収容することができる。
【0023】
図1は例示的生物スキャナ10の斜視図である。図1に示すように、生物スキャナ10は生物成長プレート(図1には図示せず)を受け取る引出し14を有するスキャナユニット12を含んでいる。引出し14は生物成長プレートを走査および分析用生物スキャナ10内に移動させる。スキャナ10は本発明による自動プレートタイプ識別、およびプレートタイプに基づいた画像処理プロファイルの自動選択を可能にする特徴を組み込み得る。
【0024】
また生物スキャナ10は表示画面16を含み、生物成長プレートの分析の進行または結果をユーザに表示し得る。代替的または追加的に、表示画面は生物スキャナ10により走査された成長プレートの画像をユーザに提示し得る。表示された画像は光学的に拡大またはデジタルに拡大し得る。載置台18は生物スキャナ10による画像取込に続いて成長プレートを排出することができる排出スロット20を規定している。従って生物スキャナ10はスキャナユニット12が載置台18に載置されている2部構成を有し得る。2部構成は例示目的で図1に図示されているが、本明細書に記載された発明に必要としたりまたは発明の限定を意図するものではない。
【0025】
スキャナユニット12は生物成長プレートを走査して画像を生成するための撮像装置を収容している。撮像装置はラインスキャナまたはエリアスキャナの形状を取り、通常生物成長プレートの前面および/または背面照明を提供する照明システムと組み合わせて設けられる。さらにスキャナユニット12は例えば成長プレート内の生物剤の数または量を判定するために、走査画像の分析を行う処理ハードウェアを収容し得る。例えば引出し14を介して生物成長プレートが提示されると、プレートは走査用光学プラテンに隣接して配置され得る。
【0026】
その後引出しが開放されると、成長プレートは載置台18内に下降して排出スロット20を介して排出し得る。そのため載置台18は成長プレートを排出スロット20を介して生物スキャナ10から排出するコンベヤーを収容し得る。生物成長プレートが引出し14内に挿入され、スキャナユニット12内に移動され、走査された後、生物成長プレートは載置台18内に降下し、そこで移動ベルトなどの水平コンベヤーがスロット20を介して培地を排出する。
【0027】
図2は生物スキャナ10の他の斜視図である。図2に示すように引出し14は生物スキャナ10から外側に延出して生物成長プレート22を受け取る。図示のように生物成長プレート22を引出し14内に設けられた台24上に配置し得る。いくつかの実施形態において、台24はカムレバーなどの位置決め作動装置を含み、台を上昇させて生物スキャナ10内に成長プレート22を正確に位置決めし得る。生物成長プレート22を台24上に配置すると、引出し14はスキャナユニット12内に後退して生物成長プレートを走査位置、すなわち生物成長培地が光学的に走査される位置に配置する。
【0028】
図3および4は例示的生物成長プレート22の平面図である。例として適当な成長プレート22は、商品名ペトリフィルム(PETRIFILM)プレートで3Mにより販売されている生物成長プレートを含み得る。代替的には生物成長プレート22は、特定の細菌または他の生物剤を成長させる他の生物成長培地を含み得る。本発明によれば生物成長プレート22は、成長プレートに関連する生物培地のタイプの自動識別を容易にするプレートタイプ標識28を担持している。
【0029】
プレートタイプ標識28は機械可読である符号化パターンを提示する。図3および4の例において、プレートタイプ標識28は光学的読取可能パターンの形状を取る。具体的には図3および4は、生物成長プレート22の角部余白に形成された明暗四分の一区分の4つの四角形パターンを示す。換言すればプレートタイプ標識28は、符号化パターンを形成する白黒間で変化させたセルの二次元格子を規定する。文字、バーコード、二次元バーコード、光学格子、ホログラム、蛍光インク(phosphorous ink)等などの多様な光学パターンが考えられる。
【0030】
さらにいくつかの実施形態において、プレートタイプ標識28は磁気的または無線技術により読取可能なパターンの形状を取り得る。代替的にはプレートタイプ標識28は、光学的または機械的技術により読取可能なアパーチャ、スロット、表面輪郭等の形状を取り得る。いずれの場合もプレートタイプ標識28は生物スキャナ10による生物成長プレート22のタイプの自動識別を可能にする十分な情報を担持している。プレートタイプ標識28を以下により詳細に説明する。
【0031】
生物成長プレートは例えば好気性細菌、大腸菌、大腸菌型、腸内細菌科、酵母菌、糸状菌、黄色ブドウ球菌、リステリア、およびカンピロバクター等を始めとする細菌または他の生物剤の迅速な成長および検出ならびに測定を容易にし得る。ペトリフィルムプレートまたは他の成長培地を利用することにより食品試料の細菌試験を単純化することができる。また本明細書において概説するように、生物スキャナ10は自動プレートタイプ検出および検出されたプレートタイプに基づいた画像処理プロファイルの自動選択を提供し、生物成長プレート22を照明および/または例えばプレートの画像上の細菌コロニーを計数して分析することによりこのような試験をさらに単純化することができる。
【0032】
図3に示すように生物成長プレート22は成長エリア26を規定している。細菌コロニー数に関して、プレート22内で試験されている所与の試料が許容可能か否かの判定は単位面積当たりの細菌コロニーの数による。従ってスキャナ10はプレート22上の単位面積あたりの細菌コロニーの量を定量し得るとともに、その量すなわち「数」を閾値と比較し得る。生物成長プレート22の表面は、1つ以上のタイプの細菌または他の生物剤の迅速な成長を容易にするように構成された1つ以上の成長促進剤を含み得る。
【0033】
成長エリア26内の生物成長プレート22の表面上に、概して液状の被験材料の試料を配置した後、プレート22を培養室(図示せず)に挿入することができる。培養室において、図4の生物成長プレート22に示すように成長プレート22により成長する細菌コロニーまたは他の生物剤が出現する。図4の生物成長プレート22上の様々なドット30で表されるコロニーはプレート22上に異なる色で出現し、スキャナ10による細菌コロニーの自動検出および測定を容易にする。
【0034】
図5A〜5Dは、画像処理プロファイル選択用に生物成長プレート22により担持される例示的なプレートタイプ標識28を図示する図である。またプレートタイプ標識28は光学的または機械的読取可能性を可能にするパターン、マーク、アパーチャ、表面輪郭等の形状を取り得る。例えば光復号器、バーコードスキャナ、光学式文字識別(OCR)プロセッサ等により異なる光学パターンを読み取ることができる。アパーチャまたは輪郭の場合、機械的な針がアパーチャまたは輪郭と相互作用して異なるパターンを検出して電気信号を生成し得る。代替的にはプレートタイプ標識28は磁気的な符号化ストライプまたはマーカーであり、もしくは無線識別表示を担持して磁気的または無線読取可能性を可能にする。
【0035】
生物成長プレート22の表面上、例えば成長エリア26の外側にインクを印刷または付着させることにより光学的に読取可能なパターンを形成し得る。アパーチャまたは表面輪郭パターンは穿孔、刻印、エンボス、打ち抜き等により、生物成長プレート22内に形成することができる。磁気ストライプまたは無線識別表示を、例えば接着剤または積層技術により生物成長プレート22の表面に貼り付け得る。さらに生物成長プレート22の表面に磁気または無線標識を担持する必要はなく、成長プレートが多層構造を有する場合には成長プレートの層間に介在させ得る。いずれの場合も生物成長プレート22のタイプを識別するために、工場において様々なプレートタイプ標識28を形成し得る。
【0036】
さらに必要な場合には、プレートタイプ標識28は、具体的なメーカー、ロット番号、耐用年数、安全認証等を識別する情報をさらに含み得る。このような追加情報項目は、生物スキャナ10で用いる生物成長プレート22の品質および適性を確認する上で重要であり得る。例えば生物スキャナ10で用いる生物成長プレート22を提供するために、例えばプレート製造品質およびプレート性能基準に基づいて、1つ以上のメーカーを特定し得る。この場合プレートタイプ標識28により、認定されたメーカーと関連しない生物成長プレート22を拒絶するように生物スキャナ10を構成し得る。
【0037】
さらにプレートタイプ標識28は、生物成長プレート22を確認するとともに未許可成長プレートの不正導入を防止する、例えば食品検査または実験分析プロセスを阻止する役目をするシリアル番号コード等などの安全情報を担持し得る。このような情報は生物成長プレート22内で一体化および符号化されるが、代替的には成長プレートにより担持される別の標識パターン内で符号化され得る。従って生物成長プレート22はプレートタイプ標識28に加えて、異なる安全性および品質保証の目的を果たす1つ以上の標識パターンを担持し得る。
【0038】
安全性を高めるために、プレートタイプ標識28、さらに生物成長プレート22により担持し得る任意の他の標識は様々な安全機構の恩恵を蒙ることができる。例えばいくつかの実施形態において印刷されたプレートタイプ標識28が特定の蛍光インクで印刷されているため、走査する際に標識が発する光の波長によりはっきりと識別することができる。さらにプレートタイプ標識28は動作用の生物スキャナ10を解除するための暗号化キーを担持する、より複雑なパターンの形状を取り得る。この場合生物スキャナ10内のプロセッサ34(図6)はパターンの暗合解読を行って画像処理を進行し得る。
【0039】
図5A〜5Dの例において、プレートタイプ標識28は明暗いずれかである4つの四分の一区分29、31、33、35を有する4つの四角形パターンの形状を取り、容易な光学処理を可能にする。図5Aにおいてプレートタイプ標識28は4つの明るい四分の一区分を有し、第1のタイプの生物成長プレート22を識別し得る。図5B、5Cおよび5Dにおいて、プレートタイプ標識28はそれぞれ、1つの黒い四分の一区分、2つの黒い四分の一区分、および4つの黒い四分の一区分を含んでいる。黒い四分の一区分の数および位置の選択は16(24)までの異なる暗号化パターンを形成し、従って16までの異なるプレートタイプを機械可読プレートタイプ標識28によって識別可能にする。例として異なる暗号化パターンは好気性数、大腸菌型、大腸菌、腸内細菌科、酵母菌、糸状菌および他のプレートタイプ名称を表わすこともできる。
【0040】
プレートタイプ標識28の形状は多様であり得るが、図5A〜5Dに示した4つの四角形パターンは比較的単純且つ光学パターン認証技術、すなわちマシンビジョンを利用して識別容易な1つのタイプのパターンを提供する。説明するように、バーコード読取装置またはカスタム読取装置などの専用の光学コード読取装置によりプレートタイプ標識28を走査し得る。この場合プレートタイプ標識28の走査は、成長プレート画像の処理前以外に生物成長プレート22の走査に先立ってまたは平行して行うことができる。代替的にはプレートタイプ標識28を生物成長プレート22の走査画像に取り込み、その後画像処理のために抽出してプレートタイプを識別し得る。この場合走査した成長プレート画像をさらに画像処理する前にプレートタイプを識別することができる。
【0041】
図6は生物スキャナ10の内部動作を図示するブロック図である。図6に図示するように、生物成長プレート22は台(図6では図示せず)上の生物スキャナ10の内部に配置されている。台は生物成長プレート22を撮像装置32の所望の焦点面に配置する。撮像装置32は成長プレート22の上面および背面照明用の照明ハードウェア、および成長プレート22の表面の画像を取り込むラインまたはエリアスキャナを含み得る。撮像装置32が標準画像取込条件を適用するか、またはユーザが画像取込条件を指定し得る。代替的には以下に説明するようにスキャナ10は、プレートタイプに対応する画像処理プロファイルに基づいて自動的に画像取込条件を制御し得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、例えば撮像装置32は二次元カメラの形状を取り得るが、ラインスキャナはカメラまたは生物成長プレート22のいずれかが他に対して並進される構成で使用できる。一般に撮像装置32は生物成長プレート22または少なくとも生物成長プレート内の成長領域の画像を取り込む。プロセッサ34は撮像装置32の動作を制御する。動作中、プロセッサ34は撮像装置32を制御して生物成長プレート22の画像を取り込む。プロセッサ34は撮像装置32から走査画像を表わす画像データを受け取るとともに、画像の一部分を抽出または分離してプレートタイプ標識28を隔離する。
【0043】
プロセッサ34はマシンビジョン技術を利用してプレートタイプ標識28を分析し、生物成長プレート22に関連するプレートタイプを識別する。そしてプロセッサ34は画像処理プロファイルメモリ36から画像処理プロファイルを検索する。画像処理プロファイルは検出されたプレートタイプに対応している。プロセッサ34はマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、アプリケーション特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)または本明細書に記載されているような機能性を提供するようにプログラムまたは構成された他の集積または個別論理回路の形状を取り得る。
【0044】
プロセッサ34は画像処理プロファイルを利用して適正な画像分析パラメータを読み込むとともに生物成長プレート22の走査画像を処理するように進行する。このようにプロセッサ34は生物成長プレート22から得られた画像データを処理するという意味で画像処理装置をなす。画像分析パラメータは画像処理プロファイルおよび検出されたプレートタイプとともに変化して、走査画像の分析に対してコロニーの色、サイズ、形状および近接基準などの特定のパラメータを指定し得る。
【0045】
いくつかのプレートタイプの場合、例えば周囲の栄養培地の色は高コロニー数の標識であり得る。また特定の炭水化物およびpH指示薬を含むプレートの場合、色は有機体のタイプの標識になり得る。気泡などの隣接物体も有機体のタイプの標識になり得る。従って様々な画像処理基準および関連するパラメータを様々なプレートタイプに対して指定し得る。基準は被分析プレート22のタイプにより異なるとともに、生物スキャナ10により生成されるコロニー数または他の分析結果に大きく影響し得る。
【0046】
適切な画像処理パラメータを選択すると、プロセッサ34は走査画像を処理するとともに、ディスプレイ16を介してユーザに提示されるコロニー数などの分析結果を生成する。またプロセッサ34は後にスキャナ10から検策するために、分析結果をカウントデータメモリ38などのメモリに記憶する。カウントデータメモリ38に記憶されたデータは例えば通信ポート40、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ポートを介して生物スキャナ10と通信しているホストコンピュータによって検索し得る。ホストコンピュータは、分析のために生物スキャナ10に提示される一連の生物成長プレート22に対する分析結果をコンパイルし得る。
【0047】
生物スキャナ10内の画像処理プロファイルの自動選択は、適当な画像処理プロファイルを選択するための便利で精度の高い技術を提供することができる。画像処理プロファイルの自動選択は細菌コロニー計数および他の分析手順の精度を向上させることができる。特に自動画像処理プロファイル選択により技術者がプレートタイプを目視で識別して手動で入力する必要性をなくすことができる。このようにして人間の介入に関連する場合もあるプレート識別エラーをなくすことができる。その結果、スキャナ10とプレートタイプ標識28を担持する生物成長プレート22とを組み合わせると、効率および実験技術者の作業フローを向上させることができる一方、分析精度、そして最終的には食品安全性および人間の健康を高めることができる。
【0048】
図7は自動画像処理プロファイル選択のために構成された他の生物スキャナ10’を図示するブロック図である。生物スキャナ10’は図6の生物スキャナ10と実質的に一致するが、コード読取装置42をさらに含んでいる。生物成長プレート22の走査画像からプレートタイプ標識28を抽出する代わりに、コード読取装置42はプレートタイプ情報を得る専用の読取装置として機能する。例えばプレートタイプ標識28の形状によって、コード読取装置42は専用の光学読取装置、バーコード読取装置、磁気読取装置、無線または機械的読取装置の形状を取り得る。
【0049】
いずれの場合もコード読取装置42はプレートタイプ標識28からプレートタイプを識別するとともにプレートタイプをプロセッサ34に伝達する働きをする。そしてプロセッサ34は識別したプレートタイプに基づいてメモリ36から画像処理プロファイルを選択する。撮像装置32は生物成長プレート22を走査して画像データをプロセッサ34に提供する。そしてプロセッサ34は検索した画像処理プロファイルにより指定された画像処理パラメータを適用して画像を処理するとともにコロニー数などの分析結果を生成する。このようにプロセッサ34は自動識別プレートタイプの点で自動的に適正な画像処理プロファイルを適用することにより、ユーザに対して向上した精度、効率および便利さを提供する。具体的にはこのような実施形態において本発明はユーザがプレートタイプ識別を手で入力する必要性をなくすとともに、人間の間違った入力による分析エラーの可能性を低減する。
【0050】
図8は図6の生物スキャナ10をより詳細に図示するとともにプレート照明ハードウェアを示すブロック図である。図8に示すように生物スキャナ10は前面照明システム44と、背面照明システム46と、を含み得る。前面照明システム44は生物成長プレート22の前面側を照明し、背面照明システム46は生物成長プレートの背面側を照明する。前面および下面照明システム44および46は選択的に異なる照明強度、色および継続時間を生じ得る。具体的にはプロセッサ34は前面および下面照明システム44、46を制御して生物成長プレート22を異なる照明色に露光する。前面および背面照明システム44、46は照明源としてLEDを内蔵し得る。LEDはプロセッサ34および適当な駆動回路により容易に制御されて所望の照明強度と継続時間とを達成できる。
【0051】
さらにプロセッサ34はカメラ43を制御して異なる色での照明中に生物成長プレート22の画像を取り込み得る。例えばプロセッサ34は照明システム44、46およびカメラ43を協調制御して生物成長プレート22の1つ以上の画像を取り込む。カメラ43は前面照明システム44、背面照明システム46または両方による照明中に生物成長プレート22の1つ以上の画像を取り込むとともに、その画像を画像メモリ47に記憶し得る。場合によってプロセッサ34は画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件に応じてカメラ利得、解像度、アパーチャ、露光時間等を制御し得る。
【0052】
プロセッサ34は記憶された画像を用いて画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準に従って画像分析を行う。具体的にはプロセッサ34はその後個々の画像を分析するか、多数の画像を組み合わせて複合画像を形成する。いくつかの実施形態において例えばプロセッサ34は照明システム44、46を制御して、生物成長プレート22の赤色、緑色、および青色の画像を取り込むとともに、画像を個別にまたは複合多色画像として分析する。
【0053】
生物成長プレート22のタイプによっては特定の色、強度および継続時間の照明を必要とする場合がある。さらに生物成長プレート22によっては両方ではなく前面または背面照明しか必要としない場合がある。例えば好気性細菌数プレートは前面照明のみ且つ赤色などの単一色のみによる照明を必要とする。また大腸菌/大腸菌型プレートは背面照明のみ且つ赤色と青色照明の組み合わせを必要とする。同様に異なるカメラ利得、解像度、アパーチャ、および露光時間はもとより、特定の強度レベルおよび継続時間が適正であり得る。これらの理由でプロセッサ34は画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件に応じて照明およびカメラ条件を制御し得る。換言すればプレートタイプに基づく画像分析基準だけでなく画像を取り込むために適用される画像取込条件を選択するようにスキャナ10を構成することができる。
【0054】
照明の前にプレートタイプの識別を可能にするため、スキャナ10は図6および7に関して説明したものと同様な技術を適用し得る。図7に関して説明したように、例えば専用コード読取装置を設けて画像取込のための照明の前にプレートタイプを識別する。専用読取装置を用いてプレートタイプを識別すると、プロセッサ34は画像処理プロファイルメモリ36から対応する画像処理プロファイルを選択して、画像処理プロファイルにおいて指定された画像取込条件に従って照明を制御する。
【0055】
代替的には図6に関して説明したようにマシンビジョン技術を適用して取込画像からプレートタイプを識別するようにスキャナ10を構成し得る。この場合プレートタイプ標識28を分析してプレートタイプ識別するため、スキャナ10は一組のデフォルト照明条件を適用して生物成長プレート22またはその一部の初期画像を取り込む。その後プロセッサ34は対応する画像処理プロファイルを選択するとともに、指定された画像取込条件を適用して生物成長の分析用画像を取り込む。
【0056】
画像処理プロファイルを照明条件、画像分析基準またはその両方を指定するものとして本明細書に概説する。しかし個々のプロファイルを画像取込および画像分析に用いることもできる。例えばプレートタイプ識別に続いて、プロセッサ34は照明色、強度および継続時間などの画像取込条件を指定する画像取込プロファイルにアクセスし得る。その後取込画像の分析のため、プロセッサ34は色、形状、サイズおよび近接などの画像分析基準を指定する個々の画像分析プロファイルにアクセスし得る。
【0057】
図6〜8の例はプレートタイプに基づく画像処理プロファイルの自動選択を示しているが、この選択はいくつかの実施形態において半自動になり得る。具体的にはプレートタイプ標識28によりプレートタイプを検出すると、プロセッサ34はディスプレイ16を介して事前プレートタイプ識別をユーザに提示し得る。さらにプロセッサ34は、対応画像処理プロファイルを用いて画像取込または分析が進行する前に自動的に識別されたプレートタイプをユーザが確認または拒絶することを可能にし得る。ユーザは例えばポインティングデバイスを作動させるかまたはタッチスクリーンの領域を押圧することにより事前プレートタイプ識別を確認または拒絶し得る。ユーザが自動検出プレートタイプ識別がエラーであると思う場合には、プロセッサ34はユーザがプレートタイプ識別を変更することを可能にし得る。
【0058】
図9はプレートタイプ検出時に生物スキャナ10によりディスプレイ16上に生成されるサンプル表示内容である。図9に示すように、ディスプレイ16は事前プレートタイプ識別、すなわちプロセッサ34により自動的に作成されたプレートタイプ識別を提示する。図9の例において、ディスプレイ16は「プレートタイプ=リステリア」を示している。さらにディスプレイ16は、それぞれユーザ入力を受け付けて事前プレートタイプ識別がユーザにより確認されたか拒絶されたかを示す2つのタッチスクリーン領域52、54を提示する。
【0059】
図10はユーザによる自動プレートタイプ検出の拒絶時に生物スキャナ10のディスプレイ16により生成されるサンプル表示内容である。例えば図9に示すようにユーザが事前プレートタイプ識別を拒絶した場合、プロセッサ34はディスプレイ16を駆動して「プレートタイプを入力する」のダイアログを提示し、それによりユーザは図10に示すように正しいプレートタイプ識別を選択し得る。ディスプレイ16は、ユーザが代替プレートタイプ識別を例えば適当なタッチスクリーン領域を押下することにより選択できるようにする垂直スクロールバーメニュー56を提示し得る。代替プレートタイプ識別を選択すると、プロセッサ34は例えば画像取込条件、画像分析基準または両方を含む代替画像処理プロファイルを選択し得る。
【0060】
図11はコロニー数の判定時に生物スキャナ10のディスプレイ16により生成されるサンプル内容である。図11に示すように、プロセッサ34はディスプレイ16を駆動して「プレート走査完了」メッセージを提示するとともにプレートタイプを識別し得る(「プレートタイプ=リステリア」)。さらに生物成長プレート22の分析が完了すると、プロセッサ34はディスプレイ16を駆動して計数58(「計数=XX」)を提示する。ディスプレイ16は他のタイプの分析結果も提示し得る。
【0061】
図12はコロニー数の判定時に生物スキャナ10のディスプレイ16により生成されるサンプル内容であり走査されたプレートの画像を含む。図12の例においてディスプレイ16は図11に示したものと同様の情報を提示するが、生物成長プレート22の表面から生物スキャナ10によって走査された実際の画像の表示60をさらに含む。このようにユーザは計数58などの分析結果と走査画像の表示60との両方を見ることができる。いくつかの実施形態において画像表示60は十分な量の詳細を提示するためユーザは自動判定計数を確かめることができる。他の実施形態において画像表示60は低解像表示であり得る。
【0062】
図13は生物スキャナ10における画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。図13に示すように、このプロセスはスキャナ10に提示される生物成長プレート22に対してプレートタイプを識別するステップ(62)を含み得る。このプロセスはプレート画像を走査する(66)前または後いずれかに、プレートタイプに基づく画像処理プロファイルの選択(64)をさらに含み得る。画像処理プロファイルが画像取込条件を指定する場合には、照明条件、カメラ性能またはその両方を制御できるように画像処理プロファイルをプレート画像の走査前に選択しなければならない。プロセスは選択した画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準を用いて、プレート画像を処理して分析結果を生成するステップ(68)をさらに含む。具体的にはプロセスは細菌コロニー数を生成(70)し得る。図13の例において、プレートタイプはプレート画像を走査する前に識別される。
【0063】
図14はプレートタイプ標識の検出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。図14に示すようにこのプロセスは生物成長プレートにより担持されているプレートタイプ標識を、たとえば光学読取装置、バーコード読取装置、磁気読取装置、無線読取装置、機械的読取装置等などの専用のプレートタイプ標識読取装置で読み取るステップ(72)を含む。プレートタイプ標識に基づいてプレートタイプを判定すると(74)、プロセスは検出されたプレートタイプに基づいて画像処理プロファイルを選択するステップ(76)を含む。さらにプロセスは生物成長プレートの画像を走査するステップ(78)と、選択した画像処理プロファイルによって指定されたパラメータに従ってプレート画像を処理するステップ(80)と、を含む。プロセスはその後コロニー数などの分析結果を生成する(81)。
【0064】
図15は走査されたプレート画像からのプレートタイプ標識の抽出を含む、生物スキャナにおける画像処理プロファイル選択のためのプロセスを図示するフロー図である。図15に示すように、プロセスは生物成長プレートの画像を走査するステップ(82)と、走査画像からプレートタイプ標識エリアを抽出するステップ(84)と、を含む。プロセスは抽出したプレートタイプ標識エリアを処理して(86)、プレートタイプを判定するステップ(88)をさらに含む。プレートタイプ標識に基づいてプレートタイプを判定する(88)と、プロセスは検出されたプレートタイプに基づいて画像処理プロファイルを選択するステップ(90)を含む。その後プロセスはプレートを例えば選択した画像処理プロファイルにより指定された画像取込条件を用いて再度走査するステップ(91)と、選択した画像処理プロファイルにより指定された画像分析基準に従ってプレート画像を処理するステップ(92)と、を含む。その後プロセスはコロニー数などの分析結果を生成する(94)。
【0065】
図16はユーザが生物スキャナによる自動プレートタイプ識別を無効にできるようにするプロセスを図示するフロー図である。図16に示すように、プロセスは生物成長プレート22に関連するプレートタイプを自動的に判定するステップ(96)と、判定したプレートタイプをディスプレイ16を介してユーザに提示するステップ(98)と、を含む。プロセスは自動的に判定したプレートタイプを受容または拒絶するユーザ入力を、例えばタッチスクリーン入力を介して受け付けるステップ(100)をさらに含む。プレートタイプがユーザに受容されない場合には、プロセスはユーザ入力を受け付けユーザからプレートタイプを受け取るステップ(102)を含む。ユーザがプレートタイプを入力する(102)かまたは自動判定プレートタイプを受容する(100)と、プロセスはプレートタイプに基づく画像処理プロファイルの選択(104)を含む。選択した画像処理プロファイルを用いて、プロセスはプレート画像を走査し(105)、プレート画像を処理し(106)、さらにコロニー数または他の所望分析結果を生成する(108)。
【0066】
動作中、プロセッサ34はコンピュータ読取可能媒体に記憶され得る命令を実行して、本明細書に記載されたプロセスを行う。コンピュータ読取可能媒体は、同時性ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ(FLASH)メモリ、磁気または光学データ記憶媒体等を含み得る。
【0067】
本発明の精神と範囲とから逸脱することなく様々な変更を行うことができる。これらおよび他の実施形態は以下の請求の範囲の範囲内にあるものである
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌、酵母菌又は糸状菌の成長を容易にするプレート表面と、生物成長プレート(22)のプレートタイプを識別する機械可読プレートタイプ標識とを含み、前記プレートタイプが、好気性細菌プレート、大腸菌プレート、大腸菌型プレート、腸内細菌科プレート、酵母菌プレート、糸状菌プレート、黄色ブドウ球菌プレート、リステリアプレート、およびカンピロバクタープレートからなる群から選択される、少なくとも1つの生物成長プレート(22)と、
生物成長プレート(22)を受け取り、前記プレートタイプに基づいて生物成長プレート(22)の自動処理を行う生物読取装置(10)と、
を含むシステムであって、該生物読取装置(10)が、
前記プレートタイプ標識に基づいて前記プレートタイプを検出する検出器(42;32)と、
画像処理プロファイルを記憶するメモリ(36)であって、該画像処理プロファイルが、特定のタイプの生物成長プレート(22)に関連する生物コロニーを計数する方法を規定する特定の画像分析基準を指定するメモリ(36)と、
前記生物成長プレート(22)の1つ以上の画像を生成する撮像装置(32;43)と、
検出された前記生物成長プレート(22)に関連するプレートタイプに基づいて前記画像処理プロファイルのうちの1つを選択し、前記生物成長プレートについてのコロニー数を生成するために前記1つ以上の画像に選択された前記画像処理プロファイルのうちの1つの前記画像分析基準を適用する画像処理装置(34)と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記画像分析基準が色、形状、サイズおよび近接基準を指定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
選択された前記画像処理プロファイルが前記画像分析基準および1つ以上の画像取込条件を指定し、前記撮像装置が、前記生物成長プレートの1つ以上の画像を生成する際に前記1つ以上の画像取込条件を適用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項1】
細菌、酵母菌又は糸状菌の成長を容易にするプレート表面と、生物成長プレート(22)のプレートタイプを識別する機械可読プレートタイプ標識とを含み、前記プレートタイプが、好気性細菌プレート、大腸菌プレート、大腸菌型プレート、腸内細菌科プレート、酵母菌プレート、糸状菌プレート、黄色ブドウ球菌プレート、リステリアプレート、およびカンピロバクタープレートからなる群から選択される、少なくとも1つの生物成長プレート(22)と、
生物成長プレート(22)を受け取り、前記プレートタイプに基づいて生物成長プレート(22)の自動処理を行う生物読取装置(10)と、
を含むシステムであって、該生物読取装置(10)が、
前記プレートタイプ標識に基づいて前記プレートタイプを検出する検出器(42;32)と、
画像処理プロファイルを記憶するメモリ(36)であって、該画像処理プロファイルが、特定のタイプの生物成長プレート(22)に関連する生物コロニーを計数する方法を規定する特定の画像分析基準を指定するメモリ(36)と、
前記生物成長プレート(22)の1つ以上の画像を生成する撮像装置(32;43)と、
検出された前記生物成長プレート(22)に関連するプレートタイプに基づいて前記画像処理プロファイルのうちの1つを選択し、前記生物成長プレートについてのコロニー数を生成するために前記1つ以上の画像に選択された前記画像処理プロファイルのうちの1つの前記画像分析基準を適用する画像処理装置(34)と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記画像分析基準が色、形状、サイズおよび近接基準を指定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
選択された前記画像処理プロファイルが前記画像分析基準および1つ以上の画像取込条件を指定し、前記撮像装置が、前記生物成長プレートの1つ以上の画像を生成する際に前記1つ以上の画像取込条件を適用する、請求項1に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−227118(P2010−227118A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156333(P2010−156333)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2004−557258(P2004−557258)の分割
【原出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2004−557258(P2004−557258)の分割
【原出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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