説明

自動睡眠治療システム

覚醒/睡眠状態を判定するための受動的手段を使用する、不眠症治療のための自動化された行動学的方法およびシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年3月1日に出願され現在係属中の米国出願第10/790885号の継続出願である。米国出願第10/790885号は、2003年2月28日に出願された米国仮特許出願第60/451,055号の優先権を主張するものである。本出願は、米国出願第10/790885号および第60/451,055号を、それら全体において引用により取り込むものである。
【0002】
本発明は、不眠症に悩む人々を助けることに関し、より詳細には、覚醒および睡眠状態を判定する受動的方法を用いた、不眠症治療のための極めて効果的な自動化システムに関する。
【背景技術】
【0003】
不眠症は、睡眠を開始または維持することが困難であるという愁訴、あるいは睡眠が爽快でないか、または睡眠で元気を回復することができないという愁訴である。不眠症に悩む人は、入眠または睡眠の維持が困難であるか、あるいは早く起き過ぎてしまう。結果として不眠症患者は、毎晩の不眠だけでなく、翌日の疲労、意識混濁、いらいらについても恐れを抱き始める。
【0004】
不眠症は、広く一般化している問題である。例えば、米国で行われた研究によると、50%を超える回答者が、少なくとも1週間に数夜、下記の不眠症の症状のうち少なくとも1つを経験したと答えた。すなわち、入眠困難、夜間の頻繁な覚醒、早過ぎる覚醒および再度睡眠に戻れないこと、および不快な覚醒である。事実、35%の回答者が、毎晩またはほぼ毎晩、これら4つの不眠症症状のうち少なくとも1つを経験したと語っている。これらの研究における統計量を、研究が行われたときの米国国勢調査のデータに当てはめると、1億2千万人を超える米国の成人が、毎週少なくとも数夜は、不眠症の4症状のうち少なくとも1つを経験しているものと推定される。この1億2千万人のうち、7千万を超える人が毎晩または、ほぼ毎晩これらの症状を経験している。米国内での不眠症の直接的経済コストは、毎年140億米ドルに近いものと推定される。市販薬、およびハーブ療法などの「代替的」治療に費やされる金額は、この推定額の2倍に及ぶ可能性がある。
【0005】
非薬理学的行動療法は、不眠症の治療において大きな成功を収めている。行動療法は、薬理学的療法に対して多くの利点を有している。すなわち、
・耐性、依存または副作用のリスクがないこと
・症状を治療するのではなく、中心にある行動を矯正するものであること
・安全性および有効性が実証されていること、などである。
不眠症治療に有効なことが判明している非薬理学的行動療法は多数ある。最も広範囲に評価されているのは、刺激制御療法、睡眠制限療法、リラクゼーション訓練および逆説志向である。これまでのところ、これら療法の中で、刺激制御療法よりも有効と判明した技法はない。
【0006】
刺激制御療法は、不眠症が、通常、睡眠に関連する一時的な(就寝時刻)きっかけおよび環境的な(ベッド/寝室)きっかけに対する条件反応であるという前提に基づいている。したがって、刺激制御療法の主要な目的は、覚醒を維持する合図(cue)として作用する、睡眠と両立しない顕在的および内潜的な活動を縮小すること、および、一貫した覚醒および睡眠スケジュールを強制することによって、ベッドおよび寝室を速やかな睡眠開始に再び関連付けることである。刺激制御療法は、下記の指令手順から構成されるものとして特徴づけてもよい。
【0007】
1.ベッドおよび寝室を睡眠のためのみに使用する(性行為がこのルールの唯一の例外である)。
2.ベッドに入るときは、すぐに眠りに就くことを意図して灯りを消す。
3.短い時間内に(例えば、15ないし20分)眠りに入ることができないと自分で分かった場合は、ベッドを出て寝室を離れる。好きなだけ起きておき、すぐに眠れそうになったら寝室に戻る。
4.それでも眠ることができない場合は、ステップ3を繰り返す。一晩中、必要なだけ何回でもこれを行なう。
5.前夜の睡眠持続時間に関わらず、朝の規則的な覚醒時刻を維持する。
6.昼寝を避ける。
【0008】
不眠症を治療するための別の非薬理学的な行動論的アプローチ、すなわち睡眠制限療法は、ベッド内で過ごす時間の量を睡眠時間の主観的な量に、より近づけるように短縮することからなっている。例えば、ベッドで過ごす8時間のうち一夜当たり平均5時間の睡眠を報告している人の場合、初期の設定睡眠ウインドウ(prescribed sleep window)(すなわち、就寝時刻から起床時刻まで)は5時間となる。その後、ベッド内にいる許容時間を、平均睡眠効率(ベッド内で過ごした合計時間に対する合計睡眠時間の比率)が0.9を超える場合には、所与の週に15〜20分だけ伸長し、睡眠効率が0.8未満の場合には、同じ時間量だけ短縮し、睡眠効率が0.8から0.9の間となる場合は、そのまま維持する。所望の睡眠持続時間が達成されるまで、調整を周期的に(通常は毎週)行なう。睡眠制限療法は、速やかな入眠、高い睡眠効率、および、毎夜の変動性の低下を促進するものである。また、睡眠制限療法実施の際における過度な昼間の眠気を防止するため、ベッド内にいる時間を一般に1夜当たり5時間未満とはしないことが推奨される。
【0009】
睡眠パラメータ(たとえば、睡眠開始までの待ち時間、合計睡眠時間、睡眠開始後の合計覚醒時間、睡眠効率など)の自己査定を伴う不眠症治療のための行動学的手法は、睡眠パラメータを意識的に把握する負担を自動化システムに委ねることができれば、かなりの改善を図ることが可能である。例えば、睡眠制限療法に関する現在のアプローチでは、ユーザは、夜毎に達成した睡眠量に注意しながら睡眠日誌または日記に記録を行なう必要がある。ユーザまたは臨床家は、この日誌または日記の情報を用いて週毎の平均睡眠時間および平均睡眠効率を算出する。不眠症患者がその睡眠時間を過小評価する傾向があると仮定すると、過度に制限された睡眠スケジュールとなって、療法が許容し難いものとなることにより、遵守性(コンプライアンス)が低下してしまう恐れがある。さらに、睡眠制限のパラメータは、ユーザの睡眠が変化するにつれて定期的に再評価し更新する必要がある。
【0010】
不眠症のための行動療法の自動化において中心となるものは、睡眠パラメータの決定である。睡眠パラメータの決定には、覚醒/睡眠判定、すなわち、ユーザが覚醒しているか眠っているかの判定が必要となるが、これらの用語は当業者によって理解されるものである。覚醒/睡眠状態を判定するための既知の技法は、ユーザの視点から、能動的か受動的かの2つの広いカテゴリーに分類される。ユーザが覚醒しているか眠っているかを判定するためユーザが動作を行なうか、あるいは意識して注意することに依存する装置は、能動的装置とみなされる。能動的装置は、ユーザが所与の時点で覚醒しているかまたは眠っているかを判定/推測するため、例えば、ユーザが音声に対しボタンを押すことで応答するか、あるいはデッドマン装置のプランジャを押さえ続けることが必要なものがある。対照的に、受動的装置は、ユーザが覚醒しているか眠っているかを判定するためにユーザの側の行動を必要としない。受動的装置は、例えば、ユーザからの脳波記録(EEG)信号を収集および解析してユーザの覚醒または睡眠の状態を判定することができる。そのような装置は、覚醒および睡眠の判定実施の際にユーザの側の行動を必要としない。
【0011】
両方のカテゴリーの装置にはそれぞれ利点および欠点がある。おそらく受動的装置に対する能動的装置の一つの最大の利点は、相対的な簡潔性である。例えば、デッドマン装置(能動的装置)の接触状態をモニタすることは、EEG解析(受動的装置)を用いて覚醒/睡眠状態の変化を判定しようとすることよりもはるかに簡単であり、より直接的である。
【0012】
2002年に、ライリー(Riley),W.らは、ネバダ州リーノー(Reno)における、行動療法促進学会(Association for the Advancement of Behavior Therapy)の第36回年次総会からの「原発性不眠に対するコンピュータ化された行動的介入の初期評価(Initial Evaluation of a Computerized Behavioral Intervention for Primary Insomnia)」と題されたアブストラクトにおいて、覚醒/睡眠状態情報を必要とする不眠症のための行動療法に関して記述している。そこでのアプローチは、ユーザが応答を要求される10分毎の低音量可聴ビープ音を生成する能動的装置を使用するものであった。このビープ音の発生およびその後の応答(または応答の欠如)を用いて、ユーザの覚醒/睡眠状態を判定した。このような覚醒/睡眠判定の能動的方法は、真に自動的なものではなく、下記を含む多くの欠点を有している。
【0013】
(1)刺激(ビープ音)の連続的な生成は、ユーザに過度の作業負荷を生じさせる可能性がある。ユーザが非常に頻繁な刺激に応答するという作業を課されている場合には、装置自体が入眠プロセスを妨げる危険性がある。反対に、刺激を与える頻度が低過ぎる場合には、時間的粒度(temporal granularity)のため、覚醒/睡眠判定の時間的局在が不正確になり過ぎてしまう。連続する刺激の時間間隔が長いと、ユーザが入眠する機会が生じる一方で、装置がユーザの覚醒/睡眠状態に関する現在の情報を求める必要とは対立する。例えば、連続する刺激を10分毎に与えた場合、装置は、介在する時間中に何が起きたかを知ることがなく、ユーザは間隔の内、あるいは刺激の提示時点において入眠したり覚醒したりしている可能性がある。これは、行動療法の実施に否定的な影響を与える恐れがある。
【0014】
(2)ライリーらの能動的装置に使用される刺激は、低すぎる振幅で与えられるとユーザに見落とされる恐れがある。同様に、刺激が高すぎる振幅で与えられる場合にはユーザを覚醒させてしまう恐れがある。あるいは、小振幅の振動刺激を使用する能動的装置は、見落とされる恐れがあり、または、大振幅の振動刺激はユーザを覚醒させてしまう恐れがある。同じ欠点は、他の能動的装置に用いられる他の種類の刺激にも当てはまる。
【0015】
(3)能動的装置を使用する場合、ユーザは、作業を行なわなければならないことに煩わされて、より高い覚醒レベルに置かれるであろう。その結果、ユーザは、ベッド内で単純に緊張を解くことができず、受動的に装置に依存してしまうことになる。不眠症患者の睡眠時間には、睡眠に問題がない人よりもストレスがかかりやすいため、能動的装置は不眠症患者には特に有害となりうる。眠りに入ろうとしている人に要求される作業は、睡眠に否定的な影響を与えるが、これは不眠症患者には特に当てはまる。デッドマン装置のプランジャを押し下げるような簡単な作業であっても、緊張を解いて意識せず入眠すべきときには、より高い覚醒レベル(すなわち、装置を確実に押さえ続けさせるレベル)が必要となってしまう。
【0016】
(4)能動的方法が特に聴覚刺激を用いる場合には、ベッドパートナーを起こしてしまうような場合もある。
【0017】
(5)スイッチの接触を利用する方法は、ユーザが覚醒するときに自動的に再係合できないという難点がある。このため、通常は最初の睡眠開始エピソードを検出するだけになってしまう。不眠症に悩むユーザは、夜間に覚醒した後に再び睡眠に戻ることが困難であるか、あるいは、おそらく単に睡眠を継続することが困難である場合もある。例えば、デッドマン装置は、覚醒後の次の睡眠開始時期を装置が再判定するためには、ユーザによって再係合しなければならない。これらの方法は、睡眠が正常な人々の多くにとっては使用が非常に煩わしいものであり、不眠症に苦しむ人にとっては特に困難な場合がある。
【0018】
能動的な覚醒/睡眠判定方法は、下記を含む他の出願にも記述されている。
【0019】
マクレーン(MacLean)の米国特許第5,259,390号には、睡眠行動をモニタするための、手に装着される振動刺激−応答装置が記述されている。この装置は、完全な睡眠ポリグラフ検査を実施する前の、家庭内での睡眠プレスクリーニング用である。これは、ユーザが振動刺激を感じるたびに応答ボタンを押すようにユーザに求めることによって、覚醒および睡眠状態を判定するものである。
【0020】
ワイアット(Wyatt)らの米国特許第6,078,549号は、複数のスイッチを用いて睡眠開始前の時間、睡眠時間などのパラメータを記録する睡眠パターンタイマーに関するものである。この装置を使用すると、ユーザがスイッチを閉じた位置で保持し入眠の際に離すように求めることによって、睡眠障害の診断および治療が容易になる。
【0021】
ワイアット(Wyatt)の米国特許第6,392,962号は、不眠症患者が合計睡眠時間を過小評価し、かつ/または入眠に必要な時間を過大評価するため、他の方式では困難となる睡眠障害の治療において役立つ情報を提供する方法を規定している。この装置は、手に装着されたアクチュエータを備えた手首装着タイマーを含んでおり、不眠症患者が眠りに入ったときに計時を停止し、これによりアクチュエータとの接触が解除される。これは、(睡眠開始時の)覚醒/睡眠判定用、および、不眠症患者による睡眠待ち時間の過大評価および合計睡眠および睡眠効率の過小評価を補正するためのものである。
【0022】
本発明者の知るところでは、覚醒/睡眠を判定する受動的方法において、行動睡眠療法の実施を自動化するための使用または示唆はなされていない。そのような受動的方法は、患者の側での何らの行動をも必要とせずに、または応答を誘発する刺激を提示せずに、患者の覚醒/睡眠状態を判定することができる。覚醒/睡眠状態を受動的に判定するために使用可能な(ただし、不眠症のための自動行動療法を教示または示唆していない)装置の例には下記にものが含まれる。
【0023】
1)ブランシェ(Blanchet)らの米国特許第5,154,180号(EEGを使用して自動的に睡眠段階を判定するシステム)
2)コンラン(Conlan)の米国特許第 5,197,791号(活動(または動作)モニタ(アクティグラフィ)を使用して覚醒および睡眠の検出が可能なシステム)
3)ラヴィー(Lavie)の米国特許第5,280,791号(心臓EKGのR−R間隔を解析することによって患者の睡眠状態を判定することができるシステム)
4)荻野(Ogino)の米国特許第5,479,939号(ベッド内の非接触式身体動作センサによって覚醒と睡眠とを判別するために使用可能な装置)
5)コンラン(Conlan)の米国特許第5,573,013号(活動モニタ(アクティグラフィ)を使用して覚醒および睡眠を検出可能なシステム)
6)サックナー(Sackner)らの米国特許第5,588,425号(パルスオキシメトリ波形における収縮期立ち上がり時間(systolic upstroke times)に基づいて、モニタされる患者の睡眠と覚醒とを判別するために使用可能なシステム)
7)荻野(Ogino)の米国特許第5,724,990号(ベッドまたは座席の非接触式身体動作センサによって覚醒と睡眠とを判別するために使用可能な装置)
8)ラパポート(Rapoport)らの米国特許第5,732,696号(複数の生理学的信号(脳波記録(EEG)、筋電図検査(EMG)、眼電図(EOG)など)を使用して睡眠を記録するシステム)
9)カプラン(Kaplan)らの米国特許第5,813,993号(本発明者)(自発的EEGの単一チャネルからの覚醒、眠気、睡眠、無意識または感覚消失の連続体に沿って被験者の状態を追跡するシステム)
10)ベイダー(Bader)の米国特許第5,846,206号(ユーザの身体に接触する静止圧力センサを用いて人間の覚醒状態を推測するシステム)
11)荻野(Ogino)の米国特許第5,902,255号(ベッドまたは座席の非接触式身体動作センサによって覚醒と睡眠とを判別するために使用可能な装置)
12)ハリャク(Halyak)の米国特許第5,928,133号(「生理学的なモニタリング手段」または「計測された電気抵抗」または「身体的電気的特性のモニタリング」の使用などの一般的な技術を用いて、どの点から見てもユーザが既に覚醒しているときに、予め設定された時間の範囲内で目覚めさせるための装置)
13)パーディー(Pardey)らの米国特許第5,999,846号(一定期間のエポックにわたるユーザからの電気信号(EEGその他)を使用する「不眠症または覚醒状態モニタ」、睡眠経過図(hypnogram)を作成するためにニューラルネットワークを使用して覚醒および睡眠を判定し、各エポックに睡眠段階タイプを割り当てる方法、睡眠の質のサマリーインデックスを作成するために睡眠経過図を解析する方法、および、睡眠経過図に基づいて睡眠の質のサマリーインデックスを表示する方法)
14)ディンプフェル(Dimpfel)の米国特許第6,157,857号(EEGを用いた睡眠段階分類のためのシステム)
15)バウムガルト・シュミット(Baumgart−Schmitt)の米国特許第6,272,378号(入ってくるデータから1組の特徴(FFTベース)を記憶し(圧縮の方法として)、次いで、これらの特徴を解析しニューラルネットワークを用いて睡眠段階を判定する装置を使用して、単一前頭EEG導出を行ない、睡眠段階分類を自動的に生成するシステム)
16)ゴール(Goor)らの米国特許第6,322,515号(抹消動脈緊張の変化をモニタおよび検出することによって睡眠および覚醒の判定が可能なシステム)
17)ファン・デル・ルース(Van der Loos)らの米国特許第6,468,234号(患者の睡眠の質を測定するための、従来のマットレスの上に敷かれるセンサシート)
18)レヴェンドウスキ(Levendowski)らの米国特許第6,496,724号、第6,625,485号および米国公開特許第2002/0183644号(覚醒連続体に沿ってEEGを定量化するシステム)
【0024】
覚醒/睡眠判定のための上記の受動的な方法/装置のいずれも、本発明の実施において利用可能である。
【発明の概要】
【0025】
本明細書に記述される発明は、その実施において睡眠パラメータを知ることを必要とする、不眠症に関する行動療法のためのシステムを含む。このシステムは、ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を生成するために治療されているユーザの側の行動を必要としない真に自動化されたシステムを実現するため、受動的な覚醒/睡眠判定を用いる。
【0026】
したがって、本自動化された方法は、受動的覚醒/睡眠判定手段を用いてユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を生成し、この覚醒/睡眠情報を適宜用いて行動療法の工程を実施するものである。
【0027】
不眠症の行動療法は、少なくとも刺激制御療法、睡眠制限療法、リラクゼーション療法、認知行動療法、またはそれらの組合せを含むものである。ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を使用するいかなる行動療法を用いてもよいが、刺激制御療法、睡眠制限療法、およびその2つの組合せが本発明の実施において好適である。また、いかなる受動的覚醒/睡眠判定手段を用いてもよいが、判定手段は脳波記録法(EEG)、筋電図検査(EMG)、抹消動脈緊張(PAT)、収縮期立ち上がり時間、心電図記録法(ECG/EKG)、眼電図法(EOG)、オキシメトリ、心拍変動、心調律変動、アクティグラフィ、体動、電気皮膚反応(GSR)、呼吸変化、呼吸変動、眼球運動、および、これらの受動的覚醒/睡眠判定手段の2つ以上の組合せから選択することが現在においては好適である。しかしながら、ユーザの覚醒/睡眠状態を判定するために使用されるいかなる手段も本発明とともに利用可能であることは当業者にとって明白であろう。EEGが現在において好適な睡眠判定手段である。
【0028】
本発明の自動化された方法に従って実施される不眠症の行動療法とともに、薬物療法を用いてもよい。また、覚醒/睡眠状態を判定するための能動的手段を使用して、受動的覚醒/睡眠判定手段を補助してもよい。
【0029】
ある重要な実施形態においては、本発明によるシステムは、1)システムに電力供給するための手段と、2)受動的覚醒/睡眠判定のための手段と、3)行動療法ルールに従ってユーザがベッドから出るべきか否かを判定するための手段と、4)刺激制御療法ルールに従ってユーザがベッドから出るべきと判定された場合に、ユーザに対しベッドを離れるように警告するための手段とを含む。
【0030】
本発明の別の重要な実施形態では、不眠症に悩むユーザを治療するためのシステムにおいて、1)システムに電力供給するための手段と、2)システムがトレーニングモードにあるか否かを判定するための手段と、3)受動的覚醒/睡眠判定のための手段と、4)ユーザがその睡眠期間を完了したか否かを判定し、完了していた場合には一晩にわたる睡眠統計量を計算するための手段と、5)先に得られた睡眠データに基づいて睡眠制限療法のパラメータを計算するための手段と、6)次の睡眠セッションのために、計算された睡眠制限療法プログラムパラメータを表示するための手段と、を含むシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による刺激制御療法の自動実施の高度の概要を提示するフローチャートである。
【図2】本発明による刺激制御療法の自動実施の詳細を提示するフローチャートである。
【図3】本発明による睡眠制限療法の自動実施の高度の概要を提示するフローチャートである。
【図4】本発明によるある実現可能な身体着用可能装置の概略図である。
【図5】本発明によるある実現可能なEEGに基づく据付け式の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上記の本発明の説明、本発明の詳細な説明、下記の特許請求の範囲、および附属図面においては、本発明の(方法の工程を含む)特定の特徴に対して言及を行なっている。本明細書における本発明の開示は、そのような特定の特徴のすべての実現可能な組合せを含むものと了解される。例えば、本発明の特定の側面または実施形態、もしくは特定のクレームの文脈において特定の特徴が開示されている場合、その特徴は本発明の他の特定の側面および実施形態と組み合わせ、かつ/またはその文脈において、および全体的に本発明において、可能な範囲で使用することができる。
【0033】
本明細書に記述される発明は、その実施において睡眠パラメータの情報を必要とする不眠症治療の行動療法を実施するための自動化されたシステムの一部として受動的覚醒/睡眠判定手段を用いるものである。そのような行動療法には、例えば、刺激制御療法、睡眠制限療法またはそれらの組合せが含まれる。
【0034】
その実施において睡眠パラメータの情報を必要とするそれら不眠症治療の行動療法を実施するためには、規則的な時間間隔で患者が覚醒しているか眠っているかを判定することが必要である。最良の治療結果を実現するためには、精度の高い覚醒/睡眠判定が望ましい。さらに、連続してまたは極めて狭い時間間隔で正確に覚醒/睡眠状態を判定可能であることは、時間的に粗いサンプリングよりも好適である。これは、例えば、EEG、EMG、PAT、ECG/EKG、EOG、オキシメトリ、心拍変動、心調律変動、アクティグラフィ、体動、収縮期立ち上がり時間、GSR、呼吸変化、呼吸変動、眼球運動、または、これらの方式のうち2つ以上を組み合わせた判定手段を使用する受動的覚醒/睡眠判定手段を用いて実現してもよい。しかしながら、上記以外の他の受動的覚醒/睡眠判定手段をなお本発明の範囲内において利用可能なことは当業者にとって明白であると留意すべきである。また、本発明の焦点が不眠症の非薬理学的行動療法の自動化にある限り、薬物治療が不眠症治療のため行動療法とともに用いられる場合に、本発明のシステムを使用してもよい。最後に、覚醒/睡眠状態を判定するための受動的な技術および装置が、常に本発明のシステムを実施する場合の中心となる限り、覚醒/睡眠状態を判定するための能動的な技術および装置を、睡眠に対する干渉が問題とならないシステム内の工程において補助的な方法として使用してもよい。
【0035】
EEGに基づく覚醒/睡眠状態判定手段が、目下のところ本発明を実施する上で好適である。そのような装置は、患者の状態(覚醒しているか眠っているか)を受動的にモニタする。睡眠は脳で始まり脳によって制御されるため、EEG信号は覚醒/睡眠状態判定のための良好な情報源となる。
【0036】
動作/運動センサ(例えばアクティグラフィ)からの情報を解析することによって覚醒および睡眠を判定する装置もまた、覚醒/睡眠状態を受動的に検出するために使用可能である。睡眠が高い程度で分断されたり安定しない患者に対しては、この種の装置は睡眠時間を過小評価する恐れがあり、潜在的な欠点が存在する。不眠症患者が、眠ろうと試みてベッド内で長い時間を過ごし、じっと動かずに横たわっている場合、動作/運動を基にしたモニタは、睡眠時間を過大評価してしまうかもしれない。しかしながら、適切な信号処理技術を用いれば、本発明の実施のために用いられる動作/運動を基にしたセンサから十分に精度の高い覚醒/睡眠情報を得られることは当業者にとって明白であろう。そのようなモニタは、例えば、多くの活動モニタリング製品を販売しているフィリップス・レスピロニクス(Philips Respironics)社(米国)、アクティグラフ(Actigraph)社(米国)、アンビュラトリ・モニタリング社(Ambulatory Monitoring, Inc.)(米国)から得てもよい。
【0037】
刺激制御療法および睡眠制限療法の実施には、下記の指針および指令の組合せが必要である。これらの指針および指令は、それぞれの技術においてフローチャートの形態で表わすことができる。図1、2および3は、各技術が、本発明による自動化システムにおいてどのように実施可能であるかを示している。好適な実施形態において説明される実施の詳細が、なお本発明の範囲内において変更可能なことは当業者にとって明白であろう。
【0038】
刺激制御に対する適用
【0039】
図1は、本発明による刺激制御療法の自動実施に関する高度の概要を提示するフローチャートであり、以下に述べるものとする。次いで、システムの概要についての詳細および改良を、図2のフローチャートに関する検討とともに提示する。
【0040】
システムはアイドルモード(10)でスタートし、そこではシステムは実質的に休眠状態にあり電力をほとんど消費しない。EEGセンサケーブルのユーザに対する接続をチェックする(12)。EEGセンサケーブルが接続されている場合、システムはアイドルモードを離れ、接続されていなければシステムはアイドルモードに留まる。アイドルモードを離れると、システムはハードウェア自己診断テスト、ソフトウェア状態、電源状態、EEG電極インピーダンスなどを含めることができる診断手順(14)を実行する。エラーおよび警告は、適切に対処、記録され、ユーザに報告される。さらに、EEGセンサケーブルが接続されている場合、システムは(ユーザまたは臨床家の選択に応じて)短い聴覚的または触覚的警告を可聴チャープまたは短い振動動作の形で選択的に生成し、刺激制御療法または「すぐに眠ろうとしなさい。仕事や読書など他の作業をしてはいけません」というような他の指令を行なう。
【0041】
システム診断(14)に続いて、システムはEEGデータを取得して、ユーザが覚醒しているか眠っているかを判定するため必要な計算を行なう(16)。これらの覚醒/睡眠判定は例えば30秒毎に実施することができる。
【0042】
各覚醒/睡眠判定の後、システムは刺激制御療法の自動化ルールに従ってユーザにベッドから出るよう警告すべきか否かをチェックする(18)。
【0043】
警告が指示されず(18)、かつユーザがまだシステムに接続されている場合(20)、システムは覚醒/睡眠判定(16)を30秒毎に繰り返す。ユーザがもはや接続されていない場合(20)、システムはEEGデータの取得および覚醒/睡眠の計算を停止して、睡眠開始までの時間、ベッド内での合計時間、睡眠合計時間、覚醒合計時間、睡眠開始後の覚醒合計時間、覚醒回数などユーザにとって関心があるか有益な情報を計算および表示する(26)。所定の表示タイムアウトの満了後(28)、システムはアイドルモード(10)に戻る。
【0044】
警告が指示された場合(18)、システムは聴覚的警告を生成し、システムディスプレイに適切なメッセージを提示する(22)。システムはユーザに対し、すぐ眠ろうとする努力を中止し、ベッドおよび寝室を離れ、十分に疲れて再度眠ろうと感じたらベッドに戻るように勧告してもよい。ユーザがEEGセンサケーブルを外すまで警告が続き(24)、そこでシステムがEEGデータの収集および覚醒/睡眠の計算を停止して、睡眠開始までの時間、ベッド内での合計時間、睡眠合計時間、覚醒合計時間、睡眠開始後の覚醒合計時間、覚醒回数などユーザにとって関心がある情報を計算および表示する(26)。所定のタイムアウトの満了後(28)、システムはアイドルモード(10)に戻る。
【0045】
ユーザまたは臨床家の選択に依存して、警告は、警告状態のテキスト表示、指令または情報のテキスト表示、ディスプレイバックライトの作動、点滅光、聴覚的表示、触覚的表示、合成音声または録音音声、低レベルの電気刺激または、さらには適切な装置によって生成される芳香のいずれか1つまたは複数であってもよい。これらの警告(および他の適切な警告)を我々は「警告セット」と呼称する。
【0046】
フローチャートには詳述されていないが、システムは有効なセンサ信号およびセンサ接続の完全性を連続してまたは定期的にチェックすべきである。
【0047】
図1に示すシステムは、下記のような選択的特徴を含んでもよい。
1.ユーザがベッド外にいるときにはいつでも、現在の記録期間におけるデータおよび簡易統計を表示するディスプレイ。例えば、ユーザが何らかの理由で夜中にベッドから出る場合には、装置は、眠っていた時間数、ベッド内にいた時間数、当夜のそれまでの睡眠効率、現在の、または経過した時間などを表示してもよい。
【0048】
2.ベッドから出させる警告は、ユーザが実際にベッドから出るまで継続させてもよい。自動ベッド内センサがない場合には、ユーザは警告を停止するために、ベッド外にいることを装置に示さなければならない(すなわち、ボタンを押すかセンサケーブルを外さなければならない)。
【0049】
3.適切なディスプレイ上の、または、予め録音された音声または合成音声による(文脈に応じた)指令および情報の提示。例えば、ユーザがベッド内にいて装置がユーザにベッドを離れるように伝える際には、「ベッドおよび寝室から離れなさい。すぐに眠ろうとすることが可能なときのみ戻りなさい」等の適切な指令を与える。または、ユーザがベッド外にいるときには、「眠いときおよびすぐに眠ろうとすることができるときだけ、ベッドに戻りなさい/行きなさい」とユーザに告知することができる。または、ユーザが最初にベッドに入るときには、「そのまま眠るようにしなさい。読書やテレビは無しで、灯りを消しなさい」などと告げることができる。
【0050】
4.システムは、ユーザが覚醒時間を指定することを可能にし、かつ毎朝一定の時間にユーザを覚醒させる目覚まし時計として作用する適切な手段を備えてもよい。
【0051】
5.ユーザはベッド外にいるときに装置を着用することができ、この装置はベッドおよび寝室の外におけるユーザの睡眠をモニタすることができる。これにより、不眠症治療に悪影響を与えることがある居眠りを防止しやすくなる。
【0052】
図2のフローチャートでは、本発明による睡眠制御療法の自動化された実施の実施例が示されている。図2は、図1のブロック18を拡大したものとして理解可能である。覚醒/睡眠判定が受信される(100)。ユーザ接続後の最初の覚醒/睡眠判定の場合(102)、システムは「T」、「Tボーナス」および「メンテナンス」などの刺激制御療法に関する変数を初期化し(104)、さもなければシステムは初期化を行なわずに次へ進む(106)。
【0053】
現在の時間が少なくとも予め設定された覚醒時間である場合(106)、システムは警告表示に戻る(108)。現在の時間が予め設定された覚醒時間に満たない場合、システムはユーザのEEG覚醒/睡眠状態をチェックする(110)。ユーザが覚醒していない場合、システムはユーザの覚醒/睡眠歴をチェックして、最後の12分の間にユーザがそのうち少なくとも10分間は覚醒していたか否かを調べる(112)。ユーザが最後の12分のうちの少なくとも10分の間眠っていた場合には、メンテナンスフラグは真(true)に設定され(114)、システムは106に戻る。ユーザが最後の12分のうちの少なくとも10分の間眠っていなかった場合、システムは106に戻る。ユーザが覚醒している場合(110)(すなわち、もっとも最近の覚醒/睡眠判定が覚醒である場合)、システムは最後の2つの覚醒/睡眠判定が両方とも覚醒であったか否か(すなわち、現在のエポックおよびその直前のエポック)をチェックする(116)。ユーザが両方のエポックで覚醒していない場合、覚醒/睡眠履歴をチェックして、ユーザが過去6分の間に、そのうち少なくとも5分間は覚醒していたか否かを判定する(118)。ユーザが過去6分のうちの少なくとも5分の間眠っていなかった場合、システムは106に戻る。ユーザが過去6分のうちの少なくとも5分の間眠っていた場合、システムはTボーナスがゼロであるか否かをチェックする(120)。Tボーナスがゼロの場合は、Tボーナスは現在の経過時間+10分に設定され(122)、106に戻る。これにより、少なくとも5分の相対的に連続した睡眠を達成した報酬として、さらに10分間アラームを有効に停止させる。Tボーナスがゼロでない場合、システムは106に戻る(すなわち、第2のボーナスを与えない)。
【0054】
最後の2つの覚醒/睡眠判定が両方とも覚醒であった場合(116)、システムはメンテナンスフラグが真であるか否かをチェックする(124)。メンテナンスフラグが真である場合(124)、システムは過去15分のうち少なくとも14分間、覚醒状態が示されたか否かをチェックする(128)。過去15分のうち少なくとも14分間、覚醒状態が示されていた場合(128)、システムは警告表示に戻る(134)。過去15分のうち覚醒状態が示されていたのが少なくとも14分ではない場合(128)、システムは、メンテナンスフラグが30分を超えて真であり、かつ過去30分のうち少なくとも16分間、覚醒状態が示されているか否かをチェックする(130)。これが偽(false)の場合(130)、システムは106に戻る。これが真の場合(130)、システムは過去5分すべての間、覚醒状態が示されたか否かをチェックする(132)。これが真の場合(132)、警告表示に戻る(134)。これが偽の場合(132)、システムは106に戻る。メンテナンスフラグが偽である場合(124)、システムはTが20分以上であり、かつTがTボーナス以上であるか否かをチェックする(126)。これが真の場合(126)、システムは警告表示に戻る(134)。これが偽の場合(126)、システムは106に戻る。
【0055】
睡眠制限療法に対する適用
【0056】
図3は、本発明による自動装置における睡眠制限療法の実施に関する高いレベルの概要を表わす。
【0057】
システムは、電源投入またはEEG電極の接続によってスタートする(300)。システムは、ハードウェア、ソフトウェア、電力、電極/センサ状態などを含むことのできる診断手順(302)を完了する。エラーおよび警報は適切に取り扱うべきである。診断に続いて、ユーザがシステム設定を調整する機会があってもよい(304)。装置の最初の使用時に、これらの設定をデフォルトでレビュー用に表示してもよい。装置のその後の使用時には、このメニューは、選択的に表示するか、またはユーザによって呼び出すか、あるいはロックして臨床家にのみ利用可能としてもよい。これらの設定は、現在の時間、年齢、睡眠目標、警告の選択(聴覚、触覚または両方)、言語、セットアップパラメータ、ディスプレイの選択、バックライトの選択、短縮メッセージの使用、冗長メッセージの使用などの設定のような事項を含む。装置を始動する度(またはユーザと接続される度など)、または停止する度(またはユーザと接続解除する度など)、システムは個々の夜間統計量ないし概要統計量を表示して、ユーザがそれらを望むとおりにレビューできるようにしてもよい。進捗トレンドなどを表示してもよい(306)。これはすべてユーザフィードバックの範疇に入る。
【0058】
システムは、睡眠制限療法プログラムを実施する前に、多数の夜にわたる睡眠関連パラメータをユーザから得ることを必要としてもよい。専門家の大半は一般に、1週間分の被験者データを用いてプログラムパラメータを決定する。この装置を付加することによる睡眠の変化を排除するために、第1日目または第2日目のデータを、プログラムパラメータの計算から除外してもよい。システムはトレーニングモード(308)で自動的にスタートすることもでき、または、ユーザがトレーニングモードを手動で選択することもできる。
【0059】
システムがトレーニングモードにあるとき(308)、システムは覚醒/睡眠データ、ベッド内状態(手動で導き出すか、または自動化手段を使用してのいずれかで)、各観察時間などを取得する。これらの観察は、30秒毎、または他の所望の間隔で実施することができる。データ収集が終了すると(318)、記録が停止される。システムはデータ収集が終了したことを、ユーザが手動でその旨を装置に示すことによって、または、電極/センサケーブルが接続解除された際に知ることになる。データ収集が完了すると、システムは必要な睡眠関連パラメータを計算し(320)、それらをユーザに対し表示する(322)。睡眠制限療法プログラムに関連するパラメータとしては、合計睡眠時間、合計ベッド内時間、睡眠効率などが計算される(320)。その夜のデータ収集が終了していない場合(318)、システムは、覚醒/睡眠データ、ベッド内状態、各観察時間などを取得し続ける(316)。
【0060】
システムがもはやトレーニングモードにない場合(308)、システムは先に収集したデータに基づいて睡眠制限療法のプログラムパラメータを計算する(310)。過去1週間にわたる平均の睡眠時間数や過去1週間にわたる平均睡眠効率などのパラメータが計算される。睡眠制限療法のプログラムパラメータは、ユーザに対して表示される(312)。ユーザは、あるプログラムパラメータを変更する機会を有してもよく(314)、その後、システムは覚醒/睡眠データ、ベッド内状態、各観察時間などを取得し続ける(316)。図3に示したシステムは、以下のような選択的な特徴も含んでもよい。
【0061】
1.最も多く睡眠が達成される時間間隔を観察することにより、もっとも高い睡眠の可能性に対応する時間間隔に関連する追加情報を決定する工程。例えば、ユーザが1夜当たり平均5時間の睡眠をとると考えると、睡眠は、大半の夜で午前3時から6時の間に集中する(これは、ユーザがもっとも多く眠っていた時間間隔である)。睡眠制限療法プログラムの「標準的な」実施は、単に、ユーザがベッド内時間を1夜当たり5時間に限定するように示唆するものである。この追加情報により、システムの実施に使用される装置は、睡眠達成の機会をさらに増やすため、ユーザが5時間の睡眠を午前3時から6時の時間に一致させるよう計画することをさらに提示することができる。
【0062】
2.さらに工程を進めると、ユーザが睡眠のためのこの最適な時間に近づく際に、装置が警告を開始することができる。明らかに、ユーザが既にベッド内にいる場合にはアラームを停止することができる。
【0063】
3.ユーザが推奨される長さの時間、ベッド内にいると、システムはユーザにベッドを離れるよう警告することができる。上記の例では、装置は、ユーザがベッド内に5時間いた後に、ユーザにベッドを離れるよう警告する。
【0064】
4.システムは、ユーザが覚醒時間を指定することを可能にし、かつ毎朝一定の時間にユーザを覚醒させる目覚まし時計として作用する適切な手段を含んでもよい。ユーザは、必要に応じて新しい時間を使用可能/使用不可にするか、あるいは指定することを可能とすべきである。
【0065】
5.ユーザはベッド外にいるときに装置を着用することができ、装置はベッドおよび寝室の外におけるユーザの睡眠をモニタすることができる。これにより、不眠症治療に悪影響を与えることがある居眠りを防止しやすくなる。
【0066】
6.ユーザがベッド外にいるときには必ず、装置は現在の記録期間におけるデータおよび簡易統計を表示してもよい。例えば、ユーザが何らかの理由で夜中にベッドから出る場合には、装置は眠っていた時間数、ベッド内にいた時間数、当夜のそれまでの睡眠効率、現在の時間または経過した時間などを表示してもよい。
【0067】
実施
【0068】
何らかの行動不眠症療法を伴う本発明のシステムの実施は、使用すべき受動的なモニタリング方式に関するハードウェアの物理的配置で開始される。以下の表3は、実施可能な覚醒/睡眠判定手段の例を特定するもので、それらは本発明とともに使用可能である。表3に記載したいずれの受動的モニタリング方式の使用も、装置の仕様に従って行なうべきである。しかしながら、ユーザの覚醒/睡眠状態を判定するために使用されるいかなる手段も本発明とともに利用可能であることは、当業者にとって明白であろう。
【0069】
【表3】

【0070】
このようにして、例えば身体着用EEG装置の場合には、ユーザは装置を適切に身体に装着し、予めゲル化させた自己粘着性電極を使用して、電極を頭部、好ましくは髪の生え際の外側に装着する。次いで、例えば刺激制御療法が選択された場合には(ユーザによって手動で選択されるか、または装置によって自動的に選択されるかのいずれか)、ユーザは眠ろうとすることが可能なときにベッドへ行く。装置はユーザがベッドにいることを、自動検知手段によってか、あるいはユーザがボタンを押すか電極ケーブルを接続して、これを装置に示すことによって知ることになる。
【0071】
その次に、システムはユーザをモニタし、そのEEG信号を解析することによってユーザが覚醒しているか眠っているかを追跡し続ける。この情報を用いて、装置は、上述のように図1および2に示されたアルゴリズムフローに従う。ユーザが適切な期間内に、少なくとも所定の長さの時間、眠りに入った場合には、装置は、覚醒/睡眠情報、ベッド内状態および時間等を連続して収集しながら、受動的にモニタリングを行なう。行動治療プログラムが、ユーザがベッドから出るべきことを要求する場合には、装置は、警告セットから選ばれたアラームによってユーザに警告する。好ましくは、アラームの種類および強度は、デフォルト値が望ましくなかった場合には、ユーザまたは医療提供者によって変更可能である。例えば、傍らにベッドパートナーがいる場合にこの装置を使用する際には、聴覚アラームよりも無音の触覚アラームが選択される場合がある。
【0072】
警告に対して、ユーザは(自動化システムの刺激制御プログラムによって指定されるように)ベッドから出て、再度眠れるようになるまで寝室を離れる。ユーザがベッド内に留まっているか、または寝室を離れない場合には、装置はこの行動を検出して、意図されたようにプログラムに従っていない旨をユーザに対して警告できる。生活の状態または状況から寝室を離れることが不可能な人の場合には、この条件を緩和するように装置を設定することができる。ユーザがプログラムのルール(書面化してもよいが、適切なときに装置ディスプレイに表示してもよく、または音声で提供してもよい)に従って再び眠ることができる状態にあるときには、再びベッドに戻って眠ろうと試みることになる。ユニットはベッド内かベッド外かを連続的にモニタすることが可能である。
【0073】
ユーザがベッド外にいる間にユニットが睡眠を検出した場合には、この行動は禁忌でありプログラムの有効性を低下させ得ることをユーザに警告することができる。睡眠の場所は、可能な限りベッドおよび寝室内のみとすべきである。この行動療法は「再調整(reconditioning)」プログラムであるため、可能な限りルールを強制すべきである。さらにシステムは、すべての覚醒を検出し、必要であれば、ベッドを出る必要があることをユーザに警告することができる。
【0074】
先に説明したように、刺激制御療法の場合、ユーザは眠ろうと試みるときにはベッド内のみにいるべきである。ユーザは眠ることができない場合、システムによって物理的にベッドおよび寝室から離れるように指令される。そのためには、いつベッド内にユーザがいるかを装置が知ることが必要である。ベッドシーツの下の圧力変換器また運動センサを使用して、ユーザがベッド内にいるか(かつ、おそらく眠ろうとしているか)否かを検知することができる。またはユーザは、装置のボタンを押すことによって、眠ろうと試みて眠れる状態にあることを手動で装置に示すことができる(手動アプローチ)。この手動アプローチでは、ユーザがボタンを押すことを忘れて、装置が動作しないままになるという危険性がある。装置が身体に着用される場合には、ベッドのきわめて近くに配置された、非常に出力の低いRF伝送信号(ビーコン)を受信するRF受信機を備えることができる。この考案では、ユーザがベッド内にいるときには十分に近いため、身体着用装置が低出力伝送信号(ビーコン)を検出し、ユーザがベッド内にいることを自動的に知ることができる。体温などを感知する温度センサ等の他の多くの装置を使用することもできる。しかし、現時点においては、ベッドの下に直接置かれるか、ヘッドボード上に置かれるか、または、ナイトテーブル上に置かれる小型RF送信機が好適であり、これらはベッドパートナー、ペット等を誤って検出しやすくなることがない。さらにこの装置は、ユーザが装置に接続されているときはいつでも、ユーザがベッド内にいるものと推定することができる。
【0075】
ユーザがベッド内にいるか否かを判定するのに用いられる受動的センサ、例えば、低出力RF送信機もまた、プログラムを確実に遵守しやすくするように用いることができる。本発明のあるモードにおいて、装置がユーザに対しベッドから出るように警告するときには、ユーザが物理的にベッドおよび寝室から離れたこと(すなわち、ビーコンの送信範囲外にいること)を装置が検出するまで、アラーム(例えば聴覚アラームおよび/または振動アラーム)を継続させることが可能である。RFビーコンの放射出力は、事実上、指向性とすることができる。さらに、RFビーコンの出力はユーザにより調整可能とすることができる。これによってユーザがRFビーコンを調整し、送信パターンを可能な限りベッドおよび寝室の領域と一致させることができる。
【0076】
さらに、この装置により、睡眠を確実にベッド内でのみ実現させることが容易になる。ユーザがソファーまたは椅子で(すなわち、ベッドおよび寝室以外で)眠りに入った場合は、装置は睡眠がベッドおよび寝室の外で発生していることを検出し、警告を信号として発することができる。睡眠を確実にベッド/寝室内でのみ発生させることは、健康な睡眠を実現するもう1つのステップであり、療法全体における一部分である。
【0077】
上記は、覚醒および睡眠情報のみが利用可能であるときのシステムの利用を例示するものである。付加的な睡眠段階分類情報が利用可能な場合、より入念な計画を実施することが可能となる。例えば、ステージ1の睡眠情報を追加することによって、ユーザが所定の時間間隔(例えば20分)内にステージ1睡眠を越えて進んでいない場合に、システムがユーザを睡眠から覚醒させることが可能になる。
【0078】
本発明のシステムを実施するためのハードウェアは、以下に説明するものなど、多くの様々な形状および形態を取ってもよい。
【0079】
据付け装置
【0080】
本発明のシステムを実施するための卓上用装置は、ユーザのベッドの隣の床またはナイトテーブル上に配置することができる。EEG電極(または他の適切なセンサ)は、装置内に差し込むケーブルに接続される。このアプローチの1つの短所は、ユーザが据付け装置に拘束されることであり、ワイヤがもつれたり邪魔になったりする可能性がある。通常、ワイヤをベッドの上部へ向けて、次いで装置まで配線することで、この問題は解決される。ユーザがベッドから出なければならないときには(すなわち、トイレを使用する必要があるか、または装置がそうするように指令することにより)、据付け装置からの接続を外さなければならず、電極ケーブルを持って移動する場合もある。したがって、このアプローチの利点は、ユーザがベッドに戻ったときに自分自身を装置に再装着しなければならないことであり、これにより、他の検出器またはユーザ側の行動なしに装置が始動および停止するための必要な情報が提供される(すなわち、これは本質的にデフォルトでは自動ベッド内センサである)。最後に、装置は、ユーザがベッド外にいるときにベッドおよび寝室の外における睡眠を連続してモニタすることができない。卓上用装置が壁のコンセントから電力を供給される場合には、当該技術において周知の適切な電源および接地の絶縁設計技術を用いて潜在的な電気災害からユーザを保護しなければならない。
【0081】
半据付け式
【0082】
上述のような卓上用モデルであるが、電極/EEG増幅器と据付け装置との間にワイヤレス接続を用いるものも使用可能である。この場合、身体に着用して卓上用装置へ信号を送ることが可能な小型ワイヤレスEEG増幅器/送信機に電極が差し込まれる。これは、ユーザと据付け対象物との間の機械的拘束が除かれるという利点を有する。これにより、ユーザが着用する送信機は電池式である可能性が最も高いので、ユーザと卓上装置との間には固有の電気的絶縁が得られる。これはまた、送信機が低出力であるかまたは送信機からベースユニットまでの距離を検知可能な場合に、ベッド内センサとして使用されるという利点も有する。送信機が十分に強力である場合には、装置をベッド外でのモニタリングにも使用してよい。
【0083】
身体着用可能装置
【0084】
本発明のシステムを実施するためのハードウェアのもっとも望ましい形態は、装置全体を身体着用式としたものである。この場合、装置はユーザによって着用され、電極は直接装置内に接続される。装置は、電池を電源とする場合が最も多く、壁のコンセントに対し絶縁する必要はない。この装置は、複雑なEEG送信機/受信機の対を必要としないので、上述の半据付けシステムよりも簡潔である。ユーザは、いかなる時も拘束を受けないので、上述のような据付け装置よりも好ましいものとなる。身体着用可能装置は、ユーザのベッド外での睡眠をモニタし、その発生を防止することもできる。
【0085】
この装置は、例えば、先に記載したようにベッド近傍に取り付けられた低出力RF送信機のようなワイヤレスベッド内検知装置から利益を受けるであろう。身体着用装置は、単にビーコン信号を検出する必要があるだけである。より複雑なモデルは、送信機までの距離を測定し、ユーザがベッド内にいるか、その近傍にいるだけかを認知する。きわめて低出力のRF送信機を備えたベッドシーツの下の圧力センサを、ベッド内の検出用に使用すると最適である。しかし、簡易なアプローチでは、ユーザはベッド内に居て入眠可能な状態にあることを示すために、身体着用装置のボタンを押すだけでよい。他の装置の実施形態は、光および動作を検知し、今ユーザが眠ろうとするか否かに関してユーザを能動的に促すことができる。
【0086】
ある実施可能な身体着用可能装置(500)を図4に示している。この装置は視覚(502、508)、聴覚(504)および触覚(506)による警告を行なうことができる。LCDなどの人間−機械インタフェース出力(508)を配設することもできる。入力およびナビゲーションのためのボタンのような人間−機械インタフェース入力(510)を利用可能としてもよい。
【0087】
本システムのEEGに基づく実施形態は、身体着用可能装置その他を利用して実施してもよく、その場合、電極(550)は、モニタすべき人間に設置したセンサとして使用される。
【0088】
図5のブロック図は、本発明者に対する米国特許第5,813,993号に記載されているように覚醒/睡眠判定を実施することが可能な据付け型設計における、本システムのEEGに基づく実施形態の構成要素を表わしている。この特許に記述されたアルゴリズムを本発明の覚醒/睡眠判定に使用することもできるが、その代わりに、他の適切な受動的覚醒/睡眠判定手段またはアルゴリズムを使用することも可能である。
【0089】
図5の据付け型設計で使用可能な構成要素の例を以下に記述する。当業者は、身体着用可能な設計を構築するため、全体的機能を保ちつつ、代替的な構成要素を選択することができる。例えば、そのような身体着用可能な設計において、シングルボードコンピュータ(556)は、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサなどに置き換えることが可能である。
【0090】
図5の電極(550)は、EEG信号を得るためユーザに装着される。+および−の電極はEEG増幅器に対する入力であり、com電極を使用してEEG増幅器の基準点がユーザと同じ電位にされる。多くのEEGに基づく装置は、明確にそれらの装置用に設計された独自の電極を使用する。以下のものが良好に動作する。ネオトレースキティキャット電極(NeoTrace Kitty Cat Electrode)、ケンドールLTP(Kendall−LTP) 部品番号1052NPSM これは固体ゲル粘着ヒドロゲルと1.5mmの安全ソケット末端を有する予め装着されたリードワイヤとを備える自己粘着性電極である。
【0091】
脳波記録(EEG)増幅器およびフィルタリング(552)は一体化されたEEG増幅器モジュールを備える。このモジュールは、電極(550)からのEEG信号を増幅し濾過する。大半の増幅器モジュールは複数のチャネルを有する。所望の覚醒/睡眠判定手段(EEGに基づくものと仮定)が必要とするチャネルの数によって、未使用の各増幅器チャネルの+および−の入力を短絡させてcomへ接続し、未使用チャネルが動作チャネルにノイズを発生させることを防止すべきである。EEG増幅器(552)の出力がアナログ信号である場合には、データ収集カード(DAQ)(554)によりアナログ信号をデジタル化する必要がある。埋込式の用途では、シングルボードコンピュータ(556)が一般的に使用される。
【0092】
例示されたシステムはまた、キーパッド付の液晶ディスプレイ(LCD)(558)を含む。これは、出力装置(ディスプレイおよびバックライト)および入力装置(キーパッド)の両方として使用され、ユーザがこのシステムと対話できるようになっている。システムは、音声出力装置としてスピーカ(560)をさらに備えてもよい。
【0093】
場合によっては、システムのための主電源(564)は、EEG増幅器を動作させるのに必要な電圧を生成しないこともある。さらに、多くのデジタル装置が電源(564)に接続されており、これらの装置は相当な量の電気ノイズを電力系統内に発生させる傾向がある。EEG増幅器は、フィルタリングによって、またはアナログ増幅器用に別個の電源を加えることによって、この電気ノイズから分離する必要がある場合もある。従って、システムはEEG電源(562)を備えると最適である。
【0094】
システムは、医学的に分離された電源(564)を有する。これは主要なシステム電源である。システムはユーザに対する低インピーダンス電気接続(550)を必要とするため、医学的に分離された電源を使用することが望ましい。
【0095】
最後に、身体着用可能装置は図5のシステムのものに機能的に類似するが、異なる小型ハードウェアを備えることが留意される。また、身体着用可能システムは振動による警告を行なってもよく、電池によって動作する。これはまたベッド内センサを備えてもよい。
【0096】
本発明を好適な実施形態に関連して説明してきたが、当業者は本発明の原理から逸脱することなく、その詳細における変形例を実現してもよい。従って、附属する特許請求の範囲は、本発明の範囲および精神の内に含まれるすべての均等物を包含するものと解釈されるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を利用してユーザの睡眠または睡眠に関する健康状態を改善する行動療法の実施を容易にするための自動化されたシステムであって、
ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を受動的に判定する手段と、
ユーザの覚醒/睡眠状態の情報を利用して行動療法の工程を実施するための手段と、を備えることを特徴とする自動化されたシステム。
【請求項2】
行動療法が、少なくとも刺激制御療法、睡眠制限療法、リラクゼーション療法、不眠症の認知行動療法、不眠症の行動療法、および、刺激制御療法、睡眠制限療法、リラクゼーション療法、不眠症の認知行動療法、および不眠症の行動療法のうち2つ以上の組合せを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ユーザの個人的な覚醒/睡眠情報に基づいてユーザのために実施すべき行動療法を選択するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報が、EEG、EMG、PAT、収縮期立ち上がり時間、ECG/EKG、EOG、オキシメトリ、心拍変動、心調律変動、アクティグラフィ、体動、GSR、呼吸変化、呼吸変動、眼球運動、および、ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を受動的に判定するためのこれら手段のうち2つ以上の組合せからなる部類から得られることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
薬物療法が行動療法とともに用いられることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
覚醒/睡眠状態を判定するための能動的手段を使用して、ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を受動的に判定するための手段を補うことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
行動療法は、以下のルール、すなわち、
a)ユーザが眠っている間は絶対にユーザに警告しないこと、
b)少なくとも第1の所定数の連続する覚醒エポックが実現されたときにのみユーザに警告すること、
c)少なくとも第2の所定数の連続するエポックの睡眠が実現された場合に、ユーザがメンテナンスモードにあることを示し、少なくとも第2の所定数の連続するエポックの睡眠が実現されない場合に、ユーザがメンテナンスモードにないことを示すこと、であって、それにより、
ユーザがメンテナンスモードにある場合には、過去の第3の所定数のエポックを調べ、ユーザが過去の第3の所定数のエポックのうち少なくとも第4の所定数のエポックにおいて覚醒していた場合にはユーザに警告するが、
ユーザがメンテナンスモードになく、かつ眠ろうと試みる第1の期間内に少なくとも第5の所定数の連続するエポックの睡眠がない場合には、第1の期間の経過時にユーザに警告し、
ユーザがメンテナンスモードになく、かつ眠ろうと試みる第1の期間内に含まれる連続する睡眠期間が、エポックの第5の所定数より大きいかまたは等しいが、エポックの第2の所定数に満たない場合には、付加的期間の間、警告を禁止すること、を用いて刺激制御療法を実施するための手段を含む刺激制御療法であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
1つのエポックは約30秒であり、連続する覚醒エポックの第1の所定数は2であり、連続するエポックの第2の所定数は20エポックであり、連続するエポックの第3の所定数は30エポックであり、エポックの第4の所定数は28エポックであり、連続するエポックの第5の所定数は10エポックであり、第1の期間は40エポックであり、付加的期間は20エポックであることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
行動療法のパラメータがユーザの覚醒/睡眠情報に基づいてユーザ毎に最適化されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
ユーザの睡眠または睡眠に関する健康状態を改善することを求めるユーザのための行動療法の実施を容易にするための装置であって、
ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を処理するための手段と、
覚醒/睡眠状態情報を利用して行動療法を実施するための手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を処理するための手段が、EEG、EMG、PAT、収縮期立ち上がり時間、ECG/EKG、EOG、オキシメトリ、心拍変動、心調律変動、アクティグラフィ、体動、GSR、呼吸変化、呼吸変動、眼球運動、および、ユーザの覚醒/睡眠状態を示す情報を受動的に判定するためのこれら手段のうち2つ以上の組合せからなる部類から得られることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
行動療法が、
刺激制御療法のルールに従ってユーザがベッドから出るべきか否かを判定するための手段と、
判定がなされた場合に刺激制御療法のルールに従ってユーザにベッドを離れるように警告するための手段と、
を含む刺激制御療法であることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
行動療法が、
睡眠制限療法のルールに従い先に取得された覚醒/睡眠状態情報に基づく次回の睡眠セッションのための睡眠期間を含むプログラムパラメータを計算するための手段と、
ユーザが睡眠期間を達成し終えたか否かを決定するための手段と、
次回の睡眠セッションのため、計算されたプログラムパラメータをユーザに対し表示するための手段と、
を含む睡眠制限療法であることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
行動療法が、刺激制御療法、睡眠制限療法、リラクゼーション療法、不眠症の認知行動療法、不眠症の行動療法、および、刺激制御療法、睡眠制限療法、リラクゼーション療法、不眠症の認知行動療法、不眠症の行動療法のうち2つ以上の組合せからなる部類から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
時間、年齢、睡眠目的、警告の選択、言語、セットアップパラメータ、および表示の選択からなる部類から選択されたシステム設定をユーザがレビューし調整することを可能にする手段を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
行動療法がユーザの覚醒/睡眠状態情報および/または覚醒/睡眠状態履歴に基づいてユーザ毎に最適化されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記装置によって先に取得された情報をユーザがレビューすることを可能にする手段を含む請求項10に記載の装置。
【請求項18】
ユーザの以前の覚醒/睡眠状態履歴に基づいてユーザの睡眠統計量を計算するための手段を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項19】
ユーザがベッド内にいるか否かに関する兆候が覚醒/睡眠状態情報とともに取得されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項20】
あらゆる警告をオフにするための手段と、ユーザがもはやベッド内にいないと判定されたときにユーザの現在の睡眠統計量を表示するための手段とが存在することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項21】
あらゆる警告をオフにするための手段と、ユーザがもはやベッド内にいないと判定されたときにユーザに睡眠指令を与える手段とが存在することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項22】
警告手段が、警報状態のテキスト表示、指令または情報のテキスト表示、ディスプレイバックライト、点滅光、聴覚指示、触覚指示、合成音声または録音音声、低レベルの電気刺激、および、適切な装置によって生成される芳香からなる部類から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項23】
所定の覚醒時間をユーザが指定することを可能にする手段を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項24】
警告手段を停止するための、ユーザが制御する手段を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項25】
指令または情報の視覚的または聴覚的提示を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項26】
ユーザが推奨された長さの時間ベッド内にいた後にユーザに対し表示を行なうための手段を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項27】
ユーザがプログラムパラメータを、次回の睡眠セッションのためのそのようなパラメータを表示した後にレビューし調整することを可能にする手段を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項28】
ユーザによって着用可能な単一の携帯用ユニットの形態である、請求項10に記載の装置。
【請求項29】
ユーザの睡眠を計画するユーザを補助するために、最も高い睡眠の可能性に対応する時間間隔を計算するための手段を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項30】
最も高い睡眠の可能性に対応する時間間隔にユーザが近づくときにユーザに告知するための手段を含む、請求項29に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514826(P2013−514826A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544486(P2012−544486)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025636
【国際公開番号】WO2011/075179
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(505294506)コンソリデーティッド リサーチ オブ リッチモンド,インコーポレイテッド (2)