説明

自動発光分析システムの使用方法

【課題】試料を数個の磁石中に通過させなくとも分離プロセスが完了される磁気分離技法を提供すること。
【解決手段】
本発明の実施形態は、患者試料を自動的に分析するための臨床計測器分析システムに関する。一実施形態において、この分析器を使用して、体液試料、例えば、血液、血漿、血清、尿又は脳脊髄液が分析され得る。本発明の実施形態は、標的分子を磁界中で分離して取り出し、次にそれらの標的分子を発光測定装置で分析するための装置及び方法、例えば免疫測定法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床計測器分析システムに関し、具体的には、磁性粒子洗浄ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
分離、単離、及び濃縮は、化学分析に共通する処理ステップである。多くの場合に、これらのステップは、妨害物質を除去して続く化学分析を実施できるようにするために行われる。この分離過程は、溶媒抽出、溶媒蒸発、及び樹脂交換を含むいくつかの方法で実施することができる。妨害物質を除去するための別の技法である磁気分離は、分離し、単離し、及び濃縮する処理であり、そこでは求められている物質が磁性粒子に付着又は結合する。磁性粒子は、速さ、利便性、及び低いエネルギー入力を含む操作上の利点を提供する。磁性粒子の使用は、少量の試料の操作に特に好適である。
【0003】
これまでの磁気分離技法は、試料物質を一連の磁石中に通すことを含んでいる。この技法は、効果的ではあるが、煩雑で、機械故障が起こり易い。加えて、分離プロセス中、試料は一連の磁石の中を通って動くため、試料を完全には密閉できず、試料を取り囲む環境の制御が困難である。従って、一連の磁石をなくし、試料を数個の磁石中に通過させなくとも分離プロセスが完了される磁気分離技法を提供することが望ましいといえる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の、及び他の必要性に応え、本教示は、バイアル中の磁性粒子を操作するための装置に関し、これは、1本又は複数のピペットと、磁性粒子の入ったバイアルを保持するための支持部材と、バイアル中の磁性粒子を単離するための磁石アレイとを備える。ある実施形態において、磁石アレイは、上部水平面を有する第1の磁石であって、そのN極が支持部材に配置されたバイアルと向かい合うように配置される第1の磁石と、上部水平面を有するスペーサであって、第1の磁石の上部水平面上に配置されるスペーサと、上部水平面を有する第2の磁石であって、スペーサの上部水平面上に配置され、そのN極がバイアルと向かい合うように配置される第2の磁石と、第2の磁石の上部水平面上に配置される第3の磁石であって、そのS極がバイアルと向かい合うように配置される第3の磁石とを備え、前記磁石アレイは、バイアル中の磁性粒子を操作するための磁界を生成する。
【0005】
一実施形態において、スペーサは、以下の材料、すなわち、アルミニウム、炭素繊維、ポリマー、他の非磁性材料、及びこれらの組み合わせのいずれかで製造される。一実施形態において、磁石アレイは固定位置にある。別の実施形態において、磁石アレイは可動式である。ある実施形態において、磁石アレイは、典型的にはネオジムとして知られるネオジム−鉄−ホウ素(Nd−Fe−B)、サマリウム−コバルト(Sm−Co)、アルニコ、又はハードフェライト(セラミック)を含む材料を備える。一実施形態において、本システムは、さらに以下のもの、すなわち、湿度検出器、湿度調節器、スプリング指、湿度調節式バイアルチャンバ、温度調節器、吸引ピペット、又は注入ピペットのなかのいずれか1つを備える。ある実施形態において、湿度及び/又は温度は調節される。ある実施形態において、磁石アレイのバイアル支持部材との比は1:1である。特定の実施形態において、第1の磁石及び第2の磁石の水平面は、これらの磁石の垂直面より大きい。ある実施形態において、第1の磁石及び第2の磁石のS極がバイアルと向かい合い、且つ第3の磁石のN極がバイアルと向かい合う。
【0006】
本教示の別の実施形態は、バイアル中の磁性粒子を洗浄するための磁気洗浄モジュールに関し、これは、1本又は複数のピペットと、1つ又は複数の磁石と、支持部材と、磁気洗浄モジュール内の湿度を測定するための湿度検出器とを備える。
【0007】
本教示の別の態様は、診断分析における磁性粒子の凝集を緩和するための方法に関し、これは、1本又は複数のピペットと、1つ又は複数の磁石と、バイアルチャンバとを備える磁気洗浄モジュールを提供することと;磁性粒子の入ったバイアルを磁気洗浄モジュールのバイアルチャンバに導入することと;バイアルチャンバの湿度を緩和して所定の相対湿度を提供することとを含む。一実施形態において、湿度は、バイアルへの流体の注入速度を制御することによって調節される。別の実施形態において、湿度は、吸引速度を制御することによって調節される。別の実施形態において、磁気洗浄モジュールは湿度検出器をさらに備える。
【0008】
別の実施形態は、バイアル中の磁性粒子を洗浄するための磁気洗浄モジュールに関し、これは、1本又は複数のピペットと、1つ又は複数の磁石と、湿度検出器とを備える。
【0009】
別の実施形態は、発光分析方法に関し、ここで試料バイアルは、患者の試料と、試料中の標的分子に結合する磁性粒子とを含み、本方法は、試料バイアルを磁気洗浄モジュールに搬送することと、標的構成成分及び磁性粒子の入った試料バイアルに、磁気アレイによって試料バイアルの1つの壁を通じて磁界を印加することと、試料バイアル内で洗浄液を注入及び吸引して磁性粒子を洗浄することと、試料バイアルを磁気洗浄モジュールから発光測定装置に搬送することとを含む。
【0010】
本発明のこれらの実施形態及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面から容易に明らかとなるであろう。それらは例示であり、本発明を限定する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の例示的実施形態に係る臨床計測器分析システムの上面図である。
【図2】本発明の例示的実施形態に係る磁気洗浄モジュールの斜視図である。
【図3】本発明の例示的実施形態に係る磁気洗浄モジュールのバイアル装置にあるバイアルの斜視図である。
【図4】本発明の例示的実施形態に係る磁石洗浄ステーションに固定されたバイアルを図示したものである。
【図5】本発明の例示的実施形態に係る磁石の一構成を図示したものである。
【図6】本発明の例示的実施形態に係る磁石の別の構成を図示したものである。
【図7】本発明の例示的実施形態に係る2個の磁石構成を図示したものである。
【図8】本発明の例示的実施形態に係る磁気洗浄プロセス中の磁石ステーションにあるバイアルを図示したものである。
【図9】本発明の例示的実施形態に係る、バイアルに回収された磁性粒子ペレットを図示したものである。
【図10】本発明の例示的実施形態に係る、バイアルに回収された磁性粒子ペレットを図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、添付の図面と併せて読まれるべき以下の説明を通じてより完全に理解されるであろう。この説明では、同様の符号は、本発明の様々な実施形態の中の同様の要素を指す。この説明においては、特許請求される本発明が実施形態に関連して説明されることになる。当業者は、本明細書に記載される方法及びシステムがあくまでも例示に過ぎず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく変更を加え得ることを容易に理解するであろう。
【0013】
本発明の実施形態は、患者試料を自動的に分析するための臨床計測器分析システムに関する。一実施形態において、この分析器を使用して、体液試料、例えば、血液、血漿、血清、尿又は脳脊髄液が分析され得る。本発明の実施形態は、磁界中で標的分子を分離して取り出し、次にそれらの標的分子を発光測定装置で分析するための装置及び方法、例えば免疫測定法に関する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る臨床計測器分析システムの上面図である。例示される臨床計測器分析システム20は、バイアル46に入った患者試料を処理及び分析するための1つ又は複数のステーション又はモジュールを含む。バイアル46は、試料を保持するのに好適なキュベット、管又は任意の他の容器であり得る(図1には図示せず)。バイアル46は、キュベット、試験管、又は試料を保持するための任意の他の容器であり得る。一実施形態において、臨床計測器分析システム20は、少なくとも以下のもの、すなわち、バイアルローダ22と、試料ステーション(図示せず)と、試薬ステーション(図示せず)と、カルーセル28と、磁気洗浄モジュール30と、複数のピペット24と、発光測定装置32と、湿度調節器(図示せず)と、試料バイアル46を培養するための加熱器又は温度調節器(図示せず)とを含む。
【0015】
一実施形態において、バイアルローダ22は複数のバイアル46を保持する。バイアルローダ22は、例えば、同時出願の「Apparatus and Methods for Dispensing Sample Holders」と題される米国特許出願(代理人整理番号第INL−098号)に記載されるとおり、バイアル46をカルーセル28に装填する。ある実施形態において、バイアルローダ22は、バイアル46の積層列を保持するための垂直方向のスロットを有する回転可能なバイアルローダカルーセルを備える。バイアル46はスリーブ内に積み重ねられ、そのスリーブはバイアルローダ22に挿入され得る。バイアルローダ22は、スリーブからバイアル46を追い出してカルーセル28に装填する。
【0016】
引き続き図1を参照すると、一実施形態において、カルーセル28は複数のバイアル46を保持し、それらを臨床計測器分析システム20内の様々なステーション又はモジュールに配給する。例示的カルーセル28は付属のモータによって回転し、カルーセル28に近接する複数の分析ステーションのいずれか1つに向かう。一実施形態では、移送アーム(図示せず)が、バイアル46をカルーセル28から臨床計測器分析システム20の様々な分析ステーションに移す。
【0017】
複数の分析ステーションとしては、例えば、試薬ステーション(図示せず)、磁気洗浄モジュール30、試料添加ステーション(図示せず)及びインキュベーションステーション(図示せず)が挙げられる。試料を処理するための他のステーションもまた利用することができ、本発明はこれらのステーションに限定されるものではない。
【0018】
試料は、試料添加ステーションでバイアル46に導入される。次に、一実施形態において、試薬ステーション(図示せず)が所要の試薬をバイアル46に添加し、そのバイアル46上で所望の分析が実施され得る。
【0019】
一実施形態において、試薬ステーションは複数の試薬容器を含む。試薬容器には1種又は複数の試薬が入っており、この試薬は試薬容器からバイアル46に注入され得る。試料に関して行われる分析、及びどの標的分子が分析されるかに応じて、試薬ステーションは、リンス液、試料物質に対する抗体、ルミノゲン(luminogen)を含有するマーカー物質、及び/又は磁化可能な担体粒子のうち1つ又は複数を提供し得る。一実施形態において、マーカー物質は、試料中の標的分子に対する特異的抗体に付着する。ある実施形態において、磁化可能な担体粒子(磁性粒子)は、鉄又は任意の他の磁性材料若しくは磁化可能材料で作製される。特定の実施形態において、磁化可能粒子は常磁性である。磁化可能粒子は、例えば、約0.5〜6.0μm、好ましくは、例えば、0.9〜1.3μm、2.6〜3.0μm又は4.5〜5.0μmの範囲の粒径を有し得る。さらに別の実施形態において、磁化可能粒子の外側は、標的分子に対する特異的抗体を含有するラテックス層で被膜される。磁性粒子に付着した抗体及びマーカー物質に付着した抗体は、免疫化学反応により標的分子を認識し、それらと結合する。結果として、磁性粒子と、マーカーと、標的分子との特異的複合体が形成される。こうした特異的複合体は、次に発光測定装置で検査され得る。
【0020】
本発明の一実施形態に係る臨床計測器分析システム20は、図1に示されるとおり複数のピペット24を含む。一実施形態において、1本又は複数のピペット24が、例えば、試料液、試薬、水、又は洗浄液を含む流体を、例えば、試薬容器とバイアル46との間、試料容器とバイアル46との間、洗浄液容器とバイアル46との間で、又はバイアル46から使用済み洗浄液用の洗浄液入れに移し替える。
【0021】
引き続き図1を参照すると、発光測定装置32は、発光、例えば、特異的複合体中の発光マーカーの発光を測定する任意の機器であり得る。発光の強度が、流体試料中の標的分子の存在又は不在の指標として機能する。発光放射はバイアル46を通り抜け、例えば、発光測定装置32の光検出器によって検出することができる。測定結果が歪曲されることのないよう、試料分子に結合していない遊離ルミノゲンは、発光測定前に除去される。一実施形態において、結合しなかったルミノゲンは、以下に記載されるとおりの磁気洗浄ステーションにおける一連の洗浄サイクルを通じて除去される。試料について発光が測定されると、標的分子の濃度についての較正関係及び較正測定値を考慮に入れて発光の強度が評価される。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係る磁気洗浄モジュール30の斜視図である。例示的磁気洗浄モジュール30は、以下のもの、すなわち、基台38と、1つ又は複数の磁石ステーション35、例えば、8個の磁石ステーションと、1つ又は複数の支持部材42を含むバイアル装置41とを含む。本発明の一実施形態に従えば、各磁石ステーション35は、磁石アレイ34と、磁石ホルダ36と、スプリング指40とを備える。磁気洗浄モジュール30当たりのステーション35の数は例示される数に限定されず、任意の数であってよい。例えば、2、3、4、5、6、8個又はそれ以上の磁石ステーション35が、磁気洗浄モジュール30に配置され得る(図示せず)。
【0023】
引き続き図2を参照すると、例示的磁石ホルダ36は磁石アレイ34を保持する。磁石ステーション35の磁石ホルダ36は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、他の金属、プラスチック、又はセラミックで作製され得る。一実施形態において、磁石ホルダ36はL字形状であり、磁石アレイ34はLの垂直部分の内表面に固着される。
【0024】
引き続き図2を参照すると、磁石ステーション35の基台38は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、他の金属、プラスチック、又はセラミックで作製され得る。磁石ステーション35は、基台38に取り外し可能に取り付けられてもよく、又は磁石ステーション35は基台38に固定されてもよい。
【0025】
引き続き図2を参照すると、スプリング指40は、磁石ホルダ36のLの水平部分の端部に、スプリング機構(図示せず)を介して取り付けられ得る。スプリング機構により、磁石ホルダ36はバイアル46を磁石アレイ34に対して固定的に保持することができる。一実施形態において、スプリング指40はプラスチックで構成されるが、その組成はプラスチックに限定されず、任意のポリマー、セラミック、又は金属を含み得る。別の実施形態において、スプリング指40は磁石アレイ34に向かって付勢される。バイアル46が磁石ホルダ35に導入されると、スプリング指40は磁石アレイ34から離れるように動き、バイアル46を受け入れる。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る、磁気洗浄モジュール30のバイアル装置41にあるバイアル46の斜視図である。バイアル装置41は、チャンファ47を有する支持部材42と、1本又は複数の吸引ピペット44と、バイアルカバー48と、1つ又は複数のスペーサ50と、注入プレート52と、1本又は複数の注入ピペット54とを含む。バイアル装置41は、磁石ステーション35の上方に配置される。例示的バイアル装置41は、移送アーム(図示せず)を介してバイアル46をカルーセル28から受け取る。
【0027】
引き続き図3を参照すると、一実施形態において、支持部材42は、バイアル46が磁気洗浄ステーション30で処理される間に、バイアル46を所定位置に保持する。支持部材42は、バイアルが収まるサイズ及び形状とされる。例えば、バイアル支持部材42は、形状が矩形、正方形、円形、又は半円形であってもよく、同じような、又は類似した形状のバイアル46を受け入れる入口45を有する。支持部材42は、例えば、プラスチック、セラミック又は金属からなり得る。バイアル46は、例えば、支持部材42の入口45にあるチャンファ47、すなわち細い溝又はチャンネルによって、支持部材42の適所まで案内され得る。移送アーム(図示せず)は、それがバイアル46を使用可能な各支持部材42に送り込んだことを、例えば近接センサを使用して確認する。一実施形態において、支持部材42の数は、支持部材42にあるバイアル46と磁石ステーション35との比が1対1となるような数である。
【0028】
引き続き図3を参照すると、各バイアル46は、吸引ピペット44及び注入ピペット54の下に置かれ得る。吸引ピペット44は、例えば、過剰な、又は残留しているガス、空気、及び/又は流体をバイアル46から移し替える。注入ピペット54は、例えば、液体洗浄溶液をバイアル46に供給する。一実施形態において、吸引ピペット44及び注入ピペット54の双方は注入プレート52を貫通してバイアル46に至る。一実施形態において、吸引ピペット44及び注入ピペット54は、磁気洗浄プロセスの間、磁性粒子を湿潤状態に保つのを補助する。一連の洗浄及び吸引により、例えば、磁性粒子に薄い液層が堆積され、磁性粒子及び特異的複合体が凝集して乾燥することが防止される。ある実施形態では、支持部材42と注入プレート52との間にプレートスペーサ50が位置する。プレートスペーサ50及び注入プレート52は、例えば、プラスチック、セラミック、又は金属からなり得る。
【0029】
戻って図2を参照すると、基台38上のバイアル装置41及び磁石ステーション35は各々、バイアル46を磁石ステーション35に係合するため、他方に対して動くことができる。一実施形態では、基台38は、磁気アレイ34を含めて固定され、バイアル装置41が基台38に対して、例えば下方に動く。別の実施形態では、バイアル装置41が固定され、磁気アレイ34を含む基台38がバイアル装置41のバイアル46に対し、例えば上方に動く。基台38は、例えば、バイアル装置41に対し、第1の位置と第2の位置との間を動き得る。第1の位置は、磁石ステーション35とバイアル装置41とが所定の距離だけ隔てられている位置であり得る。第2の位置は、磁石ステーション35がバイアル装置41に十分に近づいたことで、磁石ステーション35がバイアル装置41のバイアル46と係合することができる位置であり得る。さらに別の実施形態では、バイアル装置41及び基台38の双方が動く。
【0030】
図4は、本発明の実施形態に係る磁石ステーション35に固定されたバイアル46を図示する。例示的実施形態において、バイアル46が磁石ステーション35に固定されると、磁石アレイ34に近接したバイアル46の壁73が磁石アレイ34とぴったりと重なる(すなわち同一平面となる)。バイアル46が磁石ステーション35に係合するとき、バイアル46はスプリング指40に内蔵されたスプリング(図示せず)と係合及び圧縮し、スプリング指40を磁石アレイ34から押し退ける。スプリング指40のスプリングの張力が、磁石ステーション35内の適所にバイアル46を保持する。
【0031】
図5及び6は、磁石アレイ34の構成の2つの実施形態の概略図である。磁石は、例えば、典型的にはネオジムとして知られるネオジム−鉄−ホウ素(Nd−Fe−B)、サマリウム−コバルト(Sm−Co)、アルニコ、又はハードフェライト(セラミック)からなり得る。
【0032】
図5は、3個の磁石を含む磁石アレイ34の構成の一実施形態を図示する。この実施形態は、第1の磁石56と、第2の磁石60と、第3の磁石62と、スペーサ58とで構成される。第1の磁石56は最下層に配置される。第3の磁石は最上層に配置され、第2の磁石60は第1の磁石56と第3の磁石62との間に配置される。
【0033】
引き続き図5を参照すると、磁石アレイ34のうちバイアル46と向かい合う側面が図示される。一実施形態において、3個の磁石のうち最も大きい第1の磁石56は上部水平面を有し、そのN極がバイアル46(図示せず)と向かい合うように配置される。上部水平面を有するスペーサ58が、第1の磁石56の上部水平面上、第1の磁石56と第2の磁石60との間に配置される。スペーサ58の上部水平面上に配置される第2の磁石60は上部水平面を有し、そのN極は第1の磁石56と同じ向き、すなわち、バイアル46と向かい合う向きとされる。第3の磁石62は第2の磁石60の上部水平面上にあり、そのS極は第2の磁石60及び第1の磁石56と逆方向、すなわち、バイアルと向かい合う向きとされる。別の実施形態において、磁石は、第1の磁石56のS極及び第2の磁石60のS極がバイアル46と向かい合い、第3の磁石62のN極がバイアル46と向かい合うように配置される。換言すれば、第3の磁石62の磁極の向きは、第1の磁石56及び第2の磁石60の磁極の向きと逆にされる。
【0034】
一実施形態において、引き続き図5を参照すると、第2の磁石60及び第3の磁石62は、各磁石の水平軸が磁石の垂直軸を上回るように構成される。この磁石の向きにより、他の磁石ステーション35(図示せず)の磁石との相互作用はほとんど生じない。従って、磁気洗浄モジュール30に配置されるとき、磁石アレイ34は全て、例えば、同じ向きを有し得る。しかしながら、磁石アレイ34は様々な向きで配置されてもよく、向きは例示されるものに限定されない。
【0035】
図6は、磁石アレイ34の構成の別の実施形態を図示する。例示される実施形態は、垂直方向の構成の個々の磁石を含み、第1の垂直方向の磁石64と、第2の垂直方向の磁石65と、第3の垂直方向の磁石67と、第1のスペーサ66と、第4の垂直方向の磁石68と、第2のスペーサ70と、第5の垂直方向の磁石72とを含む。一実施形態において、第1の垂直方向の磁石64、第2の垂直方向の磁石65、第3の垂直方向の磁石67、第4の垂直方向の磁石68、及び第5の垂直方向の磁石72は、各々、垂直軸が水平軸より長い。
【0036】
引き続き図6を参照すると、第1の垂直方向の磁石64、第2の垂直方向の磁石65、及び第3の垂直方向の磁石67は、ハルバッハ配列で並べられる。ハルバッハ配列は、磁界が配列の一方の側面、バイアル46(図示せず)と向かい合う側面では増幅され、配列の反対側の側面ではほぼゼロとなり得る磁石の構成である。図6に例示される一実施形態において、この配列は、第1の磁石64のS極がバイアル46と向かい合い、第1の磁石63に隣接する第2の磁石65は、N極もS極もバイアル46とは向かい合わず、第2の磁石65に隣接するが、第1の磁石63には隣接しない第3の磁石67は、そのN極がバイアル46と向かい合うように配置され得る。第1の垂直方向の磁石64、第2の垂直方向の磁石65、及び第3の垂直方向の磁石67は、配列のうちバイアル46と向かい合う側面に磁界を生じ、反対側の側面では磁界がほぼゼロとなる任意の他の構成で並べられてもよい。さらに、本教示において配列の最下層の磁石は、3個に限定されない。磁界がバイアル46と向かい合う側面で増幅され、反対側の側面ではほぼゼロとなる限り、例えば、4、5、6個、又はそれ以上で実施されてもよい。
【0037】
引き続き図6を参照すると、一実施形態において、第1のスペーサ66は、第1の垂直方向の磁石64、第2の垂直方向の磁石65、及び第3の垂直方向の磁石67の上部水平面に配置される。第1のスペーサ66の上面には、バイアル46と向かい合うN極を含む第4の垂直方向の磁石68と、バイアル46と向かい合うS極を含む第5の垂直方向の磁石72と、第4の垂直方向の磁石68と第5の垂直方向の磁石72との間に配置された第2のスペーサ70とが配置される。磁石アレイ34の構成のこの実施形態は、この構成のいくつかの磁石アレイ34が互いに近接している場合に干渉効果を引き起こし得る。従って、図7に示されるとおり、この構成の磁石アレイ34は、1つの磁石アレイ34が隣接する磁石アレイ34の鏡像となるような鏡像構成で用いなければならない。
【0038】
図5及び6を参照すると、スペーサ58、66、及び70は、例えば、0.5mm〜1.5mmの範囲の幅のサイズとされる。スペーサ58、66、及び70は、例えば、アルミニウム、プラスチック、セラミック、炭素繊維、ポリマー、前述のものの組み合わせ、又は任意の他の非磁性材料からなる。
【0039】
図8は、本発明の一実施形態に係る磁気洗浄プロセス中、磁石ステーション35に配置されているバイアル46を図示する。バイアル46が磁石ステーション35によって係合されると、磁石アレイ34によって生成される磁界が、磁性粒子、マーカー、及び標的分子の特異的複合体43を引き付ける。従って、バイアル46中の特異的複合体43は、磁石アレイ34に近接したバイアル46の内壁73に保持される。磁界の印加を伴う吸引ピペット44及び注入ピペット54による一連の洗浄及び吸引により、バイアル中に、例えば図9及び10に示されるような特異的複合体43のペレット74が生成される。ペレット74の生成を促進するため、磁石アレイ34及びバイアル46を互いに動かしてもよい。例えば、バイアル46が静止している場合、磁石アレイ34を上下に動かすことでペレット74が生じ易くなり得る。
【0040】
図9は、図5の磁石アレイを使用することにより形成された例示的ペレット74を図示する。図10は、図6に図示される第2の磁石アレイ34を使用することにより形成された例示的ペレット74を図示する。ペレット74は、いずれの例示的磁気アレイ34(図示せず)を使用しても、同じ場所に形成される。ペレット74は、磁気アレイ34からの磁界線を、バイアル壁73のうちペレット74が形成される場所に集中させることによって形成される。磁界線が高度に集中するため、特異的複合体43(磁性粒子、標的分子及びマーカーを含有する)が壁73の当該領域に引き付けられ、凝集し、最終的にはペレット74が形成される。ペレット74は、バイアル46から回収し、発光測定装置32で分析すれば、発光測定装置32(図示せず)における標的分子の分析を促進し得る。
【0041】
別の実施形態において(図示せず)、磁気洗浄モジュール30はバイアルチャンバを備え、これは湿度調節され得る。バイアルチャンバは、例えば、磁気洗浄モジュール30を取り囲む矩形の箱である。バイアルチャンバは、バイアル46がバイアル支持部材42に置かれた後、密閉されてもよい。密閉されたバイアルチャンバは、チャンバ内の空気の出入りを不可能にする。或いは、臨床計測器分析システム20がハウジング内で管理され、そのハウジングの内部湿度が調節される。
【0042】
一実施形態において、バイアルチャンバは、例えば、バイアル46が周囲空気と接触するのを防止し、バイアル46内の湿度の緩和を可能にすることで所定の相対湿度を提供する。湿度の調節又は緩和により、磁気洗浄ステーション35の磁界の作用により特異的複合体のペレット74として所望の凝集が引き起こされる前に不要な粒子が凝集することが防止され得る。バイアル46を外気から遮断すると、例えば、バイアル46を直接取り囲む空気の湿度を監視することが可能となる。湿度のレベルは、磁気洗浄モジュール30の性能に影響する。特定の実施形態において、湿度検出器が、バイアルチャンバ内部の湿度を測定する。湿度検出器によって湿度が測定されると、例えば、バイアル46への注入ピペット54による流体の注入速度又は吸引ピペット44による吸引速度を制御することによって、バイアルチャンバの湿度が変更及び調節され得る。
【0043】
ある実施形態において、吸引ピペット44及び注入ピペット54は、磁界の印加前に粒子が完全に乾燥したり、又は凝集したりすることを確実になくすために使用される。一実施形態において、吸引後、注入ピペット44は、15〜20μlの範囲の少量の液体をバイアル46に分注する。
【0044】
別の実施形態において、吸引ピペット44を使用して湿度が調節される。例えば、吸引ピペット44は、バイアル46の中に入っている液体に沈められる。吸引ピペット44の深さは、例えば、バイアルの中に入っている液体の表面のすぐ下から、バイアル底面から約0.5mmのところまでの範囲である。吸引ピペット44を沈めたら、吸引ピペット44でバイアル46から液体を取り出す。吸引ピペット44を通じる液体の流れは、例えば、0.5秒間に液体400ml〜5秒間に400μl、或いは5mL/分〜20mL/分の範囲、好ましくは10mL/分である。この低速の緩慢な流速は、例えば、真空ポンプ又は蠕動ポンプを使用することによって達成され得る。
【0045】
ある実施形態において、吸引ピペット44又は注入ピペット54には、洗浄溶液が入っている。さらに洗浄溶液が、例えば界面活性剤を含有し、それによって溶液の表面張力が低減されるため、粒子の凝集が抑制される。
【0046】
湿度制御は、これらの例に限定されず、チャンバに加湿空気及び/又は乾燥空気を注入したり、チャンバに水のミストを噴霧したり、及び様々な他の方法など、任意の公知の湿度調節手段によって制御され得る。流体はチャンバに、注入器の直径に応じて25mL/分又は60mL/分、又は好ましくは20mL/分〜100mL/分の範囲の速度で注入され得る。
【0047】
別の実施形態において、磁気洗浄モジュール30は温度調節器(図示せず)を備える。温度調節器は、バイアルチャンバの温度が確実に所定の、一定の、及び所望のレベルに保たれるようにする。
【0048】
別の態様において、本発明は、臨床計測器分析システム20によって実行される診断分析で使用される磁性粒子の洗浄方法に関する。本発明の方法に従えば、バイアルローダ22と、試料ステーション(図示せず)と、試薬ステーション(図示せず)と、カルーセル28と、磁気洗浄モジュール30と、複数のピペット24と、発光測定装置32と、加熱器とを含む自動臨床計測器分析システム20が提供される。例えば、バイアルローダ22はバイアル46をカルーセル28に装填する。バイアル46は、バイアルローダ22からカルーセル28を介して試料ステーションへと運ばれる。ある実施形態において、湿度が調節される。
【0049】
試料ステーションでは、分析される標的分子を含む患者の試料がバイアル46に導入される。試薬ステーションでは、標的分子に対する抗体、例えばルミノゲンを含有するマーカー物質、及び磁化可能粒子がバイアル46に導入される。マーカー物質及び磁性粒子は、標的物質に特異的な抗体で被膜される。免疫化学反応により、抗体は患者の試料中の標的分子を認識し、それと結合する。結果として、磁性粒子、マーカー、及び標的分子の特異的複合体43が形成される。バイアル46は、分析の要件に従い所定の時間及び温度で培養される。
【0050】
バイアル46のインキュベーション後、次にカルーセル28はバイアル46を磁気洗浄モジュール30に搬送する。バイアル46は、降下又は上昇させることができるバイアルホルダ42に配置され、磁界が印加される。磁石ステーション35の磁石アレイ34の磁界が、磁石アレイ34に近接したバイアル46の内壁73に特異的複合体43を引き付ける。次にバイアル46は、1回又は複数回、吸引ピペット44及び注入ピペット54によって洗浄液を注入及び吸引される。バイアル46は、1回又は複数回、注入又は吸引によって濯ぎ流され、特異的複合体43に複合体化した粒子を除く残りの全ての粒子が除去される。
【0051】
バイアル46が数回洗浄された後、磁石ステーション35、若しくはバイアル46を動かすか、又は磁石ステーション35及びバイアル46を動かすことによって磁界が取り除かれる。次に、カルーセル22がバイアル46を発光測定装置32に搬送する。発光測定装置32は、特異的複合体43についてバイアル試料を分析する。特異的複合体43においては患者試料中の標的分子にルミノゲンが付着しているため、使用者は、ペレット74の発光に基づき、試料中の標的分子の量を容易に確定することができる。
【0052】
当業者には、本明細書に記載されるものの変形例、修正例、及び他の実施態様が、特許請求されるとおりの本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく想起されるであろう。従って、本発明は先述の例示的説明によって定義されるのではなく、以下の特許請求の範囲の趣旨及び範囲によって定義される。
【0053】
以下のとおり特許請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアル中の磁性粒子を操作するためのシステムであって、
1本又は複数のピペットと、
磁性粒子の入った前記バイアルを保持するための支持部材と、
磁石アレイであって、
上部水平面を有する第1の磁石であって、そのN極が前記支持部材に配置された前記バイアルと向かい合うように配置される、第1の磁石と、
上部水平面を有するスペーサであって、前記第1の磁石の前記上部水平面上に配置されるスペーサと、
上部水平面を有する第2の磁石であって、前記スペーサの前記上部水平面上に配置され、そのN極が前記バイアルと向かい合うように配置される、第2の磁石と、
前記第2の磁石の前記上部水平面上に配置される第3の磁石であって、そのS極が前記バイアルと向かい合うように配置される、第3の磁石と、
を備え、前記バイアル内の前記磁性粒子を操作するための磁界を生成する磁石アレイと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記スペーサが、アルミニウム、プラスチック、炭素繊維、ポリマー、他の非磁性材料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料で製造される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁石アレイが所定位置に固定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記磁石アレイが可動式である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記磁石が、ネオジム−鉄−ホウ素、サマリウム−コバルト、アルニコ、及びハードフェライトからなる群から選択される材料を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
湿度調節器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
温度調節器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
吸引ピペット及び注入ピペットを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁石アレイの前記バイアル支持部材との比が1:1である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の磁石及び前記第3の磁石の各々について、水平軸が垂直軸より長い、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の磁石及び前記第2の磁石のS極が前記バイアルと向かい合い、且つ前記第3の磁石のN極が前記バイアルと向かい合う、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
スプリング指をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
湿度調節式バイアルチャンバをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
バイアル中の磁性粒子を洗浄するための磁気洗浄モジュールであって、
1本又は複数のピペットと、
1つ又は複数の磁石と、
支持部材と、
前記磁気洗浄モジュール内の湿度を測定するための湿度検出器と、
を備える、磁気洗浄モジュール。
【請求項15】
磁性粒子の凝集を緩和するための方法であって、
1本又は複数のピペットと、1つ又は複数の磁石と、バイアルチャンバとを備える磁気洗浄モジュールを提供することと、
磁性粒子の入ったバイアルを前記磁気洗浄モジュールの前記バイアルチャンバに導入することと、
前記バイアルチャンバに所定の相対湿度を提供するように湿度を緩和することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記バイアルへの流体の注入速度を制御することによって湿度が緩和される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バイアル中の流体の吸引速度を制御することによって湿度が緩和される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記磁気洗浄モジュールが、湿度検出器をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
バイアル中の磁性粒子を洗浄するための磁気洗浄モジュールであって、
1本又は複数のピペットと、
1つ又は複数の磁石と、
湿度検出器と、
を備える、磁気洗浄モジュール。
【請求項20】
発光分析方法であって、試料バイアルには、標的分子と前記標的分子を結合する磁性粒子とを含む患者の試料が入っており、
前記試料バイアルを磁気洗浄モジュールに搬送することと、
前記標的分子及び前記磁性粒子の入った前記試料バイアルに、前記試料バイアルの1つの壁を通じて、前記試料バイアルの前記壁の同じ側面に配置された磁気アレイによって磁界を印加することと、
前記試料バイアル内で洗浄液を注入及び吸引して前記磁性粒子を洗浄することと、
前記試料バイアルを前記磁気洗浄モジュールから発光測定装置に搬送することと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−63364(P2012−63364A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−270569(P2011−270569)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2009−549188(P2009−549188)の分割
【原出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(509214056)
【Fターム(参考)】